説明

光学シート及びそれを備えたバックライトユニット、ディスプレイ装置

【課題】光学特性の劣化防止及び接合層の剥がれ防止を可能とする光学シート及びそれを備えたバックライトユニット、ディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】光源20aからの光を拡散する拡散層7と、拡散層7の射出側に配置され、アレイ状のレンズが配列されたレンズ部1と、拡散層7とレンズ部1との間に形成され、レンズのそれぞれに対する光の入射範囲を規制する空気層5aを備えた反射部5と、を有する光学シート21において、拡散層7と反射部5とが接合層6を介して一体化され、接合層6は100℃の場合における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下であり、かつ接合層6の厚みが5μm以上に設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シート及びそれを備えたバックライトユニット、ディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)に代表されるディスプレイ装置は、提供される画像等の情報を認識するために、光源(バックライト)を内蔵している。この光源で消費する電力は、ディスプレイ装置全体で消費する電力の相当部分を占めており、総電力の低減が強く要望される昨今においては、光源の利用効率を向上させることが要求されている。
【0003】
この問題を解決する手段として、輝度向上フィルム(BEF;Brightness Enhancement Film:米国3M社の登録商標)を備えたものが広く使用されている。
BEFは、透明基材上に断面三角形状の単位プリズムを一方向に周期的に配列したフィルムである。このプリズムは、光の波長に比較して大きいサイズ(ピッチ)で形成されている。BEFは、“軸外(off−axis)”からの光を集光し、この光を視聴者に向けて“軸上(on−axis)”に方向転換(redirect)、または“リサイクル(recycle)”する。そのため、ディスプレイの使用時(観察時)には、光源から発光する光線をBEFによって軸外輝度を低下させることで、軸上輝度を増大させることができる。
なお、「軸上」とは、視聴者の視覚方向に一致する方向であり、一般的にはディスプレイ画面に対する法線方向である。
【0004】
BEFにおいて、プリズムの反復的アレイ構造が1方向のみの配列では、その配列方向での方向転換またはリサイクルのみが可能である。そこで、水平面における横方向及びこれに直交する縦方向での表示光の輝度制御を行なうために、プリズム群の配列方向が互いに略直交するように2枚のBEFを重ねて組み合わせて用いることもある。このように、BEFの採用により、電力消費を低減しながら所望の軸上輝度を達成することができるようになった。
BEFに代表されるプリズムの反復的アレイ構造を有する輝度制御部材をディスプレイ装置等の光学シートに採用することは、多数の特許文献に開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
上述したBEFを輝度制御部材として用いた光学シートを備えた、例えばエッジライト方式のディスプレイ装置では、光源からの光がプリズムの傾斜面から射出する。そして、プリズムの傾斜面から射出した光は、その屈折作用によって軸上方向を光の中心として制御された或る角度範囲の光として出射され、視聴者の視覚方向の光の強度を高めるように制御される。
しかしながら、これと同時にプリズムの一方の傾斜面を界面として反射され、他方の傾斜面で屈折する光成分が、視聴者の視覚方向に進むことなく横方向に無駄に出射されてしまうという不具合があった。
【0006】
図3は、縦軸を光強度、横軸を軸上(on−axis)を中心とする観察者の視野角とした、ディスプレイ装置における視野角に対する輝度分布を示す図である。
図3に示すように、上述したBEFの光学シートを備えたディスプレイ装置についての光強度分布は、破線Bで示すように、視聴者の視覚方向F(図1参照:軸上方向にあたる)の角度0°における光強度が最も高められるものの、視覚方向F(軸上方向)に対して水平方向における射出角度が両側(±)方向に次第に変化するに従って光強度が徐々に減少する。そして、横軸に一致する±90°近辺の射出角度では、視野方向から外れるサイドローブ光が小さな光強度ピークとして示される。このサイドローブ光は観察者の視野から外れるため、プリズムの横方向から無駄に出射される光が増えてしまうという問題がある。
