説明

光学フィルム、偏光板、液晶表示装置及び光学フィルムの製造方法

【課題】連続生産に適した、ディスコティック液晶の逆ハイブリッド配向を固定した光学異方性層を有する光学フィルムの提供。
【解決手段】支持体と、ラビング処理された配向膜と、光学異方性層とをこの順で有する光学フィルムであって、前記光学異方性層が、式(I)で表されるディスコティック液晶化合物、ピリジニウム化合物、及びトリアジン環基を含む化合物を含有する組成物から形成され、前記ディスコティック液晶化合物の分子が、配向膜側チルト角が空気界面側チルト角より大きい配向状態に固定され、及び前記光学異方性層の遅相軸方向が、前記配向膜のラビング方向と直交する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の光学補償等に有用な光学フィルム、並びにそれを有する偏光板及び液晶表示装置に関する。また、本発明は、光学フィルムの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスコティック液晶分子のハイブリッド配向状態を固定して形成された光学異方性層を、TNモード液晶表示装置の光学補償に利用することが提案されている。近年、高いΔn及び低い波長分散性を有するディスコティック液晶化合物が種々開発され、これらの化合物の光学補償部材への利用が期待されている(例えば、特許文献1及び2)。
【0003】
ここで「ディスコティック液晶分子のハイブリッド配向」とは、ディスコティック液晶分子の円盤面と層面とのなす角度(以下、「チルト角」という)が、層厚み方向において変化(増加又は減少)している配向状態である。当該光学異方性層は、一般的には、配向膜の表面上でディスコティック液晶化合物を含有する組成物を配向させて形成されるので、該層には配向膜界面と空気界面とが存在する。ハイブリッド配向には、前記チルト角が、配向膜界面側で大きく、空気界面側で小さくなっている態様(即ち、チルト角が配向膜界面から空気界面に向けて減少している態様、以下、「逆ハイブリッド配向」という)、及び前記チルト角が、配向膜界面側で小さく、空気界面側で大きくなっている態様(即ち、チルト角が配向膜界面から空気界面に向けて増加している態様、以下「正ハイブリッド配向」という)の2態様がある。従来、ディスコティック液晶分子を用いた光学補償フィルムとしては、後者の態様、即ち、正ハイブリッド配向、が一般的である。
【0004】
ディスコティック液晶化合物の逆ハイブリッド配向を固定した光学異方性層を有する光学フィルムについても、種々提案されている(例えば、特許文献3及び4)。ところで、配向膜のラビング処理面上で、ディスコティック液晶化合物の分子を、その円盤面を配向膜面に対して垂直に配向(以下、「垂直配向」という)させると、ディスコティック液晶分子は、ラビング処理によって形成された溝に、その円盤面をはめ込んだ状態で垂直配向するのが一般的である。よって、従来実現している逆ハイブリッド配向状態では、配向膜界面で垂直配向しているディスコティック液晶分子は、その円盤面を、ラビング方向に平行にして垂直配向しているものがほとんどである。その様な、配向膜面界面でディスコティック液晶分子がその円盤面をラビング方向に平行にして配向している、上記従来の逆ハイブリッド配向を固定した光学異方性層では、遅相軸は、ラビング方向に対して平行方向に発現することになる。一方、連続生産では、長尺フィルムの搬送方向に沿ってラビング処理が実施されるのが一般的である。よって、上記逆ハイブリッド配向を固定した光学異方性層を、長尺のフィルム状に連続的に生産する場合は、その遅相軸は、長手方向に対して平行になっている。しかし、かかる特性の光学異方性層を連続的に長尺状に生産しても、その後、長尺状の偏光子と、長手方向を一致させて貼合することはできず、そのことが、実用化の弊害となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−76992号公報
【特許文献2】特開2006−2220号公報
【特許文献3】特開2006−113500号公報
【特許文献4】特開2002−122736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した通り、従来、ディスコティック液晶分子を用いた光学補償フィルムとしては、正ハイブリッド配向を固定して形成した光学異方性層を有する光学補償フィルムが一般的である。本発明者が鋭意検討した結果、正ハイブリッド配向状態の液晶分子の配向は、ミクロレベルでみると若干の乱れがあり、このミクロレベルの配向乱れは、光学異方性層のミクロ配向軸ズレとなって現れ、光学補償部材として液晶表示装置に用いた場合に、正面コントラスト(CR)を低下させる一因となることがわかった。特に近年では、正面コントラストの上昇が顕著であり、従来は問題視されていなかった正面CRの低下原因に対しても、解決することが求められている。一方、従来の逆ブリッド配向を利用する態様には、上記した通り、製造上の問題点が存在する。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、現在の連続生産に適し、製造ラインを大幅に変更することなく生産可能な、ディスコティック液晶の逆ハイブリッド配向を固定した光学異方性層を有する光学フィルム、並びにそれを有する偏光板及び液晶表示装置を提供することを課題とする。
また、本発明は、ディスコティック液晶のハイブリッド配向状態を固定した光学異方性層の、ミクロな配向乱れ、それによって生じるミクロ配向軸ズレを軽減することを課題とする。
また、本発明は、ディスコティック液晶のハイブリッド配向状態を固定した光学異方性層を有する光学フィルムに起因する正面コントラストの低下を軽減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 支持体と、ラビング処理された配向膜と、光学異方性層とをこの順で有する光学フィルムであって、
前記配向膜が、変性又は未変性ポリビニルアルコールを主成分として含有する膜であり、
前記光学異方性層が、下記一般式(I)で表されるディスコティック液晶化合物の少なくとも1種、下記一般式(II)で表されるピリジニウム化合物の少なくとも1種、及び下記一般式(III)で表されるトリアジン環基を含む化合物の少なくとも1種を含有する組成物から形成され、
前記光学異方性層中、前記ディスコティック液晶化合物の分子が、配向膜側チルト角が、空気界面側チルト角より大きい配向状態に固定され、及び
前記光学異方性層の遅相軸方向が、前記配向膜のラビング方向と直交することを特徴とする光学フィルム:
【0008】
【化1】

