説明

光ファイバケーブルの配線方法および光ファイバ配管

【課題】 作業性に優れ、光ファイバケーブルを無駄にすることなく配線が可能な、光ファイバケーブルの配線方法等を提供する。
【解決手段】 保護管9には、所定間隔をあけて取り出し口11が形成される。取り出し口11は、保護管9が取り付けられる構造体の各階の高差(各階の高さ方向の間隔)に略対応する。保護管9内部には複数の光ファイバケーブル7が挿通されている。ここで、複数本光ファイバケーブル7がまとめられたものを光ファイバ群17と称する。複数の光ファイバ群17は、それぞれ長さが異なる。取り出し口11においては、取り出し口11を含んで保護管9全体に巻きつくようにバンド13が設けられる。取り出し口11において、一つの光ファイバ群17のみが他の光ファイバ群17と区別されて、バンド13外部(保護管9外部)に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内部に光ファイバケーブルが挿通され、光ファイバケーブルを配線位置まで配線する光ファイバケーブルの配線方法およびこれに用いられる光ファイバ配管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、集合ドロップケーブルやインドアケーブルにおいて、複数本の光ファイバケーブルを集合して拠り線とし、集合拠り線が保護管内に挿通される。集合拠り線から使用する光ファイバケーブルを取り出す際には、集合拠り線の内の一本を切断し、切断された端部にコネクタを接続して、コネクタを介して配線位置まで別途光ファイバケーブルを敷設する。
【0003】
このような集合光ファイバドロップケーブル等としては、例えば、光エレメントの複数本を支持線部の周囲に配設すると共に、各光エレメント部を予め配線形態に応じて分岐する分岐部を設ける集合光ファイバドロップケーブルがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−125914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このようなケーブルを用いて分岐部を増設するような場合には、内部のケーブルを分岐部で切断して抜き取る必要があり、切断された光ファイバケーブルの残部が無駄となり、また、使用されない無駄な光ファイバケーブルが配管内に残置されるという問題がある。また、切断部には必ずコネクタが必要となるため、コネクタの接続作業が必要となり、作業性も悪いという問題がある。また、多数本の光ファイバケーブルを拠り線とする場合には、必要な光ファイバケーブルの識別や、拠り線からの取り出し性が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、作業性に優れ、光ファイバケーブルを無駄にすることなく配線が可能な、光ファイバケーブルの配線方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達するために第1の発明は、複数階からなる構造体の各階に光ファイバケーブルを配線する光ファイバケーブルの配線方法であって、各階間の略高差に対応する間隔で複数の取出し口が形成された管体と、前記管体に挿通された光ファイバケーブルと、を具備し、複数本の前記光ファイバケーブルがまとめられた光ファイバ群が複数形成され、それぞれの前記光ファイバ群の長手方向の一部が、それぞれの前記取出し口で前記管体の外方に向けて露出した状態で保持される光ファイバ配管を用い、前記構造体に略鉛直方向に併設された前記光ファイバ配管の前記取出し口から、前記光ファイバ群の上端部を引き出し、前記光ファイバ群を前記光ファイバケーブルにばらして、対応する階におけるそれぞれの配線位置まで前記光ファイバケーブルを配線することを特徴とする光ファイバケーブルの配線方法である。
【0008】
前記光ファイバ群を構成する前記光ファイバケーブルの平均長さは、それぞれの前記光ファイバ群ごとに異なり、上階に行くにつれ、各階に対応する光ファイバ群を構成する前記光ファイバケーブルの平均長さが長くなることが望ましい。
【0009】
1階に配線される前記光ファイバ群を構成する前記光ファイバケーブルの平均長さL1に対し、n階に配線される前記光ファイバ群を構成する前記光ファイバケーブルの平均長さLnは、各階間の高差をHとすると、Ln=L1+(n−1)・Hであることが望ましい。
【0010】
