説明

光学シートおよび画像表示装置

【課題】濃淡ムラおよびモアレの両方を目立たなくさせることができる光学シートを提供する。
【解決手段】光学シート30は、本体部35と、本体部上に設けられた単位レンズ35と、を有する。本体部上に、二つの単位レンズの間を延びる境界線分48からなるライン部44が画成される。境界線分によって囲まれる一つの閉領域内に一つの単位レンズが配置されている。ライン部は、5本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域および7本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域の少なくとも二種類が含まれている領域を含む。この領域に含まれた5本、6本または7本のうちの同一本数の境界線分によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域の形状又は面積は一定ではない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の配列パターンで配列された複数の単位レンズを含む光学シートに係り、とりわけ、複数の単位レンズの配列パターンに起因したモアレの発生および濃淡ムラの発生を効果的に抑制することができる光学シートに関する。また、本発明は、この光学シートを有した画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単位レンズを有する光学シートが、種々の分野において、使用されてきた。一例として、特許文献1には、画像を形成する画像形成装置の画像形成面上に配置されるマイクロレンズアレイシートが示されている。画像形成装置に重ねられて用いられる光学シートは、主として、輝度特性、とりわけ視野角特性の調節を目的として設けられる。単位レンズを二次元配列してなるマイクロレンズを有する光学シートでは、単位レンズの断面形状や単位レンズの平面配列によって、各方向における光学特性、とりわけ視野角特性を調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−39109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プラズマディスプレイパネル(以下において、単に「PDP」とも呼ぶ)や液晶表示パネル(以下において、単に「LCDパネル」とも呼ぶ)等に代表される画像形成装置は、繰返し周期を持った画素配列を有し、画素毎の光を制御することによって所望の画像を形成している。このため、特許文献1の段落0081にも記載されているように、画素配列の周期性と単位レンズの周期性との干渉に起因した縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)が視認され、表示される画像の質を劣化させることがあった。
【0005】
なお、モアレの発生を抑制する観点からは、単位レンズの配列を不規則的にすることも検討されている。ただし、単位レンズを不規則的に配列した場合、単位レンズの粗密に応じた濃淡ムラが視認されるようになるといった、別の不具合が生じることもある。
【0006】
本発明は、このような点からなされたものであり、濃淡ムラおよびモアレの両方を目立たなくさせることができる光学シート、並びに、この光学シートを含んだ画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による第1の光学シートは、
画像形成装置と重ね合わせて使用される光学シートであって、
シート状の本体部と、
前記本体部の一方の面上に配列された複数の単位レンズと、を備え、
前記本体部の一方の面上に、隣り合う二つの単位レンズの間を延びる境界線分からなるライン部が画成され、
前記ライン部の各境界線分の両端は、二以上の他の境界線分と接続する分岐点をなし、
前記ライン部は、前記境界線分によって囲まれる閉領域を画成し、一つの閉領域内に一つの単位レンズが配置されるようにして、前記単位レンズが前記本体部上に配列されており、
前記ライン部は、5本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域および7本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域の中から選ばれた少なくとも二種類が含まれている領域を含み、
前記領域に含まれた5本、6本または7本のうちの同一本数の境界線分によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域の形状又は面積は一定ではない。
【0008】
本発明による第2の光学シートは、
画像形成装置と重ね合わせて使用される光学シートであって、
シート状の本体部と、
前記本体部の一方の面上に配列された複数の単位レンズと、を備え、
前記本体部の一方の面上に、隣り合う二つの単位レンズの間を延びる境界線分からなるライン部が画成され、
前記ライン部の各境界線分の両端は、二以上の他の境界線分と接続する分岐点をなし、
前記ライン部は、前記境界線分によって囲まれる閉領域を画成し、一つの閉領域内に一つの単位レンズが配置されるようにして、前記単位レンズが前記本体部上に配列されており、
前記ライン部は、一つの分岐点から延び出す境界線分の数の平均が3.0以上4.0未満となっている領域を含み、
前記領域に含まれた複数の閉領域の形状又は面積は一定ではない。
【0009】
本発明による第2の光学シートの前記ライン部の前記領域において、一つの分岐点で接続される境界線分の数の前記平均が3.0より大きくなっていてもよい。
【0010】
本発明による第2の光学シートの前記ライン部の前記領域において、一つの分岐点で接続される境界線分の数の前記平均が3.0であってもよい。
【0011】
本発明による第2の光学シートにおいて、前記ライン部の前記領域には、5本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域および7本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域の中から選ばれた少なくとも二種類が含まれており、
前記領域に含まれた5本、6本または7本のうちの同一本数の境界線分によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域の形状又は面積は一定ではないようにしてもよい。
【0012】
本発明による第1または第2の光学シートにおいて、前記ライン部の前記領域には、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域が含まれていてもよい。
【0013】
本発明による第1または第2の光学シートにおいて、前記ライン部の前記領域には、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域が最も多く含まれていてもよい。
【0014】
本発明による第1または第2の光学シートにおいて、前記ライン部の前記領域に含まれた閉領域のうち、k本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域の数をNとすると、
kが3≦k≦5を満たす整数の場合に、N≦Nk+1となり、
kが6≦kを満たす整数の場合に、N≧Nk+1となっていてもよい。
【0015】
本発明による第1または第2の光学シートの前記ライン部の前記領域において、
前記複数の単位レンズは、前記本体部の前記一方の面上に、隙間無く配置され、
前記境界線分は、前記本体部の一方の面上において、前記単位レンズの外輪郭に沿って延びていてもよい。
【0016】
本発明による第1または第2の光学シートの前記ライン部の前記領域において、
前記複数の単位レンズの全部または一部が、前記本体部の前記一方の面上に、互いから離間して配置され、
前記境界線分は、前記本体部の一方の面上において、隣り合う二つの単位レンズの外輪郭から等距離となる位置を延びていてもよい。
【0017】
本発明による第1または第2の光学シートの前記ライン部の前記領域において、
前記複数の単位レンズの全部または一部が、前記本体部の前記一方の面上に、互いから離間して配置され、
前記境界線分上の中心となる中心位置から、当該境界線分の両側に位置する二つの閉領域内の各単位レンズの外輪郭での、当該中心位置において当該境界線分に直交する方向に沿った距離は、同一となっていてもよい。
【0018】
本発明による画像表示装置は、
画像形成装置と、
前記画像形成装置上に設けられた、上述の本発明による光学シートのいずれかと、を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、濃淡ムラの発生を抑制しながら、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、画像表示装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、光学シートを示す部分斜視図である。
【図3】図3は、図2の光学シートの法線方向に沿った断面図であり、光学シートの光学機能を説明するための図である。
【図4】図4は、図3と同様の断面において、図3に示された態様と異なる光学シートを示す図である。
【図5】図5は、光学シートをその法線方向から示す平面図であり、光学シートに含まれる単位レンズの配列パターンおよびライン部のパターンを説明するための図である。
【図6】図6は、図5の部分拡大図あって、単位レンズの配列パターンおよびライン部のパターンを説明するための図である。
【図7】図7は、各本数の境界線分によって取り囲まれた閉領域の個数を示すグラフである。
【図8】図8は、図1の画像表示装置に組み込まれ得る画像形成装置の画素配列を説明するための平面図である。