一般的には、一方のプリズムの並列される方向に対して他方のプリズムが略直交する様に、2枚のプリズムシートが重ねて併用される使用形態が普及している。図3に示すグラフの破線Bは、BEFの光学シート(プリズムシート)1枚だけの場合の光強度分布である。そのため、図3に破線Bで示すサイドローブ光の光強度ピークを有する輝度分布は望ましくはなく、実線Aで略正規分布曲線として示す、±90°近辺でのサイドローブ光による光強度ピークのない滑らかな輝度分布の方が好ましい。
【0007】
一方、軸上輝度のみが過度に増大すると、グラフ中の山の幅が著しく狭くなり、視域が極端に限定される。
そのため、グラフ中の山の幅を適度に拡げるために、光学シートに光拡散部材(拡散層)を設けることが考えられる。ところが、この場合には光学部材の数が増加し、輝度が低下する現象が生じる。
【0008】
このような欠点を克服するために、例えば特許文献4に示すように、プリズムではなく単位レンズの反復的アレイ構造を有する光学シートを用いたバックライトユニットも提案されている。このバックライトユニットは、液晶パネルと、この液晶パネルに背面側から光を照射する光源手段とを備え、この光源手段に、光源からの光を液晶パネルへと導くアレイ状のレンズ層が設けられている。このレンズ層焦点面近傍に位置する開口部と遮光シートまたはレンズ層によって液晶層内部で結像する位置関係にあるレンズ層焦点面より外側に開口部をもつ遮光シートを有している。また、遮光シートは、開口部と遮光部とが交互に配列されており、その開口部は、導光板とレンズ層との間で低屈折率層(空気層)として構成されている。
【特許文献1】特公平1−37801号公報
【特許文献2】特開平6−102506号公報
【特許文献3】特表平10−506500号公報
【特許文献4】特開2000−284268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した特許文献4に記載された光学シートにあっては、空気層と遮光部とが交互に配列してなる遮光シートを、レンズ層または拡散層に接着剤や粘着剤等の接合材料からなる接合層を介して貼り合わせる場合がある。
しかしながら、遮光シートと、レンズ層または拡散層とを、接合層を介して貼り合わせた場合、特にバックライト点灯時に発生する熱の影響等により、遮光シートと、レンズ層または拡散層とにおける熱膨張率差等に起因して、接合層にせん断応力が作用する。そして、遮光シートと、レンズ層または拡散層との熱膨張率差が大きい場合には、接合層がせん断応力を吸収しきれず、接合層が剥がれたり、また接合層が押圧されて変形することで空気層の形状にばらつきが生じ、光学特性が劣化したりする等の問題がある。
【0010】
そこで、本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであって、光学特性の劣化防止及び接合層の剥がれ防止が可能な光学シート及びそれを備えたバックライトユニット、ディスプレイ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の光学シートは、光源からの光を拡散する拡散層と、該拡散層の射出側に配置され、アレイ状の光学素子が配列された光学素子部と、前記拡散層と前記光学素子部との間に形成され、前記光学素子のそれぞれに対する光の入射範囲を規制する開口部を備えた反射部と、を有する光学シートにおいて、前記反射部は接合層を介して接合され、該接合層は100℃の場合における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下であり、かつ前記接合層の厚みが5μm以上に設定されていることを特徴とする。
ここで貯蔵弾性率とは、粘弾性体における弾性的な性質を表すものであり、粘弾性体に振動を与えた場合の変位と同位相成分の弾性率で表される。なお、動的な粘弾性を採用するのは、接合材料には復元力が存在するためである。そして、この復元力を示すパラメーターを動的な弾性率によって制御することが可能となる。
この構成によれば、接合層が100℃の場合における貯蔵弾性率を1.0×10Pa以下、かつ接合層の厚みを5μm以上に設定することで、反射部や光学素子部から接合層に作用するせん断応力が吸収されやすくなるため、接合層の剥がれを防止することができる。
【0012】
また、光源からの光を拡散する拡散層と、該拡散層の射出側に配置され、アレイ状の光学素子が配列された光学素子部と、前記拡散層と前記光学素子部との間に形成され、前記光学素子のそれぞれに対する光の入射範囲を規制する開口部を備えた反射部と、を有する光学シートにおいて、前記反射部は接合層を介して接合され、前記接合層は100℃の場合における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、かつ前記接合層の厚みが20μm以下に設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、接合層が100℃の場合における貯蔵弾性率を1.0×10Pa以上、かつ接合層の厚みを20μm以下に設定することで、接合層が変形して空気層となる開口部内に侵入することを防ぐことができるため、開口部の変形防止が可能になる。その結果、光学特性を良好に維持することができる。
