説明

光ファイバ伝送特性測定装置

【課題】 必要に応じて選択的に光信号源機能を動作不能状態に設定できるとともに、所定の条件に基づいて動作不能状態を一時的に解除できる光ファイバ伝送特性測定装置を提供すること。
【解決手段】 光ファイバに光信号を出力する光信号源機能と光ファイバを介して入力される光信号の強度を測定する光電力測定機能を有する光ファイバ伝送特性測定装置において、選択的に前記光信号源機能を動作不能状態に設定する機能制限手段と、この機能制限手段により設定される前記光信号源機能の動作不能状態を一時的に解除する一時解除手段、
を設けたことを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ伝送特性測定装置に関し、詳しくは、測定機能の管理に関するものである。
【0002】
近年のFTTH(Fiber To The Home)化による一般家庭までの光ファイバ網の敷設拡大に伴い、光ファイバの伝送特性を測定する光ファイバ伝送特性測定装置についても、携帯可能な小型でありながら測定機能として比較的長距離の基幹系光ファイバ網から比較的短距離のFTTH系光ファイバ網まで高精度の距離測定分解能や光伝送に影響を与えない活線測定機能などが求められるとともに、測定作業者も熟練者から初心者まで拡大しつつある。
【0003】
図6は、従来の光ファイバ伝送特性測定装置の概略構成例を示すブロック図である。図6において、測定装置全体は、大きく操作制御部10とシーケンス制御部20と測定部30とで構成されている。
【0004】
操作制御部10は、測定作業を行うオペレータが各種の測定条件などを設定入力するためのスイッチやソフトキーなどで構成されている。
【0005】
シーケンス制御部20は、操作制御部10により設定入力される測定条件などに基づいて、測定部30が測定目的に応じた所定の動作をするように、各部を制御する。
【0006】
測定部30は、OTDR(Optical Time Domain Reflectometry)測定が行えるように構成されている。すなわち、クロック発生部31は、パルス発生器32およびA/D変換器36にタイミング信号としてクロックを出力する。レーザダイオード33は、パルス発生器32の出力パルスにより駆動されて所定のパルス光を発光し、このパルス光は光カプラ34およびポートP1を介して被測定光ファイバFBの一端に入射される。
【0007】
光ファイバFBの内部ではレイリー散乱が発生し、その一部はパルス光の進行とは逆の方向に進む後方散乱光となり、光カプラ34に戻る。また、接続点で発生するフレネル反射光も光カプラ32に戻る。
【0008】
これら光カプラ34に戻った反射光は受光部35に入射されて電気信号に変換され、A/D変換器36に入力される。A/D変換器36は、受光部35の出力信号をクロック発生部31の出力パルスのタイミングでデジタル信号に変換する。なお、反射光の信号レベルは非常に微弱なため、複数回の測定を繰り返して平均化部37で測定値の平均を求めてノイズを低減する。これらの測定結果は、表示部38に表示される。
【0009】
このように構成される測定部30によれば、光ファイバFBの接続損失、反射減衰量、反射地点までの距離などを測定できる。
【0010】
また、図6の測定装置は、OTDR測定を行う一部の機能を利用することにより、光ファイバFBに光信号を出力する光信号源として用いたり、光ファイバFBを介して入力される光信号の強度を測定する光電力計としても用いることができる。
【0011】
光信号源として用いる場合には、OTDR測定と同様にポートP1に光ファイバFBを接続し、レーザダイオード33から出力されるパルス光を光カプラ34を介して光ファイバFBに供給する。
【0012】
光電力計として用いる場合には、ポートP2に光ファイバFBを接続し、光ファイバFBを介して入力される光信号が受光部35に直接与えられるようにする。
【0013】
非特許文献1には、製品化された光ファイバ伝送特性測定装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】「光ファイバの敷設・保守用新型OTDR AQ7260シリーズ」、 横河技報、横河電機株式会社、2005年4月20日、 Vol.49 No.2、p.55〜58
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、光ファイバの測定現場によっては、発光機能を有する測定装置を、発光出力可能な状態で持ち込むことを禁止している場合がある。そこで、従来の測定装置では、たとえば光信号源の光信号が出力されるポートP1の開口部に鍵付きの蓋を取り付けて開口部を蓋で塞ぎ、万一光信号源が誤って駆動されても光信号源の光信号が外部に出力されないように対策を施している。
【0016】
しかし、光信号が出力されるポートP1の開口部に鍵付きの蓋を取り付けて開口部を蓋で塞ぐという対策は、部品点数が増加するとともに、ポートP1周辺の構造が複雑になるという問題がある。
【0017】
本発明は、このような従来の問題点に着目したものであり、その目的は、必要に応じて選択的に光信号源機能を動作不能状態に設定できるとともに、所定の条件に基づいて動作不能状態を一時的に解除できる光ファイバ伝送特性測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このような課題を達成する請求項1の発明は、
光ファイバに光信号を出力する光信号源機能と光ファイバを介して入力される光信号の強度を測定する光電力測定機能を有する光ファイバ伝送特性測定装置において、
