説明

光ファイバ母材の口出し方法及び口出し装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、光ファイバ母材の紡糸,線引き作業に先立ってその一端部を紡錘形状に加工整形する光ファイバ母材の口出し方法及び口出し装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の光ファイバ母材の口出し方法として、例えば図4に示すようなものが知られている。即ちこれは、先ず、上部チャック100に光ファイバ101の一端を固定して取付け、駆動モータ102によって光ファイバ母材101を回転しながらバーナ103でその下部側を加熱する。次に、このような状態で、下方から下部チャック104を前進させ、その下部チャック104に取付けたダミー棒105を光ファイバ母材101下部に溶着させる。このようにして、ダミー棒105を光ファイバ母材101に取付けたのち、下部チャック104を下方に押下げながら光ファイバ母材101を下方へ引張り、これによって図5に示す如く光ファイバ母材101の下部を紡錘形に加工・整形していき、ダミー棒105側から切断させて口出し部101aを形成する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような口出し作業を行う場合、ダミー棒と光ファイバ母材との接続完了及び切断完了のタイミングは機械的に確認することができず、作業者の目視に頼っているので、口出し作業の自動化を図る上で大きな障害となっている。そこで、この発明は、上記した従来の欠点に鑑み、光ファイバ母材とダミー棒との接続及び切断の動作完了を自動的に検知することができ、口出し作業の全自動化が可能となる光ファイバ母材の口出し方法及び口出し装置を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】即ち、この発明の光ファイバ母材の口出し方法は、強制的に回転する一方のチャックに一端を固定した光ファイバ母材と、この光ファイバ母材の他端に向けて前進する他方のチャックに取付けたダミー棒との溶着により行う接続完了動作及び、前記ダミー棒に溶着した下部側を加熱中の光ファイバ母材から引離す方向への引張りにより行う切断完了動作を、前記双方のチャックの回転速度の差から検知するものである。またこの発明の光ファイバ母材の口出し装置は、光ファイバ母材の一端を固定し、駆動モータによって前記光ファイバ母材を回転する一方のチャックと、前記光ファイバ母材の他端に溶着するダミー棒を取付け、前記一方側のチャックに対して回転フリーな他方のチャックと、前記トルクモータによって前記下部チャックを光ファイバ母材の他端に対して進退させる進退機構と、前記光ファイバ母材の他端側を加熱してダミー棒との溶着を図るとともに、光ファイバ母材の他端側に紡錘状の口出し部を形成するバーナと、このバーナを他方のチャックの後退動作に合せて移動させる移動機構と、前記一方のチャックの回転速度と他方のチャックの回転速度との差を算出して光ファイバ母材とダミー棒との接続完了動作及びダミー棒側が取付けてある光ファイバ母材下部側が本体側から切断される切断完了動作を検知する検知手段とを備えたものである。
【0005】
【作用】この発明の光ファイバ母材の口出し方法は、強制的に回転する一方のチャックと、光ファイバ母材との接続時にのみ従動して回転するチャックとの回転数を検出し、これら双方の回転数差が殆どなくなったとき、若しくは零になったときに接続完了と判断し、また双方の回転数が異なってきたとき若しくは一定以上の差を生じたときに切断完了と判断する。
【0006】
【実施例】以下この発明の一実施例について添付図面を参照しながら説明する。図1はこの発明に係る光ファイバ母材の口出し方法に用いる口出し装置を示すものであり、この口出し装置は、上下一対のチャック1,2と上チャック1側に設けられ光ファイバ母材3を回転させる駆動モータ4と、下チャック2を光ファイバ母材3に対して進退させる進退機構5と、光ファイバ母材3を加熱するバーナ6と、このバーナ6の移動を行う移動機構7と、一対のチャック1,2側に設けた回転速度検出手段8,9と、これらの回転速度検出手段8,9からの出力信号に基づいて光ファイバ母材3と下チャック2側との接続完了及び切断完了の動作を検知する検知手段であるマイクロプロセッサ10とから構成されている。上チャック1は、所定位置に固定されており、口出しを行おうとする光ファイバ母材3の端部ダミー棒3aを締付けて固定するように構成されている。そして、この実施例の上チャック1は、駆動モータ4により回転するように構成されている。下チャック2は、進退機構5により上チャック1に対して前進・後退するように構成されていると共に、後に説明する進退機構5の駆動体11先端に回転フリーの状態で取付けられている。