光伝送ロータリージョイント
【課題】通信の安定性を確保できる光伝送ロータリージョイントを提供すること。
【解決手段】光伝送ロータリージョイントは、固定部に対して回転自在に保持された回転部を備え、固定部と回転部とのそれぞれに、発光部と受光部と送信用反射面と受信用反射面を備えた光信号送受信部を備えている。対向する光信号送受信部間で光伝送通信を行う際には、対向する光信号送受信部を同位相位置と逆位相位置の二箇所で送信用反射面の角度を変更して光信号の光軸調整が行われる。
【解決手段】光伝送ロータリージョイントは、固定部に対して回転自在に保持された回転部を備え、固定部と回転部とのそれぞれに、発光部と受光部と送信用反射面と受信用反射面を備えた光信号送受信部を備えている。対向する光信号送受信部間で光伝送通信を行う際には、対向する光信号送受信部を同位相位置と逆位相位置の二箇所で送信用反射面の角度を変更して光信号の光軸調整が行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送ロータリージョイントに関し、特に、一軸を中心に相対的に回転する固定部及び回転部との間で、光信号による双方向信号伝送を行う光伝送ロータリージョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内の天井等に固定設置される監視カメラ装置として、装置内部にカメラのパン角度やチルト角度を制御して撮像方向を変えながら監視を行う装置が多数普及している。また、回転機能を持たない固定式カメラに回転機能を与える電動雲台が利用される事も多い。このような角度制御可能な監視カメラ装置の多くにおいて、天井等に固定設置される固定部とパン方向に回動可能な回転部とが、電動雲台を介して接続されている。
【0003】
より詳しくは、回転部にはカメラをチルト方向に駆動するチルト駆動機構が設けられており、この回転部がパン方向に回動可能な電動雲台の回転部分に取り付けられている。一方、電動雲台の固定部分は天井等に固定されている。監視カメラ装置は、このような構成を有するものが多い。なお、チルト制御機能を省略したり、チルト角度の変更は手動機構によって行うなどして、パン方向の回転のみを電動で行う構成の装置もある。このような構成の監視カメラ装置においては、回転部上のカメラから出力された映像信号は、固定部と回転部の間の接続部を介して固定部に伝送され、固定部上で画像処理や出力インターフェース変換がされて外部のモニタや映像信号記録装置に出力される。
【0004】
このような監視カメラ装置で用いられる回転接続方式として、いくつかの方式が知られている。特に、回転部のパン方向への連続回転が可能な回転接続方式として、スリップリングとブラシとによる摺動接点によって回転部と固定部との間に信号接続路を構築する方式が知られている。しかし、この摺動接点方式は、回転するスリップリングと固定されたブラシとの接点部分への油膜や塵埃の付着による電気的接触の不安定化や、機械的接触に伴うノイズ発生や、長期間の連続摺動による電気的接触性能の劣化などの問題があった。特に映像信号に関しては回転に伴うノイズ発生が問題となり、パン・チルト等の制御信号に関しては、誤動作の発生が問題となる。さらに、このような機械接触方式では伝送可能な周波数帯域が限られているので、広帯域伝送路を必要とする高精細映像信号や高速データの伝送を行うことが困難であった。
【0005】
そこで、摺動接触方式の悪影響を避けるために、非接触光伝送によるロータリージョイントも提案されている。この方式は、当初は回転部上のカメラの映像信号を固定部に伝送する片方向伝送であった。しかし、カメラやチルトモータの制御信号も固定部から回転部に送る方式、即ち、双方向で非接触光伝送を行う方式も提案されている。
【0006】
下記特許文献1には、二組の発光素子及び受光素子を用いた光伝送ロータリージョイントが開示されている。このロータリージョイントでは、固定部上の受光素子と回転部上の受光素子とが、回転部の回転軸上に対向配置されている。また、発光素子は、受光素子と重ならないように受光素子の外側に配置されている。各発光素子から照射される光信号は、その相手側受光素子の中心部に向けて斜め方向に投射されるように光軸が配置されている。しかし、この方式は近距離しか対応できない。また、光の利用効率が悪いので大出力発光が必要であり、発熱が大きくなるというデメリットがある。
【0007】
また、下記特許文献2には、一組の発光素子及び受光素子を用いた光伝送ロータリージョイントが開示されている。このロータリージョイントでは、発光素子と受光素子との間に、回転部の回転軸にほぼ一致させて導光部材が挿入されている。この導光部材が光伝送路として機能するが、光軸ずれの影響を抑えるため、導光部材の端面より広い面積の受光素子が用いられる。あるいは、導光部材の端面から出射した光を受光素子に集光するレンズが用いられる。しかし、この方式は安定した光伝送が可能であるが、構造的に片方向しか光伝送出来ない。
【0008】
光伝送を行うには、発光部からの信号光が、その指向角の範囲内の角度で受光部に到達する必要がある。このような光軸調整技術も提案されている。光伝送での光軸調整に関する技術としては、送信光軸上に設けられた照準機を用いる方法や、受信部に設けたコーナーキューブの反射光を利用して光軸調整する方法や、パラボラリフレクタを用いる方法や、光軸調整専用のパイロット光源を用いる方法などが提案されている。下記特許文献3には、光軸調整専用のパイロット光源を用いる方法が開示されている。この方法では、光信号は四分割受光素子(PD)で受光され、各分割受光素子の受光レベル差に基づいて光軸調整が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−44940号公報
【特許文献2】特開2007−120742号公報
【特許文献3】特開2000−31908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光信号通信は、光信号の指向角の範囲内で受光素子に一定レベル以上の光量が届かなければ成立しない。しかし、屋外設置のような多湿環境では、空気中に含まれる水蒸気量や温度によっては、装置内部で結露が生じる。結露によって生じる微小な水滴が光路上に存在すると、信号光が散乱して伝送効率が著しく悪化し、場合によっては通信不能となる。結露対策としては、ヒーター(電熱線)を用いる方法や、結露面に風を吹きつけて結露を解消する方法が提案されてきた。上記特許文献3では、窓の結露解消のために機器外に専用ヒーターが取り付けられるが、結露検出専用の結露検出手段が必要である。このため、費用負担が大きく、装置の大型化を招いていた。
【0011】
本発明の目的は、通信の安定性を確保できる光伝送ロータリージョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光伝送ロータリージョイントは、固定部(2)に対して回転自在に保持された回転部(3)を備え、前記固定部(3)と前記回転部(2)との間で双方向の光信号の伝送を行うものであり、前記固定部(2)上に設けられた固定側光信号送受信部(10)と、前記回転部(3)上に設けられた回転側光信号送受信部(10)と、二つの前記光信号送受信部(10)の間に形成された中空空間(11)を備えている。二つの前記光信号送受信部(10)は、それぞれ、送信部(12)と、受信部(14)と、自身の前記送信部(12)からの信号光を相手側の前記光信号送受信部(10)に向けて反射させる送信用反射面(13)と、相手側の前記光信号送受信部(10)からの信号光を自身の前記受信部(14)に反射させる受信用反射面(15)とを備えている。前記光伝送ロータリージョイント(5)は、前記回転部(3)の回転と前記送信用反射面(13)の角度変更とを制御する制御部をさらに備えている。前記送信用第一の反射手段(13)の角度を変更する回転軸(CL2)は、前記回転部(3)の回転軸(CL1)と直交しており、前記制御部が、前記固定部(2)に対して前記回転部(3)を回転させて二つの前記光信号送受信手段(10)を前記回転部(3)の前記回転軸(CL1)に関して同位相位置と逆位相位置との二箇所で前記送信用反射面(13)の角度を変更して前記信号光の光軸調整を行う。
