光フィルター、光フィルターモジュール、および光分析装置
【課題】対向する反射膜の帯電を防止する光フィルター、および光フィルターを用いた光フィルターモジュール、光分析装置を提供する。
【解決手段】固定基板51と、固定基板51と対向する可動基板52と、固定基板51の可動基板52に対向する面に設けられた第1反射膜54と、可動基板52に設けられ、第1反射膜54とギャップを介して対向する第2反射膜55と、第1反射膜54を覆い、第1反射膜54の外周より外側の範囲まで延長して形成された第1電極561と、可動基板52の固定基板51に対向する面に設けられ、第1電極561の一部と対向する第2電極562と、を備え、第1電極561は透光性材料にて形成され、第1電極561と第2反射膜55とが電気的に接続され同電位である。
【解決手段】固定基板51と、固定基板51と対向する可動基板52と、固定基板51の可動基板52に対向する面に設けられた第1反射膜54と、可動基板52に設けられ、第1反射膜54とギャップを介して対向する第2反射膜55と、第1反射膜54を覆い、第1反射膜54の外周より外側の範囲まで延長して形成された第1電極561と、可動基板52の固定基板51に対向する面に設けられ、第1電極561の一部と対向する第2電極562と、を備え、第1電極561は透光性材料にて形成され、第1電極561と第2反射膜55とが電気的に接続され同電位である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光フィルター、光フィルターモジュール、および光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の波長を有する光から特定の波長の光を取り出す光フィルターが知られている。光フィルターの一例として、例えば波長可変干渉フィルターが挙げられる。
波長可変干渉フィルターは、基板に形成した反射膜(光学膜)を対向配置し、この反射膜間のギャップ寸法を外力により変化させて、ギャップ寸法に応じた波長の光を透過するように構成した光フィルターである。
特許文献1(第1図(b)参照)には、反射膜として基板の上に酸化チタン薄膜層、銀薄膜層、保護膜を順次積層した構成が開示されている。保護膜は空気中に長時間さらされることによる銀薄膜層の硫化、湿度の影響による劣化を防ぐために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−300202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1による保護膜は絶縁体で形成されているため、絶縁体の表面に電荷が溜まり、反射膜が帯電してしまうという課題がある。
このため、反射膜が対向配置されている波長可変干渉フィルターでは、反射膜の帯電により反射膜間に斥力または引力が生じ、反射膜間距離の制御精度を低下させる要因となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる光フィルターは、第1基板と、前記第1基板と対向する第2基板と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板を厚み方向から見た平面視において、前記第1反射膜を覆い、前記第1反射膜の外周より外側の範囲まで延長して形成された第1電極と、前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられ、前記第1電極の一部と対向する第2電極と、を備え、前記第1電極は透光性材料にて形成され、前記第1電極と前記第2反射膜とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1電極が第1反射膜を覆って形成され、第1電極と第2反射膜とが電気的に接続されている。このため、第1電極と第2反射膜とが同電位となり、対向する第1電極の表面および第2反射膜の表面に電荷が溜まらず、両表面の帯電を防止できる。よって、第1反射膜と第2反射膜との間に斥力、引力などの余計な力が働かず、帯電による反射膜間距離の制御精度の低下を抑制できる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる光フィルターにおいて、前記第2電極と、前記第2電極と対向する前記第1電極との距離が、前記第1反射膜と前記第2反射膜との距離よりも大きいことが望ましい。
【0009】
第1電極と第2電極との間に電圧が印加され、第1電極と第2電極との間のギャップ寸法が微小となったときに、両者間に急激に引っ張る力が増加するプルイン現象が生ずる。この構成によれば、第1電極と第2電極との距離が第1反射膜と第2反射膜との距離より大きいことから、このプルイン現象を抑制することができる。
このことから、第1反射膜と第2反射膜との間で接触して両者が貼り付くことなく、反射膜間のギャップを維持できる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる光フィルターにおいて、前記第1基板の前記第1反射膜が形成される第1反射膜形成部は、前記第1電極が形成される前記第2電極と対向する第1電極形成部より、前記第1基板との距離が近い位置に配置され、前記第1反射膜形成部と前記第1電極形成部とは斜面で繋がっていることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、第1反射膜が形成される第1反射膜形成部と第1電極形成部とが斜面で繋がっている。つまり、第1電極形成部と第1電極形成部との間に段差が形成されていない。このため、第1電極は連続して形成することができ、電極の断線を防止できる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる光フィルターにおいて、前記第2反射膜の表面に透光性材料の導電体膜が形成されていることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、第2反射膜の表面に導電体膜が形成されることから、導電体膜の表面は帯電せず、第2反射膜の側に帯電が生ずることが無い。このため、反射膜間では引力または斥力が働かず、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することで反射膜間のギャップ寸法を正確に制御できる。また、導電体膜が第2反射膜を保護することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる光フィルターにおいて、前記第2反射膜の表面に透光性材料の絶縁膜が形成され、前記第1電極が接地されていることが望ましい。
【0015】
この構成によれば、絶縁膜が帯電したとしても、第1電極および第2反射膜が接地されているため、絶縁膜が帯電した影響を小さくすることができる。
また、第2反射膜の表面に絶縁膜が形成されることから、絶縁膜が第2反射膜を保護することができる。
【0016】
[適用例6]本適用例にかかる光フィルターモジュールは、第1基板と、前記第1基板と対向する第2基板と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板を厚み方向から見た平面視において、前記第1反射膜を覆い、前記第1反射膜の外周より外側の範囲まで延長して形成された第1電極と、前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられ、前記第1電極の一部と対向する第2電極と、前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、を備え、前記第1電極は透光性材料にて形成され、前記第1電極と前記第2反射膜とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第1電極が第1反射膜を覆って形成され、第1電極と第2反射膜とが電気的に接続されている。このため、第1電極と第2反射膜とが同電位となり、対向する第1電極の表面および第2反射膜の表面に電荷が溜まらず、両表面の帯電を防止できる。よって、第1反射膜と第2反射膜との間に斥力、引力などの余計な力が働かず、帯電による反射膜間距離の制御精度の低下を抑制でき、精度の高い光量測定を実施する光フィルターモジュールを得ることができる。
【0018】
[適用例7]本適用例にかかる光分析装置は、
第1基板と、前記第1基板と対向する第2基板と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板を厚み方向から見た平面視において、前記第1反射膜を覆い、前記第1反射膜の外周より外側の範囲まで延長して形成された第1電極と、前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられ、前記第1電極の一部と対向する第2電極と、前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、前記受光部により受光された前記光に基づいて、前記光の光特性を分析する分析処理部と、を備え、前記第1電極は透光性材料にて形成され、前記第1電極と前記第2反射膜とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、第1電極が第1反射膜を覆って形成され、第1電極と第2反射膜とが電気的に接続されている。このため、第1電極と第2反射膜とが同電位となり、対向する第1電極の表面および第2反射膜の表面に電荷が溜まらず、両表面の帯電を防止できる。よって、第1反射膜と第2反射膜との間に斥力、引力などの余計な力が働かず、帯電による反射膜間距離の制御精度の低下を抑制でき、精度の高い光量測定を実施できる。そして、この測定結果に基づいて光分析処理を実施することで、正確な分光特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の測色装置の構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態におけるエタロンの平面図。
【図3】第1実施形態におけるエタロンの断面図。
【図4】第1実施形態における固定基板の構成を示す平面図。
【図5】第1実施形態における可動基板の構成を示す平面図。
【図6】第1実施形態における接続部を示す断面図。
【図7】第1実施形態における接続部を示す断面図。
【図8】第1実施形態における変形例を示す断面図。
【図9】第1実施形態における変形例を示す断面図。
【図10】第1実施形態における変形例を示す断面図。
【図11】第1実施形態における変形例を示す断面図。
【図12】第2実施形態における光分析装置としてのガス検出装置の構成を示す断面図。
