説明

光変流器

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
この発明は、ガラス内を通る光が磁界の影響で偏光方向が回転するファラデー効果を利用してガス絶縁開閉装置などの高電圧導体に流れる比較的大きな電流の測定に使用される光変流器に関する。
〔従来の技術〕
磁界内における偏光面の回転現象すなわちファラデー効果を利用して電流を測定することができる。その原理は、電流により生成された磁界中に置かれた鉛ガラスなどのファラデー効果を示すガラス(以下、ファラデー効果ガラスと称する)中を偏光光が通過する際に、偏光面が角度θ=V・H・L(ただし、V;ヴェルデ定数、H;光の進行方向の磁界強度、L進行方向のガラス長)だけ回転するのを周知の方法で検出して磁界強度Hを求めることによりファラデー効果ガラス近傍に流れる電流を測定するものである。
通常の電流計測現場では複数本の導体が設置されている場合が多く、測定しようとする導体の電流以外の電流による磁界の影響を受けてしまう。そのため、測定の対象となる導体以外の導体の電流の影響をなくす方法として、単一のファラデー効果ガラスの中央部に貫通孔を設け、この貫通孔に電流測定の対象となる導体を貫通させ、この導体を一周してファラデー効果ガラス内を通過する光路を設定した光変流器が知られている(特開昭58−153174号公報)。
第11図はこの公報による発明の一実施例を示す光変流器のファラデー効果ガラスとこれを貫通する導体の斜視図である。この図において、略正方形をした板状のファラデー効果ガラス1の中央部に貫通孔11が設けられており、この貫通孔11に導体100が貫通した構造である。ファラデー効果ガラス1はその右下に光を入れまた取り出す入出片部16があり、直線偏光された入光17が下から上に向かって入り、後述する光路を経てファラデー効果ガラス1の周辺近くを一周してきた出光18が外部に取り出される。入光17の生成装置や出光18の出光後の処理を行う装置の図示は省略してある。ファラデー効果ガラス1の周囲の辺は例えば上の水平の辺では厚みの半分の部分が45度に削り取られて斜面12が形成された構成となっており、これらは後述するように他の3辺にも設けられている。
第12図はファラデー効果ガラス1の投影図であり、第13図(A)は第11図と略同じ方向から見た正面図であり、その側面図を三角法に基づいてその周辺に図示してある。すなわち、第12図(B)は第12図(A)を右からみた図であり、第12図(C)は上から、第12図(D)は左から、第12図(E)は下からそれぞれ見た側面図である。各辺には前述のように厚みの半分を45度に削り取って斜面が形成されている。これらの斜面はそれぞれ第12図(A)の上辺が斜面12、左辺が斜面13、下辺が斜面14、右辺が斜面15である。これらの図で光路は二点鎖線で図示してあり、入出光及び反射部には英小文字を付してある。入光aは第11図の入光17と同じであり、この入光aは斜面になっていない位置から入光しているので、入光aの方向はファラデー効果ガラス1の面に垂直になっており、屈折による方向の変化はなく境界面での反射も最小になっている。
入光aはファラデー効果ガラス1内を図の上に向かって右上の頂点部に向かって直進し斜面12上の点bで反射する。斜面12に対する光の侵入角度は45度であり、ファラデー効果ガラス1を構成する鉛ガラスの屈折率は大きいものでは1.8程度あり、小さくても1.5程度なのでガラス内を45度の角度で表面に当たった光は全反射する。したがって、斜面12のb点にあたった光は全反射してその方向を直角に曲げてファラデー効果ガラス1の厚み方向に向きを変える。この光は第12図(B)に明らかなように斜面15の点cに当たってもう一度向きを変えて第12図(A),(c)に示すように上の辺に平行な向きになって左上の頂点部に向かう。以後は右上の頂点部と同じように左上頂点部において斜面13の点dと斜面12の点eで2回全反射して下方向に向きを変え、左下頂点部で斜面14の点fと斜面13の点gでそれぞれ全反射してその向きを右方向に向かう水平に変えて出光hとなる。
