説明

光反射体およびそれを用いた面光源装置

【課題】 高輝度で高反射率な光反射体を提供すること。
【解決手段】 基材層とその片面に形成された光拡散層を有する積層フィルムからなる光反射体であって、光反射面の表面粗さ指数が1以上、反射率が95%以上、正反射率が3%以下であることを特徴とする光反射体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面光源装置に使用される反射板、リフレクターおよび各種照明器具に用いられる光反射用の部材として有用であって、光反射体及び該光反射体を用いた面光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内蔵式光源を配置したバックライト型の液晶ディスプレイが広く普及している。バックライト型の内蔵光源のうち、直下式バックライトの典型的な構成は図2に示すとおりであり、構造体兼光反射体の役割を果たすハウジング11、拡散板14、そして冷陰極ランプ15などの光源からなる。サイドライト式バックライトの典型的な構成は図3に示すとおりであり、透明なアクリル板13に網点印刷12を行った導光板、光反射体11、拡散板14、そして冷陰極ランプ15などの光源からなる。いずれも光源からの光を光反射体で反射させて、拡散板で均一面状の光を形成するものである。近年では、照明光源について高出力化や光源ランプ数の増加などの改良が図られてきている。表示物の大型化に伴い、輝度向上のために図2や図3に示すように光源を複数個設置することもある。
【0003】
従来から、本用途の光反射体には白色ポリエステルフィルムが使用されることが多かった(例えば特許文献1)。ところが、白色ポリエステルフィルムを用いた光反射体の場合、近年の光量の増加、またランプからの熱による雰囲気温度の高温化により、光反射体の色調の変化(黄変)が問題になることがあり、より変色の少ない素材が求められるようになっていた。
【0004】
そこで近年、白色ポリオレフィンフィルムを用いた光反射体が提案されている(例えば特許文献2および3)。さらに白色ポリエステルフィルムを用いた光反射体に比べて色調の変化が少ない白色ポリオレフィンフィルムも提案されている(例えば特許文献4および5)。しかし最近では、表示物の大型化に伴い輝度向上の要望が高まっており、従来の白色ポリエステルフィルムや白色ポリオレフィンフィルムでは十分でなくなってきている。このため、より高輝度で高反射率な光反射体が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開平4−239540号公報
【特許文献2】特開平6−298957号公報
【特許文献3】特開2002−31704号公報
【特許文献4】特開平8−262208号公報
【特許文献5】特開2003−176367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光反射体の構造に特徴を持たせることにより、これまでにない輝度の向上を達成した高反射率な光反射体を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、光反射層の機能を有する基材層(A)に、表面に固有の粗さを有し光を効率よく拡散させる機能を有する光拡散層(B)を設け、光拡散性能を光反射体表面に付与することで、反射性能を飛躍的に向上させた積層フィルムであって、その表面粗さ指数Zが1以上、反射率が95%以上、正反射率が3%以下の特性を付与することにより、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の光反射体は、基材層(A)の片面に光拡散層(B)を有する積層フィルムからなっており;光反射体の光反射面の式(1)で表される表面粗さ指数Zが1以上であり、波長550nmでの反射率R1が95%以上であり、式(2)で表される波長550nmでの正反射率R2が3%以下であることを特徴とする。

光反射面の表面積Sf
表面粗さ指数Z = ――――――――――――――― 式(1)
光反射面の凹凸部の体積V

正反射率R2 = 反射率R1 − 拡散反射率R3 式(2)
(R3は波長550nmでの拡散反射率である)
【0009】
本発明の積層フィルムは、式(3)で表される散乱係数Sが0.5以上であることが好ましく、輝度が1430cd/m2以上であることが好ましく、基材層(A)は熱可塑性樹脂とフィラーを含有し、少なくとも1軸方向に延伸され、かつ面積延伸倍率が1.3〜80倍であり、基材層(A)のフィラー濃度が5〜75重量%であり、該フィラーが平均粒径0.05〜1.5μmの無機フィラー及び/又は平均分散粒径0.05〜1.5μmの有機フィラーであることが好ましく、光拡散層(B)のフィラー濃度が5〜90重量%であり、該フィラーが平均粒径0.05〜15μmの無機フィラー及び/又は平均分散粒径0.05〜15μmの有機フィラーであることが好ましい。特に表面処理された無機フィラーを用いることが好ましい。