【図13】第2実施形態におけるガス検出装置の回路ブロック図。
【図14】第3の実施形態における光分析装置としての食物分析装置の構成を示すブロック図。
【図15】第4の実施形態における光分析装置としての分光カメラの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更し、概略の構成を示している。
(第1実施形態)
【0022】
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
<測色装置の概略構成>
図1は光分析装置としての測色装置の構成を示すブロック図である。
測色装置1は、検査対象Aに光を照射する光源装置2と、測色センサー3(光フィルターモジュール)と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備える。
この測色装置1は、検査対象Aに光源装置2から光を照射し、検査対象Aから反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度を分析して測定する装置である。
【0023】
<光源装置の構成>
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ図示)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。
なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば検査対象Aが発光部材である場合、光源装置2を設けずに測色装置を構成してもよい。
【0024】
<測色センサーの構成>
光フィルターモジュールとしての測色センサー3は、エタロン(波長可変干渉フィルター)5と、静電アクチュエーターに印加する電圧を制御し、エタロン5で透過させる光の波長を変える電圧制御部32と、エタロン5を透過した光を受光する受光部31と、を備える。
また、測色センサー3は、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、エタロン5に導光する光学レンズ(図示せず)を備えている。そして、この測色センサー3は、光学レンズに入射した検査対象光をエタロン5で所定波長帯域の光に分光し、分光した光が受光部31にて受光される。
受光部31は、フォトダイオードなどの光電変換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部31は制御装置4に接続され、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0025】
(エタロンの構成)
図2は、エタロンの平面図であり、図3は、図2のA−A断線に沿う断面図である。
図2に示すように、光フィルターとしてのエタロン5は、平面視で正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図3に示すように、固定基板(第1基板)51および可動基板(第2基板)52を備えている。
これらの基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などの基材からなり、板状の基材をエッチングすることにより形成されている。
そして、エタロン5は、固定基板51の接合面に形成された第1接合膜531と、可動基板52の接合面に形成された第2接合膜532とが接合されて一体に構成される。
なお、第1および第2接合膜531,532として、ポリオルガノシロキサンを用いたプラズマ重合膜が採用されている。
【0026】
固定基板51と可動基板52との間には、光の反射特性と透過特性とを有する第1反射膜54、および第2反射膜55が設けられる。ここで、第1反射膜54は、固定基板51の可動基板52に対向する面に固定され、第2反射膜55は、可動基板52の固定基板51に対向する面に固定されている。また、これらの第1反射膜54および第2反射膜55は、ギャップ寸法Gを介して対向配置されている。
【0027】
さらに、固定基板51と可動基板52との間には、第1反射膜54および第2反射膜55の間には静電アクチュエーター56が設けられ、ギャップ寸法Gの調整をする。
静電アクチュエーター56は、固定基板51に設けられた第1電極561と、可動基板52に設けられた第2電極562とから構成されている。
第1電極561は第1反射膜54を覆い、第1反射膜54の外形から延長して形成され、第1電極561と第2電極562とが対向する部分が静電アクチュエーター56として機能する。
【0028】
なお、エタロン5は、第1電極561と第2電極562との距離が第1反射膜54と第2反射膜55との距離より大きく形成されている。例えば、第1電極561と第2電極562の間に電圧を印加しない初期状態において、第1電極561と第2電極562との距離が2μm、第1反射膜54と第2反射膜55との距離(ギャップ寸法)が0.5μmに設定されている。このため、第1電極561と第2電極562との間のギャップ寸法Gが微小となったときに急激に引っ張る力が増加するプルイン現象を抑制することができる構成となっている。
また、本実施形態では固定基板側に反射膜を覆う電極を設けたが、電極構成を逆にして、可動基板側に反射膜を覆う電極を設けた構造でもよい。
【0029】
次に、固定基板51および可動基板52の構成について詳細に説明する。
(固定基板の構成)
図4は固定基板の構成を示す平面図であり、可動基板と対向する面を見た図である。
固定基板51は、厚みが例えば500μmの石英ガラス基材をエッチング加工して形成される。この固定基板51には、エッチングにより固定基板51の中央を中心とする円形の凹部が設けられ、第1電極形成部511および反射膜形成部512が形成される。
第1電極形成部511は反射膜形成部512より深くエッチングされ、円柱状の反射膜形成部512が突出して、その周りに同心円状に第1電極形成部511が形成されている。
また、第1電極形成部511と反射膜形成部512との境は斜面518が形成され、段差のない連続した形状となっている(図3参照)。
【0030】
反射膜形成部512には、円形状の第1反射膜54が形成されている。この第1反射膜54はAgC合金などの金属膜により約100nmの厚みで形成されている。なお、第1反射膜54はAgC合金以外のAg合金や、TiO2などの誘電体膜の上にAgC合金やAg合金などを積層した構成でもよい。
【0031】
そして、第1反射膜54を覆い、第1反射膜54の外周縁から第1電極形成部511に拡大するように第1電極561が形成されている。この第1電極561は、透光性の導電膜であり、例えばITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)膜が用いられる。第1電極561の厚みは約50nmに形成される。このように、第1反射膜54を覆って第1電極561が形成されることから、第1電極561が湿度の影響や、酸化、硫化、などにより劣化することを防止できる。
【0032】
また、固定基板51には、第1電極形成部511の外周縁から固定基板51の1つの頂点C1に向かって延出する第1引出形成部513と、頂点C1と対角となる頂点C2に向かって延出する第2引出形成部514と、が設けられている。
第1引出形成部513および第2引出形成部514は、エッチングにより第1電極形成部511と同じ深さに形成される溝であり、この第1引出形成部513には、第1電極561に接続する引出電極561Aが形成される。
【0033】
第1引出形成部513の先端方向には、固定基板51の厚み方向に突出する突出部513Aと、固定基板51の隅部に位置するパッド部513Bと、を備えている。突出部513Aおよびパッド部513Bには、引出電極561Aに接続される導電膜が形成されている。詳しくは、引出電極561Aから外部との電気的接続をなすパッド部513Bに至るまで連続してCr/Au膜(下地にCr膜、その上にAu膜を形成した積層膜)が形成される。
引出電極561Aは導通電極564に接続され、導通電極564は電極パッド561Pに接続されている。このようにして、第1電極561との導通が電極パッド561Pを介して可能となるように構成されている。
【0034】
第2引出形成部514の先端方向には、固定基板51の厚み方向に突出する突出部514Aと、突出部514Aに連続するパッド部514Bとを備えている。
突出部514Aおよびパッド部514Bには、導電膜が形成されている。導電膜は、引出電極561Aからパッド部513Bに至るまで、Cr/Au膜が形成され、パッド部514Bには、外部との電気的接続をなす電極パッド563Pが形成されている。
【0035】
そして、固定基板51において、第1電極形成部511、反射膜形成部512、第1引出形成部513、第2引出形成部514、およびパッド部513B,514Bが形成されていない部分が固定基板51の接合面515となる。
この接合面515には、主材料としてポリオルガノシロキサンを用いた第1接合膜531が設けられている。第1接合膜531はCVD(Chemical Vapor Deposition)などにより成膜されたプラズマ重合膜である。
なお、前述の突出部513A,514Aの上面は接合面515と同じ高さの面となるように形成されている。
【0036】
(可動基板の構成)
図5は可動基板の構成を示す平面図であり、固定基板と対向する面を見た図である。
可動基板52は、厚みが例えば200μmのガラス基材の一面をエッチングにより加工することで形成される。
可動基板52の四隅のうち対角となる2つの隅部には切欠部526が形成されている。この切欠部526は、固定基板51の電極パッド561P,563Pに対応する位置に形成される。
この可動基板52には、基板中央を中心とする円柱状の可動部522と、その周りに同心円状に可動部522を保持する連結保持部523と、が形成されている。
連結保持部523は、固定基板51と対向する面とは反対の面に円環状の溝が形成され、可動部522の厚みより薄くなるように形成されている(図2、図3参照)。
このように、可動基板52はダイヤフラム構造を持ち、可動部522が可動基板52の厚み方向に移動しやすいように構成されている。
【0037】
可動基板52の固定基板51に対向する面は基材の平面を利用し、エッチング加工された面を有していない。そして、可動基板52の中央部に第2反射膜55と、その第2反射膜55を取りまくように連結保持部523に形成された第2電極562が設けられている。なお、この第2電極562は可動部522に設けられていてもよい。
第2反射膜55の材料としてAgC合金が用いられるが、AgC合金以外のAg合金や、TiO2などの誘電体膜の上にAgC合金やAg合金などを積層した構成でもよい。なお、第2反射膜55は約100nmの厚みに形成されている。