【図9】図9は、図5の配列パターンで単位レンズが配列されている光学シートと、図8に示された画素配列を有する画像形成装置と、を重ねた状態を示す平面図である。
【図10】図10は、図5に示されたライン部のパターンを設計する方法を説明するための図であって、母点を決定する方法を示す図である。
【図11】図11は、図5に示されたライン部のパターンを設計する方法を説明するための図であって、母点を決定する方法を示す図である。
【図12】図12は、図5に示されたライン部のパターンを設計する方法を説明するための図であって、母点を決定する方法を示す図である。
【図13】図13(A)〜(D)は、決定された母点群を絶対座標系および相対座標系において示す図であり、母点群の分散の程度を説明するための図である。
【図14】図14は、図5に示されたライン部のパターンを設計する方法を説明するための図であって、決定された母点からボロノイ図を作成してライン部のパターンを決定する方法を示す図である。
【図15】図15は、光学シートの一変形例をその法線方向から示す部分平面図であり、光学シートの一変形例を説明するための図である。
【図16】図16は、光学シートの他の変形例を示す平面図である。
【図17】図17は、従来技術に係る光学シートの配列パターンの一例を説明するための平面図である。
【図18】図18は、従来技術に係る光学シートの配列パターンの他の例を説明するための平面図である。
【図19】図19は、図17の配列パターンで単位レンズが配列されている光学シートと、図8に示された画素配列を有する画像形成装置と、を重ねた状態を示す平面図である。
【図20】図20は、図18の配列パターンで単位レンズが配列されている光学シートと、図8に示された画素配列を有する画像形成装置と、を重ねた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0022】
図1〜図15は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1は、画像表示装置の画像形成面への法線方向に沿った断面において当該画像表示装置を示す断面図である。図2は、画像表示装置に組み込まれた光学シートを示す部分斜視図であり、図3及び図4は、光学シートの単位レンズの光学機能を説明するための断面図である。図5および図6は、画像表示装置に組み込まれた光学シートを法線方向から示す図であって、単位レンズの配列パターンを説明するための図である。図7は、図5に示された配列パターンについて、閉領域を取り囲む境界線分の本数と、各本数の境界線分によって取り囲まれた閉領域の個数と、の関係を示すグラフである。図8は、画像形成装置の画素配列を説明するための図である。図9は、光学シートの単位レンズの配列パターンおよび画像形成装置の画素配列を重ねた状態で示す図である。図10〜図14は、図5に示された単位レンズの配列パターンを決定する方法を説明するための図である。
【0023】
図1に示すように、画像表示装置10は、画像を形成し得る画像形成装置15と、画像形成装置15の出光側(画像観察者側、以下、画像観察者(側)を単に観察者(側)とも略称する)に配置された光学シート30と、を有している。図示された例では、光学シート30の出光面が、画像表示装置10の表示面(出光面)10aをなし、観察者は、画像形成装置15で形成された画像を、光学シート30を介して観察することになる。
【0024】
画像形成装置15は、画像を形成するための種々の装置、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示パネル(LCD)、陰極線管(CRT)、有機EL表示パネル等を含む装置として、構成され得る。画像形成装置15は、規則的に配列された多数の画素を有し、画素毎に映像光を制御することによって映像を形成するように構成されている。
【0025】
図8には、画像形成装置(画像表示パネル)15の画素配列の一例が開示されている。図8に示すように、一つの画素Pは、赤色に発光する副画素(サブピクセル)RPと、緑色に発光する副画素GPと、青色に発光する副画素BPと、から構成されている。すなわち、画像形成装置15はカラーで画像を形成することができるようになっている。図8に示された例は、いわゆるストライプ配列として、画素Pが形成されている。すなわち、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、それぞれ、一つの方向(図8では縦方向)に連続して並べられている。一方、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、当該一つの方向に直交する方向(図8では横方向)に、一つずつ順に繰り返して並べられている。なお、図8は、画像形成装置15の画像形成面(出光面)15aへの法線方向から当該画像形成装置15を観察した状態で、画素Pの配列を示している。
【0026】
図1で図示された例では、光学シート30が、画像形成装置15の画像形成面15aから離間して配置されている。しかしながら、光学シート30は、画像形成装置15の画像形成面15aに接触して配置されてもよいし、とりわけ、接着剤等を介して画像形成装置15の画像形成面15aに接着されていてもよい。なお、本明細書で用いる「接着」には、「粘着」の意味も含まれるものとする。
【0027】
また、図示された画像表示装置10において、画像形成装置15の出光側には、光学シート30しか配置されていない。しかしながら、種々の機能を発揮することを期待されたシート状部材または層が、さらに画像形成装置10に設けられていてもよい。また、ここで説明する光学シートが、他のシート状部材(層)と積層され、積層体として取り扱われるようにしてもよい。種々のシート状部材(層)は、光学シート30の入光側に配置されてもよいし、光学シート30の出光側に配置されてもよい。このようなシート状部材(層)の一例として、特定波長域の電磁波を遮断する電磁波遮蔽材、偏光板、透光性を有する一方で遮光部を設けられて不要光を吸収し得る光学部材(例えば、特開2008−170975号公報を参照)、画像形成装置15から放射される特定波長域の放射線等を遮蔽するフィルタ機能を有した層(部材)、所望の光学機能を有した層(部材)、保護機能等のその他の機能を付与された層(部材)、反射防止層、防眩層を挙げることができる。
【0028】
さらに、光学シート30が、接着剤を介して他のシート状部材(層)や画像形成装置と接合される場合には、特定波長域の光を吸収し得るフィルタ機能を接着剤に付与してもよい。具体的には、近赤外線を吸収する機能、ネオン光を吸収する機能、紫外線(UV)を吸収する機能等の種々の機能の一以上を、接着剤に付与してもよい。
【0029】
なお、本明細書において、「出光側」とは、進行方向を折り返されることなく画像形成装置15から光学シート30を経て観察者へ向かう光の進行方向における下流側(観察者側、図1においては紙面の上側)のことである。
【0030】
また、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。
【0031】
さらに、本明細書において、「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面(の広がり)方向と一致する面のことを指す。光学シート30の単位レンズ35が配列された側の面に於いては、複数の単位レンズ35表面の包絡面がシート面となる。本実施の形態においては、画像形成装置15の画像形成面(出光面)15a、光学シート30のシート面、後述する光学シート30の本体部32のシート面、後述する光学シート30の本体部32の入光側面、後述する光学シート30の本体部32の出光側面32a、画像表示装置10の表示面10a等は、互いに平行となっている。
【0032】
さらに、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「平行」、「直交」、「楕円」、「円」等の用語については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の許容誤差を含めて解釈することとする。
【0033】
次に、光学シート30について詳述する。図2に示すように、光学シート30は、シート状の本体部32と、本体部32上に配列された多数の単位レンズ35と、を有している。光学シート30は、単位レンズ35での屈折または反射によって、画像形成装置15からの映像光の進行方向を変化させる。図示された例において、単位レンズ35は、本体部32の出光側面32a上に設けられており、光学シート30の出光面30a並びに画像表示装置10の表示面10aを形成している。本体部32は、単位レンズ35を支持する部位であり、適度な強度および適度な透明性を有するように、適宜構成される。一例として、本体部32の厚さを20μm〜200μmとすることができる。
【0034】
図2に示すように、単位レンズ35は、本体部32の出光側面32a上に二次元配列され、マイクロレンズ乃至は蠅の目レンズ(フライアイレンズ)を構成するようになっている。すなわち、単位レンズ35は、本体部32の出光側面32a上において、単一の方向のみに並べられているのではない、平面上に広がりを持って配列されている。本実施の形態では、図2および図3に示すように、多数の単位レンズ35は、本体部32の出光側面32a上に、隙間無く隣接して配置されている。したがって、画像表示装置10の表示面10aをなす光学シート30の出光面30aは、単位レンズ35のレンズ面のみによって形成されている。
【0035】
