説明

光ファイバケーブル用分岐具および光ファイバケーブルの分岐方法

【課題】小型化が可能であり、かつ防水性に優れた光ファイバケーブル用分岐具および光ファイバケーブルの分岐方法を提供する。
【解決手段】露出したケーブル本体62の一部を保持するとともに分岐光ファイバ64aを導く分岐具本体2と、分岐具本体2を収容する外装体3と、露出部分62dのうち少なくとも外装体3に収容されていない部分のケーブル本体62を覆う保護パイプ4と、を備えた分岐具1。分岐具本体2は、ケーブル本体62を保持する本体保持部5と、分岐光ファイバ64aをケーブル本体62の延在方向とは異なる方向に導く分岐光ファイバ導出部6とを有する。外装体3は、ケーブル本体挿通口21aと、分岐光ファイバ64aが挿通する分岐光ファイバ挿通口22cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルの中間後分岐に用いられる光ファイバケーブル用分岐具および光ファイバケーブルの分岐方法に関し、例えば屋外に布設される光ファイバケーブルの分岐に用いられる光ファイバケーブル用分岐具および光ファイバケーブルの分岐方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いた光伝送線路において、例えば光ファイバネットワークの構築には、光ファイバケーブルを布設した後、この光ファイバケーブルを途中から分岐させる中間後分岐の技術が必要である(例えば特許文献1〜3参照)。
特許文献1、2には、光ファイバケーブルの分岐部分に取り付け可能な分岐具が開示されている。特許文献3には、分岐部分に取り付け可能なクロージャが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−243837号公報
【特許文献2】特開2010−243836号公報
【特許文献3】特開2005−114831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載の分岐具はサイズが大きいため、屋外(例えば集合住宅等の外壁)に設置するのは、建物の美観等の点で好ましくなかった。特許文献2に記載の分岐具は、雨水が浸入しやすい構造であるため、屋外に設置するには問題があった。特許文献3に記載のクロージャはサイズが大きいため、屋外(例えば集合住宅等の外壁)に設置するのは建物の美観等の点で好ましくなかった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、小型化が可能であり、かつ防水性に優れた光ファイバケーブル用分岐具および光ファイバケーブルの分岐方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ケーブル本体と、これに沿う複数の光ファイバとを有する光ファイバケーブルから、前記光ファイバの少なくとも1つが分岐光ファイバとして引き出される分岐部に設けられる光ファイバケーブル用分岐具であって、前記光ファイバを取り出し可能に露出した範囲の前記ケーブル本体の一部を保持するとともに前記分岐光ファイバを導く分岐具本体と、前記分岐具本体を収容する外装体と、前記露出した範囲のうち少なくとも前記外装体に収容されていない部分の前記ケーブル本体を覆う保護パイプと、を備え、前記分岐具本体は、前記ケーブル本体を保持する本体保持部と、前記分岐光ファイバを前記ケーブル本体の延在方向とは異なる方向に導く分岐光ファイバ導出部とを有し、前記外装体は、前記本体保持部に保持された前記ケーブル本体が挿通する一対のケーブル本体挿通口と、前記分岐光ファイバ導出部を経た前記分岐光ファイバが挿通する分岐光ファイバ挿通口を有する光ファイバケーブル用分岐具を提供する。
前記外装体は、前記分岐具本体の一方の面側に設けられる第1分割体と、前記分岐具本体の他方の面側に前記第1分割体に対向して設けられる第2分割体とからなる分割構造体であることが好ましい。
前記外装体は、前記ケーブル本体が挿通する主筒部と、前記主筒部の長さ方向中間部から外方に突出する分岐筒部とを備えている構造とすることができる。
前記本体支持部は、固定具を締結することにより前記ケーブル本体を前記本体支持部に固定可能な被固定部を有することが好ましい。
前記本体支持部の両端部は、前記保護パイプの端部に挿入可能であることが好ましい。
分岐具本体は、概略トレイ状に形成され、開放面側に前記ケーブル本体を保持可能であることが好ましい。
【0006】
