説明

光受信装置

【課題】光軸調整を容易にし、狭ビームによる高速光通信を可能にする。
【解決手段】赤外線信号光16の受光窓に、赤外線により発光する蛍光体22aを表面に接着した蛍光体板22を設置する。蛍光体を塗布していない円形の窓を信号光16が透過する。信号光16は窓を通過し、レンズ24によりフォトダイオード等の受光器26に集光される。受光器26は、赤外線信号光を電気信号に変換する。復調回路28は受光器26の出力電気信号からデータを復調する。信号処理装置30は受光器26の出力電気信号の強度を検出し、その強度レベルをディスプレイ32の画面上に表示させる。信号処理装置30はまた、受光器26の出力電気信号の強度レベルを音響の高さ又は強さで示すデジタル音響信号を生成する。このデジタル音響信号は、D/A変換器34を介してスピーカ36に印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信装置に関し、より具体的には、赤外線などの不可視の信号光を用いる光無線通信における光軸調整を容易にした光受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯情報端末の無線データ通信では、目への安全性が高い赤外線領域の信号光を用いた光無線通信が使用される。局所的な通信を小型で低消費電力の送受信装置で実現することができる。
【0003】
携帯情報端末の高機能化及び高性能化に伴い、音声、動画像又は高精細静止画像等の大容量のデータを伝送する機会が増え、Gbpsクラスの高速通信の要求も高まってきている。
【0004】
このような赤外線を用いた高速光無線伝送では、赤外線が目に見えないので、光軸を調整することが難しい。高速化のためには、光ビームを絞る必要があり、更に、光軸調整が難しくなる。
【0005】
赤外線通信で送信装置と受信装置の間の光軸調整方法として、可視光を信号光と同軸に重畳し、位置合わせのガイドとして用いる方式が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−101853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の構成では、信号光に可視光ガイド光を重畳するために、光送信装置に新たに光源と光学部品を追加する必要があり、光送信装置の大型化とコストの増加を招く。
【0007】
また、携帯情報端末間におけるGbpsクラスの高速な光無線通信では、端末間の位置合わせ(光軸調整)を厳密に行う必要があり、可視光ガイド光により利用者が光軸調整を行った程度では、容易に位置ずれを生じる。
【0008】
本発明は、可視ガイド光を用いることなしに、より容易に光軸を調整でき、安定的に信号光を受信できる光受信装置を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光受信装置は、非可視信号光を受信する光受信装置であって、当該非可視信号光を透過する受光窓と、当該受光窓の周囲に配置され当該非可視信号光に応じて可視発光する蛍光体と、当該受光窓を透過した当該非化し信号光を電気信号に変換する受光器と、当該受光器から出力される電気信号からデータを復元するデータ復元回路とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、受光窓の周囲に配置した上記蛍光体により、ユーザが、光送信装置からの非可視信号光の位置を視覚的に確認できる。従って、受光窓に確実に非可視信号光が入射するように、光送信装置及び/又は光受信装置の位置等を手動調整し、これらの光軸を手動で調整できる。更に、レベル通知手段を設けることにより、ユーザは、受光強度レベルを定量的に確認できるので、受光強度レベルを好ましいレベル以上に手動調整するのも容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示す。光送信装置10では、駆動回路12が、送信すべきデータに従い光源14を直接変調し、これにより、光源14は、データを搬送する赤外線信号光16を出力する。この赤外線信号光16は、一定の角度で拡がりながら外部に(ここでは、光受信装置20に向かって)照射される。本実施例では、光送信装置10及び光受信装置20は共に、携帯情報端末、例えば、携帯電話機である。
【0013】