光ファイバ群を構成する複数の光ファイバケーブルは、各階における水平方向の配線位置に応じてそれぞれ長さが異なり、前記光ファイバ群を前記取出し口から引き出した後、各階の配線位置に対応する長さの前記光ファイバケーブルをそれぞれの配線位置まで配線してもよい。
【0011】
前記光ファイバ配管の下端より露出する前記光ファイバケーブルの下端部は、前記光ファイバケーブルが巻きつけられたコイルに接続されており、前記光ファイバケーブルを配線位置まで配線した後、前記光ファイバケーブルの余長部をコイルで巻き取り、前記光ファイバ配管の下端近傍で前記光ファイバケーブルを切断してもよい。
【0012】
前記光ファイバ配管は、屈曲または接続によってさらに水平方向に配設され、水平方向に配設されている光ファイバ配管の所定箇所に設けられた取出し口より、内部の光ファイバケーブルを取り出し、各階における配線位置に配線してもよい。
【0013】
第1の発明によれば、光ファイバ群が構成され、光ファイバ群が取り出し口から露出した状態で保持されるため、光ファイバケーブルの取り出しが容易であり、識別も確実に行うことができる。また、光ファイバケーブルを切断する必要がないため、無駄な光ファイバケーブルが生じることがない。
【0014】
特に、各階に対応したそれぞれの光ファイバ群を構成する光ファイバケーブルの平均長さ(以下単に「光ファイバ群の長さ」と称する)が、上階にいくにつれて長くなるため、光ファイバケーブルの長さが、配線位置(配線階)に応じた長さとなり、光ファイバケーブルの無駄が生じず、効率よく使用することができる。この場合、上階に行くにつれて、光ファイバ群の長さを階の高差(階差長)Hだけ長くすることで、より効率よく各階に対応する長さとすることができる。
【0015】
また、同一の光ファイバ群を構成する光ファイバケーブルの長さを、水平方向の配線位置に応じた長さにそれぞれ対応させ、光ファイバケーブルの長さをそれぞれ変えることで、より光ファイバケーブルの無駄をなくすことができ、光ファイバケーブルを有効に利用することができる。
【0016】
また、配管下方より導出する光ファイバケーブルを、それぞれ光ファイバケーブルのコイルに接続させることで、光ファイバケーブルの配線時には、必要長さだけ光ファイバケーブルをコイルより巻き出し、光ファイバケーブル配線後は、余分な長さをコイルで巻き取ることにより、光ファイバケーブルをより有効に利用することができる。
【0017】
また、各階においては、配管を水平方向に曲げ、または別途配管を水平方向に接続して、配線位置近傍に取り出し口を設けることで、光ファイバケーブルの配線がより簡易となる。
【0018】
第2の発明は、複数階からなる構造体に用いられる光ファイバ配管であって、所定間隔で複数の取出し口が形成された管体と、前記管体に挿通された光ファイバケーブルと、を具備し、前記管体の一方の端部は閉塞されており、前記管体の他方の端部は開放し、内部の光ファイバケーブルが露出しており、複数本の前記光ファイバケーブルがまとめられた光ファイバ群が複数形成され、それぞれの前記光ファイバ群の長手方向の一部が、それぞれの前記取出し口で前記管体の外方に向けて露出した状態で保持されることを特徴とする光ファイバ配管である。
【0019】
前記光ファイバ群を構成する前記光ファイバケーブルの平均長さは、前記光ファイバ群ごとに異なり、前記取り出し口の位置が前記光ファイバ配管の閉塞された側の端部に行くにつれて、当該取り出し口で露出する前記光ファイバ群を構成する前記光ファイバケーブルの平均長さを長くしてもよい。
【0020】
第2の発明によれば、光ファイバ群が配管の取り出し口より露出した状態で保持されるため、内部の光ファイバケーブルを配線位置まで配線するのが容易であり、識別も確実に行うことができる。特に、光ファイバ群の長さを配管の端部(上階に向けて設置される側)に行くにつれて長くすることで、光ファイバケーブルを効率よく利用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、作業性に優れ、光ファイバケーブルを無駄にすることなく配線が可能な、光ファイバケーブルの配線方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】配線構造1を示す斜視図。
【図2】配線構造1に用いられる配管構造を示す図で、(a)は全体立面図、(b)は(a)のA部拡大図、(c)は(b)のB−B線断面図。
【図3】配線構造1に用いられる配管構造を示す断面図で、(a)は全体断面図、(b)は(a)のA部拡大図。
