説明

光学シート、バックライトおよび表示装置

【課題】表示装置に組み込まれた後に生じる変形を効果的に低減することができる光学シートを提供する。
【解決手段】表示装置は、複数の単位光学要素35によって形成された出光面30aと、出光面とは反対側の面となる入光面30bと、を含む。出光面をなす単位光学要素の平均高さP〔μm〕、入光面の十点平均粗さRz〔μm〕、光学シートの厚みT〔μm〕、光学シートをなす材料の吸湿率A〔%〕、および、光学シートをなす材料のヤング率E〔GPa〕が、次の関係を満たす。
((P×(1+(A/100))−Rz)×100)/(T×E)<4.3

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に組み込まれて用いられるようになる光学シートに係り、とりわけ、表示装置に組み込まれた後に生じる変形を効果的に低減することができる光学シートに関する。また、本発明は、この光学シートを含むバックライトおよび表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置には、通常、映像光の光学特性を調整するための一以上の光学シートが含まれている。一例として、液晶表示装置では、液晶表示ディスプレイを背面から照明するためのバックライトが設けられており、このバックライト内には、通常、多数の光学シートが含まれている。バックライトに組み込まれ得る典型的な光学シートとして、例えば特許文献1に開示されているように、光の出射方向と正面方向との間の角度(出射角度)が小さくなるように当該光の進行方向を変化させ、正面方向輝度を向上させる機能(集光機能)を有した集光シートが例示される。
【0003】
集光機能を有した光学シートは、例えば特許文献1に開示されているように、通常、線状に延びる単位光学要素(単位プリズム)をその長手方向に直交する方向に隙間無く配列(いわゆるリニア配列)することによって構成された出光面を有している。一方、この光学シートの入光面は、通常、平坦面として構成されるか、隣接する他の部材との密着を防止することや光拡散機能を付与すること等を目的として微細な凹凸面(マット面)として構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】USP7,072,092
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光学シートを表示装置に組み込んだ後に、当該表示装置が配置されている場所の環境条件が変化すると、光学シートに曲がり、撓み、反り等と呼ばれる変形が生じることがある。本件発明者が、鋭意調査を重ねたところ、このような変形は、上述した態様の集光シート、すなわち、並列配置された単位光学要素によって形成された出光面と、凹凸面または平坦面として形成された入光面と、を有する光学シートにおいて、顕著に生じていた。表示装置内に組み込まれた光学シートに変形が生じると、変形を生じた光学シートが期待された光学機能を発揮することができなくなるだけでなく、種々の不具合を引き起こすことになる。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、表示装置に組み込まれた後に生じる変形が効果的に低減され得る光学シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件発明者は、表示装置に組み込まれて用いられる光学シートとして許容され得る範囲内で種々の条件を変更し、表示装置に組み込んだ後に当該光学シートに生じる反り、曲がり、撓み等の変形に与える影響を調査した。本件発明者は、このような調査を経て、並列配置された単位光学要素によって形成された出光面と平坦面または凹凸面として形成された入光面とを有する光学シートに生じる変形が、当該光学シートの出光側となる面からの吸湿に起因するものであり、更に、出光面をなす単位光学要素の平均高さ、入光面の十点平均粗さ、光学シートの厚み、光学シートをなす材料の吸湿率、および、光学シートをなす材料のヤング率が所定の条件を満たす場合に、当該光学シートの変形を効果的に抑制し得ることを知見した。本発明は、このような知見に基づくものである。
【0008】
本発明による光学シートは、
表示装置用の光学シートであって、
複数の単位光学要素によって形成され、表示装置に組み込まれた際に観察者側に配置されるようになる第1面と、
前記第1面とは反対側の面となる第2面と、を含み、