【0013】
また、前記接合層は100℃の場合における損失弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下に設定されていることを特徴とする。
ここで損失弾性率とは、粘弾性体における粘性的な性質を表すものであり、粘弾性体に振動を与えた場合の速度と同位相成分の弾性率で表される。
この構成によれば、接合層の損失弾性率を1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下に設定することで、光学特性の劣化防止及び接合層の剥がれ防止が可能になる。
【0014】
また、前記接合層は、前記反射部と前記拡散層との間に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、接合層を反射部と拡散層との間に形成することで、光学素子部と接合層との間において、反射部に備えた開口部を空気層として機能させることができる。したがって、空気層の形成が容易になる。
【0015】
また、前記接合層は、前記光学素子部と前記反射部との間に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、接合層を光学素子部と反射部との間に形成することで、拡散層と接合層との間において、反射部に備えた開口部を空気層として機能させることができる。したがって、空気層の形成が容易になる。
【0016】
また、前記光学素子部及び前記反射部、前記拡散層が一体化されていることを特徴とする。
この構成によれば、光学素子部及び反射部、拡散層を一体化させることで、光の利用効率を向上することができるとともに、輝度ムラを抑制することができる。
【0017】
また、前記光学素子部の射出側に、反射型偏光分離フィルムを備えていることを特徴とする。
この構成によれば、光学素子部から出射された光のうち、一方の偏光方向の直線偏光を透過するとともに、他方の偏光方向の直線偏光を反射させることで、光の利用効率に優れ、しかも輝度ムラを抑制することができる。
【0018】
また、本発明のバックライトユニットは、上記本発明の光学シートと、表示画像を規定する画像表示素子の背面側に配置された直下型光源と、を備えていることを特徴とする。
また、本発明のバックライトユニットは、上記本発明の光学シートと、表示画像を規定する画像表示素子の背面側に配置されたエッジライト式光源及び導光板からなる面光源と、を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、光の利用効率に優れ、しかも輝度ムラを抑制できる光学シートを備えているため、高性能なバックライトユニットを提供することができる。
【0019】
また、本発明のディスプレイ装置は、上記本発明のバックライトユニットと、画像単位での透過/遮光に応じて表示画像を規定する液晶表示素子からなる画像表示部と、を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、光の利用効率に優れ、しかも輝度ムラを抑制できるバックライトユニットを備えているため、高性能なディスプレイ装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光学特性の劣化防止及び接合層の剥がれ防止が可能となり、拡散層で拡散させた光に対して、所望の屈折効果を得ることができるため、光学素子に対して大きな入射角で入射する光を集光することができる。したがって、光の利用効率に優れ、しかも輝度ムラを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(ディスプレイ装置)
図1は、本発明の実施形態に係るディスプレイ装置の概略構成を示す模式的な断面図である。なお、図1においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材ごとに縮尺を適宜異ならせてある。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のディスプレイ装置100は、パネル本体2がその両面側を反射型偏光分離フィルム3,4で挟まれて構成された液晶表示部22と、この液晶表示部22の背面側に配置され、液晶表示部22に対してその背面側から光を照射するバックライトユニット23とを備えている。これにより、ディスプレイ装置100は、図示上側に向けて、画像信号によって表示制御された表示光を出射することで、平面視矩形状の画像を表示するものである。
以下では、このような配置に基づいて、図1の上方向を単に表示画面側(射出側)、下方向を単に背面側と称する場合がある。
