説明

光フアイバジヤイロ

【目的】 安価に構成でき、かつ出力の安定性がよい光ファイバジャイロを実現する。
【構成】 光ファイバコイル16は、シングルモード光ファイバ16aの両端に同一長さの偏波面保存光ファイバ16bが接続されて構成され、その偏波面保存光ファイバ16bと光ファイバカプラ14とが最も効率的に結合され、光ファイバカプラ14により光ファイバコイル16に対し、右回り光と、左回り光とを分配供給し、かつ戻って来た右回り光と左回り光とを干渉させる。シングルモード光ファイバ16aをコイル化したことにより生じる複屈折性と、偏波面保存光ファイバ16bの複屈折性とにより、全体として光のX軸成分と、Y軸成分とが干渉しない程度に位相差が付けられるように偏波面保存光ファイバ16bの長さが決められている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は光ファイバコイルに右回り光と左回り光とを伝播させ、これら右回り光と左回り光との位相差を検出して光ファイバコイルに印加されるその中心回りの角速度を検出する光ファイバジャイロに関する。
【0002】
【従来の技術】図2に従来の光ファイバジャイロを示す。光源11からの光は光ファイバカプラなどの光分岐器12を通り、更に偏光子13を通って所定の偏光方向の成分のみが取り出され、その偏光子13からの光は光ファイバカプラなどの光分岐器14で2分配され、その一方の光はデポラライザ(偏光解消器)15を介してシングルモード光ファイバコイル16の一端に右回り光として入射され、他方の光は光位相変調器17を通って光ファイバコイル16の他端に左回り光として入射される。
【0003】光ファイバコイル16を伝播した右回り光と左回り光とは光分岐器14に戻って合成されて干渉し、その干渉光は偏光子13で所定の偏光方向の成分のみが取り出され、その偏光子13を通過した光は光分岐器12で分岐されて光検出器18に入射され、その光の強度に応じた電気信号に変換される。変調信号発生器19からの周期関数、例えば正弦波信号により光位相変調器17が駆動され、これを通過する光が位相変調される。光検出器18の出力は同期検波回路21で変調信号発生器19からの基準信号により同期検波され、その検波出力は出力端子22に出力される。
【0004】光ファイバコイル16に、その軸心回りの角速度が印加されていない状態では、光ファイバコイル16を伝播した右回り光と、左回り光との位相差はゼロであり、同期検波回路21の出力もゼロであるが、光ファイバコイル16に、その軸心回りの角速度が印加されると、これに応じて右回り光と左回り光とに位相差が生じ、同期検波回路21から、前記印加角速度の方向および大きさに応じた極性およびレベルの出力が生じ、印加角速度を検出することができる。
【0005】このように光ファイバジャイロは右回り光と、左回り光との位相差を検出するものであるが、光ファイバコイル16を伝播中に、偏波状態が変化し、偏光方向が直角な成分が生じる。光ファイバコイル16に複屈折性がわずか存在しているため、偏光方向が直角な成分が生じると、これら直角な偏光方向の両光は光ファイバコイル16の伝播速度が異なり、従って、光分岐器14で合成される右回り光の一方の偏光成分と、左回り光の他方の偏光成分とが干渉すると、右回り光と左回り光との位相差を正しく検出することができなくなる。
【0006】この点から、従来においてはデポラライザ15を挿入し、一方の偏光成分と、これと直角な他方の偏光成分との間で強度が等しく、かつ位相差を大きくつけ、相関性がない、つまり干渉性のないような状態(無偏光状態)にし、右回り光の一方の偏光成分と、左回り光の他方の偏光成分とが干渉しないようにしていた。デポラライザ15としてはLYOT形ファイバデポラライザが一般的である。このデポラライザは2本の定偏波光ファイバ(偏波面保存光ファイバ、つまり複屈折性光ファイバ)をその主軸を45°互いに傾むけて接続したものである。
