説明

光ファイババンドル

【課題】光ファイババンドルにおいて高い耐熱性を得る。
【解決手段】光ファイババンドル100は、複数の光ファイバ111の一端部を含む複数の長尺材111が束ねられて構成されたバンドル部120を備える。バンドル部120は、複数の長尺材111が、各長尺材111が隣接長尺材111に外周接触部121において長さ方向に沿って相互に融着することにより一体化していると共に、各長尺材111の外周非接触部122で囲われた部分において空隙123が長さ方向に沿って延びるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光ファイバの一端部を含む複数の長尺材が束ねられて構成されたバンドル部を備えた光ファイババンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光ファイバの一端部が束ねられて構成されたバンドル部を備えた光ファイババンドルが光伝送デバイスとして実用化されている。例えば、光ファイババンドルをレーザーガイドとして用いた場合、複数のレーザー光源からのレーザ光をまとめた出力を得ることができる。
【0003】
特許文献1には、多数本の光ファイバを整列させ、これらの光ファイバの端部を、所定の耐熱性及び透明性を有する耐熱透明接着剤によって固定部材内に固定した光ファイババンドルのライトガイドが開示されている。
【0004】
特許文献2には、固形シリカゾルの結合剤層によって取り巻かれた多数の光ファイバからなる光ファイババンドルが開示されている。
【0005】
特許文献3には、多数の光ファイバ先端部をスリーブ内に詰め込み、このスリーブの先端部に割スリーブを被せ、この割スリーブを加熱して端末部全体を均一に加熱することにより、多数の光ファイバ先端部とスリーブとを溶融一体化した光ファイババンドルが開示されている。
【0006】
特許文献4には、複数本の光ファイバをスリーブ内に挿入し、スリーブの出射端面から長手方向に沿った一定長さの領域で、光ファイバ間に、金属またはガラスからなる耐熱性部材が充填された光ファイババンドルが開示されている。
【0007】
特許文献5には、整列部材に複数本の光ファイバを挿入し、加熱して一体化させた光ファイババンドルが開示されている。
【0008】
特許文献6には、複数のプラスチック光ファイバの外側にナイロン樹脂の保護層が設けられた光ファイババンドルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2705830号公報
【特許文献2】特許第2780143号公報
【特許文献3】特許第3819054号公報
【特許文献4】特開2008−83690号公報
【特許文献5】特開2008−277582号公報
【特許文献6】特開2010−32641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、大口径の光ファイバを用いた光ファイババンドルを、複数のレーザー光源からのレーザ光をまとめて高パワーの出力を得るためのレーザーガイドとして使用する場合、光ファイババンドルには高い耐熱性が要求される。
【0011】
本発明の課題は、光ファイババンドルにおいて高い耐熱性を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数の光ファイバの一端部を含む複数の長尺材が束ねられて構成されたバンドル部を備えた光ファイババンドルであって、
上記バンドル部は、上記複数の長尺材が、各長尺材が隣接長尺材に外周接触部において長さ方向に沿って相互に融着することにより一体化していると共に、各長尺材の外周非接触部で囲われた部分において空隙が長さ方向に沿って延びるように形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バンドル部において、複数の光ファイバの一端部を含む複数の長尺材が一体化していると共に、各長尺材の外周非接触部で囲われた部分において空隙が長さ方向に沿って延びるように形成されているので、その空隙に空気や水等の冷却媒体を配することによりバンドル部の放熱性を高めることができ、その結果、高い耐熱性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る光ファイババンドルの斜視図である。
【図2】光ファイバ心線の斜視図である。
【図3】バンドル部の端面の正面図である。
【図4】バンドル部端面の正面部分拡大図である。
【図5】(a)〜(d)は光ファイバの束のパイプ材への収容態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は本実施形態に係る光ファイババンドル100を示す。本実施形態の光ファイババンドル100は、例えば、複数のレーザー光源からのレーザ光をまとめて高パワーの出力を得るためのレーザーガイドとして使用されるものである。
【0017】
本実施形態の光ファイババンドル100は複数の光ファイバ心線110を備えている。複数の光ファイバ心線110は、同一の光ファイバ心線110で構成されていてもよく、また、異なる光ファイバ心線110が混在して構成されていてもよい。
【0018】
複数の光ファイバ心線110のそれぞれは、図2に示すように、光ファイバ111が被覆層112で被覆された構成を有する。
【0019】
光ファイバ111は、ファイバ中心に設けられた相対的に高屈折率な円形断面のコア111aとそれを被覆するように同心状に設けられた相対的に低屈折率な円形断面のクラッド111bとを有する。光ファイバ111は、クラッド111bを被覆するように設けられたサポート層をさらに有していてもよい。光ファイバ111のファイバ径は例えば125〜1500μmである。
【0020】
