説明

光化学センサ及びその製造方法

光化学センサの製造方法であって、主表面を有する反射基板を提供する工程と、少なくとも1つの本質的に微小多孔性のポリマーを含む検出層を主表面の少なくとも一部分に添着する工程と、検出層の少なくとも一部分上にほぼ連続的な半反射金属層を堆積させる工程であって、半反射金属層は、パラジウムを含みかつ層中に微細な不規則クラックの網目構造を有している工程と、クラックを広がらせるのに十分な温度で検出層及び半反射金属層を分子酸素の存在下で加熱する工程とを含む。また、方法に従って調製されるセンサも開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
揮発性有機化合物(すなわち、VOC)の存在を検出する、様々なセンサがある。光化学センサは、電磁放射線を使用して、例えば、VOCに曝露されたときのセンサ材料の光学的特性の変化を測定することによって、VOCの存在を検出する。
【0002】
原則として、そのようなセンサの応答時間は、少なくとも1つには、VOCをセンサ材料中に吸収し得る又はセンサ材料の表面上に吸着し得る速度によって決まる。光化学センサでセンシング材料として有用であることが知られている材料としては、「本質的な微小多孔質のポリマー(polymers of intrinsic microporosity)」又は「本質的に微小多孔性のポリマー(intrinsically microporous polymers)」として当該技術分野で様々に知られているものが挙げられる。本質的に微小多孔性のポリマーは、典型的に、充填効率の低さ、大きな細孔容積を有する固体状態の構造をもたらすことによって特徴付けられる。揮発性化合物は、典型的に、これらの細孔内に吸着されることができ、センサ用途においてそのような関心材料を作り出すことができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、本発明は、
主表面を有する反射基板を提供する工程と、
少なくとも1つの本質的に微小多孔性のポリマーを含む検出層を主表面の少なくとも一部分に添着する工程と、
検出層の少なくとも一部分上にほぼ連続的な半反射金属層を堆積させる工程であって、半反射金属層は、パラジウムを含みかつ層中に微細な不規則クラックの網目構造を有している、工程と、
クラックを広がらせるのに十分な温度で少なくとも検出層及び半反射金属層を分子酸素の存在下で加熱する工程とを含む、光化学センサの製造方法を提供する。
【0004】
一部の実施形態では、クラックを広がらせるのに十分な温度で検出層及び半反射金属層を加熱する工程はまた、少なくとも1つの本質的に微小多孔性のポリマーに、検出層から金属層を貫いて延びる突出部も形成させる。
【0005】
この方法は、典型的に、最も外側の層の透過性を高めて、VOC例を検出層によってより容易に吸着させ、それによってセンサでの使用を有利にしている。
【0006】
それ故に、別の態様では、本発明は、
主表面を有する反射基板と、
反射基板の主表面の少なくとも一部分上に配置された検出層であって、少なくとも1つの本質的に微小多孔性のポリマーを含む、検出層と、
検出層の少なくとも一部分上に配置されたほぼ連続的な半反射金属層とを含む、光化学センサであって、半反射金属層は、パラジウムを含んでおり、半反射金属層は、層中に微細な不規則クラックの網目構造を有する、光化学センサを提供する。
【0007】
本明細書で使用するとき、
「検体」とは、化学分析において検出されている特定の構成成分を意味し、
「光学的厚さ」とは、検出層に言及するときには、その物理的厚さとその屈折率との積を意味し、
「有機」とは、炭素を含有することを意味し、
「反射」とは、半反射性又は完全反射性を意味し、
「半反射」とは、完全反射性でも完全透過性でもない、例えば、20パーセント〜90パーセント反射性、又は30パーセント〜70パーセント反射性を意味する。
【0008】
本発明全体を通して、用語「微小多孔性」は、「ナノ多孔性」とも記載されることのある材料を広く包含することが意図されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に従って調製される代表的な光化学センサを図1Aに示す。ここで図1Aを参照すると、光化学センサ100は、主反射表面116を有する反射基板110を含む。一部の実施形態では、反射基板110は、表面に任意の反射層114を備えた任意の基材112を含む。検出層120は、表面116の少なくとも一部分上に配置された本質的に微小多孔性のポリマーを含む。パラジウム金属を含む半反射金属層130は、層120の少なくとも一部分上に配置され、また層中に微細なクラックの網目構造140を有する。突出部170(図1Bに示される)は、検出層120から半反射金属層130を貫いて延びる。