【図4】構造体3に保護管9を設置した状態を示す図。
【図5】保護管9から光ファイバケーブル7(光ファイバ群17)取り出す工程を示す図。
【図6】光ファイバケーブル7を配線した状態を示す図。
【図7】保護管9を最上階で屈曲させた状態を示す図。
【図8】ケーブル収納箱21を示す図で、(a)は斜視図、(b)は斜視透視図、(c)は断面図。
【図9】ケーブル収納箱21を保護管9の下方に設置して光ファイバケーブル7を設置する状態を示す図。
【図10】ケーブル収納箱21を各階に設置して光ファイバケーブル7を設置する状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、配線構造1を示す図である。複数階からなる(図では3階の例を示す)構造体3の側方には、保護管9が略鉛直方向に設置される。保護管9内部には光ファイバケーブル7が複数挿通されている。保護管9の下端からは光ファイバケーブル7端部が導出されており、保護管9の下端近傍に設置される図示を省略した配線ボックス等に接続される。
【0024】
保護管9の各階に対応する位置からは光ファイバケーブル7が取り出されており、光ファイバケーブル7は、各階のそれぞれの引き込み口5(配線位置)まで配線される。なお、以下の説明において、保護管9内に光ファイバケーブル7が挿通された状態のものを、単に光ファイバ配管と称する。すなわち、光ファイバ配管は、保護管9および光ファイバケーブル7等から構成される。
【0025】
次に光ファイバ配管について詳細を説明する。図2および図3は、光ファイバ配管の構成を示す図で、図2(a)は全体立面図、図2(b)は図2(a)のA部拡大図、図2(c)は図2(b)のB−B線断面図、図3(a)は全体断面図、図3(b)は図3(a)のA部拡大図である。
【0026】
保護管9の端部(上端部)は、蓋15によって閉じられており、下端部は開放されている。なお、保護管9としては、たとえば可撓性を有するポリエチレン製のものが使用でき、波付管であっても直管であってもよく、また、波付管である場合には、螺旋溝付管であっても独立溝付管であってもよい。また、保護管9のサイズとしては、内部に挿通される光ファイバケーブル7の本数により適宜決定されるが、例えば10〜20mm程度である。
【0027】
保護管9には、所定間隔をあけて取り出し口11が形成される。取り出し口11は、内部の光ファイバケーブル7を保護管9の外部に取り出すための穴である。取り出し口11の設置間隔は、例えば2.5〜3m程度あり、保護管9が取り付けられる構造体の各階の高差(各階の高さ方向の間隔)に略対応するものである。
【0028】
保護管9内部には複数の光ファイバケーブル7が挿通されている。ここで、複数本の光ファイバケーブル7がまとめられたものを光ファイバ群17と称する。すなわち光ファイバ群17は、複数本の光ファイバケーブル7がテープ等でまとめられて形成される。したがって、保護管9内部には複数の光ファイバ群17が挿通されている。
【0029】
なお、光ファイバ群17を構成する光ファイバケーブル7の本数は、各階における配線数に対応し、図1の例では、各階に4か所の引き込み口5が設定されているため、4本の光ファイバケーブル7によって光ファイバ群17を構成すれば良い。また、光ファイバ群17の群数は、階数に対応し、図1の例では、3群の光ファイバ群17を構成すれば良い。なお、光ファイバケーブル7や光ファイバ群17の設定数は図に示す例に限定されず、例えば、通常、保護管9内部には20〜30本程度の光ファイバケーブル7が挿入される。
【0030】
複数の光ファイバ群17は、それぞれ長さが異なる。すなわち、光ファイバ群17を構成する光ファイバケーブル7の長さは、それぞれの光ファイバ群ごとに異なる。したがって、保護管9内部において、光ファイバ群先端19位置は、それぞれの光ファイバ群17ごとに異なる。
【0031】
複数の光ファイバ群17は、それぞれ対応する取り出し口11で保護管9の外部に露出する。すなわち、一つの取り出し口11において、一つの光ファイバ群17が露出する。なお、保護管9の下端側(蓋15とは逆側の端部側)の取り出し口11から上端側(蓋15が設けられるの端部側)の取り出し口11に行くにつれて、露出する光ファイバ群17の長さが順次長くなる。すなわち、最下方の取り出し口11で露出する光ファイバ群17の長さが最も短く、ここで露出する光ファイバ群17の先端部は保護管9内部において、他の光ファイバ群17の先端部より下方に位置する。
