説明

光学シート

【課題】光拡散層の拡散性能によってレンズシートの集光性能が阻害されることなく、十分な接着強度を有する、積層一体化された光学シートを提供する。
【解決手段】ディスプレイ用バックライトユニットにおける照明光路制御に用いられる光学シートであって、照明光の入射側から順に前記照明光を拡散させる光拡散層と、接着層と、前記照明光の出射側表面に複数の凸状レンズが配置されてなるレンズシートと、が積層一体化され、且つ前記接着層と向かい合う前記光拡散層の面に複数の凸部を備え、複数の凸部は前記接着層と嵌合する複数の嵌合部を有すると共に、前記光拡散層の光入射側から前記嵌合部を見た場合、前記嵌合部の面積と、前記光拡散層の面積との比率が1%以上、15%未満であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に代表されるディスプレイユニットには、通常、片側、もしくは両側に設置された光源からの光をディスプレイ面上へ均一に導くため、裏面にパターン印刷、ないしはパターン形状が形成された導光板と、導光板上に重ねられる光拡散シート、更にその上に重ねられるレンズシートが使用されている。
【0003】
その際、上記光拡散シートは光を拡散させることで、導光板裏面のパターンを表示画面側から視認されることを防止する目的で使用される。また、レンズシートは光源で消費される電力を低減させるため、光を使用者(ディスプレイを観察する者)の視覚方向へ集光させる目的で使用されている。
【0004】
しかしながら、光拡散シートの有する光拡散性能と、光拡散シートの上に重ねられるレンズシートの有する集光性とは互いに相反する性能であるため、バックライトの組み立て工程が煩雑になるという問題を有していた。
【0005】
この問題を解決するために光拡散性と集光性を兼ね備えた多層構成、もしくは光拡散粒子が添加された単層のレンズシートの試みがなされてきている。(例えば、特許文献1、2参照)
【0006】
しかし、上記のような方法を用いてもレンズシートの表面に施された単位レンズの集光性能が設計の意図したとおりに発現し難く、パネルからの光が使用者の視覚方向以外にも多く拡散してしまうことによって集光性が損なわれるという問題点があった。
【特許文献1】特許第3732253号
【特許文献2】特開平09−304606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、光拡散層の持つ光拡散性能がレンズシートの持つ集光性を阻害することなく、十分な接着強度を有する積層一体化された光学シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記(1)、(2)に記載の本発明により達成される。
(1)ディスプレイ用バックライトユニットにおける照明光路制御に用いられる光学シートであって、
照明光の入射側から順に前記照明光を拡散させる光拡散層と、接着層と、前記照明光の出射側表面に複数の凸状レンズが配置されてなるレンズシートと、が積層一体化され、且つ前記接着層と向かい合う前記光拡散層の面に複数の凸部を備え、複数の凸部は前記接着層と嵌合する複数の嵌合部を有すると共に、前記光拡散層の光入射側から前記嵌合部を見た場合、前記嵌合部の面積と、前記光拡散層の面積との比率が1%以上、15%未満であることを特徴とする光学シート。
(2)前記光拡散層は、熱可塑性樹脂に光拡散性粒子を含有した樹脂組成物である請求項1に記載の光学シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光拡散性能によって集光性が阻害されることのなく、十分な接着強度を有する積層一体化された光学シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の光学シートは、照明光の入射側から順に前記照明光を拡散させる光拡散層と、接着層と、前記照明光の出射側表面に複数の凸状レンズが配置されてなるレンズシートと、が積層一体化され、且つ接着層と向かい合う前記光拡散層の面に複数の凸部を備え、複数の凸部は前記接着層と嵌合する複数の嵌合部を有すると共に、前記光拡散層の光入射側から前記嵌合部を見た場合、前記嵌合部の面積と、前記光拡散層の面積との比率が1%以上、15%未満であることを特徴とする。以下、図面を用いて本発明の光学シートを詳細に説明する。
図面1は本発明の光学シートの断面図である。図2は、本発明の光学シートの光拡散層の光入射側から見た平面図である。
【0011】
本発明の光学シート10に用いられる光拡散層1は、熱可塑性樹脂に光拡散粒子を含有させた樹脂組成物であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等を単独で、あるいはこれらの混合体や共重合体を用いることができる。