図5および図6に示すように、光学シート30のシート面への法線方向(図1及び図2に於いては、上下方向)から光学シート30を観察した場合、光学シート30のシート面に沿った単位レンズ35の外輪郭(外縁)によって、配列パターン40が特定される。配列パターン40は、二つの分岐点46の間を延びて閉領域42を画成する多数の境界線分48から形成されており、配列パターン40の一つの閉領域42内に一つの単位レンズ35が配置されるようになる。図5および図6に示すように、配列パターン40に含まれた多数の閉領域42の形状又は面積は一定ではない。この結果、光学シート30に含まれる多数の単位レンズ35の間で、本体部32の出光側面32a上における底面の形状は一定ではない。なお、単位レンズ35の配列パターン40については、後に詳述する。
【0036】
図3には、図2に示された光学シート30のシート面への法線方向に沿った断面図が示されている。単位レンズ35の断面形状は、光学シート30に期待される光学機能に応じて適宜設計される。図3に示された例では単位レンズ35は凸レンズとされ、単位レンズ30が、透過光を拡散させる光拡散機能を発現し得るように構成されている。例えば、画像形成装置10が、液晶表示パネルである場合、一般的に、液晶表示パネルから出射する映像光は正面方向に或る程度集光されている。このような液晶表示パネルと光拡散機能を有した光学シート30との組み合わせによれば、画像表示装置10に広視野角を付与することが可能となる。具体的な構成として、単位レンズ35の出光面30aの曲率半径を小さめに設定することによって、具体的には、単位レンズ35の出光面が光学シート30のシート面に対してなす角度θaを小さく設定しておくことにより、或いは、単位レンズ35の幅Waに対する高さHaの比(Ha/Wa)を小さく設定しておくことにより、単位レンズ35が、比較的に正面方向に集光された光に対して、光拡散機能を発揮する傾向が現れる。
【0037】
なお、図2および図3に示された例では、単位レンズ35の出光面(レンズ面)は曲面として形成されている。したがって、図2に示すように、光学シート30のシート面への法線方向に沿った断面において、単位レンズ35の出光面(レンズ面)は、円弧、楕円弧、或いは、弧の繋ぎ合わせによって近似される曲線となる。曲面によって構成された単位レンズ35において、単位レンズ35の出光面が光学シート30のシート面に対してなす角度θaは、光学シート30の法線方向に沿った断面において、単位レンズ35への接線TLが光学シート30のシート面に対してなす角度として特定される。
【0038】
図4には、単位レンズ35の断面形状の他の例を示している。図4に示された単位レンズ35では、図3に示された単位レンズと比較して、単位レンズ35の出光面30aの曲率半径を大きめに設定することによって、具体的には、単位レンズ35の出光面が光学シート30のシート面に対してなす角度θaが大きく設定され、また、単位レンズ35の幅Waに対する高さHaの比(Ha/Wa)が大きく設定されている。図4に示すように、この光学シート30に、正面方向から比較的に傾斜した方向に進む光が入射した場合、光学シート30の単位レンズ35は、集光機能を発揮して、当該光の進行方向を正面方向へ偏向させる。図4に示された例において、単位レンズ35の断面形状は、三角形形状または三角形の一以上の角を面取りしてなる形状、とりわけ、正面方向を中心として対称に配置された直角二等辺三角形形状または直角二等辺三角形の一以上の角を面取りしてなる形状となっており、極めて優れた集光機能を発揮することが可能となっている。
【0039】
以上のような光学シート30は、このような本体部32として、例えば二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる基材フィルム上に積層された樹脂層に、単位レンズ35を賦型することによって、作製され得る。単位レンズ35を形成するための樹脂として、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線により硬化する特徴を有したエポキシアクリレートプレポリマーを用いることができる。また、別の製造方法として、ポリカーボネイト等の熱可塑性樹脂を用いた溶融押し出し成形や射出成形によって、光学シート30を作製することができる。
【0040】
なお、単位レンズ35の寸法は、上述したように、当該単位レンズ35に期待される光学機能を考慮して適宜決定され得る。ただし、単位レンズ35の最小幅は、可視光線に対して有効に光学作用を及ぼすことができるよう、可視光の最大波長(800nm)以上である必要があり、さらに、製造上の制約を考慮すると、10μm以上であることが好ましい。一方、単位レンズ35の幅Waが大きくなり過ぎると、個々の単位レンズ35が視認され、表示画像の画質を劣化させることになる。この点から、単位レンズ35の最大幅は、300μm以下とすることが好ましい。
【0041】
次に、図5〜図7を主に参照しながら、光学シート30の単位レンズ35の配列パターン40について説明する。
【0042】
図5および図6に示すように、光学シート30のシート面内に於ける単位レンズ35の配列パターン40に対応して、ライン部44が本体部32の一方の面32a上に特定される。より具体的には、ライン部44は、隣り合う二つの単位レンズ35の間を延びるようにして、本体部32の一方の面32a上に定義される。逆に言えば、図5および図6に示すように、このライン部44によって、透光性を有した単位レンズ35の外輪郭が、本体部32の一方の面32a上に特定され得る。以下、このライン部44によって、単位レンズ35の配列パターン40を説明していく。
【0043】
図5および図6に示すように、ライン部44は、多数の閉領域42を画成する網状となっている。そして、一つの閉領域42内に、一つの単位レンズ35が配置されている。上述したように、本実施の形態における光学シート30では、本体部32の一方の面32a上に、単位レンズ35が隙間無く接触して配置されている。したがって、図5および図6に示すように、単位レンズ35の配列パターン40を特定するライン部44は、隣り合う単位レンズ35の間の境界(谷部)に沿って、言い換えると、光学シート30のシート面に沿った単位レンズ35の外縁(外輪郭)に沿って、延びている。この結果、光学シート30をその法線方向から観察した場合、単位レンズ35の外輪郭、乃至は、単位レンズ35の配列パターン40を表すものとして、ライン部44が視認化され得るようになる。
【0044】
図5および図6に示すように、単位レンズ35の配列パターン40を特定するライン部44は、網状に形成され、多数の分岐点46を含んでいる。そして、配列パターン40を特定するライン部44は、両端において分岐点46を形成する多数の境界線分48から構成されている。すなわち、配列パターン40を特定するライン部44は、二つの分岐点46の間を延びる多数の境界線分48から構成されている。そして、分岐点46において、境界線分48が接続されていくことにより、閉領域42が画成されている。言葉を換えて言うと、境界線分48で囲繞、区劃されて1つの閉領域42が画成されている。
【0045】
なお、図5および図6に示すように、ライン部44が境界線分48のみから構成されているため、閉領域42の内部に延び入って行き止まりとなるライン部44は存在しない。この態様によれば、単位レンズ35の外輪郭が周状となり、輝点や欠点の原因となる切れ目や凹みが単位レンズ35の外表面(レンズ面)に形成されなくなる。
【0046】
また、単位レンズ35の寸法は、上述したように、当該単位レンズ35に期待される光学機能を考慮して適宜決定され得る。ただし、単位レンズ35の最小幅は、可視光線に対して有効に光学作用を及ぼすことができるよう、可視光の最大波長(800nm)以上である必要があり、さらに、製造上の制約を考慮すると、10μm以上であることが好ましい。一方、単位レンズ35の幅Waが大きくなり過ぎると、個々の単位レンズ35が視認され、表示画像の画質を劣化させることになる。この点から、単位レンズ35の最大幅は、300μm以下とすることが好ましい。
【0047】
そして、単位レンズ35の最小幅を10μm以上とする観点からは、一つの閉領域42を形成する三以上の分岐点46のうちの任意に選択される二つ分岐点46が、本体部32上において、10μm以上の距離で離間していることが好ましい。言い換えると、一つの閉領域42を形成する三以上の分岐点46のうちの最も近接配置された二つ分岐点46が、本体部32上において、10μm以上離間していることが好ましい。また、単位レンズ35の最大幅を300μm以下とする観点からは、一つの閉領域42を形成する三以上の分岐点46のうちの任意に選択される二つ分岐点46が、本体部32上において、300μm以下の距離で離間していることが好ましい。言い換えると、一つの閉領域42を形成する三以上の分岐点46のうちの最も離間した二つ分岐点46の距離が、本体部32上において、300μm以下であることが好ましい。
【0048】
ところで、上述したように、所定の配列パターンで配列された単位レンズを含む光学シートを画像形成装置上に配置すると、単位レンズの配列パターンの周期性と画素配列の周期性との干渉に起因した縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)が視認されることがある。モアレが視認されると、画像表示装置に表示される画像の画質を著しく劣化させることになる。
【0049】
ここで図17には、正方格子状の配列パターン140を有した従来の典型的なマイクロレンズアレイシート(フライアイレンズシート)130が示されている。また、図19には、図17に示された従来の配列パターン140で単位レンズが配列されたマイクロレンズアレイシート130を、図8に示された典型的な画素配列の画像形成装置15上に配置した状態が示されている。また、図18には、正六角形を規則的に配列してなるハニカム状の配列パターン240を有した従来の典型的なマイクロレンズアレイシート(フライアイレンズシート)230が示されている。また、図20には、図18に示された従来の配列パターン240で単位レンズが配列されたマイクロレンズアレイシート230を、図8に示された典型的な画素配列の画像形成装置15上に配置した状態が示されている。図19および図20に示されているように、単位レンズの正方格子状またはハニカム状の配列パターン140,240と、画像形成装置の典型的な画素配列と、が重ねられると、配列パターン140,240の規則性(周期性)と画素配列の規則性(周期性)との干渉によって、明暗の筋が視認されるようになる。