本発明は、ケーブル本体と、これに沿う複数の光ファイバとを有する光ファイバケーブルから、前記光ファイバの少なくとも1つを分岐光ファイバとして引き出して、光ファイバケーブル用分岐具を用いて分岐する光ファイバケーブルの分岐方法であって、前記光ファイバケーブル用分岐具は、前記光ファイバを取り出し可能に露出した範囲の前記ケーブル本体の一部を保持するとともに前記分岐光ファイバを導く分岐具本体と、前記分岐具本体を収容する外装体と、前記露出した範囲のうち少なくとも前記外装体に収容されていない部分の前記ケーブル本体を覆う保護パイプと、を備え、前記分岐具本体は、前記ケーブル本体を保持する本体保持部と、前記分岐光ファイバを前記ケーブル本体の延在方向とは異なる方向に導く分岐光ファイバ導出部とを有し、前記外装体は、前記本体保持部に保持された前記ケーブル本体が挿通する一対のケーブル本体挿通口と、前記分岐光ファイバ導出部を経た前記分岐光ファイバが挿通する分岐光ファイバ挿通口とを有し、前記光ファイバケーブルの所定の長さ範囲において、前記光ファイバが取り出し可能となるように前記ケーブル本体の一部を露出させ、前記分岐具本体の本体保持部に、前記露出した前記ケーブル本体の一部を保持させるとともに、前記分岐光ファイバ導出部によって前記分岐光ファイバを導き、前記分岐具本体を、前記外装体内に収容するとともに、前記露出した範囲のうち少なくとも前記外装体に収容されていない部分の前記ケーブル本体を保護パイプで覆う光ファイバケーブルの分岐方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分岐具本体および外装体がケーブル本体の露出部分の全体ではなく一部に取り付けられるため、分岐具本体および外装体を小型化できる。また、露出部分の長さに制限がないため、十分な長さの分岐光ファイバが得られることから、分岐光ファイバと外部の光ファイバとの接続部を分岐具の外に設置できる。従って、分岐具の小型化を図ることができる。
また、ケーブル本体の露出部分のうち外装体に収容されない部分は保護パイプに覆われるため、防水性を高めることができる。
また、分岐具本体が、ケーブル本体を保持する本体保持部と、分岐光ファイバを分岐方向に導く分岐光ファイバ導出部とを有するため、ケーブル本体および分岐光ファイバを安定的に所定の方向に向けた状態で保持することができ、しかも分岐具本体内に無駄なスペースが生じない。このため、分岐具の小型化を図るうえで好適である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の光ファイバケーブル用分岐具の一実施形態の模式図である。
【図2】図1の光ファイバケーブル用分岐具の斜視図である。
【図3】図1の光ファイバケーブル用分岐具の内部構造を示す斜視図である。
【図4】図1の光ファイバケーブル用分岐具の分岐具本体を示す斜視図である。
【図5】図1の光ファイバケーブル用分岐具の分岐具本体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は前面図である。
【図6】図1の光ファイバケーブル用分岐具の把持部を示す平面図である。
【図7】図1の光ファイバケーブル用分岐具の外装体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は前面図である。
【図8】図1の光ファイバケーブル用分岐具の第1および第2分割体の係止構造を示す前面図である。
【図9】本発明の分岐方法の第1の例を説明する説明図である。
【図10】前図に続く分岐方法の説明図である。
【図11】前図に続く分岐方法の説明図である。
【図12】前図に続く分岐方法の説明図である。
【図13】前図に続く分岐方法の説明図である。
【図14】前図に続く分岐方法の説明図である。
【図15】本発明を適用可能な光ファイバケーブルの配線の一例を示す説明図である。
【図16】本発明を適用可能な光ファイバケーブルの一例の概略構成を示す断面図である。
【図17】本発明を適用可能な光ファイバケーブルの他の例の概略構成を示す斜視図である。
【図18】本発明の分岐方法の第2の例を説明する説明図である。
【図19】前図に続く分岐方法の説明図である。
【図20】前図に続く分岐方法の説明図である。
【図21】前図に続く分岐方法の説明図である。
【図22】前図に続く分岐方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図15に示すように、架空光ファイバケーブル50から集合住宅51に引き落とされた光ファイバケーブル61は、複数の分岐部60でそれぞれ分岐され、分岐された光ファイバ64a(以下、分岐光ファイバ64aという)は光ファイバ(例えば図1の光ファイバ71)に接続され、この光ファイバは各戸52に引き込まれる。
