光ファイバ式洗掘検出装置及びシステム
【課題】川底と水平な方向の洗掘を検出でき、洗掘深度又は洗掘長が大きい場合にも適用でき、低コスト化も可能な光ファイバ式洗掘検出装置等を提供する。
【解決手段】増水等に伴う河川101の棚部(高水敷)103の水平方向の洗掘が生じた場合、水流中等に露出した洗掘検出器111のブロックが水流の抗力又は自重により転倒することで残りのブロックから分離し、分離箇所の光ファイバ13に張力が働き、カッターのナイフエッジで切断されたことを、光ファイバ13を伝播する光の損失を監視するOTDR112により検出することで、ブロック分の長さの洗掘を検出する。
【解決手段】増水等に伴う河川101の棚部(高水敷)103の水平方向の洗掘が生じた場合、水流中等に露出した洗掘検出器111のブロックが水流の抗力又は自重により転倒することで残りのブロックから分離し、分離箇所の光ファイバ13に張力が働き、カッターのナイフエッジで切断されたことを、光ファイバ13を伝播する光の損失を監視するOTDR112により検出することで、ブロック分の長さの洗掘を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、河川堤防等の防災モニタリングのために河川堤防等の洗掘を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、降雨や増水に伴う河川堤防の決壊や山岳道路の岩壁の崩落を予測し、これらの災害を未然に防止するために河川堤防等のモニタリングを行う手段として光ファイバを利用したセンサが注目されている。即ち、センサ機能として長期間に亘るオンライン計測が可能である上に、無誘導性、防爆性、耐腐食性等の特徴を持つ光ファイバは、上述した災害等の防止システムの構成要素として有望であり、光ファイバの種々の特性を利用して監視対象物の変位等を測定する光ファイバセンサとして、多くの提案がなされている。
【0003】
ところで、河川堤防等の防災モニタリングの一態様として、河川堤防等の洗掘を検知する必要性が唱えられている。これは、例えば、降雨や増水に伴って河川の流量や流速が増加して川底等に洗掘を生じると、河川等に掛けられた道路用或いは鉄橋用の橋(ブリッジ・鉄橋等)の橋脚の安定性・安全性に影響する虞れがあるからである。従来、かかる河川堤防等の洗掘を検知する技術として、幾つかの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、光ファイバを巻きつけた円筒体が、洗掘により露出した場合に円筒部の浮力により分離し、光ファイバが切断され、その切断長さに基づいて洗掘の度合いを検出する光式河床洗掘状態検出センサ(以下、第1の従来例と称する)が記載されている。
また、特許文献2には、円筒状のパイプ外表面に光ファイバを巻きつけたユニットを複数形成し、各ユニットが曲げられたとき、ユニット間に設けられた鞘管が破断し、その中を通した光ファイバも曲げ又は破断を受ける光ファイバセンサ(以下、第2の従来例と称する)が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−141455号公報
【特許文献2】特開平11−337423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
後で図面を用いて説明するように、河川には、堤防の法面に連続するように川底と水平な方向に棚部(高水敷)が形成されることが多く、降雨や増水に伴って河川の流量や流速が増加すると、かかる棚部(高水敷)に水平方向の洗掘を生じる場合がある。このような洗掘は堤防が決壊する虞れに直結するものであり、早期に確実に検出する必要性があるにも拘わらず、従来、このような棚部(高水敷)の水平方向の洗掘を有効に検知する技術は殆ど提案されていない。
例えば、上記第1の従来例は、洗掘は、主に河川等の川底等における鉛直(深さ)方向を対象にしたものであり、川底等と水平な方向の洗掘は検出困難である。また、浮力により分離させるので、十分な浮力を確保して光ファイバを確実に切断させるには、質量に見合う容積の発泡剤等を充填する必要があり、形状的な制約を受ける。更に、上下円筒間の接続部から砂等の異物が流入して光ファイバを損傷する懸念が残る。
また、上記第2の従来例では、主に斜面又は水平面のボウリング孔に設置できるが、ボウリングという大変な作業が必要になり、設置コストも高くなってしまう。
更に、上記第1及び第2の従来例は、共に、対象としている洗掘深度又は洗掘長が大きい場合には、適用の制限を伴うという問題がある。
【0006】
本発明の第1の課題は、川底と水平な方向の洗掘を検出するのに有効である上に、洗掘深度又は洗掘長が大きい場合にも適用でき、且つ、低コスト化が可能な光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムを提供することにある。
【0007】
また、本発明の第2の課題は、光ファイバを構造体に埋め込むことで該光ファイバの耐久性及び信頼性を確保しながらも、該光ファイバを有効に切断することが可能な光ファイバ式洗掘検出装置であって、製作時、移動時及び設置時の作業性や施工性を向上させた光ファイバ式洗掘検出装置及び該洗掘検出装置を含む光ファイバ式洗掘検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の課題を解決するため、本発明の第1の様相では、光ファイバを用いて監視対象物に生じる洗掘を検出する光ファイバ式洗掘検出装置を、複数連結された箱型のブロックと、これらブロックに略直線的に連通した光ファイバとを備え、前記洗掘が生じることにより隣接して連結されたブロック間に力が作用すると、該ブロック間の連結部で折れ曲がって分離し、前記連結部付近に設けたカッター部材のナイフエッジ部に前記光ファイバが当たって切断されたことを、該光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置により検出するようにした。
かかる構成によれば、川底と水平な方向の洗掘も有効に検出することができる上に、洗掘深度又は洗掘長が大きい場合にも適用でき、且つ、低コスト化が可能になる。
【0009】
また、前記光監視装置は、OTDRから入射した光の反射光または後方散乱光を測定するように構成されるのが好適である。
尚、前記光監視装置は、光ファイバの固定部内に反射波長の異なるFBGをつなぎこみ、波長計により反射波長の数を測定するように構成されても良い。
【0010】
更に、前記光ファイバは、前記ブロック中央のセメント充填部分で固定し、ブロック間の連結部付近では、弛みを持たせて柔軟性を有する充填材を充填し、前記ブロック間で折り曲げられ、ブロック間で分離し、たるませた光ファイバが伸ばされることで、前記カッター部材のナイフエッジ部に当り切断されることを特徴としても良い。
また、前記各箱型のブロックは、一面が開口し、前記光ファイバを収納する収納部と、前記開口部を閉塞する蓋部とを有するようにしても良い。
【0011】
尚、前記カッター部材は、前記ブロック間の連結部において、一方のブロックからその一部が突出するように設けられ、隣接する他方のブロックが該一部に嵌め合わされることで、該隣接するブロック間のせん断変形を抑えるように構成されているのが好適である。
また、前記柔軟性を有する充填材は、主に非硬化型ゴム粘土により構成されるのが好適である。
【0012】
一方、以上の光ファイバ式洗掘検出装置が少なくとも1本のラインを構成する前記光ファイバの所定の間隔ごとで、且つ、前記監視対象物の所定の間隔ごとに複数設けられると共に、前記少なくとも1本のラインを構成する光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置を備えた光ファイバ式洗掘検出システムを構成することもできる。
かかる構成によれば、川底と水平な方向の洗掘も有効に検出することができる上に、洗掘深度又は洗掘長が大きい場合にも適用でき、且つ、低コスト化が可能な光ファイバ式洗掘検出システムを提供することができる。
【0013】
上記第2の課題を解決するため、本発明の第2の様相では、光ファイバを用いて監視対象物に生じる洗掘を検出する光ファイバ式洗掘検出装置が、内外筒間にセメントミルクを充填した筒型のブロックを複数連結させた構造をなし、各ブロックの内筒外表面に所定の長さを巻き付け各ブロックで連続につなげた光ファイバを備えると共に、全ブロック間の連結状態を保持する筋金、連結された全ブロックの底板及び上板とを含み、各ブロックは、前記光ファイバの固定部と、該光ファイバに弛みを持たせて配する空間部と、隣接するブロックと嵌め合わされる嵌合部とを有すると共に、弛みを持たせて配された光ファイバを切断するカッターを前記隣接するブロック間の連結部付近に有し、洗掘が生じて露出したブロックが水流の抗力により転倒することで前記弛みを持たせて配された光ファイバが張力を受けて前記カッターに当たって切断されたことを、該光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置により検出するようにした。
かかる構成によれば、光ファイバを構造体に埋め込むことで該光ファイバの耐久性及び信頼性を確保しながらも、該光ファイバを有効に切断することが可能であり、更に、製作時、移動時及び設置時の作業性や施工性が向上する。
【0014】
一方、以上の光ファイバ式洗掘検出装置が、少なくとも1本のラインを構成する前記光ファイバの所定の間隔ごとで、且つ、前記監視対象物の所定の間隔ごとに複数設けられると共に、前記少なくとも1本のラインを構成する光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置を備えた光ファイバ式洗掘検出システムを構成することもできる。
かかる構成によれば、光ファイバの耐久性及び信頼性を確保しながらも、該光ファイバを有効に切断することが可能であり、製作時、移動時及び設置時の作業性や施工性を向上させた光ファイバ式洗掘検出システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の様相によれば、川底と水平な方向の洗掘を検出するのに有効である上に、洗掘深度又は洗掘長が大きい場合にも適用でき、且つ、低コスト化が可能な光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムを提供することができる。
【0016】
また、本発明の第2の様相によれば、光ファイバを構造体に埋め込むことで該光ファイバの耐久性及び信頼性を確保しながらも、該光ファイバを有効に切断することが可能な光ファイバ式洗掘検出装置であって、製作時、移動時及び設置時の作業性や施工性を向上させた光ファイバ式洗掘検出装置及び該洗掘検出装置を含む光ファイバ式洗掘検出システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、発明の実施の形態は、本発明が実施される特に有用な形態としてのものであり、本発明がその実施の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムの全体構成を示す概念図である。図2は、図1に示す光ファイバ式洗掘検出システムにおける1ラインの洗掘検出装置の基本構成を示す図、図3は、図2に示す1ラインの洗掘検出装置における1ブロックの洗掘検出器の縦断面図、図4は、図2に示す1ラインの洗掘検出装置における1ブロックの洗掘検出器の平面図、 図5は、図3及び図4に示す洗掘検出器における光ファイバ収納部の要部を拡大して示す図であり、(a)は光ファイバ収納部を形成するSUS材に蓋を取り付けた状態の横断面図、(b)は光ファイバ収納部を形成するSUS材に蓋を取り付け、更に蓋止め金具を取り付けた状態の横断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムは、河川101の川底102と水平な方向にある棚部(高水敷)103を監視対象物とし、その棚部(高水敷)103の水平方向の洗掘を検出するものである。このような棚部(高水敷)103は、堤防104の法面104Aに連続して川底102と水平に数十メートル(m)の幅に亘って形成されることが多い。本実施形態では、後述する図8に示すように、棚部(高水敷)103が法面104Aに連続して川底102と水平に略30メートル(m)の幅に亘って形成されている例を対象とするものとする。図1において、105は河川の水流部分、106は棚部(高水敷)103よりも川底102側に更に形成された棚部を示す。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、1本のラインを構成する光ファイバ13をその内部に挿通させた複数(3つ)の洗掘検出装置100が河川101の棚部(高水敷)103に水流方向に沿った所定の間隔ごとに設けられている。これら洗掘検出装置100は、それぞれ内部を光ファイバ13が挿通されており、各光ファイバ13は洗掘検出装置100の端部で屋外配線用光ケーブル16内の光ファイバ(芯線)13に融着され、これら屋外配線用光ケーブル16により接続(ジョイント)ボックス108を介して観測小屋109内の光監視装置としてのOTDR112(図6及び図7参照)に接続されている。
各洗掘検出装置100は、図2に示すように、それぞれ1メートル(m)の長さの洗掘検出器111が30個直列に連結された構成を有している。即ち、1ラインの洗掘検出装置100は、1ブロックの洗掘検出器111が30ブロック連結されて構成されている。
【0020】
以下、図1及び図2に加え、図3乃至図5をも参照しつつ、洗掘検出装置100について詳細に説明する。
まず、洗掘検出装置100の製作方法について述べる。本実施形態においては、洗掘検出装置100は、比較的長さが長いものを前提にしているため、その組み立ては現地で行うものとする。尚、図1では、各洗掘検出装置100は河川101の棚部(高水敷)103上に置かれたように示したが、本実施形態では、各洗掘検出装置100は棚部(高水敷)103上に略30メートル(m)の長さに亘って数十センチメートル(cm)の深さの穴を掘り、各洗掘検出装置100の組み立てが完了したら、それらの穴に埋め戻した後、整地することで、棚部(高水敷)103上には露出させないで用いるようにする。かかる設置構成をとることで、人や動物が洗掘検出装置100(の各ブロック)に衝突等することによる誤検出を防止し易くなる。
まず、図1に示した河川101の棚部(高水敷)103に、各洗掘検出器111のブロック長毎に切断された光ファイバ収納部1を、その開口した一面を天側にして所定の長さ(例えば、30m)まで複数個並べる。光ファイバ収納部1は、一面(天側)が開口し、光ファイバ13を収納する収納部と、開口を閉塞する蓋部とを有する箱型(溝型)に形成されている。
ここで、各ブロックの一端面には、剪断変形を抑える部材3を光ファイバ収納部1端から少し突出させた状態で、ビスを用いて光ファイバ収納部1に予め取り付けておく。これをもう一つのブロックの別の端面と嵌め合う形で連結していく。
洗掘検出装置100の最初のブロックの先端には、図2に示すように、エンドキャップ15を嵌めることで、後述するセメント充填時にセメントが流出するのを防ぐようにする。また、最後のブロックにも屋外配線用光ケーブル16(内部に光ファイバ13を芯線として含む)用の貫通孔(図示せず)を有するエンドキャップ17を嵌める。
尚、本実施形態では、洗掘検出装置100は水平面から構成される棚部(高水敷)103に設置されるが、洗掘検出装置の設置場所が急斜面であり各ブロック間のずれが予想される場合には、図4に示すように、ブロック間で仮設用の添え木6を両側面に配置し、洗掘検出装置全体の設置が完了するまで、添え木6で固定しておくようにすれば良い。
【0021】
次に、上記のように、ブロックがセットされた後、予めブロックのトータル長に加え、弛み分を見越した光ファイバ13とそれに融着された屋外配線用光ケーブル16(接続ボックス108までの長さ)を用意し、まず、光ファイバ13を溝型の光ファイバ収納部1内に略直線的にセットする。先頭のブロックから順にU字型のカッター部を有する剪断変形を抑える部材3のところに弛みができるように光ファイバ13の両端を光ファイバ収納部1にスリーブ押さえ部材11を介して固定していく。なお、この場合、予め光ファイバ13には、スリーブ10をつけておく。尚、最後のブロックでは、上述した屋外配線用光ケーブル16も同様な固定具で、当該ブロックの光ファイバ収納部1に固定する。