【0010】
反射基板は、反射表面を有するいずれの基板であってもよい。反射基板は、一体型の物体であってよく、比較的厚くても薄くてもよい。一体型の反射基板の例としては、反射金属箔又はシートが挙げられる。任意に、反射基板は、表面に反射層を備えた基材を含んでもよい。
【0011】
存在する場合、基材は、任意の反射層に支持をもたらすことのできるいずれか好適な材料を含んでよい。それは、可撓性であっても非可撓性であってもよい。基材材料は、用途に適応させることができる。典型的に、真空蒸着プロセスにおいて使用するのに好適である。代表的な基材としては、高分子フィルム、ガラス、セラミックス、及び金属が挙げられる。基材材料は、検体がそれを通り抜けることのできる穴の配列を含むように設計されることによって、検体透過性にすることができ得る。さらに、基材材料は、検体がそれを通り抜けることのできる織布又は不織布材料、メッシュ、若しくはフィルタ膜であってよい。
【0012】
反射基板(例えば、任意の反射層を含む)は、反射層を形成できるいずれの材料を含んでよい。典型的に、材料は、厚さ20nm〜200nmで完全反射性であるが、また、他の厚さも使用されてよい。例えば、材料のより薄い層は、典型的に、反射層を半反射性にするために使用することができる。代表的な好適な材料としては、アルミニウム、クロム、金、ニッケル、チタン、パラジウム、白金、ケイ素、及び銀など、金属及び半金属が挙げられる。金属及び/又は半金属の組合せ(例えば、金−パラジウム又はニッケル−クロムなど)も使用されてよい。反射基板に含めてよい他の好適な材料としては、例えば、酸化クロム及び酸化チタンなどの反射性金属酸化物が挙げられる。反射基板は、典型的に、半反射層よりも反射性にされるが、時には、例えば検体の存在に対する応答をセンサフィルムのどちらの側からも見られるように、反射層及び半反射層の反射率を同一にすることが望ましい。一部の実施形態では、反射基板は、また、それを通って検体が検出層に侵入できる穴又は他の開いた領域を作り出すようにエッチング又は穿孔されてもよいが、これは、必要条件ではない。
【0013】
本発明の一部の代表的な実施形態では、任意の反射層は、少なくとも90パーセント反射性(すなわち、少なくとも10パーセント透過性)であり、一部の実施形態では、99パーセント反射性(すなわち、1パーセント透過性)である。本発明の他の代表的な実施形態では、任意の反射層は、半反射層であり、反射層は、20パーセント〜90パーセント反射性又は30パーセント〜70パーセント反射性など、少なくとも20パーセント反射性である。
【0014】
検出層は、検体が存在しない状態でセンサによって反射される光と比べてセンサによって反射される光の観察される色の変化をもたらす、検体を取り込んだときに光学的厚さ(検出層の物理的厚さ(d)及び屈折率(n)によって決まる、光学的厚さ=n・d)の変化を起こす1つ又はそれより多くの本質的に微小多孔性のポリマーを含む。
【0015】
検出層は、任意に、2つ又はそれ以上の副層を含んでもよい。任意の副層の1つ若しくはそれより多くは、不連続又はパターン状であってよい。任意の副層は、様々な高分子材料を含んでよく、また、様々な検体を吸着してよく、及び/又は1つ若しくはそれより多くの検体に対して様々な感度を有してよい。任意の副層は、様々な構成を有してよく、例えば、積み重ねられても、横に並べられてもよい。
【0016】
一部の実施形態では、少なくとも1つの任意の副層は、例えば、光学干渉によって色を生み出す適切な厚さの透明な金属酸化物、金属窒化物、及び金属酸窒化物などの無機材料を含んでよい。好適な無機材料の具体例としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、窒化チタン、酸窒化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、及びそれらの組合せが挙げられる。また、ゼオライトなどの他の無機材料も、(1つ又は複数の)副層で使用するのに好適である。任意の(1つ又は複数の)副層は、微小多孔性、多孔性、又は非多孔性であってよい。
