説明

光反射型光学媒体及びスクリーン

【課題】
本発明の課題は、可視光領域の光を選択的に反射し、散乱光の影響が少ない光反射型光学媒体、及び、散乱光による表示する画像のコントラストの低下を生じさせにくいスクリーンを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、反射層により、単一又は複数の可視光領域の光を選択的に反射することができるとともに、反射層中に備えた染料により反射層中に存在する欠陥で発生する散乱光による影響を少なくさせた光反射型光学媒体を提供できる。また、前記反射層と染料を備えることにより、コントラストの低下を生じさせにくいスクリーンを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射型光学媒体及びスクリーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタから投射される光を反射して画像を表示する反射型スクリーンとしては、可視波長領域の全ての光を反射又は散乱し、波長特性のない白地のスクリーンが用いられてきた。また、所定の基板に微粒子を自己組織化により規則的に配列させて、3次元的な周期構造を構成したフォトニック結晶を形成し、これにより、所定の光のみを反射することができる光反射型光学媒体が開発されている。
【0003】
白地のスクリーンでは、画像に無関係な光がスクリーンに入射した場合、画像と同時に反射又は散乱される。(以下、本発明では、プロジェクタ等からスクリーンに投射される画像以外の画像とは無関係に入射する可視光を外部光と呼ぶ。)この外部光は、画像に重なって観察者の目に入り、画像のコントラストを劣化させる。
【0004】
このため、プロジェクタから白地のスクリーンに画像を投射する場合には、外部光を制限した暗室内で投射するのが一般的である。しかしながら、画像表示が暗室内に限定されることは、スクリーンを用いる表示システムの有用性を著しく損ない、用途を大きく制限する。又、暗室内で投射したとしても、スクリーンからの反射光が暗室内で散乱されてスクリーンに再入射する光、外部から漏れてくる光、及び、非常灯など暗室内に残存する光などの外部光の反射によって、画像コントラストは低下し、画像の暗黒部をスクリーン上で真の暗部として表示することができない。
【0005】
一方、微粒子を自己組織化により規則的に配列させた光反射型光学媒体は、微粒子を配列させた微粒子の層の中に欠陥が生じてしまう。この欠陥は、光散乱の要因となり、コントラストの低下、画質の劣化を招いてしまう。
【0006】
そこで、微粒子の層の中に欠陥の少ない3次元の周期構造を作るための方法として、種々の手法が開発されている(例えば、非特許文献1及び2)。例えば、微粒子を溶媒に分散させた微粒子分散溶液に、微粒子に対して親和性の良い基板を浸漬し、この基板を引き上げることで、基板に微粒子を写し取る。そして、溶媒を蒸発させることで、微粒子の自己組織化により規則的に配列した微粒子の層を得る方法(引き上げ法)がある(例えば、非特許文献3、4、及び、5参照)。
【0007】
また、微粒子に対して親和性の良い基板を微粒子分散溶液中に静置させ、微粒子が自身の重みにより徐々に沈殿し、微粒子の層を基板上に形成させる方法(重力沈降法)がある(例えば、非特許文献6参照)。
【0008】
さらに、微粒子よりも大きなスペーサーを挟んだマイクロセルを微粒子分散溶液に差し込み、毛管現象により分散液をセル内に充填させ、溶媒が蒸発するときに微粒子の自己組織化が起こり、微粒子の層を得る方法がある(例えば、非特許文献7参照)。
【0009】
また、投射画像を鮮明に表示し、視野角の広い反射型スクリーンとして、シート状基材に金属蒸着して形成した反射層と、その反射層の上に樹脂バインダに光拡散ビーズを均一に分散させた光拡散層を設けた反射型スクリーンがある(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
【非特許文献1】P. Jiang et al., Chem. Mater., 11, 2132 (1999)
【非特許文献2】Y. Xia et al., Adv. Mater., 12(10), 693 (2000)
【非特許文献3】K. Nagayama, J. Soc. Powder Technol., Japan, 32, 476 (1995)
【非特許文献4】J. D. Joannopoulos, Nature, 414(15), 257 (2001)
【非特許文献5】Y. −H. Ye et al., Appl. Phys. Lett., 78(1), 52 (2001)
【非特許文献6】H. Miguez et al., Adv. Mater., 10(6), 480 (1998)
【非特許文献7】B. Gates, D. Qin, Y. Xia, Adv. Mater. 11, 466, (1999)
【特許文献1】特開2003−302704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1のスクリーンは、シート状基材の表面を金属蒸着して形成した反射層の上に、光拡散ビーズを混合した光拡散層を設けることによって、反射層での画像光の光反射率を向上させてスクリーン輝度を高め、明るい場所でも高品質の画像を得ることができる。しかしながら、このスクリーンは、外部光及び散乱した光を吸収することができない。そのため、明るい場所においても画像を見ることができるほど高い反射率を有していても、散乱光により画像コントラストが低下してしまう。
【0012】
非特許文献1乃至7の方法は、均一な多層結晶を得るのが難しい、あるいは、非常に長い時間をかけなければならないという問題点がある。また、長い時間をかけて微粒子の層を作製しても、均一で欠陥の少ない微粒子の層を形成するのは困難である。
【0013】