【0050】
一方、モアレの発生を防止するため、本実施の形態による単位レンズ35の配列パターン40に対応するライン部44には、5本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42、6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42および7本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42の中から選ばれた少なくとも二種類がそれぞれ複数含まれている。加えて、本実施の形態による単位レンズ35の配列パターン40に対応するライン部44では、配列パターン40に含まれた5本、6本または7本のうちの同一本数の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域42の形状又は面積(境界線分によって取り囲まれた部分の面積)は一定ではないようになっている。すなわち、5本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域42(該閉領域が多角形の場合は5角形に相当)がライン部44に含まれている場合、当該5本の境界線分48によって画成されている複数の閉領域42の少なくとも二つが異なる形状又は面積を有し、6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域42がライン部44に含まれている場合、当該6本の境界線分48によって画成されている複数の閉領域42の少なくとも二つが異なる形状又は面積を有し、さらに、7本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域42がライン部44に含まれている場合、当該7本の境界線分48によって画成されている複数の閉領域42の少なくとも二つが異なる形状又は面積を有している。このような態様によれば、ライン部44によって画成される単位レンズ35の配列パターン40を効果的に不規則化することができる。
【0051】
此処で、閉領域42の少なくとも二つが異なる形状又は面積を有するとは、(a)全閉領域のうちの少なくとも二つが異なる形状を有し、且つ全閉領域は同一の面積を有する場合、(b)全閉領域のうちの少なくとも二つが異なる面積を有し、且つ全閉領域は同一の形状を有する場合、(c)全閉領域が同一形状を有し、且つ全閉領域が同一の面積を有する場合、のいずれかの場合に該当するという意味である。より好ましくは、同一本数の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域42のうちの50%以上が互いに其の形状又は面積が異なるように構成する。更に好ましくは、同一本数の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の開口領域42の全てが互いに其の形状又は面積が異なるように構成する。尚、2つ(以上)の合同な閉領域42であって、且つ其の向きが互いに異なる場合は、これら閉領域42の形状は互いに異なる(但し、面積は互いに同一)として扱う。
【0052】
本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、単に、ライン部44によって画成される単位レンズ35の配列パターン40を不規則化するのではなく、5本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42、6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42および7本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42の少なくとも二種類が、それぞれ複数、ライン部44に含まれ、且つ、ライン部44に含まれた5本、6本または7本のうちの同一本数の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域42の形状又は面積が一定ではないよう、ライン部44のパターンを画成することにより、多数の単位レンズ35を有した光学シート30を、画素配列を有した画像形成装置15に重ねた場合に生じ得るモアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることを知見した。
【0053】
一般的には、パターンを不規則化することが、モアレの不可視化に有効であるとされてきた。しかしながら、本件発明者らの研究によれば、実際には、単に単位レンズの配列パターンを不規則化したとしても、常に、モアレを十分に目立たなくさせることはできなかった。
【0054】
例えば、特開平11−121974号公報に開示された導電性メッシュでは、2次元XY平面内に於いてY軸方向について繰り返し周期性を持たないようになっており、この結果、2次元平面全体としては完全な繰返周期を持たず不一定のパターンとして視認され得る。すなわち、開口領域の形状又は配列ピッチを部分的にでも不規則化することによれば、当該開口領域の配列の繰返規則性を、同一形状の単位開口部が縦横に一定の繰り返しピッチで特定の直線方向に並べられている図17の正方格子状の配列パターンと比較して、大きく低下させ、導電性メッシュ自体が全体として不規則なパターンとして視認されるようになり得る。
【0055】
本件発明者らが確認したところ、特開平11−121974号公報に開示された導電性メッシュと同様のパターンのライン部で決定される配列パターンにて、上述した寸法例の単位レンズを本体部上に配列することによって、光学シートを作成した場合、単位レンズは本体部上に不規則パターンで配列されているようにも視認された。しかしながら、この光学シートを画像形成装置15と重ねた場合、視認され得るモアレの発生を確実に防止することはできなかった。モアレを有効に目立たなくさせることができない原因は、依然としてX軸方向には繰返周期を有している為と考えられる。すなわち、部分的にでもXY平面内の何れかの方向に繰り返し周期性が残存していると、その残存周期性によってモアレが発生するものと考えられる。
【0056】
一方、WO2007/114076号公報の如く、2次元XY平面内のX軸方向、Y軸方向共に各閉領域が繰返周期性を持た無い完全に不規則なパターンとすれば、モアレを解消することも可能となる。しかしながら、斯かる完全不規則なパターンを採用した場合、新たな問題点が発生した。それは、各閉領域の形状及び面積が不揃いの為、該導電性メッシュ全体を眺めたとき、導電性メッシュそれ自体に外観上、濃淡のムラが目立ってしまうことである。此れは、画像表示装置の画面上に設置する用途に於いては欠点となる。
【0057】
そもそも、WO2007/114076号公報に開示された導電性メッシュの不規則パターンは、導電性メッシュを製造する所定の方法によって、実現され得るものである。したがって、WO2007/114076号公報に開示された不規則パターンを、光学シートにおける単位レンズの不規則パターンとして再現することは不可能である。仮に再現することができたとしても、一部の単位レンズの形状が本來の設計形状に対して欠損や変形を生じたり、単位レンズの配列にも偏りが生じることがある。この結果、濃淡のムラ及び光学特性の面内不均一が発生することが予想される。
【0058】
その一方で、ここで説明する本実施の形態に係る光学シート30のように、単位レンズ35の配列パターン40から特定されるライン部44が、次の条件(A)および(B)の両方を満たす場合、モアレの発生を効果的に防止することが可能になるとともに、濃淡ムラの発生を効果的に防止することも可能となった。
・条件(A):5本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42、6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42および7本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42の中から選んだ少なくとも二種類が、それぞれ複数、ライン部44に含まれている。
・条件(B):5本、6本または7本のうちの同一本数の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域42の形状又は面積が一定ではない。すなわち、5本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域42がライン部44に含まれている場合に、当該5本の境界線分48によって画成されている複数の閉領域42の少なくとも二つが異なる形状又は面積を有し、且つ、6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域42がライン部44に含まれている場合に、当該6本の境界線分48によって画成されている複数の閉領域42の少なくとも二つが異なる形状又は面積を有し、且つ、7本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域42がライン部44に含まれている場合に、当該7本の境界線分48によって画成されている複数の閉領域42の少なくとも二つが異なる形状又は面積を有している。
【0059】