式中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表し;
1、L2及びL3は、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し;
1、H2及びH3は、それぞれ独立に一般式(I−A):
【化2】

(一般式(I−A)中、YA1及びYA2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;
XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;
*は上記一般式(I)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;
**は上記一般式(I)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。)
又は一般式(I−B):
【化3】

(一般式(I−B)中、YB1及びYB2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;
XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;
*は上記一般式(I)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;
**は上記一般式(I)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。)を表し;
1、R2及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(I−R):
【0009】
一般式(I−R)
*−(−L21−Q2n1−L22−L23−Q1
(一般式(I−R)中、
*は一般式(I)におけるH1〜H3側と結合する位置を表し;
21は単結合又は二価の連結基を表し;
2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基を表し;
n1は、0〜4の整数を表し、L22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、*−N(R)−、**−CH2−、**−CH=CH−又は**−C≡C−を表し、ここで、**はQ2側と結合する位置を表し;
22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、*−N(R101)−、**−CH2−、**−CH=CH−又は**−C≡C−を表し、R101は、炭素数1〜5のアルキル基を表し、**はQ2側と結合する位置を表し;
23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及びC≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し;
1は重合性基又は水素原子を表す)
を表す;
【化4】

式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基であり;R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基であり;Xはアニオンであり;Y22及びY23はそれぞれ、置換されていてもよい5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基であり;Z21はハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基であり;pは1〜10の数であり;並びにmは1又は2である;
【化5】

式中、R31、R32及びR33は、末端にCF3基を有するアルキル基又はアルコキシ基を表し、但し、アルキル基(アルコキシ基中のアルキル基も含む)中の隣接していない2以上の炭素原子は、酸素原子又は硫黄原子に置換されていてもよい;X31、X32及びX33は、アルキレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−、−SO2−及びそれらの群より選ばれる二価の連結基を少なくとも二つ組み合わせた基を表し;m31、m32及びm33はそれぞれ、1〜5の数である。
【0010】
[2] 前記ピリジニウム化合物の添加量が、ディスコティック液晶化合物100質量部に対し、0.5〜3質量部である[1]の光学フィルム。
[3] 前記トリアジン環基を含む化合物の添加量が、ディスコティック液晶化合物100質量部に対し、0.2〜0.4質量部である[1]の光学フィルム。
[4] 前記ピリジニウム化合物が、下記式(II')で表される化合物である[1]〜[3]のいずれかの光学フィルム:
【化6】