さらに、U字型のカッター部を有する部材4を剪断変形を抑える部材3にビス等で固定する。
続いて、弛ませた光ファイバ13の状態を保持するためにゴム粘土等の非硬化型ゴム粘土8を光ファイバ13の周りに詰める。例えば、非硬化型ゴム粘土8で光ファイバ13をサンドイッチ状に挟み込み、光ファイバ収納部1の底面に置く。この場合、非硬化型ゴム粘土8は溝型の光ファイバ収納部1の溝高さ方向には蓋2までは詰めずに空間を残しておく。
【0022】
その後、セメントミルク9を残った全ての空間部に充填し、蓋2を止め金具14でブロック毎に取り付ける。なお、このセメントミルク9の充填によりスリーブ押さえ部材11は完全に固定され、それに伴い光ファイバ13もスリーブ押さえ部材11部分で固定される。
尚、前述したように、洗掘検出装置100を斜面に設置するような場合、蓋2はセメントミルク9の流出を抑える機能も果たす。セメントミルク9の硬化後、仮設用の添え木6をつけた場合は添え木6を外し、上述したように、洗掘検出装置100を埋め戻した後、整地する。
尚、予め準備する光ファイバ13でセメントミルク9内に位置する部分には、収縮チューブ19等の緩衝材で硬化したセメントの割れの変位を緩和させる層を形成しておく。
また、光ファイバ13の弛みを確保するために、例えば、空間部に工作用のゴム粘土のようなものを入れた後、プラスチックのコップ等を嵌めて、テープで固定して空間部を確保するようにしても良い。即ち、光ファイバ13の弛みを確保する空間部の形成には、非硬化型ゴム粘土又は空間を作る仕切り板、或いはプラスティックのコップの蓋等を用いることが可能である。
以上において、洗掘検出装置100に組み込まれる光ファイバ13としては、例えば、コア径が数μm〜10μm程度、径125μmのシングルモード光ファイバを用いることが可能である。
また、光監視装置であるOTDR112としては、例えば、試験光波長1310nm、パルス幅10ns以上(できるだけ細かく)、空間分解能1m以上(できるだけ短かく)の高分解能形のOTDRを用いることが可能である。尚、OTDRに代えて、後述するFBGを用いる場合にも、洗掘検出装置100としては、以上に述べたのと同様な方法で製作が可能である。
【0023】
次に、洗掘検出装置100を用いて河川101の棚部(高水敷)103の洗掘の度合い(水平方向の洗掘長)を検出する方法について述べる。
上述した構成を有する本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、光ファイバ13を伝播する光の損失を監視する光監視装置としてのOTDR112(図6及び図7参照)を備えており、増水等に伴う河川101の棚部(高水敷)103の水平方向の洗掘が生じた場合、図1にそのイメージを示すように、洗掘によって水流中又はその上に露出した洗掘検出器111のブロックが水流の抗力又は自重により転倒することにより洗掘検出装置100(残りのブロック)から分離し、分離箇所の光ファイバ13に張力が働き、洗掘検出器111内のカッターのナイフエッジで光ファイバ13が切断されたことをOTDR112により検出することで、当該洗掘検出器111(ブロック)分の長さの洗掘を検出する。
【0024】
図6は、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムにおけるOTDR112を用いた洗掘の検出方法を説明するための図である。即ち、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、図6に示すように、パルス発振器121により駆動されたレーザダイオード(LD)122は、光パルスを出力し、光パルスは方向性結合器123を経て光ファイバ13に入射する。各洗掘検出器(ブロック)111内の光ファイバ13で生じた後方レーリ散乱光、あるいはフレネル反射光は入射端に戻ってくる。入射端に戻ってきた光は、方向性結合器123を通して受光素子(PD)124に入射し、電気信号に変換される。変換された電気信号は、増幅器125により所要のレベルまで増幅された後、解析処理部/表示部126により時間領域で解析され、解析結果が表示される。光ファイバ13の1mごとに各洗掘検出器(ブロック)を設置し、OTDR112に接続することにより洗掘の計測システムを構成しているので、洗掘の発生の有無と発生した洗掘の度合い(水平方向の洗掘長)を同時に検出することが可能である。
【0025】
図7は、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムの全体構成を示すブロック図である。図8は、本実施形態において、河川101の棚部(高水敷)103における洗掘の発生の仕方と各ラインの洗掘検出装置100による検出方法を説明するための図である。
図7に示すように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムは、観測小屋109(図1をも参照)内に設けられた観測セクション110と、棚部(高水敷)103や堤防104の法面104Aに設けられた計測セクション120から構成される。観測セクション110は、光監視装置としてのOTDR112と、このOTDR112に接続された制御用PC(Personal Computer)114と、OTDR112に接続され多芯光ファイバケーブル50の各光ファイバ(芯線)13より構成される光チャンネルを選択する光チャンネルセレクタ(3ポート)116とを有している。計測セクション120は、多芯光ファイバケーブル50の光ファイバ(芯線)13を3ラインに分岐する接続(ジョイント)ボックス108と、ライン1、ライン2及びライン3の各ライン、即ち、1ラインから成る光ファイバ13(図1も参照)に、1mの長さになる1ブロックの洗掘検出器111が30個接続され、全長30mになる洗掘検出装置100とを有している。即ち、ライン1、ライン2及びライン3におけるそれぞれの洗掘検出装置100は、先端側のNo.1ブロックから基端側(接続ボックス108側)のNo.30ブロックまで合計30個のブロックから成る洗掘検出器111を有している。
【0026】
尚、本実施形態によれば、1本の多芯光ファイバケーブル50(光ファイバ芯線が3本のもの)により観測セクション110と計測セクション120を接続(中継)すれば良いので、計測セクション120(計測現場)から離れた遠隔地に観測セクション110(観測所)を設置することが可能である。
また、本実施形態によれば、例えば、1ラインにつき約1秒で測定が可能であり、光チャンネルセレクタ(3ポート)116の切り替え時間も1ラインにつき約1秒で足りる。
尚、本実施形態では、1ラインの洗掘検出装置100における洗掘検出器111の個数(ブロック数)は30個としたが、30個よりも少なくすることや多くすることは勿論可能である。
さて、河川101の棚部(高水敷)103における洗掘は、河川101の水流部分105の増水等により、図8に破線81、82、83で示すように、棚部(高水敷)103を段階的に侵食する形で発生していく。かかる洗掘(侵食)をどこでどの程度まで発生したかを検知する必要があり、更には、どのぐらいの速さで洗掘(侵食)が進んでいるかまで検知できるのが望ましい。
【0027】
上述した構成を有する本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、増水等に伴って河川101の棚部(高水敷)103に水平方向の洗掘が生じた場合、図8にそのイメージを示すように、洗掘が生じた箇所に設置された各ラインの先端側のNo.1ブロックから順番に水流中又はその上に露出するようになる。そして、露出した各洗掘検出器111のブロックが水流の抗力又は自重により転倒して、洗掘検出装置100(残りのブロック)から分離して外れる。この結果、弛みを持たせていた光ファイバ13に分離箇所において張力が働き、洗掘検出器111内のカッターのナイフエッジで光ファイバ13が切断される。これをOTDR112により検出することで、当該洗掘検出器111(ブロック)分の長さの洗掘を検出する。
【0028】
例えば、棚部(高水敷)103に、図8に破線81で示すような洗掘(侵食)が進んだ場合、ライン1とライン2において、先端側のNo.1ブロックから順番にNo.3ブロックまでが洗掘検出装置100(残りのブロック)から分離したことが検知されるが、ライン3ではブロックの分離は全く検知されない。この結果、ライン1とライン2の2箇所で略3m程度の洗掘(侵食)が進んだことが分かる。また、ライン3の箇所では、未だ、殆ど洗掘(侵食)が生じていないことが分かる。
【0029】
次に、棚部(高水敷)103に、図8に破線82で示すような洗掘(侵食)まで進んだ場合、ライン1において、更にNo.4ブロックが洗掘検出装置100(残りのブロック)から分離したことが検知され、これにより、ライン1の箇所で破線81で示した場合よりも更に1m程度の洗掘(侵食)が進んだことが分かる。また、ライン2において、更にNo.4ブロック及びNo.5ブロックが洗掘検出装置100(残りのブロック)から分離したことが検知され、これにより、ライン2の箇所では破線81で示した場合よりも更に2m程度の洗掘(侵食)が進んだことが分かる。尚、ライン3では、依然としてブロックの分離は全く検知されないので、ライン3の箇所では、依然として洗掘(侵食)が生じていないことが分かる。
【0030】
続いて、棚部(高水敷)103に、図8に破線83で示すような洗掘(侵食)まで進んだ場合、ライン1において、更にNo.5ブロックが洗掘検出装置100(残りのブロック)から分離したことが検知され、これにより、ライン1の箇所で破線82で示した場合より、更に1m程度の洗掘(侵食)が進んだことが分かる。また、ライン2において、その後のブロックの分離は検知されない。これにより、ライン2の箇所では破線82で示した場合より洗掘(侵食)が進んではいないことが分かる。尚、ライン3では、依然としてブロックの分離は全く検知されないので、ライン3の箇所では、依然として洗掘(侵食)が生じていないことが分かる。
【0031】
図9は、OTDR112を用いたトレースデータの一例を示すグラフである。洗掘に伴って発生する光の損失をOTDR112によって測定することで、洗掘の発生の有無と、当該洗掘の発生度合いを検出することができる。即ち、洗掘により洗掘検出装置100が1ブロックずつ(各洗掘検出器111ずつ)分離するのに伴い、その分だけ洗掘検出装置100に挿通された光ファイバ13の長さが短くなる。この短くなった長さをOTDR112で計測することにより洗掘が発生したこと、及び発生した洗掘の度合いを検出する。
実験データとして、図9(a)に示すように、OTDR112と、このOTDR112に接続された制御用PC114とを用意し、OTDR112に約500mの長さの光ファイバ13を接続しておき、所定の長さごとにハサミにて切断した場合の光の損失の変化をトレースしてみた。図9(b)に、光ファイバ13の端面切断による端面位置変化に関するOTDR112のトレースデータを示す。図9(c)に、光ファイバ13の累積切断距離に対する図9(b)のトレースデータからの読み値を示す。
図9(b)に示すグラフにおいて、縦軸は反射光量(の低下)をmdBで表し、横軸は光ファイバの長さを表す。500mの場合の基準値に対し、切断長を2m、4m、6m、8m、10m、12m、13m、14m、15m、16mとした場合に、それに応じてトレース波形が変化したことを確認できた。また、図9(c)に示すグラフにおいて、縦軸には図9(b)に示したOTDRトレースデータからの読み値をとり、横軸には光ファイバの累積切断距離をとった結果、略線形の結果が得られることが分かった。即ち、図9(b)に示すグラフにおいて反射光量の立ち上がりの距離を1mずつきって、立ち上がりの位置を測定し、図9(c)に示すグラフにおいて、横軸は切断した距離、縦軸はOTDRで読んだ長さを見ると、行ったものと同じ長さを判別できる。
これにより、OTDR112で計測することにより光ファイバ13の長さが1mずつ短くなったこと、即ち、洗掘検出装置100が1ブロックずつ(各洗掘検出器111ずつ)分離したことを正確に検出可能であることを確認することができた。
【0032】
以上のような構成を有する本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムによれば、以下の効果が得られる。
各ブロックの接続部は、切れ目があり他の部分より弱くなっており、さらに、光ファイバ13に弛みがあるため光ファイバ13の張力を受けずに比較的小さい力でブロックが傾く、その後、水流の抗力または自重により転倒することによりブロックが分離し、光ファイバ13に張力が働き、剪断変形を抑える部材3、U字型のカッター部を有する部材4のカッターのナイフエッジ部で確実に光ファイバ13を切断することができる。
剪断変形を抑える部材3により横ずれが少ない、また、光ファイバ13の弛みにより、少々の横ずれに対しては、光ファイバ13に張力が働かず(突っ張らずに)、かつ、非硬化型ゴム粘土8がカッターのナイフエッジ部に充填されており、ナイフエッジ近傍の光ファイバ13が動かず、切断することがない(設置時、製作時等)。
各ブロックの内側にセメントミルク9を充填することにより、光ファイバ13を外部環境から隔離でき、流入する砂や小石等による磨耗や衝撃から保護でき、堅牢で信頼性の高い洗掘検出装置を実現できる。
各ブロック(収納部1)が溝型であり、一面が開口しており光ファイバ13の配線およびセメントミルク9の充填作業等の作業性と信頼性が高い。
セメントミルク9内に位置する光ファイバ13は、セメントミルク9が硬化した後割れが発生することが予測される場合には、収縮チューブ19等で割れの変位を緩和吸収させる緩衝層を形成することで、光ファイバ13の割れを防ぐことができる。
尚、ブロック長をOTDRの距離分解能より短くする必要がある場合には、収納部1の溝中央のセメント充填部の空間に、損失が起こらない程度の曲率で光ファイバ13を何巻きかして束ね配し、セメントミルク9を充填することにより、対応できる。
【0033】
以上のように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムは、河川101の川底102と水平な方向にある棚部(高水敷)103に対する取り付け・設置等の施工性に優れると共に、監視対象物である棚部(高水敷)103に生じた洗掘を光ファイバの伝播光量の変化に効率良く作用させ得る構造を有している。また、比較的低コストでシステムを設置可能であるという大きな利点を有している。即ち、本実施形態では、洗掘検出装置100は構造が簡単であるため比較的安価に製作することができ、また、測定にも比較的安価なOTDR112を用いているため、広範囲に亘る洗掘検出システムを低コストで構築することができる。
【0034】
尚、本発明の光ファイバ式洗掘検出システムを河川堤防等における災害防止対策に用いても、センサ部が光ファイバのため、誘導及び耐雷対策をとる必要が無い。
【0035】
光ファイバセンサの測定に関する他の方式としてブリルアン散乱光を利用したラインセンサ(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer:B−OTDR方式)や光通信の分野でフィルタとして開発されたファイバ・ブラッグ・グレーティング(Fiber Bragg Grating:FBG)方式もある。OTDRは広範囲に亘るモニタリング(洗掘検出)に非常に適しており、測定器も比較的安価なため、本実施形態では、OTDR方式を採用したが、B−OTDR方式やFBG方式も本発明に採用可能なことは勿論である。
【0036】
以下に、本発明の第2の実施形態として、FBG方式を採用した光ファイバ式洗掘検出システムについて述べる。この第2の実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムの基本構成、その1ラインの洗掘検出装置、1ブロックの洗掘検出器、収納部の構成等、及びその設置方法は、図1乃至図5に示した第1の実施形態のものと同様であるので、その説明は省略する。
【0037】
