説明

光伝送判別器およびこれが適用された光伝送体

【課題】 従来の光伝送判別器は、心線対照器と比較し、光の検出効率が大幅に向上するものの、光ファイバ心線、光ファイバコード、光ファイバケーブル等へ適用した場合、不安定な測定値、伝送損失の増加、断線の発生、長期信頼性の低下等が生じ易い。
【解決手段】 光ファイバ素線11aの状態にされた光コード11の被覆除去部分は、光漏洩部品10と光伝送路とは別個の光検出器30との嵌合時の湾曲形状に従った長さと所定の余長を持って光ファイバ固定部15間に遊動自在に保持され、光漏洩部品10によって光伝送路中に保持される。同光ファイバ素線11aは、上記嵌合時に、光伝送路湾曲部を形成し、安定的に保持される。同光伝送路湾曲部からは光伝送路を伝搬する光信号が漏洩し、光検出器30の受光素子59によって計測され、伝送状態を判別する。また、曲げに強い光ファイバコード用の心線対照器や簡易な伝送強度測定器や光伝送監視モニターとして使用可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信、LAN(ローカルエリアネットワーク)、光配線等に用いられる光伝送路において、光伝送路を光信号が伝搬しているか、伝搬する光信号が正常か、強度が安定しているか等の活線状態や、光伝送路の接続が正常か、断線していないか等の接続状態を判別するためや、光伝送路の心線対照等に用いられ、光伝送路の信号光強度を簡易に測定する伝送光強度モニターに用いられ、更に、これらの機能を中長期的に維持し、光伝送路の伝送状態の変化を中長期的に監視する装置のモニター部として用いられる光伝送判別器、およびこの光伝送判別器が適用された光ファイバ心線、光ファイバコード、光ファイバケーブル等の光伝送体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光伝送路の配線換え等の光線路工事の際に光伝送路の接続状態や活線状態等の伝送状態を判別する光伝送判別器の重要性が指摘されて来たが、充分な性能を有する機器は広く普及しておらず、例えば、特許文献1や特許文献2等に開示された「心線対照器(IDテスタ)」がその代用品として流用されて来た。「心線対照器」は、心線対照用光源と心線対照用光検出器とから成り、心線対照用光源を用いて局舎等の開放端から判別光を光伝送路に挿入し、心線対照用光検出器を用いて、光伝送路を構成する光ファイバコード等を湾曲させることで光信号の一部を光ファイバから漏洩させ、その漏洩光を検出することにより、各光伝送路を識別する装置であり、光伝送路敷設時の導通試験等に用いられる。この「心線対照器」は、測定時のみ光伝送媒体(光ファイバ)に湾曲部を生じさせればよいので、光伝送路を対照していない時間は光伝送損失が増加する要因が無いという特徴がある。
【0003】
この心線対照用光検出器を用いて、光伝送路の接続状態や活線状態等の伝送状態を判別する場合は、局舎等で伝送路を抜き差しすることなく、心線対照用光源を用いず、光伝送路の接続を保持したまま、現用の光信号により判別することになる。また、現用の光伝送路の伝送状態を判別する場合、伝送状態判別器により現用光の伝送を阻害し、通信障害を生じてはならないため、例えば1dB以上の挿入損失が発生することがないことが、測定上の必須条件となる。
【0004】
しかし、特許文献1や特許文献2等に開示された上記従来の「心線対照器」は、光ファイバの湾曲により生じる漏洩光が、光ファイバコード、ケーブル類の多層の被覆層を通り、吸収と散乱を伴い乍ら広範囲に拡散するため、光の検出効率が大幅に低下するという欠点を有している。
【0005】
また、湾曲による光損失の増加は光信号の波長に大きく依存しており、短波長の光信号の検出では、光伝送路を形成する光ファイバを大きく湾曲させる必要がある。従って、短波長と長波長の光信号が同時に伝送している場合には、長波長側の挿入損失を抑えるため、光ファイバの湾曲半径を一定以上に保持することが必要になるが、この状態では短波長での挿入損失が更に低く抑えられるため、漏洩光の光強度が検出限界以下になる可能性が生じる。逆に、短波長での漏洩光強度を確保するために光ファイバの湾曲半径を小さくした場合には、長波長では更に大きな挿入損失が生じるため、長波長の信号伝送に障害を生じる可能性が大きくなるという欠点を有している。
【0006】
心線対照では、使用中の光伝送路(活線)が測定対象でなく、使用していない光伝送路を測定対象とするため、この場合の挿入損失の多少の増加は問題とならない。従って、心線対照用光検出器を用いて現用光を検知する場合、現用光を取り出すための光損失が大きく、光損失マージン(損失の余裕)を多く確保できない光伝送路においては適用ができないという欠点を有していた。心線対照では対照する心線対照光の光強度として、現用信号光の最低強度より大幅に大きい強度を確保できるため、心線対照器に於ける光損失が大きい場合も問題とならない。
【0007】
また、長波長の信号を検出する場合と短波長の信号を検出する場合とで湾曲条件を大幅に変える方法も考えられるが、短波長の光信号の有無を検出するためには、その前に長波長の光信号を確認する必要が生じ、逆に、長波長の光信号が検出されない場合も、短波長の光信号の有無も確認する必要が生じる。結果として、何れの場合も作業量が大幅に増えるため、本方法は実用性に乏しく、実際に実用には供されていない。
【0008】
また、従来、上記の「心線対照器」の他に、特許文献3および非特許文献1などに開示されたような、光ファイバを湾曲させず、光ファイバ心線の接続部からの漏洩光を検出して、心線対照を行う装置がある。
【0009】
しかし、特許文献3に開示された上記従来の心線対照を行う装置は、検出される光信号の強度が非常に小さいため漏洩光を検出する際に太陽光その他の自然界のノイズの影響を受け易く、これを改善するため、光伝送路に特定の周波数で変調された変調光を挿入し、融着接続部から漏洩した変調光の一部を検出する。従って、特許文献3に開示された従来の心線対照を行う装置は、現用の光信号が光伝送路媒体を伝搬しているか否かを判別する場合に、太陽光その他の自然界のノイズの影響を受けやすく、確実に判別することが原理的に難しいという欠点を有していた。また、非特許文献1に開示された簡易なインライン光パワーモニタを予め光伝送路中に設置し、現用光の判別に使用することも考えられるが、この装置は光伝送路当たりの単価が高価なため、一般に普及していない。
【0010】
以上説明したように、光ファイバ心線を湾曲させて漏洩光を検出する上記従来の湾曲法は、その適用範囲に欠点を有しているが、この欠点が克服されれば、現用光伝送判別装置の適用範囲の拡大が期待される。
【0011】
以上の欠点を克服した方法が、特許文献4,5,6および非特許文献2,3に開示されている。
【0012】
特許文献4と非特許文献2には、光成端トレイ等の光素線部に光漏洩部品を設置することにより、配線された光ファイバを取り出すこと無く、伝送判別を可能とする技術が開示されている。特許文献5には、同様な構成を光アダプタや光コードに適用した技術として、設置された光漏洩部品で光素線部を湾曲させることにより、漏洩光の検出効率を大幅に改善した技術が開示されている。更に特許文献6と非特許文献3には、これらの技術を拡張して、光漏洩部品には光漏洩曲面を設定し、光検出器に光伝送路押えを設定することにより、小型化と低価格化を実現し、光成端トレイ、光アダプタ、光装置等に適用した技術が公開されている。
【0013】
また、特許文献7には、これに類似した技術が開示されており、光ファイバコネクタ内部で測定時に光ファイバを撓ませ、その曲げ損失で活線判別や心線対照が行われる。しかし、本方法は、測定時の曲げ形状を積極的に制御しておらず、受光素子の相対位置も最適に設定されないため、心線対照器と比較しても、損失増加に対する光検出強度の効率が大きく劣り、測定値が不安定である等の欠点を有しており、実用性が低い。
【0014】
これら状況から、特許文献4,5,6に開示された技術が、活線判別等の光伝送路を伝送する光信号の状態を判別する光伝送判別器として、最も実用性を有する技術の1つであると判断される。
【0015】
しかし、特許文献4(非特許文献2)および特許文献6(非特許文献3)に開示されているのは、光成端トレイや光成端ユニット、光成端装置の構造であり、基本的にはトレイ状の光ファイバ収納部内に適用した技術であり、光コード類への適用技術は開示されていない。特許文献5にはこれらと同様な技術を光アダプタや光コード類に適用する構成が開示されているが、基本構成が特許文献4と同様であり、これらに適用するための構造の最適化が成されていないため、この技術を光コード類に適用した場合、嵌合構造が安定せず、測定中に湾曲形状が安定しないため、測定値の再現性に乏しく、安定性にも劣っていた。また、使用中に光ファイバに曲げ応力や伸張応力がかかり、それが伝送損失の増加や断線の原因となり易く、長期信頼性に劣っていた。これらの欠点により、実用性と商品性に乏しかった。
【0016】
また、これまでの提案では嵌合構造が安定していなかったことからも推察されるが、これらの技術を配線切り替えをすることなく光伝送路の信号光強度を簡易に測定する伝送光強度の簡易測定器に応用した例や実使用中の光伝送路の健全性を判断することを目的とし、光伝送路を伝送する光信号の変化を監視する中長期光モニターとして応用した例はこれまで無かった。
【0017】
また、近年のFTTH(ファイバ・トゥー・ザ・ホーム)等の発展により、各家庭や事務所等の公衆回線の末端にまで多くの光ファイバが施設されるようになってきており、従来の電線と同等に使い易い光ファイバの使用が広く望まれている。
【0018】
この様な市場の要求に対応して、取扱い性を向上させた曲げに強い光ファイバコードの導入が進んでいる。この様な光ファイバコードでは従来の光ファイバより曲げ特性に優れた光ファイバが用いられている。
【0019】
従来の光ファイバはITU−T G.652勧告(非特許文献4)に準拠した光ファイバが標準的な光ファイバとなっており、その規格として最小許容曲げ半径は30mmであった。そこで近年はITU−T G.657.A1勧告(非特許文献5)に準拠する、最小許容曲げ半径の規格値が10mmの曲げに強い光ファイバの導入が進んでいる。また更に今後は、ITU−T G.657.B3勧告(非特許文献5)に準拠した最小許容曲げ半径規格値が5mmの光ファイバが開発され、その光ファイバを用いた光ファイバコードの本格導入が望まれているのが現状である。
【0020】
処が、従来の心線対照器は既に説明したように、光ファイバの湾曲により生じる漏洩光が、光ファイバコード、ケーブル類の多層の被覆層を通り、吸収と散乱を伴い乍ら広範囲に拡散するため、光の検出効率が大幅に低下するという欠点を有しており、更に湾曲による光損失の増加は光信号の波長に大きく依存しているという欠点を有していた。
【0021】
この様な従来の心線対照器は、従来の標準光ファイバとしてITU−T G.652勧告に準拠した光ファイバを用いた光コード用に開発されたものであり、様々な欠点は有するものの、簡便に心線対照が可能になるため広く使用されて来た。
【0022】
この従来の心線対照器は上記の曲げに強い光ファイバコードへ適用することを目的として改良され、構造を最適化することによりITU−T G.657.A1勧告に準拠する光ファイバを用いた光ファイバ心線へ適用することは可能になった。(非特許文献6)
【0023】
しかし、更にITU−T G.657.B3勧告に準拠する光ファイバを用いた光ファイバコードへ適用する改良を試みた処、光ファイバ素線のみであれば対照可能であるが、光ファイバコードでは光信号の検出効率が非常に悪いため、検出限界は対照光強度や対照光の伝送距離や光ファイバコードの種類等に依存しており、確実性に乏しいと判断される。これは従来の心線対照器には原理的に適用限界があるためと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開平6−221958号公報
【特許文献2】特開2004−325310号公報
【特許文献3】特開2005−94720号公報
【特許文献4】特開2007−85934号公報
【特許文献5】特開2009−257833号公報
【特許文献6】特開2009−257834号公報
【特許文献7】特開2008−33195号公報
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】モハンマド・サード・カーン、浅田真一郎、高橋健、横山純、「インライン光パワーモニタ」、2004年 電子情報通信学会 エレクトロニクスソサイエティ大会、C-3-23 p155.