なお、この下チャック2には、光ファイバ母材3下部と溶着させるためのダミー棒16が取付けてある。進退機構5は、上下一対のプーリ11a,11bと一方のプーリ11aを駆動するトルクモータ13と、他方のプーリ11bに取付けた下部チャック移動量検出用のセンサ14と、プーリ11a,11b間に張架するベルト15に取付けた駆動体12とから構成されている。そして、この進退機構5は、まず図1においてモータ13が順方向に回転して時計回りにベルト15を一定量回動させ、即ちダミー棒16が光ファイバ母材3下部と完全に溶着し接続されるまで下チャック2側を上昇させるように構成されている。また、ダミー棒16が光ファイバ母材3に溶着されたのち、その光ファイバ母材下部に口出し部を形成するため、モータ13が逆方向に回転して反時計回りにベルト15を一定量回動させ、即ち光ファイバ母材3の下部が完全に切断されるまで下チャック2を下降させるように構成されている。
【0007】バーナ6は、ダミー棒16と光ファイバ母材3との溶着を行うとともに、溶着後ダミー棒16を取付けている光ファイバ3の下部側を光ファイバ本体から引伸ばして切断するために加熱するものであり、これにより口出し部を形成するようになっている。移動機構7は、下チャック2の進退動作に合せてバーナ6を適宜移動させるものであり、この実施例では、モータ17と、このモータ17によって駆動するギアを収めたギアボックス18と、そのギアに軸着したスクリュシャフト19と、このスクリュシャフト19と平行に配置したガイドシャフト20と、スクリュシャフト19に螺合し、ガイドシャフト20に沿って上下動するとともに先端にバーナ6を取付けたスライド本体21と、先のギアの回転量からスライド体21の移動量を検出するセンサ22とから構成されている。回転速度検出手段8は、モータの回転動作と共に回転しながら光ファイバ母材3の回転速度を検出するようになっており、この実施例では円板状の回転体(図略)と、この回転体の外周縁に等間隔で設けた切欠き等をカウントする光センサとからなるエンコーダが用いられている。なおこの回転速度検出手段8の光センサはマイクロプロセッサ10の入力と接続されている。回転速度検出手段9は、回転フリーの状態にある下チャック2の回転速度を検出するためのものであり、先の回転速度検出手段8と同一構成のものが使用されており、同様にマイクロプロセッサ10の入力と接続されている。マイクロプロセッサ10は、各チャック1,2側に設けた回転速度検出手段8,9から出力される信号に基づいて光ファイバ母材3とダミー棒16との接続完了並びにダミー棒16を取付けてある光ファイバ母材3の下部側の本体側からの切断完了を検知するとともに、これらを検出すると進退機構5及び移動機構7を夫々駆動するモータ13,17の作動を停止し、かつバーナ6による加熱動作を停止させるように構成されており、出力が先のモータ13,17及びバーナ6の電磁開閉弁(図略)と接続されている。なお、このマイクロプロセッサ10は、下部チャック2の移動量確認及びバーナ6の移動量確認のため、入力側がセンサ14及びセンサ22とも接続されている。
【0008】次に、この発明に係る口出し方法について、図2及び図3を参照しつつ先の実施例の口出し装置を用いて説明する。
A.接続方法について(I)予め上部チャック1に、光ファイバ母材3を取付けているダミー棒3aの上部を固定させておく(第1ステップ30)。
(II)次に、モータ4により母材3を回転させながら、その母材3の下部とダミー棒16とをバーナ6にて加熱させる(第2ステップ31)。
(III)次に、進退機構5を作動させ、下部チャック2を一定量だけ母材3側に向けて上昇させる(第3ステップ32)。即ち、モータ13の作動によってプーリ11a,11bに張架したベルト15を時計方向に回動し、駆動体12を上方に移動させていき、センサ14がプーリ11bの回転量から下部チャック2が一定量上昇したことを検出すると、検出信号をマイクロプロセッサ10へ出力し、マイクロプロセッサ10からの制御信号によってモータ13の作動を停止させる。これによって、加熱されている母材3の下部にダミー棒16を溶着させる。
(IV)このようにしてダミー棒16が母材3に溶着されると、母材3の回転がダミー棒16に伝達され、ダミー棒16と共に下部チャック2が回転する(第4ステップ33)。
(V)母材3を固定する上部チャック1の回転速度とダミー棒16を固定する下部チャック2の回転速度とが、夫々回転速度検出手段8,9から出力される信号によって検知され、これら双方の回転速度が同一であることをマイクロプロセッサ10が検知すると、それから一定時間経過後にバーナ6の供給パイプ途中に設けた電磁開閉弁を一定量まで絞り込み、ガスの供給量を減じて火力を弱める(第5ステップ34)。