選択的に前記光信号源機能を動作不能状態に設定する機能制限手段と、
この機能制限手段により設定される前記光信号源機能の動作不能状態を一時的に解除する一時解除手段、
を設けたことを特徴とする。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光ファイバ伝送特性測定装置において、
前記機能制限手段による機能制限は、あらかじめ登録されている管理権限に基づき設定されることを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の光ファイバ伝送特性測定装置において、
前記一時解除手段は、あらかじめ登録されている認証情報が入力されることにより前記光信号源機能の動作不能状態を一時的に解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
これらにより、必要に応じて光ファイバ伝送特性測定装置における光信号源機能を選択的に動作不能状態に設定できるとともに、所定の条件に基づいてその動作不能状態を一時的に解除でき、光信号源機能を動作不能状態に設定して光信号源機能が発光出力可能な状態での持ち込み禁止領域への測定装置の持ち込みを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の動作の流れを説明するフローチャートである。
【図3】図1の動作の流れを説明するフローチャートである。
【図4】図1の動作の流れを説明するフローチャートである。
【図5】操作制限方法を選択設定する画面の具体例図である。
【図6】従来の光ファイバ伝送特性測定装置の概略構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について、図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、図6と共通する部分には同一の符号を付けている。図1と図6の差異は、図1において、操作制御部10には、機能制限設定部11と、一時解除部12と、認証部13が設けられていることである。
【0024】
機能制限設定部11は、必要に応じて、レーザダイオード33からのパルス光の出力機能を選択的に動作不能状態に制限する。この機能制限設定は、あらかじめ登録されている管理権限に基づいて行われる。この機能制限が設定されると、シーケンス制御部20はレーザダイオード33への電源供給を強制的にオフにする。
【0025】
このように光信号源機能を動作不能状態に設定することにより、光信号源機能が発光出力可能な状態での持ち込み禁止領域への光ファイバ伝送特性測定装置の持ち込みを実現できる。
【0026】
一時解除部12は、機能制限設定部11で設定されている光信号源機能の動作不能状態を一時的に解除する。この光信号源機能の動作不能状態の一時的解除は、あらかじめ登録されている認証情報が入力されることにより実行処理される。
【0027】
認証情報としては、機能制限を設定する管理権限を有する管理者により指定されたオペレータに固有の暗証コードや、指紋や静脈や虹彩などのオペレータに固有の生体情報を用いる。
【0028】
認証部13は、機能制限設定部11による機能制限設定のための管理権限を有する管理者の認証管理および一時解除部12における光信号源機能の動作不能状態の一時的解除を求めるオペレータの認証管理を行う。
【0029】
図2は、図1の装置全体の動作の流れを説明するタイミングチャートである。電源がオンされると、前回の電源オフ時に設定されていた情報が復元され(ステップS1)、操作制御部10からの操作入力を待機する操作待ち状態になる(ステップS2)。
【0030】
続いて設定情報変更の有無が判断される(ステップS3)。設定情報が変更されると設定情報の変更が実行されて(ステップS4)ステップS2の操作待ち状態に戻り、設定情報が変更されないと測定開始キーの操作の有無が判断される(ステップS5)。
【0031】
測定開始キーが操作されると測定処理が実行される(ステップS6)。
【0032】
一連の測定処理が終了すると、測定結果を表示部38に表示するための描画処理が実行され(ステップS7)、ステップS2の操作待ち状態に戻る。
【0033】
図3は図1の装置を光源として用いる場合の動作の流れを説明するタイミングチャートであり、管理権限に基づいて光源を発光させるための発光操作を任意に動作不能に制限設定できるように構成された例を示している。
【0034】
はじめに、操作待ち状態から、管理権限に基づく発光操作の制限設定変更の有無が判断される(ステップS1)。このとき、管理権限の認証を行うことでセキュリティレベルを高くできるが、管理権限を有する管理者が認証処理を煩わしいと判断する場合には省略してもよい。制限設定変更が行われると、設定情報の変更が実行されて(ステップS2)ステップS1に戻り、制限設定変更されないと発光開始キーの操作の有無が判断される(ステップS3)。
【0035】
発光開始キーが操作されると、発光操作の制限の有無が判断される(ステップS4)。発光操作の制限が設定されていると判断されると、オペレータに認証情報としてたとえばパスワードの入力を促すダイアログが表示される(ステップS5)。
【0036】
パスワードが入力されると、そのパスワードがあらかじめ登録されている認証情報と一致しているか否かが判断される(ステップS6)。
【0037】