【非特許文献2】岩崎、櫻庭、間渕、竹内、「分離型心線状態判別器の提案」、2006年 電子情報通信学会 総合大会 B-10-2
【非特許文献3】岩崎、櫻庭、間渕、竹内、「分離型心線状態判別器の実用性評価」、2008年 電子情報通信学会 総合大会 B-10-1
【非特許文献4】ITU−T G.652勧告
【非特許文献5】ITU−T G.657勧告
【非特許文献6】フジクラ技法 第117号 2009 Vol.2 p.16.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
非特許文献2および3から明らかなように、特許文献4〜6の技術の内で、具体的な構造が開示されているのは、光ファイバ心線を用いて、クロージャ内の配線用トレイに応用した場合に限定されていた。
【0027】
従って、光ファイバ心線、光ファイバコード、光ファイバケーブル等へ特許文献4〜6の配線用トレイ向け技術を適用した場合には、不安定な測定値、伝送損失の増加、断線の発生、長期信頼性の低下等が生じ易いという欠点を有していた。
【0028】
我々は特許文献4〜6に開示された技術を光ファイバ心線、光ファイバコード、光ファイバケーブル等に適用し、これらの欠点を実験的に明確にし、実用に供するための要件を立証し、本発明を考案するに至った。
【0029】
また、非測定時の伝送損失増加の原因となる比較的に高価な光部品を予め装着することなく、配線切り替えなしに光伝送路の信号光強度を簡易に測定する伝送光強度モニターや、実使用中の光伝送路を伝送する光信号の変化を監視する中長期光モニターはこれまでなかった。
【0030】
また、従来の心線対照器はITU−T G.657.B3勧告に準拠する光ファイバを用いた光ファイバコードへ適用した場合、確実性に乏しいという欠点を有しており、新しい原理に基づいた心線対照器の出現が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
光伝送路中に設置され、光ファイバ素線または光ファイバ心線のいずれか一方の状態にされた光伝送路の被覆除去部を保持する光漏洩部品と、前記光伝送路とは別個の、測定時に光漏洩部品を収納して保持し、その一部と互いに嵌合し、その嵌合状態を安定的に保持する保持構造を具備した光検出器とを備え、
光検出器は、嵌合時のみに光漏洩部品中の被覆除去部の一部を湾曲させることにより形成される光伝送路湾曲部から漏洩する伝送光信号を計測する受光素子を有し、
光漏洩部品および光検出器のいずれか一方に設けられた、嵌合時に光伝送路湾曲部の湾曲形状を形成する湾曲形成部と、
光漏洩部品および光検出器のいずれか一方に設けられた、嵌合時に光伝送路湾曲部を湾曲形成部に押さえ付け、湾曲形成部の湾曲形状に沿って湾曲させる光ファイバ押さえを備え、
被覆除去部は、両端部が光漏洩部品の長さ方向の両側に構成された一対の光ファイバ固定部に固定されて、一対の光ファイバ固定部間に所定の余長を持って所定の長さで遊動自在に保持され、
光漏洩部品は、湾曲形成部によって形成される光伝送路湾曲部に相当する箇所とその両側の光ファイバ固定部との間に、被覆除去部を光伝送路湾曲部から光ファイバ固定部に導く光ファイバ処理領域を備えていることを特徴とする、光伝送路中を伝搬する光信号の伝送状態を判別する光伝送判別器を構成した。
【0032】
この構成によれば、光ファイバ素線または光ファイバ心線のいずれか一方の状態にされた光伝送路の被覆除去部は、光漏洩部品によって光伝送路中に保持される。光漏洩部品によって保持された被覆除去部は、光信号の伝送状態判別時、光ファイバ押さえによって湾曲形成部に押さえ付けられることで、湾曲形成部の湾曲形状に沿って湾曲させられ、伝送路湾曲部を形成する。この伝送路湾曲部からは光伝送路を伝搬する光信号が漏洩し、漏洩した光信号は、光伝送路とは別個の光検出器に備えられた受光素子によって計測される。
【0033】
このため、漏洩光の計測は、光ファイバ素線または光ファイバ心線のいずれか一方の状態にされた光伝送路の被覆除去部から漏洩する光信号に対して行われるため、特許文献1や特許文献2等に開示された従来の心線対照用光検出器を単に用いた場合より、光検出効率を大幅に向上させ、かつ安定させることが可能となる。
【0034】
また、光漏洩部品における光伝送路の被覆除去部は、一対の光ファイバ固定部間に所定の予長を持った開放状態で遊動自在に両端が固定され、光伝送路湾曲部が湾曲形成部によって形成される箇所とその両側の光ファイバ固定部との間に光ファイバ処理領域を備えることにより、伝送状態判別時に、被覆除去部で不要な伸張応力、圧縮応力や、局所的な屈曲を生じない状態が安定して確保される。また、伝送状態非判別時における被覆除去部の湾曲半径を一定以上に大きく確保することが可能となり、非判別時の湾曲に依存する光損失増加の発生を安定的に防止することが可能となり、局所的な屈曲を生じない状態が安定して確保される。
【0035】
通常、光ファイバコネクタの内部では光ファイバ素線は固定されていない。これは、光ファイバコネクタの接続時と開放時との光ファイバコネクタ内でのフェルールの位置の僅かな違いにより、光ファイバ心線に圧縮歪みが加わり、局所的な屈曲を生じて、光損失の増加の要因となることを避けるためである。当初の本発明による光漏洩部品では、光ファイバコネクタと同様にその内部で光ファイバ素線を固定せずに試作を行ったが、この場合には測定の繰り返しにより予長が変化し、返って光ファイバ素線の屈曲の要因となることが判明した。そこで、光漏洩部品内部の両側の光ファイバ固定部で、光ファイバ素線の固定を試みた処、光ファイバ素線の屈曲の発生が根本的に抑制された。これにより本発明の光伝送判別器の新規な構成の提案に至った。
【0036】
この結果、特許文献4〜6に開示された技術を光ファイバ心線、光ファイバコード、光ファイバケーブル等に適用するための、光ファイバ心線、光ファイバコード、光ファイバケーブル等の詳細な新規な保持構造、光伝送状態判別時のみに漏洩光を発生させ、非判別時には光損失増加を発生させないための新規な構造、検出光が安定するために光検出器に要求される新規な構造、および、長期信頼性に優れた構造を備えた光伝送判別器が提供されることとなる。
【0037】
従って、従来の欠点である、測定値の再現性に乏しく、安定性にも劣っていた特性が改善される。また、伸張応力、屈曲等による伝送損失の増加や断線が克服され、長期信頼性にも優れる。
【0038】
また、本発明は、湾曲形成部が光漏洩部品に備えられ、光ファイバ押さえが光検出器に備えられていることを特徴とする。
【0039】
この構成によれば、湾曲形成部が光漏洩部品に備えられることで、光伝送路の被覆除去部は湾曲形成部と共に光漏洩部品に安定して保持される。このため、伝送状態判別時に、光伝送路湾曲部を湾曲形成部に沿って安定的に湾曲させることが可能となり、挿入損失特性や光信号受信効率を再現性良く、安定化することが可能となる。また、光ファイバ押さえが光検出器に備えられていることで、光伝送判別器の小型化、低価格化が可能になると共に、操作性に優れた光伝送判別器の提供が可能となる。
【0040】
また、本発明は、湾曲形成部および光ファイバ押さえが光検出器に備えられていることを特徴とする。
【0041】
この構成によれば、光漏洩部品によって保持された被覆除去部は、光信号の伝送状態判別時、光検出器に備えられた光ファイバ押さえにより、同じく光検出器に備えられた湾曲形成部に押さえ付けられることで、湾曲形成部の湾曲形状に沿って湾曲させられる。そして、湾曲した被覆除去部分から漏洩した光信号が、光伝送判別に供される。
【0042】
このように湾曲形成部および光ファイバ押さえが共に光検出器に備えられることで、光伝送システムの光伝送路中に設置される光漏洩部品の構造が単純になり、精密な加工精度が必要とされなくなる。このため、光伝送判別器の性能を維持したまま、更なる低価格化が可能となる。また、光伝送路中に光伝送路の被覆除去部を保持する光漏洩部品を予め設けておくことで、既に光伝送システムに設置されている光漏洩部品を交換することなく、光検出器に備えられた湾曲形成部を交換することにより、湾曲形成部が有する湾曲形状を変更し、光伝送判別器の挿入損失や光信号受信効率等を適宜変更することが可能となる。また、光伝送判別器を光伝送路の中長期的な安定性を監視する光モニターに適用する場合、異なる要求仕様に柔軟に対応することが可能となる。
【0043】
また、本発明では、被覆除去部は、長さが光漏洩部品と光検出器との嵌合時の湾曲形状により決定される長さに設定され、それにより決定される余長を持って光ファイバ固定部間に遊動自在に保持されることを特徴とする。
【0044】
この構成によれば、被覆除去部の予長が最適値に設定されるため、被覆除去部が光ファイバ固定部間に遊動自在に適切に保持固定されることにより、伝送状態判別時に被覆除去部に伸張応力や圧縮応力が生じないことが基本的に保証される。また、余長が必要最小限の長さに決定されるため、伝送状態非判別時に曲げ等により生じる損失の発生が効果的に抑制される。
【0045】
また、本発明は、湾曲形成部の曲率半径が1.5mm以上で、かつ5.5mm以下であることを特徴とする。
【0046】
この構成によれば、測定時に湾曲により伝送路湾曲部に物理的なダメージを与えることなく、伝送路湾曲部で生じる挿入損失の波長依存性を最小限に抑えることが可能となり、例えば波長1.55μmでの挿入損失を0.5dB以下に抑えながら、同時に波長1.31μmでの信号光強度の検出限界を−40dB以下にすることが可能となる。
【0047】
図1は本発明に至った調査結果の1つで、光ファイバ素線を一定の曲率半径で湾曲させた場合の、波長1.55μmでの曲げ損失を基準として、波長1.31μmでの相対的な曲げ損失の曲率半径依存性を測定した実験結果である。全般に波長1.31μmでの曲げ損失は波長1.55μmでの値に比し大幅に小さく、曲率半径が小さい方が波長1.31μmでの挿入損失が波長1.55μmでの挿入損失により近い値を示している。
【0048】
ここで、波長1.55μmでの挿入損失の光伝送に異常を生じない上限値を0.5dBと仮定し、光強度−40dBmの光伝送を高感度受光素子を用いて−80dBmまで光強度を検出できるとした場合、検出効率の最も良い値は−14dB程度なので、必要となる波長1.31μmでの曲げ損失の最低値は0.01dB程度となる。この値を用いて、図1の調査結果から類推すれば、湾曲による曲率半径は5.5mm以下である必要があると判断される。また、湾曲部の曲率半径の下限は主に光ファイバ心線に物理的なダメージを与えない範囲で規定され、半径1.5mmがほぼ限界と推定される。
【0049】
通常使用される心線対照器における湾曲の曲率半径は約10mm程度あるので、この結果だけから判断しても、通用の心線対照器を活線の判別に使用する場合は測定限界に制限があり、実用的でないと判断される。
【0050】
また、本発明は、光ファイバ処理領域は、湾曲形成部に連続して形成され、嵌合時に被覆除去部が湾曲形成部の湾曲方向と反対に湾曲される光ファイバ折り返し領域と、光ファイバ折り返し領域と光ファイバ固定部との間に形成され、嵌合時に光ファイバ固定部に保持された被覆除去部を光ファイバ固定部から屈曲することなく直線状に保持し、かつ非嵌合時に被覆除去部が湾曲構造を形成する空間の一部となる、所定の長さの光ファイバ整列領域を備えることを特徴とする。
【0051】
この構成によれば、伝送状態判別時における一対の光ファイバ固定部間の被覆除去部は、湾曲形成部と光ファイバ押さえにより強制的に湾曲形成部の湾曲形状に沿った形状に変形させられ、各光ファイバ整列領域における各被覆除去部は直線状に近い状態で保持される。一方、伝送状態非判別時における一対の光ファイバ固定部間の被覆除去部は、それらの応力から解放され、所定の予長を持った状態で両端が固定されているため、特定の曲率で湾曲したまま保持される。この時の湾曲曲率は、光ファイバ整列領域にある被覆除去部分の寄与により、湾曲形成部や光ファイバ折り返し領域での湾曲曲率より十分に大きな曲率となる。もし、光ファイバ整列領域を設けなかった場合を考えると、被覆除去部が湾曲して保持される特定の曲率半径は、測定時の光伝送路湾曲部の曲率半径と光ファイバ折り返し領域での被覆除去部の曲率半径の中間の値を示すことになる。この曲率半径を大きくし、湾曲状態での被覆除去部の長期信頼性の劣化を防止するためには、光ファイバ整列領域の設定が必要となる。
【0052】
従って、光ファイバ整列領域は、伝送状態非判別時に、光漏洩部品内の被覆除去部が過剰な湾曲を受けて光信号の挿入損失を生じさせることを安定的に防止する効果を発揮する。
【0053】
また、本発明は、嵌合時に光伝送路湾曲部が形成する弧の中心角が、嵌合時のその両側の光ファイバ折り返し領域の被覆除去部が形成する弧の各中心角の和に等しいことを特徴とする。
【0054】
この構成によれば、伝送状態判別時における光漏洩部品内の一対の光ファイバ固定部間で、被覆除去部は、湾曲形成部によって中央に形成させられる光伝送路湾曲部の弧の中心角が、この光伝送路湾曲部の両側に光ファイバ折り返し領域によって等しく形成させられる各湾曲部の弧の各中心角の和に等しくなって、湾曲させられる。このため、伝送状態判別時における光漏洩部品内で、光ファイバ折り返し領域での各湾曲部の両外側の光ファイバ固定部付近における被覆除去部は、一直線上に保持される。従って、伝送状態判別時に、光ファイバ固定部付近で被覆除去部に更に屈曲応力が加わることがなく、光損失の余分な増加や光伝送路の物理的な劣化要因が生じなくなる。
【0055】
また、本発明は、遊動自在に固定された光ファイバ固定部間の被覆除去部の非嵌合時における湾曲曲率が、被覆除去部を形成する光ファイバ素線または光ファイバ心線の長期信頼性に規定された曲率で保持され、光ファイバ整列領域の幅はその曲率から換算され、設定されていることを特徴とする。
【0056】
この構成によれば、非測定時の被覆除去部の長期信頼性が確保される。光伝送路に使用される光ファイバは長期信頼性の観点から常時の保持される場合の曲率半径の最小値が規定されており、例えば、従来からある標準的な単一モード光ファイバ素線の場合で30mm、FTTH等に使用される曲げに強い光ファイバ素線の場合で15mmとなっている。従って、本発明による伝送路判別器の光漏洩部品においても非測定時の被覆除去部はこれらの仕様に従った値を守る必要がある。ただし、これらの値は光ファイバの種類等に依存するので、最小曲率半径はこれらの値に限定されるものではない。