条件(A)および(B)を満たすライン部44に対応して画成された単位レンズ35の配列パターン40によって奏される作用効果は、モアレの不可視化として単にパターンの不規則化を実施してきた従来の技術水準に照らして、予測され得る範囲を超えた顕著な効果であると言える。そして、条件(A)および(B)を満たすライン部44によって特定される単位レンズ35の配列パターン40によってこのような作用効果が得られるようになる理由の詳細は不明であるが、次のことがその理由になっているものと推定される。ただし、本願発明は、以下の推定に限定されるものではない。
【0060】
まず、条件(A)によれば、閉領域42の配列が、同一形状の正六角形を規則的に配置してなるハニカム配列から、各閉領域42の形状および配置の規則性を崩した配列、言い換えると、ハニカム配列を基準として各閉領域42の形状および配置をランダム化した配列とすることができる。これにより、閉領域42の配列に明らかな粗密が生じてしまうことを抑制することができ、多数の閉領域42を概ね均一な密度で、すなわち概ね一様に分布させることができるものと推測される。加えて、条件(B)により、多数の閉領域42の配列を十分にランダム化することが可能となる。これらのことから、濃淡ムラおよびモアレの両方を効果的に目立たなくさせることができるものと推測される。
【0061】
実際に本件発明者らが鋭意調査を重ねたところ、条件(A)および(B)が満たされる場合に、閉領域42の配列が十分にランダム化されていた。さらには、条件(A)および(B)が満たされる場合に、閉領域42の配列を完全に不規則化し得ること、すなわち、閉領域42が規則的に配列された方向が存在しないようにし得ることが、安定して可能となり、結果として、濃淡ムラおよびモアレの両方を極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることが確認された。
【0062】
ここで、図6は、閉領域42が規則的に配列された方向が存在しない状態、言い換えると、閉領域Aが規則性を持って並べられた方向が存在しない状態を説明するための平面図である。図6においては、単位レンズの配列パターンに対応するライン部において、任意の位置で任意の方向を向く一本の仮想的な直線dが選ばれている。この一本の直線dは、ライン部の境界線分48と交差し交差点を形成している。この交差点を、図面では図面左下の側から順に、交差点C,C,C,・・・・・,Cとして図示してある。隣接する交差点、例えば、交差点Cと交差点Cとの距離が、前記或る一つの閉領域42の直線d上での寸法Tである。次に、寸法Tを持つ閉領域42に対して直線dに沿って隣接する別の閉領域42についても、同様に、直線d上での寸法Tが定まる。そして、任意位置で任意方向の直線dについて、直線dと交差する境界線分48とから、任意位置で任意方向の直線dと遭遇する多数の閉領域42について、該直線d上における寸法として、T,T,T,・・・・・・,Tが定まる。そして、T,T,T,・・・・・・,Tの数値の並びには、周期性(規則性)が存在しない。すなわち、閉領域42は、直線方向dに沿って規則性を持たないように並べられ、
≠Tk+l(k:任意の自然数、l:任意の自然数) ・・・条件式(x)
を満たすようになっている。なお、図6では、このT,T,T,・・・・・・,Tは、判り易い様に図面下方に、直線dと共に単位レンズの配列パターンとは分離して描いてある。
【0063】
また、この直線dを図6で図示のものから任意の角度だけ回転させて別の方向について各閉領域42の寸法T,T,・・を求めると、やはり図6で図示された場合と同様に、直線di+1方向に対しても、条件式(x)が満たされ、閉領域42の寸法T,T,・・に繰返し周期性(規則性)は見られない。このように、閉領域42がいずれの方向においても条件式(x)を満たす場合、閉領域が規則的に配列された方向が存在しない、あるいは、閉領域42が繰返周期を持つ方向が存在しない、あるいは、閉領域42の配列が規則性を持たない、と表現する。
【0064】
また、本件発明者らが種々の単位レンズの配列パターンについて調査を行ったところ、単位レンズ35の配列パターン40に対応するライン部44が、条件(A)および(B)に加えて、次の条件(C)をさらに満たす場合、とりわけ、条件(C)および(D)をさらに満たす場合に、濃淡ムラおよびモアレの両方をより目立たなくさせることができた。そしてさらには、単位レンズ35の配列パターン40を特定するライン部44が、条件(A)および(B)に加えて、次の条件(C)、(D)および(E)をさらに満たす場合に、濃淡ムラおよびモアレの両方をより目立たなくさせることができた。このような傾向は、上記推定とも合致し、上記推定を裏付ける現象と言える。
・条件(C):6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42が、複数含まれている。
・条件(D):6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42が、最も多く含まれている。すなわち、6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42が、他の本数の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42と比較して、より多く含まれている。
・条件(E):k本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42の数をNとして、
kが3≦k≦5を満たす整数の場合に、N≦Nk+1
kが6≦kを満たす整数の場合に、N≧Nk+1
となっている。すなわち、6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42が最も多く含まれ、閉領域42を取り囲む境界線分48の本数が6本から多くなっていくにつれて、且つ、閉領域42を取り囲む境界線分48の本数が6本から少なくなっていくにつれて、閉領域42の数量が少なくなっていく。
【0065】
なお、単位レンズ35の配列パターン40を特定するライン部44が各条件(A)〜(E)を満たすか否かは、厳密には、単位レンズ35の配列パターン40に対応するライン部44内に含まれる全ての閉領域42について調査することになる。ただし、実際的には、ライン部44によって画成された一つあたりの閉領域42の大きさ等を考慮した上で、一つの閉領域42を取り囲む境界線分48の本数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、上述した寸法例で閉領域42が形成されているライン部44においては、30mm×30mmの部分)に含まれる閉領域42について、取り囲む境界線分48の数を調査して、各条件(A)〜(E)が満たされるか否かを判断すればよい。同様に、閉領域42が規則的の配列された方向が存在するか否かについても、厳密には、対象となる単位レンズ35の配列パターン40に対応するライン部44内の全領域内において任意の方向における閉領域の配列を調査することなる。ただし、実際的には、閉領域42の配列の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、上述した寸法例で閉領域42が形成されている配列パターンにおいては、30mm×30mmの部分)の中心を通過する各方向(例えば、上述した寸法例で閉領域42が形成されている配列パターンにおいては、15°おきの方向)について、閉領域42の配列を調査して、閉領域が規則的に配列された方向か存在するか否かを判断すればよい。
【0066】
実際に、図5に示された単位レンズ35の配列パターン40を特定するライン部44について調査したところ、図7に示すように、このライン部44には、4本、5本、6本、7本、8本、9本の境界線分48によって取り囲まれた閉領域42が、それぞれ、79個、1141個、2382個、927個、94個、8個含まれていた。また、このライン部44には、3本の境界線分48によって取り囲まれた閉領域42、および、10本以上の境界線分48によって取り囲まれた閉領域42が含まれていなかった。すなわち、図5に示された単位レンズ35の配列パターン40に対応するライン部44は、条件(A)および(B)に加えて、条件(C)、(D)および(E)も満たしている。
【0067】
なお、図9には、図5に示された配列パターン40で単位レンズが配列された光学シート30を、図8に示された典型的な画素配列の画像形成装置15上に配置した状態が示されている。図9からも理解され得るように、図5に示された配列パターン40で単位レンズが配列された光学シート30を実際に作製して画像形成装置15の画素配列上に配置した場合、視認され得る程度の縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)は発生しなかった。
【0068】
加えて、本件発明者ら研究を重ねたところ、濃淡ムラおよびモアレの両方をより目立たなくさせるために、単位レンズ35の配列パターン40から特定されるライン部44が下記条件(F)も満たしている場合、同一形状の正六角形を規則的に配置してなるハニカム配列から、或いは、正方形を規則的に配置してなる正方格子配列から、各閉領域42の形状および配置の規則性を崩した配列、言い換えると、ハニカム配列または正方格子配列を基準として各閉領域42の形状および配置をランダム化した配列とすることができる。
・条件(F):一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0以上4.0未満とすることが有効であることが知見された。一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0以上4.0未満となる。
