光ファイバ切断装置及び光ファイバ切断方法
【課題】弛みの無い状態で光ファイバをクランプして切断することのできる光ファイバ切断装置を提供する。
【解決手段】光ファイバ1の2箇所をクランプした後、両クランプ5、6間に設けた切断刃4に該光ファイバ1を光ファイバ押付部材7で押し付けて切断する光ファイバ切断装置。この光ファイバ切断装置では、切断レバー14に取り付けた各アーム15、16の先端部に設けた上クランプ5B、6Bのうち、切断レバー14をベース11に接近する方向に倒した時に一方が他方より先行して下クランプ5Aに光ファイバ1を押し付けてクランプした後に、他方の上クランプ6Bで光ファイバ1を下クランプ6Aに押し付けてクランプするようにする。
【解決手段】光ファイバ1の2箇所をクランプした後、両クランプ5、6間に設けた切断刃4に該光ファイバ1を光ファイバ押付部材7で押し付けて切断する光ファイバ切断装置。この光ファイバ切断装置では、切断レバー14に取り付けた各アーム15、16の先端部に設けた上クランプ5B、6Bのうち、切断レバー14をベース11に接近する方向に倒した時に一方が他方より先行して下クランプ5Aに光ファイバ1を押し付けてクランプした後に、他方の上クランプ6Bで光ファイバ1を下クランプ6Aに押し付けてクランプするようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバをクランプした後に切断する光ファイバ切断装置及び光ファイバ切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば光ファイバを利用した家庭用の高速データ通信サービス(FTTH)が進められている。光ファイバの端面は、接続損失を低減させるために出来る限り切断面が、光ファイバ長手方向に対して直角であることが好ましい。光ファイバを切断する装置及び方法は、例えば特許文献1又は特許文献2等に開示されている。
【0003】
図12は、従来の光ファイバ切断装置を示している。この光ファイバ切断装置は、光ファイバ101をホルダ102で固定した後、バネ103で支持された切断刃104を挟んでその両側に配置された上下一対の第1クランプ105(105A、105B)と第2クランプ106(106A、106B)で光ファイバ101をクランプした後、マクラと称される光ファイバ押付部材107で該光ファイバ101を切断刃104に押し付けて切断するように構成されている。なお、フォルダ102で把持する部位は、ベアファイバである光ファイバ101を被覆した外被部分101Gである。
【0004】
この従来の光ファイバ切断装置では、切断刃104を挟んでその両側に配置された第1クランプ105と第2クランプ106で該光ファイバ101を同時に挟み込んでクランプするようになっている。そして、この光ファイバ切断装置では、両端をクランプした光ファイバ101を切断刃104に押し付けるように光ファイバ押付部材107を下降させることにより、前記光ファイバ101を切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−301142号公報
【特許文献2】特開2009−3407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、第1クランプ105と第2クランプ106にて光ファイバ101を同時にクランプすると、クランプ間で光ファイバ101が弛んでしまう。弛んだ状態とされた光ファイバ101を切断すると、該光ファイバ101をその長手方向と直角に切断することができなくなる。光ファイバ101の端面は、接続ロス(光の損失)の低減を抑えるために出来る限り光ファイバ長手方向に対して直角であることが望ましいが、直角にすることは難しい。
【0007】
そこで、本発明は、弛みの無い状態で光ファイバをクランプして切断することのできる光ファイバ切断装置及び光ファイバ切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、光ファイバの2箇所をクランプした後、両クランプ間に設けた切断刃に該光ファイバを光ファイバ押付部材で押し付けて切断する光ファイバ切断装置であって、ベースに所定間隔を置いて固定された2つの下クランプ及びこれら下クランプ間に設けられた切断刃と、前記ベースに対して回動軸を中心として回動自在に取り付けられた切断レバーと、前記切断レバーに設けられ、該切断レバーを前記ベースに接近する方向に倒すことで前記切断刃に前記光ファイバを押し付ける光ファイバ押付部材と、前記切断レバーに取り付けられた各アームにそれぞれ固定され、該切断レバーを前記ベースに接近する方向に倒した時に一方が他方より先行して前記下クランプに前記光ファイバを押し付けてクランプさせる2つの上クランプと、からなることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光ファイバ切断装置であって、前記2つのアームは、前記切断レバーに対して基端部を回動自在に取り付けると共に、該切断レバーに設けられたストッパーに接触して前記2つの上クランプの高さ位置を異なるようにして支持されたことを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光ファイバ切断装置であって、前記2つのアームの先端側部と前記切断レバーとの間に弾性部材を設け、該弾性部材の付勢力で前記上クランプを前記下クランプに押し付けることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の光ファイバ切断装置であって、前記光ファイバを先行してクランプする一方の下クランプ及び上クランプは、切断する光ファイバを固定手段で固定した側に設けたことを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、光ファイバの2箇所をクランプした後、両クランプ間に設けた切断刃に該光ファイバを光ファイバ押付部材で押し付けて切断する光ファイバ切断方法において、前記光ファイバを一方のクランプで他方のクランプに先行してクランプさせた後、他方のクランプで該光ファイバをクランプしてから切断することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光ファイバ切断装置によれば、切断刃を挟んでその両側に設けられた2つの上クランプのうち、一方が他方より先行して下クランプに光ファイバを押し付けてクランプした後に他方の上クランプが遅れて光ファイバをクランプすることになるため、両クランプで同時に光ファイバをクランプした場合と異なり、該光ファイバの弛みを無くすことができる。