説明

光制御装置

【課題】空間光変調器及びランダム位相マスクの組み込み位置精度を向上することができる光制御装置を提供する。更に、衝撃や振動に対して空間光変調器とランダム位相マスクとの間の位置ずれを防止することができる光制御装置を提供する。
【解決手段】光制御装置1において、基板2と、基板2上に配設され、光を変調する光変調ユニット3と、光変調ユニット3の光軸5上において光変調ユニット3に積層されたランダム位相マスク4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光制御装置に関し、特に光変調を行う光制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記非特許文献1には、ホログラムメモリをターゲットとして情報の書き込みを行うホログラフィックレコーディングシステムが記載されている。このシステムにおいては、空間光変調器(SLM:spatial light modulator)とランダム位相マスク(RPM:random phase mask)とが別々に準備され、これらは反射ミラー、光学レンズ等を介在させて光学系に組み込まれる。
【0003】
空間光変調器はレーザ光源から発せられるコヒーレント光の強度、位相、偏光等の変調を行う。空間光変調器が周期的な構造を持つために、空間光変調器により変調された光は回折される。回折光が生じると、近接光同士に干渉が生じたり、光の利用効率が低下する。また、光情報としては意味を持たない光のDC成分が多く発生する。この光のDC成分の光強度は強く、DC成分以外の部分にも感光が生じるので、写真や媒体に情報を記録する際に誤動作の原因になる。
【0004】
ランダム位相マスクは、空間光変調器により変調された光に空間的にランダムな位相変化を与え、回折光の発生やDC成分の発生を防止する。
【非特許文献1】2005 Optical Society of America, OCIS codes: (090.0090) Holography; (090.4220) Multiplex holography. Koji ISHIOKA et al., “Optical Collinear Holographic Recording System Using a Blue Laser and a Random Phase Mask”.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の非特許文献1に記載されたホログラフィックレコーディングシステムにおいては、以下の点について配慮がなされていなかった。空間光変調器とランダム位相マスクとの間には反射ミラー、光学レンズ等が組み込まれ、更に双方の間は離間されている。このため、空間光変調器及びランダム位相マスクの組み込み位置精度を高くすることが難しい。組み込み位置精度を高めるには製作コストが増大し、ホログラフィックレコーディングシステムの製品コストが増大する。
【0006】
また、ホログラフィックレコーディングシステムの取り扱い方によっては、空間光変調器及びランダム位相マスクが組み込まれた後に、システム全体が衝撃や振動を受ける。この場合、空間光変調器、ランダム位相マスクの少なくともいずれか一方の組み込み位置にずれが生じ、動作上の信頼性を十分に確保することが難しい。
【0007】
本発明は前述の課題を解決するためになされたものである。従って、本発明は、空間光変調器及びランダム位相マスクの組み込み位置精度を向上することができる光制御装置を提供することである。更に、本発明は、衝撃や振動に対して空間光変調器とランダム位相マスクとの間の位置ずれを防止することができ、動作上の信頼性を向上することができる光制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、光制御装置において、基板と、基板上に配設され、光を変調する光変調ユニットと、光変調ユニットの光軸上において光変調ユニット内部に配設されたランダム位相マスクとを備える。
【0009】
また、第1の特徴に係る光制御装置において、基板は光を透過するガラス基板であり、光変調ユニットは光透過型であることが好ましい。また、第1の特徴に係る光制御装置において、基板は光を透過しない半導体基板であり、光変調ユニットは光反射型であることが好ましい。
【0010】
また、第1の特徴に係る光制御装置において、光変調ユニットはトランジスタとキャパシタとの直列回路を有する光変調セルを複数配列したものであることが好ましい。更に、光変調ユニットのトランジスタは、第1の信号線に電気的に接続された一方の主電極領域と、他方の主電極領域と、第1の信号線とは異なる第2の信号線に電気的に接続された制御電極とを有し、キャパシタは、トランジスタの他方の主電極領域に一方が電気的に接続された第1の電極と、固定電源に接続される第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配設された電気光学膜とを有することが好ましい。更に、ランダム位相マスクは、隣接する光変調セルの1つと他の1つとにおいて厚さが異なる層により構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空間光変調器及びランダム位相マスクの組み込み位置精度を向上することができる光制御装置を提供することができる。更に、本発明によれば、衝撃や振動に対して空間光変調器とランダム位相マスクとの間の位置ずれを防止することができ、動作上の信頼性を向上することができる光制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施の形態はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態は、光透過型の空間光変調ユニットを備えた光制御装置に本発明を適用した例を説明するものである。
【0014】
[光制御装置のデバイス構成]