【0017】
少なくとも1つの任意の副層に含めてよい他の材料としては、米国特許出願第11/275,277号(代理人番号61197US002号)、名称「プラズマ蒸着された微小多孔性の検体検出層(PLASMA DEPOSITED MICROPOROUS ANALYTE DETECTION LAYER)」(2005年12月21日出願)に開示されているような、非晶質のランダム共有結合網目薄フィルム(amorphous random covalent network thin films)が挙げられる。
【0018】
典型的に、検出層の物理的厚さは、150ナノメートル〜1200ナノメートルの範囲、例えば、500ナノメートル〜900ナノメートルの範囲であるが、また、より薄い及びより厚い検出層も使用されてよい。
【0019】
検出層の厚さは、パターン状であってよい。このことは、検体の存在が検出層の屈折率変化を引き起こし、それによってパターンを消失させる(例えば、一部分が光学的厚さを隣接部分と同じ光学的厚さに変化させるとき)、又はパターンを出現させる(例えば、一部分が、隣接部分とは異なる光学的厚さをもつような光学的厚さ変化を起こすとき)ようにセンサが設計されるときに、望ましい可能性がある。
【0020】
検出層は、追加のポリマー構成成分、例えば、本質的に微小多孔性のポリマーである構成成分の少なくとも1つとの均質又は不均質ブレンドをさらに含んでよい。
【0021】
本明細書で使用するとき、用語「本質的に微小多孔性のポリマー」とは、処理又はテンプレート調製によるのではなくその分子構造に起因した微小多孔性を有する有機ポリマーを意味する。さらに、本質的に微小多孔性のポリマーは、少なくとも10パーセント、例えば、少なくとも15パーセント、又はさらに少なくとも30パーセントの自由体積を有する。
【0022】
ポリマーに適用されるとき、用語「自由体積」とは、ポリマーの分子によって実際に占有されていないポリマーの体積を指す。ガス種で接近可能な自由体積は、例えば、ブルナウアー・エメット・テラー(Brunauer-Emmett-Teller)(BET)、バレット・ジョイナー・ハレンダ(Barrett-Joyner-Halenda)(BJH)、又はホルバート・カワゾエ(Horvath-Kawazoe)分析と結び付けられた気体吸着技術を含め、様々な既知の方法によって容易に決定する可能性がある。例えば、気体吸着技術に関する詳細は、S.J.グレッグ(S.J.Gregg)及びK.S.W.シン(K.S.W.Sing)によって「吸着、表面積、及び多孔性(Adsorption,Surface Area,and Porosity)」、第2版、アカデミックプレス(Academic Press)、ロンドン(1982年)で報告されている。
【0023】
典型的に、有用な本質的に微小多孔性のポリマーは、単独と見なされるかそれらの組合せと見なされるかにかかわらず、気体吸着によって測定したときに1グラム当たり少なくとも0.1ミリリットル(0.1cc/g)、例えば、1グラム当たり少なくとも0.2ミリリットル(0.2cc/g)、又はさらに1グラム当たり少なくとも0.5ミリリットル(0.5cc/g)の接近可能な総細孔容積を有するが、また、その範囲外の値も使用されてよい。さらに、平均直径が0.3ナノメートル〜20ナノメートルの範囲の細孔由来の気体吸着によって測定したときに、少なくとも25パーセントの総細孔容積を有する本質的に微小多孔性のポリマーから、有用な結果が得られることが判明しているが、また、外側の孔径分布も使用されてよい。
【0024】
多くの本質的に微小多孔性のポリマーが知られている。例えば、化学コミュニケーション(Chemical Communications)、2004年、(2)、230〜231頁、バッド(Budd)らが、剛性(rigid)及び/又はねじ曲がった(contorted)モノマービルディングブロック間のジベンゾジオキサン結合を含む、一連の本質的に微小多孔性の材料を報告している。ポリマーのこのファミリーの代表的なメンバーとしては、スキーム1に従って表1に示される構成成分A(例えば、A1、A2、又はA3)と構成成分B(例えば、B1、B2、又はB3)との縮合によって生成されるものが挙げられる。
【0025】
【化1】

【0026】
【表1】