光受信装置20の赤外線信号光16の受光窓には、赤外線により発光する蛍光体を表面に付着した蛍光体板22を設置してある。赤外線により発光する蛍光体は、例えば、硫化ストロンチウムである。蛍光体板22は、透明板に蛍光体22aを塗布したものからなり、図2に示すように、中央には赤外線を透過するように、蛍光体を付着していない円形の窓22bを設けてある。窓22bの部分は、透明板のままでも、透明板に開口を開けたものでもよい。
【0014】
赤外線信号光16が蛍光体22aに入射すると、蛍光体22aが可視光で発光する。図3は、少し光軸がずれた状態で赤外線信号光16が光受信装置20に入射しているときの、蛍光体板22の正面図を示す。ハッチングを付けた部分が赤外線信号光16により発光する。
【0015】
光送信装置10と光受信装置20の光軸があった状態では、図4に示すように、赤外線信号光16が、蛍光体板22の窓22bの周囲を同心円状に発光させる。利用者は、蛍光体板22の発光が、図4に示す状態になるように、光送信装置10と光受信装置20の位置関係を調整すればよい。更には、図4に示す状態で、蛍光体板22上の赤外線信号光16による発光リングが、極力小さくなるように、光送信装置10を光受信装置20に近づければ良い。
【0016】
本実施例では、蛍光体板22により、赤外線信号光16の光受信装置20への入射位置を視覚的に確認できるので、赤外線信号光16を細いビームにしたとしても、ユーザはマニュアルで容易に赤外線信号光を光受信装置20に入射させることができる。
【0017】
このような光軸調整の後では、赤外線信号光16は、蛍光体板22の窓22bを通過し、レンズ24によりフォトダイオード等の受光器26に集光される。受光器26は、赤外線信号光を電気信号に変換する。復調回路28は、受光器26の出力電気信号からデータを復調する。
【0018】
本実施例では更に、光受信装置20による赤外線信号光16の受光強度レベルを視覚及び音響でユーザに通知する手段を備える。即ち、信号処理装置30は、受光器26の出力電気信号の強度を検出し、その強度レベルをディスプレイ32の画面上に表示させる。ディスプレイ32のレベル表示により、ユーザは、赤外線信号光16の受光強度レベルを定量的に確認できる。ディスプレイ32は、データ受信に必要な受光強度レベルを表示エリア外又は内に表示する。
【0019】
信号処理装置30はまた、受光器26の出力電気信号の強度レベルを音響の高さ又は強さで示すデジタル音響信号を生成する。このデジタル音響信号は、D/A変換器34によりアナログ信号に変換され、スピーカ36に印加される。スピーカ36からの音響出力により、ユーザは、赤外線信号光16の受光強度レベルを定量的に確認できる。
【0020】
赤外線信号光16の受光強度レベルがデータ受信可能なレベル以上では、信号処理装置30は、特別な変調をかけた音響信号をD/A変換器34に出力してもよい。これにより、ユーザは、データ受信可能か否かを容易に判別できる。
【0021】
図4に示す状態から、ディスプレイ32又はスピーカ36によりユーザに通知される受光強度レベルがより大きくなるように、光送信装置10と光受信装置20を相対的に近づけることで、光受信装置20の受光強度レベルを容易且つ確実に高めることができる。
【0022】
例えば、データ伝送時の光送信装置10と光受信装置20の距離を約20cmとし、赤外線信号光16の拡がり角を0度乃至8度程度としたとき、蛍光体板22の15×15mm程度のサイズで、窓22bの直径は約10mmである。このような寸法で、良好なマニュアルの光軸調整が可能であった。
【0023】
光受信装置20の受光光学系の中心軸をユーザが容易に識別できるように、蛍光体板22の窓22bに、図5,図6及び図7に示すような蛍光体製のマーク22c,22d,22eを付加しても良い。
【0024】
図5に示す例では、窓22bの中心に、光軸中心を示す小さなドット状の蛍光体製のマーク22cを付着してある。ドットマーク22cは赤外線信号光16の中心のごく一部を邪魔するだけなので、光受信装置20の受光の妨害にはならない。ユーザは、ドットマーク22cの発光により、窓22bの中心に赤外線信号光16が入射していることを視覚的に確認できる。
【0025】
図6示す例では、窓22bの中心に、光軸中心を示す十字状の蛍光体製のマーク22dを付着してある。十字マーク22dは赤外線信号光16の中心のごく一部を邪魔するだけなので、光受信装置20の受光の妨害にはならない。ユーザは、十字マーク22cの発光により、窓22bの中心に赤外線信号光16が入射していることを視覚的に確認できる。