図10は、この第2の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出システムの全体構成を示すブロック図である。尚、図7に示した第1の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出システムの構成と同様の部分は同様の参照符号を付し、その説明は省略する。図10に示すように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、観測セクション110は、光監視装置として、OTDR112に代えてFBG波長測定器119を有している。尚、このFBG波長測定器119に接続された制御用PC114にインストールされる計測ソフトは、FBG波長測定用のものであるのは勿論である。
尚、光チャンネルセレクタ(3ポート)116の切り替え時間は、OTDR112を用いた第1の実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムと同様に、1ラインにつき約1秒である。しかしながら、本実施形態のFBG波長測定器119を用いた光ファイバ式洗掘検出システムによれば、例えば、1ラインにつき最小で約1/200秒で測定が可能なので、より高速な測定を行うことができる。
【0038】
図11は、FBG波長測定器119による洗掘測定の原理を説明するための図である。洗掘に伴って減少する反射波長の数を計測することで、洗掘の発生の有無と、当該洗掘の度合いを検出することができる。即ち、洗掘により洗掘検出装置100が1ブロックずつ(各洗掘検出器111ずつ)分離するのに伴い、その分だけ各洗掘検出器111に埋め込まれたFBGが切断されることで、FBGによる反射波長の数が減少する。従って、減少する反射波長の数を計測することで、洗掘が発生したこと、及び発生した洗掘の度合いを測定することができる。例えば、図11(a)に示すように、例えば、洗掘検出装置100の設置時において、洗掘検出器111が30個備わっていれば、各洗掘検出器111にはそれぞれ反射波長の異なるFBGが埋め込まれているので、同図のグラフに示すように、λ1〜λ30までの30個の波長が観察できる。これに対して、図11(b)に示すように、例えば、洗掘が発生し、洗掘検出装置100の先端側から洗掘検出器111が3個(3ブロック)分離した場合、同図のグラフに示すように、λ1〜λ27までの27個の波長しか観察できなくなる。これにより、洗掘が発生したこと、及び発生した洗掘の度合いは、約3mであることを測定することができる。
本実施形態では、FBGを用いるので、FBGを1つのブロック当たり1個割り当てる、即ち、ある波長を割り当てることで、例えば、測定において200ヘルツ(Hz)ぐらいでサンプリングすれば、リアルタイムで洗掘を監視できる。水平方向の洗掘は比較的早い時間で進んでいくため、早期の検出が必要であるが、FBGはこれに適していると言う事ができる。
【0039】
以上に述べたように、第1及び第2の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムによれば、河川の川底と水平な方向にある棚部(高水敷)における水平方向の洗掘を有効に検出することができる上に、洗掘深度又は洗掘長が大きい場合にも適用でき、且つ、低コスト化も可能となる。
ところで、以上に述べた第1及び第2の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムは、上述したように、河川の川底と水平な方向にある棚部(高水敷)における水平方向の洗掘を検出するものである。水平方向の洗掘であれば、洗掘によりブロックが露出すると、自重により転倒(折れて外れる)するから検出し易いという利点もある。即ち、ブロックが転倒する(倒れて外れる)ために水流の抗力はあまり必要としない。
一方、鉛直(深さ)方向の洗掘を検出する場合には、上端側のブロックから、いわば、だるま落としの様になるから、洗掘検出装置の底部から光ファイバ(ケーブル)を引っ張らなければならないので、洗掘検出装置を敷設する場合には、川底や棚部(高水敷)をかなり深く掘る必要がある。このため、光ファイバ(ケーブル)の配線や敷設が難しくなる。これに対し、本実施形態の洗掘検出装置において、水平方向の洗掘を検出する場合には、例えば、50cmぐらい掘った所に洗掘検出装置を埋め込んで、掘った(開口した)状態で敷設すれば良いので、比較的簡単に光ファイバ(ケーブル)の敷設ができる。
【0040】
一方、本明細書の冒頭で述べたように、降雨や増水に伴って河川等の流量や流速が増加すると、河川等の川底等に鉛直(深さ)方向の洗掘を生じることも多い。この場合、例えば、川底に鉛直(深さ)方向の洗掘を生じると河川に掛けられた道路用或いは鉄橋用の橋(ブリッジ・鉄橋等)の橋脚の安定性・安全性に影響する虞れがあり、一方、河川の川底と水平な方向にある棚部(高水敷)において鉛直(深さ)方向の洗掘を生じると、堤防の裾の部分が侵食されることとなり、棚部(高水敷)における水平方向の洗掘が生じた場合と同様に、堤防の決壊の虞れを警鐘する現象となる。
このような状況下、河川等の川底等における鉛直(深さ)方向の洗掘を有効に検出でき、且つ、従来の技術では不十分であった諸問題点を解決した洗掘検出装置又はシステム、即ち、光ファイバを確実に切断すること、また、光ファイバを構造体に埋め込み、切れ易い光ファイバの耐久性・信頼性を確実なものにすること、また、輸送、移動、設置時の操作性、施工性を向上させることが可能な光ファイバ式洗掘検出装置又はシステムの開発が望まれている。
そこで、以下に、図12乃至図22を参照して、かかる鉛直(深さ)方向の洗掘に本発明を適用した第3の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムについて述べる。
【0041】
図12は、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムの構成を示す概念図である。図13は、図12に示す光ファイバ式洗掘検出システムに用いる1ラインの洗掘検出装置の基本構成を示す図、図14は、図13に示す洗掘検出装置におけるA部の拡大詳細図、図15は、洗掘検出器同士の接合部をカッターによる光ファイバの切断機構を中心に示す縦断面図、図16は、図15に示す洗掘検出器同士の接合部を拡大して示す断面図、図17は、図15に示す洗掘検出器同士の接合部に用いるカッターを示す図であり、(a)は、そのカッターの断面図、(b)は、そのカッターの側面図である。図18は、図15に示す洗掘検出器同士の接合部に用いる他のカッターの例を示す断面図、図19乃至図22は、図13に示す洗掘検出装置の製作方法を説明するための図であり、図19は、内筒を組み立てた状態、図20は、外筒を挿入し、上板を取り外した状態、図21は、セメントミルク充填時の充填方法、図22は、設置時の筋金の取り外し方法を説明するための図である。
【0042】
図12(a)に示すように、本実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムは、河川201の川底202と水平な方向にある棚部(高水敷)207及び208を監視対象物とし、その棚部(高水敷)207及び208における鉛直(深さ)方向の洗掘を検出するものである。本実施形態では、棚部(高水敷)207及び208における鉛直(深さ)方向の洗掘を対象としたが、川底202における鉛直(深さ)方向の洗掘を検出し得るのは勿論である。図12において、204は堤防、204Aは堤防の法面、205は河川の水流部分を示す。尚、図12(b)は、図12(a)に示す洗掘検出装置300のひとつを拡大して示すと共に、棚部(高水敷)207又は208に生じた鉛直方向の洗掘により、その露出した上端側のブロック311が水流205の抗力により転倒し、光ファイバ312が切断(断線)された状態を示した図である。
【0043】
即ち、図12(a)に示すように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、1本のラインを構成する光ファイバ312をその内部に挿通させた複数(3つ)の洗掘検出装置300が河川201の川底202と水平な方向にある棚部(高水敷)207及び208に設けられている。これら洗掘検出装置300は、それぞれ内部を光ファイバ312が挿通されており、図12では図示しないが、各光ファイバ312は洗掘検出装置300の端部で屋外配線用光ケーブル16(図1を参照)内の光ファイバ312に融着され、これら屋外配線用光ケーブル16により接続(ジョイント)ボックス108を介して観測小屋109内の光監視装置としてのOTDR112(図6及び図7参照)に接続されているものとする。
本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムの特徴は、図12(a)に示すように、複数ブロックから成る洗掘検出装置300をその上端面300Aが河川201の棚部(高水敷)207及び208と略同じ高さ(深さ)になるように棚部(高水敷)207及び208に鉛直方向に埋め込み、棚部(高水敷)207及び208に鉛直方向の洗掘を生じると、図12(b)に示すように、露出した上端側のブロック311が水流205の抗力により転倒して内部の光ファイバ312に張力が働き、光ファイバ312がエッジ部に配置したカッターにより切断され、この光ファイバ312の切断(断線)による光の損失をOTDR112で測定することで、洗掘の発生を検出し、また、何ブロック分の光ファイバの切断(断線)が生じたかを判定することで、洗掘の程度をも検出することにある。
【0044】
このように、洗掘によって露出したブロックが水流の抗力により転倒し、ブロックの転倒により光ファイバが切断されたことを検知する点が特徴である。尚、転倒初期においては、光ファイバの弛みのため、光ファイバは突っ張らない。即ち、ブロックは抵抗なく傾いて転倒し、その後、突っ張るようになる。
各洗掘検出装置300は、図12に示すように、それぞれ所定の長さの洗掘検出器311が複数個直列に連結された構成を有している。即ち、1ラインの洗掘検出装置300は、1ブロックの洗掘検出器311が複数ブロック連結されて構成されている。
【0045】
以下、図13乃至図22を参照しつつ、洗掘検出装置300について詳細に説明する。
洗掘検出装置300は、図13に示すように、10個に分割されたブロック(各洗掘検出器311)から構成されている。各洗掘検出器311は、例えば、それぞれ鉛直方向の長さが200mm(20cm)の内筒302と外筒304を組み合わせ、これらが10個(10段)連結され、全体で鉛直方向の長さが2000mm(2m)となる構成を有している。ここで、内筒302と外筒304は、それぞれ塩化ビニール管により構成され、内筒302は径が60mmで厚さが1.8mmの塩化ビニール管により構成され、外筒304は径が89mmで厚さが2.7mmの塩化ビニール管により構成されている。
【0046】
内筒302の外表面には、光ファイバ312が所定の長さ分巻き付けられており、この光ファイバ312は、例えば、径が0.9mmのビニール被覆光ファイバにより構成されている。尚、上述したOTDR112の距離分解能が1mのため、20cmのブロック(各洗掘検出器311)1段で光ファイバ312が1mになるように、光ファイバ312を内筒302の外表面に巻き付けている。
【0047】
図14は、図13に示すA部の拡大詳細図であり、洗掘検出装置300の最上端のブロック(洗掘検出器)311−1と次のブロック(洗掘検出器)311−2が連結(接続)された構成を示している。図14に示すように、最上端のブロック(洗掘検出器)311−1の内筒302−1の下端側には、フランジ状の内筒カラー306が接合されており、次のブロック(洗掘検出器)311−2の内筒302−2の上端側には、フランジ状の内筒カバー308が接合されている。フランジ状の内筒カラー306は、比較的短い長さの筒状(リング状)に形成され、鍔部306Aを備えている。鍔部306Aの外周縁には、凸部306aが形成されている。フランジ状の内筒カバー308は、内筒カラー306と略同じ長さのキャップ状(蓋状)に形成され、フランジ部308Aを備えている。そして、内筒カバー308のフランジ部308Aは、内筒カラー306の鍔部306Aに合わされて、その周縁が凸部306aにすっぽり嵌る径寸法に形成されている。即ち、内筒カバー308のフランジ部308Aは、例えば、内筒カラー306の鍔部306Aに合わされて、その周縁を凸部306aに嵌め込むことで、内筒カバー308と内筒カラー306が嵌合し合うようになっている。但し、内筒カバー308のフランジ部308Aの厚みに対して、内筒カラー306の鍔部306A周縁部に形成された凸部306aの高さは、その半分以下に抑えられている。かかる構成により、最上端のブロック(洗掘検出器)311−1の内筒302−1と次のブロック(洗掘検出器)311−2の内筒302−2が連結(接続)される。
【0048】
一方、最上端のブロック(洗掘検出器)311−1の外筒304−1の下端側には、外周面側から内周面側にかけて外周面側半分が凸で内周面側半分が凹となる段差が形成されている。また、次のブロック(洗掘検出器)311−2の外筒304−2の上端側には、外周面側から内周面側にかけて外周面側半分が凹で内周面側半分が凸となる段差が形成されている。そして、外筒304−2の上端側の段差における凸部3042aは、外筒304−1の下端側の段差における凹部3041bにすっぽり嵌る径寸法に形成されている。即ち、外筒304−2は、その上端側を、例えば、外筒304−1の下端側に合わされて、凸部3042aを凹部3041bに嵌め込むことで、外筒304−2と外筒304−1が嵌合し合うようになっている。但し、両段差の大きさ、即ち、凸部3042aの高さと凹部3041bの深さは、外筒304−2と外筒304−1それぞれの厚み以下に抑えられている。かかる構成により、最上端のブロック(洗掘検出器)311−1の外筒304−1と次のブロック(洗掘検出器)311−2の外筒304−2が連結(接続)される。
【0049】
以上の構成により、最上端のブロック(洗掘検出器)311−1と次のブロック(洗掘検出器)311−2が連結(接続)されるが、上端側のブロック311−1が所定の剪断力(水流205の抗力)を受けると、上端側のブロック311−1が転倒して次のブロック311−2から分離するようになっている。尚、図13及び図14では図示しないが、以下、当該ブロックと次のブロックとは、同様の構成を有して連結(接続)されており、これにより、洗掘検出装置300は、印籠の如くブロック同士が連結(接続)され、その内筒の端部同士及び外筒の端部同士の噛み合いにより、上端側のブロックが所定の剪断力(水流205の抗力)を受けると、その下方のブロックと剪断されるのではなく、転倒する(倒れて離れる)ようになる。尚、洗掘が生じるからには、ある程度の流速がある河川なので、かかる構造によりブロックは確実に分離するので、十分に洗掘を検出可能である。
尚、図14において、径が0.9mmのビニール被覆光ファイバにより構成される光ファイバ312は、ブロック311−1の1段で1mの長さになるように、内筒302−1の外表面に巻き付けられた上で、ブロック311−2まで伸長され、このブロック311−2でも1mの長さになるように、内筒302−2の外表面に巻き付けられている。尚、各内筒302−1、302−2、・・・・、302−10の外表面には、それぞれ光ファイバ312の巻き付け部分を覆うように、光ファイバ固定及び保護用収縮チューブ307−1、307−2、・・・・、307−10が嵌められている。これら光ファイバ固定及び保護用収縮チューブ307−1、307−2、・・・・、307−10(図13参照)は、後述するように、光ファイバ312の弛みを形成しつつ、露出したブロックが水流の抗力により転倒した場合には、この弛みが解消された上に光ファイバ312に張力が働くように、弛みの両端側を固定する用途を持っている。また、巻き付け部分を中心に光ファイバ312を覆うことで、砂等の異物が内筒302と外筒304間に混入した場合に、光ファイバ312を保護し、その断線(洗掘の発生に起因しない断線)を防止する用途を持っている。
尚、図14に示すように、露出したブロックが水流の抗力により転倒した場合に光ファイバ312に張力が働き、光ファイバ312がエッジ部に配置したカッターにより切断される箇所は、内筒カバー308と内筒カラー306が嵌合し合う箇所になる。
【0050】
ここで、本発明の要部のひとつである洗掘検出器同士の接合部におけるカッターによる光ファイバの切断機構について、図15乃至図18を参照して説明する。