【0013】
ここで、前記制御部が、前記同位相位置及び前記逆位相位置のそれぞれの位置にて前記受光部(14)により受光した受光光量に基づいて結露状態を含む異常状態を検知し、異常状態検知時に、前記送信用反射面(13)及び前記受信用反射面(14)に設けられた加熱手段を加熱させる、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光伝送ロータリージョイントによれば、反射面角度を制御する光軸調整機構を光路上に設けることによって装置を小型化しつつ、固定部と回転部とにそれぞれ設けられた光信号送受信部の回転軸に対する同位相位置及び逆位相位置の受光光量を取得するだけで光軸を効率よく調整できる。
【0015】
また、上述した加熱手段を設ければ、光軸調整手段を活用することで反射面の結露状態を含む異常状態を検知でき、さらには、加熱手段を制御して結露を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】光伝送ロータリージョイントの実施形態の構成図である。
【図2】(a)及び(b)は、上記実施形態における光信号伝送の説明図である。
【図3】(a)〜(d)は、上記実施形態における光信号伝送の光軸調整の説明図である。
【図4】(a)は上記実施形態における光軸調整の際の調節点の求め方を説明する反射面角度Xと受光光量Yとの関係を示すグラフであり、(b)は反射面の結露状態での反射面角度Xと受光光量Yとの関係を示すグラフである。
【図5】上記実施形態における反射面角度変更機構の拡大側面図である。
【図6】反射面角度変更機構(反射面加熱方法)の第1変形例の拡大側面図である。
【図7】反射面角度変更機構の第2変形例の拡大側面図である。
【図8】反射面角度変更機構の第3変形例の拡大側面図である。
【図9】上記実施形態の光伝送ロータリージョイントに電力伝送機構と回転機構とを組み込んだユニットの断面斜視図である。
【図10】上記実施形態の光伝送ロータリージョイントが組み込まれた回転ドーム型監視カメラの構成図である。
【図11】上記実施形態の光伝送ロータリージョイントでの異常検出制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態の光伝送ロータリージョイントでは、図1に示されるように、一対の光信号送受信部10が、中空管11を挟んで対向配置してある。中空管11の内部には中空空間が形成されている。中空管11は、中央で固定部2と回転部3とに分割される。なお、固定部2と回転部3とは、図1のように中空管11で分割されても良いし、中空管11と何れかの光信号送受信部10との間で分割されても良い。各光信号送受信部10は、光信号発光部12、光信号受信部14、自身の光信号発光部12からの信号光を相手側の光信号送受信部10に向けて反射する反射面13、及び、相手側の光信号送信部12からの信号光を自身の光信号受信部14に向けて反射する反射面15を備えている。
【0018】
本実施形態の各光信号送信部12には、L1ght Emitting Diode(LED)が用いられているが、半導体レーザ(LD)や面発光レーザ(VCSEL)が用いられても良い。光信号受信部14には、Photodiode(PD)が用いられている。
【0019】
反射面13,15には、光輝処理を施したステンレス鋼板が用いられているが、鏡や、表面を平滑に仕上げた樹脂や、反射膜を付加した部材が用いられても良い。光輝処理が施されたステンレス鋼板は、耐食性に優れ、強度が高く、取り付け形状の形成も容易で、硝子を用いた反射面に比べて安価であるなどの特長を持つ。
【0020】
中空管11は、金属製である。具体的には、真鍮を機械加工したものであり、中空内面は凹凸の少ない機械加工面として仕上げられており、中空内面での反射も利用される。しかし、基本的には、中空管11の内部に光信号が通る空間が確保されていれば良く、中空管11は、樹脂製や硝子製でも良い。
【0021】
次に、光信号の伝達について説明する。図2(a)及び図2(b)に示されるように、LED12から一定の放射角で出射された信号光は、拡がりながら相手側のPD14に到達する。ここで、拡がる信号光の中心軸(図中一点鎖線)は、反射面13で反射された後に、相手側反射面15と回転軸CL1との交点18に達するよう、θ1(図2(a))やθ2(図2(b))が設定されている。従って、信号光が交点18に達すると、拡がった信号光の半分が反射面15で再度反射されてPD14に達する。このように光軸を設定する事で、固定部2と回転部3とがどのような回転位置関係にあっても、信号光が交点18に達した際に拡がった信号光の半分が反射面15で反射されてPD14に常に送られる。従って、固定部2に対する回転部3の回転による光量変動が抑制されて安定した通信が実現される。
【0022】
また、対向する一対の光信号送受信基板(光信号送受信部10)間の距離が異なる場合でも(図2(a)と図2(b))、反射面13の角度を変更する事で容易に対応できる(θ1,θ2参照)。さらに、反射面13の回転軸CL2と固定部2に対する回転部3の回転軸CL1とは直交するように配置されているので、回転軸CL1方向からみた反射面13(15)の位置は変わらない(換言すれば、回転軸CL2は、回転軸CL1との交点を中心に回転するだけである)。このため、回転部3の回転による光量変動は生じない。以上のようにLED12から出射された信号光が2回反射されてPD14に到達する構成によって、反射面13を光軸調整に利用するだけでなく、LED12やPD14などの発光受光部品を回転軸CL2に対して水平に配置できるので構造を薄型化(小型化)できる。
【0023】
次に光軸調整について説明する。上述したように、LED12から出射された信号光の光軸は、反射面13で反射された後に交点18を通るように設計されている。光軸が交点18を通るように調整されていれば、回転部3の回転位置(位相)によらず、放射角によって拡がった信号光の半分はPD14に向けて常に反射される。しかし、光軸が交点18よりPD14側にずれていると、この回転位置(位相)では多くの光がPD14に向けて反射されるが、回転部3の回転によって逆位相になるとPD14に向けて反射される信号光が著しく減少する。逆に、光軸がLED12側にずれている場合も同様である。
【0024】
従って、反射面13の角度を変えて信号光の光軸が交点18を通るように光軸調整が行われる。光軸調整の手順を、図3(a)〜図3(d)を参照して説明する。光軸調整は、固定部2と回転部3との間の通信路が確立されていない状態で行われる。光軸調整の各ステップは、予め定められた時間で次のステップに移行する。まず、図3(a)に示されるように、ステップ1では、電源投入、又は、リセットスイッチ(図示せず)の押下によって、固定部2に対する回転部3の回転角度を検出する角度検出機能を用いて、回転部2及び回転部3において発光部(LED12)と受光部(PD14)とが同位相(回転軸CL1に対して同じ位置)にされる。なお、角度検出機能としては、エンコーダを設けたり、回転部3を回転させるステッピングモータの制御信号などを利用すればよい。図3(a)に示される状態で、回転部3上のLED12を発光させて回転部3上の反射面13の角度を変化させ、逐次、反射面角度情報を変調して信号光にのせる。この信号光を固定部2上のPD14で受光し、回転部3上の反射面13の角度と、固定部2側のPD14の受光レベルとの同位相状態での相関データを取得する。
【0025】
次に、図3(b)に示されるように、ステップ2では、角度検出機能を用いて回転部3を180°回転させて、回転部2及び回転部3において発光部(LED12)と受光部(PD14)とが逆位相にされる。図3(b)に示される状態で、回転部3上のLED12を発光させて回転部3上の反射面13の角度を変化させ、逐次、反射面角度情報を変調して信号光にのせる。この信号光を固定部2上のPD14で受光し、逆位相状態での角度と光量との間の相関データを取得する。ステップ1で取得した同位相状態の相関データとステップ2で取得した逆位相状態の相関データとを合わせると、図4(a)に示されるようなグラフとして得られる。図4(a)のグラフから、光軸が交点18を通る反射面13の角度に対応する調整点Qが求められる。理想的には、調整点Qは設計中心の角度と一致する。