そこで、上記実状に鑑み、単一又は複数の可視光領域の光を選択的に反射し、散乱光の影響が少ない光反射型光学媒体の提供を目的とする。また、単一又は複数の可視光領域の光を選択的に反射し、外部光及び散乱光により表示する画像のコントラストの低下を生じさせにくいスクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の光反射型光学媒体は、略平板状の基板と、上記基板上で自己組織化により微粒子を規則的に配列させ、単一又は複数の可視光領域の光を反射する反射層と、上記反射層に配され、所定の可視光領域の光を吸収する染料とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明の光反射型光学媒体によれば、光反射型光学媒体に可視光領域の光を照射することで単一又は複数の可視光領域の光を選択的に反射させることができる。また、照射される光のうち、所定の光を染料が吸収することができる。さらに、染料は、反射層中の欠陥で発生する散乱光を吸収することができる。したがって、本発明の光反射型光学媒体は、単一又は複数の可視光領域の光を反射し、所定の光を吸収し、その他の光を透過させることができる。すなわち、本発明の光反射型光学媒体は、反射層により、単一又は複数の可視光領域の光を選択的に反射することができるとともに、反射層に備えた染料により、反射層で反射する反射光に対し、反射層に存在する欠陥で発生する散乱光による影響を少なくすることができる。
【0016】
本発明のスクリーンは、略平板状の基板と、上記基板上で自己組織化により微粒子を規則的に配列させ、単一又は複数の可視光領域の光を反射する反射層と、上記反射層に配され、所定の可視光領域の光を吸収する染料を有することを特徴とする。
【0017】
本発明のスクリーンによれば、照射される光を選択的に反射することができる。また、反射層中の染料により、反射層の欠陥により発生する散乱光を吸収することができる。さらに、すなわち、本発明のスクリーンは、照射される光を選択的に反射することで、反射光により画像をスクリーン上に表示することができる。また、その表示画像は、散乱光による影響が少なく、高いコントラストで表示することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光反射型光学媒体は、光反射型光学媒体に可視光領域の光を照射することで単一又は複数の可視光領域の光を選択的に反射させることができる。また、照射される光のうち、所定の光を染料が吸収することができる。さらに、染料は、反射層中の欠陥で発生する散乱光を吸収することができる。したがって、本発明の光反射型光学媒体は、単一又は複数の可視光領域の光を反射し、所定の光を吸収し、その他の光を透過させることができる。すなわち、本発明の光反射型光学媒体は、反射層により、単一又は複数の可視光領域の光を選択的に反射することができるとともに、反射層に備えた染料により、反射層で反射する反射光に対し、反射層に存在する欠陥で発生する散乱光による影響を少なくすることができる。
【0019】
本発明のスクリーンは、照射される光を選択的に反射することができる。また、反射層中の染料により、反射層の欠陥により発生する散乱光を吸収することができる。さらに、すなわち、本発明のスクリーンは、照射される光を選択的に反射することで、反射光により画像をスクリーン上に表示することができる。また、その表示画像は、散乱光による影響が少なく、高いコントラストで表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の光反射型光学媒体及びスクリーンについて図面を参照しながら説明する。なお、本発明においては、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0021】
図1は、本発明の光反射型光学媒体の一例を示す一部拡大断面図である。本発明の光反射型光学媒体1は、基板10上に微粒子11を自己組織化により規則的に配列し、単一又は複数の可視光を反射する反射層12と、微粒子11を配列させた反射層12の中に所定の可視光を吸収する染料13を有している。
【0022】
基板10は、例えば、略平板状部材やシート状部材で微粒子11を自己組織化により規則的に配列させ、単一又は複数の可視光を反射する反射層12を備えている。また、基板10には、サンドブラスト等の物理的処理や、ヒドロキシル基等といった親水性基を有する化合物を塗布する等の化学的処理により、反射層12を形成させやすくさせてもよい。これにより、微粒子11及び微粒子11を溶媒に分散させた微粒子分散溶液と基板10との親和性を高くし、より反射層12を形成しやすくすることができる。この領域は、基板10の一方の面の全体に設けられていてもよいが、基板10の一部に設けられていてもよく、特に限定されるものではない。
【0023】
基板10の形状としては、特に限定されるものではなく、光反射型光学媒体1の用途により適宜変更することができる。例えば、光反射型光学媒体1をスクリーンとして利用する場合、スクリーンの大きさに適したシート状部材を基板10として用いてもよい。
【0024】
基板10の材質としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートといった高分子樹脂を用いることもできる。また、金属や金属酸化物等の材質で形成される基板10をポリエチレンテレフタレート等の疎水性の高分子樹脂でコーティングしてもよい。また、基板10は、可視光を吸収する材質により基板を形成させたり、可視光を吸収する材料を基板10に塗布したりすることにより反射層12を透過した光を吸収するようにしてもよい。これにより、反射層12を透過した可視光を吸収することができる。
【0025】
微粒子11は、例えば略粒状の形状を有し、基板10上に自己組織化により規則的に配列することにより反射層12を形成する。微粒子11は、下記で説明するように、溶媒に分散させた微粒子分散溶液を基板10に塗布することで、自己組織化により規則的に配列する。形成された微粒子11の層すなわち反射層12は、3次元的な周期構造のフォトニック結晶となり、単一又は複数の可視光を反射することができる。
【0026】
微粒子11の材質としては、特に限定されるものではなく、シリカやポリスチレンにより形成されているものでもよい。シリカやポリスチレンからなる微粒子11でフォトニック結晶を形成することにより、その微粒子11の層は、単一又は複数の可視光を反射する反射層12を形成することができる。すなわち、微粒子11で規則的に配列することにより形成された反射層12は、単一又は複数の可視光を反射することができる。
【0027】
微粒子11の大きさすなわち粒径は、特に限定されるものではなく、微粒子11を規則的に配列させて形成された反射層12において反射させたい可視光に応じて適宜変更することができる。微粒子11を規則的に配列することにより形成された反射層12は、周期構造を有するフォトニック結晶となる。フォトニック結晶で反射することができる波長は、このフォトニック結晶の周期と比例する。この周期は、フォトニック結晶を形成する微粒子の粒径に依存する。したがって、微粒子11の粒径を変更することにより、反射させたい可視光を変更することができる。