入力されたパスワードがあらかじめ登録されている認証情報と一致した正しいものと判断されると、制限設定されている動作不能状態が一時的に解除されて発光処理が実行される(ステップS7)。なお、ステップS4において発光操作の制限が設定されていない場合には、ステップS5、6をスキップして直ちに発光処理が実行される。
【0038】
入力されたパスワードがあらかじめ登録されている認証情報と一致しない場合にはステップ1に戻り、正しいパスワードが入力されない限り発光処理は実行されず、発光操作を動作不能状態に維持するように機能する。なお、必要に応じてパスワードの試行回数を制限してもよい。
【0039】
図4も図1の装置を光源として用いる場合の動作の流れを説明するタイミングチャートであり、発光操作制限が常に有効に設定されている例を示している。
【0040】
操作待ち状態において、発光開始キーの操作の有無が判断される(ステップS1)。発光開始キーが操作されたと判断されると、認証情報としてたとえばパスワード入力を促すダイアログが表示される(ステップS2)。
【0041】
パスワードが入力されると、そのパスワードがあらかじめ登録されている認証情報と一致しているか否かが判断される(ステップS3)。
【0042】
入力されたパスワードがあらかじめ登録されている認証情報と一致した正しいものと判断されると、制限設定されている動作不能状態が一時的に解除されて発光処理が実行される(ステップS4)。
【0043】
入力されたパスワードがあらかじめ登録されている認証情報と一致しない場合には、図3と同様にステップ1に戻り、正しいパスワードが入力されない限り発光処理は実行されず、発光操作を動作不能状態に維持するように機能する。
【0044】
このように構成することにより、必要に応じて光ファイバ伝送特性測定装置における光信号源機能を選択的に動作不能状態に設定できるとともに、その動作不能状態を一時的に解除できることから、光信号源機能を動作不能状態に設定することにより、光信号源機能が発光出力可能な状態での持ち込み禁止領域への測定装置の持ち込みを実現できる。
【0045】
なお、上記のような認証情報による操作制限は、誤操作を防止できるという効果が得られるものの、オペレータの操作手順数を増やす問題も持っている。その解決案としては、以下に説明するように認証情報の入力を求めるタイミングをたとえば管理権限に基づき選択できるようにしてもよい。
【0046】
図5は、操作制限方法を選択設定する画面の具体例図である。図5の画面によれば、認証情報としての暗証番号の入力について、
a)常に入力を求める
b)電源投入後最初の1回だけ入力を求める
c)入力を行わない
を選択設定できる。
【0047】
a)常に暗証番号の入力を求めたいケース
レーザー発光のような人体にも影響があるような操作の場合には、操作実行の度に暗証番号の入力を求めるようにするのが望ましい。
【0048】
b)電源投入後最初の1回だけ入力を求める
たとえばハンディタイプの携帯型測定器において、オペレータが管理権限を持っていると確認できれば、以降の操作はその管理権限に基づいて利用していると考えてもよい。そのような場合には最初の1回のみ管理権限をチェックして、次回からは冗長なチェックは行わないようにすればよい。
【0049】
c)入力を行わない
製品の初期設定としては上記のようなa)、b)の制限を設けるが、ユーザーがそれらも煩わしいと感じる場合には管理権限に基づいてそれらの制限を解除して操作手順を簡略化できるようにする。
【0050】
以上説明したように、本発明によれば、必要に応じて選択的に光信号源機能を動作不能状態に設定できるとともに、所定の条件に基づいて動作不能状態を一時的に解除できる光ファイバ伝送特性測定装置を実現でき、発光機能を有する測定装置を発光出力可能な状態で持ち込むことを禁止している場合にも適切に対応して持ち込むことができる。
【符号の説明】
【0051】
10 操作制御部
11 機能制限設定部
12 一時解除部
13 認証部
20 シーケンス制御部
30 測定部
FB 光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバに光信号を出力する光信号源機能と光ファイバを介して入力される光信号の強度を測定する光電力測定機能を有する光ファイバ伝送特性測定装置において、
選択的に前記光信号源機能を動作不能状態に設定する機能制限手段と、
この機能制限手段により設定される前記光信号源機能の動作不能状態を一時的に解除する一時解除手段、
を設けたことを特徴とする光ファイバ伝送特性測定装置。
【請求項2】
前記機能制限手段による機能制限は、あらかじめ登録されている管理権限に基づき設定されることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ伝送特性測定装置。
【請求項3】
前記一時解除手段は、あらかじめ登録されている認証情報が入力されることにより前記光信号源機能の動作不能状態を一時的に解除することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ファイバ伝送特性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−2571(P2012−2571A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135975(P2010−135975)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【出願人】(596157780)横河メータ&インスツルメンツ株式会社 (43)
【Fターム(参考)】