このように、光は正方形をしたファラデー効果ガラス1の1つの頂点部から入光させ、それぞれの頂点部ごとに2回直角に方向を変える全反射をさせて結果的にそれぞれの辺に沿って周辺近くを1周回して入光位置に近い位置から出光することにより貫通孔11を一周するように構成されている。貫通孔11を貫通している導体に流れる電流によって生成される磁界の周回積分はその周回経路に無関係に導体を流れる電流に一致するという関係があるから、前述のように光路を一周させることによって光が受ける偏光方向の回転角度は導体の電流に比例することになる。また、それぞれの頂点部で2回全反射させるのは直線偏光された光が楕円偏光になるのを抑制するためであり、1回の全反射では入光が理想的な直線偏光光であっても反射光は楕円偏光になってしまうという現象があり、これを回避するためには適当な組み合わせの全反射を2回させることによって偏光の歪みが打ち消しあって結果的に反射後も直線偏光光が得られる。前述の頂点部における2回の全反射はこのような理由のために採用されているものである。この場合、1回目の全反射と2回目の全反射の間では楕円偏光となっているので、この間で磁界による偏光角の回転が生ずると2回目の全反射後の偏光は直線偏光にならず、僅かであっても楕円偏光になってしまうという問題がある。したがって、例えば第12図(B)での点bとcとの間の距離はなるべく小さいのが望ましい。しかし光路の設定精度の点からこの距離の最少寸法に制約が生じているのが実際である。なお、光変流器を設置する装置によっては複数本の導体の電流の方向がいずれも一方方向のために、ファラデー効果ガラス1の厚み方向の磁界成分は無視できる程度に僅かなものもあり、このような装置では前述のような現象は問題にする必要はなくなる。
〔発明が解決しようとする課題〕
前述から明らかなように、1つの傾斜12,13,14,15で全反射に関与するのはその両端部だけであり、その中央部はなんの役目も果たしていない。したがって、全反射が有効に行われるための反射面を鏡面に仕上げるための研磨は斜面の両端部だけでよい。しかし、実際の研磨作業においては1つの平面の一部だけを研磨するというのは困難な面があり、必ずその平面全体を研磨することになる。また、研磨される表面の周辺部が中央部よりもより多く研磨されるという現象があるために、通常研磨される面に面を合わせたヤトイと称されているダミーのガラスを周囲に配置して、これらを一緒に研磨することによって必要とする研磨面が一様に研磨されることになる。
前述のように、斜面12,13,14,15を設けるためにはこれら車面を全面にわたって研磨する必要があり、しかも前述のようにヤトイを設けることになるが、大電流導体の電流測定のための光変流器のファラデー効果ガラスでは、導体断面寸法が増大することから貫通孔11の寸法も大きくなり、これにともなってファラデー効果ガラス1の寸法が増大することになる。したがって、4つの斜面12,13,14,15を形成するための研磨はファラデー効果ガラスの寸法増大に比例して研磨面が増大することによって研磨に要する時間と費用が増大するという問題がある。光変流器が変圧器と同じ原理に基づく通常の計器用変流器の代わりに使用されて効果があるのはガス絶縁開閉装置などの高電圧機器であり、これらはまた容量も大きいのが普通でその電流も千アンペア程度の大きな値のものが多いことから、前述のように、ファラデー効果ガラス1の寸法は大きなものが必要になる。したがって、前述のような研磨面の寸法増大による研磨時間、費用の増大はなおのこと重要になるという問題がある。また、研磨に多くの時間を要することはファラデー効果ガラスを大量に製作する上での障害になるという問題もある。
この発明はこのような問題を解決し、研磨面が小さくてすみ、研磨時間、費用が低減され、かつ量産にも適したファラデー効果ガラスを備えた光変流器を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