【0007】光ファイバコイル16として偏波面保存ファイバを用い、デポラライザ15を省略したものもある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】光ファイバコイル16として偏波面保存光ファイバを用いたものは、偏波面保存光ファイバの価格が高いため、光ファイバコイル16の価格が光ファイバジャイロの全体の価格の半分程度にもなる欠点があった。シングルモード光ファイバを光ファイバコイル16として使用する場合は、価格が安くなるが、デポラライザ15を用いるため、製造に手間がかかる。つまりデポラライザ15は前述したように2本の偏波面保存光ファイバを、主軸を45°ずらして融着接続するが、その主軸の角度ずれに対する要求精度が極めて高い。加えて光ファイバジャイロの温度変化等の外乱に対するドリフトを低減するために、SPIE Vol412, P268 〜271 (1983)で述べられている Quadrapole 巻線を行うことが効果的であるが、Quadrapole巻線はファイバ全長の中心に対し外乱の影響を対称にしてドリフトを低減する手法であるため、デボラライザがコイル一端に配置された構成では、外乱の影響がデボラライザの存在により非対称となるため、ドリフト低減効果が十分に得られないという問題があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明によれば光ファイバコイルとして、シングルモード光ファイバが用いられ、その両端と光分岐手段との間に偏波面保存手段がそれぞれ接続される。偏波面保存手段としては偏波面保存光ファイバが好ましく、その両偏波面保存光ファイバの長さは、これら偏波面保存光ファイバ及びシングルモード光ファイバの全体として生じる光のX軸成分とY軸成分との位相差が、右回り光のX軸成分と、左回り光のY軸成分とが干渉しない程度以上になるように選定される。例えば光源として可干渉性が悪いSLDを用いる場合はX軸成分とY軸成分との位相差が102 〜103 ラジアン以上となるように、干渉し易い安価な光源、例えばLDを用いる場合は、104 〜105 ラジアン以上となるようにされる。また、両偏波面保存光ファイバは同一長,同一特性とするとよい。
【0010】シングルモード光ファイバにおいてもコイルにすると、つまり曲げると特にそのコイル径が小さいと、光のX軸成分とY軸成分との伝搬定数に差が発生する。従って光ファイバコイル中のシングルモード光ファイバにおいて生じる光のX軸成分とY軸成分との位相差が両成分が干渉しない位相差になるように両側の偏波面保存光ファイバの長さが調整される。
【0011】上述において偏波面保存光ファイバは、狭義の偏波面保存光ファイバ(定偏波面光ファイバ)又はこれと同等の複屈折をもつ光ファイバであり、この同等の複屈折をもつ光ファイバとしては光ファイバ自体がその複屈折をもつもの、又はそのような複屈折が光ファイバに発生させられたものでもよい。
【0012】
【実施例】図1にこの発明による光ファイバジャイロの一実施例を示し、図2と対応する部分に同一符号を付けてある。この発明においては光ファイバコイル16はシングルモード光ファイバ16aと、その両端に接続された偏波面保存光ファイバ16b、16bとよりなる。この例ではシングルモード光ファイバ16aはコイルとして巻かれ、光分岐器14として光ファイバカプラよりなる光分岐器14が用いられ、その光ファイバカプラ14の二つのポートとシングルモード光ファイバ16aの両端との間に偏波面保存光ファイバ16bがそれぞれ接続される。光ファイバカプラ14と両偏波面保存光ファイバ16bとの結合は、偏光子13を通過し光検出器18に至る光量が最大となるように接続される。
【0013】シングルモード光ファイバ16aはコイル状に巻かれているため、光のX軸成分の伝搬定数βxと、Y軸成分の伝搬定数βyとに差が発生し、複屈折B(B=(βx−βy)/k,k:波数)が存在するようになり、偏波面保存光ファイバと同等の作用をすることになる。その複屈折Bにもとずく、両軸成分の位相差と偏波面保存光ファイバ16bで生じる位相差との関係が、両軸成分の干渉がゼロになるように偏波面保存光ファイバ16bの長さが決められる。シングルモード光ファイバ16aの曲げにより生じた複屈折の主軸と、偏波面保存光ファイバ16bの複屈折の主軸とを一致させて接続されている。しかし必ずしも正確に一致させる必要はない。