100×R1
散乱係数S = ――――――――――――――― 式(3)
(100−R1)×TA×P
(TAは基材層(A)の肉厚(μm)、Pは式(4)で表される空孔率(%)である)
ρ0−ρ
空孔率P = ―――――――――――― 式(4)
ρ0
(上式において、ρ0は積層フィルムの真密度であり、ρは基材層Aの密度である)
また、積層フィルムは基材層(A)の光拡散層(B)を有する面とは反対面に中間層(C)を有することが好ましく、光反射面とは反対面の表面強度が250g以上であることが好ましく、光反射面の表面強度が250g以上であることが好ましく、光拡散層(B)の肉厚が0.5〜20μmであることが好ましい。
また、積層フィルムの空孔率Pは15〜60%であることが好ましく、該熱可塑性樹脂はポリオレフィン系樹脂が好ましい。さらに本発明は上記光反射体を用いた面光源装置も提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光反射体は、反射率が高く光拡散性に優れている。本発明の光反射体を用いて製造した面光源装置は、高輝度であり極めて有用である。
【発明の実施の形態】
【0011】
以下において、本発明の光反射体の構成および効果を詳細に説明する。なお、本発明において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を意味する。
【0012】
[基材層(A)]
光反射層の機能を有する基材層(A)は可視光線を効率よく反射させるために、可視光線の波長サイズの厚みに制御した空孔を多数含むことが好ましい。基材層(A)は熱可塑性樹脂とフィラーを含有することが好ましい。
熱可塑性樹脂
本発明の基材層(A)に用いられる熱可塑性樹脂の種類は特に制限されない。基材フィルムに使用する熱可塑性樹脂(A)としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
これらの中でも、耐薬品性や生産コスト等の観点より、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、プロピレン系樹脂を用いることがより好ましい。
【0013】
プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体や、主成分であるプロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン,4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとの共重合体を用いることができる。立体規則性は特に制限されず、アイソタクティックないしはシンジオタクティック及び種々の程度の立体規則性を示すものを用いることができる。また、共重合体は2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
【0014】
このような熱可塑性樹脂は、基材層(A)に25〜95重量%で使用することが好ましく、30〜90重量%で使用することがより好ましい。基材層(A)における熱可塑性樹脂の含有量が25重量%以上であれば、後述する積層フィルムの延伸成形時に表面にキズが生じにくくなる傾向があり、95重量%以下であれば充分な空孔数が得られやすくなる傾向がある。
【0015】
フィラー
本発明の基材層(A)に熱可塑性樹脂とともに用いられるフィラーとしては、各種無機フィラーまたは有機フィラーを挙げることができる。
無機フィラーとしては、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土等を例示することができる。また、上記無機フィラーの種々の表面処理剤による表面処理品も例示できる。中でも重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム及びそれらの表面処理品、クレー、珪藻土を使用すれば安価で延伸時の空孔形成性がよくなるために好ましい。さらに好ましいのは、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウムの種々の表面処理剤による表面処理品である。