説明

光反射板

【課題】 合成樹脂製の反射板を立体的な形状に加工した光反射板の変形を良好に防止することができるとともに、光反射板を薄型化することができ、しかも加工費を安くすることができる技術を提供する。
【解決手段】 光を反射するプラスチックのフィルムまたはシート2の所定箇所を立体的な形状に加工した反射板6に、形状保持用の粘接着テープ10を貼り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電飾看板、液晶表示装置、照明器具などのバックライトや照明ボックスを、より明るく、より薄型化して、効率的に発光させるための立体的な光反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電飾看板、液晶表示装置、照明器具などに使用される光反射板として、合成樹脂製の反射板を立体的な形状に加工した光反射板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−122863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した合成樹脂製の反射板を立体的な形状に加工した光反射板は、成形時のひずみや成形後の収縮により作製後に変形が引き起こされる。そこで、上記光反射板の変形を防止する手段として、光反射板に穴あるいはスリット切断部を設けるとともに、金属製ケーシングに爪状折り曲げ部を形成し、光反射板の穴やスリット切断部に金属製ケーシングの爪状折り曲げ部を差し込み、さらに爪状折り曲げ部を折り曲げることにより、反射板と金属製ケーシングとを固定する手段が提案されている。
【0005】
しかし、上述した光反射板の変形防止手段は、金属製のケーシングが必要であるため光反射板を薄型化することが難しく、また光反射板と金属製ケーシングとを固定するため加工費が高くなるという欠点を有していた。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、合成樹脂製の反射板を立体的な形状に加工した光反射板の変形を良好に防止することができるとともに、光反射板を薄型化することができ、しかも加工費を安くすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するため、光を反射するプラスチックのフィルムまたはシートの所定箇所を立体的な形状に加工した反射板に、形状保持部材を固定してなることを特徴とする光反射板を提供する。
【0008】
本発明では、立体的な形状に加工した反射板に形状保持部材を固定し、この形状保持部材の作用によって反射板の変形を防止し、その形状を保持する。したがって、金属製のケーシングを使用する場合に較べ、光反射板をより薄型化することができる。また、反射板に形状保持部材を固定するだけなので、光反射板と金属製ケーシングとを固定する場合に較べ、加工費をより安くすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、合成樹脂製の反射板を立体的な形状に加工した光反射板の変形を良好に防止することができるとともに、光反射板を薄型化することができ、しかも加工費を安くして低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】シートの折り曲げ前の切り込み加工の例および切り込みの拡大状態を示す図である。
【図2】図1のシートを用いた光反射板の斜視図である。
【図3】図2の光反射板の側面形状と蛍光灯の位置を示す図である。
【図4】図2の光反射板の裏面図である。
【図5】蒲鉾形突起部を成形したシートを示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。本発明において、光を反射するプラスチックのフィルムまたはシートの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビフェニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコールなどの汎用樹脂、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、超高分子量ポリエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、液晶ポリマー、フッ素樹脂などのエンジニアリングプラスチック、またはこれらの共重合体もしくは混合物などが挙げられる。これらのうちでも、耐熱性、耐衝撃性などが良好であることから、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、シクロポリオレフィンが好ましい。なお、上記光を反射するプラスチックのフィルムまたはシートに用いられる樹脂中には、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤、顔料、強化剤などを適宜添加することができる。また、これらの添加剤を含有した塗布層を塗布して形成してもよい。
【0012】
より具体的には、光を反射するプラスチックのフィルムまたはシートの好ましい例として、内部に平均気泡径が50μm以下の微細な気泡もしくは気孔を多数有する熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートや、フィラーを含有する熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートであって、フィラーを核として多数のボイドが形成されているフィルムまたはシートが挙げられる。この場合、後者のフィルムまたはシートにおいて、フィラーを含有する熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートは、フィラーを含有する未延伸フィルムまたはシートを成形し、この未廷伸フィルムまたはシートを延伸することにより、フィラーを核として多数のボイドを形成した多孔性延伸フィルムまたはシートであることが好ましい。
【0013】
本発明において、光を反射するプラスチックのフィルムまたはシートの反射板を立体的な形状に形成する手段に限定はないが、上記フィルムまたはシートにその片側表面から反対側表面へ貫通する幅の狭い切り込みを直線に沿って間欠的に形成し、このフィルムまたはシートを前記切り込みに沿って折り曲げる手段を好適に採用することができる。
【0014】