これにより、閉領域42の配列に明らかな粗密が生じてしまうことを抑制することができ、多数の閉領域42を概ね均一な密度で、すなわち概ね一様に分布させることができるものと推測される。実際に、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均を3.0以上4.0未満とした場合、閉領域42の配列を不規則化して、閉領域42が繰返規則性(周期性)を持って並べられた方向が存在しないようにすることが安定して可能となり、結果として、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることが、確認された。実際に、図5に示された単位レンズの配列パターン40に対応するライン部44について調査したところ、一つの分岐点に於ける境界線分の平均分岐数は3.08であり、3より大きく3.1以下となっていた。
【0069】
なお、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均は、厳密には、単位レンズ35の配列パターン40に対応するライン部44内に含まれる全ての分岐点46について、延び出す境界線分48の数を調べてその平均値を算出することになる、ただし、実際的には、ライン部44によって画成された一つあたりの閉領域42の大きさ等を考慮した上で、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、上述した寸法例で閉領域42が形成されている配列パターンにおいては、30mm×30mmの部分)に含まれる分岐点46について延び出す境界線分48の数を調べてその平均値を算出し、算出された値を、当該単位レンズ35の配列パターン40に対応するライン部44についての一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均値として取り扱うようにしてもよい。
【0070】
ここで、上述した条件(A)および(B)を満たすライン部44のパターン(単位レンズ35の配列パターン)を作製する方法の一例を説明する。光学シート30は、まず、ライン部44のパターンを決定して、次に、決定されたライン部44によって特定される配列パターン40にしたがって単位レンズ35を本体部32上に形成することにより、言い換えると、決定されたライン部44によって画成される各閉領域42内に一つの単位レンズ35を配置することにより、作製され得る。
【0071】
なお、上述した図5に示されたライン部44のパターンは、実際に以下に説明する方法で決定されたパターンである。そして既に説明したように、作製されたライン部44は、条件(A)および(B)だけでなく、条件(C)、(D)および(E)も満たし、さらに、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0以上4.0未満となっており、更に条件(F)も満たしていた。
【0072】
以下に説明する方法は、母点を決定する工程と、決定された母点からボロノイ図を作成する工程と、ボロノイ図における一つのボロノイ境界によって結ばれる二つのボロノイ点の間を延びる境界線分の経路を決定する工程と、決定された経路の太さを決定して各境界線分を画定してライン部44のパターンを決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。
【0073】
まず、母点を決定する工程について説明する。最初に、図10に示すように、絶対座標系O−X−Yの任意の位置に一つ目の母点(以下、「第1の母点」と呼ぶ)BP1を配置する。尚、此処で言う絶対座標系とは、通常の2次元空間(平面)のことであるが、後述の相対座標系と区別する為に、特に絶対座標系と呼称する。次に、図11に示すように、第1の母点BP1から距離r1以上且つ距離r2以下だけ離れた任意の位置に第2の母点BP2を配置する。すなわち、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径r1の円周と、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径r2の円周と、によって囲まれた円環状の領域内に、第2の母点BP2を配置する。ここで、距離r1は距離r2よりも小さく(r1<r2)、図5に示されたライン部44を作製する際には、距離r1を160μmとし、距離r2を190μmとした。
【0074】
次に、図12に示すように、第1の母点BP1から距離r1以上且つ距離r2以下だけ離れ、さらに、第2の母点BP2から距離r1以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離r1以上且つ距離r2以下だけ離れ、さらに、その他の母点BP2,BP3から距離r1以上離れた任意の位置に、第4の母点を配置する。このようにして、次の母点を配置することができなくなるまで、第1の母点BP1から距離r1以上且つ距離r2以下だけ離れ、加えて、その他の母点BP2,BP3,・・から距離r1以上離れた任意の位置に母点を配置していく。すなわち、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径r1の円周と、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径r2の円周と、によって囲まれた円環状の領域内に、第1母点BP1以外のすべて母点から距離r1以上離れた位置が存在しなくなるまで、母点を配置していく。
【0075】
その後、第2の母点BP2を基準にしてこの作業を続けていく。すなわち、第2の母点BP2から距離r1以上且つ距離r2以下だけ離れ、さらに、既に配置されたその他の母点BP1,BP3,BP4,・・から距離r1以上離れた任意の位置に、次の母点を配置していく。第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで、すなわち、第2の母点BP2を中心として絶対座標系XY上に位置する半径r1の円周と第2の母点BP2を中心として絶対座標系XY上に位置する半径r2の円周と、によって囲まれた円環状の領域内に、第2の母点BP2以外のすべての母点から距離r1以上離れた位置が存在しなくなるまで、母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更していき、同様の手順で母点を形成していく。
【0076】
以上の手順で、ライン部44(配列パターン40)が決定されるべき領域内、言い換えると、単位レンズ35が配置されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。ライン部44が形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。ここまでの処理により、2次元平面(XY平面)に於いて不規則的に配置された母点群が、配列パターン40が形成されるべき領域内に一様に分散した状態となる。
【0077】
此のような工程で2次元平面(XY平面)内に分布された母点群BP1、BP2、・・、BP6(図13(A)参照)について、個々の母点間の距離は一定では無く分布を有する。但し、任意の隣接する2母点間の距離の分布は完全なランダム分布(一様分布)でも無く、平均値RAVGを挟んで上限値RMAXと下限値RMINとの間の範囲ΔR=RMAX−RMINの中で分布している。尚、此処で、隣接する2母点については、母点群BP1、BP2、・・から後述するようにしてボロノイ図を作成した際に、2つのボロノイ領域XAが隣接している場合に、その2つのボロノイ領域XA内にそれぞれ位置する母点同士が隣接していると定義する。尚、図13(A)に於いて、これら母点群から得られるボロノイ境界(図14参照)を参考までに破線で図示してある。
【0078】
即ち、ここで説明した母点群について、各母点を原点とする座標系(相対座標系o−x−yと呼称し、一方、前記の通り、現実の2次元平面(座標系)を絶対座標系O−X−Yと呼称する)上に、当該原点に置いた母点と隣接する全母点をプロットした図13(B)、図13(C)、・・等のグラフを、全母点について求める。そして、これら全部の相対座標系上の隣接母点群のグラフを、各相対座標系の原点oを重ね合わせて表示すると、図13(D)の如きグラフが得られる。斯かる相対座標系上での隣接母点群の分布パターンは、母点群を構成する任意の隣接する2母点間の距離は、0から無限大迄の一様分布では無く、0よりも大きい(RAVG―ΔR)から、(RAVG+ΔR)迄の有限の範囲(半径RMINからRMAX迄のドーナツ形領域)内に分布するようになる。
【0079】
このように隣接する二母点間の距離に制限が加えられる一方で、母点の方向性については何ら制限が加えられていない。このため、図13(D)に示すように、相対座標系上での隣接母点群の方位角方向(曲座標系rθで言うと、θ座標方向)の分布パターンは、一様且つ不規則的であり、半径RMINからRMAX迄のドーナツ形領域内に等方的に分布するようになる。
【0080】
斯くの如く各母点間の距離を設定することによって、該母点群から以下に説明する方法で得られるボロノイ領域XA、更には、これから得られる閉領域42の面積の分布についても、一様分布(完全ランダム)では無く、有限の範囲内に分布したものとなる。この結果、作製されたライン部44に対応した配列パターン40で配列した単位レンズ35を目視した際の透明性の面分布がより均一化する。
【0081】
なお、単位レンズ35の大きさや配置が偏ってしまうと生じてしまう濃淡ムラを、実質上、目視不能とし、且つ、単位レンズ35の配列の非周期性によるモアレ防止性を確保する観点からは、図13(D)に示された相対座標系上での隣接母点群の分布パターンにおけるΔR(=RMAX−RMIN)のRAVG(=(RMAX+RMIN)/2)に対する比の値が、0より大きく0.6以下であることが好ましく、0.2以上0.4以下であることがより好ましい。すなわち、次の条件(y1)が満たされることが好ましく、条件(y2)が満たされることがより好ましい。本件発明者らが種々のパターンを形成して試したところ、条件(y1)が満たされる場合、通常の観察能力において、濃淡ムラを感じることがなく、さらに条件(y2)が満たされる場合には、注意深く観察したとしても濃淡ムラを感じることがなかった。