表面処理剤としては、例えば樹脂酸、脂肪酸、有機酸、硫酸エステル型陰イオン界面活性剤、スルホン酸型陰イオン界面活性剤、石油樹脂酸、これらのナトリウム、カリウム、アンモニウム等の塩、または、これらの脂肪酸エステル、樹脂酸エステル、ワックス、パラフィン等が好ましく、非イオン系界面活性剤、ジエン系ポリマー、チタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤、燐酸系カップリング剤等も好ましい。硫酸エステル型陰イオン界面活性剤としては、例えば長鎖アルコール硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、硫酸化油等あるいはそれらのナトリウム、カリウム等の塩が挙げられ、スルホン酸型陰イオン界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、パラフィンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、アルキルスルホコハク酸等あるいはそれらのナトリウム、カリウム等の塩が挙げられる。また、脂肪酸としては、例えばカプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヘベン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が挙げられ、有機酸としては、例えばマレイン酸、ソルビン酸等が挙げられ、ジエン系ポリマーとしては、例えばポリブタジエン、イソプレンなどが挙げられ、非イオン系界面活性剤としてはポリエチレングリコールエステル型界面活性剤等が挙げられる。これらの表面処理剤は1種類または2種類以上組み合わせて使用することができる。
これらの表面処理剤を用いた無機フィラーの表面処理方法としては、例えば、特開平5−43815号公報、特開平5−139728号公報、特開平7−300568号公報、特開平10−176079号公報、特開平11−256144号公報、特開平11−349846号公報、特開2001−158863号公報、特開2002−220547号公報、特開2002−363443号公報などに記載の方法が使用できる。
【0016】
有機フィラーとしては、熱可塑性樹脂の融点またはガラス転移点よりも高い融点またはガラス転移点(例えば、120〜300℃)を有するものが使用される。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、メラミン樹脂、環状オレフィン単独重合体、環状オレフィンとエチレンとの共重合体、ポリエチレンサルファイト、ポリイミド、ポリエチルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイト等を例示することができる。中でも、使用するポリオレフィン系樹脂よりも融点またはガラス転移温度が高くて非相溶性の有機フィラーを使用するのが空孔形成の点で好ましい。
基材層(A)には、無機フィラーまたは有機フィラーの中から1種を選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、有機フィラーと無機フィラーを混合して使用してもよい。
【0017】
無機フィラーの平均粒径及び有機フィラーの平均分散粒径は、例えば、マイクロトラック法、走査型電子顕微鏡による一次粒径の観察(本発明では粒子100個の平均値を平均粒径とした)、比表面積からの換算(本発明では(株)島津製作所製の粉体比表面積測定装置SS−100を使用し比表面積を測定した)などにより求めることができる。
後述する積層フィルムの延伸成形により発生させる空孔サイズの調整のため、上記無機フィラーの平均粒径、または有機フィラーの平均分散粒径は好ましくはそれぞれが0.05〜1.5μmの範囲、より好ましくはそれぞれが0.1〜1μmの範囲のものを使用する。平均粒径または平均分散粒径が1.5μm以下のフィラーを用いれば、空孔をより均一にしやすい傾向がある。また、平均粒径または平均分散粒径が0.05μm以上のフィラーを用いれば、所定の空孔がより得られやすくなる傾向がある。
【0018】
後述する積層フィルムの延伸成形により発生させる空孔量の調整のため、基材層(A)を構成する延伸フィルム中への上記フィラーの配合量は好ましくは5〜75重量%、より好ましくは10〜70重量%の範囲にする。フィラーの配合量が5重量%以上であれば、充分な空孔数が得られやすくなる傾向がある。また、フィラーの配合量が75重量%以下であれば、表面にキズがより生じにくくなる傾向がある。
【0019】
その他の成分
基材層(A)を構成する主要な樹脂がプロピレン系樹脂の場合、延伸性を改良するために、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル等のプロピレン系樹脂より低融点の樹脂を3〜25重量%配合してもよい。
【0020】