式(II’)中、式(II)と同一の符号は同一の意義であり;L25はL24と同義であり;R23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12のアルキル基を表し、n23は0〜4、n24は1〜4、及びn25は0〜4を表す。
【0011】
[5] 式(III)中、R31、R32及びR33がそれぞれ、下記式で表される基である[1]〜[4]のいずれかの光学フィルム:
−O(Cn2nn1O(Cm2mm1−Ck2k+1
式中、n及びmはそれぞれ1〜3であり、n1及びm1はそれぞれ1〜3であり、kは1〜10である。
[6] 変性又は未変性ポリビニルアルコールを主成分として含有する配向膜のラビング処理面上で、一般式(I)で表されるディスコティック液晶化合物の少なくとも1種、一般式(II)で表されるピリジニウム化合物の少なくとも1種、及び一般式(III)で表されるトリアジン環基を含む化合物の少なくとも1種を含む組成物を80〜90℃で加熱して、配向させる配向工程、及び
前記組成物の硬化反応を進行させて、その配向状態を固定し、光学異方性層を形成する硬化工程、
を含む[1]〜[5]のいずれかの光学フィルムの製造方法。
[7] 偏光子と、[1]〜[5]のいずれかの光学フィルムを少なくとも有する偏光板。
[8] [7]の偏光板を少なくとも有する液晶表示装置。
[9] TNモードである[8]の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発明者が鋭意検討した結果、ディスコティック液晶分子のミクロな配向乱れ、それによって生じるミクロ配向軸ズレは、前記2態様のうち、逆ハイブリッド配向状態にすることで大きく改善されることが分かった。
【0013】
本発明によれば、現在の連続生産に適し、製造ラインを大幅に変更することなく生産可能な、ディスコティック液晶の逆ハイブリッド配向を固定した光学異方性層を有する光学フィルム、並びにそれを有する偏光板及び液晶表示装置を提供することができる。
また、本発明によれば、ディスコティック液晶のハイブリッド配向状態を固定した光学異方性層の、ミクロな配向乱れ、それによって生じるミクロ配向軸ズレを軽減することができる。
また、本発明によれば、ディスコティック液晶のハイブリッド配向状態を固定した光学異方性層を有する光学フィルムに起因する正面コントラストの低下を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光学フィルムの一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本実施形態の説明において、「平行」あるいは「直交」とは、厳密な角度±5°未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。
また、角度について、「+」は時計周り方向を意味し、「−」は反時計周り方向を意味するものとする。
また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味し、更に屈折率の測定波長は、特別な記述がない限り、可視光域(λ=550nm)での値である。
【0016】
また、本実施形態の説明において「偏光板」とは、特別な記述がない限り、長尺の偏光板、及び液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された偏光板の両者を含む意味で用いている。なお、ここでいう「裁断」には「打ち抜き」及び「切り出し」等も含むものとする。また、本実施形態の説明では、「偏光子」と「偏光板」とを区別して用いるが、「偏光板」は「偏光子」の少なくとも片面に該偏光子を保護する透明保護膜を有する積層体のことを意味するものとする。
【0017】
また、本実施形態の説明において「分子対称軸」とは、分子が回転対称軸を有する場合は、当該対称軸を指すが、厳密な意味で、分子が回転対称性であることを要求するものではない。一般的に、ディスコティック液晶性化合物において、分子対称軸は、円盤面の中心を貫く円盤面に対して垂直な軸と一致し、棒状液晶性化合物において、分子対称軸は、分子の長軸と一致する。
【0018】
また、本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。なお、この測定方法は、後述する光学異方性層中のディスコティック液晶分子の配向膜側の平均チルト角、その反対側の平均チルト角の測定においても一部利用される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(III)よりRthを算出することもできる。
【0019】
【数1】

なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d・・・・・・・・・・・式(III)
【0020】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0021】
(チルト角の測定)
ディスコティック液晶性化合物を配向させた光学異方性層において、光学異方性層の一方の面におけるチルト角(ディスコティック液晶性化合物における物理的な対象軸が光学異方性層の界面となす角度をチルト角とする)θ1及び他方の面のチルト角θ2を、直接的にかつ正確に測定することは困難である。そこで本明細書においては、θ1及びθ2は、以下の手法で算出する。本手法は本発明の実際の配向状態を正確に表現していないが、光学フィルムのもつ一部の光学特性の相対関係を表す手段として有効である。
本手法では算出を容易にすべく、下記の2点を仮定し、光学異方性層の2つの界面におけるチルト角とする。
1.光学異方性層はディスコティック液晶性化合物を含む層で構成された多層体と仮定する。さらに、それを構成する最小単位の層(ディスコティック液晶性化合物のチルト角は該層内において一様と仮定)は光学的に一軸と仮定する。
2.各層のチルト角は光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化すると仮定する。
具体的な算出法は下記のとおりである。
(1)各層のチルト角が光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化する面内で、光学異方性層への測定光の入射角を変化させ、3つ以上の測定角でレターデーション値を測定する。測定及び計算を簡便にするためには、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、−40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定することが好ましい。このような測定は、KOBRA−21ADH及びKOBRA−WR(王子計測器(株)製)、透過型のエリプソメータAEP−100((株)島津製作所製)、M150及びM520(日本分光(株)製)、ABR10A(ユニオプト(株)製)で行うことができる。
(2)上記のモデルにおいて、各層の常光の屈折率をno、異常光の屈折率をne(neは各々すべての層において同じ値、noも同様とする)、及び多層体全体の厚みをdとする。さらに各層におけるチルト方向とその層の一軸の光軸方向とは一致するとの仮定の元に、光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1及び他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1及びθ2を算出する。
ここで、no及びneは文献値、カタログ値等の既知の値を用いることができる。値が未知の場合はアッベ屈折計を用いて測定することもできる。光学異方性層の厚みは、光学干渉膜厚計、走査型電子顕微鏡の断面写真等により測定数することができる。
【0022】
1.光学フィルム
本発明は、透明支持体、配向膜、及び光学異方性層を有する光学フィルムに関する。本発明の光学フィルムは、前記光学異方性層が、後述する所定のディスコティック液晶化合物、所定のピリジニウム化合物、及び所定のトリアジン環基を含む化合物を含有する組成物から形成され、
前記光学異方性層中、前記ディスコティック液晶化合物の分子が、配向膜側チルト角が、空気界面側チルト角より大きい配向状態に固定され、及び
前記光学異方性層の遅相軸方向が、前記配向膜のラビング方向と直交することを特徴とする。
【0023】
図1に本発明の光学フィルムの一例の断面模式図を示す。
図1に示す光学フィルムは、ポリマーフィルム等からなる支持体1、配向膜2、及び光学異方性層3を有する。光学異方性層3中、ディスコティック液晶分子LCは、配向膜2との界面A近傍において、その円盤面と、配向膜2の表面とのなす角(チルト角)βaで配向している。また、光学異方性層3中、ディスコティック液晶分子LCは、空気界面Bの近傍において、その円盤面と、層面Bとのなす角(チルト角)βbで配向している。配向膜界面Aのチルト角βaと、空気界面Bのチルト角βbとは、βb<βa、の関係が成立していて、即ち、ディスコティック液晶分子LCは、逆ハイブリッド配向状態に固定されている。
逆ハイブリッド配向状態は、正ハイブリッド配向状態(βa<βb)よりも、液晶分子LCの配向乱れによるミクロ配向軸ズレを軽減できる。ミクロ配向軸ズレは、光学補償部材として液晶表示装置に用いた場合に、正面コントラストの低下の一因となる。本発明の光学フィルムは、正面コントラストを低下させることなく、光学補償に寄与するという利点がある。
【0024】
図1に示す通り、配向膜2の表面にはラビング方向Rに沿って、ラビング処理が施されている。従来、配向膜のラビング処理面でディスコティック液晶化合物の分子を配向させると、該分子は、ラビング方向に対して、円盤面を平行にして配向するのが一般的である。しかし、本発明では、所定の液晶化合物の分子を、所定の2種の添加剤の存在下で配向させているので、配向膜界面A近傍のディスコティック液晶分子LCは、その円盤面を、ラビング方向Rに対して直交にしてチルト角βaで配向している。その結果、光学異方性層の遅相軸Sは、ラビング方向Rに対して直交した方向に発現する。
連続生産においては、長尺のポリマーフィルムである支持体を搬送しつつ、長手方向にラビング処理が施される。即ち、ラビング方向Rは、搬送方向(フィルムの長手方向)と一致する。これに連続的に、光学異方性層を形成すると、本発明では、図1に示す通り、光学異方性層の遅相軸Sがラビング方向Rと直交する方向に発現する。その結果、長尺状の偏光膜と一体化する際に、長手方向を一致させたままで貼り合せることができる。従来の逆ハイブリッドでは、配向膜界面において、ディスコティック液晶分子が、円盤面をラビング方向に平行にして配向してしまうため、連続生産に適さず、実用化の弊害になっていたが、本発明ではかかる弊害を解決することができる。
【0025】
本発明の光学フィルムの一例では、配向膜界面におけるディスコティック液晶分子のチルト角βaは、90〜70°(好ましくは90〜80°)であり;一方、空気界面におけるチルト角βbは、0〜30°(好ましくは0〜20°)である。それぞれの界面のチルト角が前記範囲である逆ハイブリッド配向は、TNモード液晶表示装置の視野角補償に適する。
【0026】
以下、本発明の光学フィルムの製造に用いられる材料及び製造方法について詳細に説明する。
(1)光学異方性層
本発明の光学フィルムは、下記一般式(I)で表されるディスコティック液晶化合物の少なくとも1種、下記一般式(II)で表されるピリジニウム化合物の少なくとも1種、及び下記一般式(III)で表されるトリアジン環基を含む化合物の少なくとも1種を含有する組成物から形成される。
(1)−1 一般式(I)で表されるディスコティック液晶化合物
【化7】