【0027】
さらに好適な構成成分A及びB、並びに得られる本質的に微小多孔性のポリマーは、当該技術分野において既知であり、例えば、バッド(Budd)ら、材料化学雑誌(Journal of Materials Chemistry)、2005年、第15巻、1977〜1986頁、及びマッコーウン(McKeown)ら、化学、ヨーロッパ雑誌(Chemistry, A European Journal)、2005年、第11巻、2610〜2620頁、及びPCT国際公開出願WO2005/012397A2(マッコーウン(McKeown)ら)に報告されている。
【0028】
そのようなポリマーは、例えば、A1(5,5’,6,6’−テトラヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビスインダン)などのビス−カテコールが、塩基性条件下で、例えば、B1(テトラフルオロテレフタロニトリル)などのフッ素化アレーンと反応させられる逐次重合によって、合成することができる。得られるポリマーの主鎖の剛性(rigidity)及びねじ曲がった(contorted)性質ゆえに、これらのポリマーは、固体状態で密に充填することができず、したがって、少なくとも10パーセントの自由体積を有し、本質的に微小多孔性である。
【0029】
本質的に微小多孔性のポリマーは、典型的に、例えばテトラヒドロフランなどの有機溶媒に可溶性であり、ゆえに、溶液から(例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、又はバーコーティングによって)フィルムとしてキャスティングすることができる。しかし、これらのポリマーの溶液から作製されるフィルムの特徴(接近可能な厚さ、光学的透明度、及び/又は外観)が、フィルムをキャスティングするために使用される溶媒又は溶媒系に応じて著しく異なる場合があることが見出されている。例えば、分子量のより高い本質的に微小多孔性のポリマーは、本明細書に記載の光化学センサで使用するのに望ましい特性を備えたフィルムを作り出すためには、比較的独特な溶媒(例えば、シクロヘキセンオキシド又はテトラヒドロピラン)からキャスティングされる必要がある場合がある。溶液コーティング方法に加えて、検出層は、他のいずれか好適な方法によって反射基板に適用されてよい。
【0030】
検出層及び/又は本質的に微小多孔性のポリマーは、望むなら、例えば高エネルギー放射線法によって、架橋されてよい。
【0031】
反射層及び半反射層は、半反射層を作製するために選択される技術が微細なクラックの網目構造を有するほぼ連続的な半反射層をもたらす、蒸発、スパッタリング、化学蒸着(CVD)、プラズマ蒸着、火炎堆積(flame deposition)、又は他のいずれかの技術などの標準的な蒸気コーティング技術によって検出層上に形成されてよい。反射層及び半反射層は、同一又は異なる技術を使用して作製されてよい。
【0032】
本発明によれば、本質的に微小多孔性のポリマーの熱処理が、例えば本明細書に記載の光化学センサにおけるそれらポリマーの性能を劇的に改善できることが見出されている。
【0033】
半反射金属層は、パラジウムを、純粋な金属としてか、又は、例えば、銅、水銀、ケイ素、アルミニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、クロム、オスミウム、金、又は銀など、1つ又はそれより多くの追加の金属又は半金属との組合せとして含む。
【0034】
半反射金属層は、検出層とは異なる屈折率を有する透過性のほぼ連続的な層を形成する。広くは、半反射金属層は、それが半反射性のままで、微細なクラックの網目構造を有する限り、いずれの厚さを有してもよい。典型的に、これらの特性は、3ナノメートル〜10ナノメートルの厚さで達成されるが、また、他の厚さも使用されてもよい。所望の厚さは、典型的に、層を形成するために使用される材料、層がその上に堆積される材料、検出される検体、及び検体を運ぶ媒体によって決まる。
【0035】
光化学センサは、追加のいずれかの層がセンサの光学系に著しい及び悪い影響を与えない限り、前述の要素のいずれかの間に追加の層を含んでよい。代表的な追加の層は、結合層(tie layers)及び構造層(structural layers)を含む。
【0036】