0<(ΔR/RAVG)≦0.6 ・・・条件(y1)
0.2≦(ΔR/RAVG)≦0.4 ・・・条件(y2)
【0082】
なお、以上の母点を決定する工程において、距離r1および距離r2の大きさを変化させることにより、図13(D)におけるRAVG並びに一つあたりの閉領域42の大きさを調節することができる。具体的には、距離r1および距離r2の大きさを小さくすることにより、図13(D)におけるRAVGが小さくなり、且つ、一つあたりの閉領域42の大きさを小さくすることができ、逆に距離r1および距離r2の大きさを大きくすることにより、図13(D)におけるRAVGが大きくなり、且つ、一つあたりの閉領域42の大きさを大きくすることができる。また、距離r1と距離r2との差を変化させることにより、隣接する2母点間の距離が分散する範囲の大きさ(図13(D)におけるΔRの大きさ)を変化させることができる。具体的には、距離r1と距離r2との差を小さくすることにより、隣接する2母点間の距離のバラツキΔRは小さくなる傾向を呈する。
【0083】
次に、図14に示すように、配置された母点を基準にして、ボロノイ図を作成する。図14に示すように、ボロノイ図とは、隣接する2つの母点間に垂直二等分線を引き、その各垂直二等分線同士の交点で結ばれた線分で構成される図である。ここで、垂直二等分線の線分をボロノイ境界XBと呼び、ボロノイ境界XBの端部をなすボロノイ境界XB同士の交点をボロノイ点XPと呼び、ボロノイ境界XBに囲まれた領域をボロノイ領域XAと呼ぶ。
【0084】
図14のように作成されたボロノイ図において、各ボロノイ点XPが、ライン部44の分岐点46をなすようにする。そして、一つのボロノイ境界XBの端部をなす二つのボロノイ点XPの間に、一つの境界線分48を設ける。この際、境界線分48は、図5および図6に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定してもよいし、あるいは、他の境界線分48と接触しない範囲で二つのボロノイ点XPの間を種々の経路(例えば、円(弧)、楕円(弧)、抛物線、双曲線、正弦曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、ベッセル関数曲線等の曲線状、折れ線状等、曲線と直線とを組み合わせてなる線状の経路)で延びるようにしてもよい。なお、図5および図6に示された例のように、境界線分48がボロノイ点XPの間を直線状に結ぶように決定された場合、各ボロノイ境界XBが、境界線分48を画成することになる。
【0085】
各境界線分48の経路を決定した後、各境界線分48の線幅(太さ)を決定する。境界線分48の線幅は、例えば、開口率が上述した範囲となるように、すなわち、単位レンズ35が可視光に対して光学機能を発揮することが可能となり、且つ、個々の単位レンズ35が視認されない程度の大きさとなるように、決定される。以上のようにして、単位レンズ35の配列パターン40を決定するためのライン部44のパターンを作製することができる。境界線分48の線幅は、通常、0μ以上100μ以下の範囲で設定される。
【0086】
以上のような本実施の形態によれば、単位レンズ35の間を延びる境界線分48からなるライン部44が、単位レンズ35の配列パターン40に応じて、本体部の一方の面上に特定される。境界線分48は二つの分岐点46の間を延びて閉領域42を画成し、ライン部44の一つの閉領域42内に一つの単位レンズ35が配置されるようにして、単位レンズ35が本体部32の一方の面32a上に配列されている。光学シート30の配列パターン40が、二つの分岐点46の間を延びて閉領域42を画成する多数の境界線分48から形成されており、5本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42、6本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42および7本の境界線分48によって周囲を取り囲まれた閉領域42の中から選ばれた少なくとも二種類がライン部44によって形成されており、且つ、ライン部44によって形成された5本、6本または7本のうちの同一本数の境界線分48によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域42の形状又は面積が一定とならないようになっている。この結果、規則的(周期的)に画素Pが配列された画像形成装置15に、この光学シート30を重ねたとしても、縞状の模様(モアレ、干渉縞)が視認され得る程度に発生することを効果的に防止することができる。
【0087】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。
【0088】
例えば、上述した実施の形態において、ライン部44の境界線分48が直線状に形成されている例を示したが、これに限られない。境界線分48が、既に説明したように、二つの分岐点46の間を曲線状等の種々の経路に沿って延びていてもよい。
【0089】
さらに、上述したライン部44のパターン設計方法は単なる一例に過ぎない。例えば、次の手順で母点を配置していってもよい。まず、図10と同様に、絶対座標系XYの任意の位置に一つめの母点BP1を配置する。次に、第1の母点BP1から距離rだけ離れた任意の位置に第2の母BP2を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ第2の母点BP2から距離r以上離れた任意の位置に第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ既に配置されている第1母点BP1以外の全ての母点BP2,BP3から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を順に配置していく。以上の手順で第1の母点BP1から距離rだけ離れた位置に母点を配置することができなくなったら、次に、第2の母点から距離rだけ離れ且つ既に配置されている第2母点BP2以外の全ての母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を順に配置していく。このように第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更していき、同様の手順で母点を形成していく。以上の手順で、単位レンズ35が設けられるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。単位レンズ35が設けられるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。このような処理によっても、不規則的に配置された母点群が、単位レンズ35が設けられるべき領域内に一様に分散した状態とすることができる。
【0090】
さらには、次の手順で母点を配置していくこともできる。まず、図10と同様に、絶対座標系XYの任意の位置に一つめの母点BP1を配置する。次に、第1の母点BP1から距離r以上離れた任意の位置に第2の母BP2を配置する。その後、第1の母点BP1および第2の母点BP2のそれぞれから距離r以上離れた任意の位置に第3の母点BP3を配置する。その後、既に配置されている全ての母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を順に配置していく。以上の手順で、単位レンズ35が設けられるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。単位レンズ35が設けられるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。このような処理によっても、不規則的に配置された母点群が、単位レンズ35が設けられるべき領域内に一様に分散した状態とすることができる。
【0091】
さらに、上述した単位レンズ35の配列パターン40を特定するライン部44のパターン設計方法に於いては、先ず、平面内に特定の母点を作図し、ついで、該母点のボロノイ分割パターンとしてライン部44のパターンを形成する例を示したが、これには限られない。例えば、手作業にて、平面内に互いに大きさ及び形状の異なる5角形及び6角形の閉領域42をランダムに作図し、其の際に、何れの方向にも繰返し周期を持たず、各5角形及び6角形の大きさ(面積乃至最大の対角線長)が所定の範囲に収まるように留意して作図することによって、ライン部44のパターンを作図してもよい。
【0092】
さらに、上述した実施の形態において、単位レンズ35が、本体部32の一方の面32a上に隙間無く互いに隣接して配置されている例を示したが、これに限られない。単位レンズ35の全部または一部が、本体部32の一方の面32a上に、互いに離間して配置されていてもよい。このような変形例においては、ライン部44の境界線分48が、本体部32の一方の面32a上において、隣り合う二つの単位レンズ35から等距離となる位置を延びるようにしてもよい。より具体的には、境界線分48の各位置から、当該位置にて境界線分48に直交する方向に沿って、当該境界線分48の両側に位置する単位レンズ35の外輪郭(外縁)までの距離が同一となるようにしてもよい。或いは、図15に示すように、ライン部44の境界線分48が、その長さ方向の中心となる中心位置CPから、当該中心位置CPにて境界線分48に直交する方向に沿って、当該境界線分48の両側に位置する単位レンズ35の外輪郭(外縁)まで等距離となるように、特定されてもよい。また、この変形例において、境界線分48は、図15に示すように直線として構成されていてもよく、曲線として構成されていてもよく、或いは、直線と曲線との組み合わせとして構成されていてもよい。このような光学シート30によっても、モアレおよび濃淡ムラの両方を効果的に目立たなくさせることができた。