【0038】
また、可動基板52には、第2反射膜55から可動基板52の1つの仮想頂点C3の方向に延出し、切欠部526の手前で止まるように引出電極551Aが形成されている。引出電極551AはITO膜で形成されている。なお、引出電極551AはCr/Au膜などの金属膜を利用しても良い。
【0039】
第2電極562は、第2反射膜55から引き出される引出電極551Aの行路を確保するために一部が切り欠かれてC字状に形成されている。第2電極562はITO膜で形成され、約100nmの厚みを有している。
そして、第2電極562から可動基板52の1つの仮想頂点C4の方向に延出した引出電極562Aが、切欠部526の手前で止まるように形成されている。引出電極562Aは第2電極562と同様にITO膜で形成されている。
引出電極551A,562Aの先端部は、固定基板51の突出部513A,514Aと接触する接続部525A,525Bとなっている。
【0040】
そして、固定基板51における接合面515と対向する部分が、可動基板52の接合面となる。
この接合面には、主材料としてポリオルガノシロキサンを用いた第1接合膜531が設けられている。第1接合膜531はCVDなどにより成膜されたプラズマ重合膜である。
【0041】
次に、上記の固定基板51と可動基板52における引出電極の接続構造について詳細に説明する。
(接続部の構造)
図6は、図2のB−B断線に沿う断面図である。
固定基板51と可動基板52が接合された状態で、可動基板52の第2電極562から引き出された引出電極562Aは接続部525Bにて、固定基板51の突出部514Aと接触する。突出部514Aには、その上面から電極パッド563Pに接続するように導通電極563が設けられ、突出部514Aの上面にて引出電極562Aと導通電極563とが接続されるように構成されている。このようにして、可動基板52の第2電極562と、固定基板51の電極パッド563Pとが電気的に接続される。
【0042】
図7は、図2のD−D断線に沿う断面図である。
固定基板51と可動基板52が接合された状態で、可動基板52の第2反射膜55から引き出された引出電極551Aは接続部525Aにて、固定基板51の突出部513Aと接触する。突出部513Aには、その上面から電極パッド561Pに接続するように導通電極564が設けられ、突出部513Aの上面にて引出電極551Aと導通電極564とが接続されるように構成されている。また、導通電極564は第1電極561から引き出された引出電極561Aに接続されている。このように、可動基板52の第2反射膜55と、固定基板51の第1電極561とが、電極パッド563Pを介して電気的に接続され、第1電極561と第2反射膜55とが同電位となる構造である。
なお、本実施形態では、エタロン5内部の配線において、第1電極561と第2反射膜55とが同電位となる構造としたが、エタロン5に接続される外部回路において第1電極561と第2反射膜55とが同電位となる接続をしてもよい。
【0043】
(エタロンと電圧制御部との接続)
図1〜図3に戻り、電圧制御部32は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーター56の第1電極561および第2電極562に印加する電圧を制御する。
上述のエタロン5と電圧制御部32との接続では、2つの電極パッド561Pおよび電極パッド563Pに、それぞれ、電圧制御部32に接続された導線を接続する。
ここで、エタロン5の可動基板52は、電極パッド561Pおよび電極パッド563Pに対向する位置が切り欠かれた切欠部526が形成されている。このため、電極パッド561Pおよび電極パッド563Pが露出しており、接続が容易である。
【0044】
<制御装置の構成>
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、および測色処理部43(分析処理部)などを備えて構成されている。
【0045】
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部32は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長を透過させるよう、静電アクチュエーター56への印加電圧を設定する。
【0046】
測色処理部43は、測色センサー制御部42を制御して、エタロン5の反射膜間のギャップ寸法を変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。また、測色処理部43は、受光部31から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光の光量を取得する。そして、測色処理部43は、上記により得られた各波長の光の受光量に基づいて、検査対象Aから反射された光の色度を算出する。
【0047】
(第1実施形態の作用効果)
以上、本実施形態によれば以下の効果を有する。
光フィルターとしてのエタロン5は、第1電極561が第1反射膜54を覆って形成され、第1電極561と第2反射膜55とが同電位となるように電気的に接続されている。
このため、対向する第1電極561の表面および第2反射膜55の表面に電荷が溜まらず、両表面の帯電を防止できる。よって、第1反射膜54と第2反射膜55との間に斥力または引力などの余計な力が働かず、帯電による反射膜間距離の制御精度の低下を抑制できる。
【0048】
また、エタロン5における静電アクチュエーター56の駆動において、第1電極561と第2電極562との間のギャップ寸法が微小となったときに急激に引っ張る力が増加するプルイン現象が生ずるが、第1電極561と第2電極562との距離が第1反射膜54と第2反射膜55との距離より大きいことから、このプルイン現象を抑制することができる。
このことから、第1反射膜54と第2反射膜55との間で接触して両者が貼り付くことなく、反射膜間のギャップを維持できる。
【0049】
さらに、第1反射膜54が形成される反射膜形成部512と第1電極形成部511とは斜面518で繋がっている。つまり、反射膜形成部512と第1電極形成部511との間に段差が形成されていない。このため、第1電極561は連続して形成することができ、電極膜の断線を防止できる。
【0050】
また、光フィルターモジュールとしての測色センサー3は、対向する反射膜の帯電を防止するエタロン5を備えており、反射膜間距離の制御精度が向上し精度の高い光量測定を実施することができる。
【0051】
さらに、光分析装置としての測色装置1は、エタロン5と、受光部31とを備えた測色センサー3を有するので、精度の高い光量測定を実施できる。そして、この測定結果に基づいて光分析処理を実施することで、正確な分光特性を得ることができる。
【0052】
次に、本実施形態に係るエタロンの変形例について説明する。
(変形例)
図8から図11はエタロンの構成の変形例を示す断面図である。なお、これらの説明において第1実施形態と同様な構成については、図面に同符号を付し説明を省略する。
図8に示すエタロン6は、可動基板52の第2反射膜55を表面から側面まで覆う導電体膜61を備える点が第1実施形態のエタロンとは異なる。
導電体膜61は透光性の材料で形成され、例えばITO膜にて形成されている。
このような構造のため、導電体膜61の表面には帯電が生ぜず、第2反射膜55の側に帯電が生ずることが無い。このため、反射膜間では引力または斥力が働かずアクチュエーターの駆動で反射膜間のギャップ寸法を正確に制御できる。また、導電体膜61は例えば、20nm程度の厚みに形成され、導電体膜61が第2反射膜55を保護する保護膜として作用する効果もある。
【0053】
図9に示すエタロン7は、第2電極562と対向する固定基板51の位置に電極63が形成され、その電極63と第1反射膜54を覆う第1電極561が形成されている点が第1実施形態のエタロンとは異なる。
電極63は、ITO膜に限らず、Cr/Au膜などの金属膜を用いても良い。ここで、電極63の厚みは100nm、第1電極561の厚みは20nm、第2電極562の厚み100nm程度の構成されている。
このような構造は、例えば第1反射膜54上に形成される第1電極561を光学特性の理由で厚く形成できない場合、静電アクチュエーター56として機能する部分およびその他の配線部分を厚く形成できるため、配線の電気抵抗を下げることが可能である。
【0054】
図10に示すエタロン8は、可動基板52に配置される静電アクチュエーター56の電極が2つの電極65A,65Bから形成されている点が第1実施形態のエタロンとは異なる。
電極65A,65Bは同心円の円環状に形成され、それぞれが独立して電圧が印加されるように構成されている。
このような構造では、静電アクチュエーター56に働く静電力を細かく調整でき、反射膜間のギャップ寸法を精度よく制御することができる。
なお、図10では2つの電極の形態を例示したが、2つ以上の複数の電極で構成してもよい。
【0055】
図11に示すエタロン9は、可動基板52の第2反射膜55の表面から側面まで覆う絶縁膜69を備える点が第1実施形態のエタロンとは異なる。
絶縁膜69は透光性の材料、例えばAl2O3膜、SiO2膜などにて形成されている。また、第1電極561および第2反射膜55がグランドに接続されている。
この構造では、絶縁膜69が帯電したとしても、第1電極561および第2反射膜55が接地されているため、絶縁膜69が帯電した影響を小さくすることができる。そして、絶縁膜69の厚みは、例えば20nm程度であり、ガス、湿度などの影響による第2反射膜55の劣化を防止することができる。
【0056】
以上、第1実施形態では、光分析装置として測色装置1を例示したが、その他、様々な分野に光フィルター、光フィルターモジュール、光分析装置を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、光フィルターとしてエタロン(波長可変干渉フィルター)を用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
(第2実施形態)
【0057】
以下、ガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0058】
図12は、エタロンを備えたガス検出装置の一例を示す断面図である。
図13は、ガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図12に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、エタロン(波長可変干渉フィルター)5、および受光素子137(受光部)等を含む検出部(光フィルターモジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