【0032】
同様に、最上方の取り出し口11で露出する光ファイバ群17の長さが最も長く、ここで露出する光ファイバ群17の先端部は保護管9内部において、他の光ファイバ群17の先端部より上方に位置する。なお、光ファイバ群17の先端位置は、必ずしも異なる位置でなくてもよく、この場合、保護管9の下端から外部に出ている光ファイバ群17の長さをそれぞれ異なるようにしても良い。すなわち、最も短い光ファイバ群17は保護管9の下端からの長さが最も短く、最も長い光ファイバ群17は、保護管9の下端からの長さが最も長くなるようにしても良い。
【0033】
図2(b)、図3(b)に示すように、取り出し口11においては、取り出し口11を含んで保護管9全体に巻きつくようにバンド13が設けられる。バンド13は、保護管9に巻きつけられ、保持することができれば、どのような態様でもよい。図2(c)に示すように、取り出し口11で外方に向けて露出する光ファイバ群17は、バンド13の外部に位置し、その他の光ファイバ群17は、保護管9内部に保持される。すなわち、取り出し口11において、一つの光ファイバ群17のみが他の光ファイバ群17と区別されて、バンド13外部(保護管9の外方に向けて)に保持される。なお、光ファイバ群17はそれぞれ識別が可能なように、テープで色分け等がなされており、さらに、光ファイバ群17を構成する複数の光ファイバケーブル7同士も識別可能に色分け等が施されている。
【0034】
このような光ファイバ配管は、以下のように組み立てられる。あらかじめ必要長さに切断された保護管9の所定位置に、取り出し口11を形成する。所定長さの複数の光ファイバケーブル7をテープ等でまとめて光ファイバ群17を形成しておき、光ファイバ群17を保護管9の一方の端部より挿入する。この際、光ファイバ群17の先端にキャップを取り付けて固定することが望ましい。キャップの先端が断面円弧形状であり、キャップ先端の円弧部の大きさが、保護管内面の凹部の溝幅よりも大きければ、キャップ先端が溝に引っ掛かることがない。すなわち、光ファイバケーブルの先端が保護管内部の凹凸に引っかかることなく、光ファイバ群17を保護管内に挿入することができる。また、光ファイバケーブル7の先端を折り曲げて挿入してもよい。
【0035】
長い光ファイバ群17または短い光ファイバ郡17から順に保護管9に挿入し、それぞれの対応する取り出し口11で、該当する光ファイバ群17の長手方向の一部(端部以外の部位)を保護管9の外部に引き出し、バンド13によって保護管9外部に保持する。以上を繰り返して、全ての光ファイバ群17を保護管に挿入し、それぞれの取り出し口11で光ファイバ群17の一部を外方に向けて露出させて保持することで光ファイバ配管が形成される。
【0036】
次に、本発明の光ファイバ配管を用いた光ファイバ配線構造の構築方法を説明する。まず、図4に示すように、構造体3の側方に保護管9(光ファイバ配管)を設置する。この際、取り出し口が各階の所定高さ位置に来るようにあらかじめ取り出し口の位置が設定される。なお、保護管9下端より外部に出ている光ファイバケーブル7は、配線ボックスにあらかじめ接続しておいてもよく、または、配線作業終了後に配線ボックス等に接続しても良い。
【0037】
次に、それぞれの取り出し口11より光ファイバケーブル7(光ファイバ群17)を取り出す。図5は、光ファイバケーブル7(光ファイバ群17)を保護管9より取り出す方法を示す図である。まず、図5(a)に示す状態から、図5(b)に示すように、取り出し口11から露出している光ファイバ群17を引き出す(図中矢印C方向)。
【0038】
さらに、光ファイバ群17を引き抜き、図5(c)に示すように、光ファイバ群先端19を取り出し口11より取り出す(図中矢印D方向)。次に、図5(d)に示すように、必要に応じて、光ファイバ群17を必要長さ引き出す(図中矢印E方向)。なお、光ファイバケーブル7の下端が既に配線ボックス等に接続されていて、下端側に余長がない場合には、図5(d)のように引っ張り出すことはない。
【0039】
光ファイバ群17を引きだした後、光ファイバ群17をそれぞれの光ファイバケーブル7にばらし、必要な光ファイバケーブル7をそれぞれの配線位置である引き込み口5まで配線する。引き込み口5においては、別途コネクタ等を接続してもよく、または、直接室内まで当該光ファイバケーブル7を配線しても良い。以上により、各階および各引き込み口へ光ファイバケーブル7が配線される。
【0040】