図1に示すように、第1の実施の形態に係る光制御装置1は、光を変調する光変調ユニット3(空間光変調ユニット)と、光変調ユニット3の光軸5上において光変調ユニット3に積層されたランダム位相マスク4とを備えている。光変調ユニット3は基板2上に配設されており、ランダム位相マスク4はこの基板2上に配設された光変調ユニット4上に積層されている。
【0015】
ここで、光変調ユニット3において「光の変調」とは、光の強度、位相、偏光等の変調を含む意味で使用されている。また、ランダム位相マスク4は、光変調ユニット3により変調された光、又は光変調ユニット4により変調される光に空間的にランダムな位相変化を与え、回折光の発生やDC成分の発生を防止する機能を備えている。
【0016】
基板2は、第1の実施の形態において、光を透過する透明基板である。例えば、基板2には石英基板を実用的に使用することができる。ランダム位相マスク4、光変調ユニット3のそれぞれを透過した光は、基板2の表面からその裏面まで透過され、この基板2の裏面から出力される。また、基板2の裏面からその表面に透過された光は、光変調ユニット3、ランダム位相マスク4のそれぞれを透過し、ランダム位相マスク4から出力される。すなわち、第1の実施の形態に係る光制御装置1は光透過型である。
【0017】
[光変調ユニットの回路構成]
光変調ユニット3は、図2に示すように、複数の光変調セル10を行列状に配列して構成されている。ここでは、回路構成を理解しやすくするために、行方向に配列された2個の光変調セル10(11)、10(12)、列方向に配列された2個の光変調セル10(21)及び10(22)によりセルアレイが構築されている。
【0018】
光変調セル10(11)は、行方向に延在する2本のビット線(第1の信号線)BL1及びBL1’と列方向に延在する2本のワード線(第2の信号線)WL1及びWL1’との交差部において配設され、それらに電気的に接続されている。光変調セル10(12)は、2本のビット線BL1及びBL1’と列方向に延在する2本のワード線WL2及びWL2’との交差部において配設され、それらに電気的に接続されている。
【0019】
光変調セル10(21)は、行方向に延在する2本のビット線BL2及びBL2’と2本のワード線WL1及びWL1’との交差部において配設され、それらに電気的に接続されている。そして、光変調セル10(22)は、2本のビット線BL2及びBL2’と2本のワード線WL2及びWL2’との交差部において配設され、それらに電気的に接続されている。
【0020】
ここで、ビット線BL1’、BL2’は、常時ロウレベル(固定電源)に保持され、実効的にグランド配線として使用されている。ワード線WL1’、WL2’は、常時ハイレベルに保持され、光変調セル10内にグランド電位を供給する。
【0021】
これらの合計4個の光変調セル10はセルアレイにおいて繰り返し配列パターンの基本パターンである。実際の光変調ユニット3は、基本パターンとなる4個の光変調セル10を行列状に複数配列している。
【0022】
光変調セル10は、トランジスタ32(1)とキャパシタ35とトランジスタ32(2)との直列回路により構成されている。光変調セル10(11)のトランジスタ32(1)は、ビット線BL1に一方の主電極領域を電気的に接続し、ワード線WL1に制御電極を電気的に接続し、キャパシタ35の一方の電極に他方の主電極領域を電気的に接続している。キャパシタ35は、第1の実施の形態において、電気光学膜キャパシタである。キャパシタ35は、一方の電極と他方の電極との間に電気光学膜を備え、他方の電極をトランジスタ32(2)の他方の主電極領域に電気的に接続している。トランジスタ32(2)は、ビット線BL1’に他方の主電極領域を電気的に接続し、ワード線WL1’に制御電極を電気的に接続している。
【0023】
トランジスタ32(1)、32(2)には、いずれも第1の実施の形態において、nチャネル導電型IGFET(insulated gate field effect transistor)が使用される。IGFETには、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)、MISFET(metal insulator semiconductor field effect transistor)、TFT(thin film transistor)が少なくとも含まれ、ここではTFTが使用されている。なお、トランジスタ32(2)は、前述のとおり、ワード線WL1’を常時ハイレベルに保持しているのでオン状態にあり、ビット線BL1’を常時ロウレベルに保持しているので、グランド電位をキャパシタ35の他方の電極に供給している。
【0024】
光変調セル10(12)のトランジスタ32(1)は、ビット線BL1に一方の主電極領域を電気的に接続し、ワード線WL2に制御電極を電気的に接続し、キャパシタ35の一方の電極に他方の主電極領域を電気的に接続している。キャパシタ35は、一方の電極と他方の電極との間に電気光学膜を備え、他方の電極をトランジスタ32(2)の他方の主電極領域に電気的に接続している。トランジスタ32(2)は、ビット線BL1’に他方の主電極領域を電気的に接続し、ワード線WL2’に制御電極を電気的に接続している。
【0025】
光変調セル10(21)のトランジスタ32(1)は、ビット線BL2に一方の主電極領域を電気的に接続し、ワード線WL1に制御電極を電気的に接続し、キャパシタ35の一方の電極に他方の主電極領域を電気的に接続している。キャパシタ35は、一方の電極と他方の電極との間に電気光学膜を備え、他方の電極をトランジスタ32(2)の他方の主電極領域に電気的に接続している。トランジスタ32(2)は、ビット線BL2’に他方の主電極領域を電気的に接続し、ワード線WL1’に制御電極を電気的に接続している。
【0026】