図15及び図16に示すように、上述した内筒カバー308のフランジ部308Aと内筒カラー306の鍔部306Aには、対応する箇所にそれぞれ貫通孔308Ahと306Ahが形成されており、これら貫通孔308Ahと306Ahが合わされて両者が嵌合されることにより、これら貫通孔308Ahと306Ahが合一して、内筒302の外表面に巻き付けられた部分から伸長する光ファイバ312の挿通孔312hが形成されている。この挿通孔312hには、図15及び図16に示すように、挿通孔312hの内周面上に断面三角形状に突起するカッター316が形成されている。このカッター316は、図17(a)及び(b)に示すカッター部材171を2つ用意し、例えば、内筒カバー308のフランジ部308Aと内筒カラー306の鍔部306Aとの接合部の両側から挿通孔312hの中に押し込んで接着剤で固定する、或いは叩き込んで固定することにより、挿通孔312hの内周面上に形成することができる。また、変形例として、図18に示すように、例えば、市販のかみそりの刃186を内筒カバー308のフランジ部308Aと内筒カラー306の鍔部306Aとの接合部に固定することにより、挿通孔312hの内周面上に形成することもできる。
【0051】
次に、図19乃至図22を参照して、洗掘検出装置300の製作方法を説明する。尚、図19乃至図22では、説明を簡略化するため、内筒302及び外筒304を含むブロックを4個(4段)だけ示したが、本実施形態では、上述したように、洗掘検出装置300は、10個(10段)のブロック(洗掘検出器311)を含んでいる。
まず、図19に示すように、底板332に筋金334を付けた状態で、最下端の内筒302から最上端の内筒302まで所定個数の内筒302を筋金334の周囲に入れて積み重ねる。最上端の内筒302上に上板336を置き、上板336の上から筋金334に形成されたネジ溝に合わせてナット338を締めると、内筒302を保持できる。続いて、最下端の内筒302の外表面に光ファイバ312を1m分巻いて、フランジ部の挿通孔312hを通して、また、次の内筒302の外表面に光ファイバ312を1m分巻いて、フランジ部の挿通孔312hを通して、また、次の内筒302の外表面に光ファイバ312を1m分巻いて、フランジ部の挿通孔312hを通して、を最上端の内筒302まで繰り返す。尚、図19には、図示しないが、光ファイバ312の巻き付け部分を覆うように、光ファイバ固定及び保護用収縮チューブが嵌められる。或いは、変形例として、セメントミルク9を充填する時に、光ファイバ312が動かないように、光ファイバ312の巻き付け部分をテープ(幅広のテープ)で固定するようにしても良い。
【0052】
尚、内筒302の外表面に光ファイバ312を1m分巻いた後フランジ部の挿通孔312hを通す場合、空間部90(図16参照)内の光ファイバ312は弛ませておく。ブロック同士の接合部における光ファイバ312の弛みにより、少々の横ずれ等があっても光ファイバ312に張力は働かず、光ファイバ312は切断されないようにするためである。図16に示すように、光ファイバ312はブロック同士の接合部の両側が弛んでいる。この弛みがなくてピンと張っているとブロックが転倒しにくくなってしまう。即ち、弛み分だけ、ある程度は(弛んだ所までは)抵抗無く転倒して、その後、更に転倒すると光ファイバ312に張力が働き、カッター316に当たって切断される。尚、この光ファイバ312の弛みを維持し、また、ブロックが転倒した場合に張力を受けてカッター316により切断されるスペースを確保するために、図16に示すように、空間部90が設けられている。この空間部90を確保するために、後述するセメントミルク9の充填時にセメントミルク9が空間部90にまで流入しないように仕切板95を設けておく。或いは、空間部90には、上述した第1の実施形態と同様に、弛ませた光ファイバ312の状態を保持するために非硬化型ゴム粘土8を光ファイバ312の周りに詰めるようにしても良い。
【0053】
次に、図20に示すように、筋金334に合わせて締めたナット338を外して、上板336を取り外した上で、積み重ねられた内筒302の外周に外筒304を所定個数まで挿入する。その上で、最上端の内筒302及び外筒304上に上板336を置き、上板336の上から筋金334に形成されたネジ溝に合わせてナット338を締めると、外筒304を含めて保持できる。このように、筋金334を付けて上板336上のナット338を締めると、外筒304を含めて保持できる結果、ブロックが崩れることが無い。光ファイバ312には弛みがあるので、少しぐらい張力が働いても、直ちに切断されることは無い。
続いて、図21に示すように、各外筒304に2つずつ形成された充填穴342から内筒302と外筒304間にセメントミルク9を充填する。この場合、仕切板95を設けてあるので、セメントミルク9は空間部90にまでは流入しない。或いは、非硬化型ゴム粘土8が詰められている場合には、その部分には流入しない。尚、図16に示すB部において、内筒302のフランジ部分と外筒304の内周面との間にはわずかに隙間があるが、セメントミルク9が流れる程ではない。
尚、各ブロックを結合しておかないと、製作時、輸送時に転倒してしまうと光ファイバ312が断線してしまう虞れがあるので、筋金334で各ブロックを結合しておく。
そして、図22に示すように、洗掘検出装置300の設置時には、セメントミルク9を充填した後の洗掘検出装置300全体を立てておき、筋金334の上部に形成された穴344に心棒346等を入れ、この心棒346等を回して筋金334を抜く。心棒346等を介して筋金334を回すと底板332にネジ込んだ筋金334のボルト部が抜け、筋金334が抜ける。
【0054】
本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムによれば、以下の効果が得られる。
まず、全方向に対して光ファイバ312が張力を受けずに傾き、光ファイバ312がカッター316に当たり、その後、水流の抗力または自重により転倒することにより、光ファイバ312に張力が働き、少ない力で光ファイバ312を切断することができる。
また、上述したフランジ同士の噛み合い構造により、横ずれが少ない、また、光ファイバ312の弛みにより、少々の横ずれに対しては、光ファイバ312に張力が働かない(突っ張らない)ので、製作時、輸送時、設置時等において、光ファイバ312がカッター316に当たっても、切断することが無い。
また、洗掘が生じてブロックが転倒した場合に光ファイバ312が確実に切断されるように、積極的に、ナイフエッジ様の部材であるカッター316を設けたので、洗掘の検出精度が高まる。尚、切れ易い光ファイバ312(ファイバの芯線)を使っても良いが、切るために積極的にカッター316を設けたので、切れ易くない光ファイバ312(ファイバの芯線)を使うことも可能である。
更に、筋金334により各ブロックを横ずれなしに保持できる。このため、製作時、設置時の取り扱いが楽であり、設置後に筋金334は簡単に取り除くことが可能である。
【0055】
また、各ブロックの内外筒間にセメントミルク9を充填し、光ファイバ312(切れ易い光ファイバ芯線)を埋め込むことにより、構造物とセンシングエレメント(光ファイバ312)が一体化され、耐環境性の優れた堅牢な検出部を実現できる。
【0056】
更に、本実施形態の洗掘検出装置300は、洗掘が生じてブロックが露出すると、浮力ではなく抗力を受けて転倒し、光ファイバ312が切断されるので、特に、十分な浮力を確保するための発泡剤等を充填する必要が無い。また、浮力を利用しないので、材質等の制限も受けない。
更に、従来例では、洗掘ではないのに、砂や異物が混入して、折れ易い光ファイバを折ってしまい、洗掘ではないのに洗掘だと誤判断してしまう虞れがあるのに対し、本実施形態の洗掘検出装置300においては、構造的には、内筒302があり、その外表面に光ファイバ312が巻いてあり、その上に外筒304を嵌めてある。また、内筒302と外筒304の間にセメントを充填してあるので、内筒302と外筒304間に砂や異物が混入してしまうことが無い。即ち、光ファイバ312は殆ど露出しているところがないので、砂や異物が混入しても、それによって切断されることが無い。
尚、洗掘検出器(ブロック)は、円筒形のものに代えて断面矩形のものを用いることもできる。但し、円筒形ならば、比較的安価なパイプ材様のものを使えるメリットがある。
【0057】
以上、本発明について実施の形態をもとに説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、河川における洗掘の発生の有無及び洗掘の度合いを検出する装置等のみならず、他にも、海や湖における同様の洗掘を検出する装置等にも用いることができる。更に、例えば、道路斜面モニタリングや地すべり検知等のための装置、システム、方法等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムの全体構成を示す概念図である。
【図2】図1に示す光ファイバ式洗掘検出システムにおける1ラインの洗掘検出装置の基本構成を示す図である。
【図3】図2に示す1ラインの洗掘検出装置における1ブロックの洗掘検出器の縦断面図である。
【図4】図2に示す1ラインの洗掘検出装置における1ブロックの洗掘検出器の平面図である。
【図5】図3及び図4に示す洗掘検出器における光ファイバ収納部の要部を拡大して示す図であり、(a)は光ファイバ収納部を形成するSUS材に蓋を取り付けた状態の横断面図、(b)は光ファイバ収納部を形成するSUS材に蓋を取り付け、更に蓋止め金具を取り付けた状態の横断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムにおけるOTDR112を用いた洗掘の検出方法を説明するための図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施形態において、河川101の棚部(高水敷)103における洗掘の発生の仕方と各ラインの洗掘検出装置100による検出方法を説明するための図である。
【図9】OTDR112を用いたトレースデータの一例を示すグラフである。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【図11】FBG波長測定器119による洗掘測定の原理を説明するための図である。
【図12】本発明の第2の実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムの構成を示す概念図である。
【図13】図12に示す光ファイバ式洗掘検出システムに用いる1ラインの洗掘検出装置の基本構成を示す図である。
【図14】図13に示す洗掘検出装置におけるA部の拡大詳細図である。
【図15】洗掘検出器同士の接合部をカッターによる光ファイバの切断機構を中心に示す縦断面図である。
【図16】図15に示す洗掘検出器同士の接合部を拡大して示す断面図である。
【図17】図15に示す洗掘検出器同士の接合部に用いるカッターを示す図であり、(a)は、そのカッターの断面図、(b)は、そのカッターの側面図である。
【図18】図15に示す洗掘検出器同士の接合部に用いる他のカッターの例を示す断面図である。
【図19】図13に示す洗掘検出装置の製作方法を説明するための図であり、内筒を組み立てた状態を示す。
【図20】図13に示す洗掘検出装置の製作方法を説明するための図であり、外筒を挿入し、上板を取り外した状態を示す。
【図21】図13に示す洗掘検出装置の製作方法を説明するための図であり、セメントミルク充填時の充填方法を示す。
【図22】図13に示す洗掘検出装置の製作方法を説明するための図であり、設置時の筋金の取り外し方法を示す。
【符号の説明】
【0060】
13 光ファイバ、 16 屋外配線用光ケーブル、100 洗掘検出装置、
101 河川、 102 川底、 103 棚部(高水敷)、104 堤防、
104A 法面、 105 河川の水流部分、106 棚部、
108 接続(ジョイント)ボックス、 109 観測小屋、112 OTDR
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、河川堤防等の防災モニタリングのために河川堤防等の洗掘を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、降雨や増水に伴う河川堤防の決壊や山岳道路の岩壁の崩落を予測し、これらの災害を未然に防止するために河川堤防等のモニタリングを行う手段として光ファイバを利用したセンサが注目されている。即ち、センサ機能として長期間に亘るオンライン計測が可能である上に、無誘導性、防爆性、耐腐食性等の特徴を持つ光ファイバは、上述した災害等の防止システムの構成要素として有望であり、光ファイバの種々の特性を利用して監視対象物の変位等を測定する光ファイバセンサとして、多くの提案がなされている。
【0003】
ところで、河川堤防等の防災モニタリングの一態様として、河川堤防等の洗掘を検知する必要性が唱えられている。これは、例えば、降雨や増水に伴って河川の流量や流速が増加して川底等に洗掘を生じると、河川等に掛けられた道路用或いは鉄橋用の橋(ブリッジ・鉄橋等)の橋脚の安定性・安全性に影響する虞れがあるからである。従来、かかる河川堤防等の洗掘を検知する技術として、幾つかの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、光ファイバを巻きつけた円筒体が、洗掘により露出した場合に円筒部の浮力により分離し、光ファイバが切断され、その切断長さに基づいて洗掘の度合いを検出する光式河床洗掘状態検出センサ(以下、第1の従来例と称する)が記載されている。
また、特許文献2には、円筒状のパイプ外表面に光ファイバを巻きつけたユニットを複数形成し、各ユニットが曲げられたとき、ユニット間に設けられた鞘管が破断し、その中を通した光ファイバも曲げ又は破断を受ける光ファイバセンサ(以下、第2の従来例と称する)が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−141455号公報
【特許文献2】特開平11−337423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
後で図面を用いて説明するように、河川には、堤防の法面に連続するように川底と水平な方向に棚部(高水敷)が形成されることが多く、降雨や増水に伴って河川の流量や流速が増加すると、かかる棚部(高水敷)に水平方向の洗掘を生じる場合がある。このような洗掘は堤防が決壊する虞れに直結するものであり、早期に確実に検出する必要性があるにも拘わらず、従来、このような棚部(高水敷)の水平方向の洗掘を有効に検知する技術は殆ど提案されていない。
例えば、上記第1の従来例は、洗掘は、主に河川等の川底等における鉛直(深さ)方向を対象にしたものであり、川底等と水平な方向の洗掘は検出困難である。また、浮力により分離させるので、十分な浮力を確保して光ファイバを確実に切断させるには、質量に見合う容積の発泡剤等を充填する必要があり、形状的な制約を受ける。更に、上下円筒間の接続部から砂等の異物が流入して光ファイバを損傷する懸念が残る。
また、上記第2の従来例では、主に斜面又は水平面のボウリング孔に設置できるが、ボウリングという大変な作業が必要になり、設置コストも高くなってしまう。
更に、上記第1及び第2の従来例は、共に、対象としている洗掘深度又は洗掘長が大きい場合には、適用の制限を伴うという問題がある。
【0006】
本発明の第1の課題は、川底と水平な方向の洗掘を検出するのに有効である上に、洗掘深度又は洗掘長が大きい場合にも適用でき、且つ、低コスト化が可能な光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムを提供することにある。
【0007】
また、本発明の第2の課題は、光ファイバを構造体に埋め込むことで該光ファイバの耐久性及び信頼性を確保しながらも、該光ファイバを有効に切断することが可能な光ファイバ式洗掘検出装置であって、製作時、移動時及び設置時の作業性や施工性を向上させた光ファイバ式洗掘検出装置及び該洗掘検出装置を含む光ファイバ式洗掘検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第1の課題を解決するため、本発明の第1の様相では、光ファイバを用いて監視対象物に生じる洗掘を検出する光ファイバ式洗掘検出装置を、複数連結された箱型のブロックと、これらブロックに略直線的に連通した光ファイバとを備え、前記洗掘が生じることにより隣接して連結されたブロック間に力が作用すると、該ブロック間の連結部で折れ曲がって分離し、前記連結部付近に設けたカッター部材のナイフエッジ部に前記光ファイバが当たって切断されたことを、該光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置により検出するようにした。