上記課題を解決するためにこの発明によれば、中央部に導体を貫通させる貫通孔が設けられたファラデー効果ガラスを備え、このファラデー効果ガラスの中に前記貫通孔を周回する光路か設けられてなる光変流器において、前記ファラデー効果ガラス内に前記貫通孔を周回する長方形状の光路を仮定し、この仮定光路の4つの頂点部に光路を直角に曲げるための反射面としての4つの斜面を前記ファラデー効果ガラスに設け、この斜面のうちの3つにこの斜面に接着される接着面を持つ反射片を接着し、残りの1つの斜面に直角プリズムからなる入出光片を接着してなり、前記反射片が前記仮定光路の辺に沿う光路を厚み方向に変える反射面と、この厚み方向に曲げられた光路を前記辺に直角な隣の辺に平行に光路を変える反射面との2つの反射面を有するものとし、また、中央部に導体を貫通させる貫通孔が設けられたファラデー効果ガラスを備え、このファラデー効果ガラスの中に前記貫通孔を周回する光路か設けられてなる光変流器において、前記ファラデー効果ガラス内に前記貫通孔を周回する長方形状の光路を仮定し、この仮定光路の3つの頂点部にそれぞれの頂点を含み切り欠き面が前記仮定光路に直交する切欠部を3つ設けてこれらの切欠部を互いに直交する2つの接着面を持つ反射片を接着し、残り1つの頂点部に光路を直角に曲げるための反射面としての斜面を設けてこの斜面に直角プリズムからなる入出光片を接着してなり、前記反射片が、前記仮定光路の辺に沿う光路を厚み方向に変える反射面と、この厚み方向に曲げられた光路を前記辺に直角な隣の辺に平行に光路を変える反射面との2つの反射面を有するものとし、あるいは、前述の光変流器において、ファラデー効果ガラスが、円形板からなるものとし、又は、ファラデー効果ガラスが、長方形板からなりこの長方形板の辺と仮定光路の長方形の辺とが互いに平行であるものとし、また、前述の光変流器において、反射片がファラデー効果ガラスと異なる材料のガラスであるものとする。
〔作用〕
この発明の構成において、ファラデー効果ガラス内に長方形の光路を仮定し、この仮定光路の4つの頂点部に光路が直角に曲がる反射面としての斜面をそれぞれ設けてこの斜面のうち3つにこの斜面に接着される接着面を持つ反射片を接着し、残りの1つの斜面に直角プリズムを入出光片として接着した構成とし、前述の反射片が、仮定光路の辺に沿う光路を厚み方向に変える反射面と、この厚み方向に変えられた光路を前述の辺に直角な隣の辺に平行に光路を変える反射面との2つの反射面を備えることにより、入出片から1つの辺に平行に入光した光は次の頂点部の斜面を通過してこの斜面に接着されている反射片に入光し、この光はファラデー効果ガラスの厚み方向に変える反射面にあたって全反射して厚み方向に向きを変え、この光が隣の辺に平行に変えられる反射面にあたって全反射してこの隣の片に平行に変えられて次の隣の頂点部の方向に向かう。同じようにした次の頂点部、更にその次の頂点部で反射片の中で2回ずつ直角に曲がる全反射をして、結果的に電流が流れる導体が貫通する貫通孔の周りを一周して入出片を通過してファラデー効果ガラスから出光する。それぞれ3つの頂点部で2回反射させる反射片はファラデー効果ガラスとは別に製作することができるとともに、ファラデー効果ガラスの寸法には無関係にその寸法形状を設定することができるので、寸法や形状の異なるファラデー効果ガラスに対して同じ寸法形状の反射片とすることができる。また、ファラデー効果ガラスの斜面や反射片の反射面は全反射させるために研磨して鏡面仕上げをする必要があるが、いずれも限定された小さな面が研磨面になるので研磨に要する時間や費用が小さくて済む。
また、ファラデー効果ガラス内に設けた仮定光路の3つの頂点部を直角に切り欠き、この切欠部に互いに直交する2つの接着面を持つ反射片を接着し、残りの1つの頂点部を前述の斜面と同様の斜面を設けて直角プリズムからなる入出片片を接着した構成とし、反射片が、仮定光路の辺に沿う光路を厚み方向に変える反射面と、この厚み方向に変えられた光路を前記辺に直角の隣の辺に平行に光路を変える反射面との2つの反射面を備えたことにより、前述の頂点部に斜面を設けた場合と同じように入出片を通って入光した光はそれぞれの反射片内で2回ずつ全反射してからファラデー効果ガラスの周囲近くを一周して入出片から出光する。直角に切り欠いた切欠部や反射片の寸法はファラデー効果ガラスの寸法とは無関係に設定できることから、前述の場合と同様に反射片を標準化することができる。また、この反射片は2つの直角プリズムを密着させることによって形成することができるので、市販の直角プリズムを使用することにより光変流器の価格低減を計ることができる。
