説明

光ロータリコネクタ装置

【課題】 長期間に亙り、信号劣化がなく高速変調の伝送が可能な光ロータリコネクタ装置を提供する。
【解決手段】 少なくとも一方が他方に対して回転自在の第1、第2の基板1,2を備えるとともに、第1、第2の基板1,2はそれぞれ光信号を入出力するための光導波路を一体化した光ロータリコネクタ装置であって、第1の基板1は、一方の端面を光終端部13で光終端するリング状の環状光導波路12Aと、この環状光導波路12Aと光学的に連結し外部から光信号を入出力するための入出力用光導波路12Bとを有する第1光導波路12を備えるとともに、第2の基板2は、一方の端面が環状光導波路12Aの一部と常時接する第2光導波路22を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ロータリコネクタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光伝送システムを構築する要素の一つとして、例えば図6に示すように、リング型の光導波路101Aを設けた回転体101と、同様にリング型の光導波路102Aを設けた固定体102とを備えるとともに、これら回転体101と固定体102とに外部から光ファイバ103、104を接続した光ロータリコネクタが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この光ロータリコネクタは、回転体101側の光導波路101Aと固定体102側の光導波路102Aとが対向する面は密着しており、回転体101側の光導波路101Aと固定体102側の光導波路102Aとは光結合している。
従って、一方の光ファイバ103から回転体101側の光導波路101Aに伝搬してきた光は、この回転体101側の光導波路101Aで固定体102側の光導波路102Aと光結合して他方側の光ファイバ104へ進行し、この光ファイバ104内部を伝搬することができる。従って、このとき回転体101側を回転させることにより、光ファイバ内の光の進行方向を自由に変更させることができる。また、これとは逆方向への光の進行、つまり他方側の光ファイバ104から一方側の光ファイバ103へも同様に伝搬させることができる。
【特許文献1】特開昭61−285411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の光ロータリコネクタにあっては、以下のような問題を発生している。
(1)リング型の光導波路では、周回遅れの光信号が発生する。従って、高速変調した光信号を伝送する場合、基本光信号と周回遅れの光信号とが重なり合って互いに干渉し、信号波形が劣化するおそれがあるので、特に高速変調した光信号を伝送することができない。
(2)回転体側の光導波路と固定体側の光導波路とは、一般に、液状体を満たすことにより光導波路を形成しているので、経年変化により光導波路の劣化が生じ、光損失が増大する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、長期間に亙り、信号劣化がなく高速変調が可能な光ロータリコネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光ロータリコネクタ装置は、外部から光信号を入出力する第1の基板と、光学素子を設けた第2の基板とを備えるとともに、前記第1、第2の基板の一方が他方に対して回転自在に取付けられた光ロータリコネクタ装置であって、前記第1の基板は、一方の端面を光終端するリング状の環状光導波路と、この環状光導波路と光学的に接続し外部との間で光信号を入出力する入出力用光導波路とを設けた第1光導波路を備えるとともに、前記第2の基板は、前記第1の基板と対向し前記環状光導波路と常時接して光連結する一方の面から前記光学素子を取付けた他方の面まで光学的に接続させる第2光導波路を有することを特徴としている。
【0007】