【0093】
さらに、上述した実施の形態では、光学シート30の単位レンズ35が配置されるべき全領域において、上述した条件(A)および(B)、並びに、条件(C)〜(E)が満たされ、さらに、条件(F)も満たし、且つライン部44の閉領域42が周期性を持って配列されている方向が存在しないようになっている例を示した。しかしながら、単位レンズ35が設けられるべき領域内の一部の領域内において、条件(A)および(B)が満たされるようにしてもよい。
【0094】
典型的な変形例として、図16の如く、上述した条件(A)および(B)を満たす領域、好ましくは上述した条件(A)〜(E)を満たす領域、さらには、上述した条件(A)〜(E)を満たし且つ閉領域42が規則的に配列された方向が存在しない領域(単位パターン領域)Sを用意し、或いは、一つの分岐点46から延び出す境界線分48の数の平均が3.0以上4.0未満となる領域、さらには、条件(F)を満たし、且つ閉領域42が規則的に配列された方向が存在しない領域(単位パターン領域)Sを用意し、該領域Sが複数集合して、単位レンズ35が設けられるべき全領域が構成されているようにしてもよい。即ち、此の形態に於いては、単位レンズ35が設けられるべき全領域中に、同一パターンで閉領域群42が配列されてなる単位パターン領域Sを2箇所以上含むようになる。
【0095】
この例において、一つの領域S内におけるライン部44のパターンは、例えば、図10〜図14を参照しながら説明したパターン作成方法と同様にして作成することができ、或いは、上述した変形例によるパターン作成方法と同様にして作成することができる。特に最近では、プラズマディスプレイ装置や液晶表示装置に代表されるよう、画像表示装置10の表示面10aの大型化が進んでいる。とりわけこのような大型画像表示装置に対しては、単位レンズ35の配列パターン40に対応するライン部44が、複数の単位パターン領域Sを含んで構成されていて、且つ、各々の単位パターン領域S内に於いては互いに同一のパターンで閉領域42が配列されている構成とした場合、ライン部44のパターン作成を格段に容易化することが可能となる点において好ましい。
【0096】
なお、図16に示された例では、光学シート30の単位レンズ35を配置されるべき領域が、同一の形状を有した六つの単位パターン領域Sに分割され、各領域S内でライン部44が同一のパターンに構成されている。そして、六つの領域Sは、図16の縦方向に三つの領域が並ぶとともに、図16の横方向に二つの領域が並ぶように配列されている。
【0097】
このような変形例では、例えば図16に示すように、単位レンズ35を配置されるべき領域内において、ライン部44の閉領域42が一定の配列で並べられている範囲が、単位パターン領域Sの数だけ、当該領域の配列方向と平行な方向に繰り返し存在するようになる。すなわち、単位レンズ35を配置されるべき領域内において、ライン部44の複数の閉領域42が所定の規則性を持って繰り返し並べられている直線方向が存在するようになる。この場合、領域Sの規則的な配列に起因して、縞状模様(モアレ、干渉縞)或いは濃淡ムラが発生する心配もある。このため、単位パターン領域S内に含まれる閉領域42の数は、単位パターン領域Sの繰返しが実質上視認し難くする上で、出来るだけ多い方が好ましい。
【0098】
但し、特定方向への同一単位パターン領域Sの繰返し数が或る程度までに抑えられていれば、斯かる縞状模様や濃淡ムラは無視し得る。これは、単に繰返し数が少ないことに加えて、領域Sの寸法が画素寸法と大幅に異なる結果、実質上モアレを生じる関係から外れる為でも在る。具体的には、図16に示すように、複数の単位パターン領域Sがある方向に所定のピッチSP1,SP2で配列されている場合には、当該所定のピッチSP1,SP2は、ある方向に沿った画像形成装置の寸法L1,L2の1/4以上となっていることが好ましく、あるいは、家庭用テレビ受像器への適用においては50mm以上となっていることが好ましい。また、単位パターン領域S内に含まれる閉領域42の数は500個以上となっていることが好ましい。
【0099】
但し、隣接する単位パターン領域同士の境界の継目の修整処理(継目を目立たなくさせるためのパターンの変形、修整処理)、単位パターン領域の形状(図16では長方形としたが、其の他、3角形、6角形、其の他形状も可能)、配列様式(図16では長方形の単位パターン領域Sを縦横に碁盤の目上に配列したが、単位パターン領域Sが長方形であっても、これを煉瓦積みの如き配列とすることも可能)等の工夫如何によっては、単位パターン領域Sの縦横の配列ピッチSP1、SP2が、画像形成装置の寸法L1,L2の1/10以上となっていれば、あるいは、家庭用テレビ受像器や携帯端末用表示装置への適用において20mm以上となっていれば、縞状模様や濃淡ムラを十分に目立たなくし得ることが知見された。
【0100】
(着色フィルタとの組み合わせ)
上述してきた光学シート30は、実質上、画素Pとのモアレを生じ無いとともに、濃淡のムラも生じ無いものである。しかしながら、詳細な原因は現在不明で有るが、画像形成裝置15の出光面15a上に設置した場合、条件如何によっては、画像に微細なチラツキ(微小輝点の集合体)を生じる場合が有る。斯かるチラツキを目立ち難くする為、光学シート30中、或いは画像形成装置10に含まれる他のシート状部材中、或いはその他の画像形成装置10中の適宜位置に、可視光線中の特定波長域の中に吸収スペクトルを持つ着色フィルタを設けることが有効である。該着色フィルタとしては、無彩色(黒色乃至灰色)、有彩色(青、茶、緑等)何れでも良いが、画像の色彩に影響が少ない無彩色の方ものが好ましい。
【0101】
(用途)
以上に説明してきた光学シート30および画像形成装置10は、各種用途に使用可能である。特に、テレビジョン受像装置、各種測定機器や計器類、各種事務用機器、各種医療機器、電算機器、電話機、電飾看板、各種遊戯機器等の表示部に用いられるプラズマディスプレイ(PDP)装置、ブラウン管ディスプレイ(CRT)装置、液晶ディスプレイ装置(LCD)、電場発光ディスプレイ(EL)装置などの画像表示装置への適用に好適であり、特にプラズマディスプレイ装置への適用に好適である。また、以上に説明してきた光学シート30は、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車両、航空機、船舶等の乗物の窓等に重ねて覗き見防止や直射日光の拡散緩和等の用途にも使用可能である。
【符号の説明】
【0102】
10 画像表示装置
10a 表示面
15 画像形成装置、画像表示パネル
15a 出光面、画像形成面
30 光学シート
32 本体部
32a 一方の面
35 単位レンズ
40 配列パターン
42 閉領域
44 ライン部
46 分岐点
48 境界線分
XA ボロノイ領域
XB ボロノイ境界
XP ボロノイ点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置と重ね合わせて使用される光学シートであって、
シート状の本体部と、
前記本体部の一方の面上に配列された複数の単位レンズと、を備え、
前記本体部の一方の面上に、隣り合う二つの単位レンズの間を延びる境界線分からなるライン部が画成され、
前記ライン部の各境界線分の両端は、二以上の他の境界線分と接続する分岐点をなし、
前記ライン部は、前記境界線分によって囲まれる閉領域を画成し、一つの閉領域内に一つの単位レンズが配置されるようにして、前記単位レンズが前記本体部上に配列されており、
前記ライン部は、5本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域および7本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域の中から選ばれた少なくとも二種類が含まれている領域を含み、
前記領域に含まれた5本、6本または7本のうちの同一本数の境界線分によって周囲を取り囲まれた複数の閉領域の形状又は面積は一定ではない、光学シート。
【請求項2】
前記領域には、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域が含まれている、請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記領域には、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域が最も多く含まれている、請求項1または2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記領域に含まれた閉領域のうち、k本の境界線分によって周囲を取り囲まれた閉領域の数をNとすると、
kが3≦k≦5を満たす整数の場合に、N≦Nk+1となり、
kが6≦kを満たす整数の場合に、N≧Nk+1となる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学シート。
【請求項5】
画像形成装置と、
前記画像形成装置上に設けられた、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学シートと、を備える、画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−76881(P2013−76881A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217152(P2011−217152)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】