【0027】
式中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表す。
【0028】
11、Y12およびY13がメチンの場合、メチンの水素原子は置換基で置き換わってもよい。メチンが有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子およびシアノ基を好ましい例として挙げることができる。これらの置換基の中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がさらに好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素数2〜12アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がより好ましい。
11、Y12およびY13は、化合物の合成の容易さおよびコストの点において、いずれもメチンであることがより好ましく、メチンは無置換であることがさらに好ましい。
【0029】
1、L2及びL3は、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表す。
1、L2およびL3が二価の連結基の場合、それぞれ独立に、−O−,−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−、−C≡C−、二価の環状基およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0030】
1、L2およびL3における二価の環状基とは、少なくとも1種類の環状構造を有する二価の連結基(以下、環状基と呼ぶことがある)である。環状基は5員環、6員環、または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。環状基に含まれる環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環およびナフタレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環およびピリミジン環が好ましい例として挙げられる。環状基は、芳香族環および複素環がより好ましい。なお、本発明における2価の環状基は、環状構造のみ(但し、置換基を含む)からなる2価の連結基であることがより好ましい(以下、同じ)。
【0031】
1、L2およびL3で表される二価の環状基のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイル基およびナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。
【0032】
1、L2およびL3で表される二価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数が2〜16アルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
【0033】
1、L2およびL3としては、単結合、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−二価の環状基−、*−O−CO−二価の環状基−、*−CO−O−二価の環状基−、*−CH=CH−二価の環状基−、*−C≡C−二価の環状基−、*−二価の環状基−O−CO−、*−二価の環状基−CO−O−、*−二価の環状基−CH=CH−および*−二価の環状基−C≡C−が好ましい。特に、単結合、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−CH=CH−二価の環状基−および*−C≡C−二価の環状基−が好ましく、単結合が最も好ましい。ここで、*は一般式(I)中のY11、Y12およびY13を含む6員環側に結合する位置を表す。
【0034】
一般式(I)中、H1、H2及びH3は、それぞれ独立に一般式(I−A)又は(I−B)の基を表す。
【0035】
【化8】

一般式(I−A)中、YA1及びYA2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;
XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;
*は上記一般式(I)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;
**は上記一般式(I)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。
【0036】
【化9】

一般式(I−B)中、YB1及びYB2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;
XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;
*は上記一般式(I)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;
**は上記一般式(I)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。
【0037】
一般式(I)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(I−R)を表す。
【0038】
一般式(I−R)
*−(−L21−Q2n1−L22−L23−Q1
一般式(I−R)中、*は、一般式(I)におけるH1〜H3側と結合する位置を表す。
21は単結合又は二価の連結基を表す。L21が二価の連結基の場合、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0039】
21は単結合、***−O−CO−、***−CO−O−、***−CH=CH−および***−C≡C−(ここで、***は一般式(DI−R)中の*側を表す)のいずれかが好ましく、単結合がより好ましい。
【0040】
2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す。このような環状基としては、5員環、6員環、または7員環を有する環状基が好ましく、5員環または6員環を有する環状基がより好ましく、6員環を有する環状基がさらに好ましい。上記環状基に含まれる環状構造は、縮合環であっても良い。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環およびピリミジン環が好ましい例として挙げられる。
【0041】
上記Q2のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−1,6−ジイル基、ナフタレン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイルナフタレン−2,7−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。これらの中でも、特に、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基および1,4−シクロへキシレン基が好ましい。
【0042】
2は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0043】
n1は、0〜4の整数を表す。n1としては、1〜3の整数が好ましく、1もしくは2がさらに好ましい。
【0044】
22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−または**−C≡C−を表し、**はQ2側と結合する位置を表す。
22は、好ましくは、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−CH2−、**−CH=CH−、**−C≡C−であり、より好ましくは、**−O−、**−O−CO−、**−O−CO−O−、**−CH2−である。L22が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0045】
23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。これらの置換基に置換されることにより、本発明の液晶性化合物から液晶性組成物を調製する際に、使用する溶媒に対する溶解性を向上させることができる。
【0046】
23は、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。L23は、炭素原子を1〜20個含有することが好ましく、炭素原子を2〜14個を含有することがより好ましい。さらに、L23は、−CH2−を1〜16個含有することが好ましく、−CH2−を2〜12個含有することがさらに好ましい。
【0047】
1は重合性基または水素原子を表す。本発明の液晶性化合物を光学補償フィルムのような位相差の大きさが熱により変化しないものが好ましい光学フィルム等に用いる場合には、Q1は重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0048】
【化10】

【0049】
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基が好ましい。
【0050】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0051】
【化11】

【0052】
式(M−3)、(M−4)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、水素原子またはメチル基が好ましい。
上記式(M−1)〜(M−6)の中、(M−1)または(M−2)が好ましく、(M−1)がより好ましい。
【0053】
開環重合性基は、環状エーテル基が好ましく、エポキシ基またはオキセタニル基がより好ましい。
【0054】
前記式(I)の化合物の中でも、下記一般式(I’)で表される化合物がより好ましい。
【0055】
【化12】

【0056】
一般式(DI)中、Y11、Y12およびY13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、メチンが好ましく、メチンは無置換であるのが好ましい。
【0057】
11、R12およびR13は、それぞれ独立に下記一般式(I’−A)、下記一般式(I’−B)または下記一般式(I’−C)を表す。固有複屈折の波長分散性を小さくしようとする場合、一般式(I’−A)または一般式(I’−C)が好ましく、一般式(I’−A)がより好ましい。R11、R12およびR13は、R11=R12=R13であることが好ましい。
【0058】
【化13】

【0059】
一般式(I’−A)中、A11、A12、A13、A14、A15およびA16は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
11およびA12は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
13、A14、A15およびA16は、それらのうち、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。さらに、メチンは無置換であることが好ましい。
11、A12、A13、A14、A15またはA16がメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
1は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0060】
【化14】