また、本発明の光ロータリコネクタ装置は、前記光学素子と前記環状光導波路とを光学的に接続する前記第2光導波路は、前記第2の基板の面方向に対して光軸が斜めに傾斜していることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の光ロータリコネクタ装置は、一方が他方に対して回転自在の第1、第2の基板を備えるとともに、前記第1、第2の基板はそれぞれ光信号を入出力する光導波路を一体化した光ロータリコネクタ装置であって、前記第1の基板は、一方の端面を光終端するリング状の環状光導波路と、この環状光導波路と光学的に接続し外部との間で光信号を入出力する入出力用光導波路とを設けた第1光導波路を備えるとともに、前記第2の基板は、一方の端面が前記環状光導波路の一部と常時接して光連結する第2光導波路を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、本発明の光ロータリコネクタ装置は、前記第1光導波路と前記第2光導波路は、屈折率を同一としたことを特徴としている。
【0010】
また、本発明の光ロータリコネクタ装置は、第1光導波路と第2光導波路は、ポリイミド材料で形成したことを特徴としている。
【0011】
また、本発明の光ロータリコネクタ装置は、第1光導波路と第2光導波路は、ガラス材料で形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一方が他方に対して回転自在の第1、第2の基板を備えるとともに、第1、第2の基板はそれぞれ光信号を入出力するための光導波路を一体化した光ロータリコネクタ装置であって、第1の基板は、一方の端面を光終端するリング状の環状光導波路と、この環状光導波路と光学的に連結し外部から光信号を入出力するための入出力用光導波路とを有する第1光導波路を備えるとともに、第2の基板は、一方の端面が環状光導波路の一部と常時接する第2光導波路を備えたことにより、長期間に亙り、信号劣化がなく高速変調の伝送が可能な光ロータリコネクタ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明に係る光ロータリコネクタ装置を示すものであり、この光ロータリコネクタ装置は、リング状の光導波路と光信号を入出力するストレート状の光導波路とを一体化した構成のものであって、上面が露出する第1光導波路12を設けた第1の基板1と、第1光導波路12と対向する第2光導波路22を設けた第2の基板2と、この第2の基板2に設けた光学素子4とを備えており、第1の基板1に固設した回転軸3を介して第2の基板2が回転自在に設置されている。
【0014】
第1の基板1は、第1基板本体11と、光信号を入出力するための第1光導波路12とを一体化したものであり、図示外の光ファイバと第1光導波路12とを連結させて図示外の基台などに固定して設置している。
第1基板本体11は、第1光導波路12内を進行する光がこの第1光導波路12から外部へ漏出するのを防止するために、例えば第1光導波路12の外側部分は、光ファイバと同様に、第1光導波路12よりも低屈折率を有する材料(又は屈折率低下用の適宜物質をドープさせる)で形成して第1光導波路12との界面で全反射をおこすようにしている。
また、例えば、第1の基板1と第1光導波路12とを別個に成形し、その後で双方を組み付ける場合には、光導波路1B外面に反射防止膜を構成する誘電体多層膜を成膜してもよいし、光導波路1Bが形成される第1の基板1の溝内に反射防止膜を構成する誘電体多層膜を成膜してもよい。さらに、例えば光導波路1Bをセットしてインサート成形により形成する場合には、予め形成しておく光導波路1Bの外面に前述の誘電体多層膜を成膜しておいてもよい。
【0015】
第1光導波路12は、回転軸3を中心としたリング状の環状光導波路12Aと、これから延設する入出力用光導波路12Bとを備えている。このうち、環状光導波路12Aは、上面部分が第2の基板2側の後述する第2光導波路22と接するような状態に、換言すれば、上面部分がオープン状態に形成されている。また、この環状光導波路12Aの一方の端には、光終端部13が施されており、環状光導波路12Aを伝搬する信号光3は、360度以上周回することなく光終端部13にて光終端される。なお、この第1光導波路12と後述する第2光導波路22とは、同じ屈折率を持つ、例えばポリイミド材料またはガラス材料などで形成している。
【0016】
一方、第2の基板2は、第2基板本体21と、光信号を入出力するための第2光導波路22とを一体化したものであり、第1の基板1に対して回動自在に設置されており、第1光導波路12の上部に位置する部分に第2光導波路22を介して光学素子4が実装されている。
第2基板本体21は、第2光導波路22よりも低屈折率の第1基板本体11と同一材料で形成されており、第2光導波路22内部を伝播する光が外部に漏出するのを阻止している。