なお、各引き込み口5までの配線を、個別に行う場合には、該当する光ファイバ群17を完全には取り出さず、例えば図5(b)に示すように、光ファイバ具17の一部を取り出して、必要な光ファイバケーブル7のみを引き出して配線し、残りの光ファイバ群17を保護管9内に戻しておくこともできる。
【0041】
図6は、配線が完了した状態を示す図である。ここで、各階の高差(高さ方向)をHとし、それぞれの引き込み口5同士の水平方向の距離をそれぞれW1〜W3とする。図に示すように、1階に配線される光ファイバケーブル7の平均長さに対して、2階に配線される光ファイバケーブル7の平均長さはHだけ長くなる。すなわち、1階に用いられる光ファイバ群17の長さをL1とすれば、n階に用いられる光ファイバ群17の長さをLnは、Ln=L1+(n−1)・Hとすることが望ましい。このようにすることで、各階の高差に応じた適切な長さの光ファイバ群となり、余分な光ファイバケーブルを少なくすることができる。
【0042】
同様に、同一の光ファイバ群を構成する各光ファイバケーブル7の長さも、全て同一とするのではなく、引き込み口5の位置に応じて長さを変えておくことが望ましい。例えば1階の一番保護管に近い引き込み口5に用いられる光ファイバケーブル7の長さをl1とし、遠くなるにつれて順にl2、l3、l4とし、引き込み口5同士の間隔を順にW1、W2、W3とすれば、l2=l1+W1、l3=l2+W2=l1+W1+W2、l4=l3+W3=l1+W1+W2+W3とすることが望ましい。このようにすることで、引きこみ口5の位置に応じた適切な長さの光ファイバケーブルとなり、余分な光ファイバケーブルを少なくすることができる。
【0043】
なお、一つの光ファイバ群を構成するそれぞれの光ファイバケーブルの長さを全て同じにする場合には、最も遠い引き込み口までの長さを設定しておき、引き込み口5の位置に応じて、光ファイバケーブル7を切断すればよい。
【0044】
図7は、他の実施形態を示す図で、最上階で保護管9aを屈曲させて水平方向に配置した状態を示す図である。保護管9aは、1階部および2階部は保護管9と同様であり、3階部のみ保護管9を伸ばしたものである。
【0045】
最上階における水平方向に設置された部位においては、引き込み口5の近傍に取り出し口を設ければよい。したがって最上階においては、光ファイバ群を構成せず、取り出し口から光ファイバケーブルをそれぞれ単体で取り出せばよい。この場合、各取出し口では、光ファイバケーブル7をバンド等で区別しておいてもよい。また、図7においては、最上階の保護管を屈曲させたが、保護管を屈曲させずに、鉛直方向の保護管9に水平方向の保護管を別途接続してもよい。この場合、最上階に限られず、他の任意の階において水平方向の保護管を設けてもよい。
【0046】
なお、以上の実施形態において、構造体3の構造(階および部屋数)等は図示した態様に限られない。また、取り出し口11には、別途カバー等を設けておいてよい。カバーは、光ファイバ群17を取り出す前の状態においても、または、光ファイバ群17を取り出した後においても、穴を塞ぎ、内部に水分等や小動物等が侵入しないように設けられればよい。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の配線構造1によれば、配線作業がきわめて容易である。また、あらかじめ各階に配線される光ファイバケーブル7が光ファイバ群17を構成するため、識別が容易であり、作業性に優れる。また、余分な光ファイバケーブル7を削減することができる。
【0048】
特に、各階の高さに応じて、また、各階における引き込み口5の位置に応じてあらかじめ光ファイバ群、およびこれを構成する光ファイバケーブル7の長さを設定することにより、より光ファイバケーブルの無駄を削減することができる。
【0049】
次に、第2の実施の形態にかかる光ファイバの配線方法について説明する。図8は、ケーブル収納箱21を示す図で、図8(a)は斜視図、図8(b)は斜視透視図、図8(c)は断面図である。なお、以下の実施形態において、第1の実施形態と同一の機能を奏する構成については、図1〜図6と同一の符号を付し、重複した説明を省略する。第2の実施の形態においては、ケーブル収納箱21が用いられる。
【0050】
ケーブル収納箱21は、主に、箱体22、コイル23等から構成される。箱体22の内部に複数のコイル23が並列に設けられる。コイル23には、光ファイバケーブル7が巻きつけられる。それぞれのコイル23は、独立しており、それぞれ独立して軸25を中心に回転することができる。