かかる構成によれば、川底と水平な方向の洗掘も有効に検出することができる上に、洗掘深度又は洗掘長が大きい場合にも適用でき、且つ、低コスト化が可能になる。
【0009】
また、前記光監視装置は、OTDRから入射した光の反射光または後方散乱光を測定するように構成されるのが好適である。
尚、前記光監視装置は、光ファイバの固定部内に反射波長の異なるFBGをつなぎこみ、波長計により反射波長の数を測定するように構成されても良い。
【0010】
更に、前記光ファイバは、前記ブロック中央のセメント充填部分で固定し、ブロック間の連結部付近では、弛みを持たせて柔軟性を有する充填材を充填し、前記ブロック間で折り曲げられ、ブロック間で分離し、たるませた光ファイバが伸ばされることで、前記カッター部材のナイフエッジ部に当り切断されることを特徴としても良い。
また、前記各箱型のブロックは、一面が開口し、前記光ファイバを収納する収納部と、前記開口部を閉塞する蓋部とを有するようにしても良い。
【0011】
尚、前記カッター部材は、前記ブロック間の連結部において、一方のブロックからその一部が突出するように設けられ、隣接する他方のブロックが該一部に嵌め合わされることで、該隣接するブロック間のせん断変形を抑えるように構成されているのが好適である。
また、前記柔軟性を有する充填材は、主に非硬化型ゴム粘土により構成されるのが好適である。
【0012】
一方、以上の光ファイバ式洗掘検出装置が少なくとも1本のラインを構成する前記光ファイバの所定の間隔ごとで、且つ、前記監視対象物の所定の間隔ごとに複数設けられると共に、前記少なくとも1本のラインを構成する光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置を備えた光ファイバ式洗掘検出システムを構成することもできる。
かかる構成によれば、川底と水平な方向の洗掘も有効に検出することができる上に、洗掘深度又は洗掘長が大きい場合にも適用でき、且つ、低コスト化が可能な光ファイバ式洗掘検出システムを提供することができる。
【0013】
上記第2の課題を解決するため、本発明の第2の様相では、光ファイバを用いて監視対象物に生じる洗掘を検出する光ファイバ式洗掘検出装置が、内外筒間にセメントミルクを充填した筒型のブロックを複数連結させた構造をなし、各ブロックの内筒外表面に所定の長さを巻き付け各ブロックで連続につなげた光ファイバを備えると共に、全ブロック間の連結状態を保持する筋金、連結された全ブロックの底板及び上板とを含み、各ブロックは、前記光ファイバの固定部と、該光ファイバに弛みを持たせて配する空間部と、隣接するブロックと嵌め合わされる嵌合部とを有すると共に、弛みを持たせて配された光ファイバを切断するカッターを前記隣接するブロック間の連結部付近に有し、洗掘が生じて露出したブロックが水流の抗力により転倒することで前記弛みを持たせて配された光ファイバが張力を受けて前記カッターに当たって切断されたことを、該光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置により検出するようにした。
かかる構成によれば、光ファイバを構造体に埋め込むことで該光ファイバの耐久性及び信頼性を確保しながらも、該光ファイバを有効に切断することが可能であり、更に、製作時、移動時及び設置時の作業性や施工性が向上する。
【0014】
一方、以上の光ファイバ式洗掘検出装置が、少なくとも1本のラインを構成する前記光ファイバの所定の間隔ごとで、且つ、前記監視対象物の所定の間隔ごとに複数設けられると共に、前記少なくとも1本のラインを構成する光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置を備えた光ファイバ式洗掘検出システムを構成することもできる。
かかる構成によれば、光ファイバの耐久性及び信頼性を確保しながらも、該光ファイバを有効に切断することが可能であり、製作時、移動時及び設置時の作業性や施工性を向上させた光ファイバ式洗掘検出システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の様相によれば、川底と水平な方向の洗掘を検出するのに有効である上に、洗掘深度又は洗掘長が大きい場合にも適用でき、且つ、低コスト化が可能な光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムを提供することができる。
【0016】
また、本発明の第2の様相によれば、光ファイバを構造体に埋め込むことで該光ファイバの耐久性及び信頼性を確保しながらも、該光ファイバを有効に切断することが可能な光ファイバ式洗掘検出装置であって、製作時、移動時及び設置時の作業性や施工性を向上させた光ファイバ式洗掘検出装置及び該洗掘検出装置を含む光ファイバ式洗掘検出システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、発明の実施の形態は、本発明が実施される特に有用な形態としてのものであり、本発明がその実施の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムの全体構成を示す概念図である。図2は、図1に示す光ファイバ式洗掘検出システムにおける1ラインの洗掘検出装置の基本構成を示す図、図3は、図2に示す1ラインの洗掘検出装置における1ブロックの洗掘検出器の縦断面図、図4は、図2に示す1ラインの洗掘検出装置における1ブロックの洗掘検出器の平面図、 図5は、図3及び図4に示す洗掘検出器における光ファイバ収納部の要部を拡大して示す図であり、(a)は光ファイバ収納部を形成するSUS材に蓋を取り付けた状態の横断面図、(b)は光ファイバ収納部を形成するSUS材に蓋を取り付け、更に蓋止め金具を取り付けた状態の横断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムは、河川101の川底102と水平な方向にある棚部(高水敷)103を監視対象物とし、その棚部(高水敷)103の水平方向の洗掘を検出するものである。このような棚部(高水敷)103は、堤防104の法面104Aに連続して川底102と水平に数十メートル(m)の幅に亘って形成されることが多い。本実施形態では、後述する図8に示すように、棚部(高水敷)103が法面104Aに連続して川底102と水平に略30メートル(m)の幅に亘って形成されている例を対象とするものとする。図1において、105は河川の水流部分、106は棚部(高水敷)103よりも川底102側に更に形成された棚部を示す。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、1本のラインを構成する光ファイバ13をその内部に挿通させた複数(3つ)の洗掘検出装置100が河川101の棚部(高水敷)103に水流方向に沿った所定の間隔ごとに設けられている。これら洗掘検出装置100は、それぞれ内部を光ファイバ13が挿通されており、各光ファイバ13は洗掘検出装置100の端部で屋外配線用光ケーブル16内の光ファイバ(芯線)13に融着され、これら屋外配線用光ケーブル16により接続(ジョイント)ボックス108を介して観測小屋109内の光監視装置としてのOTDR112(図6及び図7参照)に接続されている。
各洗掘検出装置100は、図2に示すように、それぞれ1メートル(m)の長さの洗掘検出器111が30個直列に連結された構成を有している。即ち、1ラインの洗掘検出装置100は、1ブロックの洗掘検出器111が30ブロック連結されて構成されている。
【0020】
以下、図1及び図2に加え、図3乃至図5をも参照しつつ、洗掘検出装置100について詳細に説明する。
まず、洗掘検出装置100の製作方法について述べる。本実施形態においては、洗掘検出装置100は、比較的長さが長いものを前提にしているため、その組み立ては現地で行うものとする。尚、図1では、各洗掘検出装置100は河川101の棚部(高水敷)103上に置かれたように示したが、本実施形態では、各洗掘検出装置100は棚部(高水敷)103上に略30メートル(m)の長さに亘って数十センチメートル(cm)の深さの穴を掘り、各洗掘検出装置100の組み立てが完了したら、それらの穴に埋め戻した後、整地することで、棚部(高水敷)103上には露出させないで用いるようにする。かかる設置構成をとることで、人や動物が洗掘検出装置100(の各ブロック)に衝突等することによる誤検出を防止し易くなる。
まず、図1に示した河川101の棚部(高水敷)103に、各洗掘検出器111のブロック長毎に切断された光ファイバ収納部1を、その開口した一面を天側にして所定の長さ(例えば、30m)まで複数個並べる。光ファイバ収納部1は、一面(天側)が開口し、光ファイバ13を収納する収納部と、開口を閉塞する蓋部とを有する箱型(溝型)に形成されている。
ここで、各ブロックの一端面には、剪断変形を抑える部材3を光ファイバ収納部1端から少し突出させた状態で、ビスを用いて光ファイバ収納部1に予め取り付けておく。これをもう一つのブロックの別の端面と嵌め合う形で連結していく。
洗掘検出装置100の最初のブロックの先端には、図2に示すように、エンドキャップ15を嵌めることで、後述するセメント充填時にセメントが流出するのを防ぐようにする。また、最後のブロックにも屋外配線用光ケーブル16(内部に光ファイバ13を芯線として含む)用の貫通孔(図示せず)を有するエンドキャップ17を嵌める。
尚、本実施形態では、洗掘検出装置100は水平面から構成される棚部(高水敷)103に設置されるが、洗掘検出装置の設置場所が急斜面であり各ブロック間のずれが予想される場合には、図4に示すように、ブロック間で仮設用の添え木6を両側面に配置し、洗掘検出装置全体の設置が完了するまで、添え木6で固定しておくようにすれば良い。
【0021】
次に、上記のように、ブロックがセットされた後、予めブロックのトータル長に加え、弛み分を見越した光ファイバ13とそれに融着された屋外配線用光ケーブル16(接続ボックス108までの長さ)を用意し、まず、光ファイバ13を溝型の光ファイバ収納部1内に略直線的にセットする。先頭のブロックから順にU字型のカッター部を有する剪断変形を抑える部材3のところに弛みができるように光ファイバ13の両端を光ファイバ収納部1にスリーブ押さえ部材11を介して固定していく。なお、この場合、予め光ファイバ13には、スリーブ10をつけておく。尚、最後のブロックでは、上述した屋外配線用光ケーブル16も同様な固定具で、当該ブロックの光ファイバ収納部1に固定する。
さらに、U字型のカッター部を有する部材4を剪断変形を抑える部材3にビス等で固定する。
続いて、弛ませた光ファイバ13の状態を保持するためにゴム粘土等の非硬化型ゴム粘土8を光ファイバ13の周りに詰める。例えば、非硬化型ゴム粘土8で光ファイバ13をサンドイッチ状に挟み込み、光ファイバ収納部1の底面に置く。この場合、非硬化型ゴム粘土8は溝型の光ファイバ収納部1の溝高さ方向には蓋2までは詰めずに空間を残しておく。
【0022】
その後、セメントミルク9を残った全ての空間部に充填し、蓋2を止め金具14でブロック毎に取り付ける。なお、このセメントミルク9の充填によりスリーブ押さえ部材11は完全に固定され、それに伴い光ファイバ13もスリーブ押さえ部材11部分で固定される。
尚、前述したように、洗掘検出装置100を斜面に設置するような場合、蓋2はセメントミルク9の流出を抑える機能も果たす。セメントミルク9の硬化後、仮設用の添え木6をつけた場合は添え木6を外し、上述したように、洗掘検出装置100を埋め戻した後、整地する。
尚、予め準備する光ファイバ13でセメントミルク9内に位置する部分には、収縮チューブ19等の緩衝材で硬化したセメントの割れの変位を緩和させる層を形成しておく。
また、光ファイバ13の弛みを確保するために、例えば、空間部に工作用のゴム粘土のようなものを入れた後、プラスチックのコップ等を嵌めて、テープで固定して空間部を確保するようにしても良い。即ち、光ファイバ13の弛みを確保する空間部の形成には、非硬化型ゴム粘土又は空間を作る仕切り板、或いはプラスティックのコップの蓋等を用いることが可能である。
以上において、洗掘検出装置100に組み込まれる光ファイバ13としては、例えば、コア径が数μm〜10μm程度、径125μmのシングルモード光ファイバを用いることが可能である。
また、光監視装置であるOTDR112としては、例えば、試験光波長1310nm、パルス幅10ns以上(できるだけ細かく)、空間分解能1m以上(できるだけ短かく)の高分解能形のOTDRを用いることが可能である。尚、OTDRに代えて、後述するFBGを用いる場合にも、洗掘検出装置100としては、以上に述べたのと同様な方法で製作が可能である。
【0023】
次に、洗掘検出装置100を用いて河川101の棚部(高水敷)103の洗掘の度合い(水平方向の洗掘長)を検出する方法について述べる。
上述した構成を有する本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、光ファイバ13を伝播する光の損失を監視する光監視装置としてのOTDR112(図6及び図7参照)を備えており、増水等に伴う河川101の棚部(高水敷)103の水平方向の洗掘が生じた場合、図1にそのイメージを示すように、洗掘によって水流中又はその上に露出した洗掘検出器111のブロックが水流の抗力又は自重により転倒することにより洗掘検出装置100(残りのブロック)から分離し、分離箇所の光ファイバ13に張力が働き、洗掘検出器111内のカッターのナイフエッジで光ファイバ13が切断されたことをOTDR112により検出することで、当該洗掘検出器111(ブロック)分の長さの洗掘を検出する。
【0024】
図6は、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムにおけるOTDR112を用いた洗掘の検出方法を説明するための図である。即ち、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、図6に示すように、パルス発振器121により駆動されたレーザダイオード(LD)122は、光パルスを出力し、光パルスは方向性結合器123を経て光ファイバ13に入射する。各洗掘検出器(ブロック)111内の光ファイバ13で生じた後方レーリ散乱光、あるいはフレネル反射光は入射端に戻ってくる。入射端に戻ってきた光は、方向性結合器123を通して受光素子(PD)124に入射し、電気信号に変換される。変換された電気信号は、増幅器125により所要のレベルまで増幅された後、解析処理部/表示部126により時間領域で解析され、解析結果が表示される。光ファイバ13の1mごとに各洗掘検出器(ブロック)を設置し、OTDR112に接続することにより洗掘の計測システムを構成しているので、洗掘の発生の有無と発生した洗掘の度合い(水平方向の洗掘長)を同時に検出することが可能である。
【0025】
図7は、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムの全体構成を示すブロック図である。図8は、本実施形態において、河川101の棚部(高水敷)103における洗掘の発生の仕方と各ラインの洗掘検出装置100による検出方法を説明するための図である。
図7に示すように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムは、観測小屋109(図1をも参照)内に設けられた観測セクション110と、棚部(高水敷)103や堤防104の法面104Aに設けられた計測セクション120から構成される。観測セクション110は、光監視装置としてのOTDR112と、このOTDR112に接続された制御用PC(Personal Computer)114と、OTDR112に接続され多芯光ファイバケーブル50の各光ファイバ(芯線)13より構成される光チャンネルを選択する光チャンネルセレクタ(3ポート)116とを有している。計測セクション120は、多芯光ファイバケーブル50の光ファイバ(芯線)13を3ラインに分岐する接続(ジョイント)ボックス108と、ライン1、ライン2及びライン3の各ライン、即ち、1ラインから成る光ファイバ13(図1も参照)に、1mの長さになる1ブロックの洗掘検出器111が30個接続され、全長30mになる洗掘検出装置100とを有している。即ち、ライン1、ライン2及びライン3におけるそれぞれの洗掘検出装置100は、先端側のNo.1ブロックから基端側(接続ボックス108側)のNo.30ブロックまで合計30個のブロックから成る洗掘検出器111を有している。