第2光導波路22は、図2に示すように、光学素子4直下の第2の基板2の内部に、上面から下面まで貫通する状態で形成されている。即ち、第2光導波路22の下面は、第1光導波路12の上面に対面するとともに、第1光導波路12の上面と密着状態で接するように構成しており、双方の光導波路12、22の間に空気などが介在して不要なフレネル反射などが発生するのを極力回避するようになっている。なお、この第2導波路22は、図3に示すように、この光軸22Aを第2の基板2の上面方向に対して適宜の角度だけ傾ける(θ)ことにより、第1導波路12ととの間の結合効率を増大させることもできる。
【0017】
光学素子4は、光信号と電気信号とを変換するためのものであり、本実施形態では受光素子又は発光素子で構成している。
【0018】
次に、本実施形態の作用について説明する。
例えば光学素子4が受光素子の場合、外部から図示外の光ファイバを介して伝送されてきた信号光αは、第1光導波路12を伝搬した後、この第1光導波路12と接している第2光導波路22と光結合する。その後、信号光αは、第2光導波路22に沿って伝搬し、光学素子4へ入射して電気信号に変換される。
一方、光学素子7が発光素子の場合、光学素子4を出射した信号光αは、第2光導波路22を伝搬した後、第1光導波路12と光結合し、この第1光導波路12に沿って伝搬するとともに図示外の光ファイバを介して外部伝送されていく。
【0019】
従って、本実施形態によれば、以上のような構成により、第1の基板1に対し第2の基板2が任意の回転位置において、第1光導波路12から第2光導波路22へ(又は、第2光導波路22から第1光導波路12へ)高速変調した信号光を伝搬することができる。特に、本実施形態では、第2の基板2に光学素子4を搭載させており、例えば、第1の基板1に対して第2の基板2を任意の回転位置させる回転ヒンジに光素子を内蔵する光モジュールなどに使用するときのように、光ロータリコネクタ装置の高機能化といった効果が得られる。
また、本実施形態によれば、第1、第2光導波路12、22は、従来のような液状体を満たすことにより光導波路を形成しているのではなく、ポリイミド材料またはガラス材料などで形成しているので、経年変化による光損失の増加を抑えることも可能である。
【0020】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、詳細に説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して重複説明を避ける。
図4は、第2の実施形態に係る光ロータリコネクタ装置を示すものであり、この光ロータリコネクタ装置は、リング状の光導波路と光信号を入出力するための光導波路とを一体化した光導波路であって、上面が露出する第1光導波路12を備えた第1の基板1と、この第1の基板1に設けた第1光導波路12直上の下面に第2光導波路52を備える第2の基板5とを有しており、第1の基板1に固設した回転軸3を介して第2の基板5が回転自在になっている。
【0021】
第2の基板5は、第2基板本体51と、第1光導波路12に光結合する第2光導波路52とを一体化したものであり、第1の基板1に対して回動自在に設置されている。
第2基板本体51は、前述した第1基板本体11と同様の構成となっている。
一方、第2光導波路52は、第1光導波路12の環状光導波路12A上部と対応する部分に一端部が重畳するような状態で設置されている。即ち、第2光導波路52は、この光導波路の下面が第1光導波路12の上面と接するように、換言すれば、第2光導波路52の下面は、第1光導波路12の上面に対面するとともに、第1光導波路12の上面と密着状態で接するように構成しており、双方の光導波路12、52の間に空気などが介在してフレネル反射などが発生するのを回避するようになっている。なお、本実施形態でも、第2光導波路52は、第1光導波路12と同様に、第1光導波路12と同一屈折率を持つ適宜の材料、例えば、ポリイミド材料またはガラス材料で構成している。
【0022】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図4に示すように、図示外の光ファイバなどを介して外部から進行する信号光αは、第1光導波路12内を伝搬した後、この第1光導波路12の環状光導波路12Aと接している第2光導波路52に光結合し、この第2光導波路52に沿って伝搬した後、図示外の光ファイバなどを介して外部へ進行する。これにより、信号光αの進行方向を角度δだけ偏向させることができる。