【0028】
また、微粒子11は、形成する反射層12において、単一又は複数の可視光を反射することができるものであればよく、例えば、微粒子11の中に、下記で説明する染料を有し、所定の可視光を吸収することもできるものであってもよい。これにより、下記で説明する染料13を反射層12に塗布しなくてもよい。そのため、部品点数を減少させることができる。
【0029】
反射層12は、基板10上に微粒子11を規則的に配列させることにより形成される。そして、反射層12は、微粒子11が規則的に配列することによりフォトニック結晶を形成し、単一又は複数の可視光を反射することができる。また、この反射層12には、図1のように、所定の可視光を吸収することができる染料13を有している。
【0030】
染料13は、単一又は複数の可視光とは異なる所定の可視光を吸収することができる。これにより、反射層12中の欠陥で発生する散乱光を吸収することができる。染料13は、例えば図1に示されるように、反射層12中に配されていてもよいが、反射層12の厚さ方向上部に配されていてもよい。反射層12中に染料13を配することにより、欠陥で発生する散乱光をすぐに吸収することができ、より確実に散乱光を吸収することができる。一方、反射層12の厚さ方向上部に染料13を配することにより、塗布する染料13の量を少なくすることができ、軽量化、低コスト化を図ることができる。染料13は、反射層12の形成後に塗布されることで配されてもよいが、微粒子11による反射層12の形成を妨げないのであれば、反射層12の形成と同時に配するようにしてもよい。
【0031】
染料13としては、反射層12に入射する光のうち所定の可視光を吸収することができる物質であれば、特に限定されるものではなく、吸収させたい可視光に応じて適宜変更することができる。例えば、congo red、new coccine、eosin Y、Red 136P(日本化薬製)、Red 3G(日本化薬製)、kayarusシリーズ supra scarlet BNL200(日本化薬製)、light red F5G(日本化薬製)、136P(日本化薬製)、3G(日本化薬製)、oil red(日本化薬製)、solvent red 8(日本化薬製)、Savinyl Fire Red 3GLS(クラリアントジャパン株式会社製)、Savinyl Red 3BLS(クラリアントジャパン株式会社製)、Hostasol Red GG(クラリアントジャパン株式会社製)、Sandoplast Red BB(クラリアントジャパン株式会社製)、Polysynthren Red GFP(クラリアントジャパン株式会社製)、orasol red G(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、oil red #809(山本化成株式会社製)等といった赤色の染料やtartrazine等といった黄色の染料等を利用することもできる。
【0032】
本発明の光反射型光学媒体1の形成方法の1つとして、例えば、基板10に微粒子11を溶媒に分散させた微粒子分散溶液15を塗布し、基板10上の微粒子分散溶液15を乾燥させることにより基板10に反射層14を設けることにより光反射型光学媒体1を形成する方法が挙げられる。
【0033】
溶媒は、微粒子11を分散させて微粒子分散溶液15を形成する。この溶媒は、微粒子11と反応することなく、微粒子分散溶液15の塗布後、蒸発を行うことができるものであれば特に限定されるものではない。例えば、比較的容易に蒸発させることができる溶媒として水やアルコール等が挙げられる。
【0034】
微粒子分散溶液15は、微粒子11を溶媒に分散させた溶液である。微粒子分散溶液15は、基板10に塗布され、塗布された微粒子分散溶液15を乾燥することで、この乾燥の過程で、微粒子11が自己組織化により集合し、反射層12が形成する。図2は、本発明の光反射型光学媒体の反射層の形成過程を示す図である。このとき、微粒子分散溶液15を乾燥により溶媒が徐々に蒸発し、図2のように、自己組織化により基板10上に微粒子11が徐々に集合し、規則的に配列した反射層12が形成される。
【0035】
図3は、本発明の光反射型光学媒体の形成時の塗布工程の一例を示す図である。本発明の光反射型光学媒体1は、基板10を微粒子を溶媒に分散させた微粒子分散溶液15に浸漬させ、微粒子分散溶液15に浸漬させた基板10を引き上げることにより、微粒子分散溶液を塗布する。引き上げられた基板10は、微粒子分散溶液14を乾燥させることにより、基板10上に反射層14を形成することができる。
【0036】
まず、図3(a)のように、基板10を微粒子を溶媒に分散させた微粒子分散溶液15に浸漬させる。これにより、基板10に微粒子分散溶液15を付着させることができる。
【0037】
微粒子分散溶液15に基板10を十分に浸漬した後、図3(b)のように、基板10を所定の速度で引き上げる。引き上げる方向は、特に限定されるものではない。例えば、図3(b)のように、微粒子分散溶液15の液面に対して垂直になるように引き上げてもよい。
【0038】
微粒子分散溶液15から基板10を引き上げる速度は、特に限定されるものではない。基板10をゆっくり引き上げることにより、比較的欠陥の少ない反射層12を形成することができる。本発明の光反射型光学媒体1は、反射層12に入射した入射光が欠陥により散乱しても、その散乱光を吸収することができる染料を有しているため、反射層12に欠陥を有していてもよい。したがって、基板10の引き上げ速度を速くすることにより、光反射型光学媒体の形成する時間を短縮させることができる。
【0039】
微粒子分散溶液15から引き上げられた基板10は、基板10に塗布された微粒子分散溶液15の乾燥を行う。この乾燥により、微粒子分散溶液15の溶媒が徐々に蒸発し、その蒸発の過程で微粒子が自己組織化的に集合し、基板10に微粒子11が規則的に配列した反射層12を形成することができる。微粒子分散溶液15の乾燥は、加熱、送風、除湿等により溶媒の蒸発を制御してもよいが、特別に溶媒の蒸発を促すような制御を行わなくてもよい。また、この基板10の浸漬工程、引き上げ工程、及び、乾燥工程は、複数回繰り返して行ってもよく、形成する反射層12の厚さに応じて繰り返す回数を適宜変更することができる。