本発明による光化学センサは、クラックを広がらせるのに十分な温度で検出層及び半反射金属層を分子酸素の存在下で加熱する追加工程によって、米国特許出願公開第2004/0184948A1(ラコウ(Rakow)ら)に記載の手順に概ね従い製作されてよい。典型的に、200℃〜225℃の範囲の温度のオーブン内で少なくとも30分間加熱することが効果的であるが、他の温度及び持続時間も使用されてよい。250℃以上の温度では、ポリマーの分解が大規模に起こって問題となることがある。
【0037】
本発明による光化学センサは、例えば、センサが検体に曝露されたときに、そのセンサから得られる応答から、検体の濃度を計算又は推定するのに有用である。検体は、例えば、気体(例えば、有機蒸気)又は液体であってよい。
【0038】
センサ応答は、典型的に、比色分析的な性質(例えば、観察される色の変化として)であるが、他の応答も有用な場合がある。例えば、光化学センサは、センサと、光源と、所望により、色の変化、あるいはスペクトルのピーク位置又は強度の変化についてセンサを監視する手段とを含むシステムにおいて使用されてよい。本発明のセンサは、典型的に、反射分光法によって都合よく監視されてよい。光源は、天然又は人工光源とすることができる。監視は、様々な方法で実施することができる。それは、視覚的に、光検出器を用いて、又は他の好適な手段によって、実施することができる。
【0039】
配列を形成するために、2つ又はそれ以上の光化学センサを組み合わせてよい。配列は、いずれか好適な構成であってよい。例えば、配列は、横に並んだ2つ又はそれ以上のセンサを含んでよく、又はセンサは、基板の両側に取り付けられても、あるいは基板の両側に構築されてもよい。センサは、同一の種類のものであっても、異なるものであってもよい。
【0040】
少なくとも1つの実施形態では、検体は、その検体に曝露されたときの検出層の光学的厚さの変化によって検出される。そのような変化は、典型的に、可視光範囲で観察可能であり、しばしば人間の裸眼によって検出することができる。しかし、UV、赤外線、又は近赤外線など、他の光源に曝されたときの光学的厚さの変化を検出できるように、センサを設計することができる。また、様々な検出機構を使用することもできる。好適な検出機構の例としては、分光光度計、光ファイバ分光光度計、及び光検出器、例えば、電荷結合素子(ccd)、デジタルカメラなどが挙げられる。
【0041】
本発明の目的および利点を以下の非限定的な実施例によってさらに例示するが、これらの実施例の中で挙げる特定の材料および材料の量、並びに他の条件および詳細は、本発明を不当に限定するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0042】
特に記載のない限り、実施例及び本明細書の残りの部分における全ての部、百分率、比率などは、すべて重量によるものであり、実施例で使用される全ての溶媒及び試薬は、例えばミズーリ州セントルイス(Saint Louis,Missouri)、シグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich Company)などの一般的な化学薬品供給元から得られた又は入手可能なものであり、又は従来の方法によって合成し得る可能性がある。
【0043】
【表2】

【0044】
試験方法
表面積及び細孔容積測定
総細孔容積は、75ポイント微小細孔分析を使用して製造業者の指示に従って操作される商品表記「カンタロームオートソーブ1C(QUANTACHROME AUTOSORB 1C)」(カンタクロームインスツルメンツ(Quantachrome Instruments)、フロリダ州ボイントンビーチ(Boynton Beach,Florida))として入手可能な気体吸着分析器を使用する窒素吸着によって測定した。
【0045】
調製実施例P1〜P5
表2(以下)に示される試薬、条件、及びポリマーの説明を使用し、バッド(Budd)らの先端材料(Advanced Materials)、2004年、第16巻、第5号、456頁〜459頁に報告されている手順に概ね従って、モノマーBC及びモノマーFAからポリマーを調製した。
【0046】
【表3】

【0047】
表2において。「NM」は、測定されていないことを意味し、「総細孔容積」は、370ナノメートル未満の平均直径をもつ細孔を指す。
【0048】
各ポリマーをTHFに溶解させ、メタノールから3回沈殿させ、次いで室温で真空下で乾燥させた。いずれの場合にも、明るい黄色の固体が得られた。