前記第1面をなす前記単位光学要素の平均高さP〔μm〕、前記第2面の十点平均粗さRz〔μm〕、光学シートの厚みT〔μm〕、光学シートをなす材料の吸湿率A〔%〕、および、光学シートをなす材料のヤング率E〔GPa〕が、次の関係を満たす。
((P×(1+(A/100))−Rz)×100)/(T×E)<4.3
【0009】
本発明による光学シートにおいて、前記第2面が凹凸面として形成されていてもよい。
【0010】
本発明によるバックライトは、
表示装置用のバックライトであって、
上述した本発明による光学シートのいずれかを備える。
【0011】
本発明による第1の表示装置は、上述した本発明による光学シートのいずれかを備える。
【0012】
本発明による第2の表示装置は、上述した本発明によるバックライトのいずれかを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光学シートを表示装置に組み込んだ後に生じる当該光学シートの変形を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、表示装置、バックライトおよび表示装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の光学シートをその主切断面において示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0016】
図1および図2は本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は、表示装置、バックライトおよび光学シートの概略構成を示す斜視図であり、図2は、光学シートをその主切断面において示す断面図である
【0017】
図1に示された表示装置10は、透過型表示部15と、透過型表示部15の背面側に配置され透過型表示部15を背面側から面状に照らすバックライト(面光源装置)20と、を備えている。透過型表示部15は、バックライト20からの光の透過または遮断を画素毎に制御するシャッターとして機能し、画像を形成する装置である。本実施の形態において、透過型表示部15は、液晶表示パネルから構成されている。つまり、表示装置10は液晶表示装置として構成されている。透過型表示部(液晶表示パネル)15の構成は、従来の液晶表示装置に組み込まれている装置(部材)と同様に構成することができ、ここでは、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0018】
一方、バックライト20は、図1に示すように、光源25と、光源25からの光をその進行方向を偏向して透過させる光学シート30と、を有している。また、光学シート30の入光側には、光を拡散させる拡散板28が設けられている。バックライト20は、例えばエッジライト(サイドライト)型等の種々の形態で構成され得るが、本実施の形態においては、直下型のバックライトユニットとして構成されている。このため、光源25は光学シート30の入光側において光学シート30と対面するようにして配置されている。また、光源25は、光学シート30の側に開口部(窓)を形成された箱状の反射板22によって背面側から覆われている。
【0019】
なお、「出光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25から光学シート30等を経て観察者へ向かう光の進行方向における下流側(観察者側、例えば図1および図2における上側)のことであり、「入光側」とは、進行方向を折り返されることなく光源25から光学シート30等を経て観察者へ向かう光の進行方向における上流側(光源側)のことである。
【0020】
また、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0021】
さらに、「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。そして、本実施の形態においては、光学シート30のシート面、拡散板28の板面、バックライト20の発光面20a、および、透過型表示装置10の表示面10aは、互いに平行となっている。さらに、「正面方向」とは、透過型表示装置10の表示面10aに対する法線の方向nd(図1および図3参照)であり、本実施の形態では、バックライト20の発光面20aに対する法線方向や光学シート30のシート面への法線方向等にも一致する。
【0022】