本発明で用いる基材層(A)は、単層構造であっても、多層構造であってもよい。基材層(A)の肉厚は、30〜1000μmが好ましく、40〜400μmがより好ましく、50〜300μmがさらに好ましい。
【0021】
[光拡散層(B)]
光拡散機能を有する光拡散層(B)は、可視光線を効率よく反射させるために微細な凹凸を多数有していることが好ましい。
光拡散層(B)は基材層(A)の光反射面のみもしくは両面に形成することができる。微細な凹凸のサイズは、通常0.1〜2.5μmであり、0.2〜1.5μmが好ましく、0.2〜1.0μmがより好ましく、可視光線の波長サイズ(0.38〜0.78μm)が特に好ましい。
即ち本発明は、従来の光反射基材に加えて、可視光線を効率よく拡散反射する光拡散層を積層することにより、光反射体表面近傍での拡散反射の割合を増やした場合に総合的な光反射の底上げが図れ、結果として光反射率がより高く、より高輝度の光反射体が得られることを見出し、完成したものである。
【0022】
光拡散層(B)には、基材層(A)に使用されるものと同様の熱可塑性樹脂およびフィラーを使用することができる。その際、フィラーの粒径により光反射層(B)の微細な凹凸のサイズを調整することができる。フィラーの粒径が可視光線の波長に近いほど光拡散性能が向上する。このため、フィラーの粒径は好ましくは0.05〜1.5μm、より好ましくは0.1〜1.0μm、さらに好ましくは0.2〜0.7μmとする。フィラーの粒径が0.05μm以上であれば、表面凹凸を形成しやすいためより良好な光拡散性能が得られやすくなる傾向がある。1.5μm以下であれば表面凹凸が過度に大きくなることを抑制し、良好な光拡散性能を維持しやすくなる傾向がある。表面強度を保持できる範囲内でフィラーを高濃度で配合することにより光拡散性能が向上する。フィラーの濃度は好ましくは5〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%、より好ましくは45〜70重量%である。配合量が5重量%以上であれば、表面凹凸を形成しやすいためより良好な光拡散性能が得られやすくなる傾向がある。配合量が90重量%以下であれば、一定以上の表面強度を維持しやすくなる傾向がある。
【0023】
光拡散層(B)の肉厚は、好ましくは0.5〜20μm、1〜15μmがより好ましく、2〜6μmがさらに好ましい。0.5μm以上であれば、十分な光拡散性能を付与しやすいため、良好な反射率を達成しやすくなる傾向がある。20μm以下であれば、基材層の反射性能を阻害しにくいため、反射率の低下をより抑えやすくなる傾向がある。
【0024】
[積層フィルム]
構成
本発明の光反射体を構成する積層フィルムは、基材層(A)と光拡散層(B)のみからなるものであってもよいし、その他に中間層(C)や適当な材料が付加されたものであってもよい。例えば、基材層(A)の両面に光拡散層(B)を積層した構造を有していてもよいし、基材層(A)の光拡散層(B)を含む面とは反対面もしくは基材層(A)と光拡散層(B)の間などに中間層(C)を有していてもよい。具体的には、(B)/(A)、(B)/(A)/(B)、(B)/(A)/(C)、(B)/(C)/(A)、(B)/(C)/(A)/(B)、(B)/(C)/(A)/(C)/(B)などの構造を有する積層フィルムを例示することができる。
【0025】
中間層(C)には、基材層(A)に使用されるものと同様の熱可塑性樹脂を使用することができる。また、中間層(C)は上記フィラーを含有してもよく、フィラーの配合量は好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜5重量%、特に好ましくは0〜3重量%の範囲とすることができる。中間層(C)の肉厚は1μm以上が好ましく、2〜30μmがより好ましく、3〜20μmがさらに好ましい。1μm以上にすれば、光反射体の表面強度を向上させ、加工適性を挙げやすくなる傾向がある。
【0026】
添加剤
本発明の積層フィルムには、必要により、蛍光増白剤、安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤等を配合してもよい。安定剤としては、立体障害フェノール系やリン系、アミン系等の安定剤を0.001〜1重量%、光安定剤としては、立体障害アミンやベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などの光安定剤を0.001〜1重量%、無機フィラーの分散剤としては、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ないしはそれらの塩等を0.01〜4重量%配合してもよい。
【0027】