【0023】
バックライトユニット23は、光源部20と光学シート21とを備えている。
光源部20は、紙面奥行き方向に延びるライン状の発光部が紙面左右方向に沿って等間隔に配置された複数の光源20aと、これら光源20aを背面側から覆って表示画面側が開口された反射板20bとで構成される直下型方式を採用している。
光源20aとしては、例えば、冷陰極管などを用いることができるが、複数のLED素子を紙面奥行き方向に沿うライン上に配列したLED光源などを採用してもよい。ただし、光源部20は、光学シート21の背面側に白色光を出射できればこのような構成には限定されず、周知のいかなる構成の光源部を採用してもよい。例えば、導光板の側面にライン状光源を配置したエッジライト式の面光源などを採用してもよい。
【0024】
光学シート21は、光源部20から表示画面側に射出される光の一部を集光して、表示画面側に透過させ、他の光を光源部20側に反射して光源部20に再入射させるものであり、背面側から表示画面側に向けて、拡散層7及び、接合層6、反射部5、基材シート4、レンズ部(光学素子部)1が、この順に積層されてなる。すなわち、後述するように、反射部5で形成される空気層5aの形成領域では、接合層6、基材シート4、レンズ部1がこの順に積層されている。
【0025】
拡散層7は、光源部20の表示画面側を覆う位置に設けられた板状部材である。拡散層7は、透明樹脂とこの透明樹脂の中に分散された透明粒子とを具備して構成されており、これら透明樹脂の屈折率と透明粒子の屈折率が異なるものとされる。拡散層7は、光源部20から表示画面側に出射される光Pを拡散させるものであり、複数の光源20aによる図示水平方向の照度ムラを抑制するとともに、表示光に適宜の視野角を付与することができるようになっている。なお、拡散層7の透明樹脂としては、例えば、PC(ボリカーボネート)樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、メチルスチレン樹脂及びフルオレン樹脂等を使用することができる。
【0026】
反射部5は、空気層5aと反射層5bとを備えている。
反射層5bは、レンズ部1の背面側において、紙面奥行き方向に延びる断面視矩形状のものであり、紙面左右方向に沿って等間隔に複数配列され、ストライプ状に形成されている。反射層5bは、光源部20から射出される光Pうち、反射層5bに入射する光を背面側に反射し、この反射光を反射板20bで再反射させるものである。そして、反射板20bで再反射した光を、再度、表示画面側へ射出させることで、光の利用効率を高めることができる。反射層5bの材質は、例えば金属粒子、または二酸化チタン等の高屈折率透明粒子を分散混合してなるインキを塗布形成、または転写形成したもの、金属箔をラミネート形成したもの、金属材料を蒸着したもの等を採用することができる。なお、反射層の断面形状は、矩形断面には限定されない。例えば、背面側に縮幅する台形断面や、これら矩形断面、台形断面の背面側の角部を丸めた断面形状などを採用することができる。
【0027】
各反射層5bの間には、開口部が形成されており、この開口部が接合層6の表示画面側の表面とレンズ部1の背面側の界面との間で空気層5aとして構成されている。この空気層5aは、レンズ部1における後述する複数のレンズのそれぞれに対する光の入射範囲を規制するものである。空気層5aは、後述する接合層6より屈折率が低く構成されており、一度拡散層7で拡散した光が、接合層6と空気層5aとの間で界面屈折することで、空気層5aを通過してレンズ部1に対して大きな入射角で入射する光を、中央に再度集めることができる。
【0028】
基材シート4は、光源部20から出射される光の波長に対し光透過性を有するガラス板やプラスチックフィルムなどを採用することができる。プラスチックフィルムの例としては、当該技術分野で良く知られているポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリルシート等を挙げることができる。
【0029】
レンズ部1は、空気層5aを通って表示画面側に透過する拡散光を集光するため、複数の光学素子、例えばレンズを、それぞれ異なる空気層5aに対向させて等間隔でアレイ状に配列したものである。レンズ部1は、例えばPET樹脂、PC樹脂、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)等を用いて、当該技術分野では良く知られている押し出し成形法、射出成形法、あるいは熱プレス成形法によって形成することができる。もしくは紫外線(UV)硬化性樹脂を用いて成形することができる。またレンズ部1は、基材シート4上に成形して形成してもよいし、粘着、接着などにより基材シート4に重合接合してもよい。