したがって、弛みの無い状態で光ファイバを切断することができ、その切断面を光ファイバ長手方向と直角とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明を適用した光ファイバ切断方法で光ファイバを切断する工程を説明するための簡略化した工程図である。
【図2】図2は本実施形態の光ファイバ切断装置の全体を示す斜視図である。
【図3】図3は図2に示す光ファイバ切断装置のA−A断面図である。
【図4】図4は図2に示す光ファイバ切断装置のB−B断面図である。
【図5】図5は図2に示す光ファイバ切断装置のC−C断面図である。
【図6】図6は本実施形態の光ファイバ断装置で光ファイバを切断する工程を示す斜視図であり、光ファイバクランプ捻り機構部のレバーを起立させて光ファイバをアンクランプした状態を示す。
【図7】図7は本実施形態の光ファイバ切断装置で光ファイバを切断する工程を示す斜視図であり、光ファイバクランプ捻り機構部のレバーを水平として光ファイバをクランプした状態を示す。
【図8】図8は本実施形態の光ファイバ切断装置で光ファイバを切断する工程を示す斜視図であり、光ファイバクランプ捻り機構部のレバーを跳ね上げて光ファイバを捻った状態を示す。
【図9】図9は本実施形態の光ファイバ切断装置で光ファイバを切断する工程を示す斜視図であり、光ファイバを捻った後に光ファイバ切断機構部の切断レバーを倒して光ファイバを切断した状態を示す。
【図10】図10は本実施形態装置と従来装置で光ファイバを切断した切断面の切断角度とその割合を示す実験データを示した図である。
【図11】図11は本実施形態装置と従来装置で光ファイバを切断した場合の接続ロスとその割合を示す実験データを示した図である。
【図12】図12は従来の光ファイバ切断装置で光ファイバを切断する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
[光ファイバ切断方法]
先ず、光ファイバを切断する方法について図1を参照して説明する。本発明の光ファイバ切断方法は、光ファイバ1を固定手段であるホルダ2で固定した後、バネ3で支持された切断刃4を挟んでその両側に配置された一方のクランプ5(5A、5B)でクランプした後(図1(A)参照)、他方のクランプ6(6A、6B)で光ファイバ1をクランプしてから(図1(B)参照)、マクラと称される光ファイバ押付部材7を押し下げて前記光ファイバ1を切断刃4に押し付けることにより切断する。なお、フォルダ2で把持する部位は、ベアファイバである光ファイバ1を被覆した外被部分1Gである。
【0017】
つまり、本発明の方法では、光ファイバ1を一方のクランプ5で他方のクランプ6に先行してクランプさせた後に、続いて他方のクランプ6で光ファイバ1をクランプさせてから切断を行うようにする。これら2つのクランプ5、6で光ファイバ1を同時にクランプすると、光ファイバ1が弛んでしまい、切断面を光ファイバ長手方向に対して直角にすることができなくなる。
【0018】
しかし、切断刃4の両側に設けたクランプ5、6のうち一方を他方に対して先行して光ファイバ1をクランプさせてから他方をクランプすると、同時にクランプした場合に比べて光ファイバ1の弛みを無くすことができ或いは大幅に弛みを少なくすることができる。弛みの無い状態或いは弛みの少ない状態で光ファイバ1を切断すれば、該光ファイバ1の長手方向と直角な切断面を得ることができる。
【0019】
[光ファイバ切断装置]
次に、光ファイバ切断装置の構成について説明する。本実施形態の光ファイバ切断装置8は、図2ないし図5に示すように、光ファイバ1を切断する光ファイバ切断機構部9と、光ファイバ1をクランプして捻る光ファイバクランプ捻り機構部10とから構成されている。
【0020】
光ファイバ切断機構部9は、ベース11と、このベース11に所定間隔を置いて固定される2つの下クランプ5A、6Aと、これら下クランプ5A、6A間に設けられた刃ホルダ12に取り付けられた切断刃4と、ベース11に対して回動軸13を中心として回動自在に取り付けられた切断レバー14と、この切断レバー14に設けられ、該切断レバー14をベース11に接近する方向に倒すことで前記切断刃4に光ファイバ1を押し付ける光ファイバ押付部材(通称マクラ)7と、切断レバー14に取り付けられた各アーム15、16にそれぞれ固定され、該切断レバー14を前記ベース11に接近する方向に倒した時に一方が他方より先行して下クランプ5Aに光ファイバ1を押し付けてクランプさせる2つの上クランプ5B、6Bとからなる。
【0021】
2つの下クランプ5A、6Aは、光ファイバ1の長手方向に所定間隔を置いて固定されている。一方の下クランプ5Aは、光ファイバ1を固定したホルダ2を装着させるホルダ装着部17と近い側に設けられている。他方の下クランプ6Aは、前記ホルダ装着部17から離れる側に設けられている。
【0022】
切断刃4は、2つの下クランプ5A、6A間に配置された刃ホルダ12に取り付けられている。かかる切断刃4は、刃ホルダ12に埋め込まれるようにして固定されており、該刃ホルダ12から突出した尖った刃先で光ファイバ1に傷を付けるようになっている。なお、刃ホルダ12は、図2から図5では図示されていないバネ3(図1参照)によって支持されている。
【0023】