(VI)このようにして、検出手段8,9からの出力信号に基づいて上部チャック1と下部チャック2の各回転速度が同一であることをマイクロプロセッサ10が電気的に検知することにより、母材3とダミー棒16との接続動作が完了したことを自動的に確認する(第6ステップ35)。
(VII)その後、これら双方の接続試験を行うため、モータ13を逆回転(図1において反時計回り)させ、駆動体12を下方に一定の力で押下させて下部チャック2ごとダミー棒16を下方に押下する(第7ステップ36)。
【0009】B.切断方法(I)バーナ6へガスを供給する電磁開閉弁を大きく開放させ、火力を上昇させて回転中の母材3を加熱するとともに、進退機構5を作動させ、下部チャック2を一定の力で押下させていく(第1ステップ40)。
(II)このようにして下部チャック2を降下していく際に、移動機構7を作動させその下部チャック2の移動量の1/2の移動量だけ、つまり1/2の線速度でバーナ6も降下させる(第2ステップ41)。即ち、センサ14からの出力信号及びセンサ22からの出力信号にもとづいて下部チャック2及びバーナ6の降下速度をマイクロプロセッサ10が検知し、下部チャック2の降下速度に対しバーナ6の降下速度が1/2となるように各モータ13,17を制御する。
(III)これにより、即ち下部チャック2の降下動作に伴って引張されるダミー棒16により、母材3の下部側と上部側との間が次第に括れていき、これらの間が切断されると、母材3上部側から離れた下部及びダミー棒16を固定する下部チャック2が回転力を失い、回転を停止する(第3ステップ42)。
(IV)そして、この下部チャック2が完全に回転を停止すると、回転速度検出手段9からの信号を入力したマイクロプロセッサ10がこれを検知して切断動作が完了したことを自動的に検知する(第4ステップ43)。
【0010】
【発明の効果】以上説明してきたように、この発明の光ファイバ母材の口出し方法によれば、光ファイバ母材とダミー棒との接続及び切断の動作完了をこれら母材とダミー棒とを別個に接続する各チャックを介し、即ちこれらのチャックの回転速度を検出することから自動的に確認できるので、口出し装置の自動化が可能となる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る光ファイバ母材の口出し装置を示す概略構成図である。
【図2】この発明に係る光ファイバ母材の口出し方法における接続動作を説明するフローチャートである。
【図3】この発明に係る光ファイバ母材の口出し方法における切断動作を説明するフローチャートである。
【図4】従来の光ファイバ母材の口出し装置を示す概略構成図である。
【図5】従来の口出し装置における口出し方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1,2 チャック
3 光ファイバ母材
4 駆動モータ
5 進退機構
6 バーナ
7 移動機構
10 検知手段
13 トルクモータ
16 ダミー棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】 強制的に回転する一方のチャック(1)に一端を固定した光ファイバ母材(3)と、この光ファイバ母材(3)の他端に向けて前進する他方のチャック(2)に取付けたダミー棒(16)との溶着により行う接続完了動作及び前記ダミー棒に溶着した下部側を加熱中の光ファイバ母材(3)から引離す方向への引張りにより行う切断完了動作を、前記双方のチャック(1・2)の回転速度の差から検知することを特徴とする光ファイバ母材の口出し方法。
【請求項2】 光ファイバ母材(3)の一端を固定し、駆動モータ(4)によって前記光ファイバ母材(3)を回転する一方のチャック(1)と、前記光ファイバ母材(3)の他端を溶着するダミー棒(16)を取付け、前記一方側のチャック(1)に対して回転フリーな他方のチャック(2)と、前記トルクモータ(13)によって前記下部チャック(2)を光ファイバ母材(3)の他端に対して進退させる進退機構(5)と、前記光ファイバ母材(3)の他端側を加熱してダミー棒(16)との溶着を図るとともに、光ファイバ母材(3)の他端側に紡錘状の口出し部を形成するバーナ(6)と、このバーナ(6)を他方のチャック(2)の後退動作に合せて移動させる移動機構(7)と、前記一方のチャック(1)の回転速度と他方のチャック(2)の回転速度との差を算出して光ファイバ母材(3)とダミー棒(16)との接続完了動作及びダミー棒(16)側が取付けてある光ファイバ母材(3)下部側が本体側から切断される切断完了動作を検知する検知手段(10)とを備えたことを特徴とする光ファイバ母材の口出し装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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