【0030】
レンズ部1は、表示画面側に凸に形成されたレンズ面1aが図中紙面奥行き方向に延ばされた凸シリンドリカルレンズを単位レンズとする、凸シリンドリカルレンズアレイからなる。すなわち、レンチキュラーレンズとして構成されている。
なお、レンズ面の形状は、必要な集光性能に応じて、周知の適宜のレンズ面形状、例えば、球面、楕円面などを採用してもよい。また、集光効率を向上するために、楕円面を基準面とし高次項により補正を加えた非球面形状としてもよい。
【0031】
レンズ部1の表示画面側には、反射型偏光分離フィルム8が設けられている。この反射型偏光分離フィルム8は、レンズ部1から出射された光のうち一方の偏光方向の直線偏光を透過するとともに他方の偏光方向の直線偏光を反射するように構成されている。これにより、光の利用効率を向上させ、しかも輝度ムラを抑制することができる。なお、本実施形態では、反射型偏光分離フィルム8が、他方の偏光方向の直線偏光を散乱反射するものとなっている。この反射型偏光分離フィルム8の一例としては、例えば複屈折性多層膜からなるものや、コレステリック液晶層及び位相差板からなるものなどが挙げられる。また、反射型偏光分離フィルムとは別に、光拡散性を有する光拡散層を設けるような構成としてもよい。
【0032】
ここで、接合層6は、反射部5が設けられたレンズ部1に対して拡散層7を積層一体化するためのものであり、拡散層7と反射部5とが接合層6を介して貼りあわされている。接合層6の構成材料としては、光透過性の粘着剤や接着剤等の接合材料が挙げられる。本実施形態の接合層6の主原料は、ポリカーボネートやアクリル、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー等の熱可塑性樹脂やUV硬化性樹脂に粘着付与剤、粘着調整剤等の添加剤を含んでいるものが好ましい。また、接合層6の構成材料中には、ガラスやシリカ等の無機フィラー、有機フィラー等のビーズや、ニ酸化チタンや硫酸バリウム等の拡散剤、反射剤が混合されている。
【0033】
接合層6となる接合材料の具体的な製造方法としては、上述した熱可塑性樹脂やUV硬化性樹脂の材料を拡散層7上に塗布した後、ビーズや拡散剤、フィラー、反射剤等の光学要素材料を直接付与する方法、光学要素材料をバインダーとなる樹脂とともに溶剤に溶かし、拡散層7上に直接塗布する方法が挙げられる。
【0034】
ところで、反射層と拡散層とを、接合層を介して貼り合わせた場合、特に光源点灯時に発生する熱の影響等により、反射層と拡散層とにおける熱膨張率差等に起因して、反射層と拡散層とを貼り合わせている接合層にせん断応力が作用する。そして、遮光シートと、レンズ層または拡散層との熱膨張率差が大きい場合には、接合層がせん断応力を吸収しきれず、接合層が剥がれたり、また接合層が押圧されて変形することで空気層の形状にばらつきが生じ、光学特性が劣化したり等の問題がある。
【0035】
そこで、本願の発明者は、上述した接合層6となる接合材料の有する貯蔵弾性率や損失弾性率、厚みを適切な値に設定することで、接合層6の剥がれの防止及び空気層5aの変形により生じる光学特性の劣化防止が可能であることを見出した。
【0036】
具体的には、接合材料(接合層6)が100℃の場合における貯蔵弾性率が5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であることが好ましい。ここで貯蔵弾性率とは、粘弾性体における弾性的な性質を表すものであり、粘弾性体に振動を与えた場合の変位と同位相成分の弾性率で表される。なお、動的な粘弾性を採用するのは、接合材料には復元力が存在するためである。そして、この復元力を示すパラメーターを動的な弾性率によって制御することが可能となる。
【0037】
なお接合材料の貯蔵弾性率は、接合材料に含まれるフィラーの添加量、架橋度、径、材質を調整することにより制御することが可能である。また、接合材料の主原料となる樹脂の酸価、分子量、ゲル分率により制御することも可能である。
【0038】
接合材料の貯蔵弾性率が5.0×10Paより小さいと、接合層6に作用するせん断応力を吸収することはできるが、反射層5bと拡散層7との貼り合わせ時や経時劣化に伴い、接合層6が反射層5bや拡散層7に押圧されて空気層5a内に侵入し、光学特性が劣化を抑制できない。一方、貯蔵弾性率が5.0×10Paより大きいと、接合層6が空気層5a内に侵入することを抑制することはできるが、接合層6に作用するせん断応力を吸収することができず、接合層6の剥がれが生じる虞がある。
【0039】
また接合層6の厚みは、5μm以上20μm以下に設定されていることが好ましい。接合層6の厚みが5μmより薄いと、接合層6に作用するせん断応力を吸収することができず、接合層6の剥がれが生じる虞がある。一方、接合層6の厚みが20μmより厚いと、接合層6が反射層5bや拡散層7に押圧されて空気層5a内に侵入し、光学特性が劣化を抑制できない。