切断レバー14は、ベース11の手前から奥側に設けられた回動軸13を中心として回動自在に取り付けられている。この切断レバー14は、前記回動軸13を中心として先端側部をベース11に対して接近離反する方向に開閉自在とされている。切断レバー14は、例えば作業者が手の平で押すことにより前記ベース11に接近させ、接近後に手を離すことで復帰バネ(図示は省略する)で元の開状態に戻る。
【0024】
光ファイバ押付部材7は、切断レバー14に設けられている。この光ファイバ押付部材7は、前記切断レバー14をベース11に対して接近して倒した時に前記切断刃4と対向する位置に設けられている。
【0025】
各アーム15、16は、切断レバー14に対して基端部を回動自在に取り付けると共に、該切断レバー14に設けられたそれぞれのストッパー18、19に接触して前記2つの上クランプ5B、6Bの高さ位置を異なるように支持している。
【0026】
一方のアーム15は、前記回動軸13の近傍に設けられたアーム回動軸20を中心として切断レバー14に回動自在に取り付けられている。このアーム15は、切断レバー14に設けられたストッパー18に接触して支持され、その先端部に取り付けた上クランプ5Bの高さ位置を規制している。他方のアーム16は、同じくアーム回動軸20を中心として切断レバー14に回動自在に取り付けられている。このアーム16は、切断レバー14に設けられた前記ストッパー18とは異なるストッパー19に接触して支持され、その先端部に取り付けた上クランプ6Bの高さ位置を規制している。
【0027】
一方のアーム15に取り付けられた上クランプ5Bは、切断レバー14を倒した時に他方のアーム16に取り付けられた上クランプ6Bに先行して下クランプ5Aに光ファイバ1を押し付けてクランプするようになっている。図5に示すように、一方の上クランプ5Bが下クランプ5Aに光ファイバ1を押し付けた状態では、他方の上クランプ6Bは光ファイバ1に接触しておらず、該光ファイバ1を下クランプ6Aに押し付ける前の状態となっている。この時の状態は、図3に示すように、下クランプ6Aに対して上クランプ6Bが光ファイバ1の直径以上の隙間Hを空けて対向する。この状態から更に切断レバー14を倒すことで、他方の上クランプ6Bが光ファイバ1を下クランプ6Aに押し付けてクランプすることになる。
【0028】
また、2つのアーム15、16の先端側部と切断レバー14との間には、弾性部材であるバネ21、22がそれぞれ設けられている。各バネ21は、切断レバー14を倒して上クランプ5B、6Bで光ファイバ1を下クランプ5A、6Aに押し付けた時に撓み、その付勢力で光ファイバ1を下クランプ5A,6Aと上クランプ5B、6Bとで挟持してクランプするようになっている。
【0029】
光ファイバクランプ捻り機構部10は、図6ないし図9に示すように、本体部23に回動自在に取り付けられたレバー24を起立状態(図6参照)から水平状態(図7参照)に倒すことで固定クランプ部材25に対して可動クランプ部材26をスライドさせて光ファイバ1をクランプするクランプ手段と、クランプした光ファイバ1の軸芯を中心として本体部23に形成された円弧状のレール27をガイドローラ28で挟み込んでガイドしながらクランプ手段全体を光ファイバ1の軸芯を回転中心として回転させる(図8参照)捻り手段とからなる。
【0030】
前記レバー24を起立状態から水平状態にすると、図示を省略したレバーロック手段が動作して該レバー24を水平状態に維持したまま前記光ファイバ1のクランプ状態を維持し続ける。一方、レバー24の水平状態を解除するには、解除ピン29を押すことでそのレバー固定状態が解除される。また、この解除ピン29を押すと、可動クランプ部材26が固定クランプ部材25から離れる方向へスライドして光ファイバ1をアンクランプ状態とする。
【0031】
前記レール27は、前記本体部23の両側面にそれぞれ設けられている。一方、ガイドローラ28は、ベース基盤30に設けられた支持台31に回転自在に取り付けられている。これらガイドローラ28は、各レール27を挟み込むようにして3つずつ設けられている。
【0032】
水平状態にあるレバー24を図7から図8に示すように跳ね上げると、クランプ手段全体が、光ファイバ1の軸芯を回転中心として前記ガイドローラ28にガイドされてレール27に沿って回転して該光ファイバ1が捻られる。跳ね上げられたクランプ手段は、図示を省略する回転位置規制手段によって所定の傾斜角度に保持される。
【0033】
以上のように構成された光ファイバ切断装置8により光ファイバ1を切断するには、図6に示すように、光ファイバ1を固定したホルダ2をベース11に設けられたホルダ装着部17にセットした後、該光ファイバ1を下クランプ5A、6Aの上に載せると共に固定クランプ部材25と可動クランプ部材26の間に配置する。次に、起立状態にあるレバー24を図7に示すように倒して水平状態とする。その結果、可動クランプ部材26がスライドして前記光ファイバ1を固定クランプ部材25に押し付けることにより、該光ファイバ1がクランプされる。
【0034】
次に、水平状態にあるレバー24を図8に示すように上方へ跳ね上げてクランプ手段全体を光ファイバ1の軸芯を回転中心として回転させる。すると、光ファイバ1は、軸芯を中心として捻られることになる。
【0035】
次に、開状態にある切断レバー14を手の平で押して図9に示すように閉じる。切断レバー14が閉じることで、ホルダ装着部17に近い側の一方の上クランプ5Bが他方の上クランプ6Bに先行して下クランプ5Aに光ファイバ1を押し付けてクランプすると共に、これに遅れて他方の上クランプ6Bが光ファイバ1を下クランプ6Aに押し付けてクランプする。
【0036】
この状態から切断レバー14を更に押すことで、光ファイバ押付部材7が光ファイバ1を切断刃4に押し付けて切断する。この時、切断刃4の両側に設けた2つのクランプ5、6に時間差を持たせて光ファイバ1をクランプさせているため、光ファイバ1に撓みが無いか或いは極めて少ない撓みとなることから、該光ファイバ1をその長手方向に対して直角に切断することができる。
【0037】
[実験例]
