説明

光伝送体の保持構造及び照明装置

【課題】簡単な作業で光伝送体の固定保持が可能であるとともに、光の損失を最小限とした状態で、確実に光伝送体が固定保持される光伝送体の保持構造及び照明装置を提供すること。
【解決手段】線状の光伝送体と、該光伝送体が嵌入される保持部材とからなり、上記保持部材が、内面に弾性体からなる突片を有し、上記光伝送体を上記保持部材に嵌入することにより、上記突片が嵌入方向に傾倒する光伝送体の保持構造。上記突片が、内周に放射状の切込みが形成された環状板からなる、または、上記突片が、上記保持部材の内壁に一体的に形成されている光伝送体の保持構造。上記の光伝送体の保持構造を有し、上記光伝送体における上記保持部材に嵌入される側の端部に配置された光源を備えた照明装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話、カーオーディオ、パチンコ台、スロット台、車両室内、犬の首輪、キッチンの足元、交通標識、洗面台、シャワー、浴槽の湯温表示機、OA機器のバックライト等の照明用として好適な光伝送体の保持構造及び照明装置に係り、特に、簡単な作業で光伝送体の固定保持が可能であるとともに、光の損失を最小限とした状態で、確実に光伝送体が固定保持されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コア及びクラッドからなり、長さ方向の少なくとも一端から入射された光を端面または周方向(側面)から出射させる光伝送体と、この光伝送体を固定保持するための保持部材と、光源とを組合せた照明装置が種々提案されている。関連する技術として、例えば、特許文献1〜6などが挙げられる。
【0003】
また、光伝送体と保持部材による光伝送体の保持構造として、例えば、特許文献7が挙げられる。この特許文献7による保持部材は、異なる中心軸の2つのリング部が連結部で連結されており、この2つのリング部に光伝送体を挿通することにより、連結部の弾性力によって光伝送体がせん断力を受け、保持される構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3974112号公報:クラベ
【特許文献2】特許第4203985号公報:クラベ
【特許文献3】特許第4040477号公報:クラベ
【特許文献4】特許第4299776号公報:クラベ
【特許文献5】特開2002−367403公報:ブリヂストン
【特許文献6】特開平7−198951号公報:ブリヂストン
【特許文献7】特開2009−275802公報:ニフコ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように、特許文献7による光伝送体の保持構造は、光伝送体に常時せん断力が加わっていることになるため、光伝送体が徐々に変形していってしまう恐れがあった。また、特に柔軟な光伝送体を使用した場合、2つのリング部の中心軸が一致するに至らないことになり、光伝送体が屈曲した状態で保持されることとなる。光伝送体は、コア部とクラッド部の境界部で全反射を繰り返すことによって光を伝送するものであるため、屈曲部では全反射をせずに漏れてしまう光が増加することになる。したがって、保持部材内で屈曲されるということは、光の損失の点で非常に不利なものとなる。
【0006】
また、一般的な保持部材として、内面に突起を形成し、この突起を光伝送体に食い込ませることによって光伝送体を保持する構造のものも知られている。しかし、このような保持部材は、突起の食い込みによって光伝送体に傷を付けてしまい、その傷によって光が漏れてしまうこととなる。一方で、このような突起の食い込みによる光伝送体の傷を避けるため、先端を平坦にして集中荷重が加わらないようにした突起で光伝送体を押圧し固定保持するものも知られている。しかしながら、これらのようなものは、冷熱サイクルにより光伝送体が膨張・収縮変形した際、突起の押圧はこの変形に追従しないため、充分な押圧を加えることができなくなり、光伝送体が抜けてしまうことがあった。
【0007】
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、特に、簡単な作業で光伝送体の固定保持が可能であるとともに、光の損失を最小限とした状態で、確実に光伝送体が固定保持される光伝送体の保持構造及び照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく、本発明による光伝送体の保持構造は、線状の光伝送体と、該光伝送体が嵌入される保持部材とからなる光伝送体保持構造であって、上記保持部材が、内面に弾性体からなる突片を有し、上記光伝送体を上記保持部材に嵌入することにより、上記突片が嵌入方向に傾倒することを特徴とするものである。