【0057】
また、本発明は、光ファイバ押さえは、湾曲形成部と嵌合する領域に、光信号が通過する所定の光通過部材部または隙間として光ファイバ押え隙間部が形成され、かつ各光ファイバ折り返し領域の少なくとも一部と嵌合する構造を有することを特徴とする。
【0058】
この構成によれば、伝送状態判別時に、被覆除去部は、光ファイバ押さえが各光ファイバ折り返し領域の少なくとも一部と嵌合することで、湾曲形成部によってその湾曲形状に沿って湾曲させられ、設計に沿った光挿入損失を発生させると共に、光信号の一部を光伝送路の外部に放射させる。この際、光ファイバ押さえ部が湾曲形成部と嵌合する領域に、光信号が通過する所定の光通過部材部または隙間として光ファイバ押え隙間部が形成され、光伝送路湾曲部から漏洩する光信号を遮断しないため、湾曲形成部に当接する被覆除去部から光伝送路の外部に放射された光信号は光ファイバ押さえ部に遮られることなく、光検出器の受光素子で効率的に計測される。
【0059】
また、その際、光ファイバ押さえが各光ファイバ折り返し領域の少なくとも一部と嵌合することで、光ファイバ押さえが湾曲形成部と各光ファイバ折り返し領域全体の光ファイバをこれらの形状に沿って変形させることができるので、湾曲形成部以外の領域で光ファイバの伝送損失の増加を防ぎながら、光伝送路湾曲部を形成することができる。従って、光ファイバ押えは必ずしも光伝送路湾曲部を直接押える必要は無いが、少なくとも光ファイバ折り返し領域の一部と嵌合し、光伝送路湾曲部と被覆除去部の光ファイバ折り返し領域の湾曲形状を効率的に形成することが可能となる。
【0060】
また、本発明は、光ファイバ折り返し領域の光ファイバ押さえと嵌合する部分で、被覆除去部に接触する曲面の曲率半径が、湾曲形成部の曲率半径の1.3倍以上であることを特徴とする。
【0061】
この構成によれば、伝送状態判別時における、光ファイバ折り返し領域での被覆除去部の曲げによる光損失の発生を最小限に抑えることが可能となり、光伝送状態への影響を最小限とすることが可能となる。
【0062】
例えば、図2は本発明に至った実験的な調査結果の1つで、単一モード光ファイバ素線を用いて波長1.55μmで測定した曲げ損失の曲率半径依存性を測定した実験結果であり、曲率半径が減少するに伴い曲げ損失が指数的に上昇した。ここで曲げの中心角は一定としている。同図を参照すると、光伝送路湾曲部の湾曲曲率半径を5.5mm、その時に発生する曲げ損失を0.5dBと仮定した場合、光ファイバ折り返し領域での被覆除去部湾曲の曲率半径をその1.3倍の7.15mm以上に設定すれば、光ファイバ折り返し領域の被覆除去部で発生する曲げ損失を0.1dB以下に抑制することが可能となることが判る。相対的に伝送路湾曲部以外の被覆除去部で発生する損失を0.1dB以下に抑えることは、実用上必須であると判断される。
【0063】
また、本発明は、光ファイバ折り返し領域に、湾曲形成部の湾曲方向と反対に湾曲した、湾曲形成部の湾曲に連続する湾曲面を持つ光ファイバ折り返し部が、湾曲形成部の両側に形成され、その光ファイバ折り返し部が嵌合時に光ファイバ押さえと対向して嵌合し、それらの間に被覆除去部の一部を安定的に保持することを特徴とする。
【0064】
この構成によれば、伝送状態判別時における光伝送路の被覆除去部が、光ファイバ折り返し部と光ファイバ押さえとが対抗して嵌合することによって、湾曲形成部で湾曲させられる方向と反対に折り返して湾曲させられ、その形状が安定的に保持されことで、光漏洩部品内での被覆除去部の位置が安定し、光ファイバ固定部間の被覆除去部で局所的に屈曲が発生したりすることを抑えることが可能となり、被覆除去部の湾曲形状が長期的に安定化する。
【0065】
また、本発明は、有効深さが被覆除去部の外径±0.1mm以内で、有効幅が被覆除去部の外径以上でかつ受光素子の受光面の幅以下の溝が、湾曲形成部または光ファイバ押さえまたは光ファイバ折り返し部の少なくとも1箇所に光伝送路の長さ方向に形成されていることを特徴とする。
【0066】
ここで、有効深さとは、溝の断面が矩形の場合は深さそのものを表すが、断面がV字形状のV溝の場合は、V溝が無い部品表面にある場合とV溝に嵌った場合との溝深さ方向における被覆除去部の位置の相違を表す。また、同様に、溝の有効幅は、溝の断面が矩形の場合は溝幅自体を表すが、それ以外の形状の場合は、溝の中で被覆除去部が溝幅方向に移動できる距離から算出される。例えば、V溝の場合、被覆除去部は溝幅方向に移動できないので、有効溝幅は被覆除去部の幅と等しいと考えることになる。
【0067】
この構成によれば、伝送状態判別時における一対の光ファイバ固定部間の被覆除去部は、湾曲形成部または光ファイバ押さえまたは光ファイバ折り返し部の少なくとも1箇所に光伝送路の長さ方向に形成された溝により、被覆除去部の光ファイバに側面から応力が加わることなく、かつ光ファイバと受光素子との間の距離が増加することなく、光伝送路の長さ方向に整列させられる。このため、伝送状態判別時に被覆除去部に形成させられる湾曲部付近での光ファイバの位置を安定させることが可能となり、受光効率が位置的な要因で低下することが防げ、被覆除去部の湾曲部と受光素子との光結合度を安定的に向上させることが可能となる。
【0068】
また、本発明は、前記溝の断面形状が左右対称なV溝を基本とする形状であり、かつその溝内面の少なくとも1部に光反射面が形成されていることを特徴とする。
【0069】
ここで、V溝を基本とする形状とは、基本の形状はV溝であるが、厳密にV溝である必要は無く、例えばV溝の底の部分の形状はある程度自由で平らでも良く、また両端部はなだらかに湾曲していても良いということを示す。
【0070】
この構成によれば、検出部の受光素子に対峙した光ファイバ表面から放射される漏洩光だけでなく、光ファイバ表面から、それに対して垂直な方向に放射される漏洩光が効率よく受光素子に到達するため、光検出効率が大幅に上昇するだけでなく、光検出効率の偏波依存性が大幅に解消され、光ファイバ中を伝送する光信号の偏波状態に依存することなく、再現性と安定性に優れた光検出特性を得ることが可能となる。
【0071】
また、本発明は、嵌合時に湾曲形成部の湾曲形状に沿って湾曲させられた光伝送路湾曲部の表面と、受光素子の受光面との最短距離が2mm以下であることを特徴とする。
【0072】
この構成によれば、伝送状態判別時における、被覆除去部の光伝送路湾曲部と受光素子との間の距離が最小限に抑えられ、被覆除去部の光伝送路湾曲部と受光素子との光結合度を向上させることが可能となる。
【0073】
また、本発明は、光ファイバ押えは、光通過部材部または光ファイバ押え隙間部の光ファイバ折り返し領域側の側面の少なくとも一部に光信号を受光素子側に反射する光反射面が形成されていることを特徴とする。
【0074】
この構成によれば、光ファイバ押さえの光ファイバ折り返し領域側の側面に光反射処理を施さない場合に比し、被覆除去部の光伝送路湾曲部と受光素子との光結合度を数dB以上向上させることが可能となる。
【0075】
光伝送路湾曲部で発生する漏洩光は発散的に光ファイバの外部に放射されるため、受光素子が直接感知する漏洩光の割合は少なく、光結合度が低下する主要因はこの漏洩光の発散である。従って、これを補う手段として光ファイバ押さえの光通過部材部または光ファイバ押え隙間部の光ファイバ折り返し領域側の側面の少なくとも一部に光信号を受光素子側に反射する光反射面が形成されていることは光結合度を向上させるために非常に有効となる。また、光信号光の伝搬方向に依存して、集光に最適な位置は互いに異なるため、受光素子が1つ設置される場合は、この反射手段は更に有効となる。
【0076】
また、本発明は、未操作時に、光漏洩部品と光検出器との嵌合が保持される操作機構を備えることを特徴とする。
【0077】
この構成によれば、操作機構の未操作時に、光漏洩部品と光検出器との嵌合が保持され、操作機構による光ファイバ押さえおよび湾曲形成部に対する作用によって被覆除去部に光伝送路湾曲部が形成・保持され、光伝送路湾曲部に漏洩光が生じさせられて、漏洩光の計測が行われる。
【0078】
このため、光ファイバ押さえおよび湾曲形成部により被覆除去部に光伝送路湾曲部が形成されて行われる伝送状態の判別時には、操作機構が操作されないので、操作に起因して光ファイバ押さえと湾曲形成部との相対位置が変化することはなく、光ファイバ押さえと湾曲形成部との嵌合状態が安定し、漏洩光計測の再現性が向上する。従って、伝送状態判別時における光伝送路の挿入損失および光伝送路湾曲部と受光素子との光結合度が安定し、人的な要因によって生じる漏洩光の計測値の差異を最小限に抑えることが可能となる。また、伝送状態判別時の挿入損失および光信号受信効率が長期的に安定するので、光伝送路中の光信号の中長期的な安定性を測定する光モニターとして、光伝送判別器を使用することが可能となる。
【0079】
また、本発明は、光検出器が、受光素子を含む検出部と、受光素子で計測される光信号の伝送状態判別制御を行う制御回路を含む光検出器本体とに分離されていることを特徴とする。
【0080】
この構成によれば、光検出器が検出部と光検出器本体とに分離され、被覆除去部に形成された光伝送路湾曲部からの漏洩光を検出する受光素子を光検出器本体と別体の検出部に構成することで、検出部の大幅な小型化が可能となり、光伝送状態判別作業の作業性が大幅に向上する。また、光伝送路中の光信号の中長期的な安定性を測定する光モニターとして光伝送判別器が使用された場合、光伝送路近傍で光伝送判別器が占有する空間の体積が大幅に削減され、収納性、保持性に優れる光モニターが提供される。
【0081】
また、本発明は、光検出器は、予め測定された光結合効率から測定値を光伝送路を伝送する信号光強度に換算する機能を有することを特徴とする。
【0082】
この構成によれば、実用性のあるパワーチェッカーとして、光伝送路を伝送する信号光強度を接続替えすることなく簡易的に測定し、その結果を光検出器の表示部に表示することが可能となる。
【0083】
従来、心線対照器等で、光伝送路を伝送する信号光強度を測定することは出来なかった。これは、従来の心線対照器では検出光強度の再現性に乏しく、また安定性に欠けるため、測定結果の妥当性が低かったためである。
【0084】
本発明の技術では、測定対象が光ファイバ素線又は光ファイバ心線に限定されるため、光検出器の検出効率を予め補正することが可能で、その固体差は大幅に軽減される。
【0085】
従って、本発明の技術では、測定の再現性、安定性にも優れるため、測定時に測定波長を選択すれば、光伝送路を伝送する信号光強度を測定することが可能となる。
【0086】
また、検出部が光ファイバの種類(素線又は心線)に依存せず共通の場合には、光ファイバの種類を選択する必要を生じるが、この光ファイバの種類の選択は自動化が可能である。
【0087】
ここで、受光素子の受光効率の固体差、電気回路の固体差等は光検出器の固体差として予め補正され、光検出器の光漏洩部品の嵌合・把持機構の固体差は光検出器の検出効率として補正される。
【0088】
測定精度は光漏洩部品の加工・組立て精度にも大きく依存するが、これらの固体差を実用的に抑制することにより、光伝送路を伝送する信号光強度を接続替えすることなく簡易的に測定するパワーチェッカーとして実用的な性能が得られる。
【0089】
また、測定精度を確保するためには、光漏洩部品を取付ける光伝送路として使用する光ファイバの特性や被覆色を適宜選別・限定することが望ましい。
【0090】
また、本発明は、前記光漏洩部品が、予め測定された光結合効率の光漏洩部品による固体差を補正する補正値を示す識別コードが表記されていることを特徴とする。
【0091】
この構成によれば、光漏洩部品をその光学特性により分類し、表示された光漏洩部品の補正値を示す識別コードを測定時に検出器に入力することにより、光伝送路を伝送する信号光強度の測定精度を更に向上させることが可能となる。
【0092】
この補正値では、使用する光ファイバの特性や被覆色の相違や光漏洩部品の加工・組立て精度に依存する個体差を補正することが可能となる。
【0093】
従って、基本的には使用する光ファイバの特性、被覆色、被覆材料等を測定精度向上のために限定する必要は無くなる。
【0094】
また、本発明は、光検出器が光線路モニター機能を有し、かつ光漏洩部品を把持した状態で中長期的に保持されることを特徴とする。
【0095】
ここで、光線路モニター機能とは、検出値とその検出時を特定する機能、これらのデータを解析する機能、判定基準値を設定することにより検出値の正常・異常を判断する機能のうち少なくとも1つ以上の機能を有し、かつ、これらの結果を保持・記憶する機能、これらの結果を出力する機能のうち少なくとも1つ以上の機能を有することを指す。
【0096】
この構成によれば、本光伝送路判別器を光伝送路の伝送特性の安定性等の健全性を調べることが可能となる。これにより、不測の伝送損失異常や瞬断、使用中の光源の出力安定性等をこれらの事態の発生とほぼ同時に解析することが可能となり、早期対応が可能となる。
【0097】
また、本発明は、光検出器が心線対照機能を有し、かつ光漏洩部品が最小の許容曲げ半径が5mm以下の光ファイバを用いた光ファイバコードに適用されることを特徴とする。
【0098】
ここで、最小の許容曲げ半径が5mm以下の光ファイバとはITU−T G.657.B3勧告に準拠する光ファイバを指す。
【0099】
この構成によれば、光ファイバコードに対して、従来の心線対照器に比し各段に光検出効率に優れるため、従来の心線対照器では困難であったITU−T G.657.B3勧告に準拠する光ファイバなど、曲げに強く、最小の許容曲げ半径が5mm以下の光ファイバを用いた光ファイバコードに対しても心線対照が確実に実施可能となる。更に、検出効率の波長依存性が大幅に抑制されるため、単一モード波長範囲のほぼ全域で低損失心線対照が可能になり、同時に活線判別も可能となるため、心線対照のために誤って現用線を断線させる事故を防ぐことが可能となる。
【0100】
我々は本発明の技術を同光ファイバコードに適用することにより、同光ファイバコードの心線対照が可能となり、優れた特性を示すことを実験的に確認し、本発明に至った。