【0026】
続いて、ステップ3では、得られた調整点Qの角度情報を信号光に変調し、今度は固定部2上のLED12を発光させつつ、回転部3を所定速度で少なくとも一回転させる。固定部2上のLED13を発光させつつ回転部3を一回転させる事で、固定部2から回転部3への光軸が未調整の状態であっても、一回転の内のいずれかの角度で信号光が所定光量以上に達する。このため、調整点Qの反射面角度情報を固定部2から回転部3に伝達できる。回転部3は、固定部2から伝達された情報に基づいて、回転部3上の発光用の反射面13の角度を調整点Qに対応した角度に設定する。
【0027】
次に、図3(c)に示されるように、ステップ4では、再び同位相に戻して、固定部2上のLED12を発光させて固定部2上の反射面13の角度を変化させ、逐次、反射面角度情報を変調して信号光にのせる。この信号光を回転部3上のPD14で受光し、同位相状態での角度と光量との間の相関データを取得する。
【0028】
図3(d)に示されるように、ステップ5では、回転部3を180°回転させて逆位相とし、同様に、固定部2上のLED12を発光させて固定部2上の反射面13の角度を変化させ、逐次、反射面角度情報を変調して信号光にのせる。この信号光を回転部3上のPD14で受光し、逆位相状態での角度と光量との間の相関データを取得する。ステップ4で取得した同位相状態の相関データとステップ5で取得した逆位相状態の相関データとから、同様に、調整点Qに対応する反射面13の角度が取得できる。
【0029】
続いて、ステップ6では、得られた調整点Qの角度情報を信号光に変調し、今度は回転部3上のLED12を発光させつつ、回転部3を所定速度で少なくとも一回転させる。得られた角度情報を固定部2上の発光用の反射面13に反映させる(調整点Qに対応した角度に設定する)。以上により光軸調整が完了する。なお、上述した光軸調整時に、固定部2に対する回転部3の回転や、反射面13の角度調整は、制御部によって制御される。
【0030】
ステップ1〜3が回転部3上の発光用の反射面13の角度調整ステップ、ステップ4〜6が固定部2上の発光用の反射面13の角度調整ステップである。最初にステップ4〜6を行い、その後、ステップ1〜3を行っても良い。また、同位相と逆位相の測定順番を入れ替えても良い。また、固定部2からの信号光が回転部3で反射されて固定部2上のPD14に入射する戻り光が、本来の回転部3からの信号光より十分に小さくなるようにデバイス駆動や光学系を設定すれば、ステップ1〜3とステップ4〜6とを同時に行う事も可能である(回転部3への戻り光についても同様である)。また、本実施形態では、固定部2及び回転部3に同じ光信号送受信部を用いるので、固定部2から回転部3への信号光の波長と回転部3から固定部2への信号光の波長とは同じである。しかし、回転部3から固定部2への光信号と固定部2から回転部3への光信号との波長を変えて、異なる波長にそれぞれ対応したデバイスを用いて光のアイソレーションを確保すれば、ステップ1〜3とステップ4〜6とを同時に行える。
【0031】
次に、結露検出について説明する。反射面13,15に結露が生じている場合、光軸調整で得られる光量と反射面角度の相関に関しては、図4(b)に示されるように、光量が落ち込んで光量変化がなだらかな状態になる。予め光量に関して閾値を定めておき、閾値に達しない光量である場合には結露状態であると判断する。結露状態であると判断された場合は、反射面13,15を加熱して結露を解消する。反射面13,15を加熱しても改善しない場合、デバイスの寿命や機械的損傷などの結露以外の要因による異常状態として警告を発する。
【0032】
本実施形態では、受光光量の設計値の1/4の値が閾値として設定されている。閾値は、受発光デバイスの種類・性能バラツキ・配置・設置環境などを考慮して、最終的には環境試験を経て設定される。本実施形態で用いるLED12の放射強度は、最小値が標準値に対して半分の値で規定されている。このため、性能バラツキによって放射強度が最も弱いLEDの半分の放射強度でも信号伝送が成り立つように閾値が定められている。また、上述した構成によれば、結露状態を含む光伝送系の異常状態を検出可能であり、さらには、双方向の光伝送路のうち一方のみが閾値を下回った場合は一方のみが異常状態であると判断するなど、上述した構成は異常状態の究明に役立つ。また、光量の減少の仕方などから、異常が結露に起因するのか、故障に起因するのかなど、上述した構成は異常状態の原因究明にも役立つ。
【0033】
次に、角度調整機構について説明する。図5に示されるように、本実施形態における反射面13の角度変更機構では、反射面13を持つ反射板13aの可動端が、バネ13bによって予め一方に付勢されている。モータ13cの出力回転軸13dはリードスクリューとして構成されており、出力回転軸13dに螺合された移動部材13eを介して、反射板13a(反射面13)の角度を変更する。反射板13aの裏面にはヒーター13fが設けられており、加熱制御部13gと接続されている。受光用の反射面15を持つ反射板15aの裏面にも、ヒーター15fが設けられている。反射板13,15に結露が生じた際には、加熱制御部13gはヒーター13f,15fに通電して発熱させて結露を蒸発させて解消する。
【0034】
図6は、図5の角度変更機構とは異なる加熱手段を有する変形例を示している。反射板13aは可動であるので、反射板13aの裏面近傍にヒーター130fを配置して熱放射によって反射面13に熱が伝導される。反射板13aの動きに追従できるように結線する必要が無く、ヒーター130fを固定設置できるのでより高い信頼性を確保できる。
【0035】
図7や図8は、図5の角度変更機構とは異なる構造で反射面13の角度を変更する変形例を示している。図7の変形例では、モータ(図示せず)によって回転駆動されるピニオンギア130cと、ピニオンギア130cによって直線的に移動されるラック130eとによって反射板13a(反射面13)の角度が変更される。図8の変形例では、モータ13hによって、減速ギア13iを介してカム13jが回転され、このカムによって反射板13a(反射面13)の角度が変更される。角度変更機構は、これらの変形例に限られず、反射面13の角度を確実に変更できる機構であれば良い。上述したヒーター13f(130f),15fの加熱は、上述した制御部によって制御される。
【0036】
図9は、上述した双方向光信号伝送が可能なロータリージョイントに、電磁誘導による電力伝送部20と、回転駆動手段として中空回転軸を有するダイレクトドライブモータ(DDモータ)30とを組み合わせたユニットを示している。対向配置された光信号送受信部10の間に設けられた中空管11の外周に、巻き線を組み込んだ同心円形状のフェライトコア22,23が僅かなギャップ(ここでは0.5ミリメートル)を隔てて配置されている。フェライトコア22,23間で固定部2から回転部3へ非接触電力伝送が行われる。LED12、PD14、及び、反射面13、15は、基板17に実装されている。上述した反射板13の反射面
【0037】
DDモータ30の回転軸は中空管11を兼ねている。電磁誘導による電力伝送と光信号伝送とを組み合わせる事で,ベアリングなどの回転兼保持に関わる纏わる部分を除けば、非接触で信号及び電力を固定部2から回転部3に伝送可能なロータリージョイントが実現できる。さらに、DDモータを採用することで動力伝達機構が不要となるので、小型化ができ、動作音も極めて静かにできる。
【0038】
図10は、図9に示されるDDモータ一体型ロータリージョイント5を組み込んだドーム型回転カメラユニット1を示している。固定部2に対して回転部3が回転自在に保持されている。チルト機構部(図示せず)を介してカメラ4が回転部3に設けられている。カメラ4は、アクリル製の透明なドーム6で保護されている。固定部2は、天井7に固定されている。固定部2と回転部3との間にDDモータ一体型ロータリージョイント5が実装されており、固部2に対して回転部3(カメラ4)は無限に回転可能である。カメラ4で撮影された映像データは、光信号伝送に適するように信号変換部8によってパラレル信号からシリアル信号に変換された後、信号光として上述した一対の光信号送受信部10を介して回転部3から固定部2に伝送される。