又、上記突片が、内周に放射状の切込みが形成された環状板からなることが考えられる。又、上記突片が、上記保持部材の内壁に一体的に形成されていることが考えられる。
本発明による照明装置は、上記の光伝送体の保持構造を有する照明装置であって、上記光伝送体における上記保持部材に嵌入される側の端部に配置された光源を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、突片が光伝送体の嵌入方向に傾倒することによって、突片がカエシとして機能するため、光伝送体が抜けることなく、確実に固定保持されることになる。この際、突片の光伝送体への食い込みは最小限に抑えられ、また、光伝送体が屈曲を受けることもないため、光の損失は最小限のものとなる。また、光伝送体の固定保持の作業は、光伝送体を保持部材へ嵌入するのみであり、非常に簡単な作業で固定保持をすることができる。また、突片の弾性により、継続的に光伝送体に押圧が加わって固定保持されることから、例えば、冷熱サイクルを受けた場合にも、光伝送体の熱膨張・収縮に対して突片が追従して押圧するため、光伝送体が抜けてしまうことなく、確実に固定保持されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による保持部材を示す斜視図である。
【図2】第一の実施の形態による保持部材を示す断面図である。
【図3】第一の実施の形態による照明装置を示す断面図である。
【図4】第一の実施の形態における突片を示す斜視図である。
【図5】第二の実施の形態による保持部材を示す断面図である。
【図6】第二の実施の形態による照明装置を示す断面図である。
【図7】他の実施の形態における突片を示す斜視図である。
【図8】他の実施の形態における突片を示す斜視図である。
【図9】他の実施の形態における突片を示す斜視図である。
【図10】比較の形態における突片を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を使用して本発明の第一の実施の形態を説明する。本実施の形態における保持部材1は、図1及び2に示すように、略円筒体の形状であり、一端に光伝送体2を嵌入するための開口部が設けられる。保持部材1の内面には、溝が形成されており、この溝に、図4に示すような、内周に放射状の切込みが形成された環状板が配置され、この環状板が突片1aとして機能することになる。この突片1aとしての環状板は、最小内径8.5mmのものを使用した。このような環状板の他の態様としては、例えば、図7,8に示すようなものも考えられる。保持部材1における突片1aの奥部側には、空間部1bが形成されており、突片1aは、この空間部1bに傾倒することになる。この空間部1bが突片1aを適度に収納できるものでないと、突片1aの傾倒が充分になされず、光伝送体2に突片1aが必要以上に食い込むことになり、光伝送体2に傷が付いてしまうことになる。
【0012】
また、保持部材1開口部の奥部には、光源3としてLED基板が配置され、この光源3のリード線3aは、保持部材1における光伝送体を嵌入するための開口部と反対側の端より導出されることとなる。このリード線3aの導出のために、保持部材1には孔が形成されているが、リード線3aに加わる引張力が光源に加わらないように、この孔は屈曲したものとなっている。
【0013】
一方、光伝送体2としては、種々のものが使用できるが、本実施の形態では、フッ素樹脂からなるクラッド材と、該クラッド材よりも屈折率の高い透明エラストマーからなるコア材とからなるものを使用した。このコア材には微粒子が分散されており、この微粒子によって入射した光が散乱し、光伝送体の側面より光が出射することとなる。この光伝送体2の直径は、10mmとした。
【0014】
この光伝送体2を、保持部材1の開口部から嵌入した状態を図3に示す。光伝送体2の嵌入により、突片1aは内径を拡径しながら奥部方向に傾倒し、光伝送体2を固定保持することとなる。また、光伝送体2の端部は、光源3に近接して固定される。
【0015】