【0040】
このように、基板10に微粒子分散溶液15を塗布し、乾燥させることにより、自己組織化により微粒子11を規則的に配列させることができる。このときの微粒子分散溶液15の塗布方法としては、上述のような引き上げ法による方法に限られるものではない。例えば、スピンコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、ナイフコート法等の方法により微粒子分散溶液15を塗布してもよい。本発明において、塗布とは、微粒子分散溶液15を基板10に付着させることを示すものであり、例えば、基板10に微粒子分散溶液15を噴霧することも含まれる。
【0041】
この基板10の浸漬工程、引き上げ工程、乾燥工程は、それぞれ1回に限定されるものではなく、これらの工程を1つのサイクルとして複数回繰り返してもよい。この繰り返す回数は、形成する反射層12の厚さ等により適宜変更することができる。
【0042】
反射層12は、上述のように基板10に形成することができる。この基板10上に形成された反射層12に染料13を塗布することにより本発明の光反射型光学媒体1を形成することができる。染料13は、例えば、染料13を溶媒に溶解させた染料溶液を反射層12に塗布してもよい。また、図4のように、反射層12に染料13と染料13を固定化する固定化高分子14を有していても良い。この固定化高分子は、染料13と一緒に溶媒に混合させた混合溶液を調製し、反射層12に塗布してもよい。これにより、染料13を結晶の状態で反射層12に配することを防ぐことができる。染料13の結晶が反射層13に存在するとその染料13の結晶で入射光の散乱が引き起こされる。したがって、散乱光の発生を防止することができる。また、染料13を反射層12に固定化することができ、反射層12の外部への染料13の流出を防止することもできる。そして、反射層12に機械的な強度を与えることができる。
【0043】
染料13は、反射層12に塗布することにより備えることができる。その塗布方法としては、固定化高分子14を溶媒に染料13を溶解させた溶液を反射層12に噴霧する等が挙げられる。このとき、染料13は、反射層12の内部に侵入させるように塗布してもよいが、反射層12の厚さ方向上部だけに塗布されていてもよい。
【0044】
また、固定化高分子14は、染料13の塗布後に塗布してもよい。例えば、反射層12に染料13を塗布した後に、固定化高分子14を溶媒に溶解させた高分子溶液を反射層12に噴霧するなどの方法により固定化高分子14を塗布してもよい。さらに、固定化高分子14の代わりに、下記で説明する両親媒性高分子を使用してもよい。
【0045】
これにより、上述と同様に、染料13を反射層12に固定化することができ、染料13の反射層12外部への流出を防止することができる。また、反射層12に機械的な強度を与えることができる。
【0046】
この固定化高分子14は、特に限定されるものではなく、微粒子11や染料13等により適宜変更することができる。例えば、ポリビニルアルコールやポリスチレン又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0047】
染料13と別に塗布される固定化高分子14も、上述のように、反射層12中の微粒子間に配されるように備えてもよいが、反射層12の厚さ方向上部に塗布するように備えてもよい。
【0048】
さらに、本発明の光反射型光学媒体1は、図5のように、基板10上の固定化高分子14により固定化された染料13を有する反射層12に親水性及び疎水性の両方の性質を有する両親媒性高分子16を備えてもよい。この両親媒性高分子16は、反射層12中の微粒子間に配されるように備えてもよいが、反射層12の厚さ方向上部に塗布するように備えてもよい。
【0049】
本発明の光反射型光学媒体1は、例えば、上述のように形成した反射層12の上に反射層12とは別の可視光領域の光を反射することができる反射層を備えていてもよい。この場合、上述の形成方法を繰り返すことで複数の反射層を有する光反射型光学媒体を形成することができる。
【0050】
両親媒性高分子16は、反射層12の微粒子11を固定化することができるとともに、反射層12上に別の反射層を形成する場合、別の反射層を構成する微粒子を溶媒に分散させた微粒子分散溶液を塗布し易くすることができる。したがって、両親媒性高分子16により、反射層を積層させやすくすることができる。
【0051】
この両親媒性高分子16は、親水性及び疎水性の両方の性質を有する高分子であれば、特に限定されるものではない。例えば、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)等が挙げられる。
【0052】
両親媒性高分子16は、反射層12に染料13を塗布した後に、反射層12に塗布することにより備えることができる。その塗布方法としては、両親媒性高分子16を溶媒に溶解させた溶液を反射層12に噴霧する等が挙げられる。
【0053】
本発明の光反射型光学媒体1は、上述のように、基板10上に単一又は複数の可視光を反射する反射層12と、反射層12中に所定の可視光を吸収する染料13を有している。図6は、本発明の光反射型光学媒体1に可視光領域の光の照射を説明する図である。図6中の実線矢印は、照射される可視光及び反射する光を示し、点線矢印は、散乱した光を示す。光反射型光学媒体1に可視光領域の光を照射するとこの光のうち反射層12によって反射することができる領域の光を反射させることができる。また、照射される光のうち、所定の光を染料13が吸収し、その他の光は反射層12を透過し、基板10に達する。このとき、基板10が可視光を吸収することができる場合、反射層12を透過した光は、基板10によって吸収される。
【0054】
反射層12には、欠陥17が存在する。反射層に入射する光は、この欠陥17によって散乱する。この散乱光の大部分は、反射層12の染料13により吸収される。これにより、本発明の光反射型光学媒体1は、反射層12により反射した反射光に対し、欠陥17により発生した散乱光の影響を軽減させることができる。
【0055】
すなわち、本発明の光反射型光学媒体1は、反射層12により、単一又は複数の可視光領域の光を選択的に反射することができるとともに、反射層12中に備えた染料13により反射層12中に存在する欠陥で発生する散乱光による影響を少なくすることができる。