ファラデー効果ガラスは長方形の仮定光路をその内部に設定できその頂点部に斜面を設けた直角の切欠部を設けたりすることが可能な限りどのような形状のものでもよい。
ファラデー効果ガラスに円形板状を採用すれば、斜面や切欠部を設ける際に研磨量が比較的少なくてすむ。また、ファラデー効果ガラスの形状を正方形を含む長方形板状にすれば、長方形の仮定光路をファラデー効果ガラスの形状に合わせて効率よく設定することができるので、ファラデー効果ガラスの材料使用量も少なくてすむ。
前述の切欠部とその部分に接着する反射片の形状が異なる2種類の構成の異なる光変流器のいずれの場合でも、反射片の材料をファラデー効果ガラスの材料と異なるものを使用することができる。その場合、それぞれの材料の屈折率は等しいことが理想的であり、かつ反射片のファラデー効果の強さを決めるヴェルデ定数の小さな材料が望ましい。特に特角の切欠部を設ける場合には反射片とファラデー効果ガラスの接着面は全て光路に直交しているので両者の屈折率が異なっても屈折による光路の方向は変わらないので屈折率の違いの影響は小さい。したがって、ヴェルデ定数が小さくしかも市販の直角プリズムを採用することが容易になる。
〔実施例〕
以下この発明を実施例に基づいて説明する。第1図はこの発明の第1の実施例を示すファラデー効果ガラスの斜視図である。この図においては、中央部に貫通孔21が設けられた正方形状のファラデー効果ガラス2は、その4つの頂点部がそれぞれ45度に切り欠かれて斜面22,23,24,25を形成している。斜面22には後述する反射片26が、斜面23には反射片27が、斜面24には反射片28がそれぞれ接着され、斜面25には入出片29が接着される。この図では反射片26,27,28及び入出片29はいずれも接着前の状態を示してある。反射片26と28とは同一寸法形状であり、反射片27はこれらに対し面対称形状をしている。また、入出片29は直角プリズムからなっている。
第2図はファラデー効果ガラス2及びこれに接着された反射片26,27,28及び入出片29の中を通る光路を第12図と同様に図示した投影図であり、第12図と同様に正面図である第2図(A)とその周辺に4つの側面図を配置してあり、これらの図の関係は第12図と同じなので説明を省略する。入光aは入出片29を介してファラデー効果ガラス2内に入り斜面22に取付けられた反射片26によって2回全反射しその向きを水平方向に変え斜面23に向かう。斜面23の反射片27、斜面24の反射片28でいずれも2回全反射するとともに光路の向きを変えて結果的に出光hが入出片29を介して出光してくる。
第3図は第2図の反射片26だけを取り出してその光路とその反射の状況を示す投影図であり、それぞれ3つの図の付属符号は第2図のそれに合わせてある。接着面263がファラデー効果ガラス2の斜面に接着される面であり、この面から侵入してきた入光aに対して反射面261は45度の角度を持っておりこの反射面261上の点bで光は全反射して直角に曲げられた後の光の方向に45度の角度を持つ反射面262の点cが再び全反射して直角に曲がりこの2回の全反射で結果的に入光aに対してこの図での出光dの向きが直角だけ変化して出光してゆく。このような光路は基本的には第12図の従来の光変流器のファラデー効果ガラス1と同じである。
この反射片26の研磨が必要な面は反射面261,262及び接着面263の3つの面である。また、ファラデー効果ガラス2の研磨を必要とする面は4つの斜面22,23,24,25である。これら4つの斜面22,23,24,25の寸法はファラデー効果ガラス2の縦横の寸法に無関係であり、ファラデー効果ガラス2の寸法が大きくなって研磨面の寸法の不変である。また、反射片26,27,28及び入出片29もファラデー効果ガラス2の寸法に無関係でよいから、反射片の寸法や材料を標準化し同じ寸法形状のものを大量に生産し数量効果による価格の低減が可能である。また、研磨面はファラデー効果ガラス2も含めて限定された小さな面でよいので光変流器全体としての研磨を必要とする面の数は増加するが研磨面積の総和が減少するので、1つの光変流器を製作する際の研磨時間も減少する。また、ファラデー効果ガラス2の斜面22,23,24,25や反射片26,27,28は必要とする最少寸法は、光路の精度に関係するものであり、光路の精度が高いと実際の光路が反射片26,27,28の反射面から外れてしまわない範囲で反射片26,27,28や斜面22,23,24,25寸法を小さくできることから、光路の設定の技術の向上にともなって、これらの寸法を縮小することによる光変流器の価格低減も期待できる。