光変調セル10(22)のトランジスタ32(1)は、ビット線BL2に一方の主電極領域を電気的に接続し、ワード線WL2に制御電極を電気的に接続し、キャパシタ35の一方の電極に他方の主電極領域を電気的に接続している。キャパシタ35は、一方の電極と他方の電極との間に電気光学膜を備え、他方の電極をトランジスタ32(2)の他方の主電極領域に電気的に接続している。トランジスタ32(2)は、ビット線BL2’に他方の主電極領域を電気的に接続し、ワード線WL2’に制御電極を電気的に接続している。
【0027】
[光変調ユニットのデバイス構成]
光変調ユニット3の光変調セル10(11)において、トランジスタ32(1)は、図1及び図3に示すように、チャネル領域321と、チャネル領域321の一端に配設された第1の主電極領域322と、チャネル領域321の他端に配設された第2の主電極領域323と、チャネル領域321上のゲート絶縁膜324と、ゲート絶縁膜324上の制御電極(ゲート電極)325とを備えている。
【0028】
チャネル領域321、第1の主電極領域322及び第2の主電極領域323は、基板2上に下地絶縁膜31を介在して配設され、同一導電層かつ同一導電材料により構成されている。チャネル領域321、第1の主電極領域322及び第2の主電極領域323には例えば単結晶シリコン膜、多結晶シリコン膜又は非晶質シリコン膜を実用的に使用することができる。第1の主電極領域322及び第2の主電極領域323には抵抗値を低減するn型不純物が導入されている。下地絶縁膜31には例えばシリコン酸化膜を使用することができる。
【0029】
ゲート絶縁膜324には例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜の単層膜又はそれらを組み合わせた積層膜を実用的に使用することができる。制御電極325には例えばシリコン多結晶膜を実用的に使用することができ、このシリコン多結晶膜には抵抗値を低減する例えばn型不純物が導入されている。制御電極325は、列方向において隣接する他の光変調セル10(21)のトランジスタ32(1)の制御電極325と電気的に接続され、列方向に延在するワード線WL1を構成する(図3参照。)。また、ビット線BL1は第1の主電極領域322に電気的に接続され、ビット線BL1の断面構造の記載は省略するが、図3に示すように、ビット線BL1は行方向に延在する。
【0030】
光変調セル10(11)のトランジスタ32(2)は、図1及び図3に示すように、基本的にはトランジスタ32(1)と同一構造により構成され、チャネル領域321と、第1の主電極領域322と、第2の主電極領域323と、ゲート絶縁膜324と、制御電極325とを備えている。制御電極325は、列方向において隣接する他の光変調セル10(21)のトランジスタ32(2)の制御電極325と電気的に接続され、列方向に延在するワード線WL1’を構成する(図3参照。)。また、ビット線BL1’は第1の主電極領域322に電気的に接続され、ビット線BL1の断面構造の記載は省略するが、図3に示すように、ビット線BL1’は行方向に延在する。
【0031】
光変調セル10(11)のキャパシタ35は、図1、図3及び図4に示すように、トランジスタ32(1)及び32(2)上に配設され、光変調セル10(11)のほぼ全域に光変調セル10(11)毎に個別に配設された第1の電極351と、第1の電極351上の電気光学膜352と、図1、図3及び図5に示すように、電気光学膜352上において光変調セル10(11)のほぼ全域に光変調セル10(11)毎に個別に配設された第2の電極353とを備えている。第1の実施の形態において、キャパシタ35の第1の電極351は、一方の電極及び下部電極として使用され、トランジスタ32(1)の第1の主電極領域322に電気的に接続されている。第2の電極353は、他方の電極及び上部電極として使用され、トランジスタ32(2)の第1の主電極領域322に電気的に接続されている。
【0032】
第1の電極351、第2の電極353には例えばPt、Ir、Ru、RuO2、SrRuO3、(La, Sr) CoO3、Ti、TiN、TiOx等の導電性材料を実用的に使用することができる。
【0033】
電気光学膜352は、第1の電極351、第2の電極352のそれぞれに重複する領域において実効的に機能し、変調セル10(11)のほぼ全域に光変調セル10(11)毎に個別に配設されている。第1の実施の形態において、電気光学膜352には強誘電体膜具体的にはPZT(:Pb(Zr, Ti)O3、)を実用的に使用することができる。また、電気光学膜352には、PZTN(:Pb(Zr, Ti)Nb2O8)、PLZT(:(Pb, La)(Zr, Ti)O3)、PLT(:PbLaTiOx)、PTN(:PbTiNbOx)、SBT(:SrBi2Ta2O9)、SBTN(:SrBi2(Ta, Nb)2O9)、BTO(:Bi4Ti3O12)、BiSiOx、BLTO(:Bi4-xLaxTi3O12)等のいずれかを使用することができる。
【0034】
図1に示すように、キャパシタ35はトランジスタ32上を覆う絶縁膜33上に配設される。また、キャパシタ35上には絶縁膜36が配設される。絶縁膜33、36はいずれも例えばシリコン酸化膜により形成されている。また、絶縁膜36は反射防止(DBR)膜として機能させてもよい。
【0035】
光変調セル10(12)のデバイス構成は光変調セル10(11)のデバイス構成と同一であり、光変調セル10(11)及び10(12)は双方の境界線に対して線対象の平面パターンを有し構成されている。同様に、光変調セル10(21)のデバイス構成は光変調セル10(11)のデバイス構成と同一であり、光変調セル10(11)及び10(21)は双方の境界線に対して線対象の平面パターンを有し構成されている。更に、光変調セル10(22)のデバイス構成は光変調セル10(11)のデバイス構成と同一であり、光変調セル10(11)及び10(12)は双方の間の中心点に対して点対象の平面パターンを有し構成されている。
【0036】
[ランダム位相マスクの構成]