【0051】
箱体22の側面には、それぞれのコイル23の配置に応じた位置に取り出し孔27が設けられる。取り出し孔27の内部にはガイド29が設けられる。すなわち、コイル23に巻きつけられた光ファイバケーブル7は、ガイド29を介して、取り出し孔27から外部に導出される。
【0052】
箱体22の上面には、複数のスリット31が形成される。スリット31は、コイル23の側板の位置に対応しており、それぞれのコイル23の側板の一部がスリット31より箱体22の上方に露出する。作業者は、スリット31より露出したコイル23の側板を回転させることで、コイル23を回転させることができる。
【0053】
ケーブル収納箱21は、使用時には、取り出し孔27より外部に導出された光ファイバケーブル7を引っ張ることで、容易に光ファイバケーブルを取り出すことができる。この際、例えば、複数の光ファイバケーブルを同時に引っ張ることで、複数本の光ファイバケーブルを略同一長さで引き出すことができる。また、余分に引き出された光ファイバケーブル7は、それぞれのコイルの露出部を回転させることで、コイル23を逆回転させて、光ファイバケーブル7を巻き戻すことができる。
【0054】
次に、ケーブル収納箱21を用いた配線方法について説明する。図9は、ケーブル収納箱21が用いられた状態における配線方法を示す図である。ケーブル収納箱21は、保護管9の下端側から出ている光ファイバケーブ7と一体で構成される。すなわち、保護管9内部の光ファイバケーブル7(光ファイバ群17)は、ケーブル収納箱21のコイルとそれぞれ接続されている。
【0055】
なお、一つの光ファイバ群17ごとに一つのケーブル収納箱21を割り当てることが望ましい。例えば、図9の例では、各階に4つの引き込み口5が存在するため、光ファイバ群17は4本の光ファイバケーブル7で構成される。したがって、4つのコイルで構成されるケーブル収納箱21を用いれば、一つのケーブル収納箱21より引き出された4本の光ファイバケーブル7を一つの光ファイバ群17とすることができる。
【0056】
まず、図9の1階に示すように、前述の方法で光ファイバ群17を保護管9より取り出し、最遠の引き込み口5まで引き出す。この際、光ファイバ群を構成する光ファイバケーブル7がケーブル収納箱21から引き出される。
【0057】
次に、図9の2階に示すように、光ファイバ群17をばらして光ファイバケーブル7とし、それぞれの引き込み口5に配線する。配線後、3階に示すように、余分な光ファイバケーブル7を、ケーブル収納箱21方向に巻き戻す(図中矢印F)。余分な光ファイバケーブル7を巻き戻し後、ケーブル収納箱21近傍の必要位置で光ファイバケーブル7を切断し、配線ボックス等に接続する。以上により配線が終了する。
【0058】
なお、図10に示すように、ケーブル収納箱21を各階の保護管9から最遠端部近傍に設置して配線を行っても良い。この場合、まず、空の保護管9を構造体3に設置する。次いで、図中1階に示すように、光ファイバケーブル7をケーブル収納箱21より引き出し(図中矢印G方向)、保護管9(の取り出し口)に挿入して、保護管9下端から光ファイバケーブル7の端部を必要長さ引き出す。この際、必要に応じて、光ファイバケーブル7の端部を配線ボック等に接続しても良い。
【0059】
次に、図中2階に示すように、それぞれの引き込み口5の位置で光ファイバケーブル7を切断して配線する。最後に、図中3階に示すように、余分な光ファイバケーブル7をケーブル収納箱21方向に巻き戻す(図中矢印H方向)。以上により配線作業が完了する。
【0060】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。また、ケーブル収納箱21は、複数の光ファイバケーブルを一度に引き出すことができ、また、余分な光ファイバケーブル7を巻き戻すことができるため、光ファイバケーブルを有効に利用することができ、無駄を削減することができる。
【0061】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0062】
1………配線構造
3………構造体
5………引き込み口
7………光ファイバケーブル
9………保護管
11………取り出し口
13………バンド
15………蓋
17………光ファイバ群
19………光ファイバ群先端
21………ケーブル収納箱
22………箱体
23………コイル
25………軸