【0039】
チルト回転に関しては無限に回転する必要が無いので、チルト機構部(チルト用モータなどを含む)は回転部3の光信号送受信部10と同軸ケーブルで結線されている。固定部2に伝送されたシリアル信号は、信号変換部9によって再度パラレル信号に変換された後、外部のネットワークに接続されたパーソナルコンピュータ(PC)等のコントロール機器に送出される。また、パン・チルト回転制御部は回転部3上に実装されているので、カメラ制御信号と併せてモータ制御信号は、固定部2から回転部3に送られる。即ち、信号光によって信号が双方向伝送される。カメラ4、パン回転用DDモータ30、及び、チルト回転用モータの駆動に必要な電力は、ロータリージョイント5に組み込まれた非接触の電力伝送部20によって固定部2から回転部3に供給される。
【0040】
次に、上述した異常検出制御について、図11に示されるフローチャートを参照して説明する。まず、上述した光軸調整の結果得られた角度と光量との間の相関データ(図4(a),図4(b)参照)に基づいて、受光光量が閾値以下であるかが判定される(ステップS1)。光軸調整が正しく行われていれば、受光光量は閾値以下とはならないはずである。ステップS1が否定される場合、即ち、受光光量が閾値を超えている場合は、異常が発生していないとみなして、ステップ1の処理が継続して行われる(異常発生を常時監視)。一方、ステップS1が肯定される場合、即ち、受光光量が閾値以下である場合、異常が発生している可能性があるので、まず、反射面13の角度をメモリに格納する(ステップS3)。
【0041】
そして、ステップS3の後、反射面13の角度を順次変更して、角度と光量との間の相関データ(受光量分布)を取得する(ステップS5)。次に、ステップS5で取得した相関データに基づいて上述した調整点Qを求め、調整点Qの受光光量が閾値以下であるかどうかが判定される(ステップS7)即ち、ステップS1が肯定される場合は、再度ステップS3〜S7で光軸調整を再度行って調整点Qの受光公領に基づいて、図4(b)のような異常状態でないかの判定が行われる。
【0042】
ステップS7が否定される場合は、即ち、受光光量が閾値を超えている場合は、異常が発生していないとみなして、ステップ1に戻る(異常発生を常時監視)。一方、ステップS7が肯定される場合、ステップS1が肯定される場合、即ち、受光光量が閾値以下である場合、光軸再調整後も異常が発生している可能性があるので、メモリから角度情報が呼び出され、反射面13の角度が当初角度(初期角度)に戻される(ステップS9)。
【0043】
ステップS9の後、加熱装置に制御信号(ON)が送出され、ヒーター13f(130f),15fが発熱される(ステップS11)。ヒーター13f(130f),15fの発熱が一定時間継続され(ステップS13)、反射面13,15に付着していると思われる結露が蒸発される。一定時間が経過した後、受光光量が閾値以上であるかどうかが判定される(ステップS15)。ステップS15が肯定される場合、即ち、受光光量が閾値以上である場合、結露が蒸発して異常が解消されたと判断できるので、加熱装置に制御信号(OFF)が送出され、ヒーター13f(130f),15fの発熱が停止される(ステップS17)。その後、受光光量の監視が継続される(ステップS19)。
【0044】
一方、ステップS15が否定される場合、即ち、受光光量が閾値未満である場合、異常状態は結露によるものではなく、その他の要因による異常であると判断できる。この場合、まず、加熱装置に制御信号(OFF)が送出され、不要なヒーター13f(130f),15fの発熱が停止される(ステップS21)。その後、異常が発生しているとの警告信号が送出される(ステップS23)。
【0045】
本実施形態では、反射面13の回転軸CL2が回転部3の回転軸CL1と直交されており、受光光量をモニタしつつ光路中に設けた反射面13の角度が制御されて光軸調整が行われる。光軸調整の際には、回転部3の送受信部10と固定部2の送受信部10とが回転軸CL1に関して同位相の時と逆位相の時と(即ち、回転軸CL1に対して同じ側に位置する時と反対側に位置する時と)の二箇所で受光光量をモニタしつつ最適角度(調整点Q)が決定される。
【0046】
従って、本実施形態によれば、必要最小限(二箇所)の光量測定で得られる情報で光軸調整を行うことができる。また、信号光の伝送距離が異なる場合でも容易に対応できる。なお、従来の光伝送ロータリージョイントでは、空間を隔てた複数機器間の光伝送に比べればロータリージョイント内での光伝送距離は短い事もあり、効率低下を見込んで信号光の放射角を大きくしても通信が成立するように光量を増やしていた。しかし、本実施形態ではそのような必要がない。さらに、従来の複数機器間の光軸調整では、反射面の角度を二つの回転軸を中心にして変化させながら光量測定する必要があったため、少なくとも3点以上で光量測定を行う必要があった。しかし、本実施形態によれば、回転軸CL2と回転軸CL1とが直交されているので、反射面13の角度を一つの回転軸CL2のみを中心にして変化させるだけで光軸調整を行える。さらに、本実施形態によれば、回転部3の回転に伴う送信用反射面13及び受信用反射面15による光学特性変動を最小限に抑えられ、好適な通信安定性を実現できる。
【0047】
また、本実施形態によれば、上述した光軸調整機能を利用して、結露状態を含む異常状態を検知できる。また、ヒーター13f(130f),15fによって反射面13,15を加熱して結露を除去することができる。従って、多湿環境下でも反射面13,15の結露を防止でき、光通信の安定性を確保できる。上述したように、従来は、発熱によって結露を除去する方法や、送風によって結露を除く方法が提案されていたが、何れも専用の結露検出手段が必要であった。また、送風によって反射面に塵埃が付着して光学性能が低下する問題もあった。しかし、本実施形態では、光軸調整機能を利用するので、専用の結露検出手段を設ける必要はない。また、本実施形態によれば、反射面13,15の光学性能を損なうことなく結露を解消できる。
【符号の説明】
【0048】
CL1 (ロータリージョイントの)回転軸
CL2 (反射面の)回転軸
1 回転ドームカメラユニット
2 (ロータリージョイントの)固定部
3 (ロータリージョイントの)回転部
4 カメラ
5 ロータリージョイント
6 ドーム
7 天井
8 回転側信号変換部
9 固定側信号変換部
10 光信号送受信部
11 中空管
12 発光部(LED)
13 送信用反射面
14 受光部(PD)
15 受信用反射面
17 基板
18 光軸と反射面回転軸との交点
20 電力伝送部
22 固定側フェライトコア
23 回転側フェライトコア
30 ダイレクトドライブモータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送ロータリージョイントに関し、特に、一軸を中心に相対的に回転する固定部及び回転部との間で、光信号による双方向信号伝送を行う光伝送ロータリージョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内の天井等に固定設置される監視カメラ装置として、装置内部にカメラのパン角度やチルト角度を制御して撮像方向を変えながら監視を行う装置が多数普及している。また、回転機能を持たない固定式カメラに回転機能を与える電動雲台が利用される事も多い。このような角度制御可能な監視カメラ装置の多くにおいて、天井等に固定設置される固定部とパン方向に回動可能な回転部とが、電動雲台を介して接続されている。
【0003】
より詳しくは、回転部にはカメラをチルト方向に駆動するチルト駆動機構が設けられており、この回転部がパン方向に回動可能な電動雲台の回転部分に取り付けられている。一方、電動雲台の固定部分は天井等に固定されている。監視カメラ装置は、このような構成を有するものが多い。なお、チルト制御機能を省略したり、チルト角度の変更は手動機構によって行うなどして、パン方向の回転のみを電動で行う構成の装置もある。このような構成の監視カメラ装置においては、回転部上のカメラから出力された映像信号は、固定部と回転部の間の接続部を介して固定部に伝送され、固定部上で画像処理や出力インターフェース変換がされて外部のモニタや映像信号記録装置に出力される。