【0101】
また、本発明は、光伝送路を形成する光伝送体であって、その少なくとも一部に上記に記載のいずれかの光漏洩部品が備えられていることを特徴とする光伝送体を構成した。
【0102】
この構成によれば、光伝送体が光漏洩部品を備えているため、本光伝送体を予め局舎、中継局等の必要な場所に配備することにより、本発明による光伝送判別が可能となる。
【発明の効果】
【0103】
本発明によれば、特許文献4〜6に開示された光伝送判別技術を、伝送損失の増加、断線の発生、再現性に劣る測定値、不安定な測定値、長期信頼性の低下等の要因を排除して、光ファイバ心線、光ファイバコード、光ファイバケーブル等に適用するための具体的な新規構成が開示され、性能と作業性と信頼性に優れた光伝送判別技術を効率的に適用することが可能となる。
【0104】
これにより、光ファイバ心線、光ファイバコード、光ファイバケーブル等の光伝送路において、光伝送路を瞬時的にも遮断することなく光伝送状態を判別することが実用的に可能となる。また、本発明を用いれば、従来から心線対照器を用いて行われていた心線対照に於いても、光伝送路の挿入損失を従来よりも低く安定に抑えたままで、従来よりも高感度に行うことが可能となる。特に、ITU−T G.657.B3勧告に準拠する光ファイバを用いた光ファイバコードに対して低損失で確実に心線対照が可能となる。
【0105】
これらのことより、従来に無い光伝送判別器の導入が可能となる。光伝送状態判別技術の導入コストの低価格化が可能となる。また、光デバイス等を使用することなく、配線切替をすることなく、安価に、簡易に伝送中の信号光強度を測定することが可能となる。更に、光伝送路の中長期的な変化を監視する光モニターとしての適用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明に至った実験的な調査結果の1つを表す図。光ファイバ素線を一定の曲率半径で湾曲させた場合の、波長1.55μmでの曲げ損失を基準として、波長1.31μmでの相対的な曲げ損失の曲率半径依存性を測定した実験結果である。
【図2】本発明に至った実験的な調査結果の1つを表す図。光ファイバ素線を一定の曲率半径で湾曲させた場合の、波長1.55μmでの曲げ損失の曲率半径依存性を測定した結果である。ここで、それぞれの曲げの中心角は一定とした。
【図3】本発明の一実施形態による光伝送判別器を構成する光漏洩部品の外観図である。
【図4】(a)は、図3に示す光漏洩部品をその長さ方向に切断した横断面図、(b)は、スライドキャップを外して光漏洩部品を開いた時に観察される光漏洩部品本体の上面図である。
【図5】光漏洩部品本体内での被覆除去部の湾曲状態を表す図であり、(a)は測定時の状態、(b)は非測定時の状態である。
【図6】本発明の一実施形態による光伝送判別器を構成する光検出器の外観構成図である。
【図7】(a)は、図6に示す光検出器の検出部を構成するレバー付き上ケースをケース面に水平な面で破断した際の検出部の断面図、(b)は検出部の筐体を構成する検出部外ケースおよびレバー付き上ケースをケース面に垂直な面で破断した際の検出部の縦断面図である。
【図8】(a)は、図7に示す検出部の光漏洩部品保持部に光漏洩部品を挿入し、保持させた状態を示す横断面図、(b)は、更にその状態から光漏洩部品の光ファイバ折り返し部と検出部の光ファイバ押さえを嵌合させた状態を示す横断面図、(c)は、光漏洩部品本体の光ファイバ折り返し部と検出部の光ファイバ押さえとの嵌合状態を示す縦断面図である。
【図9】本発明の一実施形態による光伝送判別器を光モニターとして使用した場合に必要となる検出光の安定性を試験した結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
次に、本発明による光伝送判別器を実施するための一形態について説明する。
【0108】
図3は、この一実施形態による光伝送判別器を構成する光漏洩部品10の外観図である。
【0109】
光コード11は、本実施形態による光伝送判別器が適用された光伝送体を構成し、外径2mm、長さ3mの標準単一モード光ファイバの光コードで、両端には図示しないSC型光ファイバコネクタが装着されている。本実施形態による光伝送判別器は、この光伝送路中を伝搬する光信号の伝送状態を判別する。光コード11の少なくとも一部には、光漏洩部品10が備えられている。光漏洩部品10は2段の円柱状をしており、その外形寸法(長さL×直径φ)は約60×φ6[mm]である。光漏洩部品10の中央部にはスライドキャップ12が、その両側にはエンドチューブ13が装着されている。
【0110】
図4(a)は光漏洩部品10をその長さ方向に切断した横断面図である。
【0111】
光漏洩部品10は、光漏洩部品本体14とスライドキャップ12と、両側のエンドチューブ13を備えている。光漏洩部品本体14は、材質がABS樹脂で直方体状をしており、エンドチューブ13が被さる両端部は半円柱状になっている。直方体状をした部分の光漏洩部品本体14および各エンドチューブ13の端部は、中空円筒状をしたスライドキャップ12内に収納した。
【0112】
光漏洩部品10内部の光コード11は切断されることなく内部の光ファイバ素線11aを露出させ被覆除去部を構成しており、その光ファイバ素線11aの両端部は、光コード11のコード外被11bの端部と光コード11内の2次被覆材11cおよび抗張力体11dの露出部分と共に、接着剤で光漏洩部品本体14の光ファイバ固定部15のエンドチューブ13内に接着固定した。
【0113】
被覆除去部である光ファイバ素線11aは、光ファイバ固定部15間において光伝送状態判別時の湾曲構造により決定される長さに設定するため、図示しない治具を用いてその所定の光伝送路長さでかつそれにより決定される所定の予長を持って、光漏洩部品10の長さ方向の両側に構成された一対の光ファイバ固定部15に両端部が固定され、一対の光ファイバ固定部15間に、遊動自在に保持されている。ここで、余長とは、一対の光ファイバ固定部15間に張られた光ファイバ素線11aの長さと、一対の光ファイバ固定部15間の距離との差である。
【0114】
光漏洩部品10の光漏洩部品本体14は、中央部上面に湾曲形成部17が形成されており、その光信号を漏洩させる光ファイバ素線11aの光伝送路湾曲部が湾曲形成部17によって形成される箇所とその両側の光ファイバ固定部15との間には光ファイバ素線11aをその湾曲部分から光ファイバ固定部15に導く光ファイバ処理領域18が備えられている。湾曲形成部17は、光伝送状態判別時に光ファイバ素線11aが伝送路湾曲部を形成する曲率を持った湾曲形状を有している。その横幅は光ファイバ素線11aの外径よりも大きく、その湾曲形成部17の両側面には光ファイバを湾曲形成部17に誘導するための斜面23が斜めに形成されている(図4(b))。また、光ファイバ処理領域18は、湾曲形成部17の両側に光ファイバ素線11aを互いに整列させ、光ファイバ固定部15に固定された光コード11に光ファイバ素線11aをスムーズに導入させるための空間となっている。
【0115】
光ファイバ処理領域18は、光伝送状態判別時に湾曲形成部17によって湾曲した光ファイバ素線11aを両側の光ファイバ固定部15に導入するための光ファイバ折り返し領域と、光伝送状態非判別時に光ファイバ折り返し領域とその外側で光ファイバ素線11aの曲げ損失が発生するのを抑制するための光ファイバ整列領域とからなるが、本実施例では、光ファイバ折り返し領域には光ファイバ折り返し部19が光ファイバ整列領域には平坦部20が形成されている。光ファイバ折り返し部19は、湾曲形成部17の長さ方向の両側に、湾曲形成部17の湾曲方向と反対に湾曲する湾曲面を持って湾曲形成部17に連続して、光漏洩部品本体14に形成されている。平坦部20は、光ファイバ折り返し部19の外側における、光ファイバ折り返し部19上の空間と光ファイバ固定部15との間の光ファイバ整列領域に、光ファイバ折り返し部19に連続して光漏洩部品本体14に所定長さで形成されている。また、光漏洩部品本体14の中央底部には凹部21が形成されており、光伝送状態判別時に、後述する光検出器30を構成する検出部31と嵌合する際の位置決めに供される。
【0116】
図5は光ファイバ固定部15間の光ファイバ素線11aの湾曲状態を表す図である。図5(a)が嵌合時の光ファイバ素線11aの状態、図5(b)が非嵌合時の状態である。同図(a)より、嵌合時の光ファイバ素線11aは湾曲形成部17と光ファイバ折り返し部19に沿って湾曲しているため、光ファイバ固定部15間の光ファイバ素線11aの長さ(L)は光ファイバ固定部間の距離(W)より長くなっており、予長が発生していることが判る。その予長(w)は
w =L−W
で計算される値となる。従って、被覆除去部となる光ファイバ素線11aは、長さは嵌合時の湾曲形状により決定される長さ(L)に設定されており、それによって決定される予長(w)を持って光ファイバ固定部15間に遊動自在に保持されていることが判る。
【0117】
図5(a)に示すように、光伝送状態判別時に光ファイバ素線11aに光漏洩を生じさせる湾曲形成部17の扇形曲率半径Rは4.5mmに、光ファイバ折り返し部19の扇形曲率半径rは9mmに設定した。光ファイバ素線11aは、光伝送状態判別時に、湾曲形成部17と光ファイバ折り返し部19と平坦部20とに沿って一時的に保持・固定されるが、各光ファイバ折り返し部19は、その湾曲面の曲率半径rが湾曲形成部17の湾曲面の曲率半径Rの1.3倍以上、本実施形態では、光ファイバ折り返し部19の曲率半径rが湾曲形成部17の曲率半径Rの2倍あるため(r=2R)、測定時に光ファイバ折り返し部19で光信号が漏洩することによる実効的な光損失増加を抑えることが可能となっている。
【0118】
また、同図5に示すように、光ファイバ折り返し部19の扇形の中心角θは両側で等しく、それらの和が湾曲形成部17の扇形の中心角βと一致するように(β=2θ)、設計した。つまり、湾曲形成部17は、その光伝送路湾曲部が形成する弧の中心角βが各光ファイバ折り返し部19の被覆除去部が形成する弧の各中心角の和2θに等しい。これにより、測定時の光ファイバ折り返し部19の外側の光ファイバ素線11aは、互いに一直線上に保持され、原理的には曲げを生じることなく光ファイバ固定部15に誘導される。
【0119】
また非嵌合時の光ファイバ素線11aは図5(b)に示すように、光ファイバ整列領域を含めた全体で、一定の曲率半径で湾曲した状態で保持される。ここで、この光ファイバ整列領域の幅はこの湾曲形状から計算される値に設定される。ここで、光ファイバ素線11aはその長期信頼性を劣化させない範囲の湾曲状態に保持する必要がある。一般にこの曲率半径は15mmまたは30mm以上である。
【0120】
本実施例では、光ファイバ素線11aは、非嵌合時には、光ファイバ整列領域としての平坦部20の効果により、湾曲形成部17と光ファイバ折り返し部19とから多少浮いた状態で、尚且つ光漏洩部品本体14の高さ方向においてはみ出さない状態を保持している。この状態で光ファイバ素線11aは、その全体が図5(b)に示すように曲率半径(Ro)が15mmの曲率で保持され、長期信頼性が確保される。これは光ファイバ整列領域として平坦部20を形成した効果として奏されるものである。この曲率半径は使用した光ファイバ素線の長期信頼性を確保するための規格値である。
【0121】
従って、非嵌合時には、光ファイバ固定部15間の光ファイバ素線11aは光ファイバ折り返し部19の曲率より更に1.5倍以上大きい曲率で保持されるため光損失は発生せず、同光ファイバ素線11aの長期信頼性に規定された曲率で保持され、光ファイバ整列領域の幅はその曲率から換算され、設定されていることになる。
【0122】
スライドキャップ12は、光伝送状態判別のための嵌合時には、光漏洩部品本体14の長さ方向にスライドされて外され、光漏洩部品本体14の湾曲形成部17と光ファイバ処理領域18は露出状態となる。図4(b)は、スライドキャップ12をスライドして開いた時の光漏洩部品本体14の上面図であり、スライドキャップ12は省略している。同図に示すように、光漏洩部品本体14両側の光ファイバ整列領域に形成された挿入溝24には、光ファイバ素線11aが一直線状になって嵌っている。光漏洩部品本体14の両側の光ファイバ整列領域の間(ここでは両側の挿入溝24の間)の上方は開口部22が幅広く形成されている。開口部22の光ファイバ折り返し部19に相当する空間には、光伝送状態判別時に、後述する光検出器30を構成する検出部31の光ファイバ押さえ58が挿入されて嵌合し、それと同時に湾曲形成部17に相当する空間には検出部31の受光素子59が近接し、測定に供される。開口部22中央の光漏洩部品本体14の各側壁には、中央の光ファイバ素線11aに向かって下り傾斜する対向する斜面として一対の斜面23が形成されている。
【0123】
図6は、本実施形態による光伝送判別器を構成する光検出器30の外観構成図である。
【0124】
光検出器30は検出部31と光検出器本体32とに分離して構成されており、同軸ケーブル33で互いに接続されている。光検出器本体32は、光検出部31の替わりに、図示しない受光ユニットを光検出部31の代わりに装着すれば、光パワーメータとしても機能し、例えば光コネクタ付き光ファイバをその受光ユニットに接続して、その光ファイバを伝送する光信号のパワーを測定することができる。
【0125】
検出部31は、外形寸法(長さL×幅D×高さH)が約60×35×20mmで、その筐体は検出部外ケース34とレバー付き上ケース35とから構成されている。レバー35aを有するレバー付き上ケース35には、少なくとも光伝送路を伝搬する光信号の有無を表示する検出部表示部36が設けられている。この検出部表示部36は、3個のLED(発光ダイオード)から構成され、検出結果として、無信号、対照光、通信光の3つの信号状態の何れかをそれらの点灯状態によって表示する。無信号は光伝送路に光信号の検出が無かったことを表し、対照光は光伝送路に伝送路対照のために入力された対照光が検出されたこと、通信光は光伝送路に通信のために伝搬する通信光が検出されたことを表す。
【0126】