反射片26,27,28の材料はファラデー効果ガラス2のそれと同じとするのが一般的である。一方、ファラデー効果ガラス2と反射片26,27,28との接着面は光路に対して45度の角度を持っているので、屈折率が異なるとこの接着面で屈折が起こって光路が変えられることになって正確な光路の設定が困難になるという問題がある。したがって、反射片26,27,28の材料は屈折率はファラデー効果ガラス2の材料と実質的に同じでしかもヴェルデ定数の小さなガラスが最適となる。ファラデー効果ガラス2に通常使用される鉛ガラスでも、ヴェルデ定数の小さな鉛ガラス以外のガラスでもその屈折率は種々の値のものがあるので、入射角が45度の光に対して全反射するに必要な値の屈折率を有するものである範囲内において、前述の最適の組み合わせとなる材料を選択することは可能である。
第4図はこの発明の第2の実施例を示すファラデー効果ガラスの斜視図であり、貫通孔21、斜面25及び入出片29は第1図のそれと同じなので説明を省略する。斜面25を設けた右下の頂点部を除く3つの頂点部はいずれも正方形に切り欠かれて切欠部32,33,34を形成しており、これら切欠部32,33,34に反射片36,37,38がそれぞれ取付けられる。この図では取付け前の状態を示している。反射片36,37,38は後述のように直角プリズム2つを合わせることによって得られる形状になっている。
第5図と第4図のファラデー効果ガラス3と反射片36,37,38などにおける光路を示す投影図であり、5つの図は関係は第2図と同じである。切欠部32は対称性が考慮されて正方形になるように切り欠かれており、その内角部に反射片36が嵌まるように取付けられており、その接着面を介してファラデー効果ガラス3と反射片36との間で光が出入りする。この図の場合も第1の実施例における第2図の場合と類似であり、入出片29を介して入光aが入光し、反射片36,37,38でそれぞれ2回ずつ反射することにより貫通孔21の周りを一周した上で入出片29を介し外部に出光孔hとして出光する。
第6図は第4図や第5図の反射片36だけを取り出してその光路とその反射の状況を示す投影図であり、それぞれ3つの図の付属符号は第4図のそれと合わせてある。反射片36は直角プリズム365,366を2つの接着した形状をしており、ファラデー効果ガラス3とは接着面363,364が接着される。反射面361はファラデー効果ガラス3からの入光aに対して45度の角度をしており、入光aはこの反射面361の点bで全反射してその方向を直角に曲げ、曲がった方向の光に45度の角度を持つ反射面362の点cでもう一度全反射して再度直角に方向を変えこの図での出光dとしてファラデー効果ガラス3に戻る。
反射片36の研磨を必要とする面は反射面361,362と接着面363,364の4面である。また、2つの直角プリズム3645,366を別々に製作し接着して反射片36を製作する場合にはその接着面も研磨する必要がある。直角プリズムを接着して反射片を製作する方法を採用することによって、安価な市販の直角プリズムを使用できるという特長がある。この場合、ファラデー効果ガラス3と反射片36との材料の屈折率が異なる場合には接着面で一部の光が反射するが、接着面と光の角度は直角なので屈折率が生ずることはない。したがって、この実施例では屈折率が接近している材料であるならばファラデー効果ガラス3と異なる材料の反射片36,37,38を使用することが可能であり、前述のような市販のものを使用することによる効果を上げることができる。