【0010】
図16は、光ファイバケーブル61の一例を示す図であり、この光ファイバケーブル61は、ケーブル本体62(ケーブルコア)の外周にシース63が形成されている。
ケーブル本体62は、スロット溝62a(光ファイバ収容溝)が形成されたスロット部材62bを有する。スロット溝62aには複数の光ファイバ64が収容されている。符号62cは抗張力体である。スロット溝62aは、ケーブル長さ方向に沿って形成されている。
光ファイバ64は、光ファイバ心線、光ファイバ素線等であってもよいし、光ファイバテープ心線であってもよい。
【0011】
図1は、本発明の光ファイバケーブル用分岐具の一実施形態である光ファイバケーブル用分岐具1(以下、単に分岐具1という)の模式図である。図2は、分岐具1の斜視図である。図3は、分岐具1の内部構造を示す斜視図である。図4は、分岐具本体2を示す斜視図である。図5は分岐具本体2を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は前面図である。図6は分岐具1の把持部17を示す平面図である。図7は外装体3を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は前面図である。
以下の説明において、XYZ直交座標系を設定し、XYZ直交座標系を参照しつつ各構成の位置関係を説明する場合がある。
【0012】
図1〜図3に示すように、分岐具1は、光ファイバケーブル61のケーブル本体62の露出部分62d(図9参照)の一部を保持する分岐具本体2と、分岐具本体2を収容する外装体3と、露出部分62dのうち少なくとも外装体3に収容されていない部分のケーブル本体62を覆う保護パイプ4と、を備えている。
【0013】
図4〜図6に示すように、分岐具本体2は、全体として概略トレイ状に形成されており、トレイ部11と、トレイ部11の内面から突出する複数のブロック状の台部12と、台部12間に架け渡された固定橋部13(被固定部)とを有する。
トレイ部11は、ケーブル本体62が配置される主部14と、主部14の両端にそれぞれ形成された先端延出部15と、主部14の長さ方向中間部から外方に延出する分岐部16とを有する。
【0014】
主部14は、概略半筒状とされ、図4および図5に示すX方向に延在している。主部14は、底板14aと、その両側縁に形成された側板14b、14cとを有する。
先端延出部15は、略半円筒状とされ、主部14の延在方向(X方向)の一端および他端に、前記延在方向に沿って、主部14から離れる方向に突出して形成されている。先端延出部15は、保護パイプ4より径が小さく、保護パイプ4の端部に挿入可能な形状とするのが好ましい。
【0015】
分岐部16は、主部14の延在方向の略中央から、図4および図5に示すY方向に延出して形成されている。Y方向はX方向に直交する方向である。なお、分岐部16の形成位置は主部14の略中央に限らず、中央よりいずれかの端部に近い位置でもよい。
分岐部16は、底板16aと、その両側縁に形成された側板16b、16bとを有する。底板16aは、延出方向に徐々に幅が狭くなる底板主部16dと、底板主部16dからさらにY方向に延出する略一定幅の先端部16eを有する。
側板16bは、主部14の側板14cに連設されている。図示例では、底板主部16dの両側縁に形成された側板16bと側板14cとは、全体として、外面が凹状となる略円弧形の平面視形状を有する。
【0016】
分岐具本体2では、分岐部16が主部14の延在方向に対して直交する方向に延出しているため、主部14の一端側、他端側のいずれから導入された光ファイバ64であっても、その光ファイバ64を無理なく分岐光ファイバ64aとして分岐部16に導くことができる。
なお、分岐部16の延出方向は、ケーブル本体62の延在方向に対して直交する方向に限らず、ケーブル本体62の延在方向とは異なる方向であればよい。分岐部16の延出方向は、例えば、ケーブル本体62の延在方向(X方向)に対して0°を越え、90°未満の角度で傾斜する方向であってよい。
【0017】
図6に示すように、分岐部16の先端部分は、分岐光ファイバ64aを保護するための保護チューブ70の端部を把持して固定する把持部17となっている。把持部17は、底板16aの先端部17aと側板17b、17b(16b、16b)とからなり、側板17b、17b間の空間は、保護チューブ70が嵌め込まれるチューブ嵌合溝17cである。
【0018】
把持部17は、側板17b、17bの互いに対向する面に複数突設した把持用突起17dによって保護チューブ70を挟み込んで、保護チューブ70を把持固定できる。