成形
積層フィルムの成形方法としては、一般的な1軸延伸や2軸延伸方法が使用できる。具体例としてはスクリュー型押出機に接続された単層または多層のTダイやIダイを使用して溶融樹脂をシート状に押し出した後、ロール群の周速差を利用した縦延伸で1軸延伸する方法、さらにこの後にテンターオーブンを使用した横延伸を組み合わせた2軸延伸方法や、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時2軸延伸などが挙げられる。
【0028】
基材層(A)と光拡散層(B)からなる積層フィルムを形成するためには、例えば、基材層(A)の延伸成形前に多層TダイやIダイを使用して光拡散層(B)の溶融原料を共押出し、得られた積層体を延伸成形して設ける方法;上記基材層(A)が2軸延伸の場合、1軸方向の延伸が終了したのち、光拡散層(B)の溶融原料を押し出し貼合し、この積層体を1軸延伸成形して設ける方法;上記基材層(A)を延伸成形して得た後に光拡散層(B)の原料樹脂を直接または易接着層を介して押し出し貼合して設ける方法等を用いることができる。中間層(C)を形成する場合にも、これと同様の方法を採用することができる。
【0029】
延伸温度は使用する熱可塑性樹脂の融点より2〜60℃低い温度、ガラス転移点より2〜60℃高い温度であり、樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)のときは95〜165℃、ポリエチレンテレフタレート(ガラス転移点:約70℃)のときは100〜130℃が好ましい。また、延伸速度は20〜350m/分が好ましい。
また、得られた積層フィルムに必要に応じて熱処理(アニーリング処理)を行うことにより、結晶化の促進や積層フィルムの熱収縮率低減などを図ることもできる。
【0030】
積層フィルム中に発生させる空孔の大きさを調整するために、基材層(A)の面積延伸倍率は好ましくは1.3〜80倍の範囲とし、より好ましくは7〜70倍の範囲、さらに好ましくは22倍〜65倍、最も好ましくは25〜60倍とする。面積延伸倍率が1.3〜80倍の範囲内であれば、微細な空孔が得られやすく、反射率の低下も抑えやすい。
【0031】
本発明の積層フィルム中に発生させる空孔の単位体積あたりの量を調整するために、空孔率は好ましくは15〜60%、より好ましくは20〜55%の範囲とする。本明細書において「空孔率」とは、上記式(4)にしたがって計算される値を意味する。式(4)のρ0は真密度を表し、ρは密度(JIS−P8118)を表す。延伸前の材料が多量の空気を含有するものでない限り、真密度は延伸前の密度にほぼ等しい。
【0032】
本発明で用いる積層フィルムの密度は、一般に0.5〜1.2g/cm3の範囲である。空孔が多いほど密度は小さくなり空孔率は大きくなる。空孔率が大きければ、表面の反射特性をより大きく向上させることができる。
【0033】
[光反射体]
本発明の光反射体は、上記の積層フィルムからなる。本発明の光反射体の表面粗さ指数Zは1以上、好ましくは1〜1000、より好ましくは2〜100、特に好ましくは3〜10である。表面粗さ指数Zは表面の凹凸の度合を意味し、光反射体の単位面積当たりの微細な凹凸の数に比例する。表面粗さ指数Zが1未満の場合、正反射率が高く、反射率が低下する傾向があり、面光源装置での輝度が低下するため好ましくない。表面粗さ指数Zを1以上にし、正反射率R2を3%以下にするためには、例えば、構造の微細化が容易なこと、また生産性がよいことから無機フィラーおよび/または有機フィラーを光拡散層(B)に添加し、フィラーにより表面に微細な凹凸を付与する方法;エンポスロールなどを用いて表面に微細な凹凸を付与する方法;特に好ましくは、可視光線の波長サイズ(0.38〜0.78μm)に近い粒径のフィラーを光拡散層(B)に添加し延伸する方法などを採用することができる。
【0034】
波長550nmで測定した反射率R1は95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%〜100%である。正反射率R2は3%以下、好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2%〜0%である。反射率が95%未満では面光源装置での輝度が低く好ましくない。また、正反射率R2が3%を越えると反射率R1が低下する傾向があり、面光源装置での輝度が低下し好ましくない。反射率R1を95%以上にするためには、例えば、構造の微細化が容易なこと、また生産性がよいことから基材層(A)に可視光線の波長サイズ(0.38〜0.78μm)に近い粒径のフィラーを添加し延伸することにより、可視光線の波長サイズに近い厚みの空孔を多数形成する方法;または、基材層(A)に屈折率が高く、粒径が可視光線の波長サイズに近いフィラーを高濃度添加する方法などを採用することができる。