【0056】
このように、反射層12中に染料13を備えることで、反射層12の欠陥により発生する散乱光の影響を軽減することができるが、染料13は、反射層12の厚さ方向上部に備えていてもよい。この場合においても、反射層12の欠陥で発生する散乱光を上部の染料13が吸収することにより、散乱光の影響を少なくすることができる。
【0057】
本発明の光反射型光学媒体1は、使用する微粒子の粒径及び染料は適宜変更することができる。例えば、規則的に配列させることにより赤色の光を反射することができる微粒子により反射層を形成し、この反射層に赤色の染料を備えることで赤色の光のみを反射する光反射型光学媒体を形成することができる。入射光のうち、赤色のみを反射層で反射することができ、さらに、その他の光を染料により吸収することができる。また、反射層の欠陥で生じる散乱光も染料により吸収することができるため、散乱光の影響を減少させることができる。
【0058】
また、例えば、規則的に配列させることにより緑色の光を反射することができる微粒子により反射層を形成し、この反射層に緑色の染料を備えることで緑色の光のみを反射する光反射型光学媒体を形成することができる。入射光のうち、緑色のみを反射層で反射することができ、さらに、その他の光を染料により吸収することができる。また、反射層の欠陥で生じる散乱光も染料により吸収することができるため、散乱光の影響を減少させることができる。
【0059】
本発明の光反射型光学媒体1は、反射層の厚さ方向上部に新たな反射層を設けてもよい。例えば、基板に赤色の光を反射する反射層を形成し、その反射層の厚さ方向上部に緑色の光を反射する反射層を形成してもよい。さらに、その緑色の光を反射する反射層の厚さ方向上部に青色の光を反射する反射層を備えてもよい。これにより、光の3原色である赤色、緑色及び青色の光を選択的に反射することができるようになり、フルカラーの画像を表示することができる光反射型光学媒体を提供することができる。このとき反射層に備えられる染料としては、赤色の光を反射する反射層に赤色の染料を備えてもよい。これにより、赤色の光を反射する反射層で赤色の光のみが反射し、青色から黄色の領域の光を吸収することができ、反射層の欠陥で生じる散乱光を吸収することで、散乱光の影響を少なくすることができる。また、緑色の光を反射する反射層に黄色の染料を備えてもよい。これにより、緑色の光の反射させ、赤色の光を透過させるとともに青色から青緑色の領域の光を吸収することができる。これにより、反射層の欠陥で生じる散乱光を吸収することができ、散乱光の影響を少なくすることができる。
【0060】
次に本発明のスクリーンについて説明する。図7は、本発明のスクリーンの一例を示す一部拡大断面図である。本発明のスクリーン5は、基板50上に赤色の光を反射することができる赤色光反射層521と、赤色光反射層521の厚さ方向上部に緑色の光を反射することができる緑色光反射層522と、緑色光反射層522の厚さ方向上部に青色の光を反射する青色光反射層523とを有している。そして、赤色光反射層521に、青色から黄色の光を吸収し、赤色の光を透過させる赤色系染料531を有している。また、緑色光反射層522に、青色から青緑色の光を吸収し、緑色から赤色の光を透過させる黄色系染料532を有している。
【0061】
赤色光反射層521は、フォトニック結晶となることで赤色光を反射させることができる微粒子511を規則的に配列させることにより形成される。この赤色光反射層521の微粒子511の間、又は赤色光反射層521の厚さ方向上部には、青色から黄色の光を吸収し、赤色の光を透過させる赤色系染料531を有している。これにより、赤色の光のみを反射させ、それ以外の光を吸収することができる。
【0062】
緑色光反射層522は、赤色光反射層521の厚さ方向上部に配され、フォトニック結晶となることで緑色光を反射させることができる微粒子512を規則的に配列させることにより形成される。この緑色光反射層522の微粒子512の間、又は赤色光反射層522の厚さ方向上部には、青色から青緑色の光を吸収し、緑色から赤色の光を透過させる黄色系染料532を有している。これにより、緑色の光のみを反射させ、赤色の光を透過させ、それ以外の光を吸収することができる。
【0063】
青色光反射層523は、緑色光反射層522の厚さ方向上部に配され、フォトニック結晶となることで青色光を反射させることができる微粒子513を規則的に配列させることにより形成される。これにより、青色の光のみを反射させ、それ以外の光を透過させることができる。
【0064】
すなわち、本発明のスクリーン5は、この赤色光反射層521と緑色光反射層522と青色光反射層523とを積層させることにより、光の3原色である赤色、緑色及び青色の光を選択的に反射することができる。
【0065】
上述で説明した光反射型光学媒体の形成方法と同様に、基板50に微粒子を規則的に積層させ、反射層を形成し、反射層を有する基板50に染料を備え、この工程を繰り返すことにより、本発明のスクリーン5を形成することができる。
【0066】
より詳細には、微粒子511を溶媒に分散させた微粒子分散溶液に基板50を浸漬させる。十分に浸漬させた後に、微粒子分散溶液から基板50を引き上げることで、基板50に微粒子511が分散した微粒子分散溶液を塗布することができる。この微粒子分散溶液を乾燥させることで、微粒子511が自己組織化により規則的に配列し、基板50に赤色光反射層521を形成することができる。この形成された赤色光反射層521に赤色系染料531を塗布する。
【0067】
次に、微粒子512を溶媒に分散させた微粒子分散溶液に赤色光反射層521を形成した基板50を浸漬させる。十分に浸漬させた後に、微粒子分散溶液から基板50を引き上げることで、基板50に微粒子512が分散した微粒子分散溶液を塗布することができる。この微粒子分散溶液を乾燥させることで、微粒子512が自己組織化により規則的に配列し、基板50に緑色光反射層522を形成することができる。この形成された緑色光反射層522に黄色系染料532を塗布する。
【0068】
そして、微粒子513を溶媒に分散させた微粒子分散溶液に緑色光反射層522を形成した基板50を浸漬させる。十分に浸漬させた後に、微粒子分散溶液から基板50を引き上げることで、基板50に微粒子513が分散した微粒子分散溶液を塗布することができる。この微粒子分散溶液を乾燥させることで、微粒子513が自己組織化により規則的に配列し、基板50に青色光反射層523を形成することができる。