このようにして得られた照明装置について、光伝送体2の引抜強度の測定、光量の測定を行った。引抜強度の測定は、光伝送体2を長さ200mmに切断し、この光伝送体2の端部にプッシュプルゲージ(バネばかり)を接続し、光伝送体2の長手方向に引張ることによって行った。49Nの荷重で引抜けなかったものを合格、49Nの荷重で引抜けたり光伝送体2の位置にずれが生じたりしたものを不合格とした。光量の測定は、光伝送体2を長さ200mmに切断し、端面からの出射光量を光量計にて測定した。また、この照明装置について、耐熱性、耐寒性、耐振動性、耐ヒートショック性についても確認した。耐熱性は、照明装置を80℃の雰囲気中に240時間放置し、その後に上記同様に引抜強度と光量の測定を行った。耐寒性は、照明装置を−30℃の雰囲気中に240時間放置し、その後に上記同様に引抜強度と光量の測定を行った。耐振動性は、照明装置に振動周波数5〜400Hz、掃引時間10分、最大振幅0.4mm、加速度5Gで4時間の振動を加えた後、上記同様に引抜強度と光量の測定を行った。耐ヒートショック性は、照明装置に−30℃で5分、80℃で5分のヒートショックを10回繰り返した後、上記同様に引抜強度と光量の測定を行った。また、比較の形態として、突片1aを形成する環状板として、図10に示すようなものを使用したものについて、上記実施の形態と同様に各種の測定を行った。なお、比較の形態で使用した環状板は、最小内径が9.2mmのもので、弾性変形しない剛性体のものである。これらの結果はまとめて表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
表1に示すように、本実施の形態による照明装置は、充分な引抜強度を有しており、冷熱サイクル後にも引抜強度の低下はなかった。また、光量についても充分なものであり、ヒートショック後にも光量の低下はなかった。また、耐熱性、耐寒性及び耐振動性についても充分なものであった。一方、比較の形態による照明装置は、初期の引抜強度こそ十分なものであったが、ヒートショック後には明らかに引抜強度が低下し、12.7Nの荷重で引抜かれてしまった。これはヒートショックにおける光伝送体の膨張、収縮に剛性体である環状体が追従できず、繰り返しの加熱、冷却によって伝送体と環状体の間に歪が発生し、双方の密着力が落ちたためであると考えられる。また、比較の形態ではヒートショック後に光量も低下しているが、これも同様の理由で光伝送体2の端面と光源3の間隔が初期状態よりも開いてしまったことにより光量が低下したと考えられる。
【0018】
次いで、本発明の第二の実施の形態について説明する。本実施の形態は、上記第一の実施の形態において、突片1aの形態を変更したものである。図5に示すように、突片1aは、固定部材1の開口部内壁に一体的に形成されている。突片1aの個数は4とし、対向する突片1a間の距離は8.5mmとした。
【0019】
このような保持部材1について、開口部から光伝送体2を嵌入した状態を図6に示す。光伝送体2の嵌入により、突片1aは奥部方向に傾倒し、光伝送体2を固定保持することとなる。また、光伝送体2の端部は、光源3に近接して固定される。
【0020】
上記第一、第二の実施の形態のように、突片1aが光伝送体2の嵌入方向に傾倒することによって、突片1aがカエシとして機能するため、光伝送体2が抜けることなく、確実に固定保持されることになる。この際、突片1aの光伝送体2への食い込みは最小限に抑えられ、また、光伝送体2が屈曲を受けることもないため、光の損失は最小限のものとなる。また、光伝送体2の固定保持の作業は、光伝送体2を保持部材1へ嵌入するのみであり、非常に簡単な作業で固定保持をすることができる。
【0021】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、保持部材1の外観形状は、略円筒体に限られず、様々な形状が考えられ、照明装置としての配置箇所や用途によって、種々設計すればよい。保持部材1の成形にあたっては、全体を一体的に形成しても良いし、複数部分に分割して形成し、それらを組立てるものであっても良い。突片1aの形状についても、光伝送体2の嵌入により嵌入方向に傾倒するものであれば限定されず、突片1aの個数についても、状況に応じて適宜設計すればよい。
【0022】