コア111aは、石英で形成されていることが好ましい。石英製のコア111aは、屈折率を高めるゲルマニウム(Ge)等のドーパントがドープされた石英であってもよく、また、ドーパントがドープされていないノンドープ石英であってもよい。コア111aの軟化温度は例えば1600〜1700℃である。コア径は例えば50〜1200μmである。
【0021】
クラッド111bは、石英で形成されていることが好ましい。石英製のクラッド111bは、ドーパントがドープされていないノンドープ石英であってもよく、また、屈折率を低めるフッ素(F)やボロン(B)等のドーパントがドープされた石英であってもよい。クラッド111bの軟化温度は例えば1300〜1400℃であるが、後述のように光ファイバ111のクラッド111b間を加熱融着させてバンドル部120を形成する際にコア111aが変形するのを抑制する観点から、コア111aの軟化温度よりも低いことが好ましい。クラッド111bは、相対的に低屈折率であって、コア111aよりも屈折率が低い。クラッド111bの厚さは例えば3〜60μmである。
【0022】
被覆層112は、単一層で構成されていてもよく、また、例えば、内側からシリコン樹脂層及びポリアミド樹脂層が順に積層された二重層となったもののように複数層で構成されていてもよい。
【0023】
本実施形態に係る光ファイババンドル100は、複数の光ファイバ心線110の一方の先端部分において、各々、被覆層112が剥がされた複数の光ファイバ111の一端部(長尺材)が束ねられてバンドル部120が構成されている。
【0024】
図3はバンドル部120の端面を示す。
【0025】
バンドル部120は、それを構成する光ファイバ111の一端部の本数が例えば2〜49本である。なお、バンドル部120を構成する長尺材は、本実施形態に係る光ファイババンドル100のように複数の光ファイバ111の一端部のみで構成されていてもよいが、複数の光ファイバ111の一端部に加えて石英製のキャピラリや中空パイプやロッド材を含んでいてもよい。
【0026】
バンドル部120は、図4に示すように、複数の光ファイバ111の一端部が、各光ファイバ111が隣接光ファイバ111に外周接触部121において長さ方向に沿って相互に融着することにより一体化していると共に、各光ファイバ111の外周非接触部122で囲われた部分において断面略三角形の空隙123が長さ方向に沿って延びるように形成されている。また、各光ファイバ111の外周非接触部122とパイプ材130の内壁とで囲われた部分においても空隙124が長さ方向に沿って延びるように形成されている。
【0027】
一般に、複数の光ファイバの一端部を束ねて接着剤で固定することによりバンドル部を構成した光ファイババンドルでは、耐熱性が要求される場合、接着剤として耐熱性の高いものが用いられる。しかしながら、エポキシ等の有機系接着剤では、耐熱性がせいぜい300℃程度であり、また、短波長の光に対して焼損や不要物質を生成するという不具合がある。また、アルミナ等の無機系接着剤では、耐熱性は十分であるとしても、バンドル部の端面の研磨時に接着剤の剥離片により光ファイバ端面を加傷するという不具合がある。これに対し、本実施形態に係る光ファイババンドル100では、バンドル部120において、複数の光ファイバ111の一端部が一体化していると共に、各光ファイバ111の外周非接触部122で囲われた部分及び各光ファイバ111の外周非接触部122とパイプ材130の内壁とで囲われた部分において空隙123,124が長さ方向に沿って延びるように形成されているので、その空隙123,124に空気や水等の冷却媒体を配することによりバンドル部120の放熱性を高めることができ、なおかつ照射ターゲットの冷却・防塵に寄与すると共に、バンドル部120の端面へのデブリ付着を防止でき、その結果、高い耐熱性を得ることができる。また、バンドル部120に接着剤を用いていないので、伝送する短波長のレーザー光により焼損や不要物質の生成が生じることがなく、高い耐光性をも得ることができる。
【0028】
バンドル部120は、複数の光ファイバ111の一端部が最密状に束ねられて一体化している。これにより、コア111aの高い占積率を得ることができる。バンドル部120の端面におけるコア111aの占積率は例えば65〜78%であり、また、空隙123,124の占積率は例えば22〜35%である。なお、バンドル部120は、複数の光ファイバ111の一端部が無秩序に束ねられて一体化していてもよい。
【0029】
バンドル部120は、複数の光ファイバ111の一端部の束を内接状態で収容するパイプ材130を有する。これにより、光ファイバ111の一端部を加熱して一体化させる際のコア111aの変形防止を含む高い形態保持性を得ることができ、伝送するレーザ光の品質劣化を抑制することができる。特に、複数の光ファイバ111の一端部を断面同心円を形成するように最密状に複数層に束ねたものをパイプ材130に収容する場合、最外層の光ファイバ111がいずれもパイプ材130の内壁に接触するように設計することにより、パイプ材130から複数の光ファイバ111の一端部の束に対して均等な力が作用することとなり、より高い形態保持性を得ることができる。具体的には、例えば、図5(a)に示すように、7本の光ファイバ111の一端部を最密状に束ねたものの場合には、それをそのままパイプ材130に収容すればよい。図5(b)に示すように、19本の光ファイバ111の一端部を最密状に束ねたものの場合には、パイプ材130の内壁に接触しない最外層の6本(真ん中の図の仮想線で描いたもの)を除いた13本をパイプ材130に収容すればよい。図5(c)に示すように、37本の光ファイバ111の一端部を最密状に束ねたものの場合には、パイプ材130の内壁に接触しない最外層の6本(真ん中の図の仮想線で描いたもの)を除いた31本をパイプ材130に収容すればよい。図5(d)に示すように、61本の光ファイバ111の一端部を最密状に束ねたものの場合には、パイプ材130の内壁に接触しない最外層の12本(真ん中の図の仮想線で描いたもの)を除いた49本をパイプ材130に収容すればよい。なお、バンドル部120は、パイプ材130を有さず、複数の光ファイバ111が束ねられてそれらが一体化した構成であってもよい。