【0069】
本発明のスクリーン5は、赤色系染料531及び黄色系染料532の塗布時に、上述の光反射型光学媒体と同様に混合高分子を混合させて塗布してもよい。また、各微粒子や各染料を固定化するための固定化高分子、及び、反射層を積層させ易くすることができる両親媒性高分子を用いてもよい。また、本発明のスクリーン5は、各反射層の順序を入れ替えてもよい。この場合、反射層に備える染料を適宜変更してもよい。さらに、本発明のスクリーン5は、染料及び固定化高分子、両親媒性高分子等の高分子は、上述のように反射層の微粒子の隙間に配されるように備えてもよいが、反射層の厚さ方向上部に配してもよい。例えば、赤色光反射層521上に赤色系染料531を配し、さらに両親媒性高分子を塗布した後、緑色光反射層522を形成してもよい。さらにその緑色光反射層522上に黄色系染料532を配し、両親媒性高分子を塗布し、青色光反射層523を形成することでスクリーン5としてもよい。
【0070】
図8は、本発明のスクリーンの使用状態を表す図である。図8中のスクリーン5の内部に向かう矢印は入射光を示し、スクリーン5の外部に向かう矢印は反射光を示している。また、矢印先端の点線部分は光の吸収を示している。本発明のスクリーン5は、図示されていない画像投射装置などから画像を投射されることで、光の3原色である赤色、緑色及び青色の光を選択的に反射し、主に外部光を反射層内の染料及び可視光吸収することができる基板50により吸収することで、コントラストの高い画像を表示することができる。
【0071】
本発明のスクリーン5は、画像投射装置から投射される赤色の光、緑色の光及び青色の光の3原色が照射され、各反射層により選択的に各光を反射することができる。赤色の光は、青色光反射層523及び緑色光反射層522を透過し、赤色光反射層521で反射することができる。このとき、緑色光反射層にある黄色系染料532は、青色から青緑色の領域の光を吸収するため、画像投射装置から投射される赤色の光は吸収されない。したがって、赤色の光は、赤色光反射層521に到達し、この赤色光反射層521でこの赤色の光を反射することができる。
【0072】
緑色の光は、青色光反射層523を透過し、緑色光反射層522で反射することができる。青色光反射層523では、青色の光を反射し、それ以外の光を透過させるため、画像投射装置から照射される緑色の光は緑色光反射層522に到達する。したがって、緑色の光は、緑色光反射層522で反射することができる。そして、青色の光は、スクリーン5の厚さ方向最上部にある青色光反射層523により、反射することができる。
【0073】
本発明のスクリーン5には、画像投射装置以外から入射する光すなわち外部光も入射する。しかしながら、本発明のスクリーン5は、その大部分を各反射層で反射されず、基板50まで透過する。基板50は、可視光を吸収することができるため、基板50に到達した可視光は、基板50に吸収される。外部光には、様々な波長の光が含まれている。その大部分は、各反射層が反射する光近傍の波長領域を外れた光である。したがって、外部光の大部分は染料及び可視光を吸収する基板50により吸収され、画像に重なって観察者の目に入る外部光を減少させることができる。このため、本発明のスクリーン5を用いれば、外部光によるコントラストの劣化を減少させることができる。
【0074】
本発明のスクリーン5の染料は、欠陥により発生する散乱光も吸収することができる。通常、欠陥は、入射光を散乱させてコントラストの低下を招いてしまうが、本発明のスクリーン5は、欠陥で発生した散乱光の大部分を、反射層の染料で吸収することができる。これにより、欠陥により発生した散乱光の影響を軽減させることができる。すなわち、散乱光によるコントラストの低下を減少させることができる。
【0075】
このように、本発明のスクリーン5は、画像投射装置から投射される赤色の光、緑色の光及び青色の光を選択的に反射することができる。また、反射層中の染料により、画像投射装置以外から照射される光を吸収するとともに、反射層中の欠陥により生じる散乱光を吸収することができる。すなわち、本発明のスクリーン5は、画像投射装置から投射される赤色の光、緑色の光及び青色の光を選択的に表示することが可能で、散乱光による影響が少なく、高いコントラストの画像を表示することができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明の光反射型光学媒体に関する実施例を示す。なお、本発明においては、以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0077】
[実施例1] 染料のみを塗布した光反射型光学媒体の作製
粒子径0.3μmのシリカ微粒子を水に分散させ、濃度が20.4wt%となるように、シリカ微粒子の水分散溶液を調製した。この水分散溶液にポリエチレンテレフタレート製の基板(以下、PET基板)を浸漬させ、引き上げ速度1cm/sでPET基板を引き上げ、引き上げたPET基板を乾燥させた。この浸漬工程、引き上げ工程、乾燥工程を1つのサイクルとして、3回繰り返し、シリカ微粒子からなる反射層を形成させた。そして、反射層を形成したPET基板の反射率を計測した。
【0078】
次に、congo red[573−58−0]を水に十分に溶解させた飽和水溶液を調製した。この飽和水溶液を0.1μm孔のフィルターでろ過した。反射層を形成したPET基板にろ過した飽和水溶液を2.1μl/cmで噴霧した。そして、染料を塗布したPET基板の反射率を測定した。
【0079】
染料塗布前後の反射率の測定結果を比較すると、図9のように、反射層の反射率はそのままに、染料塗布前の光散乱強度が32cd/mで有るのに対し、染料塗布後の光散乱強度が23cd/mとなり、約40%低減させることができた。
【0080】