【0026】
図7に示す例では、窓22bの中心に、光軸中心を示す少し大きめのリング状の蛍光体製のマーク22eを付着してある。ユーザは、リングマーク22eが均等に発光しているかどうかで、赤外線信号光16の中心が、窓22bの中心、即ちリングマーク22eの中心に入射していることを視覚的に確認できる。
【0027】
図6に示す例と図7に示す例を組み合わせてもよい。図8はそのような組み合わせ例の蛍光体板22の正面図を示す。即ち、窓22bの中心に、光軸中心を示す少し大きめのリング状の蛍光体製のマーク22fを付着し、かつまた、光軸中心を示す十字状の蛍光体製のマーク22gを付着してある。十字マーク22gは窓22bの外縁にまで到達しているが、図6に示す十字マーク22cと同程度のサイズのものであってもよい。
【0028】
本実施例では、100Mbps以上の光無線通信装置を搭載した携帯情報端末における端末間の光軸調整(位置合わせ)を、蛍光体の発光状況やディスプレイ上に示された受光強度、さらにスピーカからの音声を用いることで、容易に行うことができる。これにより光軸調整の時間を含んだ通信全体に係わる時間を短縮できる。
【0029】
特定の説明用の実施例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲を逸脱しないで、上述の実施例に種々の変更・修整を施しうることは、本発明の属する分野の技術者にとって自明であり、このような変更・修整も本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例の概略構成ブロック図である。
【図2】蛍光体板22の正面図である。
【図3】少し軸ずれして赤外線信号光16が入射しているときの、蛍光体板22の正面図である。
【図4】光軸が合った状態で赤外線信号光16が入射しているときの、蛍光体板22の正面図である。
【図5】中心を示すマーク22cの付加した蛍光体板22の正面図である。
【図6】中心を示すマーク22dの付加した蛍光体板22の正面図である。
【図7】中心を示すマーク22eの付加した蛍光体板22の正面図である。
【図8】十字マークとリングマークを併用する蛍光体板22の正面図である。
【符号の説明】
【0031】
10:光送信装置
12:駆動回路
14:光源
16:赤外線信号光
20:光受信装置
22:蛍光体板
22a:蛍光体
22b:窓
22c:ドットマーク
22d:十字マーク
22e:リングマーク
22f:リングマーク
22g:十字マーク
24:レンズ
26:受光器
28:復調回路
30:信号処理装置
32:ディスプレイ
34:D/A変換器
36:スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非可視信号光を受信する光受信装置であって、
当該非可視信号光を透過する受光窓(22b)と、
当該受光窓の周囲に配置され当該非可視信号光に応じて可視発光する蛍光体(22a)と、
当該受光窓を透過した当該非可視信号光を電気信号に変換する受光器(26)と、
当該受光器(26)から出力される電気信号からデータを復元するデータ復元回路(28)と、
とを具備することを特徴とする光受信装置。
【請求項2】
更に、当該電気信号から当該非可視信号光の受光強度レベルをユーザに通知するレベル通知手段(32,36)を具備することを特徴とする請求項1に記載の光受信装置。
【請求項3】
当該受光窓の中心に、当該非可視信号光により可視発光する所定形状のマーク(22c,22d,22e,22f,22g)を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の光受信装置。
【請求項4】
当該通知手段が、当該受光強度レベルを表示する表示手段(32)と、当該受光強度レベルに応じた高さ及び大きさの少なくとも一方の音響を出力する音響出力手段(36)の少なくとも一方を具備することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の光受信装置。
【請求項5】
当該非可視信号光が赤外線信号光(16)であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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