すなわち、樹脂製の反射板を立体的な形状に加工するためには、成形金型などで加熱成形してもよいが、加熱成形後の収縮などで加工精度が悪い上、成形金型や加工コストが高価になる。これに対し、プラスチックのフィルムまたはシートにミシン目状の切り込みを入れることで、簡単にその部分で山谷に折り曲げて立体的な形状を精度良く作ることが可能であり、高価な金型など必要なく、簡単な冶具などによる折り曲げ加工を低コストで実現することができる。
【0015】
この場合、切り込みを形成するフィルムまたはシートとしては、前述した内部に平均気泡径が50μm以下の微細な気泡もしくは気孔を多数有する熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートや、フィラーを含有する熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートであって、フィラーを核として多数のボイドが形成されているフィルムまたはシートを好適に用いることができる。
【0016】
また、上記プラスチックのフィルムまたはシートに形成する切り込みの幅を3mm以下、1つの切り込みの長さを10mm以下、隣り合う2つの切り込み間の切断されていない部分の長さを1mm以上とすることが適当である。すなわち、フィルムまたはシートに切り込みを入れた後、切り込み線に沿って折り曲げる際に、切り込み部分から材料が切断してしまうのを防ぐためには、間欠した切り込みの間の切断されていない部分が1mm以上であることが好ましい。また、切り込みの長さに関しては、ミシン目状に間欠した10mmピッチ以下の切断刃を有する標準的に販売されている切断具で加工することが安価で実用的である。
【0017】
もしフィルムまたはシートに上記のような切り込みを入れず、フィルムまたはシートの表面に凹状の押し罫線を直線状に施した後にそれに沿って山谷に折り曲げようとした場合は、曲げる力が大きいことと、必ずしも罫線部分で折れ曲がらないことから、折り曲げ加工が難しいという欠点がある。
【0018】
また、気泡、気孔あるいはボイドを有さないプラスチックシートやフィルムを同じようにミシン目状に切断加工しようとすると、折り曲げの本数が多くなったり、加工する面積が大きくなったりする場合(例えば後述する図1や図2のような場合)に、ミシン目切断部を一度に加工する際にシートやフィルムが硬くて全体に均一に切断できないことがあり、そのためシートやフィルムがうまくミシン目に沿って折れ曲がらなくなることがある。これに対し、気泡、気孔あるいはボイドを有するプラスチックシートやフィルムは柔らかく切断しやすいため、ミシン目線が多く、面積が大きなものでも、比較的きれいに切断される。
【0019】
本発明で用いる形状保持部材としては、立体的な形状に加工された光反射板の変形を防止することができる力学特性を有しているものが好ましく、例えば、粘接着テープ、紐、ピンなどを挙げることができる。形状保持部材は、130℃の耐熱性を有することが望ましい。
【0020】
形状保持部材として粘接着テープを用いる場合、粘接着テープの基材の材質に限定はないが、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、シクロポリオレフィン、ポリアミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリメチルペンテン、液晶ポリマー等のポリマーや、アルミニウム、ステンレススチール等の金属が挙げられる。粘接着テープの基材にポリマーを用いる場合は、これらのうちでも、耐熱性、耐衝撃性などが良好であることから、ポリエステル、ポリプロピレンまたはシクロポリオレフィンが特に好ましい。さらに、粘接着テープは無色あるいは白色であることが好ましい。粘接着テープが他の色に着色されていると、光反射板を液晶表示装置に使用したときに、色目が画面に出てしまうことがある。なお、粘接着テープの粘接着剤の材質は上記の点を考慮して適宜選定することができる。
【実施例】
【0021】
次に、図面を参照して本発明に係る光反射板の例を示すが、本発明は下記例に限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
熱可塑性ポリエステルの押出シートに炭酸ガスを高圧下で含浸させた後、加熱し発泡させたシートで、厚さが1mmで内部の気泡径が50μm以下である発泡プラスチック製光反射シートがある(例えば古河電気工業製のMCPET(登録商標)等)。また、厚さが0.5mmで内部の気泡径が50μm以下であるシクロポリオレフィンからなる発泡プラスチック製光反射フィルムがある。これらの光反射シートやフィルムを液晶表示装置のバックライト用反射板として組み込む場合に、バックライトの光源となる蛍光灯の後ろ側の立体的な光反射板を製造する例として以下の例を挙げる。
【0023】
図1に示すように、平均気泡径が50μm以下で厚さが1mmの約4倍に発泡したポリエチレンテレフタレートの発泡シート2(前記のMCPET)に、刃厚が0.7〜1.42mmで5mm長さ間隔で間欠したミシン目状にシートを切断する帯刃状のプレス抜き刃を用いて直線状に切り込み4を形成した。その後、図2に示すように、直線の山形状になるように発泡シート2を切り込み部分4で山谷に折り曲げて反射板6を得た。折り曲げる山形状のピッチは、図3に示すように、バックライトの蛍光灯8のピッチPに合わせて、山の頂上部が蛍光灯8間のほぼ中間位置P/2になるよう設計した。折り曲げ加工は金型を使用せず、山谷の形状に沿った形の冶具を使って一山ずつ折り曲げた。
【0024】
次に、反射板6の形状を保持するために、図2〜図4に示すように、反射板6の裏面(光源8側と反対側の面)に、切り込み部分4と直交する3本の粘接着テープ10を、反射板6の幅方向一端部から他端部にかけて所定間隔を開けて貼り付けることにより、本発明の光反射板を得た。この場合、粘接着テープ10は、張力をかけずにたるまないように反射板6に貼り付けた。本例の光反射板は、反射板6が直管形光源8の長手方向に沿った複数の山形突起部12を有し、粘接着テープ10により上記山形突起部12の形状が保持されているものであった。
【0025】
(比較例)
反射板6の裏面に粘接着テープを貼り付けないこと以外は、実施例1と同様にして光反射板を得た。この光反射板は、成形時のひずみや成形後の収縮により変形が起こるものであった。
【0026】
(実施例2)