【0040】
ここで、本願の発明者は、上述した本実施形態における光学シートと同様の構成からなり、貯蔵弾性率の異なる3種類の接合材料A〜Cを介して拡散層と反射部とを一体化した様々なサンプルシート(415mm×730mm)を作成し、これらサンプルシートをディスプレイ装置に用いて点灯試験を行った。本試験の試験条件は、接合材料A〜Cの厚みが3〜25μmの範囲で形成された各サンプルシートを、ディスプレイ装置(例えば、図1中符号100)に取り付け、光源を100時間点灯した後、画像表示部から映し出される画像の表示状態及び接合層の剥がれを評価した。
【0041】
以上の条件で測定を行った結果、以下の表1に示すような結果が得られた。
ここで、本点灯試験の評価基準を説明する。表1中剥がれ「○」は、上記試験において、サンプルシートの面上において接合層の剥がれがほとんどない状態を示し、「△」は、接合層の剥がれは発生するが、その程度は軽微であり、かつ進行性もない状態を示している。また剥がれ「×」は、サンプルシートの面上において剥がれが多く発生し、かつ進行性が認められる状態を示している。
また、光学特性「○」は、サンプルシートの面上において光学特性(輝度、半値角等)の経時劣化がほとんどない状態を示し、「△」は、光学特性の経時劣化が見受けられるものの、その程度は軽微であり、通常の用途において問題なく使用できる状態を示している。また光学特性「×」は、サンプルシートの面上において光学特性の経時劣化が比較的大きく、使用不可能な状態を示している。なお、表1に示す貯蔵弾性率は、各接合材料が100℃の場合における貯蔵弾性率を示している。
【0042】
【表1】

【0043】
表1に示すように、貯蔵弾性率の最も高い(5.0×10Pa)接合材料Aを用いた場合、光学特性については、接合材料Aの厚みに関わらず「○」あるいは「△」の評価が得られたものの、剥がれについては接合材料Aの厚みが20μm以下の範囲では「×」となる結果となった。
これは、上述したように光源の点灯時に発生する熱の影響であると考えられる。つまり、光源の点灯時に発生する熱の影響でサンプルシートが熱膨張し、接合材料Aにより接合された拡散層とレンズ部との熱膨張率差に起因して接合材料Aにせん断応力が作用する。この場合、接合材料Aの貯蔵弾性率が高すぎると、接合材料Aがせん断応力を吸収しきれなくなり、その結果、接合層の剥がれが生じるものと考えられる。
なお、貯蔵弾性率を5.0×10Pa以上、かつ厚みを25μm以下に設定すると、剥がれを防止することができなかった。このような理由からも、貯蔵弾性率の上限値は5.0×10Pa以下に設定することが好ましい。
【0044】
一方、貯蔵弾性率の最も低い(5.0×10Pa)接合材料Cを用いた場合、剥がれについては接合材料Aの厚みに関わらず「○」あるいは「△」の評価が得られたものの、光学特性については、接合材料Aの厚みが5μm以上の範囲では「×」となる結果となった。
これは、貯蔵弾性率を低く設定することで、接合材料Cに作用するせん断応力が吸収され易くなり、接合材料Cの剥がれを防止することができる一方で、貯蔵弾性率が低過ぎると接合材料Cが反射層等に押圧されて変形してしまうことが考えられる。押圧された接合材料Cは、空気層内に侵入し、これにより空気層が変形する。その結果、光源部から射出された光は、空気層において所望の屈折効果を得られなくなり、光学特性の劣化に繋がってしまう。
【0045】
これら接合材料A,Cに対して、貯蔵弾性率が1.0×10Paの接合材料Bを用いた場合、接合材料Bの厚みが3μm以上20μm以下の範囲では、接合層の剥がれ及び光学特性ともに「○」と、良好な結果が得られた。
【0046】
以上の結果より、接合材料の貯蔵弾性率・厚みに対する光学特性・剥がれの関係は、接合材料が100℃の場合における貯蔵弾性率が5.0×10以上1.0×10Pa以下、かつ接合層6の厚みが5μm以上に設定することで、接合層6の剥がれを確実に防止することができる。また、貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上5.0×10以下、かつ前記接合層の厚みが20μm以下に設定することで、光学特性を良好に維持することができる。
さらに、貯蔵弾性率を1.0×10Pa、かつ厚みが5μm以上20μ以下に設定することがより好ましい。これにより、光学特性の劣化防止と接合層6の剥がれ防止とを両立することができる。
【0047】
また、接合層6の剥がれの防止及び光学特性の劣化防止は、上述した貯蔵弾性率の設定の他に、接合材料の損失弾性率や損失正接の値を設定することによっても可能である。