【0059】
また、図13に示すように、ガス検出装置100には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、エタロン5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0060】
次に、ガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0061】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光を射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0062】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光がエタロン5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、エタロン5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光をエタロン5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0063】
なお、図12,13において、ラマン散乱光をエタロン5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光フィルターモジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置100を本発明の光分析装置とする。このような構成でも、本発明の光フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0064】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
(第3実施形態)
【0065】
次に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0066】
図14は、エタロン5を利用した光分析装置の一例である食物分析装置の構成を示すブロック図である。
この食物分析装置200は、検出器(光フィルターモジュール)210と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光するエタロン(波長可変干渉フィルター)5と、分光された光を検出する撮像部(受光部)213と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、エタロン5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0067】
この食物分析装置200は、装置を駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通ってエタロン5に入射する。エタロン5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御してエタロン5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0068】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0069】
また、図14において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、自動車運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0070】
さらには、本発明の光フィルター、光フィルターモジュール、光分析装置としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光フィルターモジュールに設けられたエタロンにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光フィルターモジュールを備えた光分析装置により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
(第4実施形態)
【0071】
また、他の光分析装置として、本発明のエタロン(波長可変干渉フィルター)により光を分光して、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、エタロンを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図15は、分光カメラの構成を示す斜視図である。分光カメラ300は、図15に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、対物レンズ321、結像レンズ322、およびこれらのレンズ間に設けられたエタロン5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、エタロン5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0072】
さらには、本発明のエタロンをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明のエタロンを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0073】
さらには、光フィルターモジュールおよび光分析装置を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、エタロンにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0074】
上記に示すように、本発明の光フィルター、光フィルターモジュール、および光分析装置は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明のエタロンは、上述のように、1つのデバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光フィルターモジュールや光分析装置の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用として好適に用いることができる。
【0075】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更することができる。そして、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…測色装置、2…光源装置、3…測色センサー、4…制御装置、5,6,7,8,9…エタロン、31…受光部、32…電圧制御部、41…光源制御部、42…測色センサー制御部、43…測色処理部、51…固定基板、52…可動基板、54…第1反射膜、55…第2反射膜、56…静電アクチュエーター、61…導電体膜、63…電極、65A,65B…電極、69…絶縁膜、100…ガス検出装置、200…食物分析装置、300…分光カメラ、511…第1電極形成部、512…反射膜形成部、513…第1引出形成部、513A…突出部、513B…パッド部、514…第2引出形成部、514A…突出部、514B…パッド部、515…接合面、518…斜面、522…可動部、523…連結保持部、525A…接続部、525B…接続部、526…切欠部、531…第1接合膜、532…第2接合膜、551A…引出電極、561…第1電極、561A…引出電極、561P…電極パッド、562…第2電極、562A…引出電極、563…導通電極、563P…電極パッド、564…導通電極。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光フィルター、光フィルターモジュール、および光分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の波長を有する光から特定の波長の光を取り出す光フィルターが知られている。光フィルターの一例として、例えば波長可変干渉フィルターが挙げられる。
波長可変干渉フィルターは、基板に形成した反射膜(光学膜)を対向配置し、この反射膜間のギャップ寸法を外力により変化させて、ギャップ寸法に応じた波長の光を透過するように構成した光フィルターである。
特許文献1(第1図(b)参照)には、反射膜として基板の上に酸化チタン薄膜層、銀薄膜層、保護膜を順次積層した構成が開示されている。保護膜は空気中に長時間さらされることによる銀薄膜層の硫化、湿度の影響による劣化を防ぐために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−300202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1による保護膜は絶縁体で形成されているため、絶縁体の表面に電荷が溜まり、反射膜が帯電してしまうという課題がある。
このため、反射膜が対向配置されている波長可変干渉フィルターでは、反射膜の帯電により反射膜間に斥力または引力が生じ、反射膜間距離の制御精度を低下させる要因となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる光フィルターは、第1基板と、前記第1基板と対向する第2基板と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板を厚み方向から見た平面視において、前記第1反射膜を覆い、前記第1反射膜の外周より外側の範囲まで延長して形成された第1電極と、前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられ、前記第1電極の一部と対向する第2電極と、を備え、前記第1電極は透光性材料にて形成され、前記第1電極と前記第2反射膜とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1電極が第1反射膜を覆って形成され、第1電極と第2反射膜とが電気的に接続されている。このため、第1電極と第2反射膜とが同電位となり、対向する第1電極の表面および第2反射膜の表面に電荷が溜まらず、両表面の帯電を防止できる。よって、第1反射膜と第2反射膜との間に斥力、引力などの余計な力が働かず、帯電による反射膜間距離の制御精度の低下を抑制できる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる光フィルターにおいて、前記第2電極と、前記第2電極と対向する前記第1電極との距離が、前記第1反射膜と前記第2反射膜との距離よりも大きいことが望ましい。