なお、前述ファラデー効果ガラス2,3ではいずれも貫通孔は円形でこれにともなってファラデー効果ガラスの形状も正方形としたが、貫通孔を貫通する導体の形状は必ずしも円筒であるとは限らず断面が正方形の平角バーの場合もあり得る。一方、光変流器を設置するための空間はどのような機器であっても充分に確保できるとは限らず、必要最少限に制約されるのが普通なので、貫通導体が平角バーの場合は貫通孔を一方に長い形状にし、これにともなって、ファラデー効果ガラスも長方形にすることになる。このようにファラデー効果ガラスの形状が長方形の場合は1つの頂点部から次の頂点部に光が通過する距離が異なるだけで頂点部の切欠部や反射片などの形状は同じでよく、この発明を適用する上での制約にはならない。ファラデー効果ガラスが長方形の場合は辺の長さが長くなるので、この発明の効果がより大きくなるという点が異なるのみである。
第7図はこの発明の第3の実施例を示す斜視図であり、第1図と共通の部材については同一の参照符号を付けて詳細な説明を省略する。第7図の第1図との違いはファラデー効果ガラス4の形状を円板状にしたいことである。第2図に二点鎖線と英小文字で示す光路は本来反射片26,27,28及び入出片29によって決まるものであってファラデー効果ガラス4の形状は光路を阻害しない限り影響しないのでこのように円板状であっても差し支えない。円板状にすると、斜面42,43,44,45の研磨量が少なくなるという特長がある。
第8図はこの発明の第4の実施例を示す斜視図であり、ファラデー効果ガラス5が任意の形状の板でもよいことを示すものである。
第9図はこの発明の第5の実施例を示す斜視図であり、第4図と共通の部材については同一の参照符号を付けて詳細な省略する。第9図の第4図のとの違いはファラデー効果ガラス6の形状を第7図と同様に円板状にしたことである。第5図に二点鎖線と英小文字で示す光路は本来反射片36,373,38及び入出片29によって決まるものであって、第7図と同様にファラデー効果ガラス6は光路を阻害しない限りその形状の影響はないのでこのように円板状であっても差し支えない。
第10図はこの発明の第6の実施例を示す斜視図であり、第8図と同様に切欠部を設けた光変流器の場合もファラデー効果ガラス7が任意の形状の板でもよいことを示すものである。
なお、ファラデー効果ガラスの形状はいずれも厚みが一定の板状のものとして図示してあるが、この厚みは一定である必要はなく反射片や入出片の寸法以上でありさえすればよく、厚み寸法が位置によって変わるものであってもよい。
〔発明の効果〕
この発明は前述のように、ファラデー効果ガラス内に長方形の光路を仮定し、この仮定光路の4つの頂点部に光路が直角に曲がる反射面としての斜面をそれぞれ設けてこの斜面のうちの3つの反射片を接着し、残りの1つの斜面に直角プリズムを入出光片として接着した構成とし、前述の反射片が、仮定光路の辺に沿う光路を厚み方向に変える反射面と、この厚み方向に変えられた光路を前述の辺に直角な隣の辺に平行に光路を変える反射面との2つの反射面を備えることにより、入出片から仮定光路の1つの辺に平行に入光した光は次の頂点部の斜面を通過してこの斜面に接着されている反射片に入光し、この光はファラデー効果ガラスの厚み方向に方向を変える反射面にあたって全反射して厚み方向に向きを変え、この光が隣の片に平行に変えられる反射面にあたって全反射してこの隣の片に平行に変えられて次の隣の頂点部の方向に向かう。同じようにして次の頂点部、更にその次の頂点部で反射片の中で2回ずつ直角に曲がる全反射をして、結果的に電流が流れる導体が貫通する貫通孔の周りを一周して入出片を通過してファラデー効果ガラスから出光する。ファラデー効果ガラスの斜面や反射片の反射面は研磨して鏡面仕上げをする必要があるが、いずれも限定された小さなが研磨面になるので研磨に要する時間や費用が小さくてすむという効果が得られる。また、それぞれ3つの頂点部で2回反射させる反射片はファラデー効果ガラスとは別に製作することができるとともに、ファラデー効果ガラスの寸法には無関係にその寸法形状を設定することができるので、寸法の異なるファラデー効果ガラスに対して同じ寸法形状に標準化できる。したがって、同じ寸法形状の反射片を大量に製作することができることから数量効果に基づく価格低減を図ることができる。更に、光路の寸法精度が向上すれば切欠部や反射片の寸法を縮小することができるので、光路設定精度の技術向上に伴ってこれらの寸法を縮小することによる研磨面積と材料使用量の低減か可能になる。