【0004】
このような監視カメラ装置で用いられる回転接続方式として、いくつかの方式が知られている。特に、回転部のパン方向への連続回転が可能な回転接続方式として、スリップリングとブラシとによる摺動接点によって回転部と固定部との間に信号接続路を構築する方式が知られている。しかし、この摺動接点方式は、回転するスリップリングと固定されたブラシとの接点部分への油膜や塵埃の付着による電気的接触の不安定化や、機械的接触に伴うノイズ発生や、長期間の連続摺動による電気的接触性能の劣化などの問題があった。特に映像信号に関しては回転に伴うノイズ発生が問題となり、パン・チルト等の制御信号に関しては、誤動作の発生が問題となる。さらに、このような機械接触方式では伝送可能な周波数帯域が限られているので、広帯域伝送路を必要とする高精細映像信号や高速データの伝送を行うことが困難であった。
【0005】
そこで、摺動接触方式の悪影響を避けるために、非接触光伝送によるロータリージョイントも提案されている。この方式は、当初は回転部上のカメラの映像信号を固定部に伝送する片方向伝送であった。しかし、カメラやチルトモータの制御信号も固定部から回転部に送る方式、即ち、双方向で非接触光伝送を行う方式も提案されている。
【0006】
下記特許文献1には、二組の発光素子及び受光素子を用いた光伝送ロータリージョイントが開示されている。このロータリージョイントでは、固定部上の受光素子と回転部上の受光素子とが、回転部の回転軸上に対向配置されている。また、発光素子は、受光素子と重ならないように受光素子の外側に配置されている。各発光素子から照射される光信号は、その相手側受光素子の中心部に向けて斜め方向に投射されるように光軸が配置されている。しかし、この方式は近距離しか対応できない。また、光の利用効率が悪いので大出力発光が必要であり、発熱が大きくなるというデメリットがある。
【0007】
また、下記特許文献2には、一組の発光素子及び受光素子を用いた光伝送ロータリージョイントが開示されている。このロータリージョイントでは、発光素子と受光素子との間に、回転部の回転軸にほぼ一致させて導光部材が挿入されている。この導光部材が光伝送路として機能するが、光軸ずれの影響を抑えるため、導光部材の端面より広い面積の受光素子が用いられる。あるいは、導光部材の端面から出射した光を受光素子に集光するレンズが用いられる。しかし、この方式は安定した光伝送が可能であるが、構造的に片方向しか光伝送出来ない。
【0008】
光伝送を行うには、発光部からの信号光が、その指向角の範囲内の角度で受光部に到達する必要がある。このような光軸調整技術も提案されている。光伝送での光軸調整に関する技術としては、送信光軸上に設けられた照準機を用いる方法や、受信部に設けたコーナーキューブの反射光を利用して光軸調整する方法や、パラボラリフレクタを用いる方法や、光軸調整専用のパイロット光源を用いる方法などが提案されている。下記特許文献3には、光軸調整専用のパイロット光源を用いる方法が開示されている。この方法では、光信号は四分割受光素子(PD)で受光され、各分割受光素子の受光レベル差に基づいて光軸調整が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−44940号公報
【特許文献2】特開2007−120742号公報
【特許文献3】特開2000−31908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光信号通信は、光信号の指向角の範囲内で受光素子に一定レベル以上の光量が届かなければ成立しない。しかし、屋外設置のような多湿環境では、空気中に含まれる水蒸気量や温度によっては、装置内部で結露が生じる。結露によって生じる微小な水滴が光路上に存在すると、信号光が散乱して伝送効率が著しく悪化し、場合によっては通信不能となる。結露対策としては、ヒーター(電熱線)を用いる方法や、結露面に風を吹きつけて結露を解消する方法が提案されてきた。上記特許文献3では、窓の結露解消のために機器外に専用ヒーターが取り付けられるが、結露検出専用の結露検出手段が必要である。このため、費用負担が大きく、装置の大型化を招いていた。
【0011】
本発明の目的は、通信の安定性を確保できる光伝送ロータリージョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光伝送ロータリージョイントは、固定部(2)に対して回転自在に保持された回転部(3)を備え、前記固定部(3)と前記回転部(2)との間で双方向の光信号の伝送を行うものであり、前記固定部(2)上に設けられた固定側光信号送受信部(10)と、前記回転部(3)上に設けられた回転側光信号送受信部(10)と、二つの前記光信号送受信部(10)の間に形成された中空空間(11)を備えている。二つの前記光信号送受信部(10)は、それぞれ、送信部(12)と、受信部(14)と、自身の前記送信部(12)からの信号光を相手側の前記光信号送受信部(10)に向けて反射させる送信用反射面(13)と、相手側の前記光信号送受信部(10)からの信号光を自身の前記受信部(14)に反射させる受信用反射面(15)とを備えている。前記光伝送ロータリージョイント(5)は、前記回転部(3)の回転と前記送信用反射面(13)の角度変更とを制御する制御部をさらに備えている。前記送信用第一の反射手段(13)の角度を変更する回転軸(CL2)は、前記回転部(3)の回転軸(CL1)と直交しており、前記制御部が、前記固定部(2)に対して前記回転部(3)を回転させて二つの前記光信号送受信手段(10)を前記回転部(3)の前記回転軸(CL1)に関して同位相位置と逆位相位置との二箇所で前記送信用反射面(13)の角度を変更して前記信号光の光軸調整を行う。
【0013】
ここで、前記制御部が、前記同位相位置及び前記逆位相位置のそれぞれの位置にて前記受光部(14)により受光した受光光量に基づいて結露状態を含む異常状態を検知し、異常状態検知時に、前記送信用反射面(13)及び前記受信用反射面(14)に設けられた加熱手段を加熱させる、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光伝送ロータリージョイントによれば、反射面角度を制御する光軸調整機構を光路上に設けることによって装置を小型化しつつ、固定部と回転部とにそれぞれ設けられた光信号送受信部の回転軸に対する同位相位置及び逆位相位置の受光光量を取得するだけで光軸を効率よく調整できる。
【0015】
また、上述した加熱手段を設ければ、光軸調整手段を活用することで反射面の結露状態を含む異常状態を検知でき、さらには、加熱手段を制御して結露を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】光伝送ロータリージョイントの実施形態の構成図である。
【図2】(a)及び(b)は、上記実施形態における光信号伝送の説明図である。
【図3】(a)〜(d)は、上記実施形態における光信号伝送の光軸調整の説明図である。
【図4】(a)は上記実施形態における光軸調整の際の調節点の求め方を説明する反射面角度Xと受光光量Yとの関係を示すグラフであり、(b)は反射面の結露状態での反射面角度Xと受光光量Yとの関係を示すグラフである。
【図5】上記実施形態における反射面角度変更機構の拡大側面図である。
【図6】反射面角度変更機構(反射面加熱方法)の第1変形例の拡大側面図である。
【図7】反射面角度変更機構の第2変形例の拡大側面図である。
【図8】反射面角度変更機構の第3変形例の拡大側面図である。
【図9】上記実施形態の光伝送ロータリージョイントに電力伝送機構と回転機構とを組み込んだユニットの断面斜視図である。
【図10】上記実施形態の光伝送ロータリージョイントが組み込まれた回転ドーム型監視カメラの構成図である。