【0009】
第1電極と第2電極との間に電圧が印加され、第1電極と第2電極との間のギャップ寸法が微小となったときに、両者間に急激に引っ張る力が増加するプルイン現象が生ずる。この構成によれば、第1電極と第2電極との距離が第1反射膜と第2反射膜との距離より大きいことから、このプルイン現象を抑制することができる。
このことから、第1反射膜と第2反射膜との間で接触して両者が貼り付くことなく、反射膜間のギャップを維持できる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる光フィルターにおいて、前記第1基板の前記第1反射膜が形成される第1反射膜形成部は、前記第1電極が形成される前記第2電極と対向する第1電極形成部より、前記第1基板との距離が近い位置に配置され、前記第1反射膜形成部と前記第1電極形成部とは斜面で繋がっていることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、第1反射膜が形成される第1反射膜形成部と第1電極形成部とが斜面で繋がっている。つまり、第1電極形成部と第1電極形成部との間に段差が形成されていない。このため、第1電極は連続して形成することができ、電極の断線を防止できる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる光フィルターにおいて、前記第2反射膜の表面に透光性材料の導電体膜が形成されていることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、第2反射膜の表面に導電体膜が形成されることから、導電体膜の表面は帯電せず、第2反射膜の側に帯電が生ずることが無い。このため、反射膜間では引力または斥力が働かず、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することで反射膜間のギャップ寸法を正確に制御できる。また、導電体膜が第2反射膜を保護することができる。
【0014】
[適用例5]上記適用例にかかる光フィルターにおいて、前記第2反射膜の表面に透光性材料の絶縁膜が形成され、前記第1電極が接地されていることが望ましい。
【0015】
この構成によれば、絶縁膜が帯電したとしても、第1電極および第2反射膜が接地されているため、絶縁膜が帯電した影響を小さくすることができる。
また、第2反射膜の表面に絶縁膜が形成されることから、絶縁膜が第2反射膜を保護することができる。
【0016】
[適用例6]本適用例にかかる光フィルターモジュールは、第1基板と、前記第1基板と対向する第2基板と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板を厚み方向から見た平面視において、前記第1反射膜を覆い、前記第1反射膜の外周より外側の範囲まで延長して形成された第1電極と、前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられ、前記第1電極の一部と対向する第2電極と、前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、を備え、前記第1電極は透光性材料にて形成され、前記第1電極と前記第2反射膜とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第1電極が第1反射膜を覆って形成され、第1電極と第2反射膜とが電気的に接続されている。このため、第1電極と第2反射膜とが同電位となり、対向する第1電極の表面および第2反射膜の表面に電荷が溜まらず、両表面の帯電を防止できる。よって、第1反射膜と第2反射膜との間に斥力、引力などの余計な力が働かず、帯電による反射膜間距離の制御精度の低下を抑制でき、精度の高い光量測定を実施する光フィルターモジュールを得ることができる。
【0018】
[適用例7]本適用例にかかる光分析装置は、
第1基板と、前記第1基板と対向する第2基板と、前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、前記第1基板を厚み方向から見た平面視において、前記第1反射膜を覆い、前記第1反射膜の外周より外側の範囲まで延長して形成された第1電極と、前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられ、前記第1電極の一部と対向する第2電極と、前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、前記受光部により受光された前記光に基づいて、前記光の光特性を分析する分析処理部と、を備え、前記第1電極は透光性材料にて形成され、前記第1電極と前記第2反射膜とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、第1電極が第1反射膜を覆って形成され、第1電極と第2反射膜とが電気的に接続されている。このため、第1電極と第2反射膜とが同電位となり、対向する第1電極の表面および第2反射膜の表面に電荷が溜まらず、両表面の帯電を防止できる。よって、第1反射膜と第2反射膜との間に斥力、引力などの余計な力が働かず、帯電による反射膜間距離の制御精度の低下を抑制でき、精度の高い光量測定を実施できる。そして、この測定結果に基づいて光分析処理を実施することで、正確な分光特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の測色装置の構成を示すブロック図。
【図2】第1実施形態におけるエタロンの平面図。
【図3】第1実施形態におけるエタロンの断面図。
【図4】第1実施形態における固定基板の構成を示す平面図。
【図5】第1実施形態における可動基板の構成を示す平面図。
【図6】第1実施形態における接続部を示す断面図。
【図7】第1実施形態における接続部を示す断面図。
【図8】第1実施形態における変形例を示す断面図。
【図9】第1実施形態における変形例を示す断面図。
【図10】第1実施形態における変形例を示す断面図。
【図11】第1実施形態における変形例を示す断面図。
【図12】第2実施形態における光分析装置としてのガス検出装置の構成を示す断面図。
【図13】第2実施形態におけるガス検出装置の回路ブロック図。
【図14】第3の実施形態における光分析装置としての食物分析装置の構成を示すブロック図。
【図15】第4の実施形態における光分析装置としての分光カメラの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更し、概略の構成を示している。
(第1実施形態)
【0022】
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
<測色装置の概略構成>
図1は光分析装置としての測色装置の構成を示すブロック図である。
測色装置1は、検査対象Aに光を照射する光源装置2と、測色センサー3(光フィルターモジュール)と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備える。
この測色装置1は、検査対象Aに光源装置2から光を照射し、検査対象Aから反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度を分析して測定する装置である。
【0023】
<光源装置の構成>
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ図示)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。
なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば検査対象Aが発光部材である場合、光源装置2を設けずに測色装置を構成してもよい。
【0024】
<測色センサーの構成>
光フィルターモジュールとしての測色センサー3は、エタロン(波長可変干渉フィルター)5と、静電アクチュエーターに印加する電圧を制御し、エタロン5で透過させる光の波長を変える電圧制御部32と、エタロン5を透過した光を受光する受光部31と、を備える。
また、測色センサー3は、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、エタロン5に導光する光学レンズ(図示せず)を備えている。そして、この測色センサー3は、光学レンズに入射した検査対象光をエタロン5で所定波長帯域の光に分光し、分光した光が受光部31にて受光される。
受光部31は、フォトダイオードなどの光電変換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部31は制御装置4に接続され、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0025】
(エタロンの構成)
図2は、エタロンの平面図であり、図3は、図2のA−A断線に沿う断面図である。
図2に示すように、光フィルターとしてのエタロン5は、平面視で正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図3に示すように、固定基板(第1基板)51および可動基板(第2基板)52を備えている。
これらの基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などの基材からなり、板状の基材をエッチングすることにより形成されている。
そして、エタロン5は、固定基板51の接合面に形成された第1接合膜531と、可動基板52の接合面に形成された第2接合膜532とが接合されて一体に構成される。
なお、第1および第2接合膜531,532として、ポリオルガノシロキサンを用いたプラズマ重合膜が採用されている。
【0026】
固定基板51と可動基板52との間には、光の反射特性と透過特性とを有する第1反射膜54、および第2反射膜55が設けられる。ここで、第1反射膜54は、固定基板51の可動基板52に対向する面に固定され、第2反射膜55は、可動基板52の固定基板51に対向する面に固定されている。また、これらの第1反射膜54および第2反射膜55は、ギャップ寸法Gを介して対向配置されている。
【0027】
さらに、固定基板51と可動基板52との間には、第1反射膜54および第2反射膜55の間には静電アクチュエーター56が設けられ、ギャップ寸法Gの調整をする。
静電アクチュエーター56は、固定基板51に設けられた第1電極561と、可動基板52に設けられた第2電極562とから構成されている。