本実施形態の光ファイバ切断装置で光ファイバを切断した場合と、図12の従来装置で切断した場合の切断面の角度ばらつきと接続ロス(光の損失)を調べた。光ファイバのサンプル数は30本とし、それぞれ切断された光ファイバの切断角度を測定した結果を図10に示し、接続ロスの結果を図11に示す。図10及び図11中、黒塗り部は本実施形態装置での結果を示し、白抜き部は従来装置での結果を示す。
【0038】
本実施形態の光ファイバ切断装置で光ファイバを切断した場合は、図10に示すように、従来装置で光ファイバを切断した場合に比べて切断角度にバラツキが少ない。つまり、本実施形態の光ファイバ切断装置を使用すれば、光ファイバの長手方向に略直角に切断することができる。また、光の損失の指標となる接続ロスに関しては、図11に示すように、従来装置に比べて本実施形態装置の方が接続ロスが少ないことが判る。
【0039】
[本実施形態の効果]
本実施形態の光ファイバ切断装置によれば、切断刃4を挟んでその両側に設けられた2つの上クランプ5B、6Bのうち、一方が他方より先行して下クランプ5Bに光ファイバ1を押し付けてクランプした後に他方の上クランプ6Bが遅れて光ファイバ1をクランプすることになるため、両クランプ5、6で同時に光ファイバ1をクランプした場合と異なり、該光ファイバ1の弛みを無くすことができる。したがって、弛みの無い状態で光ファイバ1を切断することができ、その切断面を光ファイバ長手方向と直角とすることができる。
また、本実施形態の光ファイバ切断装置によれば、切断レバー14に基端部を回動自在に取り付けた2つのアーム15、16を、該切断レバー14に設けたストッパー18、19に接触させて2つの上クランプ5B、6Bの高さ位置を異なるようにしているので、一方のアーム15の先端部に取り付けられた上クランプ5Bは他方のアーム16の先端部に取り付けた上クランプ6Bに先行して光ファイバ1を下クランプ5Aに押し付けてクランプし、その後、これに遅れて他方の上クランプ6Bが光ファイバ1を下クランプ6Aにクランプすることになる。つまり、切断刃4を挟んでその両側に設けた2つのクランプ5、6のうち一方を他方に先行して光ファイバ1を時間差を持たせてクランプすることになるから該光ファイバ1に弛みが無くなる。
【0040】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置によれば、各アーム15、16の先端部と切断レバー14との間に設けた弾性部材であるバネ21、22の付勢力で上クランプ5B、6Bを下クランプ5A、6Aに押し付けるため、位置ずれを起こすことなく光ファイバ1を固定することができる。
【0041】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置によれば、光ファイバ1を他方に先行してクランプする一方の下クランプ5A及び上クランプ5Bを、光ファイバ1を固定する固定手段であるホルダ2を固定した側に設けることで、光ファイバ1の弛みが自由端側に延びることから当該光ファイバ1の弛みを無くすことができる。
【0042】
本実施形態の光ファイバ切断方法によれば、光ファイバ1を一方のクランプ5で他方のクランプ6に先行してクランプさせた後、他方のクランプ6で該光ファイバ1をクランプしてから切断すると、弛みの無い状態で光ファイバ1を切断することができる。その結果、光ファイバ1をその長手方向に対して直角に切断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、光ファイバをクランプして切断するための装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…光ファイバ
2…ホルダ(固定手段)
4…切断刃
5A…一方の下クランプ
5B…一方の上クランプ
6A…他方の下クランプ
6B…他方の上クランプ
7…光ファイバ押付部材(マクラ)
8…光ファイバ切断装置
9…光ファイバ切断機構部
10…光ファイバクランプ捻り機構部
11…ベース(光ファイバ切断機構部のベース)
14…切断レバー
15、16…アーム
18、19…ストッパー
21、22…バネ(弾性部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバをクランプした後に切断する光ファイバ切断装置及び光ファイバ切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば光ファイバを利用した家庭用の高速データ通信サービス(FTTH)が進められている。光ファイバの端面は、接続損失を低減させるために出来る限り切断面が、光ファイバ長手方向に対して直角であることが好ましい。光ファイバを切断する装置及び方法は、例えば特許文献1又は特許文献2等に開示されている。
【0003】
図12は、従来の光ファイバ切断装置を示している。この光ファイバ切断装置は、光ファイバ101をホルダ102で固定した後、バネ103で支持された切断刃104を挟んでその両側に配置された上下一対の第1クランプ105(105A、105B)と第2クランプ106(106A、106B)で光ファイバ101をクランプした後、マクラと称される光ファイバ押付部材107で該光ファイバ101を切断刃104に押し付けて切断するように構成されている。なお、フォルダ102で把持する部位は、ベアファイバである光ファイバ101を被覆した外被部分101Gである。
【0004】
この従来の光ファイバ切断装置では、切断刃104を挟んでその両側に配置された第1クランプ105と第2クランプ106で該光ファイバ101を同時に挟み込んでクランプするようになっている。そして、この光ファイバ切断装置では、両端をクランプした光ファイバ101を切断刃104に押し付けるように光ファイバ押付部材107を下降させることにより、前記光ファイバ101を切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−301142号公報