把持用突起17dは、例えばチューブ嵌合溝17cの深さ方向に延在する断面三角形状の突条とすることができる。把持用突起17dは、押圧により圧縮変形した状態で、自らの弾性で保護チューブ70外面に押し当てられることによって、保護チューブ70を挟み込むことができる。複数の把持用突起17dは、Y方向に間隔をおいて形成されている。
【0019】
図4に示すように、台部12および固定橋部13は、トレイ部11の開放面側(上面側。図5(a)の紙面手前側)に形成されている。
台部12は、主部14の底板14aの長さ方向中間部に形成された中央台部12aと、中央台部12aの一端側および他端側にそれぞれ中央台部12aから離れて形成された端部台部12b、12bとを有する。台部12(12a、12b)は、底板14aから上方に突出して形成されている。図示例の台部12a、12bの突出高さは互いに等しい。
図4および図5のZ方向は、XおよびY方向に直交する方向である。上方(または高さ方向)とはZ方向に沿って底板14aから離れる方向であり、下方とはその反対方向である。
【0020】
固定橋部13は、中央台部12aと端部台部12bとの間に架け渡されて形成されている。固定橋部13の幅(Y方向の寸法)は台部12の幅より小さくすることができる。固定橋部13の形成方向は、主部14の延在方向(X方向)が好ましい。固定橋部13は、底板14aから距離をおいて、中央台部12aの上部と端部台部12bの上部との間に形成されている。固定橋部13上面の高さ位置は、台部12a、12bの上面の高さ位置に等しいことが好ましい。
後述するように、固定橋部13には、固定具28によってケーブル本体62が固定される。
【0021】
トレイ部11の主部14、先端延出部15、台部12および固定橋部13は、ケーブル本体62を保持する本体保持部5を構成し、分岐部16は、分岐光ファイバ64aをケーブル本体62の延在方向とは異なる方向に導く分岐光ファイバ導出部6を構成している。
【0022】
図2、図3、図7、図8に示すように、外装体3は、ケーブル本体62が挿通する主筒部21と、主筒部21の長さ方向中間部から外方に突出する分岐筒部22とを備えている。
主筒部21は、図2、図3および図7に示すX方向に延在して、分岐具本体2の主部14を収容可能に形成されている。主筒部21の両端には、それぞれケーブル本体62が挿通するケーブル本体挿通口21a、21aが形成されている。ケーブル本体挿通口21aには、保護パイプ4が挿入可能である。
【0023】
分岐筒部22は、主筒部21の延在方向の略中央から、図2、図3および図7に示すY方向に延出して形成され、分岐具本体2の分岐部16を収容可能である。なお、分岐筒部22の形成位置は主筒部21の略中央に限らず、中央よりいずれかの端部に近い位置でもよい。
分岐筒部22は、延出方向に徐々に幅が狭くなる筒部主部22aと、筒部主部22aからさらにY方向に延出する略一定幅の先端部22bを有する。筒部主部22aには分岐光ファイバ導出部6の底板主部16dが収容され、先端部22bには先端部16eが収容される。
分岐筒部22の先端には、保護チューブ70が挿通する分岐光ファイバ挿通口22cが形成されている。
【0024】
外装体3は、分岐具本体2に即した内面形状を有することが好ましい。図示例の外装体3では、主筒部21は分岐具本体2の本体保持部5に即した内面形状とされ、分岐筒部22は分岐光ファイバ導出部6に即した内面形状とされているため、外装体3内での分岐具本体2のがたつきが起こりにくい。
【0025】
外装体3は、ケーブル本体62が挿通する主筒部21と、主筒部21の中間部から外方に突出する分岐筒部22とを備えた構造であるため、ケーブル本体62および分岐光ファイバ64aを、所定の方向に向けた状態で確実に保持することができ、しかも外装体3内に無駄なスペースが生じない。このため、分岐具1の小型化を図るうえで好ましい。
【0026】
図2、図3および図7に示すように、外装体3は、主筒部21の中心軸を通るXY平面に沿って上下2つに分割されている。具体的には、外装体3は、分岐具本体2のトレイ部11の下面11a側(一方の面側)(図5(c)参照)に設けられる第1分割体23と、トレイ部11の上面11b側(他方の面側)(図5(c)参照)に、第1分割体23に対向して設けられる第2分割体24とからなる2分割構造を有する。
図7に示すように、第1分割体23は、主筒部21の下部半体である主筒部半体21Aと、分岐筒部22の下部半体である分岐筒部半体22Aとからなる。第2分割体24は、主筒部21の上部半体である主筒部半体21Bと、分岐筒部22の上部半体である分岐筒部半体22Bとからなる。