ランダム位相マスク4は、図1に示すように、光変調ユニット3に積層され、詳細には光変調ユニット3の最上層の絶縁膜36上に直接積層され、隣接する光変調セル10毎に厚さが異なる層により構成されている。具体的には、ランダム位相マスク4は、1つの光変調セル10上において薄い膜厚領域41と隣接する他の1つの光変調セル10上において厚い膜厚領域42とを備えている。
【0037】
図6には、ランダム位相マスク4の薄い膜厚領域41と厚い膜厚領域42とのランダムな配列状態を示す。符号「0」は薄い膜厚領域41である。符号「1」は厚い膜厚領域42である。この図6に示すランダム位相マスク4は、行方向に30個の光変調セル(画素)10、列方向に30個の光変調セル(画素)10を配列し、合計900個の光変調セル10を有する光変調ユニット3に使用される。
【0038】
ランダム位相マスク4の薄い膜厚領域41、厚い膜厚領域42のそれぞれを透過する光の位相差は「π」に設定されている。今、図1に符号「d」を付け指し示す薄い膜厚領域41の表面と厚い膜厚領域42の表面との段差は、光透過型の場合、ランダム位相マスク4の屈折率nm、ランダム位相マスク4が置かれた環境下の屈折率naとすると、下記式(1)及び式(2)により求められる。
【0039】
md−nad=(2m−1)λ/2 …(1)
d=(2m−1)λ/2(nm−na) …(2)
ここで、「m」は整数である。ランダム位相マスク4を例えば空気中に配設した場合には屈折率naは空気の屈折率「1」であるので、上記式(2)は下記式(3)に書き直せる。
【0040】
d=(2m−1)λ/2(nm−1) …(3)
ランダム位相マスク4には、光透過性を有する無機材料の薄膜、光透過性を有する有機材料の薄膜のいずれも使用することができる。無機材料の薄膜としては、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜のいずれかの単層膜、又はそれらを重ね合わせた複合膜を実用的に使用することができ、これらの薄膜はCVD法、スパッタリング法等の半導体製造プロセスを利用して形成される。ランダム位相マスク4においては、例えばフォトリソグラフィ技術により形成されたマスクを用い、部分的にエッチングを行うことにより、薄い膜厚領域41と厚い膜厚領域42とを作り分けることができる。
【0041】
また、有機材料の薄膜としては、ネガティブレジスト膜、ポジティブレジスト膜、クリアフィルタ等の樹脂膜を実用的に使用することができる。これらの薄膜は、フォトリソグラフィ技術において塗布法若しくはラミネート法により形成される。例えば、レジスト膜により製作されるランダム位相マスク4においては、表面の一部分を露光し現像することにより、薄い膜厚領域41と厚い膜厚領域42とを作り分けることができる。
【0042】
また、第1の実施の形態に係るランダム位相マスク4において、「光透過性」とは、光を透過すれば良く、無色透明である必要はないという意味で使用される。例えば、赤色染料を加えた樹脂膜によりランダム位相マスク4を製作し、このランダム位相マスク4は緑色のレーザ光に対して使用してもよい。この場合、ランダム位相マスク4において、緑色のレーザ光以外の余計な光を排除することができる。
【0043】
[ランダム位相マスクの特性]
次に、第1の実施の形態に係る光制御装置1において、ランダム位相マスク4の薄い膜厚領域41、厚い膜厚領域42のそれぞれを通過する光の位相差と光強度との関係を説明する。測定系6は、図7に示すように、光源61と、光源61から発せられる光を通過させる偏光ビームスプリッタ(PBS)62と、偏光ビームスプリッタ62を透過した光を変調する光制御装置1と、光制御装置1において変調された光を偏光ビームスプリッタ62を通して反射させ投影するスクリーン(SCR)63とを備え構築されている。ここでは、光制御装置1に後述する光反射型の光制御装置1が使用されているが、基本的な特性は第1の実施の形態に係る光制御装置1と同様である。また、光源61には、波長532 nmをもつ緑色コヒーレント光を発振するレーザ光源が使用される。
【0044】
図8は比較例である。(A)には、ランダム位相マスク4を備えていない光制御装置1において変調され、SCR63に映し出された光情報パターンを示す。(B)には、光強度(対数)と次数との関係を示す。(A)に示すように、ランダム位相マスク4を備えていないので、隣接する光変調セル10の境界部分において明るい光が存在する。そして、(B)に示すように、隣接する光変調セル10の境界部分において、光のDC成分が多く、光強度が突出したピークが検出される。このような光のDC成分は無駄な光エネルギであり、隣接する光変調セル10に誤情報を与える。
【0045】
図9は第1の実施例である。(A)には、位相差π/4に設定されたランダム位相マスク4を備えている光制御装置1において変調され、SCR63に映し出された光情報パターンを示す。(B)には、同様に光強度と次数との関係を示す。(A)に示すように、ランダム位相マスク4は備えているものの、位相差を十分に確保していないので、比較例に比べて光強度は低いものの、隣接する光変調セル10の境界部分において明るい光が存在する。そして、(B)に示すように、隣接する光変調セル10の境界部分において、光のDC成分がまだ検出される。
【0046】
図10は第2の実施例である。(A)には、位相差π/2に設定されたランダム位相マスク4を備えている光制御装置1において変調され、SCR63に映し出された光情報パターンを示す。(B)には、同様に光強度と次数との関係を示す。(A)に示すように、ランダム位相マスク4は備えているものの、位相差を十分に確保していないので、比較例並びに第1の実施例に比べて光強度は低いものの、隣接する光変調セル10の境界部分において明るい光が存在する。そして、(B)に示すように、隣接する光変調セル10の境界部分において、光のDC成分がまだ検出される。
【0047】
