説明

光ファイバ識別器具

【課題】光接続ユニットにおいて作業性を良好にすることができる光ファイバ識別器具の提供。
【解決手段】光接続ユニットの光コネクタハウジングにコネクタ接続された光ファイバに着脱自在に装着されて、この光ファイバを保持するヘッド部2と、ヘッド部2に連結された操作棒3とを備えた光ファイバ識別器具1。ヘッド部2は、操作棒3の操作によって光ファイバを保持した状態でこの光ファイバの長さ方向に移動可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配線盤や光接続箱等の光接続ユニットにおいて光ファイバの識別のために使用できる識別器具に関する。
【背景技術】
【0002】
光接続ユニットは、多数本の光ファイバコード等の光ファイバが接続されて用いられている(例えば特許文献1を参照)。
光ファイバの本数が多い場合には、これらが束状に集合配置され、配線変更などのため一部の光ファイバを撤去する作業や保守作業等において、一端側が光接続ユニットに接続された目的の光ファイバの他端側を特定するのが難しくなる。
このため、この光ファイバの一端側を長さ方向に引いてこの光ファイバを移動させ、他端側においてその光ファイバを確認することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−246147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、より多数本の光ファイバ(光ファイバコード等)が接続可能な光接続ユニットが用いられてきている。
光ファイバの数が多くなる(例えば数十〜数百本となる)と、目的の光ファイバの他端側を特定するのがいっそう難しくなる。当該光ファイバの他端側の特定のため、この光ファイバを長さ方向に動かそうとしても、集合して配線された光ファイバどうしの摩擦により光ファイバは移動しにくくなる。
このため、目的の光ファイバの他端側を特定するのが難しくなり、光ファイバ撤去作業や保守作業等において作業性が低下することがあった。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、光接続ユニットにおいて作業性を良好にすることができる光ファイバ識別器具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1にかかる発明は、光接続ユニットの光コネクタハウジングにコネクタ接続されて集合配置された複数の光ファイバのうち1つを着脱自在に装着して保持するヘッド部と、前記ヘッド部に連結された操作棒とを備え、前記ヘッド部は、前記操作棒の操作によって、前記光ファイバを保持した状態でこの光ファイバの長さ方向に移動する光ファイバ識別器具である。
本発明の請求項2にかかる発明は、請求項1において、前記ヘッド部は、前記光ファイバを収容可能な収容溝を有する本体部と、この本体部に対し周回りに回動することにより前記収容溝を開閉可能なカバー部とを備え、前記カバー部を回動させて前記収容溝を部分的に閉じることにより、前記光ファイバを長さ方向移動自在に収容溝から脱落阻止できる光ファイバ識別器具である。
本発明の請求項3にかかる発明は、請求項1または2において、前記ヘッド部の先端部分は、先端に向けて徐々に細径となるように形成され、前記操作棒は、前記ヘッド部の後端部に連結されている記載の光ファイバ識別器具である。
本発明の請求項4にかかる発明は、請求項1〜3のうちいずれか1項において、前記操作棒は、弾性的に曲げ変形する光ファイバ識別器具である。
本発明の請求項5にかかる発明は、請求項2において、前記カバー部の側部にはスリットが形成され、前記スリットは、前記カバー部の先端に形成された入口部から後端に形成された出口部に連通して形成され、前記カバー部の回動により、前記スリットが前記収容溝に位置合わせされて前記光ファイバを収容溝に導入する光ファイバ識別器具である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光ファイバ識別器具は、光ファイバを保持するヘッド部と、このヘッド部を操作する操作棒とを備え、ヘッド部が光ファイバの長さ方向に移動可能とされているので、集合配置された光ファイバのうち特定の光ファイバに対し、ヘッド部を当該光ファイバの一端側から他端側に移動させることで、当該光ファイバの他端側を確実に特定できる。
このため、光接続ユニットに接続された光ファイバの数が多い場合でも、目的の光ファイバを容易に特定できる。従って、光ファイバ撤去作業や保守作業等において作業性が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の光ファイバ識別器具の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】光ファイバ識別器具の縦断面図である。