光反射シートとして、炭酸カルシウム(フィラー)を含有するポリエチレンテレフタレートの未延伸シートを延伸することにより、炭酸カルシウムを核として多数のボイドが形成された厚さ0.25mmの多孔性延伸シートを用いたこと、シートの表面にシートを貫通しない切り込み溝を直線に沿って連続的に形成し、この切り込み溝に沿ってシートを山谷に折り曲げたこと、および反射板の裏面全面に粘接着テープを貼り付けたこと以外は、実施例1と同様にして本発明の光反射板を得た。本例の光反射板は、反射板が直管形光源の長手方向に沿った複数の山形突起部を有し、粘接着テープにより上記山形突起部の形状が保持されているものであった。
【0027】
(実施例3)
光反射シートとして、炭酸カルシウム(フィラー)を含有するポリエチレンテレフタレートの未延伸シートを延伸することにより、炭酸カルシウムを核として多数のボイドが形成された厚さ0.1mmの多孔性延伸シートにアルミニウムシートをラミネートした複合シートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして本発明の光反射板を得た。なお、上記複合シートは、ポリエチレンテレフタレートの多孔性延伸シートが薄くて自立性がなく、それだけでは立体形状を保持できないため、アルミニウムシートをラミネートしたものである。本例の光反射板は、反射板が直管形光源の長手方向に沿った複数の山形突起部を有し、粘接着テープにより上記山形突起部の形状が保持されているものであった。
【0028】
(実施例4)
平均気泡径が50μm以下で厚さが1mmの約4倍に発泡したポリエチレンテレフタレートの発泡シート(前記のMCPET)として、図5に示すように、発泡させる前のポリエチレンテレフタレートシートの母板20をプレスにより湾曲した蒲鉾形(断面略半円形)突起部22を有する形状に成形した後、発泡させたものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして本発明の光反射板を得た。なお、発泡前にプレスをしたのは、発泡後にプレスをすると気泡がつぶれてしまうからである。本例の光反射板は、反射板が直管形光源の長手方向に沿った複数の蒲鉾形突起部を有し、粘接着テープにより上記蒲鉾形突起部の形状が保持されているものであった。
【0029】
なお、上記例では3本の粘接着テープを反射板裏面の幅方向一端部から他端部にかけて所定間隔を開けて貼り付けたり、反射板裏面の全面に貼り付けたりしたが、粘接着テープの本数や貼り付け態様は適宜設定することができ、要は粘接着テープによって反射板の変形を防止できればよい。
【0030】
(実施例5)
形状保持部材として、厚さ0.1mmのアルミニウムテープを用いた以外は実施例1と同じとした。本例の光反射板は、直管形光源の長手方向に沿った複数の山形突起部を有し、アルミニウムテープにより上記山形突起部の形状が保持されているものであった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の光反射板によれば、電飾看板、液晶表示装置、照明器具などのバックライトや照明ボックスを、より明るく、より薄型化して、効率的に発光させることができる。また、本発明によれば、合成樹脂製の反射板を立体的な形状に加工した光反射板の変形を良好に防止することができるとともに、光反射板を薄型化することができ、しかも加工費を安くして低コスト化を図ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射するプラスチックのフィルムまたはシートの所定箇所を立体的な形状に加工した反射板に、形状保持部材を固定してなることを特徴とする光反射板。
【請求項2】
前記光を反射するプラスチックのフィルムまたはシートは、内部に平均気泡径が50μm以下の微細な気泡もしくは気孔を多数有する熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートであることを特徴とする請求項1に記載の光反射板。
【請求項3】
前記光を反射するプラスチックのフィルムまたはシートは、フィラーを含有する熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートであって、前記フィラーを核として多数のボイドが形成されているフィルムまたはシートであることを特徴とする請求項1に記載の光反射板。
【請求項4】
前記フィラーを含有する熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートは、フィラーを含有する未延伸フィルムまたはシートを成形し、この未廷伸フィルムまたはシートを延伸することにより、前記フィラーを核として多数のボイドを形成した多孔性延伸フィルムまたはシートであることを特徴とする請求項3に記載の光反射板。
【請求項5】
前記反射板は、前記光を反射するプラスチックのフィルムまたはシートにその片側表面から反対側表面へ貫通する幅の狭い切り込みを直線に沿って間欠的に形成し、該フィルムまたはシートを前記切り込みに沿って折り曲げたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光反射板。
【請求項6】
前記形状保持部材が粘接着テープであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光反射板。
【請求項7】
前記粘接着テープの基材がポリエステル、ポリプロピレンおよびシクロポリオレフィンの少なくとも1種からなることを特徴とする請求項6に記載の光反射板。
【請求項8】
前記反射板は、直管形光源の長手方向に沿った複数の突起部を有し、前記形状保持部材により前記突起部の形状が保持されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光反射板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【国際公開番号】WO2005/066664
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【発行日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516901(P2005−516901)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000130
【国際出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】