光源25は、例えば、線状の冷陰極管等の蛍光灯や、点状のLED(発光ダイオード)や白熱電球、面状のEL(電場発光体)等からなる発光体25aを含む、種々の態様で構成され得る。本実施の形態においては、図1に示すように、光源25をなす発光体25aは、線状に延びる複数の冷陰極管を有している。複数の冷陰極管は、その長手方向が平行となるようにして、当該長手方向と直交する方に並べて配置されている。反射板22は、光源25からの光を光学シート30側へ向けるための部材であり、反射板22の少なくとも内側表面は、例えば金属等の高い反射率を有する材料からなっている。
【0023】
拡散板28は、入射光を拡散させ、好ましくは入射光を等方拡散させ、光源25の構成に応じた輝度ムラ(光源の像、管ムラともいう)を緩和し、輝度の面内分布を均一化させるためのシート状部材であり、光拡散板とも呼称され得る。このような拡散板28として、基部と、基部内に分散され光拡散機能を有した光拡散性粒子と、を含むシート状の部材が用いられ得る。一例として、反射率の高い材料から光拡散性粒子を構成することにより、あるいは、基部をなす材料とは異なる屈折率を有する材料から光拡散性粒子を構成することにより、光拡散性粒子に、光拡散機能を付与することができる。
【0024】
次に、光学シート30について説明する。
【0025】
図1および図2に示すように、光学シート30は、シート状の本体部40と、本体部40の出光側面40a上に設けられ、出光側面40aから出光側へ突出する多数の単位光学要素35と、を有している。光学シート30をなす、本体部40および単位光学要素35は、いずれも可視光透過性を有した材料、好適には可視光透過性を有した透明樹脂材料によって形成されている。
【0026】
図1および図2に示すように、本実施の形態では、本体部40の出光側面40aの全面に、単位光学要素35が配置されており、この結果、光学シート30の出光面(第1面)30aは単位光学要素35の出光側面35aによって形成されている。また、図1および図2に示すように、本実施の形態では、本体部40の入光側面40bは、微細な凹凸を有した凹凸面として形成されており、この凹凸面によって光学シート30の入光面(第2面)30bが形成されている。
【0027】
なお、ここで用いる「凹凸面」とは、光学的な意味合いでの凹凸を有した面を意味するものである。すなわち、ここで用いる「平坦面」は、殆どの可視光がスネルの法則を満たしながら屈折して同一の方向に進むようになる平坦さを有している面を意味し、逆に、「凹凸面」は、殆どの可視光がスネルの法則を満たしながら屈折して同一の方向に進むようになる平坦さを有していない面を意味している。したがって、例えば、十点平均粗さRz(JIS B0601:1994年)が最短の可視光波長(0.38μm)以下となっている面は、十分、平坦面に該当し、逆に、十点平均粗さRz(JIS B0601:1994年)が最長の可視光波長(0.76μm)以上となっている面は、十分、凹凸面に該当する。
【0028】
また、本明細書における「単位光学要素」とは、屈折や反射等の光学的作用を光に及ぼして、当該光の進行方向を変化させる機能を有した要素のことを指し、呼称の違いのみに基づいて、「単位形状要素」、「単位プリズム」および「単位レンズ」といった要素から区別されるものではない。すなわち、光学シート30の出光面30aをなす単位光学要素35は、光学シート30へ入射した光の進行方向を変化させるように機能する。
【0029】
とりわけ図示された例では、図2に示すように、単位光学要素35の出光側面(プリズム面)35aは、屈折によって正面方向ndに対する角度が小さくなるように光L21の進行方向を変化させるとともに、正面方向ndに対する角度が小さくなるように進行方向を変化させることができない光L22を反射、とりわけ全反射によって光源25の側へ戻すようになる。以下、このような単位光学要素35の図示された一例について説明するが、本発明はこの例に限定されるものではない。
【0030】
図示された本実施の形態において、複数の単位光学要素35は、本体部40の出光側面40aと平行なある配列方向(図2に於いては左右方向)に並べられて、本体部40の出光側面40a上に、配列されている。各単位光学要素35は、本体部40の出光側面40a上を、その配列方向と交差する方向に線状に延びている。とりわけ図示する例において、各単位光学要素35は、配列方向と直交する方向に沿って、直線状に延びている。さらに、各単位光学要素35は、柱状に形成され、その長手方向に沿って同一の断面形状を有するようになっている。また、本実施の形態において、複数の単位光学要素35は、互いに同一に構成されている。さらに、単位光学要素35の配列方向は、光源25をなす発光体25a(一例として冷陰極管)の配列方向と平行であり、各単位光学要素35は、光源25の発光体25aをなす各発光体と平行に延びている。
【0031】