【図3】光ファイバ識別器具の横断面図である。
【図4】光ファイバ識別器具の縦断面図である。
【図5】光ファイバ識別器具の縦断面図である。
【図6】光ファイバ識別器具の横断面図である。
【図7】本発明の光ファイバ識別器具を使用可能な光接続ユニットを示す模式図である。
【図8】本発明の光ファイバ識別器具の使用方法の一例を示す工程図である。
【図9】前図に続く光ファイバ識別器具の使用方法を示す工程図である。
【図10】前図に続く光ファイバ識別器具の使用方法を示す工程図である。
【図11】前図に続く光ファイバ識別器具の使用方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜図3は、本発明の光ファイバ識別器具の一実施形態である光ファイバ識別器具1を示す図である。図1は光ファイバ識別器具1の分解斜視図であり、図2は光ファイバ識別器具1の縦断面図であり、図3は光ファイバ識別器具1の横断面図である。
図1〜図3に示すように、光ファイバ識別器具1は、光ファイバ23に着脱自在に装着されて光ファイバ23を保持するヘッド部2と、ヘッド部2の後端部2aに連結された操作棒3とを備えている。
【0009】
ヘッド部2は、収容溝4を有する本体部5と、本体部5に装着されるカバー部6とを有する。
本体部5は、略円柱状に形成され、その先端5aから所定の長さの位置に周方向に沿う係止溝7が形成されている。本体部5において係止溝7より先端側の部分は、カバー部6が装着される装着部8とされている。
収容溝4は、装着部8に本体部5の長さ方向に沿って先端5aから所定の長さにわたって形成され、光ファイバ23を収容可能な長さと幅とされている。収容溝4は先端5aに向けて徐々に深くなるように形成されている。
【0010】
カバー部6は、断面円形のキャップ状とされ、ほぼ一定外径の基部11と、先端方向に徐々に細径になる先端部分12とを有する。
カバー部6の側部には、軸方向に沿ってスリット13が形成されており、このスリット13を通して光ファイバ23を出し入れ可能である。スリット13は、カバー部6の先端の入口部6aと後端の出口部6bを連通するように形成されている。
カバー部6の後端部には、内方に向かって突出する係止突起14が形成されており、係止突起14が係止溝7に挿入されることでカバー部6が本体部5から脱落しないようになっている。
【0011】
カバー部6は、本体部5に対し周回りに回動することにより収容溝4を開閉可能である。
図2および図3に示すように、カバー部6のスリット13の周方向位置を収容溝4の位置に合わせると、光ファイバ23をスリット13から収容溝4に導入できる。
図4に示すように、光ファイバ23を本体部5の収容溝4に収容した状態でカバー部6を周回りに回転させ、図5および図6に示すように、さらに回転させる。
【0012】
図5および図6は、図2および図3に示す状態からカバー部6を180度回転させ、スリット13を収容溝4に対し逆の向き(図5、図6における下方)に向けた状態を示す。この状態では、収容溝4はカバー部6に覆われ、光ファイバ23を収容溝4から脱落阻止できるようになっている。
係止突起14はカバー部6の全周ではなく、カバー部6の周方向の一部に形成されている。このため、光ファイバ23を保持した状態(図5および図6に示す状態。以下、保持状態という)では、係止突起14は光ファイバ23には干渉せず、光ファイバ23の光特性に悪影響が及ぶことはない。
【0013】
図5および図6に示す状態においては、ヘッド部2は、光ファイバ23を収容溝4からの脱落を阻止しつつ光ファイバ23の長さ方向に移動可能である。
このため、操作棒3の操作によって、ヘッド部2を光ファイバ23の長さ方向に移動させることができる。
操作棒3は、弾性的に曲げ変形できることが好ましい。
【0014】
次に、光ファイバ識別器具1の使用方法の一例を説明する。
本発明の対象となる光ファイバは、例えば図7に示す光接続ユニット21の光コネクタアダプタ22(光コネクタハウジング)に光コネクタ24(光コネクタプラグ)により接続された光ファイバ23である。光ファイバ23は、例えば、光ファイバコード、光ファイバ心線等である。光ファイバ23は複数本が集合配置されている。
図7に示す光接続ユニット21は、光コネクタアダプタ22が形成された成端部25の前面側に水平なトレイ26が延出した構造を有する。成端部25には、トレイ26に垂直に配列された複数の光コネクタアダプタ22からなるアダプタ配列部27が、紙面に垂直な方向に所定間隔ごとに複数設けられている。
【0015】