27………取り出し孔
31………スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数階からなる構造体の各階に光ファイバケーブルを配線する光ファイバケーブルの配線方法であって、
各階間の略高差に対応する間隔で複数の取出し口が形成された管体と、
前記管体に挿通された光ファイバケーブルと、
を具備し、複数本の前記光ファイバケーブルがまとめられた光ファイバ群が複数形成され、それぞれの前記光ファイバ群の長手方向の一部が、それぞれの前記取出し口で前記管体の外方に向けて露出した状態で保持される光ファイバ配管を用い、
前記構造体に略鉛直方向に併設された前記光ファイバ配管の前記取出し口から、前記光ファイバ群の上端部を引き出し、前記光ファイバ群を前記光ファイバケーブルにばらして、対応する階におけるそれぞれの配線位置まで前記光ファイバケーブルを配線することを特徴とする光ファイバケーブルの配線方法。
【請求項2】
前記光ファイバ群を構成する前記光ファイバケーブルの平均長さは、それぞれの前記光ファイバ群ごとに異なり、上階に行くにつれ、各階に対応する光ファイバ群を構成する前記光ファイバケーブルの平均長さが長くなることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブルの配線方法。
【請求項3】
1階に配線される前記光ファイバ群を構成する前記光ファイバケーブルの平均長さL1に対し、n階に配線される前記光ファイバ群を構成する前記光ファイバケーブルの平均長さLnは、各階間の高差をHとすると、Ln=L1+(n−1)・Hであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光ファイバケーブルの配線方法。
【請求項4】
光ファイバ群を構成する複数の光ファイバケーブルは、各階における水平方向の配線位置に応じてそれぞれ長さが異なり、前記光ファイバ群を前記取出し口から引き出した後、各階の配線位置に対応する長さの前記光ファイバケーブルをそれぞれの配線位置まで配線することを特徴とする請求項1から請求項3記載の光ファイバケーブルの配線方法。
【請求項5】
前記光ファイバ配管の下端より露出する前記光ファイバケーブルの下端部は、前記光ファイバケーブルが巻きつけられたコイルに接続されており、前記光ファイバケーブルを配線位置まで配線した後、前記光ファイバケーブルの余長部をコイルで巻き取り、前記光ファイバ配管の下端近傍で前記光ファイバケーブルを切断することを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブルの配線方法。
【請求項6】
前記光ファイバ配管は、屈曲または接続によってさらに水平方向に配設され、水平方向に配設されている光ファイバ配管の所定箇所に設けられた取出し口より、内部の光ファイバケーブルを取り出し、各階における配線位置に配線することを特徴とする請求項1から請求項5記載の光ファイバケーブルの配線方法。
【請求項7】
複数階からなる構造体に用いられる光ファイバ配管であって、
所定間隔で複数の取出し口が形成された管体と、
前記管体に挿通された光ファイバケーブルと、
を具備し、
前記管体の一方の端部は閉塞されており、前記管体の他方の端部は開放し、内部の光ファイバケーブルが露出しており、
複数本の前記光ファイバケーブルがまとめられた光ファイバ群が複数形成され、それぞれの前記光ファイバ群の長手方向の一部が、それぞれの前記取出し口で前記管体の外方に向けて露出した状態で保持されることを特徴とする光ファイバ配管。
【請求項8】
前記光ファイバ群を構成する前記光ファイバケーブルの平均長さは、前記光ファイバ群ごとに異なり、前記取り出し口の位置が前記光ファイバ配管の閉塞された側の端部に行くにつれて、当該取り出し口で露出する前記光ファイバ群を構成する前記光ファイバケーブルの平均長さが長くなることを特徴とする請求項7記載の光ファイバ配管。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−123408(P2011−123408A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282638(P2009−282638)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(501314396)古河樹脂加工株式会社 (26)
【Fターム(参考)】