図2に示す断面、つまり、単位光学要素35の配列方向および本体部40の出光側面40a(光学シート30のシート面)への法線方向ndの両方向に平行な断面(以下においては、単に「光学シートの主切断面」とも呼ぶ)において、各単位光学要素35は、本体部40の出光側面40a上に一辺が位置する三角形形状となっている。また、図2に示す例においては、正面方向輝度を効果的に上昇させること、および、単位光学要素35の配列方向に沿った面内での輝度の角度分布に対称性を付与することを目的として、光学シートの主切断面における単位光学要素35の断面形状は、正面方向ndを中心として、対称性を有している。とりわけ図示する例において、光学シートの主切断面における単位光学要素35の断面形状は、正面方向輝度を上昇させることを目的として、90°の頂角が本体部40から出光側へ突出した直角二等辺三角形形状となっている。
【0032】
なお、本件明細書における「三角形形状」及びその他の形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「平行」、「直交」等の用語は、厳密な意味に縛られることなく、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差範囲を含めて解釈することとする。
【0033】
以上の光学シート30を表示装置10に組み込んで使用する場合、光学シート30の各寸法を次のように設定することができる。まず、光学シートの厚みT、より正確には、光学シート30のシート面への法線方向に沿った光学シート30の総厚みTを、200μm以上600μm以下にすることができる。単位光学要素35の高さPを、より正確には、光学シート30のシート面への法線方向に沿った単位光学要素35の高さPを、15μm以上75μm以下にすることができる。単位光学要素35の幅Wを、より正確には、光学シート30のシート面に沿った単位光学要素35の幅Wを、45μm以上155μm以下にすることができる。単位光学要素35の断面形状が二等辺三角形状である場合には、正面方向輝度を集中的に向上させる観点から、等辺の間に位置するとともに出光側に突出する頂角の角度θaを、90°以上130°以下にすることができる。JIS B0601(1994年)に準拠して測定された光学シート30の入光面30bの十点平均粗さRzを、1μm以上75μm以下にすることができる。
【0034】
以上のような構成からなる光学シート30は、例えば、アクリル、スチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂を原料とした押し出し成形によって、作製され得る。あるいは、光学シート30を、ポリエチレンテレフタレート等からなる基材上に、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)を用いて単位形状要素35を賦型することにより、作製することもできる。このような製造方法において、光学シート30の入光面30bをなす凹凸面の凹凸パターンは、エンボス加工によって、所望の粗さに形成することができる。あるいは、光学シート30の入光面30bをなす凹凸面の凹凸パターンを、バインダー樹脂と粒状物とからなるコーティング層(マット層)として、所望の粗さに形成することもできる。
【0035】
次に、以上のような表示装置10および光学シート30の作用について説明する。まず、表示装置10の全体的な作用について説明する。
【0036】
図1において、光源25で発光された光は、直接または反射板22で反射した後に観察者側に進み、拡散板28に入射して等方拡散される。拡散板28での等方拡散により、明るさの面内分布が均一化されるようになる。拡散板28で拡散された光は、その後、光学シート30に入射する。
【0037】
図2において、光学シート30に入射した光は、当該光学シート30から出射する際に、単位光学要素35の出光側面(プリズム面)35aにおいて屈折する。この屈折により、正面方向ndに対して傾斜した方向に進む光L21の進行方向(出射方向)は、主として、光学シート30へ入射する直前における光の進行方向と比較して、正面方向ndに対する角度が小さくなるように、曲げられる。このようにして、光学シート30は、光源25からの光に対して集光機能を発揮する。なお、光学シート30によって集光される光は、主として光学シート30の単位光学要素35の配列方向に沿った成分である。
【0038】