第1電極561は第1反射膜54を覆い、第1反射膜54の外形から延長して形成され、第1電極561と第2電極562とが対向する部分が静電アクチュエーター56として機能する。
【0028】
なお、エタロン5は、第1電極561と第2電極562との距離が第1反射膜54と第2反射膜55との距離より大きく形成されている。例えば、第1電極561と第2電極562の間に電圧を印加しない初期状態において、第1電極561と第2電極562との距離が2μm、第1反射膜54と第2反射膜55との距離(ギャップ寸法)が0.5μmに設定されている。このため、第1電極561と第2電極562との間のギャップ寸法Gが微小となったときに急激に引っ張る力が増加するプルイン現象を抑制することができる構成となっている。
また、本実施形態では固定基板側に反射膜を覆う電極を設けたが、電極構成を逆にして、可動基板側に反射膜を覆う電極を設けた構造でもよい。
【0029】
次に、固定基板51および可動基板52の構成について詳細に説明する。
(固定基板の構成)
図4は固定基板の構成を示す平面図であり、可動基板と対向する面を見た図である。
固定基板51は、厚みが例えば500μmの石英ガラス基材をエッチング加工して形成される。この固定基板51には、エッチングにより固定基板51の中央を中心とする円形の凹部が設けられ、第1電極形成部511および反射膜形成部512が形成される。
第1電極形成部511は反射膜形成部512より深くエッチングされ、円柱状の反射膜形成部512が突出して、その周りに同心円状に第1電極形成部511が形成されている。
また、第1電極形成部511と反射膜形成部512との境は斜面518が形成され、段差のない連続した形状となっている(図3参照)。
【0030】
反射膜形成部512には、円形状の第1反射膜54が形成されている。この第1反射膜54はAgC合金などの金属膜により約100nmの厚みで形成されている。なお、第1反射膜54はAgC合金以外のAg合金や、TiO2などの誘電体膜の上にAgC合金やAg合金などを積層した構成でもよい。
【0031】
そして、第1反射膜54を覆い、第1反射膜54の外周縁から第1電極形成部511に拡大するように第1電極561が形成されている。この第1電極561は、透光性の導電膜であり、例えばITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)膜が用いられる。第1電極561の厚みは約50nmに形成される。このように、第1反射膜54を覆って第1電極561が形成されることから、第1電極561が湿度の影響や、酸化、硫化、などにより劣化することを防止できる。
【0032】
また、固定基板51には、第1電極形成部511の外周縁から固定基板51の1つの頂点C1に向かって延出する第1引出形成部513と、頂点C1と対角となる頂点C2に向かって延出する第2引出形成部514と、が設けられている。
第1引出形成部513および第2引出形成部514は、エッチングにより第1電極形成部511と同じ深さに形成される溝であり、この第1引出形成部513には、第1電極561に接続する引出電極561Aが形成される。
【0033】
第1引出形成部513の先端方向には、固定基板51の厚み方向に突出する突出部513Aと、固定基板51の隅部に位置するパッド部513Bと、を備えている。突出部513Aおよびパッド部513Bには、引出電極561Aに接続される導電膜が形成されている。詳しくは、引出電極561Aから外部との電気的接続をなすパッド部513Bに至るまで連続してCr/Au膜(下地にCr膜、その上にAu膜を形成した積層膜)が形成される。
引出電極561Aは導通電極564に接続され、導通電極564は電極パッド561Pに接続されている。このようにして、第1電極561との導通が電極パッド561Pを介して可能となるように構成されている。
【0034】
第2引出形成部514の先端方向には、固定基板51の厚み方向に突出する突出部514Aと、突出部514Aに連続するパッド部514Bとを備えている。
突出部514Aおよびパッド部514Bには、導電膜が形成されている。導電膜は、引出電極561Aからパッド部513Bに至るまで、Cr/Au膜が形成され、パッド部514Bには、外部との電気的接続をなす電極パッド563Pが形成されている。
【0035】
そして、固定基板51において、第1電極形成部511、反射膜形成部512、第1引出形成部513、第2引出形成部514、およびパッド部513B,514Bが形成されていない部分が固定基板51の接合面515となる。
この接合面515には、主材料としてポリオルガノシロキサンを用いた第1接合膜531が設けられている。第1接合膜531はCVD(Chemical Vapor Deposition)などにより成膜されたプラズマ重合膜である。
なお、前述の突出部513A,514Aの上面は接合面515と同じ高さの面となるように形成されている。
【0036】
(可動基板の構成)
図5は可動基板の構成を示す平面図であり、固定基板と対向する面を見た図である。
可動基板52は、厚みが例えば200μmのガラス基材の一面をエッチングにより加工することで形成される。
可動基板52の四隅のうち対角となる2つの隅部には切欠部526が形成されている。この切欠部526は、固定基板51の電極パッド561P,563Pに対応する位置に形成される。
この可動基板52には、基板中央を中心とする円柱状の可動部522と、その周りに同心円状に可動部522を保持する連結保持部523と、が形成されている。
連結保持部523は、固定基板51と対向する面とは反対の面に円環状の溝が形成され、可動部522の厚みより薄くなるように形成されている(図2、図3参照)。
このように、可動基板52はダイヤフラム構造を持ち、可動部522が可動基板52の厚み方向に移動しやすいように構成されている。
【0037】
可動基板52の固定基板51に対向する面は基材の平面を利用し、エッチング加工された面を有していない。そして、可動基板52の中央部に第2反射膜55と、その第2反射膜55を取りまくように連結保持部523に形成された第2電極562が設けられている。なお、この第2電極562は可動部522に設けられていてもよい。
第2反射膜55の材料としてAgC合金が用いられるが、AgC合金以外のAg合金や、TiO2などの誘電体膜の上にAgC合金やAg合金などを積層した構成でもよい。なお、第2反射膜55は約100nmの厚みに形成されている。
【0038】
また、可動基板52には、第2反射膜55から可動基板52の1つの仮想頂点C3の方向に延出し、切欠部526の手前で止まるように引出電極551Aが形成されている。引出電極551AはITO膜で形成されている。なお、引出電極551AはCr/Au膜などの金属膜を利用しても良い。
【0039】
第2電極562は、第2反射膜55から引き出される引出電極551Aの行路を確保するために一部が切り欠かれてC字状に形成されている。第2電極562はITO膜で形成され、約100nmの厚みを有している。
そして、第2電極562から可動基板52の1つの仮想頂点C4の方向に延出した引出電極562Aが、切欠部526の手前で止まるように形成されている。引出電極562Aは第2電極562と同様にITO膜で形成されている。
引出電極551A,562Aの先端部は、固定基板51の突出部513A,514Aと接触する接続部525A,525Bとなっている。
【0040】
そして、固定基板51における接合面515と対向する部分が、可動基板52の接合面となる。
この接合面には、主材料としてポリオルガノシロキサンを用いた第1接合膜531が設けられている。第1接合膜531はCVDなどにより成膜されたプラズマ重合膜である。
【0041】
次に、上記の固定基板51と可動基板52における引出電極の接続構造について詳細に説明する。
(接続部の構造)
図6は、図2のB−B断線に沿う断面図である。
固定基板51と可動基板52が接合された状態で、可動基板52の第2電極562から引き出された引出電極562Aは接続部525Bにて、固定基板51の突出部514Aと接触する。突出部514Aには、その上面から電極パッド563Pに接続するように導通電極563が設けられ、突出部514Aの上面にて引出電極562Aと導通電極563とが接続されるように構成されている。このようにして、可動基板52の第2電極562と、固定基板51の電極パッド563Pとが電気的に接続される。
【0042】
図7は、図2のD−D断線に沿う断面図である。
固定基板51と可動基板52が接合された状態で、可動基板52の第2反射膜55から引き出された引出電極551Aは接続部525Aにて、固定基板51の突出部513Aと接触する。突出部513Aには、その上面から電極パッド561Pに接続するように導通電極564が設けられ、突出部513Aの上面にて引出電極551Aと導通電極564とが接続されるように構成されている。また、導通電極564は第1電極561から引き出された引出電極561Aに接続されている。このように、可動基板52の第2反射膜55と、固定基板51の第1電極561とが、電極パッド563Pを介して電気的に接続され、第1電極561と第2反射膜55とが同電位となる構造である。
なお、本実施形態では、エタロン5内部の配線において、第1電極561と第2反射膜55とが同電位となる構造としたが、エタロン5に接続される外部回路において第1電極561と第2反射膜55とが同電位となる接続をしてもよい。
【0043】
(エタロンと電圧制御部との接続)
図1〜図3に戻り、電圧制御部32は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、静電アクチュエーター56の第1電極561および第2電極562に印加する電圧を制御する。
上述のエタロン5と電圧制御部32との接続では、2つの電極パッド561Pおよび電極パッド563Pに、それぞれ、電圧制御部32に接続された導線を接続する。
ここで、エタロン5の可動基板52は、電極パッド561Pおよび電極パッド563Pに対向する位置が切り欠かれた切欠部526が形成されている。このため、電極パッド561Pおよび電極パッド563Pが露出しており、接続が容易である。
【0044】
<制御装置の構成>
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、および測色処理部43(分析処理部)などを備えて構成されている。
【0045】
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部32は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長を透過させるよう、静電アクチュエーター56への印加電圧を設定する。