【0027】
第1分割体23側の主筒部半体21Aと第2分割体24側の主筒部半体21Bとは、分岐筒部半体22A、22Bが形成されていない側の縁部21A1、21B1が互いにヒンジ結合しており、これによって、第1分割体23と第2分割体24とは、閉じた状態(図2参照)から開放した状態(図3参照)まで回動可能である。
【0028】
図7および図8に示すように、第1分割体23の分岐筒部半体22Aの両外側面には、それぞれ係止枠部25(被係止部)が外方(図7のX方向)に延出して形成されている。係止枠部25は、矩形枠状に形成することができる。
第2分割体24の分岐筒部半体22Bには、第1分割体23と第2分割体24とを閉じ合せたときに係止枠部25内の係止口部25aに挿入可能なラッチ部26が形成されている。ラッチ部26は、分岐筒部半体22Bからいったん外側方に延出し、さらに下方に延出する、概略L字形に形成されている。ラッチ部26の先端外面には、外方(図7のX方向)に突出する係止爪部26a(係止部)が形成されている。係止爪部26aは、第1分割体23と第2分割体24とを閉じ合せたときに係止枠部25に内縁側から係止可能であるため、第1分割体23と第2分割体24とを閉じ合せた状態に維持できる。
ラッチ部26、26は、互いに近づく方向に変形させることによって、係止爪部26aの係止を解除することもできる。
【0029】
図7に示すように、外装体3は、第1分割体23の下面23aを設置面(建物の外壁等)に向けた姿勢で設置することができる。
第1分割体23には、XY平面に沿って外方に延出する固定板27が形成されている。固定板27には、前記設置面に分岐具1を固定するための固定具を挿通させる挿通口部27aが形成されている。固定板27の下面27bは下面23aと面一であることが好ましい。
【0030】
保護パイプ4は、可撓性を有する材料、例えばポリエチレン等の合成樹脂によって形成することができる。保護パイプ4は可撓性を有するため、ケーブル本体62とともに曲げ変形可能である。よって、保護パイプ4が設けられた部分のケーブル本体62の引き回しのしやすさが損なわれることはない。
ケーブル本体62に装着した部分の保護パイプ4の内径は、ケーブル本体62の外径と同じ、またはこれよりやや大きい程度とすると、保護パイプ4を細径化できるため、美観や取り回ししやすさの点で好ましい。ケーブル本体挿通口21aに挿入された部分の保護パイプ4の外径はケーブル本体挿通口21aの内径と同じ、またはこれよりやや小さい程度とすると、防水性を高めるうえで好ましい。
【0031】
図1に示すように、保護パイプ4は、露出部分62dのうち少なくとも外装体3に収容されていない部分のケーブル本体62を覆う長さとされる。
図1に示す例では、保護パイプ4の一方の端部は、分岐具本体2の先端延出部15に達し、他方の端部は光ファイバケーブル61のシース63に達している。具体的には、保護パイプ4の一方の端部には、分岐具本体2の先端延出部15が挿通され、保護パイプ4の他方の端部は、光ファイバケーブル61のシース63の端部を含む所定長さの範囲を覆っている。
保護パイプ4は、例えば周方向の1か所で軸方向に沿って切断された断面略C形の構造とすると、保護パイプ4を開いてケーブル本体62に容易に装着できる。保護パイプ4は、側縁部を防水テープで覆うことによって防水性を高めることができる。
【0032】
次に、図2、図3、図9〜図14を参照しつつ、分岐具1を用いて光ファイバケーブルの分岐作業を行う方法の一例を説明する。
図9(a)、図9(b)に示すように、光ファイバケーブル61のシース63をカッター67で周方向に切断し、所定の長さ範囲のシース63を除去してケーブル本体62を露出させる。ケーブル本体62の露出部分62d(露出範囲)の長さは、十分な長さの分岐光ファイバ64aを確保できるように定めることができる。
露出部分62dでは、光ファイバ64はスロット溝62aから取り出し可能となる。
【0033】
次いで、図9(c)、図9(d)および図10に示すように、露出した部分のケーブル本体62のスロット溝62a内の複数の光ファイバ64のうち1つを切断し、分岐光ファイバ64aとしてスロット溝62aから取り出す。他の光ファイバ64はスロット溝62a内に残す。
【0034】
図11および図12に示すように、ケーブル本体62の露出部分62dを、X方向に沿って分岐具本体2の主部14上に配置する。ケーブル本体62は、一方の先端延出部15から主部14内を経て他方の先端延出部15に向けて配線される。
【0035】