【0026】
尚、本実施形態によれば、1本の多芯光ファイバケーブル50(光ファイバ芯線が3本のもの)により観測セクション110と計測セクション120を接続(中継)すれば良いので、計測セクション120(計測現場)から離れた遠隔地に観測セクション110(観測所)を設置することが可能である。
また、本実施形態によれば、例えば、1ラインにつき約1秒で測定が可能であり、光チャンネルセレクタ(3ポート)116の切り替え時間も1ラインにつき約1秒で足りる。
尚、本実施形態では、1ラインの洗掘検出装置100における洗掘検出器111の個数(ブロック数)は30個としたが、30個よりも少なくすることや多くすることは勿論可能である。
さて、河川101の棚部(高水敷)103における洗掘は、河川101の水流部分105の増水等により、図8に破線81、82、83で示すように、棚部(高水敷)103を段階的に侵食する形で発生していく。かかる洗掘(侵食)をどこでどの程度まで発生したかを検知する必要があり、更には、どのぐらいの速さで洗掘(侵食)が進んでいるかまで検知できるのが望ましい。
【0027】
上述した構成を有する本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、増水等に伴って河川101の棚部(高水敷)103に水平方向の洗掘が生じた場合、図8にそのイメージを示すように、洗掘が生じた箇所に設置された各ラインの先端側のNo.1ブロックから順番に水流中又はその上に露出するようになる。そして、露出した各洗掘検出器111のブロックが水流の抗力又は自重により転倒して、洗掘検出装置100(残りのブロック)から分離して外れる。この結果、弛みを持たせていた光ファイバ13に分離箇所において張力が働き、洗掘検出器111内のカッターのナイフエッジで光ファイバ13が切断される。これをOTDR112により検出することで、当該洗掘検出器111(ブロック)分の長さの洗掘を検出する。
【0028】
例えば、棚部(高水敷)103に、図8に破線81で示すような洗掘(侵食)が進んだ場合、ライン1とライン2において、先端側のNo.1ブロックから順番にNo.3ブロックまでが洗掘検出装置100(残りのブロック)から分離したことが検知されるが、ライン3ではブロックの分離は全く検知されない。この結果、ライン1とライン2の2箇所で略3m程度の洗掘(侵食)が進んだことが分かる。また、ライン3の箇所では、未だ、殆ど洗掘(侵食)が生じていないことが分かる。
【0029】
次に、棚部(高水敷)103に、図8に破線82で示すような洗掘(侵食)まで進んだ場合、ライン1において、更にNo.4ブロックが洗掘検出装置100(残りのブロック)から分離したことが検知され、これにより、ライン1の箇所で破線81で示した場合よりも更に1m程度の洗掘(侵食)が進んだことが分かる。また、ライン2において、更にNo.4ブロック及びNo.5ブロックが洗掘検出装置100(残りのブロック)から分離したことが検知され、これにより、ライン2の箇所では破線81で示した場合よりも更に2m程度の洗掘(侵食)が進んだことが分かる。尚、ライン3では、依然としてブロックの分離は全く検知されないので、ライン3の箇所では、依然として洗掘(侵食)が生じていないことが分かる。
【0030】
続いて、棚部(高水敷)103に、図8に破線83で示すような洗掘(侵食)まで進んだ場合、ライン1において、更にNo.5ブロックが洗掘検出装置100(残りのブロック)から分離したことが検知され、これにより、ライン1の箇所で破線82で示した場合より、更に1m程度の洗掘(侵食)が進んだことが分かる。また、ライン2において、その後のブロックの分離は検知されない。これにより、ライン2の箇所では破線82で示した場合より洗掘(侵食)が進んではいないことが分かる。尚、ライン3では、依然としてブロックの分離は全く検知されないので、ライン3の箇所では、依然として洗掘(侵食)が生じていないことが分かる。
【0031】
図9は、OTDR112を用いたトレースデータの一例を示すグラフである。洗掘に伴って発生する光の損失をOTDR112によって測定することで、洗掘の発生の有無と、当該洗掘の発生度合いを検出することができる。即ち、洗掘により洗掘検出装置100が1ブロックずつ(各洗掘検出器111ずつ)分離するのに伴い、その分だけ洗掘検出装置100に挿通された光ファイバ13の長さが短くなる。この短くなった長さをOTDR112で計測することにより洗掘が発生したこと、及び発生した洗掘の度合いを検出する。
実験データとして、図9(a)に示すように、OTDR112と、このOTDR112に接続された制御用PC114とを用意し、OTDR112に約500mの長さの光ファイバ13を接続しておき、所定の長さごとにハサミにて切断した場合の光の損失の変化をトレースしてみた。図9(b)に、光ファイバ13の端面切断による端面位置変化に関するOTDR112のトレースデータを示す。図9(c)に、光ファイバ13の累積切断距離に対する図9(b)のトレースデータからの読み値を示す。
図9(b)に示すグラフにおいて、縦軸は反射光量(の低下)をmdBで表し、横軸は光ファイバの長さを表す。500mの場合の基準値に対し、切断長を2m、4m、6m、8m、10m、12m、13m、14m、15m、16mとした場合に、それに応じてトレース波形が変化したことを確認できた。また、図9(c)に示すグラフにおいて、縦軸には図9(b)に示したOTDRトレースデータからの読み値をとり、横軸には光ファイバの累積切断距離をとった結果、略線形の結果が得られることが分かった。即ち、図9(b)に示すグラフにおいて反射光量の立ち上がりの距離を1mずつきって、立ち上がりの位置を測定し、図9(c)に示すグラフにおいて、横軸は切断した距離、縦軸はOTDRで読んだ長さを見ると、行ったものと同じ長さを判別できる。
これにより、OTDR112で計測することにより光ファイバ13の長さが1mずつ短くなったこと、即ち、洗掘検出装置100が1ブロックずつ(各洗掘検出器111ずつ)分離したことを正確に検出可能であることを確認することができた。
【0032】
以上のような構成を有する本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムによれば、以下の効果が得られる。
各ブロックの接続部は、切れ目があり他の部分より弱くなっており、さらに、光ファイバ13に弛みがあるため光ファイバ13の張力を受けずに比較的小さい力でブロックが傾く、その後、水流の抗力または自重により転倒することによりブロックが分離し、光ファイバ13に張力が働き、剪断変形を抑える部材3、U字型のカッター部を有する部材4のカッターのナイフエッジ部で確実に光ファイバ13を切断することができる。
剪断変形を抑える部材3により横ずれが少ない、また、光ファイバ13の弛みにより、少々の横ずれに対しては、光ファイバ13に張力が働かず(突っ張らずに)、かつ、非硬化型ゴム粘土8がカッターのナイフエッジ部に充填されており、ナイフエッジ近傍の光ファイバ13が動かず、切断することがない(設置時、製作時等)。
各ブロックの内側にセメントミルク9を充填することにより、光ファイバ13を外部環境から隔離でき、流入する砂や小石等による磨耗や衝撃から保護でき、堅牢で信頼性の高い洗掘検出装置を実現できる。
各ブロック(収納部1)が溝型であり、一面が開口しており光ファイバ13の配線およびセメントミルク9の充填作業等の作業性と信頼性が高い。
セメントミルク9内に位置する光ファイバ13は、セメントミルク9が硬化した後割れが発生することが予測される場合には、収縮チューブ19等で割れの変位を緩和吸収させる緩衝層を形成することで、光ファイバ13の割れを防ぐことができる。
尚、ブロック長をOTDRの距離分解能より短くする必要がある場合には、収納部1の溝中央のセメント充填部の空間に、損失が起こらない程度の曲率で光ファイバ13を何巻きかして束ね配し、セメントミルク9を充填することにより、対応できる。
【0033】
以上のように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムは、河川101の川底102と水平な方向にある棚部(高水敷)103に対する取り付け・設置等の施工性に優れると共に、監視対象物である棚部(高水敷)103に生じた洗掘を光ファイバの伝播光量の変化に効率良く作用させ得る構造を有している。また、比較的低コストでシステムを設置可能であるという大きな利点を有している。即ち、本実施形態では、洗掘検出装置100は構造が簡単であるため比較的安価に製作することができ、また、測定にも比較的安価なOTDR112を用いているため、広範囲に亘る洗掘検出システムを低コストで構築することができる。
【0034】
尚、本発明の光ファイバ式洗掘検出システムを河川堤防等における災害防止対策に用いても、センサ部が光ファイバのため、誘導及び耐雷対策をとる必要が無い。
【0035】
光ファイバセンサの測定に関する他の方式としてブリルアン散乱光を利用したラインセンサ(Brillouin Optical Time Domain Reflectometer:B−OTDR方式)や光通信の分野でフィルタとして開発されたファイバ・ブラッグ・グレーティング(Fiber Bragg Grating:FBG)方式もある。OTDRは広範囲に亘るモニタリング(洗掘検出)に非常に適しており、測定器も比較的安価なため、本実施形態では、OTDR方式を採用したが、B−OTDR方式やFBG方式も本発明に採用可能なことは勿論である。
【0036】
以下に、本発明の第2の実施形態として、FBG方式を採用した光ファイバ式洗掘検出システムについて述べる。この第2の実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムの基本構成、その1ラインの洗掘検出装置、1ブロックの洗掘検出器、収納部の構成等、及びその設置方法は、図1乃至図5に示した第1の実施形態のものと同様であるので、その説明は省略する。
【0037】
図10は、この第2の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出システムの全体構成を示すブロック図である。尚、図7に示した第1の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出システムの構成と同様の部分は同様の参照符号を付し、その説明は省略する。図10に示すように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、観測セクション110は、光監視装置として、OTDR112に代えてFBG波長測定器119を有している。尚、このFBG波長測定器119に接続された制御用PC114にインストールされる計測ソフトは、FBG波長測定用のものであるのは勿論である。
尚、光チャンネルセレクタ(3ポート)116の切り替え時間は、OTDR112を用いた第1の実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムと同様に、1ラインにつき約1秒である。しかしながら、本実施形態のFBG波長測定器119を用いた光ファイバ式洗掘検出システムによれば、例えば、1ラインにつき最小で約1/200秒で測定が可能なので、より高速な測定を行うことができる。
【0038】
図11は、FBG波長測定器119による洗掘測定の原理を説明するための図である。洗掘に伴って減少する反射波長の数を計測することで、洗掘の発生の有無と、当該洗掘の度合いを検出することができる。即ち、洗掘により洗掘検出装置100が1ブロックずつ(各洗掘検出器111ずつ)分離するのに伴い、その分だけ各洗掘検出器111に埋め込まれたFBGが切断されることで、FBGによる反射波長の数が減少する。従って、減少する反射波長の数を計測することで、洗掘が発生したこと、及び発生した洗掘の度合いを測定することができる。例えば、図11(a)に示すように、例えば、洗掘検出装置100の設置時において、洗掘検出器111が30個備わっていれば、各洗掘検出器111にはそれぞれ反射波長の異なるFBGが埋め込まれているので、同図のグラフに示すように、λ1〜λ30までの30個の波長が観察できる。これに対して、図11(b)に示すように、例えば、洗掘が発生し、洗掘検出装置100の先端側から洗掘検出器111が3個(3ブロック)分離した場合、同図のグラフに示すように、λ1〜λ27までの27個の波長しか観察できなくなる。これにより、洗掘が発生したこと、及び発生した洗掘の度合いは、約3mであることを測定することができる。
本実施形態では、FBGを用いるので、FBGを1つのブロック当たり1個割り当てる、即ち、ある波長を割り当てることで、例えば、測定において200ヘルツ(Hz)ぐらいでサンプリングすれば、リアルタイムで洗掘を監視できる。水平方向の洗掘は比較的早い時間で進んでいくため、早期の検出が必要であるが、FBGはこれに適していると言う事ができる。
【0039】
以上に述べたように、第1及び第2の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムによれば、河川の川底と水平な方向にある棚部(高水敷)における水平方向の洗掘を有効に検出することができる上に、洗掘深度又は洗掘長が大きい場合にも適用でき、且つ、低コスト化も可能となる。
ところで、以上に述べた第1及び第2の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムは、上述したように、河川の川底と水平な方向にある棚部(高水敷)における水平方向の洗掘を検出するものである。水平方向の洗掘であれば、洗掘によりブロックが露出すると、自重により転倒(折れて外れる)するから検出し易いという利点もある。即ち、ブロックが転倒する(倒れて外れる)ために水流の抗力はあまり必要としない。
一方、鉛直(深さ)方向の洗掘を検出する場合には、上端側のブロックから、いわば、だるま落としの様になるから、洗掘検出装置の底部から光ファイバ(ケーブル)を引っ張らなければならないので、洗掘検出装置を敷設する場合には、川底や棚部(高水敷)をかなり深く掘る必要がある。このため、光ファイバ(ケーブル)の配線や敷設が難しくなる。これに対し、本実施形態の洗掘検出装置において、水平方向の洗掘を検出する場合には、例えば、50cmぐらい掘った所に洗掘検出装置を埋め込んで、掘った(開口した)状態で敷設すれば良いので、比較的簡単に光ファイバ(ケーブル)の敷設ができる。
【0040】
一方、本明細書の冒頭で述べたように、降雨や増水に伴って河川等の流量や流速が増加すると、河川等の川底等に鉛直(深さ)方向の洗掘を生じることも多い。この場合、例えば、川底に鉛直(深さ)方向の洗掘を生じると河川に掛けられた道路用或いは鉄橋用の橋(ブリッジ・鉄橋等)の橋脚の安定性・安全性に影響する虞れがあり、一方、河川の川底と水平な方向にある棚部(高水敷)において鉛直(深さ)方向の洗掘を生じると、堤防の裾の部分が侵食されることとなり、棚部(高水敷)における水平方向の洗掘が生じた場合と同様に、堤防の決壊の虞れを警鐘する現象となる。
このような状況下、河川等の川底等における鉛直(深さ)方向の洗掘を有効に検出でき、且つ、従来の技術では不十分であった諸問題点を解決した洗掘検出装置又はシステム、即ち、光ファイバを確実に切断すること、また、光ファイバを構造体に埋め込み、切れ易い光ファイバの耐久性・信頼性を確実なものにすること、また、輸送、移動、設置時の操作性、施工性を向上させることが可能な光ファイバ式洗掘検出装置又はシステムの開発が望まれている。
そこで、以下に、図12乃至図22を参照して、かかる鉛直(深さ)方向の洗掘に本発明を適用した第3の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムについて述べる。
【0041】