図11は第3の実施例である。(A)には、位相差3π/4に設定されたランダム位相マスク4を備えている光制御装置1において変調され、SCR63に映し出された光情報パターンを示す。(B)には、同様に光強度と次数との関係を示す。(A)に示すように、ランダム位相マスク4を備え、位相差を十分に確保しつつあるので、比較例、第1の実施例並びに第2の実施例に比べて光強度はかなり低くなり、隣接する光変調セル10の境界部分において明るい光の存在が消えつつある。そして、(B)に示すように、隣接する光変調セル10の境界部分において、光のDC成分が減少されつつある。
【0048】
図12は、第4の実施例であり、最適な例である。(A)には、位相差πに設定されたランダム位相マスク4を備えている光制御装置1において変調され、SCR63に映し出された光情報パターンを示す。(B)には、同様に光強度と次数との関係を示す。(A)に示すように、ランダム位相マスク4を備え、位相差を十分に確保しているので、比較例、第1の実施例、第2の実施例並びに第3の実施例に比べて光強度はかなり低くなり、隣接する光変調セル10の境界部分において明るい光の存在が消えている。そして、(B)に示すように、隣接する光変調セル10の境界部分において、光のDC成分を減少することができる。
【0049】
このように構成される第1の実施の形態に係る光制御装置1においては、光変調ユニット3にランダム位相マスク4を積層しているので、双方の組み込み位置精度を向上することができる。特に、光変調ユニット3、ランダム位相マスク4のそれぞれは半導体製造プロセスを利用して製作することができるので、組み込み位置精度は容易にミクロンオーダにすることができる。従って、光制御装置1の製作コストを大幅に削減することができる。
【0050】
更に、第1の実施の形態に係る光制御装置1においては、光変調ユニット3とランダム位相マスク4との接着性が高いので、衝撃や振動に対して光変調ユニット3とランダム位相マスク4との間の位置ずれを生じることが無くなり、動作上の信頼性を向上することができる。
【0051】
[第1の変形例]
第1の実施の形態の第1の変形例に係る光制御装置1は、図13に示すように、光変調ユニット3において、光変調セル10のキャパシタ35の第1の電極351と、隣接する他の光変調セル10のキャパシタ35の第1の電極351とを一体に構成している。つまり、隣接する光変調セル10の第1の電極351は共通電極として構成されている。この共通電極として構成された第1の電極には固定電源が供給される。
【0052】
このように構成される光制御装置1においては、光変調セル10の固定電源を供給する側のトランジスタ32(2)を省略し、1トランジスタ構造を実現することができる。
【0053】
[第2の変形例]
第1の実施の形態の第2の変形例に係る光制御装置1は、図14に示すように、光変調ユニット3において、光変調セル10のキャパシタ35の第2の電極353と、隣接する他の光変調セル10のキャパシタ35の第2の電極353とを一体に構成している。つまり、隣接する光変調セル10の第2の電極353は共通電極として構成されている。この共通電極として構成された第2の電極には固定電源が供給される。
【0054】
このように構成される光制御装置1においては、光変調セル10の固定電源を供給する側のトランジスタ32(2)を省略し、1トランジスタ構造を実現することができる。
【0055】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態は、前述の第1の実施の形態に係る光透過型の光制御装置1に代えて、光反射型の光制御装置1に本発明を適用した例を説明するものである。
【0056】
[光制御装置のデバイス構成]
図15に示すように、第2の実施の形態に係る光制御装置1は、基本的には前述の第1の実施の形態に係る光制御装置1と同様に、光を変調する光変調ユニット3と、光変調ユニット3の光軸5上において光変調ユニット3に積層されたランダム位相マスク4とを備えている。光変調ユニット3は基板2及び基板上に配設されており、ランダム位相マスク4は光変調ユニット4上に積層されている。
【0057】
ここで、光変調ユニット3並びにランダム位相マスク4の機能は前述の第1の実施の形態に係る光制御装置1の光変調ユニット3並びにランダム位相マスク4の機能と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0058】
基板2は、第2の実施の形態において、光を透過せずに反射する半導体基板である。例えば、基板2にはシリコン単結晶基板を実用的に使用することができる。ランダム位相マスク4、光変調ユニット3のそれぞれを透過した光は基板2の表面において反射され、この反射された光は光変調ユニット3、ランダム位相マスク4のそれぞれを透過し、ランダム位相マスク4から出力される。すなわち、第2の実施の形態に係る光制御装置1は光反射型である。
【0059】
[光変調ユニットのデバイス構成]
第2の実施の形態に係る光変調ユニット3の回路構成は前述の第1の実施の形態に係る図2に示す光変調ユニット3の回路構成と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0060】
光変調ユニット3の光変調セル10において、トランジスタ32(1)は、図15に示すように、チャネル領域321と、チャネル領域321の一端に配設された第1の主電極領域322と、チャネル領域321の他端に配設された第2の主電極領域323と、チャネル領域321上のゲート絶縁膜324と、ゲート絶縁膜324上の制御電極(ゲート電極)325とを備えている。
【0061】
チャネル領域321には基板2が利用されている。トランジスタ32(1)がnチャネル導電型IGFETの場合、基板2はp型シリコン単結晶基板が使用される。また、基板2にはn型若しくはp型シリコン単結晶基板が使用され、nチャネル導電型IGFETが配設される領域にp型ウエル領域が構成されていてもよい。第1の主電極領域322及び第2の主電極領域323は、基板2の主面部若しくはウエル領域の主面部において同一層に構成されている。第1の主電極領域322及び第2の主電極領域323には抵抗値を低減するn型不純物が導入されている。