図12に示すように、ケーブル本体62を、バンド状の固定具28を用いて固定橋部13に固定する。固定具28としては、バンドの一端側を、他端に設けた係止部に係止可能な構造の結束具(例えばいわゆるインシュロックタイ)が採用できる。図示例では、ケーブル本体62と固定橋部13に、固定具28が一括して巻き付けられることによって、ケーブル本体62が固定橋部13に締め付け固定される。これによって、ケーブル本体62を分岐具本体2に安定に保持させることができる。
【0036】
分岐光ファイバ64aは、分岐部16を経て、把持部17に把持された保護チューブ70に挿通させる。
保護チューブ70は、例えば図17に示す光ファイバケーブル81と同じ外形を有するものが使用できる。保護チューブ70の構造は、例えば抗張力体82を有する外被83に、分岐光ファイバ64aを挿通させる挿通孔部が形成された構造のものが使用できる。
【0037】
分岐具本体2は概略トレイ状であり、開放面側にケーブル本体62を固定することができるため、ケーブル本体62の取り回しが容易である。このため、ケーブル本体62の固定作業や、分岐光ファイバ64aを保護チューブ70に挿通させる作業などが容易となる。
【0038】
図13および図14に示すように、保護パイプ4、4を、ケーブル本体62の一端および他端側に設置することによって、露出部分62dを保護することができる。図示例では、露出部分62dのうち分岐具本体2外の部分は保護パイプ4によって保護される。
保護パイプ4は、端部に先端延出部15を挿入することによって、分岐具本体2に対し安定に位置決めできる。
【0039】
保護パイプ4は、露出部分62dのうち少なくとも外装体3に収容されていない部分のケーブル本体62を覆うため、露出部分62dへの水の浸入を防止できる。
保護パイプ4は、分岐具本体2の取り付けの後に取り付ければよいため、ケーブル本体62の露出部分62dに応じて適切な長さに調整してから設置できる。よって、保護パイプ4の長さを適正化し、その設置範囲を最小限にすることができる。
【0040】
次いで、図3に示すように、分岐具本体2を外装体3の第1分割体23内に収容する。次いで、図2に示すように、第1分割体23と第2分割体24とを閉じ合せ、ラッチ部26の係止爪部26aを係止枠部25に係止させる。
外装体3は2分割構造であるため、分割体23、24の間にケーブル本体62および分岐具本体2を配置して分割体23、24を閉じ合せるという簡単な操作で外装体3を組み立てることができる。
図示例では、保護パイプ4はケーブル本体挿通口21a内に挿入された状態となっている。保護パイプ4がケーブル本体挿通口21aの内面に当接することによって、防水性が高められる。
【0041】
図1に示すように、分岐光ファイバ64aの先端を、融着接続などにより、光ファイバ71に接続する。符号72は分岐光ファイバ64aと光ファイバ71との融着接続部73を覆う保護チューブである。光ファイバ71は、例えば単心のドロップケーブル、インドアケーブルなどである。
【0042】
図1および図2に示すように、分岐具1では、外装体3の主筒部21の端部と保護パイプ4との接続部分29を含む範囲29Aを、防水テープ(例えばブチルゴム系材料からなるテープ)で覆うことによって防水性を高めることができる。範囲29Aは、接続部分29からケーブル一端および他端方向の両方にわたる所定長さの範囲である。
保護パイプ4の端部4aと光ファイバケーブル61のシース63との接続部分30を含む範囲30Aについても、同様に、防水テープで覆うことで防水性を高めることができる。範囲30Aは、接続部分30からケーブル一端および他端方向の両方にわたる所定長さの範囲である。
防水テープは、主筒部21、保護パイプ4、光ファイバケーブル61に対して、一部が互いに重なるように螺旋状に巻きつけると、防水性を高めるうえで好適である。
外装体3の主筒部21と保護パイプ4は外径に大きな差がなく、また、保護パイプ4と光ファイバケーブル61も外径に大きな差がない。このため、範囲29A、30Aに対する防水テープの巻き付け作業は容易である。
防水テープによる防水構造は、構造として簡略であるため、分岐作業の現場での作業性を高めるうえで好ましい。
【0043】
分岐具1は、分岐具本体2および外装体3がケーブル本体62の露出部分62dの全体ではなく一部に取り付けられるため、分岐具本体2および外装体3を小型化できる。また、露出部分62dの長さに制限がないため、十分な長さの分岐光ファイバ64aが得られることから、分岐光ファイバ64aと外部の光ファイバ71との融着接続部73を分岐具1の外に設置できる。従って、分岐具1の小型化を図ることができる。