【0046】
測色処理部43は、測色センサー制御部42を制御して、エタロン5の反射膜間のギャップ寸法を変動させて、エタロン5を透過する光の波長を変化させる。また、測色処理部43は、受光部31から入力される受光信号に基づいて、エタロン5を透過した光の光量を取得する。そして、測色処理部43は、上記により得られた各波長の光の受光量に基づいて、検査対象Aから反射された光の色度を算出する。
【0047】
(第1実施形態の作用効果)
以上、本実施形態によれば以下の効果を有する。
光フィルターとしてのエタロン5は、第1電極561が第1反射膜54を覆って形成され、第1電極561と第2反射膜55とが同電位となるように電気的に接続されている。
このため、対向する第1電極561の表面および第2反射膜55の表面に電荷が溜まらず、両表面の帯電を防止できる。よって、第1反射膜54と第2反射膜55との間に斥力または引力などの余計な力が働かず、帯電による反射膜間距離の制御精度の低下を抑制できる。
【0048】
また、エタロン5における静電アクチュエーター56の駆動において、第1電極561と第2電極562との間のギャップ寸法が微小となったときに急激に引っ張る力が増加するプルイン現象が生ずるが、第1電極561と第2電極562との距離が第1反射膜54と第2反射膜55との距離より大きいことから、このプルイン現象を抑制することができる。
このことから、第1反射膜54と第2反射膜55との間で接触して両者が貼り付くことなく、反射膜間のギャップを維持できる。
【0049】
さらに、第1反射膜54が形成される反射膜形成部512と第1電極形成部511とは斜面518で繋がっている。つまり、反射膜形成部512と第1電極形成部511との間に段差が形成されていない。このため、第1電極561は連続して形成することができ、電極膜の断線を防止できる。
【0050】
また、光フィルターモジュールとしての測色センサー3は、対向する反射膜の帯電を防止するエタロン5を備えており、反射膜間距離の制御精度が向上し精度の高い光量測定を実施することができる。
【0051】
さらに、光分析装置としての測色装置1は、エタロン5と、受光部31とを備えた測色センサー3を有するので、精度の高い光量測定を実施できる。そして、この測定結果に基づいて光分析処理を実施することで、正確な分光特性を得ることができる。
【0052】
次に、本実施形態に係るエタロンの変形例について説明する。
(変形例)
図8から図11はエタロンの構成の変形例を示す断面図である。なお、これらの説明において第1実施形態と同様な構成については、図面に同符号を付し説明を省略する。
図8に示すエタロン6は、可動基板52の第2反射膜55を表面から側面まで覆う導電体膜61を備える点が第1実施形態のエタロンとは異なる。
導電体膜61は透光性の材料で形成され、例えばITO膜にて形成されている。
このような構造のため、導電体膜61の表面には帯電が生ぜず、第2反射膜55の側に帯電が生ずることが無い。このため、反射膜間では引力または斥力が働かずアクチュエーターの駆動で反射膜間のギャップ寸法を正確に制御できる。また、導電体膜61は例えば、20nm程度の厚みに形成され、導電体膜61が第2反射膜55を保護する保護膜として作用する効果もある。
【0053】
図9に示すエタロン7は、第2電極562と対向する固定基板51の位置に電極63が形成され、その電極63と第1反射膜54を覆う第1電極561が形成されている点が第1実施形態のエタロンとは異なる。
電極63は、ITO膜に限らず、Cr/Au膜などの金属膜を用いても良い。ここで、電極63の厚みは100nm、第1電極561の厚みは20nm、第2電極562の厚み100nm程度の構成されている。
このような構造は、例えば第1反射膜54上に形成される第1電極561を光学特性の理由で厚く形成できない場合、静電アクチュエーター56として機能する部分およびその他の配線部分を厚く形成できるため、配線の電気抵抗を下げることが可能である。
【0054】
図10に示すエタロン8は、可動基板52に配置される静電アクチュエーター56の電極が2つの電極65A,65Bから形成されている点が第1実施形態のエタロンとは異なる。
電極65A,65Bは同心円の円環状に形成され、それぞれが独立して電圧が印加されるように構成されている。
このような構造では、静電アクチュエーター56に働く静電力を細かく調整でき、反射膜間のギャップ寸法を精度よく制御することができる。
なお、図10では2つの電極の形態を例示したが、2つ以上の複数の電極で構成してもよい。
【0055】
図11に示すエタロン9は、可動基板52の第2反射膜55の表面から側面まで覆う絶縁膜69を備える点が第1実施形態のエタロンとは異なる。
絶縁膜69は透光性の材料、例えばAl2O3膜、SiO2膜などにて形成されている。また、第1電極561および第2反射膜55がグランドに接続されている。
この構造では、絶縁膜69が帯電したとしても、第1電極561および第2反射膜55が接地されているため、絶縁膜69が帯電した影響を小さくすることができる。そして、絶縁膜69の厚みは、例えば20nm程度であり、ガス、湿度などの影響による第2反射膜55の劣化を防止することができる。
【0056】
以上、第1実施形態では、光分析装置として測色装置1を例示したが、その他、様々な分野に光フィルター、光フィルターモジュール、光分析装置を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、光フィルターとしてエタロン(波長可変干渉フィルター)を用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
(第2実施形態)
【0057】
以下、ガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0058】
図12は、エタロンを備えたガス検出装置の一例を示す断面図である。
図13は、ガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図12に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、エタロン(波長可変干渉フィルター)5、および受光素子137(受光部)等を含む検出部(光フィルターモジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
【0059】
また、図13に示すように、ガス検出装置100には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、エタロン5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0060】
次に、ガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0061】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光を射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0062】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光がエタロン5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、エタロン5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光をエタロン5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0063】
なお、図12,13において、ラマン散乱光をエタロン5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光フィルターモジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置100を本発明の光分析装置とする。このような構成でも、本発明の光フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0064】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
(第3実施形態)
【0065】
次に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0066】
図14は、エタロン5を利用した光分析装置の一例である食物分析装置の構成を示すブロック図である。
この食物分析装置200は、検出器(光フィルターモジュール)210と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光するエタロン(波長可変干渉フィルター)5と、分光された光を検出する撮像部(受光部)213と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、エタロン5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0067】
この食物分析装置200は、装置を駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通ってエタロン5に入射する。エタロン5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御してエタロン5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0068】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0069】
また、図14において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、自動車運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0070】
さらには、本発明の光フィルター、光フィルターモジュール、光分析装置としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光フィルターモジュールに設けられたエタロンにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光フィルターモジュールを備えた光分析装置により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
(第4実施形態)
【0071】