【0030】
パイプ材130としては、例えば、石英パイプ、金属パイプ、セラミックパイプ等が挙げられるが、これらのうち石英パイプが好ましい。パイプ材130は、光ファイバ111と同一の材質で形成されていることが好ましい。パイプ材130は、例えば、長さが5〜100mm、外径が1.8〜15mm、及び内径が1.3〜14mmである。パイプ材130の肉厚は、パイプ材130に収容した光ファイバ111の一端部を加熱して一体化させる際の光ファイバ111の変形を抑制する観点から薄いことが好ましく、具体的には0.2〜1mmであることが好ましい。
【0031】
パイプ材130は、複数の光ファイバ111の一端部を束ねて外部から加熱する際に早期に軟化溶融して光ファイバ111間に流入するのを防止する観点から、複数の光ファイバ111のそれぞれの外周部よりも高温で軟化する材料で形成されていることが好ましい。従って、例えば、光ファイバ111において、ドーパントがドープされていないノンドープ石英でコア111aが形成され、F(フッ素)やB(ボロン)等の屈折率を下げるドーパントがドープされた石英でクラッド111bが形成されているような場合、パイプ材130は、クラッド111bよりも高温で軟化するノンドープ石英で形成されていることが好ましい。
【0032】
本実施形態に係る光ファイババンドル100は、複数の光ファイバ心線110の一方の先端部分において被覆層112を剥がし、複数の光ファイバ111の一端部をパイプ材130に挿入して束ねた状態でパイプ材130の外側から例えばトーチや炭酸レーザー等によって例えば1200〜2000℃に加熱し、それによって複数の光ファイバ111の一端部を一体化させてバンドル部120を形成し、そして、その部分を劈開して端面を形成すると共に、その端面を研磨することにより製造することができる。このとき、パイプ材130内を減圧、或いは、パイプ材130外を加圧することにより、パイプ材130を収縮させてもよい。なお、バンドル部120がパイプ材130を有さない光ファイババンドル100の場合、複数の光ファイバ心線110の一方の先端部分において被覆層112を剥がし、複数の光ファイバ111の一端部を束ねた状態で加熱し、それによってそれらを一体化させてバンドル部120を形成し、そして、その部分を劈開して端面を形成すると共にその端面を研磨することにより製造することができる。
【0033】
以上の本実施形態の光ファイババンドル100は、例えば、複数の光ファイバ心線110のそれぞれの他端部に半導体レーザー等のレーザー光源が接続され、複数のレーザー光源からのレーザ光をバンドル部120でまとめて、その端面から高パワーの出力を得るレーザーガイドとして使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明した通り、本発明は、複数の光ファイバの一端部を含む複数の長尺材が束ねられて構成されたバンドル部を備えた光ファイババンドルについて有用である。
【符号の説明】
【0035】
100 光ファイババンドル
110 光ファイバ心線
111 光ファイバ
111a コア
111b クラッド
112 被覆層
120 バンドル部
121 外周接触部
122 外周非接触部
123,124 空隙
130 パイプ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバの一端部を含む複数の長尺材が束ねられて構成されたバンドル部を備えた光ファイババンドルであって、
上記バンドル部は、上記複数の長尺材が、各長尺材が隣接長尺材に外周接触部において長さ方向に沿って相互に融着することにより一体化していると共に、各長尺材の外周非接触部で囲われた部分において空隙が長さ方向に沿って延びるように形成されている光ファイババンドル。
【請求項2】
請求項1に記載された光ファイババンドルにおいて、
上記バンドル部は、上記複数の長尺材の束を内接状態で収容するパイプ材を有する光ファイババンドル。
【請求項3】
請求項2に記載された光ファイババンドルにおいて、
上記パイプ材は、上記複数の長尺材のそれぞれの外周部よりも高温で軟化する材料で形成されている光ファイババンドル。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された光ファイババンドルにおいて、
上記複数の長尺材のうち上記パイプ材に接触する長尺材が該パイプ材に長さ方向に沿って融着している光ファイババンドル。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載された光ファイババンドルにおいて、
上記複数の長尺材が断面同心円を形成するように最密状に複数層に束ねられ、そのうち最外層の長尺材がいずれも上記パイプ材の内壁に接触している光ファイババンドル。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかに記載された光ファイババンドルにおいて、
上記パイプ材が石英パイプである光ファイババンドル。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された光ファイババンドルにおいて、
上記複数の長尺材が複数の光ファイバの一端部のみで構成されている光ファイババンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−227249(P2011−227249A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96034(P2010−96034)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】