説明

光ファイバジャイロの信号処理方法

【目的】 本発明は光ファイバジャイロの信号処理方法に関し、特に、ダイナミックレンジを従来の約2倍とし、分解能の向上、センシングコイルの短尺・短径化を達成することを特徴とする。
【構成】 本発明による光ファイバジャイロの信号処理方法は、光信号の奇数次成分に同期したsin成分(A)の出力を、偶数次成分に同期したcos成分(B)の出力を用いて演算処理することにより、光信号のダイナミックレンジを拡大する構成である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光ファイバジャイロの信号処理方法に関し、特に、ダイナミックレンジを従来の約2倍とし、分解能の向上、センシングコイルの短尺・短径化を達成するための新規な改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、用いられていたこの種の光ファイバジャイロとしては、例えば、特開平2−213713号公報に開示されている構成を挙げることができ、センシングコイルにより光の周知のサニャック効果を利用して位相変調方式により角速度を計測していた。すなわち、位相変調による干渉位相差のsin成分に比例した出力を取り出してジャイロの出力としているが、この出力は周期関数であるため、利用できるのは、干渉位相差が−π/2〜+π/2までであった。
【0003】すなわち、位相変調方式光ファイバジャイロでは、光学系での出力は以下の通りとなる。
Δθ=(4πla/cλ)*Ω(Δθ:干渉位相差、Ω:入力角速度、l:コイル長、a:コイル半径、c:光源、λ:波長)
P=P0・k・(k0+k1cosωmt+sinΔθ−k2cos2ωmt・cosΔθ +k3cos3ωmt・sinΔθ−k4cos4ωmt・cosΔθ +・・・・・・・・
但し、P0=入射光、k,k0〜k4=比例定数、ωm:変調角周波数である。従来は、基本波成分を同期検波し出力することにより、干渉位相差のsin成分に比例した出力を得ていた。しかし、sin成分は周期関数であるため、光ファイバジャイロとして使用できる位相差は−π/2〜π/2までであった(図4参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の光ファイバジャイロは以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。すなわち、光ファイバジャイロとして使用できる位相差は、−π/2〜+π/2までであるため、分解能の向上、センシングコイルの短尺・短径化等を行うことはできず、安価で小型の構成を得ることは不可能であった。
【0005】本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、ダイナミックレンジを従来の約2倍とし、分解能の向上、センシングコイルの短尺・短径化を達成するようにした光ファイバジャイロの信号処理方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による光ファイバジャイロの信号処理方法は、センシングコイルに接続された位相変調器を用い、位相変調により得られる光信号を用いて角速度を検出するようにした光ファイバジャイロにおいて、前記光信号の奇数次成分に同期したsin成分の出力を、偶数次成分に同期したcos成分の出力を用いて演算処理することにより、前記光信号のダイナミックレンジを拡大するようにした方法である。
【0007】
【作用】本発明による光ファイバジャイロの信号処理方法において、図4に示す位相変調方式のsin成分とcos成分の各々の出力状態を利用し、各々π/2周期毎分割して極性を表すと、−π〜+πまでが1つの組合わせとなる。ここで、cos成分の信号Bの極性判別を行い、この信号Bを用いてsin成分の信号Aを演算すると、図3で示すように、−π〜+πまでが位相差に対して1対1で対応するようになり、その結果、最大検出角速度が従来の2倍となり、ダイナミックレンジを大幅に拡大することができる。
【0008】
【実施例】以下、図面と共に本発明による光ファイバジャイロの信号処理方法の好適な実施例について詳細に説明する。図1において符号1で示されるものは位相変調方式の光ファイバジャイロ1Aに設けられた光ファイバよりなるセンシングコイルであり、このセンシングコイル1の各端部1a,1bのうち、一方の端部1bには位相変調器2が設けられている。
【0009】前記各端部1a,1bは、第1カプラ2、ポラライザ3及び第2カプラ4を介してレーザ光の光源5に接続されており、この第2カプラ4には検出器6が接続されていると共に、以上の構成により光学系7を構成している。
【0010】前記光源5はこの光源5を駆動するための第1ドライバ8に接続されており、前記検出器6からの検出信号6aは検波回路9に入力され、この検波回路9からの検波出力9aは演算回路10及び前記ドライバ8に入力されている。
【0011】次に、符号11で示されるものは発振器であり、この発振器11からの発振出力11aは第2ドライバ12に入力され、所定の周波数による変調信号12aが前記位相変調器2に入力されている。
【0012】前記発振器11からの発振出力は同期検波信号11bとして前記検波回路9に入力されていると共に、前述の各ドライバ8,12、発振器11、検波回路9及び演算回路10により電気系13を構成している。
【0013】次に、光ファイバジャイロ1Aの信号処理方法について述べる。まず、検出器6で光信号から電気信号に変換して得られた検出信号6aは、検波回路9により検波され、この検波出力9aは、第1、第2ドライバ8,12に入力されて光源5及び位相変調器2の制御用に帰還されていると共に、かつ、演算回路10に入力されて、sin成分を直線変換する等の補正を受けて出力10aが得られる。
【0014】前述の演算回路10に入力された検波出力9aは、図2で示すような演算処理が行われる。すなわち、前記検波出力9aを構成する信号A、BはA=奇数次成分に同期したsinΔθ成分の信号であり、BはB=偶数次成分に同期したcosΔθ成分の信号である。この各信号A,Bは、図4に示すような極性を示しているため、各々、π/2周期毎分割して極性を表すと、−π〜+πまでが1つの組合わせとなっている。ここで、各信号A,Bのうち、cos成分の信号Bの極性判別(第1ステップ50)を行い、この信号BがB>0の場合、sin成分の信号Aを演算(第2ステップ51)、A=−A+2・k・SGN(A)、但し、SGN(A)=信号Aの極性判別、k=定数(信号Aの振幅値、設計により決定される)、することにより補正された信号52を得ることができ、図3で示すように、−π〜+πまでが位相差に対して1対1で対応するようになり、その結果、最大検出角速度が従来の2倍に拡大され、検出のダイナミックレンジが従来の2倍となることが可能となった。
【0015】
【発明の効果】本発明による光ファイバジャイロの信号処理方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、位相差検出のダイナミックレンジが従来の2倍確保できるようになるため、従来と同一の光学感度をもつ場合には、検出可能な最大角速度が従来の2倍の値となり、また、従来と同一な最大検出角速度に設定したとすると、分解能の向上及びセンシングコイルの短尺化、コイル半径の小型化等のメリットを得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光ファイバジャイロの信号処理方法に適用した光ファイバジャイロを示す構成図である。
【図2】図1の演算回路の演算を示すフロー図である。
【図3】本発明による検出のダイナミックレンジの特性図である。
【図4】従来の検出のダイナミックレンジの特性図である。
【符号の説明】
1 センシングコイル
2 位相変調器
A sin成分
B cos成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】 センシングコイル(1)に接続された位相変調器(2)を用い、位相変調により得られる光信号を用いて角速度を検出するようにした光ファイバジャイロにおいて、前記光信号の奇数次成分に同期したsin成分(A)の出力を、偶数次成分に同期したcos成分(B)の出力を用いて演算処理することにより、前記光信号のダイナミックレンジを拡大することを特徴とする光ファイバジャイロの信号処理方法。

【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図1】
image rotate


【図4】
image rotate