光検出器本体32は、外形寸法(長さL×幅D×高さH)が約120×60×30mmで、検出情報を表示する3個のLEDから構成される本体表示部37が設けられている。この本体表示部37は、検出部表示部36と同様に、無信号、対照光、通信光の3つの信号状態の何れかを表示する。また、光検出器本体32は、検出結果としての3つの信号状態の区別を音を発して知らせる機能も備えている。また、光検出器本体32には液晶表示装置などからなる表示パネル38が設けられており、通常この表示パネル38には、光伝送路を伝送する信号光強度の換算値(dBm)が数値で表示される。この換算値は予め測定した光検出器30の光結合度を用いて、光検出部31で測定した光強度の値を換算して求められる。この光結合度は光漏洩部品10の構造にも依存するため、光伝送路を切り替えて、光伝送路端面から直接伝送する光信号を測定した場合に比し測定精度は劣るものも、簡易モニターとしては充分な精度を有している。本実施例では光伝送路として使用する光ファイバを曲げに強いタイプに選定しており、光ファイバ素線の被覆色は白色に指定したため、測定精度はほぼ1dB以下に抑制されていた。
【0127】
従って、本検出器は予め測定された光結合効率から測定値を光伝送路を伝搬する信号光強度に換算する機能を有している。
【0128】
また、本光検出器30は光パワーメータの機能を有しており、検出部31の替わりに図示しない受光ユニットを装着すれば、光検出器本体のモードが光パワーメータに自動で切り替わり、この場合、表示パネル38は測定した光強度を表示する。
【0129】
また、光検出器本体32には、電源を入切するための電源ボタン39と、外来光の影響がある場合に検出部31の感度を補正して外来光の影響を相殺するための感度補正ボタン40が設けられている。電源ボタン39が操作されて電源が入っている時には、電源ボタン39の右方に設けられたLEDが点灯して、電源が入っている電源状態が表示される。また、感度補正ボタン40が操作されるなどして外来光の影響が無い状態の時には、感度補正ボタン40の上方に設けられたLEDが点灯して光伝送状態の判別が可能な準備(Ready)状態であることが知らされ、外来光の影響の有無が表示される。
【0130】
図7(a)は、検出部31の筐体を構成するレバー付き上ケース35をケース面に水平な面で破断した際の検出部31の断面図、同図(b)は検出部31の筐体を構成する検出部外ケース34およびレバー付き上ケース35をケース面に垂直な面で破断した際の検出部31の縦断面図である。
【0131】
同図(a)に示すように、検出部外ケース34は、レバー付き上ケース35より一回り大きく構成されており、上面が開放した箱状をしている。また、レバー付き上ケース35は、下面が開放した箱状をしており、検出部外ケース34内に収納されている。レバー付き上ケース35の両外側には、同図(b)に示すように、外方に突出したレール51が形成された側板52が設けられている。検出部外ケース34の両内側にはレール用溝53が形成されており、レバー付き上ケース35のレール51が検出部外ケース34のレール用溝53に嵌め込まれることで、レバー付き上ケース35はレール用溝53に沿って検出部外ケース34に対して移動する。また、検出部外ケース34の底面に形成された突起34aとレバー付き上ケース35との間にはバネ54が設けられており、レバー付き上ケース35は検出部外ケース34内で図の上方に付勢されている。レバー付き上ケース35は、このバネ54の付勢力に抗してレバー35aが図の下方に移動操作されると、検出部外ケース34のレール用溝53に沿って図の下方に移動する。
【0132】
検出部外ケース34には、光伝送状態判別時に光漏洩部品10を収納して保持するための空間が光漏洩部品保持部55として設けられている。この光漏洩部品保持部55に面する検出部外ケース34の内側壁には凸部56が設けられており、また、この凸部56を挟む両側の検出部外ケース34の底面には一対の光漏洩部品挿入用ガイド57が立設されている。光漏洩部品挿入用ガイド57は、光漏洩部品10が光漏洩部品保持部55に挿入されるときにガイドとして機能すると共に、同図(b)に示すように頭部が張り出して形成されていることで、光漏洩部品保持部55に挿入された光漏洩部品10を保持する機能も果たす。レバー35aの非操作時におけるレバー付き上ケース35の位置は、バネ54の付勢力によって光漏洩部品保持部55を覆う位置に保持されている。
【0133】
レバー付き上ケース35には、光漏洩部品10の光ファイバ折り返し部19と嵌合する形状をした一対の光ファイバ押さえ58が形成されており、光ファイバ押さえ58の間には、漏洩光を検出する受光素子59が1つ設けられている。レバー付き上ケース35に形成されたレール51、検出部外ケース34に形成されたレール用溝53、レバー35a、およびバネ54は、レバー35aの未操作時に、光ファイバ押さえ58によって光ファイバ素線11aを湾曲形成部17に押さえ付けて光ファイバ素線11aに湾曲部を形成させ、レバー35aの操作時に、光ファイバ押さえ58および湾曲形成部17によるこの湾曲部の湾曲形成をしない操作機構を構成する。
【0134】
また、レバー付き上ケース35には、受光素子59を制御する制御回路が形成された制御回路基板60と、検出部31による光計測を開始するためのトリガースイッチ61が取付けられている。トリガースイッチ61は、同図(a)の右方に示される光漏洩部品挿入用ガイド57に開けられた穴に挿入され、図示しないバネのバネ力によりその先端が光漏洩部品保持部55に露出した状態で保持される。光漏洩部品保持部55に光漏洩部品10が挿入されるとその先端が、バネ力に反して図の下方に押される。トリガースイッチ61はこの状態変化を検出すると、制御回路基板60へトリガー信号を出力して、検出部31による測定を開始させる。この測定で検出された光信号は受光素子59により電気信号に変換され、制御回路基板60に形成された受光素子59の制御回路により、同軸ケーブル33を介して光検出器本体32へ送出される。光検出器本体32には、受光素子59で計測された光信号の光強度を計測し、伝送状態を判別する制御回路が備えられており、この制御回路によって光伝送状態の判別が行われる。これらの結果は、検出部31の検出部表示部36および光検出器本体32の本体表示部37に表示され、更に光検出器本体32から発せられる音によって表現される。
【0135】
更に光検出器本体32の表示パネル38には光伝送路を伝送する光信号の強度が表示される。
【0136】
このように光伝送路とは別個に構成された光検出器30は、湾曲することで光ファイバ素線11aに形成される湾曲部分から漏洩する光信号を計測する受光素子59を含む検出部31と、受光素子59で計測される光信号の伝送状態判別制御を行う制御回路を含む光検出器本体32とに分離されている。
【0137】
また、光伝送判別器は、光漏洩部品10と光検出器30とから構成され、一方の光漏洩部品10には、光ファイバ素線11aに形成される湾曲部分の湾曲形状を有する湾曲形成部17が設けられ、他方の光検出器30には、光ファイバ素線11aを湾曲形成部17に押さえ付けて光ファイバ素線11aを湾曲形成部17の湾曲形状に沿って湾曲させる光ファイバ押さえ58が設けられている。
【0138】
光ファイバ押さえ58には、有効深さが0.25mm、有効幅が1.0mmの溝62が、挿入される光伝送路の長さ方向に形成されている。この溝深さは、光ファイバ素線11aの外径±0.1mm以内に設定されており、光ファイバ素線11aの外径と同等である。溝幅は、光ファイバ素線11aの外径以上で、かつ、受光素子59の図示しない受光面の幅以下に設定した。また、光ファイバ押さえ58の扇形曲率半径は光漏洩部品10の光ファイバ折り返し部19と同一で、約9mmに設定した。また、この光ファイバ押え58の受光素子59に近接する側面には、この溝を含め、光信号を受光素子59側に反射する金属メッキのコーティングを施した。
【0139】
次に、光漏洩部品10を装着した光コード11を伝搬する光信号の有無、および光信号の検出結果を確認する光伝送状態の判別手順を図8を用いて説明する。図8(a)は、検出部31の光漏洩部品保持部55に光漏洩部品10を挿入した状態を示す横断面図、同図(b)は、更にその状態から光漏洩部品10の光漏洩部品本体14の光ファイバ折り返し部19と検出部31の光ファイバ押さえ58とを嵌合させ、保持した状態を示す横断面図である。
【0140】
光伝送状態の判別に際し、まず、レバー35aを操作し、同図(a)に示すように、光検出器30の検出部31のレバー付き上ケース35をスライドさせて光漏洩部品保持部55を露出させる。このとき、検出部外ケース34とレバー付き上ケース35との間に設けられているバネ54のバネ力により、レバー付き上ケース35は光漏洩部品保持部55を覆う状態に戻ろうとするため、レバー35aに一定の荷重をかけてレバー付き上ケース35をスライドさせた状態に保持する。
【0141】
次に、スライドキャップ12を外した光漏洩部品10を所定の方向に設定して、同図(a)に示すように、一対の光漏洩部品挿入用ガイド57の間の光漏洩部品保持部55に挿入する。この時、光漏洩部品本体14の凹部21と光漏洩部品保持部55の凸部56とが嵌合して合致することにより、光漏洩部品本体14と検出部31との相対的な位置が決定される。光漏洩部品保持部55に挿入された光漏洩部品本体14の、検出部外ケース34の深さ方向の高さ位置は、光漏洩部品保持部55に面する検出部外ケース34の内側面で決められる。また、光漏洩部品本体14は、両側のエンドチューブ13が一対の光漏洩部品挿入用ガイド57によって保持されており、光漏洩部品保持部55から移動しない。
【0142】
光漏洩部品10を光漏洩部品保持部55に挿入後、一定の荷重をかけてスライドさせた状態に保持していたレバー35aを放すと、バネ54のバネ力によってレバー付き上ケース35が光漏洩部品保持部55を覆う通常時の位置にスライドする。レバー付き上ケース35が通常時の位置にスライドすると、レバー付き上ケース35に形成された光ファイバ押さえ58が光漏洩部品10の光ファイバ処理領域18に挿入され、バネ54のバネ力によって光ファイバ折り返し部19と一定の加重で嵌合する。(光ファイバ押さえ58は、各光ファイバ折り返し部19の少なくとも一部と嵌合する形状を有している。)光ファイバ押さえ58が光ファイバ折り返し部19と嵌合すると、同図(b)に示すように、光ファイバ素線11aは、光ファイバ折り返し部19と光ファイバ押さえ58との間に挟まれ、湾曲形成部17と光ファイバ折り返し部19と平坦部20とに沿って変形する。この状態は操作機構によって安定的に保持される。つまり、光検出器30は光伝送路とは別個の、測定時に光漏洩部品10を収納して保持し、その一部を互いに嵌合し、その嵌合状態を安定的に保持する保持構造を具備している。また、光ファイバ押さえ58が光ファイバ折り返し部19と嵌合すると、トリガースイッチ61の先端が光漏洩部品10のエンドチューブ13に押されてスライドし、制御回路基板60に設置された図示しない測定開始用スイッチが押され、検出部31が測定を開始する。
【0143】
この測定開始により、光ファイバ素線11aに光信号が伝送されていれば、光ファイバ素線11aの湾曲形成部17で湾曲した部分である光伝送路湾曲部からのみ光信号が漏洩する。この際、受光素子59は、検出部31の検出部外ケース34と光漏洩部品10の光漏洩部品本体14とによって2重に密閉されるため、太陽光その他の自然界のノイズの影響を受けることなく、光ファイバ素線11aの湾曲形成部17で湾曲した部分からの漏洩光のみを検出する。
【0144】
同図(c)は光漏洩部品本体14の光ファイバ折り返し部19と検出部31の光ファイバ押さえ58との嵌合状態を示す縦断面図である。同図(c)に示すように、光ファイバ折り返し部19と光ファイバ押さえ58とに挟まれた光ファイバ素線11aは、光ファイバ押さえ58の溝62の中に収まるため、光ファイバ折り返し部19から過度な応力を加えられることなく湾曲状態を保持する。この際、光伝送状態判別時の湾曲形成部17での光ファイバ素線11aの表面と、受光素子59の図示しない受光端面との最短距離は約1.7mmになるように設定されている。つまり、光ファイバ押さえ58によって湾曲形成部17の湾曲形状に沿って湾曲させられた光ファイバ素線11aの光伝送路表面と、受光素子59の図示しない受光面との最短距離は2mm以下になるように設定されている。この数値は、受光素子59の外表面と受光素子59の内部における図示しない受光面との間の距離が約1.5mmあり、受光素子59の外表面と光ファイバ素線11aの光伝送路表面との間の距離を出来るだけ短い0.5mmに設定することで導かれるものである。
【0145】
よって、本実施形態による光伝送判別器を用いた光伝送状態の判別時には、光検出器30の検出部31の取扱い作業が主となり、光検出器30の光検出器本体32は図示しないストラップ等を取り付けて、作業者の首か、作業場付近の壁に掛けておけば、判別結果は検出器本体32から発せられる音と検出部表示部36で確認される。また、光検出器本体32の本体表示部37でも確認され、作業性の向上が図られている。
【0146】
更に表示パネル38には測定結果から換算された光伝送路を伝送する光信号の強度が表示される。
【0147】
波長1.31μmと波長1.55μmの光源を用いて、本光伝送判別器を評価した。その結果、波長1.55μmの光信号を光コード11に伝送させた場合、本光伝送判別器の挿入損失は約0.8dBであり、この挿入損失は、一般的な光伝送システムにおいて光伝送の阻害要因とはならない大きさであることが、確認された。また、同様に波長1.31μmの光信号を光コード11に伝送させた場合、光信号の検出限界は約−45dBmであり、一般的な光伝送システムにおける最低信号光強度(約−40dBm)以下であることが確認された。また、これらの測定は非常に安定しており、かつ再現性に優れており、何れの試験でも波長1.55μmでの挿入損失のばらつきは±0.05dB以下であり、波長1.31μmでの光信号の検出限界のばらつきは±0.2dB以下であった。
【0148】
これらの結果より、本光伝送判別器は光伝送状態を阻害することなく、光信号の伝送状態を波長1.31μmと波長1.55μmの両方の波長で判別することが出来ると、判断される。
【0149】