また、他の光分析装置として、本発明のエタロン(波長可変干渉フィルター)により光を分光して、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、エタロンを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図15は、分光カメラの構成を示す斜視図である。分光カメラ300は、図15に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、対物レンズ321、結像レンズ322、およびこれらのレンズ間に設けられたエタロン5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、エタロン5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0072】
さらには、本発明のエタロンをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明のエタロンを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0073】
さらには、光フィルターモジュールおよび光分析装置を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、エタロンにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0074】
上記に示すように、本発明の光フィルター、光フィルターモジュール、および光分析装置は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明のエタロンは、上述のように、1つのデバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光フィルターモジュールや光分析装置の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用として好適に用いることができる。
【0075】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更することができる。そして、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…測色装置、2…光源装置、3…測色センサー、4…制御装置、5,6,7,8,9…エタロン、31…受光部、32…電圧制御部、41…光源制御部、42…測色センサー制御部、43…測色処理部、51…固定基板、52…可動基板、54…第1反射膜、55…第2反射膜、56…静電アクチュエーター、61…導電体膜、63…電極、65A,65B…電極、69…絶縁膜、100…ガス検出装置、200…食物分析装置、300…分光カメラ、511…第1電極形成部、512…反射膜形成部、513…第1引出形成部、513A…突出部、513B…パッド部、514…第2引出形成部、514A…突出部、514B…パッド部、515…接合面、518…斜面、522…可動部、523…連結保持部、525A…接続部、525B…接続部、526…切欠部、531…第1接合膜、532…第2接合膜、551A…引出電極、561…第1電極、561A…引出電極、561P…電極パッド、562…第2電極、562A…引出電極、563…導通電極、563P…電極パッド、564…導通電極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板を厚み方向から見た平面視において、前記第1反射膜を覆い、前記第1反射膜の外周より外側の範囲まで延長して形成された第1電極と、
前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられ、前記第1電極の一部と対向する第2電極と、を備え、
前記第1電極は透光性材料にて形成され、前記第1電極と前記第2反射膜とが電気的に接続されている
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の光フィルターにおいて、
前記第2電極と、前記第2電極と対向する前記第1電極との距離が、
前記第1反射膜と前記第2反射膜との距離よりも大きい
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項3】
請求項2に記載の光フィルターにおいて、
前記第1基板の前記第1反射膜が形成される第1反射膜形成部は、
前記第1電極が形成される前記第2電極と対向する第1電極形成部より、前記第1基板との距離が近い位置に配置され、
前記第1反射膜形成部と前記第1電極形成部とは斜面で繋がっている
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光フィルターにおいて、
前記第2反射膜の表面に透光性材料の導電体膜が形成されている
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光フィルターにおいて、
前記第2反射膜の表面に透光性材料の絶縁膜が形成され、前記第1電極が接地されていることを特徴とする光フィルター。
【請求項6】
第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板を厚み方向から見た平面視において、前記第1反射膜を覆い、前記第1反射膜の外周より外側の範囲まで延長して形成された第1電極と、
前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられ、前記第1電極の一部と対向する第2電極と、
前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、を備え、
前記第1電極は透光性材料にて形成され、前記第1電極と前記第2反射膜とが電気的に接続されていることを特徴とする光フィルターモジュール。
【請求項7】
第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板を厚み方向から見た平面視において、前記第1反射膜を覆い、前記第1反射膜の外周より外側の範囲まで延長して形成された第1電極と、
前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられ、前記第1電極の一部と対向する第2電極と、
前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、
前記受光部により受光された前記光に基づいて、前記光の光特性を分析する分析処理部と、を備え、
前記第1電極は透光性材料にて形成され、前記第1電極と前記第2反射膜とが電気的に接続されていることを特徴とする光分析装置。
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板を厚み方向から見た平面視において、前記第1反射膜を覆い、前記第1反射膜の外周より外側の範囲まで延長して形成された第1電極と、
前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられ、前記第1電極の一部と対向する第2電極と、を備え、
前記第1電極は透光性材料にて形成され、前記第1電極と前記第2反射膜とが電気的に接続されている
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の光フィルターにおいて、
前記第2電極と、前記第2電極と対向する前記第1電極との距離が、
前記第1反射膜と前記第2反射膜との距離よりも大きい
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項3】
請求項2に記載の光フィルターにおいて、
前記第1基板の前記第1反射膜が形成される第1反射膜形成部は、
前記第1電極が形成される前記第2電極と対向する第1電極形成部より、前記第1基板との距離が近い位置に配置され、
前記第1反射膜形成部と前記第1電極形成部とは斜面で繋がっている
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光フィルターにおいて、
前記第2反射膜の表面に透光性材料の導電体膜が形成されている
ことを特徴とする光フィルター。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光フィルターにおいて、
前記第2反射膜の表面に透光性材料の絶縁膜が形成され、前記第1電極が接地されていることを特徴とする光フィルター。
【請求項6】
第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板を厚み方向から見た平面視において、前記第1反射膜を覆い、前記第1反射膜の外周より外側の範囲まで延長して形成された第1電極と、
前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられ、前記第1電極の一部と対向する第2電極と、
前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、を備え、
前記第1電極は透光性材料にて形成され、前記第1電極と前記第2反射膜とが電気的に接続されていることを特徴とする光フィルターモジュール。
【請求項7】
第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板の前記第2基板に対向する面に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜とギャップを介して対向する第2反射膜と、
前記第1基板を厚み方向から見た平面視において、前記第1反射膜を覆い、前記第1反射膜の外周より外側の範囲まで延長して形成された第1電極と、
前記第2基板の前記第1基板に対向する面に設けられ、前記第1電極の一部と対向する第2電極と、
前記第1反射膜または前記第2反射膜を透過した光を受光する受光部と、
前記受光部により受光された前記光に基づいて、前記光の光特性を分析する分析処理部と、を備え、
前記第1電極は透光性材料にて形成され、前記第1電極と前記第2反射膜とが電気的に接続されていることを特徴とする光分析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−247472(P2012−247472A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116643(P2011−116643)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]