また、保持部材1や突片1aの材質についても、適宜設計すればよい。保持部材1としては、例えば、セラミックス、鉄系合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、真鍮、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリ塩化ビニリデンなど、注型加工、射出加工、切削加工、塑性加工が可能なものであればなんでも良い。但し、突片1aは弾性変形するよう構成することが必要である。また、特に、上記第二の実施の形態のように、突片1aが一体的に形成されている場合は、保持部材1全体として弾性変形する材料を使用することが必要となる。
【0023】
具体的な突片1aの態様として、例えば、例えば、図7や図8に示すような部材を保持部材の突片1aとして使用することも考えられる。このような場合、突片1aの材料として、上記した各種の金属材料、合成樹脂材料や、ゴム材料、熱可塑性エラストマーなどの弾性変形する材料が使用可能である。また、突片1aの材料として、ゴム材料や熱可塑性エラストマー材料などの伸縮性に優れたものを使用する場合は、図9に示すような、光伝送体の外径よりも若干小さい径の孔が形成された板材を突片1aとすることも可能である。この図9のような突片1aであれば、外部からの水の浸入が突片1aで遮断されるため、光源3が水濡れにより損傷することを防止できる。
【0024】
また、光伝送体2の材料についても、使用用途や使用環境等により適宜設計すればよい。光伝送体2としては、クラッド材と、このクラッド材よりも屈折率の高い材料からなるコア材から構成されたものが、光伝送特性に優れ好ましい。この場合、クラッド材の材料として、耐薬品性が高く、充分な強度を有するフッ素樹脂を使用することが好ましい。クラッド材の材料としてフッ素樹脂を使用すれば、突片1aの材料として硬いものを使用しても、光伝送体2が傷付きにくくなる。また、光伝送体2のクラッド材の外周に、保護被覆を形成することも考えられる。この保護被覆も充分な強度を有する材料であり、透明な材料であることが好ましい。また、この保護被覆について、円筒形状以外の、例えば、断面四角形状や断面三角形状、或いは、他部材に固定するための突起を有する形状等、種々の形状にすることも考えられる。また、光源3についても、LEDの他、使用用途、使用環境、必要な光量、発光色等に応じて適宜選定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上説明したとおり、本発明による光伝送体の保持構造は、簡単な作業で光伝送体の固定保持が可能であるとともに、光の損失を最小限とした状態で、確実に光伝送体が固定保持されるものである。この光伝送体の保持構造を有する照明装置は、例えば、携帯電話・デジタルカメラ・腕時計・カーオーディオ・カーナビゲーション・パチンコ台・スロット台・自動販売機・車両室内外・犬の首輪・キッチン・交通標識・洗面台・シャワー・浴槽の湯温表示機・OA機器・家庭用電気製品・光学機器・各種建材・階段・手すり・電車のホーム・屋外看板等のイルミネーションや照明、液晶表示部のバックライト等の照明用として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 保持部材
1a 突片
2 光伝送体
3 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の光伝送体と、該光伝送体が嵌入される保持部材とからなる光伝送体保持構造であって、
上記保持部材が、内面に弾性体からなる突片を有し、上記光伝送体を上記保持部材に嵌入することにより、上記突片が嵌入方向に傾倒することを特徴とする光伝送体の保持構造。
【請求項2】
上記突片が、内周に放射状の切込みが形成された環状板からなることを特徴とする請求項1記載の光伝送体の保持構造。
【請求項3】
上記突片が、上記保持部材の内壁に一体的に形成されていることを特徴とする請求項1記載の光伝送体の保持構造。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の光伝送体の保持構造を有する照明装置であって、上記光伝送体における上記保持部材に嵌入される側の端部に配置された光源を備えた照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−83350(P2013−83350A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−189625(P2012−189625)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【出願人】(000129529)株式会社クラベ (125)
【Fターム(参考)】