【特許文献2】特開2009−3407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、第1クランプ105と第2クランプ106にて光ファイバ101を同時にクランプすると、クランプ間で光ファイバ101が弛んでしまう。弛んだ状態とされた光ファイバ101を切断すると、該光ファイバ101をその長手方向と直角に切断することができなくなる。光ファイバ101の端面は、接続ロス(光の損失)の低減を抑えるために出来る限り光ファイバ長手方向に対して直角であることが望ましいが、直角にすることは難しい。
【0007】
そこで、本発明は、弛みの無い状態で光ファイバをクランプして切断することのできる光ファイバ切断装置及び光ファイバ切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、光ファイバの2箇所をクランプした後、両クランプ間に設けた切断刃に該光ファイバを光ファイバ押付部材で押し付けて切断する光ファイバ切断装置であって、ベースに所定間隔を置いて固定された2つの下クランプ及びこれら下クランプ間に設けられた切断刃と、前記ベースに対して回動軸を中心として回動自在に取り付けられた切断レバーと、前記切断レバーに設けられ、該切断レバーを前記ベースに接近する方向に倒すことで前記切断刃に前記光ファイバを押し付ける光ファイバ押付部材と、前記切断レバーに取り付けられた各アームにそれぞれ固定され、該切断レバーを前記ベースに接近する方向に倒した時に一方が他方より先行して前記下クランプに前記光ファイバを押し付けてクランプさせる2つの上クランプと、からなることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光ファイバ切断装置であって、前記2つのアームは、前記切断レバーに対して基端部を回動自在に取り付けると共に、該切断レバーに設けられたストッパーに接触して前記2つの上クランプの高さ位置を異なるようにして支持されたことを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光ファイバ切断装置であって、前記2つのアームの先端側部と前記切断レバーとの間に弾性部材を設け、該弾性部材の付勢力で前記上クランプを前記下クランプに押し付けることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の光ファイバ切断装置であって、前記光ファイバを先行してクランプする一方の下クランプ及び上クランプは、切断する光ファイバを固定手段で固定した側に設けたことを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、光ファイバの2箇所をクランプした後、両クランプ間に設けた切断刃に該光ファイバを光ファイバ押付部材で押し付けて切断する光ファイバ切断方法において、前記光ファイバを一方のクランプで他方のクランプに先行してクランプさせた後、他方のクランプで該光ファイバをクランプしてから切断することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光ファイバ切断装置によれば、切断刃を挟んでその両側に設けられた2つの上クランプのうち、一方が他方より先行して下クランプに光ファイバを押し付けてクランプした後に他方の上クランプが遅れて光ファイバをクランプすることになるため、両クランプで同時に光ファイバをクランプした場合と異なり、該光ファイバの弛みを無くすことができる。したがって、弛みの無い状態で光ファイバを切断することができ、その切断面を光ファイバ長手方向と直角とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明を適用した光ファイバ切断方法で光ファイバを切断する工程を説明するための簡略化した工程図である。
【図2】図2は本実施形態の光ファイバ切断装置の全体を示す斜視図である。
【図3】図3は図2に示す光ファイバ切断装置のA−A断面図である。
【図4】図4は図2に示す光ファイバ切断装置のB−B断面図である。
【図5】図5は図2に示す光ファイバ切断装置のC−C断面図である。
【図6】図6は本実施形態の光ファイバ断装置で光ファイバを切断する工程を示す斜視図であり、光ファイバクランプ捻り機構部のレバーを起立させて光ファイバをアンクランプした状態を示す。
【図7】図7は本実施形態の光ファイバ切断装置で光ファイバを切断する工程を示す斜視図であり、光ファイバクランプ捻り機構部のレバーを水平として光ファイバをクランプした状態を示す。
【図8】図8は本実施形態の光ファイバ切断装置で光ファイバを切断する工程を示す斜視図であり、光ファイバクランプ捻り機構部のレバーを跳ね上げて光ファイバを捻った状態を示す。
【図9】図9は本実施形態の光ファイバ切断装置で光ファイバを切断する工程を示す斜視図であり、光ファイバを捻った後に光ファイバ切断機構部の切断レバーを倒して光ファイバを切断した状態を示す。
【図10】図10は本実施形態装置と従来装置で光ファイバを切断した切断面の切断角度とその割合を示す実験データを示した図である。
【図11】図11は本実施形態装置と従来装置で光ファイバを切断した場合の接続ロスとその割合を示す実験データを示した図である。
【図12】図12は従来の光ファイバ切断装置で光ファイバを切断する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
[光ファイバ切断方法]
先ず、光ファイバを切断する方法について図1を参照して説明する。本発明の光ファイバ切断方法は、光ファイバ1を固定手段であるホルダ2で固定した後、バネ3で支持された切断刃4を挟んでその両側に配置された一方のクランプ5(5A、5B)でクランプした後(図1(A)参照)、他方のクランプ6(6A、6B)で光ファイバ1をクランプしてから(図1(B)参照)、マクラと称される光ファイバ押付部材7を押し下げて前記光ファイバ1を切断刃4に押し付けることにより切断する。なお、フォルダ2で把持する部位は、ベアファイバである光ファイバ1を被覆した外被部分1Gである。
【0017】