尚、他の水溶性染料としては、new coccine[2611−82−7]、eosin Y[17372−87−1]、Red 136P(日本化薬製)、Red 3G(日本化薬製)、kayarusシリーズ supra scarlet BNL200(日本化薬製)、light red F5G(日本化薬製)、136P(日本化薬製)、3G(日本化薬製)などが同様の効果が得られた。また、油溶性染料oil red、solvent red 8、Savinyl Fire Red 3GLS(クラリアントジャパン株式会社製)、Savinyl Red 3BLS(クラリアントジャパン株式会社製)、Hostasol Red GG(クラリアントジャパン株式会社製)、Sandoplast Red BB(クラリアントジャパン株式会社製)、Polysynthren Red GFP(クラリアントジャパン株式会社製)、orasol red G(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、oil red #809(山本化成株式会社製)等も同様の効果が得られた。また、粒子径0.25μmのシリカ微粒子結晶を用いた場合、tartrazine[1934−21−0]で同様の効果が得られた。
【0081】
[実施例2] 染料と固定化高分子との混合体の溶液を塗布した光反射型光学媒体の作製
粒子径0.3μmのシリカ微粒子を水に分散させ、濃度が20.4wt%となるようにシリカ微粒子の水分散溶液を調製した。この水分散溶液にPET基板を浸漬させ、引き上げ速度1cm/sでPET基板を引き上げ、引き上げたPET基板を乾燥させた。この浸漬工程、引き上げ工程、乾燥工程を1つのサイクルとして、3回繰り返し、シリカ微粒子からなる反射層を形成させた。そして、反射層を形成したPET基板の反射率を計測した。
【0082】
次に、油溶性染料であるoil red O[1320−06−5]0.1gを0.15wt%のポリスチレン(分子量280000)/トルエン溶液50mlに溶解させて染料溶液を調製した。反射層を形成したPET基板に染料溶液を2.1μl/cmで噴霧した。そして、染料を塗布したPET基板の反射率を測定した。
【0083】
染料塗布前後の反射率の測定結果を比較すると、図10のように、反射層の反射率の低下は10%以内で、散乱強度は50%低減することができた。これ以上染料濃度あるいはポリスチレン濃度を濃くすると、反射率が低下してしまう。solvent red 8を用いた場合、0.2gを0.15 wt%のポリスチレン(分子量280000)/酢酸エチル溶液40mlに溶解させた場合に、同等の効果が得られた。使用する油溶性染料によって、最適濃度が異なるものの、上記の染料以外に、Savinyl Fire Red 3GLS(クラリアントジャパン株式会社製)、Savinyl Red 3BLS(クラリアントジャパン株式会社製)、Hostasol Red GG(クラリアントジャパン株式会社製)、Sandoplast Red BB(クラリアントジャパン株式会社製)、Polysynthren Red GFP(クラリアントジャパン株式会社製)、orasol red G(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、oil red #809(山本化成株式会社製)等が同様の効果が得られた。同様に水溶性染料と水溶性高分子であるポリビニルアルコール(分子量150000)の組み合わせでも同じ効果が得られた。
【0084】
[実施例3] 染料塗布後に固定化高分子を塗布した光反射型光学媒体の作製
粒子径0.3μmのシリカ微粒子を水に分散させ、濃度が20.4wt%となるようにシリカ微粒子の水分散溶液を調製した。この水分散溶液にPET基板を浸漬させ、引き上げ速度1cm/sでPET基板を引き上げ、引き上げたPET基板を乾燥させた。この浸漬工程、引き上げ工程、乾燥工程を1つのサイクルとして、3回繰り返し、シリカ微粒子からなる反射層を形成させた。そして、反射層を形成したPET基板の反射率を計測した。
【0085】
次に、水溶性染料であるcongo red O[573−58−0]を十分に水に溶解させた飽和水溶液を調整し、さらに、この飽和水溶液50mlに2wt%のポリビニルアルコール水溶液(分子量150000)を加えて染料の混合溶液を調製した。この染料の混合溶液を0.1μm孔のフィルターでろ過した。反射層を形成したPET基板にろ過した混合溶液を2.1μl/cmで噴霧した。そして、染料を塗布したPET基板の反射率を測定した。
【0086】
染料塗布前後の反射率の測定結果を比較すると、図11のように、反射層の反射率はそのままに、染料塗布前の散乱強度が20cd/mであるのに対し、染料塗布後は、11cd/mと約45%低減させることができた。尚、他の水溶性染料としては、new coccine[2611−82−7]、eosin Y[17372−87−1]、Red 136P(日本化薬製)、Red 3G(日本化薬製)、kayarusシリーズ supra scarlet BNL200(日本化薬製)、light red F5G(日本化薬製)、136P(日本化薬製)、3G(日本化薬製)などが同様の効果が得られた。
【0087】
さらに、上記混合溶液を塗布したPET基板に固定化高分子として疎水性及び親水性の両方の性質を有するポリ(スチレン−co−アクリロイルモルフォリン、8/2)のトルエン溶液を2.1μl/cmで噴霧した。これを基板として、上記のシリカ微粒子の分散溶液と同様に粒子径0.25μmのシリカ微粒子の分散溶液を調製し、上記の反射層の形成方法と同様にPET基板上の反射層の厚さ方向上部に新たな反射層を形成させた。そして、この反射層を積層させたPET基板の反射率を測定し、図11に示した。
【0088】
通常、水溶性染料は水に再浸漬させると溶出してしまうが、この場合、固定化高分子により0.3μmのシリカ微粒子の反射層に固定化され、溶出することなく、さらに0.25μmのシリカ微粒子の反射層を積層させることができた。つまり、染料を有する反射層の多層積層構造体が形成できることがわかった。
【0089】
[実施例4] 染料と固定化高分子との混合体の溶液を塗布した後に、両親媒性高分子を塗布した光反射型光学媒体の作製
粒子径0.3μmのシリカ微粒子を水に分散させ、濃度が20.4wt%となるようにシリカ微粒子の水分散溶液を調製した。この水分散溶液にPET基板を浸漬させ、引き上げ速度1cm/sでPET基板を引き上げ、引き上げたPET基板を乾燥させた。この浸漬工程、引き上げ工程、乾燥工程を1つのサイクルとして、3回繰り返し、シリカ微粒子からなる反射層を形成させた。そして、反射層を形成したPET基板の反射率を計測した。
【0090】
次に、油溶性染料であるoil red O[1320−06−5]0.1gを0.15wt%のポリスチレン(分子量280000)/トルエン溶液50mlに溶解させて染料溶液を調製した。反射層を形成したPET基板に染料溶液を2.1μl/cmで噴霧した。そして、染料を塗布したPET基板の反射率を測定した。