【0062】
ゲート絶縁膜324には例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜の単層膜又はそれらを組み合わせた積層膜を実用的に使用することができる。制御電極325には例えばシリコン多結晶膜を実用的に使用することができ、このシリコン多結晶膜には抵抗値を低減する例えばn型不純物が導入されている。制御電極325は、列方向において隣接する他の光変調セル10のトランジスタ32(1)の制御電極325と電気的に接続され、列方向に延在するワード線WL1を構成する(前述の図2及び図3参照。)。また、ビット線BL1は第1の主電極領域322に電気的に接続され、ビット線BL1の断面構造の記載は省略するが、前述の図3に示すように、ビット線BL1は行方向に延在する。
【0063】
光変調セル10のトランジスタ32(2)は、基本的にはトランジスタ32(1)と同一構造により構成され、チャネル領域321と、第1の主電極領域322と、第2の主電極領域323と、ゲート絶縁膜324と、制御電極325とを備えている。制御電極325は、列方向において隣接する他の光変調セル10のトランジスタ32(2)の制御電極325と電気的に接続され、列方向に延在するワード線WL1’を構成する(前述の図2及び図3参照。)。また、ビット線BL1’は第1の主電極領域322に電気的に接続され、ビット線BL1の断面構造の記載は省略するが、前述の図3に示すように、ビット線BL1’は行方向に延在する。
【0064】
光変調セル10のキャパシタ35は、図15に示すように、トランジスタ32(1)及び32(2)上に配設され、光変調セル10のほぼ全域に光変調セル10毎に個別に配設された第1の電極351と、第1の電極351上の電気光学膜352と、電気光学膜352上において光変調セル10のほぼ全域に光変調セル10毎に個別に配設された第2の電極353とを備えている。第2の実施の形態において、キャパシタ35の第1の電極351は、一方の電極及び下部電極として使用され、トランジスタ32(1)の第1の主電極領域322に電気的に接続されている。第2の電極353は、他方の電極及び上部電極として使用され、トランジスタ32(2)の第1の主電極領域322に電気的に接続されている。第1の電極351、第2の電極353、電気光学膜352のそれぞれの具体的な材料は前述と同様である。
【0065】
図15に示すように、キャパシタ35はトランジスタ32上を覆う絶縁膜33上に配設される。また、キャパシタ35上には絶縁膜36が配設される。
【0066】
[ランダム位相マスクの構成]
ランダム位相マスク4は、図15に示すように、光変調ユニット3に積層され、詳細には光変調ユニット3の最上層の絶縁膜36上に積層され、隣接する光変調セル10毎に厚さが異なる層により構成されている。具体的には、ランダム位相マスク4は、1つの光変調セル10上において薄い膜厚領域41と隣接する他の1つの光変調セル10上において厚い膜厚領域42とを備えている。このランダム位相マスク4の薄い膜厚領域41と厚い膜厚領域42とのランダムな配列状態は例えば前述の図6に示す通りである。
【0067】
ランダム位相マスク4の薄い膜厚領域41、厚い膜厚領域42のそれぞれを透過する光の位相差は、光反射型であるので光透過型の半分の「π/2」に設定されている。今、図15に符号「d」を付け指し示す薄い膜厚領域41の表面と厚い膜厚領域42の表面との段差は、光反射型の場合、ランダム位相マスク4の屈折率nm、ランダム位相マスク4が置かれた環境下の屈折率naとすると、下記式(4)及び式(5)により求められる。
【0068】
2(nmd−nad)=(2m−1)λ/2 …(4)
d=(2m−1)λ/4(nm−na) …(5)
ここで、「m」は整数である。ランダム位相マスク4を例えば空気中に配設した場合には屈折率naは空気の屈折率「1」であるので、上記式(5)は下記式(6)に書き直せる。
【0069】
d=(2m−1)λ/4(nm−1) …(6)
ランダム位相マスク4には、第1の実施の形態に係るランダム位相マスク4と同様に、光透過性を有する無機材料の薄膜、光透過性を有する有機材料の薄膜のいずれも使用することができる。具体的なランダム位相マスク4の材料は前述の通りであるので、ここでの説明は省略する。
【0070】
このように構成される第2の実施の形態に係る光制御装置1においては、第1の実施の形態に係る光制御装置1と同様に、光変調ユニット3にランダム位相マスク4を積層しているので、双方の組み込み位置精度を向上することができる。特に、光変調ユニット3、ランダム位相マスク4のそれぞれは半導体製造プロセスを利用して製作することができるので、組み込み位置精度は容易にミクロンオーダにすることができる。従って、光制御装置1の製作コストを大幅に削減することができる。
【0071】
更に、第2の実施の形態に係る光制御装置1においては、光変調ユニット3とランダム位相マスク4との接着性が高いので、衝撃や振動に対して光変調ユニット3とランダム位相マスク4との間の位置ずれを生じることが無くなり、動作上の信頼性を向上することができる。
【0072】
[第1の変形例]
第2の実施の形態の第1の変形例に係る光制御装置1は、図16に示すように、光変調ユニット3において、光変調セル10のキャパシタ35の第1の電極351と、隣接する他の光変調セル10のキャパシタ35の第1の電極351とを一体に構成している。つまり、隣接する光変調セル10の第1の電極351は共通電極として構成されている。この共通電極として構成された第1の電極には固定電源が供給される。
【0073】
このように構成される光制御装置1においては、光変調セル10の固定電源を供給する側のトランジスタ32(2)を省略し、1トランジスタ構造を実現することができる。
【0074】
[第2の変形例]
