説明

光反応の特性を利用する高選択的新規ベンゾ四環系化合物の一段階合成法の開発

【課題】 天然に存在する各種生理活性物質と同様の構造の化合物を効率よく、また選択性よく化学合成法で合成するための手段が必要とされている。
【解決手段】
このような複雑な反応系において、紫外光を用いて光を十分に照射し反応を行うことによって、副反応を抑え選択的に天然に存在する各種生理活性物質と同様の構造の化合物を効率よく一段階で合成できることが確認された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いた有機合成反応において、複雑な骨格をもつ新規ベンゾ四環系化合物を一段階で効率よく選択的に合成できることに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機合成化学の分野において光反応による複雑な環状の炭素骨格の構築に関する検討が活発に進められている。
しかし光反応を利用する場合、熱反応では合成が困難な骨格形成が可能である反面、生成物への過剰な光照射により、原料への逆反応や副反応および二次反応による複雑な反応系になる場合が少なくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、以上のような光反応によって一段階で複雑な多環系化合物を合成した例は少なく、特にベンゼン環に3つの連続したシクロペンタン環がつながった骨格をもつ化合物の合成法の検討はほとんど行われていない。
【0004】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、光反応の特性を利用して高効率・高選択的に合成する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、 一般式(I)で表される化学反応式において、紫外光を十分に照射する方法に関する。
【化1】

一般式(I)
【0006】
本発明は、一般式(II)で表される副反応が溶媒の極性によって抑制されること、また可逆的に出発物質に戻ることを利用して、十分に紫外光を照射することによって副反応を抑え選択性を向上させ、反応効率も向上させることで、初期の目的を達成しようとするものである。
【化2】

一般式(II)
【発明の効果】
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、一般式(I)で表される化学反応式において、紫外光を十分に照射することによって、一般式(II)の可逆的な副反応を抑え、一般式(I)の反応を高収率で得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施例をもって本発明を説明するが、これらに限定されるものではない。
(実施例1〜6)
【0009】
光反応装置は、内径8mmのパイレックス(登録商標)ガラス製反応管を用いた。出発物質はEWGがCN基およびCOMe基、XはO、C(COMe)およびC(CN)、R1、R2、R3はHまたはMe基である。また使用した溶媒、光照射時間および収率を表1に示した。
【表1】


b:EWG=CN、X=C(COMe)、R1、R2、R3=CH
c:EWG=CN、X=O、R1=H、R2、R3=CH
d:EWG=CN、X=O、R1、R2、R3=H
e:EWG=COMe、X=O、R1、R2、R3=CH
f:EWG=COMe、X=O、R1=H、R2、R3=CH
(比較例1〜6)
比較例1〜6において、紫外光を照射する時間および溶媒以外は実施例1〜6とまったく同様にして紫外光を照射する時間を短くして反応を行った。結果は表2に示す。
【表2】


100%にならない場合はその他の生成物が副生
a:EWG=CN、X=C(CN)、R1、R2、R3=H
b:EWG=CN、X=C(COMe)、R1、R2、R3=CH
c:EWG=CN、X=O、R1=H、R2、R3=CH
d:EWG=CN、X=O、R1、R2、R3=H
e:EWG=COMe、X=O、R1、R2、R3=CH
f:EWG=COMe、X=O、R1=H、R2、R3=CH
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明は、天然に存在する生理活性物質と同様の構造をもつ化合物を効率よく合成するための手段として最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される化学反応式において、紫外光を用いる高選択的な新規ベンゾ四環系化合物の一段階合成法。
【請求項2】
前記一般式(I)において、EWGはCN基、COCH基であり、XはO、NR、SiR′R″、C(CN)、C(COR)であり、Rはアシル基またはアルコキシカルボニル基、R′、R″はアルキル基、R1、R2、R3はH、CHからなる群から選択されたいずれかの基であることを特徴とする、請求項1に記載の反応方法。

【公開番号】特開2007−70288(P2007−70288A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259090(P2005−259090)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】