図8に示すように、束状に集合配置されている光ファイバ23のなかで、光ファイバ撤去作業や保守作業等において目的とする1本の光ファイバ23(符号23Aで示す)の一端側(光コネクタ24(図7参照)に近い部分)をヘッド部2の収容溝4に収容し、図9に示すように、カバー部6を軸方向回りに回転させて光ファイバ23Aをヘッド部2に装着する。
続いて、図10および図11に示すように、操作棒3の前進操作によって、ヘッド部2を光ファイバ23Aの長さ方向に、光ファイバ23の束に沿って他端側(図10、図11における右方向)に移動させる。これによって、光ファイバ23Aの他端側を特定できる。
【0016】
ヘッド部2を光ファイバ23Aに沿って移動させる際には、束状の多数の光ファイバ23の間を通過する場合があるが、ヘッド部2のカバー部6の先端部分12は先細形状となっているため、ヘッド部2は容易に移動する。
また、操作棒3は、弾性的に曲げ変形可能であると、光ファイバ23が曲がって配線されている場合でも、この配線方向に沿ってヘッド部2を移動させるのが容易になる。
【0017】
多数の光ファイバ23が集合配置されていると、光ファイバ23Aを識別するのが難しくなる。光ファイバ23Aの一端側を長さ方向に引いて光ファイバ23Aをわずかに移動させることにより他端側を特定することを試みても、束状になって配線された光ファイバ23の摩擦によって光ファイバ23Aが移動しにくくなるため、他端側の特定が難しくなることがある。
これに対し、前述の構成の光ファイバ識別器具1を用いれば、ヘッド部2を光ファイバ23Aの一端側から他端側に移動させることで、この他端側を確実に特定できる。
このため、光ファイバ23の数が多い(例えば数十〜数百本となる)場合でも光ファイバ23Aを容易に特定できる。従って、光ファイバ撤去作業や保守作業等において作業性が良好となる。
【0018】
なお、本発明において「光コネクタハウジング」は、光コネクタプラグ同士を中継し、内部にて両光コネクタプラグが位置決め接続される光接続機器をいい、ここに例示した光コネクタアダプタのほか、光コネクタレセプタクル等、光コネクタ(光コネクタアダプタ)が挿入接続される、各種雌型の光コネクタを指す。
【符号の説明】
【0019】
1・・・光ファイバ識別器具、2・・・ヘッド部、3・・・操作棒、4・・・収容溝、5・・・本体部、6・・・カバー部、12・・・先端部分、21・・・光接続ユニット、22・・・光コネクタハウジング、23・・・光ファイバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光接続ユニット(21)の光コネクタハウジング(22)にコネクタ接続されて集合配置された複数の光ファイバ(23)のうち1つを着脱自在に装着して保持するヘッド部(2)と、前記ヘッド部に連結された操作棒(3)とを備え、
前記ヘッド部は、前記操作棒の操作によって、前記光ファイバを保持した状態でこの光ファイバの長さ方向に移動することを特徴とする光ファイバ識別器具。
【請求項2】
前記ヘッド部は、前記光ファイバを収容可能な収容溝(4)を有する本体部(5)と、この本体部に対し周回りに回動することにより前記収容溝を開閉可能なカバー部(6)とを備え、
前記カバー部を回動させて前記収容溝を覆うことにより、前記光ファイバを長さ方向移動自在に収容溝から脱落阻止できることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ識別器具。
【請求項3】
前記ヘッド部の先端部分は、先端に向けて徐々に細径となるように形成され、
前記操作棒は、前記ヘッド部の後端部に連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ識別器具。
【請求項4】
前記操作棒は、弾性的に曲げ変形することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の光ファイバ識別器具。
【請求項5】
前記カバー部の側部にはスリット(13)が形成され、前記スリットは、前記カバー部の先端に形成された入口部(6a)から後端に形成された出口部(6b)に連通して形成され、
前記カバー部の回動により、前記スリットが前記収容溝に位置合わせされて前記光ファイバを収容溝に導入することを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ識別器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−224490(P2010−224490A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74638(P2009−74638)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】