【図11】上記実施形態の光伝送ロータリージョイントでの異常検出制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態の光伝送ロータリージョイントでは、図1に示されるように、一対の光信号送受信部10が、中空管11を挟んで対向配置してある。中空管11の内部には中空空間が形成されている。中空管11は、中央で固定部2と回転部3とに分割される。なお、固定部2と回転部3とは、図1のように中空管11で分割されても良いし、中空管11と何れかの光信号送受信部10との間で分割されても良い。各光信号送受信部10は、光信号発光部12、光信号受信部14、自身の光信号発光部12からの信号光を相手側の光信号送受信部10に向けて反射する反射面13、及び、相手側の光信号送信部12からの信号光を自身の光信号受信部14に向けて反射する反射面15を備えている。
【0018】
本実施形態の各光信号送信部12には、L1ght Emitting Diode(LED)が用いられているが、半導体レーザ(LD)や面発光レーザ(VCSEL)が用いられても良い。光信号受信部14には、Photodiode(PD)が用いられている。
【0019】
反射面13,15には、光輝処理を施したステンレス鋼板が用いられているが、鏡や、表面を平滑に仕上げた樹脂や、反射膜を付加した部材が用いられても良い。光輝処理が施されたステンレス鋼板は、耐食性に優れ、強度が高く、取り付け形状の形成も容易で、硝子を用いた反射面に比べて安価であるなどの特長を持つ。
【0020】
中空管11は、金属製である。具体的には、真鍮を機械加工したものであり、中空内面は凹凸の少ない機械加工面として仕上げられており、中空内面での反射も利用される。しかし、基本的には、中空管11の内部に光信号が通る空間が確保されていれば良く、中空管11は、樹脂製や硝子製でも良い。
【0021】
次に、光信号の伝達について説明する。図2(a)及び図2(b)に示されるように、LED12から一定の放射角で出射された信号光は、拡がりながら相手側のPD14に到達する。ここで、拡がる信号光の中心軸(図中一点鎖線)は、反射面13で反射された後に、相手側反射面15と回転軸CL1との交点18に達するよう、θ1(図2(a))やθ2(図2(b))が設定されている。従って、信号光が交点18に達すると、拡がった信号光の半分が反射面15で再度反射されてPD14に達する。このように光軸を設定する事で、固定部2と回転部3とがどのような回転位置関係にあっても、信号光が交点18に達した際に拡がった信号光の半分が反射面15で反射されてPD14に常に送られる。従って、固定部2に対する回転部3の回転による光量変動が抑制されて安定した通信が実現される。
【0022】
また、対向する一対の光信号送受信基板(光信号送受信部10)間の距離が異なる場合でも(図2(a)と図2(b))、反射面13の角度を変更する事で容易に対応できる(θ1,θ2参照)。さらに、反射面13の回転軸CL2と固定部2に対する回転部3の回転軸CL1とは直交するように配置されているので、回転軸CL1方向からみた反射面13(15)の位置は変わらない(換言すれば、回転軸CL2は、回転軸CL1との交点を中心に回転するだけである)。このため、回転部3の回転による光量変動は生じない。以上のようにLED12から出射された信号光が2回反射されてPD14に到達する構成によって、反射面13を光軸調整に利用するだけでなく、LED12やPD14などの発光受光部品を回転軸CL2に対して水平に配置できるので構造を薄型化(小型化)できる。
【0023】
次に光軸調整について説明する。上述したように、LED12から出射された信号光の光軸は、反射面13で反射された後に交点18を通るように設計されている。光軸が交点18を通るように調整されていれば、回転部3の回転位置(位相)によらず、放射角によって拡がった信号光の半分はPD14に向けて常に反射される。しかし、光軸が交点18よりPD14側にずれていると、この回転位置(位相)では多くの光がPD14に向けて反射されるが、回転部3の回転によって逆位相になるとPD14に向けて反射される信号光が著しく減少する。逆に、光軸がLED12側にずれている場合も同様である。
【0024】
従って、反射面13の角度を変えて信号光の光軸が交点18を通るように光軸調整が行われる。光軸調整の手順を、図3(a)〜図3(d)を参照して説明する。光軸調整は、固定部2と回転部3との間の通信路が確立されていない状態で行われる。光軸調整の各ステップは、予め定められた時間で次のステップに移行する。まず、図3(a)に示されるように、ステップ1では、電源投入、又は、リセットスイッチ(図示せず)の押下によって、固定部2に対する回転部3の回転角度を検出する角度検出機能を用いて、回転部2及び回転部3において発光部(LED12)と受光部(PD14)とが同位相(回転軸CL1に対して同じ位置)にされる。なお、角度検出機能としては、エンコーダを設けたり、回転部3を回転させるステッピングモータの制御信号などを利用すればよい。図3(a)に示される状態で、回転部3上のLED12を発光させて回転部3上の反射面13の角度を変化させ、逐次、反射面角度情報を変調して信号光にのせる。この信号光を固定部2上のPD14で受光し、回転部3上の反射面13の角度と、固定部2側のPD14の受光レベルとの同位相状態での相関データを取得する。
【0025】
次に、図3(b)に示されるように、ステップ2では、角度検出機能を用いて回転部3を180°回転させて、回転部2及び回転部3において発光部(LED12)と受光部(PD14)とが逆位相にされる。図3(b)に示される状態で、回転部3上のLED12を発光させて回転部3上の反射面13の角度を変化させ、逐次、反射面角度情報を変調して信号光にのせる。この信号光を固定部2上のPD14で受光し、逆位相状態での角度と光量との間の相関データを取得する。ステップ1で取得した同位相状態の相関データとステップ2で取得した逆位相状態の相関データとを合わせると、図4(a)に示されるようなグラフとして得られる。図4(a)のグラフから、光軸が交点18を通る反射面13の角度に対応する調整点Qが求められる。理想的には、調整点Qは設計中心の角度と一致する。
【0026】
続いて、ステップ3では、得られた調整点Qの角度情報を信号光に変調し、今度は固定部2上のLED12を発光させつつ、回転部3を所定速度で少なくとも一回転させる。固定部2上のLED13を発光させつつ回転部3を一回転させる事で、固定部2から回転部3への光軸が未調整の状態であっても、一回転の内のいずれかの角度で信号光が所定光量以上に達する。このため、調整点Qの反射面角度情報を固定部2から回転部3に伝達できる。回転部3は、固定部2から伝達された情報に基づいて、回転部3上の発光用の反射面13の角度を調整点Qに対応した角度に設定する。
【0027】
次に、図3(c)に示されるように、ステップ4では、再び同位相に戻して、固定部2上のLED12を発光させて固定部2上の反射面13の角度を変化させ、逐次、反射面角度情報を変調して信号光にのせる。この信号光を回転部3上のPD14で受光し、同位相状態での角度と光量との間の相関データを取得する。
【0028】
図3(d)に示されるように、ステップ5では、回転部3を180°回転させて逆位相とし、同様に、固定部2上のLED12を発光させて固定部2上の反射面13の角度を変化させ、逐次、反射面角度情報を変調して信号光にのせる。この信号光を回転部3上のPD14で受光し、逆位相状態での角度と光量との間の相関データを取得する。ステップ4で取得した同位相状態の相関データとステップ5で取得した逆位相状態の相関データとから、同様に、調整点Qに対応する反射面13の角度が取得できる。
【0029】
続いて、ステップ6では、得られた調整点Qの角度情報を信号光に変調し、今度は回転部3上のLED12を発光させつつ、回転部3を所定速度で少なくとも一回転させる。得られた角度情報を固定部2上の発光用の反射面13に反映させる(調整点Qに対応した角度に設定する)。以上により光軸調整が完了する。なお、上述した光軸調整時に、固定部2に対する回転部3の回転や、反射面13の角度調整は、制御部によって制御される。
【0030】