【0035】
また、本発明の光反射体は、上記式(3)で定義される散乱係数Sが0.5以上、好ましくは0.6〜100、より好ましくは0.8〜50である。散乱係数Sは、空孔の単位体積あたりの光の散乱の度合いを意味し、R1に比例し、基材層(A)の肉厚TAおよび空孔率Pに反比例する。本発明によって、より微細で均一な大きさで、扁平な形の空孔を数多く基材層(A)に形成することにより、基材層(A)を必要以上に厚くすることなく、光反射体として所望の輝度を得ることができる。
【0036】
光反射体の輝度は後述する方法により測定することができる。本発明の光反射体の輝度は好ましくは1430cd/m2以上、より好ましくは1450cd/m2以上、さらに好ましくは1460cd/m2〜3000cd/m2、特に好ましくは1470cd/m2〜2000cd/m2である。
【0037】
本発明の光反射体の光反射面とは反対側の面(非反射面)の表面強度は好ましくは250g以上であり、より好ましくは270〜1000gである。また、光反射体の光反射面の表面強度は好ましくは250g以上であり、より好ましくは270〜1000gである。表面強度が250g未満であれば、光反射体を取り扱う際に、表面が傷つきやすくなり、表面破壊等の問題が発生する場合がある。
【0038】
本明細書でいう表面強度は、後述する測定法に示すとおり、光反射体の測定面に幅18mmの粘着テープを貼り、300mm/minの速度で剥離した際の剥離荷重を意味する。表面強度が250g以上であれば、本発明の光反射体を板材に貼合し各種成形加工した場合に浮きや剥離等の問題をより生じにくくすることができる。
【0039】
本発明の光反射体の形状は特に制限されず、使用目的や使用態様に応じて適宜決定することができる。通常は、板状やフィルム状にして使用するが、その他の形状で使用した場合であっても光反射体として使用するものである限り、本発明の範囲内に包含される。
【0040】
[面光源装置]
本発明の光反射体を用いて、面光源装置を製造することができる。本発明の面光源装置の具体的な構成は特に制限されない。典型的な面光源装置は、光源、導光板、光反射板を少なくとも備えており、好ましくは拡散板も備えている。例えば、図2に示すような直下式バックライトや、図3に示すようなサイドライト式バックライトを例示することができる。本発明の光反射体は、中でもサイドライト式バックライトを構成する光反射体として極めて有用である。本発明の光反射体を用いたサイドライト式バックライトは、導光板から裏抜けする光を光反射体が面方向に輝度ムラなく均一に反射させるため、見る人に自然な感じを与えることができる。
本発明の面光源装置は、液晶ディスプレイなどに効果的に配置することができる。液晶ディスプレイに応用した場合は、画質や明るさを長期に亘って良好に維持することができる。
【0041】
[その他の用途]
本発明の光反射体は、このような面光源装置のみならず、内蔵式光源を使用せずに室内光を反射させることを意図した低消費電力型の表示装置にも利用することが可能である。また、室内外照明用、電飾看板用光源の背面にも幅広く利用することができる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例、比較例及び試験例を記載して、本発明をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適時変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、本実施例に使用した材料を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
(実施例1)
表1に記載の材料を表2に記載の配合で混合した組成物(A)、組成物(B)と組成物(C)を、それぞれ別々の押出機を用いて250℃で溶融混練した。その後、一台の共押ダイに供給してダイ内で(A)の表面に(B)を積層、(A)の裏面に(C)を積層後、シート状に押し出し、冷却ロールで約60℃まで冷却することによってB/A/Cの積層物を得た。
この積層物を145℃に再加熱した後、多数のロール群の周速差を利用して縦方向に延伸し、再び約150℃まで再加熱してテンターで横方向に延伸した。ついでこの積層物を160℃に再加熱してテンターで横方向に延伸した。その後、160℃でアニーリング処理した後、60℃まで冷却し、耳部をスリットして三層構造の積層フィルムを得た。この積層フィルムを光反射体とした。
【0045】
(実施例2)