なお、光学シート30の入光面30bは凹凸面として形成されている。したがって、光学シート30の入光面30bを通過する光は、拡散される。この光学シート30の入光面30bをなす凹凸面での光拡散により、バックライト20の発光面20a上での、輝度の角度分布をより滑らかに変化させることができる。
【0039】
以上のようにして、光源25からの光が、光学シート30の出光面30aによって形成されたバックライト20の発光面20aから出射する。結果として、バックライト20は、液晶表示パネル15を面状に照明するようになる。液晶表示パネル15は、バックライト20からの光を画素毎に選択的に透過させる。これにより、透過型表示装置10の観察者が、映像を観察することができるようになる。以上が、表示装置30の全体的な作用である。
【0040】
ところで、上述したように、観察者側を向く出光面(第1面)30aが単位光学要素35によって形成されるとともに、出光面30aに対向する入光面(第2面)30bが凹凸面として形成された光学シート30を、表示装置10に組み込んだ場合、表示装置10が配置されている環境条件の変化にともなって、光学シート30に反り、曲がり、撓みと呼ばれるような全体的な変形が生じ得る。そして、光学シート30に反り、曲がり、撓み等の変形が生じると、当該光学シート30の集光機能(光軸補正機能)が期待した通りに発揮されなくなる。すなわち、光学シート30の集光機能が、正面方向以外の方向に光軸を補正するように働く。このため、予定した正面方向輝度を確保することができなくなる。また、変形した光学シート30が、局所的に、隣接する他の部材(例えば、液晶表示パネル15や拡散板28)に接近または密着することになり、当該接近した領域に縞状の模様が視認され、あるいは、密着した箇所が視認されるようになる。さらに、光学シート30が隣接する他の部材(例えば、液晶表示パネル15や拡散板28)と擦れ合うと、光学シート30または隣接する他の部材に傷が生じ、さらには、削りカスが生じることもある。この場合、表示装置10によって表示される映像の表示画質を著しく劣化させることになる。
【0041】
この点について、本件発明者は、表示装置に組み込まれて用いられる光学シートとして許容され得る範囲内で、本実施の形態に係る光学シート30の種々の条件を変更し、表示装置に組み込んだ後に当該光学シートに生じる反り、曲がり、撓み等の変形に与える影響を調査した。この調査の結果として、本件発明者は、並列配置された単位光学要素35によって形成された出光面30aと平坦面または凹凸面として形成された入光面30bとを有する光学シート30に生じる変形が、当該光学シート30の出光側からの吸湿量と、入光側からの吸湿量と、の相違によって、当該光学シート30の出光面30aと入光面30bとが異なる膨張率で膨張することに起因するものと予測した。この予測は、光学シート30の変形が、配置環境の湿度の変化に敏感であるという実際の現象と、表示装置10内に組み込まれた光学シート30は観察者側となる出光面の側からしか吸湿し得ないという事実と、に合致している。
【0042】
このような予測のもと、光学シート30の構成に応じて特定される以下の式(a)で表される関数f(P,A,Rz,T,E)を、当該光学シート30の出光側からの吸湿に起因した変形の生じ易さを表す指標として考案し、且つ、後述する実施例でも実証されているように、この関数f(P,A,Rz,T,E)が以下の式(b)の条件を満たす場合に、光学シート30の反り、曲がり、撓みと呼ばれる全体的な変形の発生を効果的に抑制し得ることが見出された。
【0043】
f(P,A,Rz,T,E)
=((P×(1+(A/100))−Rz)×100)/(T×E)
=((P×(1+(A/100))−Rz))/T)×(1/E)×100
・・・式(a)
【0044】
0≦f(P,A,Rz,T,E)<4.3 ・・・式(b)
【0045】
ここで「P」は、光学シート30の出光面(第1面)30bをなす単位光学要素35の高さの平均である。すなわち、「P」は、光学シート30のシート面への法線方向に沿った単位光学要素35の高さの平均である(図2参照)。「Rz」は、光学シート30の入光面(第2面)30aの十点平均粗さRzであり、JIS B0601(1994年)に準拠して得られる値である。「T」は、光学シートの厚みであり、より正確には、光学シート30のシート面への法線方向に沿った光学シート30の総厚みである(図2参照)。これらの「P」、「Rz」および「T」の値は、式(a)および式(b)において、単位を揃えて用いられる。例えば、「P」、「Rz」および「T」を、すべて「μm」を単位とした数値として取り扱うことができる。
【0046】