【0061】
一般式(I’−B)中、A21、A22、A23、A24、A25およびA26は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
21およびA22は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
23、A24、A25およびA26は、それらのうち、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。
21、A22、A23、A24、A25またはA26がメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
2は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0062】
【化15】

【0063】
一般式(I’−C)中、A31、A32、A33、A34、A35およびA36は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
31およびA32は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
33、A34、A35およびA36は、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。
31、A32、A33、A34、A35またはA36がメチンの場合、メチンは置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
3は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0064】
一般式(I’−A)中のL11、一般式(I’−B)中のL21、一般式(I’−C)中のL31はそれぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表す。好ましくは、−O−、−C(=O)−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−であり、より好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−C≡C−である。特に、小さい固有複屈折の波長分散性が期待できる、一般式(DI−A)中のL11は、−O−、−CO−O−、−C≡C−が特に好ましく、この中でも−CO−O−が、より高温でディスコティックネマチック相を発現できるため、好ましい。上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0065】
一般式(I’−A)中のL12、一般式(I’−B)中のL22、一般式(I’−C)中のL32はそれぞれ独立して、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、カルボキシル基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、特にハロゲン原子、メチル基、エチル基が好ましい。
【0066】
12、L22、L32はそれぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。
【0067】
12、L22、L32はそれぞれ独立して、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数2〜14であることがより好ましい。炭素数2〜14が好ましく、−CH2−を1〜16個有することがより好ましく、−CH2−を2〜12個有することがさらに好ましい。
【0068】
12、L22、L32を構成する炭素数は、液晶の相転移温度と化合物の溶媒への溶解性に影響を及ぼす。一般的に炭素数は多くなるほど、ディスコティックネマチック相(ND相)から等方性液体への転移温度が低下する傾向にある。また、溶媒への溶解性は、一般的に炭素数は多くなるほど向上する傾向にある。
【0069】
一般式(I’−A)中のQ11、一般式(I’−B)中のQ21、一般式(I’−C)中のQ31はそれぞれ独立して重合性基または水素原子を表す。また、Q11、Q21、Q31は重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例については、上記と同様であり、好ましい例も上記と同様である。
【0070】
前記一般式(I)で表される化合物の具体例には、特開2006-76992号公報の[0052]の[化13]〜[化43]に記載の例示化合物、並びに特開2007−2220号公報の[0040]の[化13]〜[0063]の[化36]に記載の例示化合物が含まれる。但し、これらの化合物に限定されるものではない。
【0071】
上記化合物は、種々の方法により合成することができ、例えば、特開2007−2220号公報の[0064]〜[0070]に記載の方法により合成することができる。
【0072】
前記ディスコティック液晶化合物は、液晶相として、カラムナー相およびディスコティックネマチック相(ND相)を示すことが好ましく、これらの液晶相の中では、良好なモノドメイン性を示すディスコティックネマチック相(ND相)が好ましい。
【0073】
前記ディスコティック液晶化合物の中でも、液晶相を20℃〜300℃の範囲で発現させるものが好ましい。より好ましくは40℃〜280℃であり、さらに好ましくは60℃〜250℃である。ここで20℃〜300℃で液晶相を発現するとは、液晶温度範囲が20℃をまたぐ場合(例えば、10℃〜22℃)や、300℃をまたぐ場合(例えば、298℃〜310℃)も含む。40℃〜280℃と60℃〜250℃に関しても同様である。
【0074】
(1)−2 一般式(II)で表されるピリジニウム塩化合物
一般式(II)で表されるピリジニウム塩化合物は、主に、前記一般式(I)で表されるディスコティック液晶化合物の配向膜界面における配向を制御することを目的として添加され、ディスコティック液晶化合物の分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。
【0075】
【化16】