【0049】
実施例1〜4及び比較実施例C1〜C3。
【0050】
厚さ100ナノメートルのアルミニウムコーティングを有するガラススライドを、反射基板として使用した。調製実施例P1からのポリマーをTHFに溶解させて、3重量パーセント溶液を得て、それを表3に示される速度でアルミニウム上にスピンコーティングした。スピンコーティング後、厚さ5ナノメートル(nm)のAu/Pd(Au対Pdの重量比60:40)層を、ポリマー上にスパッタコーティングした。こうして調製されたサンプルを、表3(以下)に示される温度にしたがって30分間ベルト炉内で空気中で加熱して、光化学センサを形成し、ポリマー層の色の変化を書き留めた。
【0051】
【表4】

【0052】
加熱されたサンプルのUV/VIS反射分光法で、250℃で加熱されたサンプルはUV/VIS反射スペクトルにおける明確なピークの喪失を示し、さらに200℃で加熱されたサンプルは最大反射率波長の大きなシフトを示したことが示された。
【0053】
図2は、倍率60,000倍で撮影された、加熱前の実施例1の反復実験の電子顕微鏡写真である。
【0054】
図3は、倍率60,000倍で撮影された、加熱後の実施例1の反復実験の電子顕微鏡写真である。
【0055】
(実施例5)
実施例1の多層フィルムサンプルを、低濃度のトルエン蒸気に対する応答について試験した。最大反射率ピーク波長における5ナノメートルの赤色シフトが、50百万分率(ppm)のトルエン蒸気で観察され、最大反射率ピーク波長における約50ナノメートルの赤色シフトが、2000ppm濃度で観察された。
【0056】
比較実施例C4
実施例1の多層フィルムの代わりに比較実施例1の多層フィルムを使用したことを除いて、実施例5を繰り返した。このフィルムについて、2000ppm以下のトルエン蒸気濃度では、最大反射率ピーク波長のシフト位置は、観察されなかった。
【0057】
比較実施例C5及びC6
2つの多層フィルムアセンブリを調製した。厚さ100ナノメートルのアルミニウム層を含むガラススライドをベース基板として使用した。調製実施例P3からのポリマーをTHFに溶解させて、5重量パーセント溶液を得て、それを1000rpmでアルミニウム上にスピンコーティングした。スピンコーティング後、両方のアセンブリで厚さ5nmのAl層をポリマー上に蒸発によって堆積させた。両方のコーティングされたアセンブリは、金属コーティング後、黄−赤の色相によって特徴付けられた。比較実施例C5を200℃で30分にわたってベルト炉内で加熱したが、黄−赤の色相の変化をもたらさなかった。比較実施例C6は、加熱処理しなかった。比較実施例C5及びC6を、低濃度のトルエン蒸気に対するそれらの応答について試験した。いずれのセンサも、2000ppmのトルエン蒸気ほどの高い濃度に対しては反射率スペクトル応答の変化を示さなかった。
【0058】
比較実施例C7及びC8
2つの多層フィルムアセンブリを調製した。厚さ100ナノメートルのアルミニウム層を含むガラススライドをベース基板として使用した。調製実施例P3からのポリマーをTHFに溶解させて、5重量パーセント溶液を得て、それを1000rpmでアルミニウム上にスピンコーティングした。スピンコーティング後、両方のアセンブリで厚さ5nmのTi層をポリマー上に蒸発によって堆積させた。両方のコーティングされたアセンブリは、金属コーティング後、黄−赤の色相によって特徴付けられた。比較実施例C7を200℃で30分にわたってベルト炉内で加熱したが、黄−赤の色相の変化をもたらさなかった。比較実施例C8は、加熱処理しなかった。比較実施例C7及びC8を、低濃度のトルエン蒸気に対するそれらの応答について試験した。比較実施例C7及びC8のいずれも、2000ppmのトルエン蒸気ほどの高い濃度に対しては反射率スペクトル応答の変化を示さなかった。
【0059】
比較実施例C9及びC10。
【0060】