表1に記載の材料を表2に記載の配合で混合した組成物(A)を押出機を用いて250℃に溶融混練した。その後、シート状に押し出し、冷却ロールで約60℃まで冷却することによって基材層(A)を得た。この基材層(A)を145℃に再加熱した後、多数のロール群の周速差を利用して縦方向に表2に記載の倍率で延伸した。
表1に記載の材料を表2に記載の配合で混合した組成物(B)、(C)を溶融混練し、得られた基材層(A)の両面に溶融押し出しして光拡散層(B)、中間層(C)をB/C/A/Cとなるように積層した。ついでこの積層物を160℃に再加熱してテンターで横方向に表2に記載の倍率で延伸した。その後、160℃でアニーリング処理した後、60℃まで冷却し、耳部をスリットして表2に記載の厚みを有する四層構造の積層フィルムを得た(図1)。この積層フィルムを光反射体とした。
【0046】
(実施例3)
表1に記載の材料を表2に記載の配合で混合した以外は実施例2と同様にして光反射体を得た。
【0047】
(比較例1)
表1に記載の材料を表2に記載の配合で混合した組成物(A)を押出機を用いて250℃に溶融混練した。その後、シート状に押し出し、冷却ロールで約60℃まで冷却することによって基材層(A)を得た。この基材層(A)を145℃に再加熱した後、多数のロール群の周速差を利用して縦方向に表2に記載の倍率で延伸した。
表1に記載の材料を表2に記載の配合で混合した組成物(C)を溶融混練し、得られた基材層(A)の両面に溶融押し出しして、中間層(C)をC/A/Cとなるように積層した。ついでこの積層物を160℃に再加熱してテンターで横方向に表2に記載の倍率で延伸した。その後、160℃でアニーリング処理した後、60℃まで冷却し、耳部をスリットして表2に記載の厚みを有する三層構造の積層フィルムを得た。この積層フィルムを光反射体とした。
【0048】
(比較例2)
特開2002−031704号公報の実施例5を光反射体とした。
【0049】
(試験方法)
実施例1〜5および比較例1、2の光反射体を用いて、以下の試験を行った。
【0050】
光反射面の表面積Sf、凹凸部の体積V:
超深度形状測定顕微鏡(VK8510:(株)キーエンス製)を用いて倍率2000倍にて光反射体の光反射面の測定を行い、その光反射面の表面積をSf、凹凸部の体積をVとした。
【0051】
反射率R1:
JIS−Z8722の条件d記載の方法に従って測定した波長550nmの反射率をR1とした。
【0052】
拡散反射率R3:
JIS−Z8722の条件d記載の方法に従い、光トラップを用い、正反射成分をカットし、波長550nmの反射率を拡散反射率R3とした。
【0053】
輝度:
図3に例示する14インチサイズの面光源装置の11の位置に各光反射体をセットし、冷陰極ランプ15にハリソン社(製)インバーターユニットを接続した。冷陰極ランプ15に12V,6mAの管電流を流し点灯、照射して、3時間後に以下の評価を行った。輝度の測定に際しては、輝度計((株)トプコン社製、商品名:BM−7)を用い、面光源装置の法線方向に対して、輝度計測部と面光源装置の距離を50cmとし、計9点の輝度を測定してその平均値を求めた。
【0054】
表面強度:
幅18mmの粘着テープ(ニチバン製、商品名:セロテープ(登録商標))を光反射体の測定面に空気が入らないように100mm以上の長さに切って貼り付け、最後の10mm以上は貼り付けずに残した。その試料を20mm幅に切り取った。引張試験機((株)オリエンテック製、商品名:RTM−250)で荷重5kg用のロードセルを用い、チャック間隔を1cmにし、貼り付けずに残した粘着テープの部分と粘着テープを貼り付けなかった光反射体の部分をそれぞれ上下のチャックに挟んだ。300mm/minのスピードで引っ張り、チャートの安定している部分の荷重を読みとった。3回測定し、その平均値を算出することによって表面強度を求めた。
【0055】
加工性:
実施例および比較例で得られた光反射体を、ステンレス板(SUS#5052、厚さ0.6mm)に接着剤(東洋モートン社製、商品名:TM590)と硬化剤(東洋モートン社製、商品名:CAT56)を用いてドライラミネーションし、試料とした。光反射体側が山および谷になるようにプレス機で互いに逆向きに90°の角度で2カ所を曲げ加工し、以下の2段階で評価した。
○ ステンレス板からの浮きや剥がれがない。
× ステンレス板からの浮きや剥がれが見られる。
【0056】
これらの各測定結果を表2および表3に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】光反射体基材構成の例図である。
【図2】直下式バックライトの構成を示す断面図である。
【図3】サイドライト式バックライトの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 基材層(A)