【0076】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基を表す。
23は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−又は−O−CO−AL−CO−O−であるのが好ましく、ALは、炭素原子数が1〜10のアルキレン基である。L23は、単結合、−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−または−O−CO−AL−CO−O−が好ましく、単結合または−O−がさらに好ましく、−O−が最も好ましい。
【0077】
24は、L4は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−または−N=N−であるのが好ましく、−O−CO−又は−CO−O−がより好ましい。mが2以上のとき、複数のL24が交互に、−O−CO−及び−CO−O−であるのがさらに好ましい。
【0078】
22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基である。
22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環または6員環が好ましい。R23は水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜12のジアルキル置換アミノ基であるのがさらに好ましく、水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜8のジアルキル置換アミノ基であるのがよりさらに好ましい。R23が無置換アミノ基及び置換アミノ基である場合、ピリジニウム環の4位が置換されていることが好ましい。
【0079】
Xはアニオンである。
Xは、一価のアニオンであることが好ましい。アニオンの例には、ハライドイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)およびスルホン酸イオン(例、メタンスルホネートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン)が含まれる。
【0080】
22及びY23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。
前記5又は6員環が置換基を有していてもよい。好ましくは、Y22及びY23のうち少なくとも1つは、置換基を有する5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。Y22およびY23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環を部分構造として有する2価の連結基であるのが好ましい。6員環は、脂肪族環、芳香族環(ベンゼン環)および複素環を含む。6員脂肪族環の例は、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびシクロヘキサジエン環を含む。6員複素環の例は、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環を含む。6員環に、他の6員環または5員環が縮合していてもよい。
置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1〜12のアルキル基および炭素原子数が1〜12のアルコキシ基を含む。アルキル基およびアルコキシ基は、炭素原子数が2〜12のアシル基または炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。置換基は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。置換基は2以上であってもよく、例えば、Y22及びY23がフェニレン基である場合は、1〜4の炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基で置換されていてもよい。
【0081】
なお、mは1又は2であり、2であるのが好ましい。mが2のとき、複数のY23及びL24は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0082】
21は、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基である。
mが2の場合、Z21は、シアノ、炭素原子数が1〜10のアルキル基または炭素原子数が1〜10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数4〜10のアルコキシ基であるのがさらに好ましい。
mが1の場合、Z21は、炭素原子数が7〜12のアルキル基、炭素原子数が7〜12のアルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルキル基または炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。
【0083】
アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)または芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることがさらに好ましい。
【0084】
pは、1〜10の整数である。pは、1または2であることが特に好ましい。Cp2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。Cp2pは、直鎖状アルキレン基(−(CH2p−)であることが好ましい。
【0085】
前記式(II)で表される化合物の中でも、下記式(II')で表される化合物が好ましい。
【化17】

【0086】
式(II’)中、式(II)と同一の符号は同一の意義であり、好ましい範囲も同様である。L25はL24と同義であり、好ましい範囲も同様である。L24及びL25は、−O−CO−又は−CO−O−であるのが好ましく、L24が−O−CO−で、且つL25が−CO−O−であるのが好ましい。
【0087】
23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。n23は0〜4、n24は1〜4、及びn25は0〜4を表す。n23及びn25が0で、n24が1〜4(より好ましくは1〜3)であるのが好ましい。
【0088】
一般式(II)で表される化合物の具体例としては、特開2006−113500号公報明細書中[0058]〜[0061]に記載の化合物が挙げられる。
【0089】
以下に、一般式(II’)で表される化合物の具体例を示す。但し、下記式中、アニオン(X-)は省略した。
【0090】
【化18】

【0091】
式(II)のピリジニウム誘導体は、一般にピリジン環をアルキル化(メンシュトキン反応)して得られる。
【0092】
(1)−3 一般式(III)で表されるトリアジン環基を含む化合物
一般式(III)で表されるトリアジン環基を含む化合物は、主に、前記一般式(I)で表されるディスコティック液晶化合物の空気界面における配向を制御することを目的として添加され、ディスコティック液晶化合物の分子の空気界面近傍におけるチルト角を減少させる作用がある。
【0093】
【化19】