【0012】
上記光拡散粒子としては特に限定されないが、例えば架橋アクリル樹脂、メラミン樹脂、有機シリコーン樹脂、アクリル−スチレン共重合体、有機シリコーン−アクリル−スチレン共重合体等の有機系粒子、及び炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズ等の無機系粒子が挙げられ、これらを単独で使用しても、混合させて使用しても良い。光拡散粒子の平均粒子径は、0.5μm以上、40μm以下のものが好ましい。
【0013】
更に、本発明の光学シート10に用いられる光拡散層1は上記接着層3と向かい合う表面に複数の凸部2を備えたことを特徴とする。
複数の凸部を備えることで光拡散層1と接着層3との間に間隙を確保することができる。光拡散層1から嵌合部6を経由し接着層3、レンズシート5を通過する光はほぼ同一の屈折率物質中を進むため、凸状レンズ4を通過した際に集光効果が発現しない。
一方で嵌合部6を経ず間隙部を通過する光は、極低屈折率である空気中を経由することになるため、凸状レンズ4を通過した際に優れた集光効果を得ることができる。
上記凸部2の形状に関しては特に限定されないが、半円柱状、四角柱状、半円三角柱状、半円球状、円錐状、三角錐状、四角錘状等が有効である。
光拡散層1表面への凸部2形状を形成させる方法としては例えば熱プレス成形、溶融押出成形によるロール転写、射出成形による金型転写等の方法を取ることができる。
【0014】
上記光拡散層1に形成された凸部2の高さは0.005mm以上、0.07mm未満でであることが好ましい。更に好ましくは0.01mm以上、0.06mm未満である。凸部2の高さを上記範囲とすることで特に拡散層への安定した凸部転写性を確保できる。
上記光拡散層1の上記凸部2を含んだ厚みは、0.1mm以上、3mm未満であることが好ましい。更に好ましくは0.3mm以上、2.5mm未満である。凸部2を含む光拡散層1の厚みを上記範囲とすることで特に積層一体化された光学シートのたわみや反りを低減することができる。
【0015】
本発明の光学シート1に用いられる接着層3に使用される接着剤は、特に限定されないが、例えば感圧粘着剤、感熱接着剤、湿気硬化性樹脂層、紫外線硬化性樹脂等が有効である。上記接着層3の厚みは、0.001mm以上、0.02mm未満であることが好ましい。更に好ましくは0.004mm以上、0.017mm未満である。接着層3の高さを上記範囲とすることで特に実用上十分な接着性が確保できる。
【0016】
本発明の光学シート1に用いられるレンズシート5は、光出射側の表面に複数の凸状レンズ4が配置されてなる透明熱可塑性樹脂シートであり、このレンズシート5に使用される樹脂としては透明熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等を単独、あるいはこれらの混合体あるいは共重合体を用いることができる。
【0017】
レンズシート5に形成される凸状レンズ4の形状はとしては特に限定されないが、例えば球面レンズ、非球面レンズ、半円柱状のレンチキュラーレンズないしは三角柱形状のプリズムレンズ等を用いることができる。
【0018】
凸状レンズ4のレンズシート5への形成方法は、例えば熱プレス成形、溶融押出成形によるロール転写、射出成形による金型転写等の方法で樹脂シート基材表面に形成させても良いし、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂を樹脂シート表面にストライプ状あるいはドット状に樹脂シートに塗工することで形成しても良い。
【0019】
上記レンズシート5に形成される凸状レンズ4の高さは特に限定されないが、0.005mm以上、0.05mm未満が好ましい。上記凸状レンズ4を含むレンズシート5の厚みは特に限定されないが、0.05mm以上、0.3mm未満であることが好ましい。
【0020】
本発明の光学シート10に用いられる光拡散層1と、レンズシート5とを接着層3を介して積層一体化させる方法としては特に規定するものではない。光拡散層1とレンズシート5とをあらかじめ別々に作製して接着する、あるいは接着剤を塗布し貼り合わしても良いし、光拡散層1を溶融押出法で製造しながらあらかじめ接着層3を塗工したレンズシート5をラミネートする方法を取っても良い。
ただし、積層一体化の際には光拡散層1の凸部2形成面と接着層3と、レンズシート5の凸状レンズ4が形成された面の反対面と接着層3とをこの順番に積層一体化させることが好ましい。
【0021】