また、「A」は、光学シート30をなす材料の吸湿率であって、JIS K7209に準拠して得られる値であり、単位を「%」とした数値として取り扱う。なお、対象となる光学シートが、異なる材料からなる複数の層を含んでいる場合には、当該光学シートにおける各層の重量比率に応じた配分で各層の吸湿率を平均した値を算出し、算出された平均値を当該光学シートの吸湿率Aとみなす。
【0047】
さらに、「E」は、光学シート30をなす材料のヤング率であって、ASTM D 256に準拠して得られる値であり、単位を「GPa」とした数値として取り扱う。なお、対象となる光学シートが、異なる材料からなる複数の層を含んでいる場合には、当該光学シートにおける各層の重量比率に応じた配分で各層のヤング率を平均した値を算出し、算出された平均値を当該光学シートのヤング率Eとみなす。
【0048】
ここで、この表示装置10用の光学シート30では、出光面30aが単位光学要素35によって構成され、入光面30bは単位光学要素35と比較して微細な凹凸からなる凹凸面または平坦面として構成されている。このため、入光面30bの十点平均粗さRzは、入光面30bをなす凹凸のギャップ(高低差)の大きさを表す指標と考えることができる。そして、「P−Rz」の値は、入光面30bと出光面30aとの表面積の差を示す指標、すなわち、出光面30aの側のみからの吸湿による変形のしやすさを表す指標とみなすことができる。さらに、「(P−Rz)/T」は、単位体積あたりの入光面30bと出光面30aとの表面積の差を表す指標となり、この「(P−Rz)/T」の値が大きい程、光学シート30が出光面30aの側からの吸湿によって変形しやすいことになる。加えて、十分な時間をかけて変形した後での変形のしやすさを検討するため、上記式(a)の関数では、吸湿率Aを考慮して、「(P×(1+(A/100))−Rz)/T」の値を用いている。一方、上記式(a)の関数における「1/E」は、光学シート30の材料自体の変形性のしやすさを表す指標となり、この「1/E」の値が大きいほど変形しやすいと言える。
【0049】
以上のようにして算出された関数f(P,A,Rz,T,E)は、出光面30aの側からの吸湿による膨張に起因した光学シート30の変形のしやすさを表す指標となり、この関するf(P,A,Rz,T,E)の値が大きい程、光学シート30が出光面30aの側からの吸湿によって変形しやすいことになる。そして、本件発明者が、鋭意調査を重ねたところ、光学シートについての関数f(P,A,Rz,T,E)の値が4.3より小さくなっている場合、当該光学シートを表示装置を組み込んだ後に当該光学シートの反り、曲がり、撓みといった変形が生じることを効果的に防止することができた。
【0050】
なお、上述したように、関数f(P,A,Rz,T,E)は、出光面30aの側からの吸湿による膨張に起因した光学シート30の変形のしやすさを表す指標となるため、この関数f(P,A,Rz,T,E)の値は、小さければ小さい程、吸湿による膨張に起因した光学シート30の変形を抑制することができる。
【0051】
ただし、ここで検討している変形は、出光面30aの側からの吸湿に起因した光学シート30の変形であり、出光面30aの面積が入光面30bの面積よりも大きくなるときに生じやすくなる変形である。つまり、式(a)においては、出光面(第1面)30aをなす単位光学要素35の平均高さPが、入光面(第2面)30bをなす凹凸のギャップ(高低差)の大きさの平均を表す指標となる十点平均粗さRzよりも大きくなっている場合であり、具体的には、関数f(P,A,Rz,T,E)の値が0以上となる場合である。その一方で、この関数f(P,A,Rz,T,E)の値が0よりも大幅に小さくなると、出光面30aからの吸湿以外のことを原因とする変形、例えば、光源からの放熱に起因した変形等の影響を強く受けることにもなりかねない。このため、関数f(P,A,Rz,T,E)の値の下限を、式(b)に示すように、0以上に設定しておくことが好ましい。
【0052】
以上のように本実施の形態によれば、並列配置された単位光学要素35によって形成された出光面30aと凹凸面として形成された入光面30bとを有する光学シート30について、出光面30aをなす単位光学要素35の平均高さP〔μm〕、入光面30bの十点平均粗さRz〔μm〕、光学シート30の厚みT〔μm〕、光学シート30をなす材料の吸湿率A〔%〕、および、光学シート30をなす材料のヤング率E〔G・Pa〕を適宜設定することによって、当該光学シート30を表示装置10に組み込んだ後に生じる変形を効果的に抑制することができる。
【0053】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