伝送状態判別試験を、特許文献1や特許文献2等に開示されているような、一般に市販されている典型的な心線対照器を用いて、光漏洩部品10を備えていない一般的な光コード(標準単一モード光ファイバ、外径2.0mm、長さ3m、両端SCコネクタ付き)で行った。その結果、波長1.55μmの光信号を伝送させた場合のその心線対照器の挿入損失は約2.5dBであり、この心線対照器の挿入が遮断等の光伝送システムの伝送品質の阻害要因になる可能性があることが判明した。また、波長1.31μmの光信号で同様な試験を行った結果、光信号の検出限界は約−12dBmであった。また、これらの挿入損失、検出限界の値は再現性に乏しく、ばらつきが大きかった。従って、この場合、一般的な光伝送システムで微弱な光信号が伝送している場合に、その伝送路が非活線であるという誤った判断をする可能性があることが、確認された。
【0150】
上記の比較試験は、外径2mmの光ファイバコードを用いて行った。しかし、本光伝送判別器の基本特性は、光漏洩部品10を備えて光ファイバ素線11aの状態で計測するその特徴的な構造から、光コード11の外径等に依存しないが、従来の心線対照器の特性は、測定対象となる光ファイバコードの構造に大きく依存し、外径が大きな光コードの場合には検出特性が大幅に劣化することが予想される。また、同じ外径の光コードでも、内部にナイロン心線を使用している場合は測定不能になる等、従来の心線対照器を用いた光伝送状態判別には様々な制限が存在する。
【0151】
これらの結果より、従来の心線対照器は、光伝送判別器として活線状態を判別する手段として用いるのに適切でなく、構造上の問題から、測定中の測定値の値が安定せず、伝送信号光強度の簡易測定器として使用することも、中長期的な信号光強度の変化を測定するモニターとして使用することも適切でないと思われる。
【0152】
白色被覆の光ファイバ素線を用いた外径2.0mmの光ファイバコードを用いて、光漏洩部品付き光コード11を10本作成し、それぞれを接続替えすることなく簡易的にこれらの光コードを伝送する信号光強度を波長1.55μmで測定した。測定する信号光強度は約−20dBmに設定した。信号光は偏波コントローラを用いて単一偏波とし、偏波面を回転させて、測定値の変動を求めた。その際、光漏洩部品10の湾曲形成部17の中央にはその湾曲表面の長さ方向に沿って、有効深さ0.25mmで中心角90度の対称V溝を形成し、そのV溝にはアルミめっきを施した。
【0153】
全ての試料で10回測定を実施した処、信号光強度測定値のPDL誤差は0.2dB以下、測定値の測定誤差は再現性を含めて±0.2dB以下であった。これにより、光伝送路用パワーチェッカーとして実用性があることが確認された。
【0154】
なお、測定値の再現性誤差は0.1dB以下であり非常に安定していた。
【0155】
本発明による光伝送路判別器をファンアウト付き光ファイバコード等に適用した場合、複数の被覆色の光ファイバ素線に対応する必要が生じる。従って、光伝送判別器の光検出効率の光ファイバ被覆色依存性を測定した処、最大で約5dBの検出効率の差があることが判明した。
【0156】
そこで、その検出効率を補正するため、光漏洩部品10の検出効率を測定し、補正値を算出して、スライドキャップ12に2桁の英数字の識別コードとして記録した。また、測定時にその識別コードを入力するように、検出器のソフトウエアを改良した。
【0157】
この識別コードを適用し、4色(青、白、茶、灰)の光ファイバ素線を用いた光漏洩部付き光ファイバコードを作成し、波長1.55μmで伝送光強度測定試験を実施した。結果として上記の例と同様に、測定誤差は再現性を含め±0.2dB以下であった。
【0158】
この様に、識別コードを導入すれば、検出効率の光ファイバ素線被覆色依存性を補正できることが確認された。原理的にはこれらの色以外の被覆色の光ファイバ素線を用いた場合も検出効率の補正は可能となる他、光ファイバ素線の遮断波長等が大幅に異なる場合や光ファイバ素線の被覆材料のメーカ間の相違等、様々な要因に起因する検出効率の相違の補正が可能になる。
【0159】
また、図9は、本光伝送判別器を光伝送路の長期健全性を調べる光モニターとして使用した場合に必要となる検出光の安定性を試験した結果を示すグラフである。同グラフの縦軸は受光素子59で測定された光信号の受光強度[dBm]、横軸は測定時間[h]である。ここで測定波長は1.55μmとした。なお、この測定値は光検出器本体32の表示パネル38に表示される換算された伝送信号光強度でなく、図示しない光検出器本体32の制御回路の出力端子から出力された実値である。
【0160】
検出光の強度変化は約1500時間経過後も0.3dB以内で安定していた。この結果、例えば0.4dB程度の伝送光強度の変動を長期的に監視することができることになる。また、図9の測定値の変動は長期的な僅かなドリフトが要因である。このドリフトは漏洩部品の初期アニール処理の効果により抑えきれなかったドリフトの残りの成分と考えられる。このドリフトの影響について、ドリフトによる基準値の変化を補正することで、判定限界を向上させることが可能で、このドリフト補正をした場合、光伝送路の伝送光強度変化の検出限界を0.2dB以下にすることが可能になると考えられる。
【0161】
その他に、ITU−T G.657.B3勧告に準拠する光ファイバを用いて、外径2mmの光漏洩部品つき光コードを10本作成し、それらを用いて心線対照試験を行った。ここで、光漏洩部品10の湾曲形成部17の扇形曲率半径Rは2.5mmに設定し、光ファイバ折り返し部19の扇形曲率半径rや平坦部20の長さ等はそれに沿って適宜最適化した。
【0162】
対照光源として波長1.31μm、強度−10dBmの270Hz変調光源を用い、対照光源より約10kmの位置で試験した。測定は100回行ったが、全て正常に対照光を検出した。測定時の挿入損失は最大でも0.1dB以下であった。また、試験後に湾曲形成部17付近の光ファイバ素線の外観に異常は観測されず、光ファイバコードとしても光損失が発生することはなかった。
【0163】
比較のために、従来のITU−T B.657.A1勧告の光ファイバを用いた光ファイバコードに対応した心線対照器を用いて、ITU−T G.657.B3勧告に準拠する光ファイバを用いた外径2mmの光ファイバコードについて同様な試験を実施したが、対照光は全く検出されなかった。従来の心線対照器の場合、光ファイバ素線であれば、ITU−T G.657.B3勧告に準拠した光ファイバでも心線対照は可能であると思われるが、実使用で用いる光ファイバコードでは実用性に乏しいと考えられる。
【0164】
上記のように、本実施形態による光伝送判別器によれば、光ファイバ素線11aの状態にされた光コード11の被覆除去部は、光漏洩部品10によって光伝送路中に保持される。光漏洩部品10によって保持された光ファイバ素線11aは、湾曲形成部17と光ファイバ押さえ58との嵌合時、光ファイバ押さえ58によって湾曲形成部17に押さえ付けられることで、湾曲形成部17の湾曲形状に沿って湾曲させられ、光伝送路湾曲部を形成する。光信号の伝送状態判別時にはこの光伝送路湾曲部からは光伝送路を伝搬する光信号が漏洩し、漏洩した光信号は、光伝送路とは別個の光検出器30に備えられた受光素子59によって計測される。
【0165】
このため、漏洩光の計測は、光ファイバ素線11aの状態にされた光コード11の被覆除去部の一部から漏洩する光信号に対して行われ、特許文献1や特許文献2等に開示された従来の心線対照用光検出器を単に用いた場合より、光検出効率を大幅に向上させ、かつ安定させることが可能となる。
【0166】
また、測定に供される光伝送路は、その一部に光漏洩部品10が設置されており、その光伝送路とは別個の、測定時に光漏洩部品10を収納して保持し、更にその一部と互いに嵌合し、その嵌合状態を安定的に保持する構造を光検出器30が具備するため、特許文献5等に開示された従来の光伝送判別器を用いた場合より、挿入損失、検出値等の光学特性の再現性、安定性を大幅に向上させることが可能となる。
【0167】
また、光コード11の被覆除去部分の光ファイバ素線11aは、一対の光ファイバ固定部15間に所定の予長を持った開放状態で遊動自在に両端が固定されることにより、嵌合時と非嵌合時とのそれぞれにおいて、不要な伸張応力、圧縮応力や、局所的な屈曲を生じない状態が安定して確保される。
【0168】
また、光漏洩部品本体14における、嵌合時に湾曲形成部17によって形成される伝送路湾曲部に相当する箇所とその両側の光ファイバ固定部15との間に光ファイバ処理領域18を備えるため、光ファイバ素線11aが湾曲部分から光ファイバ固定部15に導かれると共に、非嵌合時における光ファイバ素線11aの湾曲半径を一定以上に大きく確保することが可能となり、非嵌合時の湾曲に依存する光損失増加の発生を安定的に防止し、用いる光ファイバの長期信頼性を確保することが可能となる。
【0169】
この結果、特許文献4〜6に開示された技術を光ファイバ心線、光ファイバコード、光ファイバケーブル等に適用するための、光ファイバ心線、光ファイバコード、光ファイバケーブル等の詳細な新規な保持構造、嵌合時のみに漏洩光を発生させ、非嵌合時には光損失増加を発生させないための新規な構造、および、検出光が安定するために光検出器30に要求される新規な構造を備え、長期信頼性に優れた光伝送判別器が提供されることとなる。
【0170】
本発明の光漏洩部品10では、当初光ファイバコネクタと同様にその内部で光ファイバ素線11aを固定せずに試作を行ったが、この場合には測定の繰り返しにより予長が変化し、返って光ファイバ素線11aの屈曲の要因となることが判明した。そこで、光漏洩部品10内部の両側の光ファイバ固定部15で、光ファイバ素線11aの固定を試みた処、光ファイバ素線11aの屈曲の発生が根本的に抑制された。これが本発明の光伝送判別器の新規な構成の提案に至った1つの要因である。
【0171】
また、本実施形態による光伝送判別器によれば、光漏洩部品10によって保持された光ファイバ素線11aは、嵌合時、光検出器30に備えられた光ファイバ押さえ58により、光漏洩部品10に備えられた湾曲形成部17に押さえ付けられることで、湾曲形成部17の湾曲形状に沿って湾曲させられ、光伝送路湾曲部を形成する。そして、この光伝送路湾曲部から漏洩した光信号が、光伝送判別に供される。
【0172】
このように湾曲形成部17が光漏洩部品10に備えられることで、予長を持って光ファイバ固定部15間に遊動自在に保持された光コード11の被覆除去部分としての光ファイバ素線11aは、非嵌合時の湾曲方向が制限されるため、嵌合時に光ファイバ素線11aが所定の位置に導くことが容易になるという利点を有している。
【0173】
また、湾曲形成部17を光漏洩部品本体14に一体化して構成することで、嵌合時に僅かな段差が発生し、光ファイバ素線11aが屈曲することを未然に防ぐ効果がある。
【0174】
また、光ファイバ押さえ58を光検出器30に備えることで、光漏洩部品10の小型化、低価格化が可能になる。
【0175】
また、本実施形態による光伝送判別器では、一対の光ファイバ固定部15間の光ファイバ素線11aは、長さが嵌合時の湾曲構造により決定される長さに設定され、それにより決定される余長を持って光ファイバ固定部15間に遊動自在に保持されるため、光ファイバ素線11aの予長が最適値に設定され、光ファイバ素線11aが光ファイバ固定部15間に遊動自在に適切に保持固定されることにより、嵌合時に光ファイバ素線11aに伸張応力や圧縮応力が生じない構造となる特徴を有する。また、必要最小限の余長が確保されるため、非嵌合時に曲げ等により生じる損失の発生が効果的に抑制させることが可能となる。
【0176】
また、本実施形態による光伝送判別器は、湾曲形成部17の曲率半径が1.5mm以上で、かつ5.5mm以下であるため、湾曲により生じる挿入損失の波長依存性を最小限に抑制することが可能となり、長波長側での挿入損失を低く抑えたままで、短波長側での検出可能な信号光強度の最低限度を低く保つことが可能となるため、光伝送判別器の適用範囲が従来に無く広く確保される。
【0177】
また、本実施形態による光伝送判別器では、光ファイバ処理領域18が、湾曲形成部17に連続して形成され、嵌合時に前記被覆除去部が湾曲形成部17の湾曲方向と反対に湾曲される光ファイバ折り返し部19と、この光ファイバ折り返し部19と光ファイバ固定部15との間に形成され、嵌合時に光ファイバ固定部15に保持された被覆除去部としての光ファイバ素線11aの一部を光ファイバ固定部15から屈曲することなく直線状に保持し、かつ非嵌合時に被覆除去部としての光ファイバ素線11aが湾曲構造を形成する空間の一部となる、所定長さの光ファイバ整列領域を平坦部20として備える。
【0178】
このため、嵌合時における一対の光ファイバ固定部15間の光ファイバ素線11aは、湾曲形成部17と光ファイバ押さえ58とにより強制的に湾曲形成部17の湾曲形状に沿った形状に変形させられるとともに、光ファイバ折り返し部19で折り返され、更に、各平坦部20における各光ファイバ素線11aは直線状に近い状態で保持される。従って、嵌合時に光ファイバ素線11aに局所的な屈曲や応力の発生を防ぎ易くなり、必要外の光伝送損失の発生を効果的に抑制させることが可能となる。
【0179】
一方、非嵌合時における一対の光ファイバ固定部15間の光ファイバ素線11aは、それらの応力から解放され、所定の予長を持った状態で両端が固定されているため、特定の曲率で湾曲したまま保持される。この時の湾曲曲率は、平坦部20にある光ファイバ素線11aの寄与により、湾曲形成部17や光ファイバ折り返し部19の湾曲曲率より十分に大きな曲率となる。従って、平坦部20は、伝送状態非判別時に、光漏洩部品10内の光ファイバ素線11aが過剰な湾曲を受けて光信号の挿入損失を生じさせることを安定的に防止する効果を発揮する。
【0180】
また、本実施形態による光伝送判別器によれば、嵌合時における光漏洩部品10内の一対の光ファイバ固定部15間で、光ファイバ素線11aは、図5に示すように、湾曲形成部17によって中央に形成させられる湾曲部の弧の中心角βが、この湾曲部の両側に光ファイバ折り返し部19で等しく形成させられる各湾曲部の弧の各中心角θの和に等しくなって、湾曲させられる。
【0181】
このため、伝送状態判別時における光漏洩部品10内で、光ファイバ折り返し部19で形成させられる各湾曲部の両外側の光ファイバ固定部15付近における光ファイバ素線11aは、一直線上に保持される。従って、両端の光コード11が一直線上に保持されるため、光漏洩部品10の小型化に寄与すると共に、取り扱いが容易となる。