【0014】シングルモード光ファイバ16aだけでX軸成分とY軸成分とが干渉しない程度の位相差を付けることができる場合でも、シングルモード光ファイバ16aと光分岐器14との接続余長部で偏波面が変化することなく、光分岐器14との結合が効率的に行われるように、この部分に偏波面保存光ファイバ16bが用いられる。両偏波面保存光ファイバ16bの一部もシングルモード光ファイバ16aと同一ボビン上に巻き込み、シングルモード光ファイバ16aに複屈折が生じている状態に直接偏波面保存光ファイバ16bを接続することが好ましい。しかしシングルモード光ファイバ16aの両端部のコイルの端又は余長部で複屈折性がほゞなくなった状態のシングルモード光ファイバ16aに偏波面保存光ファイバ16bを接続しても、その複屈折性がなくなった部分の長さが短く、この部分での偏光方向のゆらぎが無視できる程度であればよい。
【0015】上述においてこの発明を開ループ形光ファイバジャイロに適用したが、閉ループ形光ファイバジャイロにも適用できる。光分岐器14としては光ICで構成されたものでもよい。
【0016】
【発明の効果】以上述べたようにこの発明によれば光ファイバコイル16として、シングルモード光ファイバ16aの両端に偏波面保存光ファイバ16bを接続したものを用いているため、シングルモード光ファイバ16aをコイル化することにより生じた複屈折性にもとずく光のX軸成分とY軸成分との位相差が、干渉しないようにするために必要とする位相差に対する不足分を、両側の偏波保存光ファイバ16bでおぎなえばよく、高価な偏波保存光ファイバ16bの長さは短かくてよく、大部分は安価なシングルモード光ファイバ16aが用いられ、全体として安価に構成することができる。
【0017】しかも光分岐器14との結合は偏波保存光ファイバ16bで行われるため、その結合を最も効率的に行わせることが可能である。なおシングルモード光ファイバ16aの部分で複屈折性がほとんど生じない状態でも、両端の偏波面保存光ファイバ16bの長さを、これのみで光のX軸成分とY軸成分とが干渉しない程度の位相差を付けることができる程度にすればよく、全体を偏波面保存光ファイバのみで光ファイバコイル16を構成する場合より偏波面保存ファイバの使用量を著しく短かくすることができる。また偏波面保存光ファイバがコイルの両端に巻かれているため、偏波面の安定性がよく、光強度の安定性も得られる。
【0018】更に光ファイバコイル16は、一端のみにデポラライザを用いる場合と異なり、対称構造となっているため、温度変化に対するドリフトを最小とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例を示すブロック図。
【図2】従来の光ファイバジャイロを示すブロック図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 光源よりの光を光分岐手段にて分配して、光ファイバコイルの両端に右回り光、左回り光として入射し、これら右回り光および左回り光の上記光ファイバコイルを伝播した光を上記光分岐手段で干渉させ、その干渉光の強度を光検出器にて電気信号に変換し、その電気信号から、上記光ファイバコイルにその中心回りに印加される角速度を検出する光ファイバジャイロにおいて、上記光ファイバコイルはシングルモード光ファイバを有し、そのシングルモード光ファイバの両端と上記光分岐手段との間にそれぞれ接続された2つの偏波面保存手段を備えていることを特徴とする光ファイバジャイロ。
【請求項2】 上記偏波面保存手段は偏波面保存光ファイバであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバジャイロ。
【請求項3】 上記シングルモード光ファイバの両端に接続された上記2本の偏波面保存光ファイバの一部が、上記光ファイバコイルに巻き込まれていることを特徴とする請求項2記載の光ファイバジャイロ。
【請求項4】 上記シングルモード光ファイバのコイル化により生じた被屈折性の固有軸と、その両端に接続された上記偏波面保存手段の固有軸とがほゞ一致していることを特徴とする請求項1記載の光ファイバジャイロ。

【図1】
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【図2】
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