2 光拡散層(B)
3 中間層(C)
11 光反射体(ハウジング)
12 網点印刷
13 アクリル板
14 拡散板
15 冷陰極ランプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層(A)の片面に光拡散層(B)を有する積層フィルムからなる光反射体であって、 光反射体の光反射面の式(1)で表される表面粗さ指数Zが1以上であり、波長550nmでの反射率R1が95%以上であり、式(2)で表される波長550nmでの正反射率R2が3%以下であることを特徴とする光反射体。
光反射面の表面積Sf
表面粗さ指数Z = ――――――――――――――――― 式(1)
光反射面の凹凸部の体積V

正反射率R2 = 反射率R1 − 拡散反射率R3 式(2)
(R3は波長550nmでの拡散反射率である)
【請求項2】
式(3)で表される光反射面の散乱係数Sが0.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の光反射体。
100×R1
散乱係数S = ―――――――――――――――― 式(3)
(100−R1)×TA×P
(TAは基材層(A)の肉厚(μm)、Pは式(4)で表される積層フィルムの空孔率(%)である)
ρ0−ρ
空孔率P = ――――――――――――― 式(4)
ρ0
(上式において、ρ0は積層フィルムの真密度であり、ρは基材層Aの密度である)
【請求項3】
輝度が1430cd/m2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光反射体。
【請求項4】
基材層(A)は熱可塑性樹脂とフィラーを含有し、少なくとも1軸方向に延伸され、かつ面積延伸倍率が1.3〜80倍であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光反射体。
【請求項5】
基材層(A)が平均粒径0.05〜1.5μmの無機フィラー及び/又は平均分散粒径0.05〜1.5μmの有機フィラーを含有し、基材層(A)のフィラー濃度が5〜75重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光反射体。
【請求項6】
光拡散層(B)が平均粒径0.05〜15μmの無機フィラー及び/又は平均分散粒径0.05〜15μmの有機フィラーを含有し、光拡散層(B)のフィラー濃度が5〜90重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光反射体。
【請求項7】
基材層(A)及び/又は光拡散層(B)が表面処理された無機フィラーを含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の光反射体。
【請求項8】
積層フィルムが、基材層(A)の光拡散層(B)を有する面とは反対面に中間層(C)を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光反射体。
【請求項9】
積層フィルムの光反射面とは反対面の表面強度が250g以上であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光反射体。
【請求項10】
積層フィルムの光反射面の表面強度が250g以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の光反射体。
【請求項11】
光拡散層(B)の肉厚が0.5〜20μmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の光反射体。
【請求項12】
積層フィルムの空孔率Pが15〜60%であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の光反射体。
【請求項13】
熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の光反射体。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の光反射体を用いた面光源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−18244(P2006−18244A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158841(P2005−158841)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】