【0182】
また、本実施形態による光伝送判別器によれば、遊動自在に固定された光ファイバ固定15部間の被覆除去部を形成する前記光ファイバ素線11aの非嵌合時における湾曲曲率が、被覆除去部を形成する前記光ファイバ素線11aの長期信頼性に規定された曲率で保持され、光ファイバ整列領域としての平坦部20の幅はその曲率から換算され、設定されている。このため、非嵌合時の光漏洩部品10の挿入損失の発生を高度に抑制することが可能となり、光ファイバ素線11aの機械的強度が長期間保証されるなど、光漏洩部品10の唯一の可動部である光ファイバ素線11aの長期信頼性が確保されるため、光漏洩部品10の長期信頼性に大きく寄与する。
【0183】
また、本実施形態による光伝送判別器では、光ファイバ押さえ58は、湾曲形成部17と嵌合する領域に、隙間として光ファイバ押え隙間部が形成され、嵌合時に、光ファイバ素線11aは、光ファイバ押さえ58が各光ファイバ折り返し部19の少なくとも一部と嵌合することで、湾曲形成部17によってその湾曲形状に沿って湾曲させられ光伝送路湾曲部を形成し、この光伝送路湾曲部は設計に沿った光挿入損失を発生させると共に、各光ファイバ折り返し部19の光ファイバ素線11aをこれらの形状に沿って変形させることができるので、湾曲形成部17以外の領域で光ファイバの伝送損失の増加を防ぐことができる。
【0184】
また、各光ファイバ押さえ58が光信号を透過しない材料で形成されている場合、光ファイバ押さえ58が湾曲形成部17との間に所定の隙間を形成する形状を有し、光伝送路湾曲部は光ファイバ押さえ58によって押さえられないため、光伝送路の外部に放射された光信号は光ファイバ押さえ58に遮られることなく、光検出器30の受光素子59で効率的に計測される。
【0185】
また、本実施形態による光伝送判別器によれば、各前記光ファイバ折り返し部19の各光ファイバ押さえ58と嵌合する部分で、被覆除去部としての光ファイバ素線11aに接触する湾曲面の曲率半径rが湾曲形成部17の湾曲面の曲率半径Rの1.3倍以上であるため、伝送状態判別時における、光ファイバ折り返し部19での光ファイバ素線11aの曲げによる伝送損失の発生を最小限に抑えることが可能となり、光伝送状態への影響を最小限とすることが可能となる。但し、1.3倍は測定値より換算した最小限の値であり、本実施形態の場合はこれを2倍として、光ファイバ折り返し部19での伝送損失の発生を効果的に抑制した。
【0186】
また、本実施形態による光伝送判別器によれば、湾曲形成部17の湾曲方向と反対に湾曲した、湾曲形成部17の湾曲に連続する湾曲面を持つ光ファイバ折り返し部19が、湾曲形成部17の両側の光ファイバ折り返し領域に形成され、その光ファイバ折り返し部19が嵌合時に光ファイバ押さえ58と対向して嵌合し、それらの間に被覆除去部としての光ファイバ素線11aの一部を安定的に保持することで、伝送状態判別時における光漏洩部品本体14内での光ファイバ素線11aの位置が安定し、光ファイバ固定部15間の光ファイバ素線11aの局所的な屈曲の発生を抑えることが可能となる。
【0187】
また、本実施形態による光伝送判別器は、有効深さが光ファイバ素線11aの外径±0.1mm以内で、有効幅が光ファイバ素線11aの外径以上でかつ受光素子59の受光面の幅以下の溝62が、湾曲形成部17または光ファイバ押さえ58または光ファイバ折り返し部19の少なくとも1箇所に光伝送路の長さ方向に形成されている。
【0188】
このため、伝送状態判別時における一対の光ファイバ固定部15間の光ファイバ素線11aは、光ファイバ押さえ58に光伝送路の長さ方向に形成された溝62により、光ファイバ素線11aの光ファイバに側面から応力が加わることなく、かつ光ファイバと受光素子59との間の距離が増加することなく、光伝送路の長さ方向に整列させられる。このため、伝送状態判別時に光ファイバ素線11aに形成させられる湾曲部付近での光ファイバの位置を安定させることが可能となり、受光効率が位置的な要因で低下することが防げ、光ファイバ素線11aの湾曲部と受光素子59との光結合度を安定的に向上させることが可能となる。
【0189】
また、本実施形態による光伝送判別器は、湾曲形成部17または光ファイバ押さえ58または光ファイバ折り返し部19の少なくとも1箇所に光伝送路の長さ方向に形成されている溝の断面形状が左右対称なV溝を基本とする形状であり、かつその溝内面の少なくとも1部に光反射面が形成されていることを特徴とする。
【0190】
この構成によれば、検出部の受光素子に対峙した光ファイバ表面から放射される漏洩光だけでなく、光ファイバ表面から、それに対して垂直な方向に放射される漏洩光が効率よく受光素子に到達するため、光検出効率が大幅に上昇するだけでなく、光検出効率の偏波依存性が大幅に解消され、光ファイバ中を伝送する光信号の偏波状態に依存することなく、再現性と安定性に優れた光検出特性を得ることが可能となる。
【0191】
また、本実施形態による光伝送判別器は、嵌合時に湾曲形成部17の湾曲形状に沿って湾曲させられた光伝送路湾曲部としての光ファイバ素線11aの表面と、受光素子59の受光面との最短距離が2mm以下であるため、伝送状態判別時における、光ファイバ素線11aの湾曲部と受光素子59との間の距離が最小限に抑えられ、光ファイバ素線11aの光伝送路湾曲部と受光素子59との光結合効率を向上させることが可能となる。
【0192】
また、本実施形態による光伝送判別器は、光ファイバ押さえ58の受光素子59側の側面に、光信号を反射する光反射処理が施されているため、光信号の結合効率を向上させることが可能となる。
【0193】
また、本実施形態による光伝送判別器によれば、操作レバー35aの未操作時に光漏洩部品10と光検出器30との嵌合が保持される操作機構により、嵌合時に光ファイバ押さえ58および湾曲形成部17に対する作用によって光ファイバ素線11aの一部に光伝送路湾曲部が形成され、光伝送路湾曲部に漏洩光が生じさせられて、漏洩光の計測が行われる。このため、光ファイバ押さえ58および湾曲形成部17により光ファイバ素線11aに湾曲部が形成されて行われる伝送状態の判別時には、操作機構が操作されないので、操作に起因して光ファイバ押さえ58と湾曲形成部17との相対位置が変化することはなく、光ファイバ押さえ58と湾曲形成部17との嵌合状態が安定し、漏洩光計測の再現性が向上する。従って、伝送状態判別時における光伝送路の挿入損失および光ファイバ素線11aの湾曲部と受光素子59との光結合度が安定し、人的な要因によって生じる漏洩光の計測値の差異を最小限に抑えることが可能となる。また、伝送状態判別時の挿入損失および光信号受信効率が長期的に安定するので、光伝送路中の光信号の中長期的な安定性を測定する光モニターとして、光伝送判別器を使用することが可能となる。
【0194】
また、本実施形態による光伝送判別器によれば、光検出器30が検出部31と光検出器本体32とに分離され、光ファイバ素線11aの一部として形成された光伝送路湾曲部からの漏洩光を検出する受光素子59を光検出器本体32と別体の検出部31に構成することで、検出部31の大幅な小型化が可能となり、光伝送状態判別作業の作業性が大幅に向上する。また、光伝送路中の光信号の中長期的な安定性を測定する光モニターとして光伝送判別器が使用された場合、光伝送路近傍で光伝送判別器が占有する空間の体積が大幅に削減され、収納性、保持性に優れる光モニターが提供される。
【0195】
また、複数の光検出部31に対し、光検出器本体32を共有させることが可能となり、効率的な運用が可能になる。
【0196】
また、本実施形態では、光検出器30は、予め測定された光結合効率から測定値を光伝送路を伝送する信号光強度に換算する機能を有する。
【0197】
本発明による光伝送判別器では、製造時に光結合特性を一定範囲内に特定することが可能となったため、伝送信号の強度を換算することが可能となった。また、本発明による光伝送判別器では、測定値の再現性、安定性に優れるため、信頼性に優れた測定を行うことが可能となった。
【0198】
従来の心線対照器では測定対象となる光伝送路を特定することが出来ず、光結合度の再現性、安定性に劣るため、伝送信号の強度を換算することが出来なかった。この場合、測定値は作業者による人的要因もあり、検出器の測定値は更に信頼性に劣り、従って、強度を確保した対照光の有無のみを判断することが主な機能であった。
【0199】
また、本実施形態では、光漏洩部品10は、予め測定された光結合効率の光漏洩部品による固体差を補正する補正値を示す識別コードが表記されていることを特徴とする。
【0200】
本発明による光伝送判別器では、識別コードを導入すれば、光ファイバ素線の被覆色の相違や光ファイバ素線の遮断波長等の相違や光ファイバ素線の被覆材料のメーカ間の相違等、様々な要因に起因する検出効率の光漏洩部品個体差の補正が可能になる。
【0201】
また、本実施形態では、光検出器30は光線路モニター機能を有し、かつ光漏洩部品10を把持した状態で中長期的に保持されることを特徴とする。
【0202】
本発明による光伝送判別器では、本光伝送路判別器を光伝送路の伝送特性の安定性等の健全性を調べることが可能となる。これにより、不測の伝送損失異常や瞬断、使用中の光源の出力安定性等をこれらの事態の発生とほぼ同時に解析することが可能となり、早期対応が可能となる。
【0203】
また、本実施形態では、光検出器30は心線対照機能を有し、かつ光漏洩部品10は最小の許容曲げ半径が5mm以下の光ファイバを用いた光ファイバコードに適用されることを特徴とする。
【0204】
本発明による光伝送判別器では、光ファイバコードに対して、従来の心線対照器に比し各段に光検出効率に優れるため、従来の心線対照器では困難であったITU−T G.657.B3勧告に準拠する光ファイバなど、曲げに強く、最小の許容曲げ半径が5mm以下の光ファイバを用いた光ファイバコードに対しても心線対照が確実となる。更に、検出効率の波長依存性が大幅に抑制されるため、単一モード波長範囲のほぼ全域で低損失心線対照が可能になり、同時に活線判別も可能となるため、心線対照のために誤って現用線を断線させる事故を防ぐことが可能となる。
【0205】
また、本実施形態では、光伝送体である光コード11が光漏洩部品10を備えているため、本光伝送体を予め局舎、中継局等の必要な場所に配備することにより、本実施形態の光伝送判別器による光伝送判別が可能となる。
【0206】
なお、本実施形態では、光漏洩部品10が光コード11に取付けられた構成を一例として説明したが、光ファイバ心線、光ケーブル等の他の光伝送体に取付けられる場合もあり、図3に示す態様に限定されることはない。また、光ファイバ素線11aの代わりに光ファイバ心線状態等で光漏洩部品10を構成する場合もあり、光漏洩部品10の内部に保持される光ファイバは光ファイバ素線11aのみに限定されるものではない。また、光ファイバ固定部15における光コード11の固定方法に接着剤を用いたが、かしめ等の方法を用いて固定してもよい。
【0207】
光漏洩部品10内の光ファイバを光ファイバ心線とした場合は、光検出効率は低下するものの、光コードを加工して光漏洩部品10を取付ける作業が簡易になり、タイト構造の既に作成された既存の光ファイバコードへの適用(加工)が容易になるという利点を有する。
【0208】
また、本実施形態において光ファイバ押さえ58に施した光信号反射用の金属メッキは誘電体多層膜フィルタ等の他の方法で代用しても良い、光信号の反射処理を施さない場合もある。
【0209】
また、湾曲形成部17の表面に信号光の反射処理を施しても良い。この場合、光漏洩部品14の価格は上昇するが、光検出器30で検出する場合の光結合度が数dB向上する。
【0210】
また、検出部31が光ファイバ折り返し部19を備えてもよい。光ファイバ折り返し部19は省略される場合もある。
【0211】
また、本実施形態では、光ファイバ整列領域として平坦部20を設けた場合について説明したが、光ファイバ整列領域は、平坦部20である必要はない。例えば、光ファイバ折り返し部19と光ファイバ固定部15との間に空間として光ファイバ整列領域を設けてもよく、この場合も、その光ファイバ整列領域の効果は有効となる。
【0212】
また、本実施形態においては、光漏洩部品10が湾曲形成部17を備え、検出部31が光ファイバ押さえ58を備えた場合について説明したが、この構成に限られることはない。例えば、検出部31が湾曲形成部17と光ファイバ押さえ58とを備えていてもよい。
【0213】
この構成によれば、光漏洩部品10は、例えば湾曲形成部17と光ファイバ折り返し部19と平坦部20とを備えず、光漏洩部品10の両光ファイバ固定部15間には、非測定時、測定時を含め、光ファイバ素線11aを保持する構造は存在せず、中央の湾曲形成部17に相当する空間とその両側の光ファイバ処理領域18とから成る構成となる。この際、光漏洩部品10の光漏洩部品本体14は、図4(b)に示す光漏洩部品10の開口部22を挟む図の上下にある両側壁と、開口部22と、光ファイバ固定部15の部分とから構成されれば良く、最も単純な構造の1つとなる。
【0214】
この場合、光漏洩部品10によって保持された光ファイバ素線11aは、光漏洩部品10と光検出器30との嵌合時、検出部31に備えられた光ファイバ押さえ58と、同じく検出部31に備えられた湾曲形成部17とに押さえ付けられることで、湾曲形成部17の湾曲形状に沿って湾曲させられる。そして、湾曲した光ファイバ素線11a(光伝送路湾曲部)から漏洩した光信号が、光伝送判別に供される。
【0215】
このように湾曲形成部17および光ファイバ押さえ58が共に検出部31に備えられることで、光コード11の被覆除去部分に湾曲部を形成させる部品の構造が単純になり、精密な加工精度が必要とされなくなる。このため、光伝送判別器の性能を維持したまま、更なる低価格化が可能となる。また、予め測定された光結合効率から測定値を光伝送路を伝送する信号光強度に換算する場合の換算精度の向上が可能となる。また、光伝送システムの光伝送路中に、光伝送路の被覆除去部分を保持・固定する構造および検出部31に嵌合する構造のみを備えた光漏洩部品10を予め設けておくことで、既に光伝送システムに設置されている光漏洩部品10を交換することなく、検出部31に備えられた湾曲形成部17を交換することにより、湾曲形成部17が有する湾曲形状を変更し、光伝送判別器の挿入損失や光信号受信効率等を適宜変更することが可能となる。また、光伝送判別器を光伝送路の中長期的な安定性を監視する光モニターに適用する場合、異なる要求仕様に柔軟に対応することが可能となる。