ステップ1〜3が回転部3上の発光用の反射面13の角度調整ステップ、ステップ4〜6が固定部2上の発光用の反射面13の角度調整ステップである。最初にステップ4〜6を行い、その後、ステップ1〜3を行っても良い。また、同位相と逆位相の測定順番を入れ替えても良い。また、固定部2からの信号光が回転部3で反射されて固定部2上のPD14に入射する戻り光が、本来の回転部3からの信号光より十分に小さくなるようにデバイス駆動や光学系を設定すれば、ステップ1〜3とステップ4〜6とを同時に行う事も可能である(回転部3への戻り光についても同様である)。また、本実施形態では、固定部2及び回転部3に同じ光信号送受信部を用いるので、固定部2から回転部3への信号光の波長と回転部3から固定部2への信号光の波長とは同じである。しかし、回転部3から固定部2への光信号と固定部2から回転部3への光信号との波長を変えて、異なる波長にそれぞれ対応したデバイスを用いて光のアイソレーションを確保すれば、ステップ1〜3とステップ4〜6とを同時に行える。
【0031】
次に、結露検出について説明する。反射面13,15に結露が生じている場合、光軸調整で得られる光量と反射面角度の相関に関しては、図4(b)に示されるように、光量が落ち込んで光量変化がなだらかな状態になる。予め光量に関して閾値を定めておき、閾値に達しない光量である場合には結露状態であると判断する。結露状態であると判断された場合は、反射面13,15を加熱して結露を解消する。反射面13,15を加熱しても改善しない場合、デバイスの寿命や機械的損傷などの結露以外の要因による異常状態として警告を発する。
【0032】
本実施形態では、受光光量の設計値の1/4の値が閾値として設定されている。閾値は、受発光デバイスの種類・性能バラツキ・配置・設置環境などを考慮して、最終的には環境試験を経て設定される。本実施形態で用いるLED12の放射強度は、最小値が標準値に対して半分の値で規定されている。このため、性能バラツキによって放射強度が最も弱いLEDの半分の放射強度でも信号伝送が成り立つように閾値が定められている。また、上述した構成によれば、結露状態を含む光伝送系の異常状態を検出可能であり、さらには、双方向の光伝送路のうち一方のみが閾値を下回った場合は一方のみが異常状態であると判断するなど、上述した構成は異常状態の究明に役立つ。また、光量の減少の仕方などから、異常が結露に起因するのか、故障に起因するのかなど、上述した構成は異常状態の原因究明にも役立つ。
【0033】
次に、角度調整機構について説明する。図5に示されるように、本実施形態における反射面13の角度変更機構では、反射面13を持つ反射板13aの可動端が、バネ13bによって予め一方に付勢されている。モータ13cの出力回転軸13dはリードスクリューとして構成されており、出力回転軸13dに螺合された移動部材13eを介して、反射板13a(反射面13)の角度を変更する。反射板13aの裏面にはヒーター13fが設けられており、加熱制御部13gと接続されている。受光用の反射面15を持つ反射板15aの裏面にも、ヒーター15fが設けられている。反射板13,15に結露が生じた際には、加熱制御部13gはヒーター13f,15fに通電して発熱させて結露を蒸発させて解消する。
【0034】
図6は、図5の角度変更機構とは異なる加熱手段を有する変形例を示している。反射板13aは可動であるので、反射板13aの裏面近傍にヒーター130fを配置して熱放射によって反射面13に熱が伝導される。反射板13aの動きに追従できるように結線する必要が無く、ヒーター130fを固定設置できるのでより高い信頼性を確保できる。
【0035】
図7や図8は、図5の角度変更機構とは異なる構造で反射面13の角度を変更する変形例を示している。図7の変形例では、モータ(図示せず)によって回転駆動されるピニオンギア130cと、ピニオンギア130cによって直線的に移動されるラック130eとによって反射板13a(反射面13)の角度が変更される。図8の変形例では、モータ13hによって、減速ギア13iを介してカム13jが回転され、このカムによって反射板13a(反射面13)の角度が変更される。角度変更機構は、これらの変形例に限られず、反射面13の角度を確実に変更できる機構であれば良い。上述したヒーター13f(130f),15fの加熱は、上述した制御部によって制御される。
【0036】
図9は、上述した双方向光信号伝送が可能なロータリージョイントに、電磁誘導による電力伝送部20と、回転駆動手段として中空回転軸を有するダイレクトドライブモータ(DDモータ)30とを組み合わせたユニットを示している。対向配置された光信号送受信部10の間に設けられた中空管11の外周に、巻き線を組み込んだ同心円形状のフェライトコア22,23が僅かなギャップ(ここでは0.5ミリメートル)を隔てて配置されている。フェライトコア22,23間で固定部2から回転部3へ非接触電力伝送が行われる。LED12、PD14、及び、反射面13、15は、基板17に実装されている。上述した反射板13の反射面
【0037】
DDモータ30の回転軸は中空管11を兼ねている。電磁誘導による電力伝送と光信号伝送とを組み合わせる事で,ベアリングなどの回転兼保持に関わる纏わる部分を除けば、非接触で信号及び電力を固定部2から回転部3に伝送可能なロータリージョイントが実現できる。さらに、DDモータを採用することで動力伝達機構が不要となるので、小型化ができ、動作音も極めて静かにできる。
【0038】
図10は、図9に示されるDDモータ一体型ロータリージョイント5を組み込んだドーム型回転カメラユニット1を示している。固定部2に対して回転部3が回転自在に保持されている。チルト機構部(図示せず)を介してカメラ4が回転部3に設けられている。カメラ4は、アクリル製の透明なドーム6で保護されている。固定部2は、天井7に固定されている。固定部2と回転部3との間にDDモータ一体型ロータリージョイント5が実装されており、固部2に対して回転部3(カメラ4)は無限に回転可能である。カメラ4で撮影された映像データは、光信号伝送に適するように信号変換部8によってパラレル信号からシリアル信号に変換された後、信号光として上述した一対の光信号送受信部10を介して回転部3から固定部2に伝送される。
【0039】
チルト回転に関しては無限に回転する必要が無いので、チルト機構部(チルト用モータなどを含む)は回転部3の光信号送受信部10と同軸ケーブルで結線されている。固定部2に伝送されたシリアル信号は、信号変換部9によって再度パラレル信号に変換された後、外部のネットワークに接続されたパーソナルコンピュータ(PC)等のコントロール機器に送出される。また、パン・チルト回転制御部は回転部3上に実装されているので、カメラ制御信号と併せてモータ制御信号は、固定部2から回転部3に送られる。即ち、信号光によって信号が双方向伝送される。カメラ4、パン回転用DDモータ30、及び、チルト回転用モータの駆動に必要な電力は、ロータリージョイント5に組み込まれた非接触の電力伝送部20によって固定部2から回転部3に供給される。
【0040】
次に、上述した異常検出制御について、図11に示されるフローチャートを参照して説明する。まず、上述した光軸調整の結果得られた角度と光量との間の相関データ(図4(a),図4(b)参照)に基づいて、受光光量が閾値以下であるかが判定される(ステップS1)。光軸調整が正しく行われていれば、受光光量は閾値以下とはならないはずである。ステップS1が否定される場合、即ち、受光光量が閾値を超えている場合は、異常が発生していないとみなして、ステップ1の処理が継続して行われる(異常発生を常時監視)。一方、ステップS1が肯定される場合、即ち、受光光量が閾値以下である場合、異常が発生している可能性があるので、まず、反射面13の角度をメモリに格納する(ステップS3)。
【0041】
そして、ステップS3の後、反射面13の角度を順次変更して、角度と光量との間の相関データ(受光量分布)を取得する(ステップS5)。次に、ステップS5で取得した相関データに基づいて上述した調整点Qを求め、調整点Qの受光光量が閾値以下であるかどうかが判定される(ステップS7)即ち、ステップS1が肯定される場合は、再度ステップS3〜S7で光軸調整を再度行って調整点Qの受光公領に基づいて、図4(b)のような異常状態でないかの判定が行われる。
【0042】