また、ファラデー効果ガラス内に設けた仮定光路の3つの頂点部を直角に切り欠き、この切欠部を互いに直交する2つの接着面を持つ反射片を接着し、残りの1つの頂点部に前述の斜面と同様の斜面を設けて直角プリズムからなる入出片片を接着した構成とし、反射片が、仮定光路の辺に沿う光路を厚み方向に変える反射面と、この厚み方向に変えられた光路をこの辺に直角な隣の辺に平行に光路を変える反射面との2つの反射面を備えたことにより、前述の頂点部に斜面を設けた場合と同じように入出片を通って入光した光はそれぞれの反射片内で2回ずつ全反射してからファラデー効果ガラスの周囲近くを一周して入出片から出光する。直角に切り欠いた切欠部や反射片の寸法はファラデー効果ガラスの寸法とは無関係に設定できることから、前述の場合と同様に反射片を標準化することができる。このように、前述の斜面を形成するファラデー効果ガラスと同様に、研磨面積の縮小、反射片の標準化及び光路設定精度の向上に基づく光変流器の価格低減という効果が得られる。更に、この反射片は2つの直角プリズムを合わせた形状になっているので、実際に市販の直角プリズムを2つの接着して反射片を製作することができることから、なお一層の価格低減が可能になるという効果が得られる。
ファラデー効果ガラスは長方形の仮定光路がその内部に設定できその頂点部に斜面を設けたり直角の切欠部を設けたりすることが可能な限りどのような形状のものでもよい。ファラデー効果ガラスに円板状のものを採用すれば、斜面や切欠部を設ける際に研磨量が比較的少なくてすむという特長がある。また、ファラデー効果ガラスの形状を正方形を含む長方形板状にしてその辺に平行になりように仮定光路の辺を設定することによりファラデー効果ガラスの材料使用量とが最も少なくてすみ、これにともなって光変流器の重量も最小にすることができる。
前述の構成の異なるファラデー効果ガラスを持つ光変流器のいずれの場合でも、反射片の材料をファラデー効果ガラスの材料と異なるものを使用することができる。その場合、それぞれの材料の屈折率は等しいことが理想的であり、かつ反射片のファラデー効果の強さを決めるヴェルデ定数の小さな材料が望ましい。特に直角の切欠部を設ける場合には反射片とファラデー効果ガラスとの接着面は全て光路に直交しているので両者の屈折率が異なっても屈折による光路の変わりは生じないので屈折率の違いの影響は小さい。したがって、ヴェルデ定数が小さくしかも市販の直角プリズムを採用することが容易になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の第1図の実施例を示すファラデー効果ガラスの斜視図,第2図は第1図のファラデー効果ガラスとその光路を示す投影図、第3図は第2図の1つの反射片だけを取り出して示す投影図、第4図はこの発明の第2の実施例を示すファラデー効果ガラスの斜視図、第5図は第4図のファラデー効果ガラスとその光路を示す投影図、第6図は第5図の1つの反射片だけを取り出して示す投影図、第7図はこの発明の第3の実施例を示すファラデー効果ガラスの斜視図,第8図はこの発明の第4の実施例を示すファラデー効果ガラスの斜視図,第9図9図はこの発明の第5の実施例を示すファラデー効果ガラスの斜視図、第10図はこの発明の第6の実施例を示すファラデー効果ガラスの斜視図、第11図は従来の光変流器のファラデー効果ガラスとこれを貫通する導体の斜視図、第12図は第11図のファラデー効果ガラスとその光路を示す投影図である。
1,2,3,4,5,6,7……ファラデー効果ガラス、
11,21,31,41,51,61,71……貫通孔、
100……貫通導体、
12,13,14,15,22,23,24,25,42,43,44,45,52,53,54,55……斜面、
26,27,28,36,37,38……反射片、29……入出片、
32,33,34,62,63,64,72,73,73……切欠部、
261,262,361,362……反射面、