2つの多層フィルムアセンブリを調製した。厚さ100ナノメートルのアルミニウム層を含むガラススライドをベース基板として使用した。調製実施例P4からのポリマーをTHFに溶解させて、5重量パーセント溶液を得て、それを1500rpmでアルミニウム上にスピンコーティングした。スピンコーティング後、厚さ5nmのクロム層を、各アセンブリのポリマー上に蒸発によって堆積させた。両方のコーティングされたアセンブリは、金属コーティング後、黄−緑の色相によって特徴付けられた。比較実施例C9を200℃で30分にわたってベルト炉内で加熱したが、黄−緑の色相の変化をもたらさなかった。比較実施例C10は、加熱処理しなかった。比較実施例C9及びC10を、低濃度のトルエン蒸気に対するそれらの応答について試験した。比較実施例C9及びC10のいずれも、2000ppmのトルエン蒸気ほどの高い濃度に対しては反射率スペクトル応答の変化を示さなかった。
【0061】
実施例6及び比較実施例C11
2つの多層フィルムアセンブリを調製した。厚さ100ナノメートルのアルミニウム層を含むガラススライドをベース基板として使用した。調製実施例P5からのポリマーをクロロベンゼンに溶解させて、4重量パーセント溶液を得て、それを3000rpmで基板上にスピンコーティングした。スピンコーティング後、両方のアセンブリでパラジウム層をポリマー層上にスパッタコーティング(厚さ約5nm)した。コーティングされたアセンブリは、Pd金属被覆後、青−緑の色によって特徴付けられた。実施例6を200℃で30分にわたってベルト炉内で加熱したところ、黄−緑の色相を与える色の変化をもたらした。比較実施例C11は、加熱処理しなかった。実施例6及び比較実施例C11を、トルエン蒸気の濃度に対するそれらの応答について試験した。実施例6は、2000ppmのトルエン蒸気でその可視反射率スペクトルにおける観察可能な応答を示したが、比較実施例C11は、2000ppmのトルエン蒸気まで応答を示さなかった。
【0062】
比較実施例C12及びC13。
【0063】
2つの多層フィルムアセンブリを調製した。厚さ100ナノメートルのアルミニウム層を含むガラススライドをベース基板として使用した。調製実施例P5からのポリマーをクロロベンゼンに溶解させて、4重量パーセント溶液を得て、それを3000rpmでアルミニウム上にスピンコーティングした。スピンコーティング後、両方のアセンブリでニッケル層をポリマー層上にスパッタコーティング(厚さ約5nm)した。両方のコーティングされたアセンブリは、金属コーティング後、黄−緑の色相によって特徴付けられた。比較実施例C12を200℃で30分にわたってベルト炉内で加熱したが、黄−緑の色相の変化はもたらさなかった。比較実施例C13は、加熱処理しなかった。比較実施例C12及びC13を、低濃度のトルエン蒸気に対するそれらの応答について試験した。比較実施例C12及びC13のいずれも、2000ppmのトルエン蒸気ほどの高い濃度に対しては反射率スペクトル応答の変化を示さなかった。
【0064】
本発明の種々の修正および変更は、本発明の範囲および精神を逸脱しなければ当業者によって行われてよく、また本発明は、本明細書に記載された例示的な実施形態に不当に限定されるべきではないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1A】本発明による代表的なセンサの斜視図。
【図1B】図1Aの半反射金属層130の一部分の拡大斜視図。
【図2】実施例1の手順に従って調製された代表的な光化学センサのPd−Au金属層の表面の、加熱処理前の走査型電子顕微鏡写真。
【図3】実施例1の手順に従って調製された代表的な光化学センサのPd−Au金属層の表面の、加熱処理後の走査型電子顕微鏡写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光化学センサの製造方法であって、
主表面を有する反射基板を提供する工程と、
少なくとも1つの本質的に微小多孔性のポリマーを含む検出層を前記主表面の少なくとも一部分に添着する工程と、
前記検出層の少なくとも一部分上にほぼ連続的な半反射金属層を堆積させる工程であって、前記半反射金属層は、パラジウムを含みかつ層中に微細な不規則クラックの網目構造を有している、工程と、
前記クラックを広がらせるのに十分な温度で少なくとも前記検出層及び前記半反射金属層を分子酸素の存在下で加熱する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの本質的に微小多孔性のポリマーに、前記検出層から前記半反射金属層を貫いて延びる突出部を形成させる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光化学センサを有機蒸気に曝露する工程と、