また、これとは逆に、第2光導波路52内を図4に示す方向とは逆方向に伝搬する信号光についても、第2光導波路52の一端部で第1光導波路12の環状光導波路12Aと光結合し、第1光導波路12に沿って図4に示す方向とは逆方向に伝搬する。
以上により、第1の基板1に対し第2の基板5が任意の回転位置において、高速変調した信号光を伝搬することができ、また経年変化による光損失の増加も抑えることが可能である。
【0023】
なお、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の光ロータリコネクタ装置は、少なくとも一方が他方に対して回転自在の第1、第2の基板を備えるとともに、第1、第2の基板はそれぞれ光信号を入出力するための光導波路を一体化した光ロータリコネクタ装置であって、第1の基板は、一方の端面を光終端するリング状の環状光導波路と、この環状光導波路と光学的に連結し外部から光信号を入出力するための入出力用光導波路とを有する第1光導波路を備えるとともに、第2の基板は、一方の端面が環状光導波路の一部と常時接する第2光導波路を備えたことにより、長期間に亙り、信号劣化がなく高速変調が可能な光ロータリコネクタ装置を提供できるので、高信頼度で、かつ、高速通信に好適な光伝送システムの構築などが実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ロータリコネクタ装置の構成を示す説明図
【図2】図1におけるA−A線矢視図
【図3】図1におけるB−B線矢視図
【図4】本発明の第2の実施形態に係る光ロータリコネクタ装置の構成を示す説明図
【図5】図4におけるA−A線矢視図
【図6】従来の光ロータリコネクタ装置の要部構成を示す斜視図
【符号の説明】
【0026】
1 第1の基板
11 第1基板本体
12 第1光導波路
12A 環状光導波路
12B 入出力用光導波路
13 光終端部
2 第2の基板
22 第2光導波路
3 回転軸
4 光学素子
α 信号光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から光信号を入出力する第1の基板と光学素子を設けた第2の基板とを備えるとともに、前記第1、第2の基板の一方が他方に対して回転自在に取付けられた光ロータリコネクタ装置であって、
前記第1の基板は、一方の端面を光終端するリング状の環状光導波路と、この環状光導波路と光学的に接続し外部との間で光信号を入出力する入出力用光導波路とを設けた第1光導波路を備えるとともに、
前記第2の基板は、前記第1の基板と対向し前記環状光導波路と常時接して光連結する一方の面から前記光学素子を取付けた他方の面まで光学的に接続させる第2光導波路を有する光ロータリコネクタ装置。
【請求項2】
前記光学素子と前記環状光導波路とを光学的に接続する前記第2光導波路は、前記第2の基板の面方向に対して光軸が斜めに傾斜している請求項1に記載の光ロータリコネクタ装置。
【請求項3】
一方が他方に対して回転自在の第1、第2の基板を備えるとともに、前記第1、第2の基板はそれぞれ光信号を入出力する光導波路を一体化した光ロータリコネクタ装置であって、
前記第1の基板は、一方の端面を光終端するリング状の環状光導波路と、この環状光導波路と光学的に接続し外部との間で光信号を入出力する入出力用光導波路とを設けた第1光導波路を備えるとともに、
前記第2の基板は、一方の端面が前記環状光導波路の一部と常時接して光連結する第2光導波路を備えた光ロータリコネクタ装置。
【請求項4】
前記第1光導波路と前記第2光導波路は、屈折率を同一とした請求項1から3のいずれか1項に記載の光ロータリコネクタ装置。
【請求項5】
第1光導波路と第2光導波路は、ポリイミド材料で形成した請求項1から4のいずれか1項に記載の光ロータリコネクタ装置。
【請求項6】
第1光導波路と第2光導波路は、ガラス材料で形成した請求項1から4のいずれか1項に記載の光ロータリコネクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−145825(P2006−145825A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−335601(P2004−335601)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】