【0054】
例えば、上述した実施の形態では、光学シート30の入光面30bが凹凸面として形成されている例を示したが、これに限られず、光学シート30の入光面30bが平坦面として形成されていてもよい。光学シート30の入光面30bが平坦面として形成されている光学シート30においても、出光面30aをなす単位光学要素35の平均高さP〔μm〕、入光面30bの十点平均粗さRz〔μm〕、光学シート30の厚みT〔μm〕、光学シート30をなす材料の吸湿率A〔%〕、および、光学シート30をなす材料のヤング率E〔G・Pa〕が上述した式(b)を満たす場合、表示装置10に組み込まれた後に生じる変形を効果的に抑制することができる。
【0055】
さらに、上述した実施の形態において、三角柱、即ち、直線状に延びる断面三角形形状の単位光学要素35が、その長手方向に直交する方向に並べられて、本体部40の出光側面40a上に設けられている例を示したが、これに限られない。例えば、光学シートの主切断面において、単位光学要素35が、三角形以外の四角形、五角形、六角形等の多角形となった多角柱形状であってもよいし、或いは主切断面において単位光学要素35が、楕円の一部又は円の一部に相当する円柱又は楕円柱形状(の一部)であってもよい。また、直線状に延びる単位光学要素35が並列配置(一次元配列)されている例を示したが、これに限られず、単位光学要素35が二次元配列されてマイクロレンズ(フライアイレンズ)を構成するようにしてもよい。さらに、単位光学要素35がすべて同一の構成を有する例を示したが、これに限られず、高さや断面形状等の少なくとも一つが互いに異なる複数種類の単位光学要素35が、光学シート30に含まれていてもよい。
【0056】
さらに、光学シート30が光を拡散させる拡散機能を有するようにしてもよい。例えば、光学シートが、内添された粒子や気泡等からなる拡散成分を含有するようにしてもよい。この例では、拡散成分そのものが光反射性を有することにより、あるいは、拡散成分が当該拡散成分に隣接するその他の部分(例えば、バインダー樹脂部)とは異なる屈折率を有することにより、光学シートが光拡散機能を発現するようになる。
【0057】
さらに、光学シート30が帯電防止層を含むようにしてもよい。この変形例によれば、埃等の異物付着を低減することができ、光学特性に与える悪影響を抑制することができる。
【0058】
さらに、上述した実施の形態において、バックライト(面光源装置)20の光源25の発光体25aが、線状に延びる冷陰極管からなる例を示したが、これに限られない。光源25として、点状のLED(発光ダイオード)や面状のEL(電場発光体)等からなる発光体を用いることも可能である。なお、発光体25aが複数の点状発光体からなる場合、点状発光体が光学シートのシート面と平行な仮想平面上に二次元配列され、且つ、点状発光体の一つの配列方向が光学シート30の単位光学要素35の配列方向と平行になっていることが好ましい。この例によれば、当該点状発光体の一つの配列方向に沿った方向における明るさの分布を、光学シート30の単位光学要素35によって、効果的に均一化することができるとともに、当該点状発光体の一つの配列方向に沿った面内での輝度の角度分布を、光学シート30の単位光学要素35によって、効果的に補正することができる。
【0059】
また、上述した実施の形態において、光学シート30が直下型のバックライト(面光源装置)20に適用されている例を示したが、これに限られない。上述した光学シート30を、例えばエッジライト型(サイドライト型等とも呼ばれる)のバックライトに適用することも可能であり、このような場合においても、光学シート30は直下型のバックライト20に適用された場合と略同様の作用効果を奏することができる。
【0060】
さらに、上述した実施の形態において、光学シート30が組み込まれたバックライト20および表示装置10の全体構成の一例を説明したが、これに限られない。例えば、偏光分離フィルム、更なる拡散シート、更なる集光シート等を、追加で、バックライト20および表示装置10に組み込むようにしてもよい。
【0061】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例1および2に係る表示装置、比較例1〜4に係る表示装置を実際に用意し、表示装置において全面白表示した際に、欠陥が視認され得る程度に光学シートが変形しているか否かを確認した。
【0064】
<表示装置>