第2の実施の形態の第2の変形例に係る光制御装置1は、図17に示すように、光変調ユニット3において、光変調セル10のキャパシタ35の第2の電極353と、隣接する他の光変調セル10のキャパシタ35の第2の電極353とを一体に構成している。つまり、隣接する光変調セル10の第2の電極353は共通電極として構成されている。この共通電極として構成された第2の電極には固定電源が供給される。
【0075】
このように構成される光制御装置1においては、光変調セル10の固定電源を供給する側のトランジスタ32(2)を省略し、1トランジスタ構造を実現することができる。
【0076】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態は、前述の第1の実施の形態に係る光透過型の光制御装置1において、ランダム位相マスク4の組み込み位置を代えた例を説明するものである。
【0077】
[光制御装置、光変調ユニット及びランダム位相マスクの構成]
図18に示すように、第3の実施の形態に係る光制御装置1は、光を変調する光変調ユニット3と、光変調ユニット3の光軸5上において光変調ユニット3内部に配設されたランダム位相マスク4とを備えている。
【0078】
基板2は、第3の実施の形態において、光を透過する透明基板である。すなわち、第3の実施の形態に係る光制御装置1は光透過型である。
【0079】
光変調ユニット3は前述の第1の実施の形態に係る光制御装置1の光変調ユニット3と同様に、基板2上に配設されている。
【0080】
ランダム位相マスク4は光変調ユニット4のトランジスタ32とキャパシタ35との間に配設されている。すなわち、ランダム位相マスク4は、光変調ユニット3のトランジスタ32とキャパシタ35との間において、トランジスタ32上に積層された(光変調ユニット3に積層された)層間の絶縁膜33を利用して構成されている。このランダム位相マスク4は、薄い膜厚領域41及び厚い膜厚領域42を備え、位相差を生じる。ランダム位相マスク4においては、半導体製造プロセスの中期段階、詳細にはトランジスタ32を形成した後、キャパシタ35を形成する前に製作されるので、高温度熱処理に耐え得る無機材料の薄膜、具体的にはシリコン酸化膜やシリコン窒化膜により製作されることが好ましい。
【0081】
このように構成される第3の実施の形態に係る光制御装置1においては、光変調ユニット3内部にランダム位相マスク4を配設しているので、双方の組み込み位置精度を向上することができる。特に、光変調ユニット3、ランダム位相マスク4のそれぞれは半導体製造プロセスを利用して製作することができるので、組み込み位置精度は容易にミクロンオーダにすることができる。従って、光制御装置1の製作コストを大幅に削減することができる。
【0082】
更に、第3の実施の形態に係る光制御装置1においては、光変調ユニット3とランダム位相マスク4との接着性が特にトランジスタ32とキャパシタ35との間にランダム位相マスク4を挟み込むんでいるので高く、衝撃や振動に対して光変調ユニット3とランダム位相マスク4との間の位置ずれを生じることが無くなり、動作上の信頼性を向上することができる。
【0083】
[変形例]
第3の実施の形態に係る光制御装置1は、前述の図13に示すように、光変調ユニット3において、光変調セル10のキャパシタ35の第1の電極351を共通電極として構成してもよい。
【0084】
また、第3の実施の形態に係る光制御装置1は、前述の図14に示すように、光変調ユニット3において、光変調セル10のキャパシタ35の第2の電極353を共通電極として構成してもよい。
【0085】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態は、前述の第2の実施の形態に係る光反射型の光制御装置1において、ランダム位相マスク4の組み込み位置を代えた例を説明するものである。
【0086】
[光制御装置、光変調ユニット及びランダム位相マスクの構成]
図19に示すように、第4の実施の形態に係る光制御装置1は、光を変調する光変調ユニット3と、光変調ユニット3の光軸5上において光変調ユニット3内部に配設されたランダム位相マスク4とを備えている。
【0087】
基板2は、第4の実施の形態において、光を透過せず反射する半導体基板である。すなわち、第4の実施の形態に係る光制御装置1は光反射型である。
【0088】
光変調ユニット3は前述の第1の実施の形態に係る光制御装置1の光変調ユニット3と同様に、基板2及び基板2上に配設されている。
【0089】
ランダム位相マスク4は光変調ユニット4のトランジスタ32とキャパシタ35との間に配設されている。すなわち、ランダム位相マスク4は、光変調ユニット3のトランジスタ32とキャパシタ35との間において、トランジスタ32上に積層された(光変調ユニット3に積層された)層間の絶縁膜33を利用して構成されている。このランダム位相マスク4は、薄い膜厚領域41及び厚い膜厚領域42を備え、位相差を生じる。ランダム位相マスク4においては、半導体製造プロセスの中期段階、詳細にはトランジスタ32を形成した後、キャパシタ35を形成する前に製作されるので、高温度熱処理に耐え得る無機材料の薄膜、具体的にはシリコン酸化膜やシリコン窒化膜により製作されることが好ましい。
【0090】
このように構成される第4の実施の形態に係る光制御装置1においては、光変調ユニット3内部にランダム位相マスク4を配設しているので、双方の組み込み位置精度を向上することができる。特に、光変調ユニット3、ランダム位相マスク4のそれぞれは半導体製造プロセスを利用して製作することができるので、組み込み位置精度は容易にミクロンオーダにすることができる。従って、光制御装置1の製作コストを大幅に削減することができる。
【0091】
更に、第4の実施の形態に係る光制御装置1においては、光変調ユニット3とランダム位相マスク4との接着性が特にトランジスタ32とキャパシタ35との間にランダム位相マスク4を挟みこんでいるので高く、衝撃や振動に対して光変調ユニット3とランダム位相マスク4との間の位置ずれを生じることが無くなり、動作上の信頼性を向上することができる。
【0092】