【0091】
染料塗布前後の反射率の測定結果を比較すると、反射層の反射率の低下は10%以内で、染料塗布前の散乱強度が19cd/mであるのに対し、染料塗布後は、10cd/mと約47%低減させることができた。
【0092】
さらに、シリカ微粒子層を積層させようとすると、シリカ微粒子が親水性であるのに対し、油溶性染料もポリスチレンも疎水性であるため、親和性が非常に悪く、積層が難しいことがわかった。そこで、親水性及び疎水性の両方の性質を有する両親媒性高分子であるポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)をイソプロピルアルコールと水の混合比1:1の混合溶媒に濃度が0.03 wt%となるように調製し、この両親媒性高分子溶液を2.1μl/cmで噴霧した。そして、両親媒性高分子溶液を塗布したPET基板をよく乾燥させた。これを基板として、粒子径0.25μmのシリカ微粒子を水に分散させた分散水溶液を調製し、上記と同様の方法により、新たな反射層を形成させた。両親媒性高分子により親和性が改善されたため、均一な反射層を形成することができた。そして、この反射層を積層させたPET基板の反射率を測定し、染料塗布前の反射率の測定結果とともに図12に示した。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の光反射型光学媒体の一例を示す一部拡大断面図である。
【図2】本発明の光反射型光学媒体の反射層の形成過程を示す図である。
【図3】本発明の光反射型光学媒体の形成時の塗布工程の一例を示す図である。(a)は、基板を微粒子分散溶液に浸漬する工程を示し、(b)は、基板を微粒子分散溶液から引き上げる工程を示す図である。
【図4】固定化高分子を使用した本発明の光反射型光学媒体の一例を示す拡大断面図である。
【図5】両親媒性高分子を使用した本発明の光反射型光学媒体の一例を示す拡大断面図である。
【図6】本発明の光反射型光学媒体に光を照射したときの図である。
【図7】本発明のスクリーンの一例を示す一部拡大断面図である。
【図8】本発明のスクリーンの使用状態を示す図である。
【図9】反射層に染料を塗布する前のPET基板と、反射層に染料を塗布した後の本発明の光反射型光学媒体との反射率を示す図である。
【図10】反射層に染料及び高分子を混合させた溶液を塗布する前のPET基板と、反射層に染料及び高分子を混合させた溶液を塗布した後の本発明の光反射型光学媒体との反射率を示す図である。
【図11】反射層に染料及び高分子を混合させた溶液を塗布する前のPET基板と、反射層に染料及び高分子を混合させた溶液を塗布した後の本発明の光反射型光学媒体と、染料塗布後に固定化高分子を塗布して新たな反射層を積層させた本発明の光反射型光学媒体との反射率を示す図である。
【図12】反射層に染料及び高分子を混合させた溶液を塗布する前のPET基板と、反射層に染料及び高分子を混合させた応益を塗布した後、両親媒性高分子を塗布して新たな反射層を積層させた本発明の光反射型光学媒体との反射率を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
1 光反射型光学媒体
10、50 基板
11 微粒子
12 反射層
13 染料
14 固定化高分子
15 微粒子分散溶液
16 両親媒性高分子
5 スクリーン
511、512、513 微粒子
521 赤色光反射層
522 緑色光反射層
523 青色光反射層
531 赤色系染料
532 黄色系染料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
略平板状の基板と、
上記基板上で自己組織化により微粒子を規則的に配列させ、単一又は複数の可視光領域の光を反射する反射層と、
上記反射層に配され、所定の可視光領域の光を吸収する染料とを有する
ことを特徴とする光反射型光学媒体。
【請求項2】
上記反射層は、赤色の光を反射する層、緑色の光を反射する層、及び、青色の光を反射する層を有していることを特徴とする請求項1記載の光反射型光学媒体。
【請求項3】
上記赤色の光を反射する層、緑色の光を反射する層、及び、青色の光を反射する層は、積層されることを特徴とする請求項2記載の光反射型光学媒体。
【請求項4】
上記染料は、上記微粒子間の隙間に配されることを特徴とする請求項1記載の光反射型光学媒体。
【請求項5】
上記染料は、上記微粒子の中に配されていることを特徴とする請求項1記載の光反射型光学媒体。
【請求項6】
上記染料は、上記反射層の厚さ方向上部に配されることを特徴とする請求項1記載の光反射型光学媒体。
【請求項7】
上記染料は、上記赤色の光を反射する層に赤色の染料を配することを特徴とする請求項2記載の光反射型光学媒体。
【請求項8】
上記染料は、上記緑色の光を反射する層に黄色の染料を配することを特徴とする請求項2記載の光反射型光学媒体。
【請求項9】
上記反射層は、高分子を配していることを特徴とする請求項1記載の光反射型光学媒体。
【請求項10】
上記高分子は、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、又は、これらを含む共重合体であることを特徴とする請求項9記載の光反射型光学媒体。
【請求項11】
上記高分子は、親水性及び疎水性の両方を有する高分子であることを特徴とする請求項9記載の光反射型光学媒体。
【請求項12】
上記染料は、上記高分子とともに反射層に配されていることを特徴とする請求項9記載の光反射型光学媒体。
【請求項13】
上記微粒子は、シリカ、又は、ポリスチレンにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の光反射型光学媒体。
【請求項14】
略平板状の基板と、
上記基板上で自己組織化により微粒子を規則的に配列させ、単一又は複数の可視光領域の光を反射する反射層と、
上記反射層に配され、所定の可視光領域の光を吸収する染料を有する
ことを特徴とするスクリーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−39289(P2006−39289A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220259(P2004−220259)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】