つまり、本発明の方法では、光ファイバ1を一方のクランプ5で他方のクランプ6に先行してクランプさせた後に、続いて他方のクランプ6で光ファイバ1をクランプさせてから切断を行うようにする。これら2つのクランプ5、6で光ファイバ1を同時にクランプすると、光ファイバ1が弛んでしまい、切断面を光ファイバ長手方向に対して直角にすることができなくなる。
【0018】
しかし、切断刃4の両側に設けたクランプ5、6のうち一方を他方に対して先行して光ファイバ1をクランプさせてから他方をクランプすると、同時にクランプした場合に比べて光ファイバ1の弛みを無くすことができ或いは大幅に弛みを少なくすることができる。弛みの無い状態或いは弛みの少ない状態で光ファイバ1を切断すれば、該光ファイバ1の長手方向と直角な切断面を得ることができる。
【0019】
[光ファイバ切断装置]
次に、光ファイバ切断装置の構成について説明する。本実施形態の光ファイバ切断装置8は、図2ないし図5に示すように、光ファイバ1を切断する光ファイバ切断機構部9と、光ファイバ1をクランプして捻る光ファイバクランプ捻り機構部10とから構成されている。
【0020】
光ファイバ切断機構部9は、ベース11と、このベース11に所定間隔を置いて固定される2つの下クランプ5A、6Aと、これら下クランプ5A、6A間に設けられた刃ホルダ12に取り付けられた切断刃4と、ベース11に対して回動軸13を中心として回動自在に取り付けられた切断レバー14と、この切断レバー14に設けられ、該切断レバー14をベース11に接近する方向に倒すことで前記切断刃4に光ファイバ1を押し付ける光ファイバ押付部材(通称マクラ)7と、切断レバー14に取り付けられた各アーム15、16にそれぞれ固定され、該切断レバー14を前記ベース11に接近する方向に倒した時に一方が他方より先行して下クランプ5Aに光ファイバ1を押し付けてクランプさせる2つの上クランプ5B、6Bとからなる。
【0021】
2つの下クランプ5A、6Aは、光ファイバ1の長手方向に所定間隔を置いて固定されている。一方の下クランプ5Aは、光ファイバ1を固定したホルダ2を装着させるホルダ装着部17と近い側に設けられている。他方の下クランプ6Aは、前記ホルダ装着部17から離れる側に設けられている。
【0022】
切断刃4は、2つの下クランプ5A、6A間に配置された刃ホルダ12に取り付けられている。かかる切断刃4は、刃ホルダ12に埋め込まれるようにして固定されており、該刃ホルダ12から突出した尖った刃先で光ファイバ1に傷を付けるようになっている。なお、刃ホルダ12は、図2から図5では図示されていないバネ3(図1参照)によって支持されている。
【0023】
切断レバー14は、ベース11の手前から奥側に設けられた回動軸13を中心として回動自在に取り付けられている。この切断レバー14は、前記回動軸13を中心として先端側部をベース11に対して接近離反する方向に開閉自在とされている。切断レバー14は、例えば作業者が手の平で押すことにより前記ベース11に接近させ、接近後に手を離すことで復帰バネ(図示は省略する)で元の開状態に戻る。
【0024】
光ファイバ押付部材7は、切断レバー14に設けられている。この光ファイバ押付部材7は、前記切断レバー14をベース11に対して接近して倒した時に前記切断刃4と対向する位置に設けられている。
【0025】
各アーム15、16は、切断レバー14に対して基端部を回動自在に取り付けると共に、該切断レバー14に設けられたそれぞれのストッパー18、19に接触して前記2つの上クランプ5B、6Bの高さ位置を異なるように支持している。
【0026】
一方のアーム15は、前記回動軸13の近傍に設けられたアーム回動軸20を中心として切断レバー14に回動自在に取り付けられている。このアーム15は、切断レバー14に設けられたストッパー18に接触して支持され、その先端部に取り付けた上クランプ5Bの高さ位置を規制している。他方のアーム16は、同じくアーム回動軸20を中心として切断レバー14に回動自在に取り付けられている。このアーム16は、切断レバー14に設けられた前記ストッパー18とは異なるストッパー19に接触して支持され、その先端部に取り付けた上クランプ6Bの高さ位置を規制している。
【0027】
一方のアーム15に取り付けられた上クランプ5Bは、切断レバー14を倒した時に他方のアーム16に取り付けられた上クランプ6Bに先行して下クランプ5Aに光ファイバ1を押し付けてクランプするようになっている。図5に示すように、一方の上クランプ5Bが下クランプ5Aに光ファイバ1を押し付けた状態では、他方の上クランプ6Bは光ファイバ1に接触しておらず、該光ファイバ1を下クランプ6Aに押し付ける前の状態となっている。この時の状態は、図3に示すように、下クランプ6Aに対して上クランプ6Bが光ファイバ1の直径以上の隙間Hを空けて対向する。この状態から更に切断レバー14を倒すことで、他方の上クランプ6Bが光ファイバ1を下クランプ6Aに押し付けてクランプすることになる。
【0028】
また、2つのアーム15、16の先端側部と切断レバー14との間には、弾性部材であるバネ21、22がそれぞれ設けられている。各バネ21は、切断レバー14を倒して上クランプ5B、6Bで光ファイバ1を下クランプ5A、6Aに押し付けた時に撓み、その付勢力で光ファイバ1を下クランプ5A,6Aと上クランプ5B、6Bとで挟持してクランプするようになっている。
【0029】
光ファイバクランプ捻り機構部10は、図6ないし図9に示すように、本体部23に回動自在に取り付けられたレバー24を起立状態(図6参照)から水平状態(図7参照)に倒すことで固定クランプ部材25に対して可動クランプ部材26をスライドさせて光ファイバ1をクランプするクランプ手段と、クランプした光ファイバ1の軸芯を中心として本体部23に形成された円弧状のレール27をガイドローラ28で挟み込んでガイドしながらクランプ手段全体を光ファイバ1の軸芯を回転中心として回転させる(図8参照)捻り手段とからなる。
【0030】