具体的には、接合層6が100℃の場合における損失弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であることが好ましい。ここで損失弾性率とは、粘弾性体における粘性的な性質を表すものであり、粘弾性体に振動を与えた場合の速度と同位相成分の弾性率で表される。
【0048】
接合材料の損失弾性率の調整は、上述した貯蔵弾性率と同様に接合材料に含まれるフィラーの添加量、架橋度、径、材質、また接合材料の主原料となる樹脂の酸価、分子量、ゲル分率により制御することが可能である。
接合材料の損失弾性率が1.0×10Paより小さいと、接合層6に作用するせん断応力を吸収することはできるが、反射層5bと拡散層7との貼り合わせ時や経時劣化に伴い、接合層6が反射層5bや拡散層7に押圧されて空気層5a内に侵入し、光学特性が劣化を抑制できない。一方、損失弾性率が1.0×10Paより大きいと、接合層6が空気層5a内に侵入することを抑制することはできるが、接合層6に作用するせん断応力を吸収することができず、接合層6の剥がれが生じる虞がある。
【0049】
また、損失正接は、0.1以上0.4以下に設定することが好ましい。ここで、損失正接とは、上述した損失弾性率と貯蔵弾性率との比で表される。
接合材料の損失正接が0.1より小さいと、接合層6に作用するせん断応力を吸収することはできるが、反射層5bと拡散層7との貼り合わせ時や経時劣化に伴い、接合層6が反射層5bや拡散層7に押圧されて空気層5a内に侵入し、光学特性が劣化を抑制できない。一方、損失正接が0.4より大きいと、接合層6が空気層5a内に侵入することを抑制することはできるが、接合層6に作用するせん断応力を吸収することができず、接合層6の剥がれが生じる虞がある。
【0050】
したがって、上述の実施の形態によれば、接合層6が100℃の場合における貯蔵弾性率を1.0×10Pa以下、かつ接合層6の厚みを5μm以上に設定することで、反射層5bやレンズ部1から接合層6に作用するせん断応力が吸収されやすくなるため、接合層6の剥がれを防止することができる。
また、接合層6が100℃の場合における貯蔵弾性率を1.0×10Pa以上、かつ接合層6の厚みを20μm以下に設定することで、接合層6が変形して空気層5a内に侵入することを防ぐことができるため、空気層5aの変形防止が可能になる。その結果、光学特性を良好に維持することができる。
【0051】
このように、本実施形態によれば、光学特性の劣化防止及び接合層6の剥がれ防止が可能となり、拡散層7で拡散させた光に対して、所望の屈折効果を得ることができるため、レンズ部1に対して大きな入射角で入射する光を集光することができる。したがって、光の利用効率に優れ、しかも輝度ムラを抑制することができる。
【0052】
さらに、接合層6の損失弾性率を1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下に設定することで、光学特性の劣化防止及び接合層の剥がれ防止が可能になる。
また、接合層6の損失正接を0.1以上0.4以下に設定することで、光学特性の劣化防止及び接合層の剥がれ防止が可能になる。
【0053】
また、接合層6を反射部5と拡散層7との間に形成することで、レンズ部1と接合層6との間において、反射部5に備えた開口部を空気層5aとして機能させることができる。したがって、空気層5aの形成が容易になる。
また、レンズ部1及び反射部5、拡散層7を一体化させることで、光の利用効率を向上することができるとともに、輝度ムラを抑制することができる。
このように、本実施形態では光の利用効率に優れ、しかも輝度ムラを抑制できる光学シート21及びバックライトユニット23を備えているため、高性能なディスプレイ装置100を提供することができる。
【0054】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
図2は本発明におけるディスプレイ装置の他の構成を示す断面図である。
上述した実施形態では、反射部5と拡散層7とを接合層を介して接合されたディスプレイ装置100(図1参照)について説明したが、例えば図2に示すように、レンズ部1と反射部5とを接合層6を介して接合されたディスプレイ装置110を採用することも可能である。
【0055】
この場合、接合層の製造方法としては、PETやPC(ポリカーボネート)やアクリルからなる基材シート4に、上述したような熱可塑性樹脂やUV硬化性樹脂の材料を塗布し、その材料中に光学要素を溶かした後、乾燥することによって接合層が得られる。さらに、バインダーとなる樹脂とともに光学要素を溶剤に溶かし、基材シート4上に塗布・乾燥し、接合層6を形成する方法もある。なお、基材シート4への塗布方式、乾燥方式としては特に制限はない。
このように、接合層6をレンズ部1と反射部5との間に形成することで、拡散層7と接合層6との間において、反射部5に備えた開口部を空気層5aとして機能させることができる。したがって、空気層5aの形成が容易になる。