曝露に対する前記光化学センサの応答を観察する工程と、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有機蒸気の濃度を計算又は推定する工程をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記応答を観察する工程は、反射分光法を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記検出層は、ジベンゾジオキサン結合を有する少なくとも1つのポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記検出層は、150ナノメートル〜1200ナノメートルの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記半反射金属層は、3ナノメートル〜10ナノメートルの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記半反射金属層は、追加の金属又は半金属をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記反射基板は、反射表面を含む反射層を表面に備えた基材を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基材は、透過性である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基材は、織布材料、不織布材料、メッシュ、及びフィルタ膜から成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの本質的に微小多孔性のポリマーは、気体吸着によって測定したときに1グラム当たり少なくとも0.1ミリリットルの総細孔容積を有しており、前記総細孔容積の少なくとも25パーセントは、平均直径が0.3ナノメートル〜20ナノメートルの範囲の細孔に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
主表面を有する反射基板と、
前記反射基板の前記主表面の少なくとも一部分上に配置された検出層であって、少なくとも1つの本質的に微小多孔性のポリマーを含む、検出層と、
前記検出層の少なくとも一部分上に配置されたほぼ連続的な半反射金属層と
を含む、光化学センサであって、前記半反射金属層は、パラジウムを含んでおり、前記半反射金属層は、層中に微細な不規則クラックの網目構造を有しており、前記検出層から前記半反射金属層を貫いて延びる複数の突出部が存在する、センサ。
【請求項15】
前記反射基板は、反射表面を含む反射層を表面に備えた基材を含んでおり、前記検出層は、前記反射層の少なくとも一部分に添着される、請求項14に記載のセンサ。
【請求項16】
前記基材は、透過性である、請求項15に記載のセンサ。
【請求項17】
前記基材は、織布材料、不織布材料、メッシュ、及びフィルタ膜から成る群から選択される、請求項16に記載のセンサ。
【請求項18】
前記半反射金属層は、5ナノメートル〜10ナノメートルの範囲の厚さを有する、請求項14に記載のセンサ。
【請求項19】
前記検出層は、ジベンゾジオキサン結合を有する少なくとも1つのポリマーを含む、請求項14に記載のセンサ。
【請求項20】
前記検出層は、150ナノメートル〜1200ナノメートルの範囲の厚さを有する、請求項14に記載のセンサ。
【請求項21】
前記少なくとも1つの本質的に微小多孔性のポリマーは、気体吸着によって測定したときに1グラム当たり少なくとも0.1ミリリットルの総細孔容積を有しており、前記総細孔容積の少なくとも25パーセントは、平均直径が0.3ナノメートル〜20ナノメートルの範囲の細孔に由来する、請求項14に記載のセンサ。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−521675(P2009−521675A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547266(P2008−547266)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/046386
【国際公開番号】WO2007/075273
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】