実施例および比較例に係る表示装置として、図1に示された構成の表示装置を準備した。すなわち、反射板と、複数の冷陰極管からなる光源と、拡散板と、光学シートとから、実施例および比較例に係るバックライトを構成した。光学シート以外のバックライトに組み込まれた部材並びに液晶表示パネルは、市販されている液晶表示装置(32インチ型テレビ受像機「SONY BRAVIA KDL-32 F5」)に組み込まれていた構成部材を、共通して各バックライトに使用した。
【0065】
各バックライトに組み込まれた光学シートは、図2に示された光学シートと同様に、並列配置された単位光学要素によって形成されたプリズム面としての出光面と、微細な凹凸を形成された凹凸面としての入光面と、を有するようにした。各光学シートの単位光学要素は、図2に示された単位光学要素と同様に、主切断面での断面形状が直角二等辺三角形となるように構成し、等辺に挟まれた直角の頂角が出光側に突出するようにした。
【0066】
各光学シートは、熱可塑性樹脂を加熱して押し出し且つ成型する押し出し成形(溶融押し出し法)によって、作製した。実施例2に係る光学シートのみについて、熱可塑性樹脂としてメチルメタクリレートスチレン樹脂を用い、その他の光学シートについては、熱可塑性樹脂としてポリカーボネート樹脂を用いた。
【0067】
各表示装置に組み込まれた光学シートについて、出光面をなす単位光学要素の平均高さP〔μm〕、入光面の十点平均粗さRz〔μm〕、光学シートの厚みT〔μm〕、光学シートをなす材料の吸湿率A〔%〕、および、光学シートをなす材料のヤング率E〔G・Pa〕は表1に示す通りとした。また、表1の「関数f」の欄には、式(a)で表された関数の値を記載し、表1の「条件式」の欄には、式(b)の条件式が満たされる場合に「○」を付し、式(b)の条件式が満たされない場合に「×」を付している。
f(P,A,Rz,T,E)
=((P×(1+(A/100))−R)×100)/(T×E)
=((P×(1+(A/100))−Rz))/T)×(1/E)×100
・・・式(a)
0≦f(P,A,Rz,T,E)<4.3 ・・・式(b)
【0068】
<評価方法および評価結果>
各表示装置について、温度が25℃で相対湿度が90%RHの環境下で光源をなす発光体を連続的に2時間点灯しておいた後、表示装置において全面白表示した際に、明るさのムラ(輝度ムラ)、縞状模様、欠点、輝点等の欠陥が視認され得るか否かを確認した。比較例に係る表示装置では、欠陥が視認され、且つ、当該欠陥が光学シートの反り、曲がり、撓み等と呼ばれるような全体的な変形を原因としていることが確認された。なお、表1における「変形」の欄には、視認され得る欠陥を引き起こす変形が光学シートに生じていたものに「有」を記載し、視認され得る欠陥を引き起こす変形が光学シートに生じていなかったものに「無」を記載した。
【0069】
【表1】

【符号の説明】
【0070】
10 表示装置
15 透過型表示部、液晶表示パネル
20 バックライト(面光源装置)
22 反射板
25 光源
25a 発光体
28 拡散板
30 光学シート
30a 出光面(第1面)
30b 入光面(第2面)
35 単位光学要素、単位形状要素、単位プリズム、単位レンズ
40 本体部
40a 出光側面
40b 入光側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置用の光学シートであって、
複数の単位光学要素によって形成され、表示装置に組み込まれた際に観察者側に配置されるようになる第1面と、
前記第1面とは反対側の面となる第2面と、を含み、
前記第1面をなす前記単位光学要素の平均高さP〔μm〕、前記第2面の十点平均粗さRz〔μm〕、光学シートの厚みT〔μm〕、光学シートをなす材料の吸湿率A〔%〕、および、光学シートをなす材料のヤング率E〔GPa〕が、次の関係を満たす、光学シート。
((P×(1+(A/100))−Rz)×100)/(T×E)<4.3
【請求項2】
前記第2面が凹凸面として形成されている、請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
表示装置用のバックライトであって、
請求項1または2に記載の光学シートを備える、バックライト。
【請求項4】
請求項1または2に記載の光学シートを備える、表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−198413(P2012−198413A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62912(P2011−62912)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】