図12は、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムの構成を示す概念図である。図13は、図12に示す光ファイバ式洗掘検出システムに用いる1ラインの洗掘検出装置の基本構成を示す図、図14は、図13に示す洗掘検出装置におけるA部の拡大詳細図、図15は、洗掘検出器同士の接合部をカッターによる光ファイバの切断機構を中心に示す縦断面図、図16は、図15に示す洗掘検出器同士の接合部を拡大して示す断面図、図17は、図15に示す洗掘検出器同士の接合部に用いるカッターを示す図であり、(a)は、そのカッターの断面図、(b)は、そのカッターの側面図である。図18は、図15に示す洗掘検出器同士の接合部に用いる他のカッターの例を示す断面図、図19乃至図22は、図13に示す洗掘検出装置の製作方法を説明するための図であり、図19は、内筒を組み立てた状態、図20は、外筒を挿入し、上板を取り外した状態、図21は、セメントミルク充填時の充填方法、図22は、設置時の筋金の取り外し方法を説明するための図である。
【0042】
図12(a)に示すように、本実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムは、河川201の川底202と水平な方向にある棚部(高水敷)207及び208を監視対象物とし、その棚部(高水敷)207及び208における鉛直(深さ)方向の洗掘を検出するものである。本実施形態では、棚部(高水敷)207及び208における鉛直(深さ)方向の洗掘を対象としたが、川底202における鉛直(深さ)方向の洗掘を検出し得るのは勿論である。図12において、204は堤防、204Aは堤防の法面、205は河川の水流部分を示す。尚、図12(b)は、図12(a)に示す洗掘検出装置300のひとつを拡大して示すと共に、棚部(高水敷)207又は208に生じた鉛直方向の洗掘により、その露出した上端側のブロック311が水流205の抗力により転倒し、光ファイバ312が切断(断線)された状態を示した図である。
【0043】
即ち、図12(a)に示すように、本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムでは、1本のラインを構成する光ファイバ312をその内部に挿通させた複数(3つ)の洗掘検出装置300が河川201の川底202と水平な方向にある棚部(高水敷)207及び208に設けられている。これら洗掘検出装置300は、それぞれ内部を光ファイバ312が挿通されており、図12では図示しないが、各光ファイバ312は洗掘検出装置300の端部で屋外配線用光ケーブル16(図1を参照)内の光ファイバ312に融着され、これら屋外配線用光ケーブル16により接続(ジョイント)ボックス108を介して観測小屋109内の光監視装置としてのOTDR112(図6及び図7参照)に接続されているものとする。
本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムの特徴は、図12(a)に示すように、複数ブロックから成る洗掘検出装置300をその上端面300Aが河川201の棚部(高水敷)207及び208と略同じ高さ(深さ)になるように棚部(高水敷)207及び208に鉛直方向に埋め込み、棚部(高水敷)207及び208に鉛直方向の洗掘を生じると、図12(b)に示すように、露出した上端側のブロック311が水流205の抗力により転倒して内部の光ファイバ312に張力が働き、光ファイバ312がエッジ部に配置したカッターにより切断され、この光ファイバ312の切断(断線)による光の損失をOTDR112で測定することで、洗掘の発生を検出し、また、何ブロック分の光ファイバの切断(断線)が生じたかを判定することで、洗掘の程度をも検出することにある。
【0044】
このように、洗掘によって露出したブロックが水流の抗力により転倒し、ブロックの転倒により光ファイバが切断されたことを検知する点が特徴である。尚、転倒初期においては、光ファイバの弛みのため、光ファイバは突っ張らない。即ち、ブロックは抵抗なく傾いて転倒し、その後、突っ張るようになる。
各洗掘検出装置300は、図12に示すように、それぞれ所定の長さの洗掘検出器311が複数個直列に連結された構成を有している。即ち、1ラインの洗掘検出装置300は、1ブロックの洗掘検出器311が複数ブロック連結されて構成されている。
【0045】
以下、図13乃至図22を参照しつつ、洗掘検出装置300について詳細に説明する。
洗掘検出装置300は、図13に示すように、10個に分割されたブロック(各洗掘検出器311)から構成されている。各洗掘検出器311は、例えば、それぞれ鉛直方向の長さが200mm(20cm)の内筒302と外筒304を組み合わせ、これらが10個(10段)連結され、全体で鉛直方向の長さが2000mm(2m)となる構成を有している。ここで、内筒302と外筒304は、それぞれ塩化ビニール管により構成され、内筒302は径が60mmで厚さが1.8mmの塩化ビニール管により構成され、外筒304は径が89mmで厚さが2.7mmの塩化ビニール管により構成されている。
【0046】
内筒302の外表面には、光ファイバ312が所定の長さ分巻き付けられており、この光ファイバ312は、例えば、径が0.9mmのビニール被覆光ファイバにより構成されている。尚、上述したOTDR112の距離分解能が1mのため、20cmのブロック(各洗掘検出器311)1段で光ファイバ312が1mになるように、光ファイバ312を内筒302の外表面に巻き付けている。
【0047】
図14は、図13に示すA部の拡大詳細図であり、洗掘検出装置300の最上端のブロック(洗掘検出器)311−1と次のブロック(洗掘検出器)311−2が連結(接続)された構成を示している。図14に示すように、最上端のブロック(洗掘検出器)311−1の内筒302−1の下端側には、フランジ状の内筒カラー306が接合されており、次のブロック(洗掘検出器)311−2の内筒302−2の上端側には、フランジ状の内筒カバー308が接合されている。フランジ状の内筒カラー306は、比較的短い長さの筒状(リング状)に形成され、鍔部306Aを備えている。鍔部306Aの外周縁には、凸部306aが形成されている。フランジ状の内筒カバー308は、内筒カラー306と略同じ長さのキャップ状(蓋状)に形成され、フランジ部308Aを備えている。そして、内筒カバー308のフランジ部308Aは、内筒カラー306の鍔部306Aに合わされて、その周縁が凸部306aにすっぽり嵌る径寸法に形成されている。即ち、内筒カバー308のフランジ部308Aは、例えば、内筒カラー306の鍔部306Aに合わされて、その周縁を凸部306aに嵌め込むことで、内筒カバー308と内筒カラー306が嵌合し合うようになっている。但し、内筒カバー308のフランジ部308Aの厚みに対して、内筒カラー306の鍔部306A周縁部に形成された凸部306aの高さは、その半分以下に抑えられている。かかる構成により、最上端のブロック(洗掘検出器)311−1の内筒302−1と次のブロック(洗掘検出器)311−2の内筒302−2が連結(接続)される。
【0048】
一方、最上端のブロック(洗掘検出器)311−1の外筒304−1の下端側には、外周面側から内周面側にかけて外周面側半分が凸で内周面側半分が凹となる段差が形成されている。また、次のブロック(洗掘検出器)311−2の外筒304−2の上端側には、外周面側から内周面側にかけて外周面側半分が凹で内周面側半分が凸となる段差が形成されている。そして、外筒304−2の上端側の段差における凸部3042aは、外筒304−1の下端側の段差における凹部3041bにすっぽり嵌る径寸法に形成されている。即ち、外筒304−2は、その上端側を、例えば、外筒304−1の下端側に合わされて、凸部3042aを凹部3041bに嵌め込むことで、外筒304−2と外筒304−1が嵌合し合うようになっている。但し、両段差の大きさ、即ち、凸部3042aの高さと凹部3041bの深さは、外筒304−2と外筒304−1それぞれの厚み以下に抑えられている。かかる構成により、最上端のブロック(洗掘検出器)311−1の外筒304−1と次のブロック(洗掘検出器)311−2の外筒304−2が連結(接続)される。
【0049】
以上の構成により、最上端のブロック(洗掘検出器)311−1と次のブロック(洗掘検出器)311−2が連結(接続)されるが、上端側のブロック311−1が所定の剪断力(水流205の抗力)を受けると、上端側のブロック311−1が転倒して次のブロック311−2から分離するようになっている。尚、図13及び図14では図示しないが、以下、当該ブロックと次のブロックとは、同様の構成を有して連結(接続)されており、これにより、洗掘検出装置300は、印籠の如くブロック同士が連結(接続)され、その内筒の端部同士及び外筒の端部同士の噛み合いにより、上端側のブロックが所定の剪断力(水流205の抗力)を受けると、その下方のブロックと剪断されるのではなく、転倒する(倒れて離れる)ようになる。尚、洗掘が生じるからには、ある程度の流速がある河川なので、かかる構造によりブロックは確実に分離するので、十分に洗掘を検出可能である。
尚、図14において、径が0.9mmのビニール被覆光ファイバにより構成される光ファイバ312は、ブロック311−1の1段で1mの長さになるように、内筒302−1の外表面に巻き付けられた上で、ブロック311−2まで伸長され、このブロック311−2でも1mの長さになるように、内筒302−2の外表面に巻き付けられている。尚、各内筒302−1、302−2、・・・・、302−10の外表面には、それぞれ光ファイバ312の巻き付け部分を覆うように、光ファイバ固定及び保護用収縮チューブ307−1、307−2、・・・・、307−10が嵌められている。これら光ファイバ固定及び保護用収縮チューブ307−1、307−2、・・・・、307−10(図13参照)は、後述するように、光ファイバ312の弛みを形成しつつ、露出したブロックが水流の抗力により転倒した場合には、この弛みが解消された上に光ファイバ312に張力が働くように、弛みの両端側を固定する用途を持っている。また、巻き付け部分を中心に光ファイバ312を覆うことで、砂等の異物が内筒302と外筒304間に混入した場合に、光ファイバ312を保護し、その断線(洗掘の発生に起因しない断線)を防止する用途を持っている。
尚、図14に示すように、露出したブロックが水流の抗力により転倒した場合に光ファイバ312に張力が働き、光ファイバ312がエッジ部に配置したカッターにより切断される箇所は、内筒カバー308と内筒カラー306が嵌合し合う箇所になる。
【0050】
ここで、本発明の要部のひとつである洗掘検出器同士の接合部におけるカッターによる光ファイバの切断機構について、図15乃至図18を参照して説明する。
図15及び図16に示すように、上述した内筒カバー308のフランジ部308Aと内筒カラー306の鍔部306Aには、対応する箇所にそれぞれ貫通孔308Ahと306Ahが形成されており、これら貫通孔308Ahと306Ahが合わされて両者が嵌合されることにより、これら貫通孔308Ahと306Ahが合一して、内筒302の外表面に巻き付けられた部分から伸長する光ファイバ312の挿通孔312hが形成されている。この挿通孔312hには、図15及び図16に示すように、挿通孔312hの内周面上に断面三角形状に突起するカッター316が形成されている。このカッター316は、図17(a)及び(b)に示すカッター部材171を2つ用意し、例えば、内筒カバー308のフランジ部308Aと内筒カラー306の鍔部306Aとの接合部の両側から挿通孔312hの中に押し込んで接着剤で固定する、或いは叩き込んで固定することにより、挿通孔312hの内周面上に形成することができる。また、変形例として、図18に示すように、例えば、市販のかみそりの刃186を内筒カバー308のフランジ部308Aと内筒カラー306の鍔部306Aとの接合部に固定することにより、挿通孔312hの内周面上に形成することもできる。
【0051】
次に、図19乃至図22を参照して、洗掘検出装置300の製作方法を説明する。尚、図19乃至図22では、説明を簡略化するため、内筒302及び外筒304を含むブロックを4個(4段)だけ示したが、本実施形態では、上述したように、洗掘検出装置300は、10個(10段)のブロック(洗掘検出器311)を含んでいる。
まず、図19に示すように、底板332に筋金334を付けた状態で、最下端の内筒302から最上端の内筒302まで所定個数の内筒302を筋金334の周囲に入れて積み重ねる。最上端の内筒302上に上板336を置き、上板336の上から筋金334に形成されたネジ溝に合わせてナット338を締めると、内筒302を保持できる。続いて、最下端の内筒302の外表面に光ファイバ312を1m分巻いて、フランジ部の挿通孔312hを通して、また、次の内筒302の外表面に光ファイバ312を1m分巻いて、フランジ部の挿通孔312hを通して、また、次の内筒302の外表面に光ファイバ312を1m分巻いて、フランジ部の挿通孔312hを通して、を最上端の内筒302まで繰り返す。尚、図19には、図示しないが、光ファイバ312の巻き付け部分を覆うように、光ファイバ固定及び保護用収縮チューブが嵌められる。或いは、変形例として、セメントミルク9を充填する時に、光ファイバ312が動かないように、光ファイバ312の巻き付け部分をテープ(幅広のテープ)で固定するようにしても良い。
【0052】
尚、内筒302の外表面に光ファイバ312を1m分巻いた後フランジ部の挿通孔312hを通す場合、空間部90(図16参照)内の光ファイバ312は弛ませておく。ブロック同士の接合部における光ファイバ312の弛みにより、少々の横ずれ等があっても光ファイバ312に張力は働かず、光ファイバ312は切断されないようにするためである。図16に示すように、光ファイバ312はブロック同士の接合部の両側が弛んでいる。この弛みがなくてピンと張っているとブロックが転倒しにくくなってしまう。即ち、弛み分だけ、ある程度は(弛んだ所までは)抵抗無く転倒して、その後、更に転倒すると光ファイバ312に張力が働き、カッター316に当たって切断される。尚、この光ファイバ312の弛みを維持し、また、ブロックが転倒した場合に張力を受けてカッター316により切断されるスペースを確保するために、図16に示すように、空間部90が設けられている。この空間部90を確保するために、後述するセメントミルク9の充填時にセメントミルク9が空間部90にまで流入しないように仕切板95を設けておく。或いは、空間部90には、上述した第1の実施形態と同様に、弛ませた光ファイバ312の状態を保持するために非硬化型ゴム粘土8を光ファイバ312の周りに詰めるようにしても良い。
【0053】
次に、図20に示すように、筋金334に合わせて締めたナット338を外して、上板336を取り外した上で、積み重ねられた内筒302の外周に外筒304を所定個数まで挿入する。その上で、最上端の内筒302及び外筒304上に上板336を置き、上板336の上から筋金334に形成されたネジ溝に合わせてナット338を締めると、外筒304を含めて保持できる。このように、筋金334を付けて上板336上のナット338を締めると、外筒304を含めて保持できる結果、ブロックが崩れることが無い。光ファイバ312には弛みがあるので、少しぐらい張力が働いても、直ちに切断されることは無い。
続いて、図21に示すように、各外筒304に2つずつ形成された充填穴342から内筒302と外筒304間にセメントミルク9を充填する。この場合、仕切板95を設けてあるので、セメントミルク9は空間部90にまでは流入しない。或いは、非硬化型ゴム粘土8が詰められている場合には、その部分には流入しない。尚、図16に示すB部において、内筒302のフランジ部分と外筒304の内周面との間にはわずかに隙間があるが、セメントミルク9が流れる程ではない。
尚、各ブロックを結合しておかないと、製作時、輸送時に転倒してしまうと光ファイバ312が断線してしまう虞れがあるので、筋金334で各ブロックを結合しておく。
そして、図22に示すように、洗掘検出装置300の設置時には、セメントミルク9を充填した後の洗掘検出装置300全体を立てておき、筋金334の上部に形成された穴344に心棒346等を入れ、この心棒346等を回して筋金334を抜く。心棒346等を介して筋金334を回すと底板332にネジ込んだ筋金334のボルト部が抜け、筋金334が抜ける。
【0054】
本実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムによれば、以下の効果が得られる。
まず、全方向に対して光ファイバ312が張力を受けずに傾き、光ファイバ312がカッター316に当たり、その後、水流の抗力または自重により転倒することにより、光ファイバ312に張力が働き、少ない力で光ファイバ312を切断することができる。