263,363,364……接着面、
365,366……直角プリズム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】中央部に導体を貫通させる貫通孔が設けられたファラデー効果ガラスを備え、このファラデー効果ガラスの中に前記貫通孔を周回する光路か設けられてなる光変流器において、前記ファラデー効果ガラス内に前記貫通孔を周回する長方形状の光路を仮定し、この仮定光路の4つの頂点部に光路を直角に曲げるための反射面としての4つの斜面を前記ファラデー効果ガラスに設け、この斜面のうちの3つにこの斜面に接着される接着面を持つ反射片を接着し、残りの1つの斜面に直角プリズムからなる入出光片を接着してなり、前記反射片が前記仮定光路の辺に沿う光路を厚み方向に変える反射面と、この厚み方向に曲げられた光路を前記辺に直角な隣の辺に平行に光路を変える反射面との2つの反射面を有することを特徴とする光変流器。
【請求項2】中央部に導体を貫通させる貫通孔が設けられたファラデー効果ガラスを備え、このファラデー効果ガラスの中に前記貫通孔を周回する光路か設けられてなる光変流器において、前記ファラデー効果ガラス内に前記貫通孔を周回する長方形状の光路を仮定し、この仮定光路の3つの頂点部にそれぞれの頂点を含み切り欠き面が前記仮定光路に直交する切欠部を3つ設けてこれらの切欠部を互いに直交する2つの接着面を持つ反射片を接着し、残り1つの頂点部に光路を直角に曲げるための反射面としての斜面を設けてこの斜面に直角プリズムからなる入出光片を接着してなり、前記反射片が、前記仮定光路の辺に沿う光路を厚み方向に変える反射面と、この厚み方向に曲げられた光路を前記辺に直角な隣の辺に平行に光路を変える反射面との2つの反射面を有することを特徴とする光変流器。
【請求項3】ファラデー効果ガラスが、円形板からなることを特徴とする請求項1又は2記載の光変流器。
【請求項4】ファラデー効果ガラスが、長方形板からなりこの長方形板の辺と仮定光路の長方形の辺とが互いに平行であることを特徴とする請求項1又は2記載の光変流器。
【請求項5】反射片がファラデー効果ガラスと異なる材料のガラスであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の光変流器。

【第1図】
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【第3図】
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【第8図】
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【第2図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第7図】
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【第6図】
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【第9図】
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【第10図】
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【第11図】
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【第12図】
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【特許番号】第2658542号
【登録日】平成9年(1997)6月6日
【発行日】平成9年(1997)9月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−247913
【出願日】平成2年(1990)9月18日
【公開番号】特開平4−72576
【公開日】平成4年(1992)3月6日
【出願人】(999999999)富士電機株式会社
【参考文献】
【文献】特開 昭58−153174(JP,A)