また、第4の実施の形態に係る光制御装置1においては、ランダム位相マスク4を光変調ユニット3に密着させると多重反射によって光変調セル(画素)10毎の反射率(透過率)が変化してしまうが、そのような反射率の変化を減少することができる。
【0093】
[変形例]
第4の実施の形態に係る光制御装置1は、前述の図16に示すように、光変調ユニット3において、光変調セル10のキャパシタ35の第1の電極351を共通電極として構成してもよい。
【0094】
また、第3の実施の形態に係る光制御装置1は、前述の図17に示すように、光変調ユニット3において、光変調セル10のキャパシタ35の第2の電極353を共通電極として構成してもよい。
【0095】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は前述の一実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものでない。例えば、本発明の実施の形態に係る光制御装置1は、ホログラフィックメモリのシステムに組み込まれることに限定されるものではなく、ディスプレイデバイス、光通信用スイッチ、レーザプリンタ、複写機、光演算装置、暗号化回路等の空間光変調を利用するシステムに適用することができる。
【0096】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含む。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光制御装置の断面図である。
【図2】図1に示す光制御装置の光変調ユニットの回路図である。
【図3】図1に示す光制御装置の光変調ユニットの平面図である。
【図4】図3に示す光変調ユニットのキャパシタの第1の電極の平面図である。
【図5】図3に示す光変調ユニットのキャパシタの第2の電極の平面図である。
【図6】図1に示す光制御装置のランダム位相マスクの模式的平面図である。
【図7】第1の実施の形態に係る光制御装置の特性を測定する測定系のシステム構成図である。
【図8】(A)は第1の実施の形態に係る比較例の光情報パターンを示す図、(B)は光強度と次数との関係を示す図である。
【図9】(A)は第1の実施の形態に係る第1の実施例の光情報パターンを示す図、(B)は光強度と次数との関係を示す図である。
【図10】(A)は第1の実施の形態に係る第2の実施例の光情報パターンを示す図、(B)は光強度と次数との関係を示す図である。
【図11】(A)は第1の実施の形態に係る第3の実施例の光情報パターンを示す図、(B)は光強度と次数との関係を示す図である。
【図12】(A)は第1の実施の形態に係る第4の実施例の光情報パターンを示す図、(B)は光強度と次数との関係を示す図である。
【図13】第1の実施の形態の第1の変形例に係る光制御装置の断面図である。
【図14】第1の実施の形態の第2の変形例に係る光制御装置の断面図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態に係る光制御装置の断面図である。
【図16】第2の実施の形態の第1の変形例に係る光制御装置の断面図である。
【図17】第2の実施の形態の第2の変形例に係る光制御装置の断面図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係る光制御装置の断面図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態に係る光制御装置の断面図である。
【符号の説明】
【0098】
1…光制御装置
10…光変調セル
2…基板
3…光変調ユニット
31…下地絶縁膜
32…トランジスタ
321…チャネル形成領域
322…第1の主電極領域
323…第2の主電極領域
324…ゲート絶縁膜
325…制御電極
33、36…絶縁膜
35…キャパシタ
351…第1の電極
352…電気光学膜
353…第2の電極
4…光変調ユニット
41…薄い膜厚領域
42…厚い膜厚領域
5…光軸
6…測定系
WL…ワード線
BL…ビット線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配設され、光を変調する光変調ユニットと、
前記光変調ユニットの光軸上において前記光変調ユニット内部に配設されたランダム位相マスクと、
を備えたことを特徴とする光制御装置。
【請求項2】
前記基板は光を透過するガラス基板であり、前記光変調ユニットは光透過型であることを特徴とする請求項1に記載の光制御装置。
【請求項3】
前記基板は光を透過しない半導体基板であり、前記光変調ユニットは光反射型であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光制御装置。
【請求項4】
前記光変調ユニットは、トランジスタとキャパシタとの直列回路を有する光変調セルを複数配列したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光制御装置。
【請求項5】
前記光変調ユニットのトランジスタは、第1の信号線に電気的に接続された一方の主電極領域と、他方の主電極領域と、前記第1の信号線とは異なる第2の信号線に電気的に接続された制御電極とを有し、前記キャパシタは、前記トランジスタの他方の主電極領域に一方が電気的に接続された第1の電極と、固定電源に接続される第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配設された電気光学膜とを有することを特徴とする請求項4に記載の光制御装置。
【請求項6】
前記ランダム位相マスクは、隣接する前記光変調セルの1つと他の1つとにおいて厚さが異なる層により構成されていることを特徴とする請求項4に記載の光制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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