また、上述したフランジ同士の噛み合い構造により、横ずれが少ない、また、光ファイバ312の弛みにより、少々の横ずれに対しては、光ファイバ312に張力が働かない(突っ張らない)ので、製作時、輸送時、設置時等において、光ファイバ312がカッター316に当たっても、切断することが無い。
また、洗掘が生じてブロックが転倒した場合に光ファイバ312が確実に切断されるように、積極的に、ナイフエッジ様の部材であるカッター316を設けたので、洗掘の検出精度が高まる。尚、切れ易い光ファイバ312(ファイバの芯線)を使っても良いが、切るために積極的にカッター316を設けたので、切れ易くない光ファイバ312(ファイバの芯線)を使うことも可能である。
更に、筋金334により各ブロックを横ずれなしに保持できる。このため、製作時、設置時の取り扱いが楽であり、設置後に筋金334は簡単に取り除くことが可能である。
【0055】
また、各ブロックの内外筒間にセメントミルク9を充填し、光ファイバ312(切れ易い光ファイバ芯線)を埋め込むことにより、構造物とセンシングエレメント(光ファイバ312)が一体化され、耐環境性の優れた堅牢な検出部を実現できる。
【0056】
更に、本実施形態の洗掘検出装置300は、洗掘が生じてブロックが露出すると、浮力ではなく抗力を受けて転倒し、光ファイバ312が切断されるので、特に、十分な浮力を確保するための発泡剤等を充填する必要が無い。また、浮力を利用しないので、材質等の制限も受けない。
更に、従来例では、洗掘ではないのに、砂や異物が混入して、折れ易い光ファイバを折ってしまい、洗掘ではないのに洗掘だと誤判断してしまう虞れがあるのに対し、本実施形態の洗掘検出装置300においては、構造的には、内筒302があり、その外表面に光ファイバ312が巻いてあり、その上に外筒304を嵌めてある。また、内筒302と外筒304の間にセメントを充填してあるので、内筒302と外筒304間に砂や異物が混入してしまうことが無い。即ち、光ファイバ312は殆ど露出しているところがないので、砂や異物が混入しても、それによって切断されることが無い。
尚、洗掘検出器(ブロック)は、円筒形のものに代えて断面矩形のものを用いることもできる。但し、円筒形ならば、比較的安価なパイプ材様のものを使えるメリットがある。
【0057】
以上、本発明について実施の形態をもとに説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、河川における洗掘の発生の有無及び洗掘の度合いを検出する装置等のみならず、他にも、海や湖における同様の洗掘を検出する装置等にも用いることができる。更に、例えば、道路斜面モニタリングや地すべり検知等のための装置、システム、方法等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出装置及びシステムの全体構成を示す概念図である。
【図2】図1に示す光ファイバ式洗掘検出システムにおける1ラインの洗掘検出装置の基本構成を示す図である。
【図3】図2に示す1ラインの洗掘検出装置における1ブロックの洗掘検出器の縦断面図である。
【図4】図2に示す1ラインの洗掘検出装置における1ブロックの洗掘検出器の平面図である。
【図5】図3及び図4に示す洗掘検出器における光ファイバ収納部の要部を拡大して示す図であり、(a)は光ファイバ収納部を形成するSUS材に蓋を取り付けた状態の横断面図、(b)は光ファイバ収納部を形成するSUS材に蓋を取り付け、更に蓋止め金具を取り付けた状態の横断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムにおけるOTDR112を用いた洗掘の検出方法を説明するための図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施形態において、河川101の棚部(高水敷)103における洗掘の発生の仕方と各ラインの洗掘検出装置100による検出方法を説明するための図である。
【図9】OTDR112を用いたトレースデータの一例を示すグラフである。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る光ファイバ式洗掘検出システムの全体構成を示すブロック図である。
【図11】FBG波長測定器119による洗掘測定の原理を説明するための図である。
【図12】本発明の第2の実施形態の光ファイバ式洗掘検出システムの構成を示す概念図である。
【図13】図12に示す光ファイバ式洗掘検出システムに用いる1ラインの洗掘検出装置の基本構成を示す図である。
【図14】図13に示す洗掘検出装置におけるA部の拡大詳細図である。
【図15】洗掘検出器同士の接合部をカッターによる光ファイバの切断機構を中心に示す縦断面図である。
【図16】図15に示す洗掘検出器同士の接合部を拡大して示す断面図である。
【図17】図15に示す洗掘検出器同士の接合部に用いるカッターを示す図であり、(a)は、そのカッターの断面図、(b)は、そのカッターの側面図である。
【図18】図15に示す洗掘検出器同士の接合部に用いる他のカッターの例を示す断面図である。
【図19】図13に示す洗掘検出装置の製作方法を説明するための図であり、内筒を組み立てた状態を示す。
【図20】図13に示す洗掘検出装置の製作方法を説明するための図であり、外筒を挿入し、上板を取り外した状態を示す。
【図21】図13に示す洗掘検出装置の製作方法を説明するための図であり、セメントミルク充填時の充填方法を示す。
【図22】図13に示す洗掘検出装置の製作方法を説明するための図であり、設置時の筋金の取り外し方法を示す。
【符号の説明】
【0060】
13 光ファイバ、 16 屋外配線用光ケーブル、100 洗掘検出装置、
101 河川、 102 川底、 103 棚部(高水敷)、104 堤防、
104A 法面、 105 河川の水流部分、106 棚部、
108 接続(ジョイント)ボックス、 109 観測小屋、112 OTDR
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを用いて監視対象物に生じる洗掘を検出する光ファイバ式洗掘検出装置において、
複数連結された箱型のブロックと、これらブロックに略直線的に連通した光ファイバとを備え、前記洗掘が生じることにより隣接して連結されたブロック間に力が作用すると、該ブロック間の連結部で折れ曲がって分離し、前記連結部付近に設けたカッター部材のナイフエッジ部に前記光ファイバが当たって切断されたことを、該光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置により検出することで、前記洗掘が生じたことを検出することを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバ式洗掘検出装置において、前記光監視装置は、OTDRから入射した光の反射光または後方散乱光を測定するように構成されることを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の光ファイバ式洗掘検出装置において、前記光監視装置は、光ファイバの固定部内に反射波長の異なるFBGをつなぎこみ、波長計により反射波長の数を測定するように構成されることを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の光ファイバ式洗掘検出装置において、前記光ファイバは、前記ブロック中央のセメント充填部分で固定し、ブロック間の連結部付近では、弛みを持たせて柔軟性を有する充填材を充填し、前記ブロック間で折り曲げられ、ブロック間で分離し、たるませた光ファイバが伸ばされることで、前記カッター部材のナイフエッジ部に当り切断されることを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4記載の光ファイバ式洗掘検出装置において、前記各箱型のブロックは、一面が開口し、前記光ファイバを収納する収納部と、前記開口部を閉塞する蓋部とを有することを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5記載の光ファイバ式洗掘検出装置において、前記カッター部材は、前記ブロック間の連結部において、一方のブロックからその一部が突出するように設けられ、隣接する他方のブロックが該一部に嵌め合わされることで、該隣接するブロック間のせん断変形を抑えるように構成されていることを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6記載の光ファイバ式洗掘検出装置において、前記柔軟性を有する充填材は、主に非硬化型ゴム粘土により構成されることを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至7記載の光ファイバ式洗掘検出装置が、少なくとも1本のラインを構成する前記光ファイバの所定の間隔ごとで、且つ、前記監視対象物の所定の間隔ごとに複数設けられると共に、前記少なくとも1本のラインを構成する光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置を備えていることを特徴とする光ファイバ式洗掘検出システム。
【請求項9】
光ファイバを用いて監視対象物に生じる洗掘を検出する光ファイバ式洗掘検出装置において、
該光ファイバ式洗掘検出装置は、内外筒間にセメントミルクを充填した筒型のブロックを複数連結させた構造をなし、各ブロックの内筒外表面に所定の長さを巻き付け各ブロックで連続につなげた光ファイバを備えると共に、全ブロック間の連結状態を保持する筋金、連結された全ブロックの底板及び上板とを含み、
各ブロックは、前記光ファイバの固定部と、該光ファイバに弛みを持たせて配する空間部と、隣接するブロックと嵌め合わされる嵌合部とを有すると共に、弛みを持たせて配された光ファイバを切断するカッターを前記隣接するブロック間の連結部付近に有し、
洗掘が生じて露出したブロックが水流の抗力により転倒することで前記弛みを持たせて配された光ファイバが張力を受けて前記カッターに当たって切断されたことを、該光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置により検出することで、前記洗掘が生じたことを検出することを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項10】
請求項9記載の光ファイバ式洗掘検出装置が、少なくとも1本のラインを構成する前記光ファイバの所定の間隔ごとで、且つ、前記監視対象物の所定の間隔ごとに複数設けられると共に、前記少なくとも1本のラインを構成する光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置を備えていることを特徴とする光ファイバ式洗掘検出システム。
【請求項1】
光ファイバを用いて監視対象物に生じる洗掘を検出する光ファイバ式洗掘検出装置において、
複数連結された箱型のブロックと、これらブロックに略直線的に連通した光ファイバとを備え、前記洗掘が生じることにより隣接して連結されたブロック間に力が作用すると、該ブロック間の連結部で折れ曲がって分離し、前記連結部付近に設けたカッター部材のナイフエッジ部に前記光ファイバが当たって切断されたことを、該光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置により検出することで、前記洗掘が生じたことを検出することを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバ式洗掘検出装置において、前記光監視装置は、OTDRから入射した光の反射光または後方散乱光を測定するように構成されることを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の光ファイバ式洗掘検出装置において、前記光監視装置は、光ファイバの固定部内に反射波長の異なるFBGをつなぎこみ、波長計により反射波長の数を測定するように構成されることを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の光ファイバ式洗掘検出装置において、前記光ファイバは、前記ブロック中央のセメント充填部分で固定し、ブロック間の連結部付近では、弛みを持たせて柔軟性を有する充填材を充填し、前記ブロック間で折り曲げられ、ブロック間で分離し、たるませた光ファイバが伸ばされることで、前記カッター部材のナイフエッジ部に当り切断されることを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項5】
請求項1乃至4記載の光ファイバ式洗掘検出装置において、前記各箱型のブロックは、一面が開口し、前記光ファイバを収納する収納部と、前記開口部を閉塞する蓋部とを有することを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項6】
請求項1乃至5記載の光ファイバ式洗掘検出装置において、前記カッター部材は、前記ブロック間の連結部において、一方のブロックからその一部が突出するように設けられ、隣接する他方のブロックが該一部に嵌め合わされることで、該隣接するブロック間のせん断変形を抑えるように構成されていることを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項7】
請求項1乃至6記載の光ファイバ式洗掘検出装置において、前記柔軟性を有する充填材は、主に非硬化型ゴム粘土により構成されることを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項8】
請求項1乃至7記載の光ファイバ式洗掘検出装置が、少なくとも1本のラインを構成する前記光ファイバの所定の間隔ごとで、且つ、前記監視対象物の所定の間隔ごとに複数設けられると共に、前記少なくとも1本のラインを構成する光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置を備えていることを特徴とする光ファイバ式洗掘検出システム。
【請求項9】
光ファイバを用いて監視対象物に生じる洗掘を検出する光ファイバ式洗掘検出装置において、
該光ファイバ式洗掘検出装置は、内外筒間にセメントミルクを充填した筒型のブロックを複数連結させた構造をなし、各ブロックの内筒外表面に所定の長さを巻き付け各ブロックで連続につなげた光ファイバを備えると共に、全ブロック間の連結状態を保持する筋金、連結された全ブロックの底板及び上板とを含み、
各ブロックは、前記光ファイバの固定部と、該光ファイバに弛みを持たせて配する空間部と、隣接するブロックと嵌め合わされる嵌合部とを有すると共に、弛みを持たせて配された光ファイバを切断するカッターを前記隣接するブロック間の連結部付近に有し、
洗掘が生じて露出したブロックが水流の抗力により転倒することで前記弛みを持たせて配された光ファイバが張力を受けて前記カッターに当たって切断されたことを、該光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置により検出することで、前記洗掘が生じたことを検出することを特徴とする光ファイバ式洗掘検出装置。
【請求項10】
請求項9記載の光ファイバ式洗掘検出装置が、少なくとも1本のラインを構成する前記光ファイバの所定の間隔ごとで、且つ、前記監視対象物の所定の間隔ごとに複数設けられると共に、前記少なくとも1本のラインを構成する光ファイバを伝播する光を監視する光監視装置を備えていることを特徴とする光ファイバ式洗掘検出システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2007−127534(P2007−127534A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320728(P2005−320728)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000142067)株式会社共和電業 (52)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000142067)株式会社共和電業 (52)
[ Back to top ]