また、露出部分62dのうち外装体3に収容されない部分は保護パイプ4に覆われるため、防水性を高めることができる。
また、分岐具本体2が、ケーブル本体62を保持する本体保持部5と、分岐光ファイバ64aを分岐方向に導く分岐光ファイバ導出部6とを有するため、ケーブル本体62および分岐光ファイバ64aを安定的に所定の方向に向けた状態で保持することができ、しかも分岐具本体2内に無駄なスペースが生じない。このため、分岐具1の小型化を図るうえで好適である。
【0044】
図17は、本発明を適用できる光ファイバケーブルの他の例を示すもので、ここに示す光ファイバケーブル81は、合成樹脂製の外被83内に、複数の光ファイバ84と、線状の抗張力体82とが設けられている。抗張力体82は、光ファイバ84の両側に互いに平行に2本設けられている。
光ファイバ84は、例えば光ファイバ心線や光ファイバ素線等が挙げられる。抗張力体82としては、例えばアラミド繊維等の抗張力繊維、鋼線等を挙げることができる。外被83の両側面には、光ファイバケーブル81の長さ方向に沿う断面V字形の溝部であるノッチ部85がそれぞれ成されている。光ファイバケーブル81としては、インドアケーブル、ドロップケーブル等が挙げられる。
【0045】
以下、図18〜図22を参照しつつ、分岐具1を用いて光ファイバケーブル81の分岐作業を行う方法の一例を説明する。以下の説明において、既述の構成については同じ符号を付して説明を省略する。ここに明示されない分岐方法の詳細については、図2、図3、図9〜図14に示す分岐方法に準ずる。
【0046】
図18および図19に示すように、光ファイバケーブル81の所定の長さ範囲の外被83を、ノッチ部85にて第1外被半体83Aと第2外被半体83Bとに分割することによって、光ファイバ84を露出させる。
【0047】
外被83の分割部分の長さは、十分な長さの分岐光ファイバ84aを確保できるように定めることができる。分割された第1外被半体83Aは、ケーブル本体の露出部分に相当する。複数の光ファイバ84のうち1つを切断し、分岐光ファイバ84aとして取り出す。
図20に示すように、分岐光ファイバ84aおよび第1外被半体83Aを取り扱いやすくするため、第2外被半体83Bの一部または全部を切除することもできる。
【0048】
図21および図22に示すように、第1外被半体83Aを、本体保持部5の主部14上に配置する。分岐光ファイバ84aは、分岐部16を経て保護チューブ70に挿通させる。
図12に示すように、第1外被半体83Aは、固定具28を用いて固定橋部13に固定することが好ましい。
図22に示すように、保護パイプ4、4で第1外被半体83Aを覆うとともに、分岐具本体2を外装体3に収容する。
分岐光ファイバ84aの先端を、融着接続などにより光ファイバ71に接続する。
【0049】
図示例では、分岐具本体2および外装体3の一方および他方側にそれぞれ保護パイプ4を設けたが、本発明はこれに限らず、十分な長さの分岐光ファイバが確保できれば、分岐具本体2および外装体3の一方側にのみ保護パイプ4を設けてもよい。
なお、図3等では、バンド状の固定具28が例示されているが、ケーブル本体62(または第1外被半体83A)を分岐具本体2に固定する手段は特に限定されず、例えば保持片、係止爪、クリップ部などによってケーブル本体62(または第1外被半体83A)を分岐具本体2に固定することができる。
また、図示例では、固定具28が固定橋部13に締結されるが(図11、図12参照)、固定具28が固定される構造は固定橋部13に限定されない。例えば台部12からX方向に延出した舌状の固定片(被固定部)に固定具28を締結固定する構造も可能である。
分岐具本体2は、台部12および固定橋部13が形成されていない構造も可能である。この構造の分岐具本体2を採用する場合には、例えばケーブル本体62(または第1外被半体83A)と主部14にバンド状の固定具28を一括して巻きつけて締結することによってケーブル本体62を分岐具本体2に固定できる。また、分岐具本体2には、先端延出部15が形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1・・・光ファイバケーブル用分岐具、2・・・分岐具本体、3・・・外装体、4・・・保護パイプ、5・・・本体保持部、6・・・分岐光ファイバ導出部、11・・・トレイ部、13・・・固定橋部(被固定部)、15・・・先端延出部、21・・・主筒部、22・・・分岐筒部、23・・・第1分割体、24・・・第2分割体、28・・・固定具、60・・・分岐部、61、81・・・光ファイバケーブル、62・・・ケーブル本体、62d・・・露出部分(ケーブル本体の露出範囲)、64、84・・・光ファイバ、64a、84a・・・分岐光ファイバ、83A・・・第1外被半体(ケーブル本体の露出範囲)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル本体と、これに沿う複数の光ファイバとを有する光ファイバケーブルから、前記光ファイバの少なくとも1つが分岐光ファイバとして引き出される分岐部に設けられる光ファイバケーブル用分岐具であって、