ステップS7が否定される場合は、即ち、受光光量が閾値を超えている場合は、異常が発生していないとみなして、ステップ1に戻る(異常発生を常時監視)。一方、ステップS7が肯定される場合、ステップS1が肯定される場合、即ち、受光光量が閾値以下である場合、光軸再調整後も異常が発生している可能性があるので、メモリから角度情報が呼び出され、反射面13の角度が当初角度(初期角度)に戻される(ステップS9)。
【0043】
ステップS9の後、加熱装置に制御信号(ON)が送出され、ヒーター13f(130f),15fが発熱される(ステップS11)。ヒーター13f(130f),15fの発熱が一定時間継続され(ステップS13)、反射面13,15に付着していると思われる結露が蒸発される。一定時間が経過した後、受光光量が閾値以上であるかどうかが判定される(ステップS15)。ステップS15が肯定される場合、即ち、受光光量が閾値以上である場合、結露が蒸発して異常が解消されたと判断できるので、加熱装置に制御信号(OFF)が送出され、ヒーター13f(130f),15fの発熱が停止される(ステップS17)。その後、受光光量の監視が継続される(ステップS19)。
【0044】
一方、ステップS15が否定される場合、即ち、受光光量が閾値未満である場合、異常状態は結露によるものではなく、その他の要因による異常であると判断できる。この場合、まず、加熱装置に制御信号(OFF)が送出され、不要なヒーター13f(130f),15fの発熱が停止される(ステップS21)。その後、異常が発生しているとの警告信号が送出される(ステップS23)。
【0045】
本実施形態では、反射面13の回転軸CL2が回転部3の回転軸CL1と直交されており、受光光量をモニタしつつ光路中に設けた反射面13の角度が制御されて光軸調整が行われる。光軸調整の際には、回転部3の送受信部10と固定部2の送受信部10とが回転軸CL1に関して同位相の時と逆位相の時と(即ち、回転軸CL1に対して同じ側に位置する時と反対側に位置する時と)の二箇所で受光光量をモニタしつつ最適角度(調整点Q)が決定される。
【0046】
従って、本実施形態によれば、必要最小限(二箇所)の光量測定で得られる情報で光軸調整を行うことができる。また、信号光の伝送距離が異なる場合でも容易に対応できる。なお、従来の光伝送ロータリージョイントでは、空間を隔てた複数機器間の光伝送に比べればロータリージョイント内での光伝送距離は短い事もあり、効率低下を見込んで信号光の放射角を大きくしても通信が成立するように光量を増やしていた。しかし、本実施形態ではそのような必要がない。さらに、従来の複数機器間の光軸調整では、反射面の角度を二つの回転軸を中心にして変化させながら光量測定する必要があったため、少なくとも3点以上で光量測定を行う必要があった。しかし、本実施形態によれば、回転軸CL2と回転軸CL1とが直交されているので、反射面13の角度を一つの回転軸CL2のみを中心にして変化させるだけで光軸調整を行える。さらに、本実施形態によれば、回転部3の回転に伴う送信用反射面13及び受信用反射面15による光学特性変動を最小限に抑えられ、好適な通信安定性を実現できる。
【0047】
また、本実施形態によれば、上述した光軸調整機能を利用して、結露状態を含む異常状態を検知できる。また、ヒーター13f(130f),15fによって反射面13,15を加熱して結露を除去することができる。従って、多湿環境下でも反射面13,15の結露を防止でき、光通信の安定性を確保できる。上述したように、従来は、発熱によって結露を除去する方法や、送風によって結露を除く方法が提案されていたが、何れも専用の結露検出手段が必要であった。また、送風によって反射面に塵埃が付着して光学性能が低下する問題もあった。しかし、本実施形態では、光軸調整機能を利用するので、専用の結露検出手段を設ける必要はない。また、本実施形態によれば、反射面13,15の光学性能を損なうことなく結露を解消できる。
【符号の説明】
【0048】
CL1 (ロータリージョイントの)回転軸
CL2 (反射面の)回転軸
1 回転ドームカメラユニット
2 (ロータリージョイントの)固定部
3 (ロータリージョイントの)回転部
4 カメラ
5 ロータリージョイント
6 ドーム
7 天井
8 回転側信号変換部
9 固定側信号変換部
10 光信号送受信部
11 中空管
12 発光部(LED)
13 送信用反射面
14 受光部(PD)
15 受信用反射面
17 基板
18 光軸と反射面回転軸との交点
20 電力伝送部
22 固定側フェライトコア
23 回転側フェライトコア
30 ダイレクトドライブモータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部に対して回転自在に保持された回転部を備え、前記固定部と前記回転部との間で双方向の光信号の伝送を行う光伝送ロータリージョイントにおいて、
前記固定部上に設けられた固定側光信号送受信部と、
前記回転部上に設けられた回転側光信号送受信部と、
二つの前記光信号送受信部の間に形成された中空空間を備え、
二つの前記光信号送受信部は、それぞれ、送信部と、受信部と、自身の前記送信部からの信号光を相手側の前記光信号送受信部に向けて反射させる送信用反射面と、相手側の前記光信号送受信部からの信号光を自身の前記受信部に反射させる受信用反射面とを備え、
前記光伝送ロータリージョイントが、前記回転部の回転と前記送信用反射面の角度変更とを制御する制御部をさらに備え、
前記送信用第一の反射手段の角度を変更する回転軸が、前記回転部の回転軸と直交し、
前記制御部が、前記固定部に対して前記回転部を回転させて二つの前記光信号送受信部を前記回転部の前記回転軸に関して同位相位置と逆位相位置との二箇所で前記送信用反射面の角度を変更して前記信号光の光軸調整を行う、ことを特徴とする光伝送ロータリージョイント。
【請求項2】
前記制御部が、前記同位相位置及び前記逆位相位置のそれぞれの位置にて前記受光部により受光した受光光量に基づいて結露状態を含む異常状態を検知し、異常状態検知時に、前記送信用反射面及び前記受信用反射面に設けられた加熱手段を加熱させる、請求項1に記載の光伝送ロータリージョイント。
【請求項1】
固定部に対して回転自在に保持された回転部を備え、前記固定部と前記回転部との間で双方向の光信号の伝送を行う光伝送ロータリージョイントにおいて、
前記固定部上に設けられた固定側光信号送受信部と、
前記回転部上に設けられた回転側光信号送受信部と、
二つの前記光信号送受信部の間に形成された中空空間を備え、
二つの前記光信号送受信部は、それぞれ、送信部と、受信部と、自身の前記送信部からの信号光を相手側の前記光信号送受信部に向けて反射させる送信用反射面と、相手側の前記光信号送受信部からの信号光を自身の前記受信部に反射させる受信用反射面とを備え、
前記光伝送ロータリージョイントが、前記回転部の回転と前記送信用反射面の角度変更とを制御する制御部をさらに備え、
前記送信用第一の反射手段の角度を変更する回転軸が、前記回転部の回転軸と直交し、
前記制御部が、前記固定部に対して前記回転部を回転させて二つの前記光信号送受信部を前記回転部の前記回転軸に関して同位相位置と逆位相位置との二箇所で前記送信用反射面の角度を変更して前記信号光の光軸調整を行う、ことを特徴とする光伝送ロータリージョイント。
【請求項2】
前記制御部が、前記同位相位置及び前記逆位相位置のそれぞれの位置にて前記受光部により受光した受光光量に基づいて結露状態を含む異常状態を検知し、異常状態検知時に、前記送信用反射面及び前記受信用反射面に設けられた加熱手段を加熱させる、請求項1に記載の光伝送ロータリージョイント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−119890(P2012−119890A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267105(P2010−267105)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
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