前記レバー24を起立状態から水平状態にすると、図示を省略したレバーロック手段が動作して該レバー24を水平状態に維持したまま前記光ファイバ1のクランプ状態を維持し続ける。一方、レバー24の水平状態を解除するには、解除ピン29を押すことでそのレバー固定状態が解除される。また、この解除ピン29を押すと、可動クランプ部材26が固定クランプ部材25から離れる方向へスライドして光ファイバ1をアンクランプ状態とする。
【0031】
前記レール27は、前記本体部23の両側面にそれぞれ設けられている。一方、ガイドローラ28は、ベース基盤30に設けられた支持台31に回転自在に取り付けられている。これらガイドローラ28は、各レール27を挟み込むようにして3つずつ設けられている。
【0032】
水平状態にあるレバー24を図7から図8に示すように跳ね上げると、クランプ手段全体が、光ファイバ1の軸芯を回転中心として前記ガイドローラ28にガイドされてレール27に沿って回転して該光ファイバ1が捻られる。跳ね上げられたクランプ手段は、図示を省略する回転位置規制手段によって所定の傾斜角度に保持される。
【0033】
以上のように構成された光ファイバ切断装置8により光ファイバ1を切断するには、図6に示すように、光ファイバ1を固定したホルダ2をベース11に設けられたホルダ装着部17にセットした後、該光ファイバ1を下クランプ5A、6Aの上に載せると共に固定クランプ部材25と可動クランプ部材26の間に配置する。次に、起立状態にあるレバー24を図7に示すように倒して水平状態とする。その結果、可動クランプ部材26がスライドして前記光ファイバ1を固定クランプ部材25に押し付けることにより、該光ファイバ1がクランプされる。
【0034】
次に、水平状態にあるレバー24を図8に示すように上方へ跳ね上げてクランプ手段全体を光ファイバ1の軸芯を回転中心として回転させる。すると、光ファイバ1は、軸芯を中心として捻られることになる。
【0035】
次に、開状態にある切断レバー14を手の平で押して図9に示すように閉じる。切断レバー14が閉じることで、ホルダ装着部17に近い側の一方の上クランプ5Bが他方の上クランプ6Bに先行して下クランプ5Aに光ファイバ1を押し付けてクランプすると共に、これに遅れて他方の上クランプ6Bが光ファイバ1を下クランプ6Aに押し付けてクランプする。
【0036】
この状態から切断レバー14を更に押すことで、光ファイバ押付部材7が光ファイバ1を切断刃4に押し付けて切断する。この時、切断刃4の両側に設けた2つのクランプ5、6に時間差を持たせて光ファイバ1をクランプさせているため、光ファイバ1に撓みが無いか或いは極めて少ない撓みとなることから、該光ファイバ1をその長手方向に対して直角に切断することができる。
【0037】
[実験例]
本実施形態の光ファイバ切断装置で光ファイバを切断した場合と、図12の従来装置で切断した場合の切断面の角度ばらつきと接続ロス(光の損失)を調べた。光ファイバのサンプル数は30本とし、それぞれ切断された光ファイバの切断角度を測定した結果を図10に示し、接続ロスの結果を図11に示す。図10及び図11中、黒塗り部は本実施形態装置での結果を示し、白抜き部は従来装置での結果を示す。
【0038】
本実施形態の光ファイバ切断装置で光ファイバを切断した場合は、図10に示すように、従来装置で光ファイバを切断した場合に比べて切断角度にバラツキが少ない。つまり、本実施形態の光ファイバ切断装置を使用すれば、光ファイバの長手方向に略直角に切断することができる。また、光の損失の指標となる接続ロスに関しては、図11に示すように、従来装置に比べて本実施形態装置の方が接続ロスが少ないことが判る。
【0039】
[本実施形態の効果]
本実施形態の光ファイバ切断装置によれば、切断刃4を挟んでその両側に設けられた2つの上クランプ5B、6Bのうち、一方が他方より先行して下クランプ5Bに光ファイバ1を押し付けてクランプした後に他方の上クランプ6Bが遅れて光ファイバ1をクランプすることになるため、両クランプ5、6で同時に光ファイバ1をクランプした場合と異なり、該光ファイバ1の弛みを無くすことができる。したがって、弛みの無い状態で光ファイバ1を切断することができ、その切断面を光ファイバ長手方向と直角とすることができる。
また、本実施形態の光ファイバ切断装置によれば、切断レバー14に基端部を回動自在に取り付けた2つのアーム15、16を、該切断レバー14に設けたストッパー18、19に接触させて2つの上クランプ5B、6Bの高さ位置を異なるようにしているので、一方のアーム15の先端部に取り付けられた上クランプ5Bは他方のアーム16の先端部に取り付けた上クランプ6Bに先行して光ファイバ1を下クランプ5Aに押し付けてクランプし、その後、これに遅れて他方の上クランプ6Bが光ファイバ1を下クランプ6Aにクランプすることになる。つまり、切断刃4を挟んでその両側に設けた2つのクランプ5、6のうち一方を他方に先行して光ファイバ1を時間差を持たせてクランプすることになるから該光ファイバ1に弛みが無くなる。
【0040】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置によれば、各アーム15、16の先端部と切断レバー14との間に設けた弾性部材であるバネ21、22の付勢力で上クランプ5B、6Bを下クランプ5A、6Aに押し付けるため、位置ずれを起こすことなく光ファイバ1を固定することができる。
【0041】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置によれば、光ファイバ1を他方に先行してクランプする一方の下クランプ5A及び上クランプ5Bを、光ファイバ1を固定する固定手段であるホルダ2を固定した側に設けることで、光ファイバ1の弛みが自由端側に延びることから当該光ファイバ1の弛みを無くすことができる。
【0042】