【0056】
また上述した実施形態では、ディスプレイ装置として、特にカラー表示の構成について説明しなかったが、液晶表示部と光学シートとの間などにカラーフィルタを設けるといった周知の構成を付加すれば、カラー表示を行うディスプレイ装置にも適用できることは言うまでもない。
さらに、本発明による光学シートは、レンチキュラーレンズシートに限定されることなく、プリズムシートやその他の単位レンズをアレイ状に配列したものに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態におけるディスプレイ装置の概略構成を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明におけるディスプレイ装置の他の構成を示す模式的な断面図である。
【図3】光学シートの透過光の光強度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
1…レンズ部(光学素子部) 5…反射部 5a…空気層(開口部) 5b…反射層 6…接合層 7…拡散層 8…反射型偏光分離フィルム 20a…光源 23…バックライトユニット 100,110…ディスプレイ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を拡散する拡散層と、
該拡散層の射出側に配置され、アレイ状の光学素子が配列された光学素子部と、
前記拡散層と前記光学素子部との間に形成され、前記光学素子のそれぞれに対する光の入射範囲を規制する開口部を備えた反射部と、を有する光学シートにおいて、
前記反射部は接合層を介して接合され、該接合層は100℃の場合における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下であり、かつ前記接合層の厚みが5μm以上に設定されていることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
光源からの光を拡散する拡散層と、
該拡散層の射出側に配置され、アレイ状の光学素子が配列された光学素子部と、
前記拡散層と前記光学素子部との間に形成され、前記光学素子のそれぞれに対する光の入射範囲を規制する開口部を備えた反射部と、を有する光学シートにおいて、
前記反射部は接合層を介して接合され、前記接合層は100℃の場合における貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であり、かつ前記接合層の厚みが20μm以下に設定されていることを特徴とする光学シート。
【請求項3】
前記接合層は、100℃の場合における損失弾性率が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光学シート。
【請求項4】
前記接合層は、前記反射部と前記拡散層との間に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項5】
前記接合層は、前記光学素子部と前記反射部との間に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項6】
前記光学素子部及び前記反射部、前記拡散層が一体化されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項7】
前記光学素子部の射出側に、反射型偏光分離フィルムを備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の光学シートと、
表示画像を規定する画像表示素子の背面側に配置された直下型光源と、を備えていることを特徴とするバックライトユニット。
【請求項9】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の光学シートと、
表示画像を規定する画像表示素子の背面側に配置されたエッジライト式光源及び導光板からなる面光源と、を備えていることを特徴とするバックライトユニット。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のバックライトユニットと、
画像単位での透過/遮光に応じて表示画像を規定する液晶表示素子からなる画像表示部と、を備えていることを特徴とするディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−122257(P2009−122257A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294340(P2007−294340)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】