【0216】
また、本実施形態による光伝送判別器では、光ファイバ押さえ58は、湾曲形成部17の領域に、隙間として光ファイバ押え隙間部を形成したが、湾曲形成部17の領域に、光信号が通過する所定の光通過部材部として透明部材部と、嵌合時に光ファイバ折り返し領域の一部と嵌合する部分とを一体化した構造としても良い。この場合、嵌合時に光ファイバ折り返し領域の一部と嵌合する部分は光信号が通過しない材料を用いることにより、光伝送路湾曲部から漏洩した一部の光信号の受光素子59への受光効率を向上させることができる。但し、光信号が通過する光通過部材と光ファイバ折り返し領域の部材との境界に光信号反射処理を施す場合はこの限りではない。
【0217】
また、スライドキャップ12は必ずしも一体とは限らず、測定時に光漏洩部品本体14から外す構造でなくてもよい。例えば、測定時には中央から2つに分離し、光漏洩部品本体14の側面をレールとしてスライドする構造とし、その分離した2つのスライドキャップ12が光ファイバ固定部15に留まり、その2つの何れか一方のスライドキャップ12を保持することにより、光漏洩部品10を検出部31の検出部外ケース34に挿入する手順を採用してもよい。また、スライドキャップ12は一体のまま、スライドした時に光ファイバ固定部15に止まり、そのスライドキャップ12を保持することにより、光漏洩部品10を検出部31の検出部外ケース34に挿入する手順を採用してもよい。
【0218】
また、識別コードは英数字の2桁としたが、識別コードはこれに限定されるものではない。バーコード、2次元コード、ICタグ(RFID)等用いて自動読み取りに対応させても良い。この場合、識別コードは光漏洩部品本体に取付けても良い。識別コードに心線管理のデータを記入し、管理用タグとして心線管理システムに適用する場合もある。
【0219】
また、本実施形態による光伝送判別器は、有効深さが光ファイバ素線11aの外径±0.1mm以内で、有効幅が光ファイバ素線11aの外径以上でかつ受光素子59の受光面の幅以下の溝62が、光ファイバ押さえ58に形成されている場合について説明したが、この溝62は、湾曲形成部17または光ファイバ押さえ58または光ファイバ折り返し部19の少なくとも1箇所に光伝送路の長さ方向に形成されていればよい。
【0220】
また、光漏洩部品本体14の材質はABS樹脂に限定されず、無機材料や金属、ゴム、または他のプラスチックであってもよい。また、検出部31における受光素子59の数は、1個に限定されず、2個以上の場合もある。また、検出部31の検出部表示部36や光検出器本体32の表示パネル38は必ずしも必要とはならず、場合によっては省略することも可能である。
【0221】
また、本実施形態では、光検出器30の検出部31のレバー35aの非操作時におけるレバー付き上ケース35の位置は、バネ54の付勢力によって光漏洩部品保持部55を覆う位置に保持されており、このバネ54の付勢力に抗してレバー35aが図の下方に移動操作されている状態でのみ、検出部外ケース34のレール用溝53に沿って図の下方に移動するが、例えばレバー35が最下方に移動された時にレバー付き上ケース35がその位置に保持され、再度レバー35が最下方に移動された時にレバー付き上ケースが光漏洩部品保持部55を覆う位置に保持されるような、非操作時の安定位置が2つある構造としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0222】
本実施形態による光伝送判別器は、光ファイバ心線、光ファイバコード、光ファイバケーブル等へ適用することにより、光通信システム、光配線、光センサーシステム等に用いられる光伝送路の接続状態や活線状態等の伝送状態を判別するものとして、利用することができる。また、検出可能な最低信号光強度を改善した心線対照器(IDテスタ)の光検出器として使用することができる。
【0223】
更に、伝送中の信号光強度を、伝送状態を保持したままで、簡易に測定する伝送光強度測定器や、光伝送路の中長期的な変化を監視する光モニターとしての適用が可能となる。
【符号の説明】
【0224】
10…光漏洩部品
11…光コード
11a…光ファイバ素線
11b…コード外被
11c…2次被覆材
11d…抗張力体
12…スライドキャップ
13…エンドチューブ
14…光漏洩部品本体
15…光ファイバ固定部
17…湾曲形成部
18…光ファイバ処理領域
19…光ファイバ折り返し部
20…平坦部
21…凹部
22…開口部
23…斜面
24…挿入溝
30…光検出器
31…検出部
32…光検出器本体
33…同軸ケーブル
34…検出部外ケース
34a…突起
35…レバー付き上ケース
35a…レバー
36…検出部表示部
37…本体表示部
38…表示パネル
39…電源ボタン
40…感度補正ボタン
51…レール
52…側板
53…レール用溝
54…バネ
55…光漏洩部品保持部
56…凸部
57…光漏洩部品挿入用ガイド
58…光ファイバ押さえ
59…受光素子
60…制御回路基板
61…トリガースイッチ
62…溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路中に設置され、光ファイバ素線または光ファイバ心線のいずれか一方の状態にされた前記光伝送路の被覆除去部を保持する光漏洩部品と、前記光伝送路とは別個の、測定時に前記光漏洩部品を収納して保持し、更にその一部と互いに嵌合し、その嵌合状態を安定的に保持する保持構造を具備した光検出器とを備え、
前記光検出器は、嵌合時のみに前記光漏洩部品中の前記被覆除去部の一部を湾曲させることにより形成される光伝送路湾曲部から漏洩する伝送光信号を計測する受光素子を有し、
前記光漏洩部品および前記光検出器のいずれか一方に設けられた、嵌合時に前記光伝送路湾曲部の湾曲形状を形成する湾曲形成部と、
前記光漏洩部品および前記光検出器のいずれか一方に設けられた、前記被覆除去部の一部を嵌合時に前記湾曲形成部に押さえ付け、前記湾曲形成部の湾曲形状に沿って湾曲させる光ファイバ押さえを備え、
前記被覆除去部は、両端部が前記光漏洩部品の長さ方向の両側に構成された一対の光ファイバ固定部に固定されて、一対の前記光ファイバ固定部間に所定の余長を持って所定の長さで遊動自在に保持され、
前記光漏洩部品は、嵌合時の前記光伝送路湾曲部に相当する箇所とその両側の前記光ファイバ固定部との間に、前記被覆除去部を前記光伝送路湾曲部から前記光ファイバ固定部に導く光ファイバ処理領域を備えていることを特徴とする、前記光伝送路中を伝搬する光信号の伝送状態を判別する光伝送判別器。
【請求項2】
前記光漏洩部品が前記湾曲形成部を備え、
前記光検出器が前記光ファイバ押さえを備えていることを特徴とする請求項1に記載の光伝送判別器。
【請求項3】
前記光検出器が前記湾曲形成部および前記光ファイバ押さえを備えていることを特徴とする請求項1に記載の光伝送判別器。
【請求項4】
前記被覆除去部は、長さが前記光漏洩部品と前記光検出器との嵌合時の湾曲形状により決定される長さに設定され、それにより決定される余長を持って前記光ファイバ固定部間に遊動自在に保持されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光伝送判別器。
【請求項5】
前記湾曲形成部の曲率半径が1.5mm以上で、かつ5.5mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光伝送判別器。
【請求項6】
前記光ファイバ処理領域は、前記湾曲形成部に連続して形成され、嵌合時に前記被覆除去部が前記湾曲形成部の湾曲方向と反対に湾曲される光ファイバ折り返し領域と、前記光ファイバ折り返し領域と前記光ファイバ固定部との間に形成され、嵌合時に前記光ファイバ固定部に保持された前記被覆除去部の一部を前記光ファイバ固定部から屈曲することなく直線状に保持し、かつ非嵌合時に前記被覆除去部が湾曲構造を形成する空間の一部となる、所定の長さの光ファイバ整列領域を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光伝送判別器。
【請求項7】
嵌合時に前記光伝送路湾曲部が形成する弧の中心角が、嵌合時のその両側の前記光ファイバ折り返し領域の前記被覆除去部が形成する弧の各中心角の和に等しいことを特徴とする請求項6に記載の光伝送判別器。
【請求項8】
遊動自在に固定された前記光ファイバ固定部間の前記被覆除去部の非嵌合時における湾曲曲率が、前記被覆除去部を形成する前記光ファイバ素線または前記光ファイバ心線の長期信頼性に規定された曲率で保持され、前記光ファイバ整列領域の幅はその曲率から換算され、設定されていることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の光伝送判別器。
【請求項9】
前記光ファイバ押さえは、前記湾曲形成部と嵌合する領域に、光信号が通過する所定の光通過部材部または隙間として光ファイバ押え隙間部が形成され、かつ嵌合時に各前記光ファイバ折り返し領域の少なくとも一部と嵌合する構造を有することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の光伝送判別器。
【請求項10】
各前記光ファイバ折り返し領域の前記光ファイバ押さえと嵌合する部分で、前記被覆除去部に接触する曲面の曲率半径が、前記湾曲形成部の曲率半径の1.3倍以上であることを特徴とする請求項9に記載の光伝送判別器。
【請求項11】
前記湾曲形成部の湾曲方向と反対に湾曲した、前記湾曲形成部の湾曲に連続する湾曲面を持つ光ファイバ折り返し部が、前記湾曲形成部の両側の前記光ファイバ折り返し領域に形成され、その光ファイバ折り返し部が嵌合時に前記光ファイバ押さえと対向して嵌合し、それらの間に前記被覆除去部の一部を安定的に保持することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の光伝送判別器。
【請求項12】
有効深さが前記被覆除去部の外径±0.1mm以内で、有効幅が前記被覆除去部の外径以上でかつ前記受光素子の受光面の幅以下の溝が、前記湾曲形成部または前記光ファイバ押さえまたは前記光ファイバ折り返し部の少なくとも1箇所に前記光伝送路の長さ方向に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の光伝送判別器。
【請求項13】
前記溝の断面形状が左右対称なV溝を基本とする形状であり、かつその溝内面の少なくとも1部に光反射面が形成されていることを特徴とする請求項12に記載の光伝送判別器。
【請求項14】
前記光漏洩部品と前記光検出器との嵌合時に前記湾曲形成部の湾曲形状に沿って湾曲させられた前記光伝送路湾曲部の表面と、前記受光素子の受光面との最短距離が2mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の光伝送判別器。
【請求項15】
前記光ファイバ押えは、前記光通過部材部または前記光ファイバ押え隙間部の前記光ファイバ折り返し領域側の側面の少なくとも一部に光信号を前記受光素子側に反射する光反射面が形成されていることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の光伝送判別器。
【請求項16】
未操作時に、前記光漏洩部品と前記光検出器との嵌合が保持される操作機構を備えることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の光伝送判別器。
【請求項17】
前記光検出器は、前記受光素子を含む検出部と、前記受光素子で計測される光信号の伝送状態判別の測定の制御を行う制御回路を含む光検出器本体とに分離されていることを特徴とする請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の光伝送判別器。
【請求項18】
前記光検出器は、予め測定された光結合効率から測定値を光伝送路を伝送する信号光強度に換算する機能を有することを特徴とする請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の光伝送判別器。
【請求項19】
前記光漏洩部品は、予め測定された光結合効率の光漏洩部品による固体差を補正する補正値を示す識別コードが表記されていることを特徴とする請求項18に記載の光伝送判別器。
【請求項20】
前記光検出器は光線路モニター機能を有し、かつ光漏洩部品を把持した状態で中長期的に保持されることを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の光伝送判別器。
【請求項21】
前記光検出器は心線対照機能を有し、かつ前記光漏洩部品は最小の許容曲げ半径が5 mm以下の光ファイバを用いた光ファイバコードに適用されることを特徴とする請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の光伝送判別器。
【請求項22】
前記光伝送路を形成する光伝送体であって、その少なくとも一部に請求項1から請求項8、または請求項10から請求項13、または請求項19から請求項21のいずれか1項に記載の光漏洩部品が備えられていることを特徴とする光伝送体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−108941(P2013−108941A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256259(P2011−256259)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000241957)北海道電力株式会社 (78)
【出願人】(000205661)大崎電気工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】