本実施形態の光ファイバ切断方法によれば、光ファイバ1を一方のクランプ5で他方のクランプ6に先行してクランプさせた後、他方のクランプ6で該光ファイバ1をクランプしてから切断すると、弛みの無い状態で光ファイバ1を切断することができる。その結果、光ファイバ1をその長手方向に対して直角に切断することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、光ファイバをクランプして切断するための装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…光ファイバ
2…ホルダ(固定手段)
4…切断刃
5A…一方の下クランプ
5B…一方の上クランプ
6A…他方の下クランプ
6B…他方の上クランプ
7…光ファイバ押付部材(マクラ)
8…光ファイバ切断装置
9…光ファイバ切断機構部
10…光ファイバクランプ捻り機構部
11…ベース(光ファイバ切断機構部のベース)
14…切断レバー
15、16…アーム
18、19…ストッパー
21、22…バネ(弾性部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの2箇所をクランプした後、両クランプ間に設けた切断刃に該光ファイバを光ファイバ押付部材で押し付けて切断する光ファイバ切断装置であって、
ベースに所定間隔を置いて固定された2つの下クランプ及びこれら下クランプ間に設けられた切断刃と、
前記ベースに対して回動軸を中心として回動自在に取り付けられた切断レバーと、
前記切断レバーに設けられ、該切断レバーを前記ベースに接近する方向に倒すことで前記切断刃に前記光ファイバを押し付ける光ファイバ押付部材と、
前記切断レバーに取り付けられた各アームにそれぞれ固定され、該切断レバーを前記ベースに接近する方向に倒した時に一方が他方より先行して前記下クランプに前記光ファイバを押し付けてクランプさせる2つの上クランプと、からなる
ことを特徴とする光ファイバ切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ切断装置であって、
前記2つのアームは、前記切断レバーに対して基端部を回動自在に取り付けると共に、該切断レバーに設けられたストッパーに接触して前記2つの上クランプの高さ位置を異なるようにして支持された
ことを特徴とする光ファイバ切断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光ファイバ切断装置であって、
前記2つのアームの先端側部と前記切断レバーとの間に弾性部材を設け、該弾性部材の付勢力で前記上クランプを前記下クランプに押し付ける
ことを特徴とする光ファイバ切断装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の光ファイバ切断装置であって、
前記光ファイバを先行してクランプする一方の下クランプ及び上クランプは、切断する光ファイバを固定手段で固定した側に設けた
ことを特徴とする光ファイバ切断装置。
【請求項5】
光ファイバの2箇所をクランプした後、両クランプ間に設けた切断刃に該光ファイバを光ファイバ押付部材で押し付けて切断する光ファイバ切断方法において、
前記光ファイバを一方のクランプで他方のクランプに先行してクランプさせた後、他方のクランプで該光ファイバをクランプしてから切断する
ことを特徴とする光ファイバ切断方法。
【請求項1】
光ファイバの2箇所をクランプした後、両クランプ間に設けた切断刃に該光ファイバを光ファイバ押付部材で押し付けて切断する光ファイバ切断装置であって、
ベースに所定間隔を置いて固定された2つの下クランプ及びこれら下クランプ間に設けられた切断刃と、
前記ベースに対して回動軸を中心として回動自在に取り付けられた切断レバーと、
前記切断レバーに設けられ、該切断レバーを前記ベースに接近する方向に倒すことで前記切断刃に前記光ファイバを押し付ける光ファイバ押付部材と、
前記切断レバーに取り付けられた各アームにそれぞれ固定され、該切断レバーを前記ベースに接近する方向に倒した時に一方が他方より先行して前記下クランプに前記光ファイバを押し付けてクランプさせる2つの上クランプと、からなる
ことを特徴とする光ファイバ切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバ切断装置であって、
前記2つのアームは、前記切断レバーに対して基端部を回動自在に取り付けると共に、該切断レバーに設けられたストッパーに接触して前記2つの上クランプの高さ位置を異なるようにして支持された
ことを特徴とする光ファイバ切断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光ファイバ切断装置であって、
前記2つのアームの先端側部と前記切断レバーとの間に弾性部材を設け、該弾性部材の付勢力で前記上クランプを前記下クランプに押し付ける
ことを特徴とする光ファイバ切断装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の光ファイバ切断装置であって、
前記光ファイバを先行してクランプする一方の下クランプ及び上クランプは、切断する光ファイバを固定手段で固定した側に設けた
ことを特徴とする光ファイバ切断装置。
【請求項5】
光ファイバの2箇所をクランプした後、両クランプ間に設けた切断刃に該光ファイバを光ファイバ押付部材で押し付けて切断する光ファイバ切断方法において、
前記光ファイバを一方のクランプで他方のクランプに先行してクランプさせた後、他方のクランプで該光ファイバをクランプしてから切断する
ことを特徴とする光ファイバ切断方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−133785(P2011−133785A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294918(P2009−294918)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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