前記光ファイバを取り出し可能に露出した範囲の前記ケーブル本体の一部を保持するとともに前記分岐光ファイバを導く分岐具本体と、
前記分岐具本体を収容する外装体と、
前記露出した範囲のうち少なくとも前記外装体に収容されていない部分の前記ケーブル本体を覆う保護パイプと、を備え、
前記分岐具本体は、前記ケーブル本体を保持する本体保持部と、前記分岐光ファイバを前記ケーブル本体の延在方向とは異なる方向に導く分岐光ファイバ導出部とを有し、
前記外装体は、前記本体保持部に保持された前記ケーブル本体が挿通する一対のケーブル本体挿通口と、前記分岐光ファイバ導出部を経た前記分岐光ファイバが挿通する分岐光ファイバ挿通口を有することを特徴とする光ファイバケーブル用分岐具。
【請求項2】
前記外装体は、前記分岐具本体の一方の面側に設けられる第1分割体と、前記分岐具本体の他方の面側に前記第1分割体に対向して設けられる第2分割体とからなる分割構造体であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル用分岐具。
【請求項3】
前記外装体は、前記ケーブル本体が挿通する主筒部と、前記主筒部の長さ方向中間部から外方に突出する分岐筒部とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバケーブル用分岐具。
【請求項4】
前記本体支持部は、固定具を締結することにより前記ケーブル本体を前記本体支持部に固定可能な被固定部を有することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の光ファイバケーブル用分岐具。
【請求項5】
前記本体支持部の両端部は、前記保護パイプの端部に挿入可能であることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の光ファイバケーブル用分岐具。
【請求項6】
分岐具本体は、概略トレイ状に形成され、開放面側に前記ケーブル本体を保持可能であることを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の光ファイバケーブル用分岐具。
【請求項7】
ケーブル本体と、これに沿う複数の光ファイバとを有する光ファイバケーブルから、前記光ファイバの少なくとも1つを分岐光ファイバとして引き出して、光ファイバケーブル用分岐具を用いて分岐する光ファイバケーブルの分岐方法であって、
前記光ファイバケーブル用分岐具は、前記光ファイバを取り出し可能に露出した範囲の前記ケーブル本体の一部を保持するとともに前記分岐光ファイバを導く分岐具本体と、前記分岐具本体を収容する外装体と、前記露出した範囲のうち少なくとも前記外装体に収容されていない部分の前記ケーブル本体を覆う保護パイプと、を備え、
前記分岐具本体は、前記ケーブル本体を保持する本体保持部と、前記分岐光ファイバを前記ケーブル本体の延在方向とは異なる方向に導く分岐光ファイバ導出部とを有し、
前記外装体は、前記本体保持部に保持された前記ケーブル本体が挿通する一対のケーブル本体挿通口と、前記分岐光ファイバ導出部を経た前記分岐光ファイバが挿通する分岐光ファイバ挿通口とを有し、
前記光ファイバケーブルの所定の長さ範囲において、前記光ファイバが取り出し可能となるように前記ケーブル本体の一部を露出させ、
前記分岐具本体の本体保持部に、前記露出した前記ケーブル本体の一部を保持させるとともに、前記分岐光ファイバ導出部によって前記分岐光ファイバを導き、
前記分岐具本体を、前記外装体内に収容するとともに、前記露出した範囲のうち少なくとも前記外装体に収容されていない部分の前記ケーブル本体を保護パイプで覆うことを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−97062(P2013−97062A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237793(P2011−237793)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】