更に積層一体化させた際、光拡散層1に形成された複数の凸部2と、粘着層3との嵌合部位6を光入射側から見た場合、嵌合部位6の面積と、光拡散層1の面積との比率が1%以上、15%未満であることが好ましい。更に好ましくは3%以上、12%未満である。嵌合部位6の面積と、光拡散層1の面積との比率を上記の範囲とすることで、レンズシートによる集光性能が阻害されることがなくなると共に光拡散層1と接着層3との接着性を十分なものとすることができる。
【0022】
以下に、本発明を実施するための代表的な形態を実施例にて示すが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
<実施例1>
接着層3の厚みを0.005mmとすることによって、光出射面側から見た場合の嵌合部6の面積と光拡散層1との面積の比率が5%の光学シートを得た。
【0024】
<実施例2>
接着層3の厚みを0.01mmとすることによって、光出射面側から見た場合の嵌合部6の面積と光拡散層1との面積の比率が8%の光学シートを得た。
【0025】
<実施例3>
接着層3の厚みを0.015mmとすることによって、光出射面側から見た場合の嵌合部6の面積と光拡散層1との面積の比率が10%の光学シートを得た。
【0026】
<比較例1>
接着層3の厚みを0.0005mmとすることによって、光出射面側から見た場合の嵌合部6の面積と光拡散層1との面積の比率が0.5%の光学シートを得た。
【0027】
<比較例2>
接着層3の厚みを0.02mmとすることによって、光出射面側から見た場合の嵌合部6の面積と光拡散層1との面積の比率が20%の光学シートを得た。
【0028】
<比較例3>
接着層3を用いず、光拡散層1とレンズシート5を単に重ね合わせて光学シートを得た。
【0029】
得られた光学シートについて、次のように集光性、および光拡散層1と接着層3との接着性を評価した。
【0030】
<集光性>
導光板の両端に光源をもつバックライトユニットの導光板上に光学シートを設置し、輝度計(ハイランド社製 RISA−CD7)を用いその正面輝度を測定した。
【0031】
<接着性>
光学シートを25mm幅に裁断し、オートグラフ引張試験機(島津製作所社製 AG−100kNG)にて片側のチャックにレンズシート5と接着層3とを、他方に光拡散層1をチャックし、180°引き剥がし接着力を測定した。
引き剥がしスピードは300mm/minとした。
【0032】
【表1】

【0033】
表1の結果から明らかなように、本発明に係る実施例1〜3においては、接着層を有さない比較例3や嵌合部と光拡散層との面積比が本発明の規定未満の比較例1と比較してもほぼ同等の集光性を有していた。また、接着性においても優れたものであり、集光性と接着強度を有する光学シートが得られたことがわかる。これに対し、嵌合部と光拡散層との面積比が本発明の規定未満の比較例1においては接着性が不十分であり、嵌合部と光拡散層との面積比が本発明の規定以上の比較例2においてはと集光性に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施例を光拡散層の光入射側から見た平面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 光拡散層
2 凸部
3 接着層
4 凸状レンズ
5 レンズシート
6 嵌合部
10 光シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ用バックライトユニットにおける照明光路制御に用いられる光学シートであって、
照明光の入射側から順に前記照明光を拡散させる光拡散層と、接着層と、前記照明光の出射側表面に複数の凸状レンズが配置されてなるレンズシートと、が積層一体化され、且つ前記接着層と向かい合う前記光拡散層の面に複数の凸部を備え、複数の凸部は前記接着層と嵌合する複数の嵌合部を有すると共に、前記光拡散層の光入射側から前記嵌合部を見た場合、前記嵌合部の面積と、前記光拡散層の面積との比率が1%以上、15%未満であることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記光拡散層は、熱可塑性樹脂に光拡散性粒子を含有した樹脂組成物である請求項1に記載の光学シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−289444(P2009−289444A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137910(P2008−137910)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】