【0094】
式中、R31、R32及びR33は、末端にCF3基を有するアルキル基又はアルコキシ基を表す。
前記アルキル基(アルコキシ基中に含まれるアルキル基も含まれる)は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、またアルキル基(アルコキシ基中のアルキル基も含む)中の隣接していない2以上の炭素原子は、酸素原子又は硫黄原子に置換されていてもよい互いに隣接していない炭素原子の1以上が酸素原子に置換されていてもよい。好ましくは炭素数4〜20であり、さらに好ましくは炭素数4〜16であり、特に好ましくは6〜16である。
前記末端にCF3基を有するアルコキシ基は、アルコキシ基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルコキシ基である。アルコキシ基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上を置換されているのが特に好ましい。
【0095】
31、R32及びR33の好ましい例には、以下のアルコキシ基が含まれる。
−O(Cn2nn1O(Cm2mm1−Ck2k+1
n及びmはそれぞれ1〜3であり、n1及びm1はそれぞれ1〜3であり、kは1〜10である。より具体的な例として、
n−C817−(CH22−O−(CH22−O−
n−C613−(CH22−O−(CH22−O−
n−C49−(CH22−O−(CH22−O−
が挙げられる。
【0096】
31、X32及びX33は、アルキレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−、−SO2−及びそれらの群より選ばれる二価の連結基を少なくとも二つ組み合わせた基を表す。中でも、−NH−が好ましい。
【0097】
m31、m32及びm33はそれぞれ、1〜5の数であり、好ましくは2である。
【0098】
31、X32及びX33の置換位置に対して、それぞれパラ位及びメタ位に、R31、R32及びR33を有しているのが好ましい。
【0099】
一般式(II)で表される化合物の具体例としては、特開2006−195140号公報明細書中[0187]〜[0188]に記載の化合物が挙げられる。
【0100】
(1)−4 組成物の調製
本発明では、前記一般式(I)〜(III)で表される化合物をそれぞれ1種以上含む組成物から光学異方性層を形成する。組成物中、一般式(I)のディスコティック液晶化合物が主成分として用いられる。配合量については特に制限はないが、式(II)及び(III)の各化合物のディスコティック液晶化合物に対する質量比を、乱れのない配向状態を得るために調整するのが好ましい。この観点では、式(II)のピリジニウム化合物の添加量は、ディスコティック液晶化合物100質量部に対し、0.5〜3質量部であるのが好ましく、1〜3質量部であるのがより好ましい。
一方、式(III)のトリアジン環基を含む化合物の添加量は、ディスコティック液晶化合物100質量部に対し、0.2〜1.0質量部であるのが好ましく、0.2〜0.4質量部であるのがより好ましい。
【0101】
前記組成物は塗布液として調製することができる。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれ、アルキルハライド及びケトンが好ましい。前記有機溶媒は、1種単独で使用してもよく、2種類を併用してもよい。塗布液の表面張力が25mN/m以下(より好ましくは22mN/m以下)であると、均一性の高い光学異方性層を形成できるので好ましい。
【0102】
また、前記組成物は、硬化性であるのが好ましく、当該態様では、重合開始剤を含有しているのが好ましい。前記重合開始剤は、熱重合開始剤であっても光重合開始剤であってもよいが、制御が容易である等の観点から、光重合開始剤が好ましい。光の作用によりラジカルを発生させる光重合開始剤の例としては、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物等が好ましい。
【0103】
また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びチオキサントン等が含まれる。光重合開始剤は複数種を組み合わせてもよく、使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。液晶化合物の重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。
【0104】
前記組成物は、重合性液晶化合物とは別に、非液晶性の重合性モノマーを含有していてもよい。重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が2以上の多官能モノマー、例えば、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレートを用いると、耐久性が改善されるので好ましい。前記非液晶性の重合性モノマーは、非液晶性成分であるので、その添加量が、液晶化合物に対して15質量%を超えることはなく、0〜10質量%程度であるのが好ましい。
【0105】
(1)−5 光学異方性層の形成
前記光学異方性層の形成方法の一例は、以下の通りである。
配向膜のラビング処理面に、塗布液として調製された前記式(I)〜(III)の化合物を含有する組成物を塗布する。塗布方法としてはカーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーテティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、ワイヤーバー法等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0106】
前記組成物の塗膜を乾燥して、ディスコティック液晶化合物の分子を所望の配向状態にする。この際に、加熱することが好ましい。特に、80〜90℃で加熱すると、ディスコティック液晶化合物の分子を、逆ハイブリッド配向状態であって、しかも遅相軸をラビング方向に対して直交方向に発現させることができ、配向状態を安定的に形成することができる。80℃未満で加熱すると、配向に乱れが多くなり、一方、90℃を超えて加熱すると、逆ハイブリッド配向は得られても、遅相軸はラビング方向に対して平行に発現する配向状態になる傾向がある。また、80〜90℃で加温するのは、60〜300秒程度であるのが好ましく、90〜300秒程度であるのがより好ましい。
【0107】
ディスコティク液晶化合物の分子を所望の配向状態とした後、重合により硬化させ、その配向状態を固定して、光学異方性層を形成する。照射する光は、X線、電子線、紫外線、可視光線または赤外線(熱線)を用いることができる。中でも、紫外線を利用するのが好ましい。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)あるいはショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)が好ましく用いられる。露光量は、50〜6000mJ/cm2程度であることが好ましく、100〜2000mJ/cm2 程度であることがさらに好ましい。短時間で配向を制御するためには、加熱しながら光を照射することが好ましい。加熱温度は、40〜140℃程度であることが好ましい。
【0108】
この様にして形成する光学異方性層の厚みについては特に制限されないが、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜5μmであるのがより好ましい。
【0109】
(2)配向膜
本発明では、配向膜の材料として、変性又は未変性のポリビニルアルコールを使用する。垂直配向膜として公知の材料のみならず、水平配向膜として公知の材料から選択することもできる。例えば、特許第3907735号公報の段落番号[0071]〜[0095]に記載の変性ポリビニルアルコールが好ましい。
【0110】
本発明で使用可能な配向膜は、ラビング処理を施されたラビング処理面を有する。本発明では、一般的なラビング処理方法を利用することができる。例えば、配向膜の表面を、ラビングロールで摺ることによって実施できる。長尺状のポリマーフィルムからなる支持体上に連続的に配向膜を形成する態様では、製造適性の観点では、ラビング処理の方向(ラビング方向)は、ポリマーフィルムの長手方向と一致しているのが好ましい。
【0111】
(3)支持体
支持体については特に制限はない。種々のポリマーフィルムを用いることができる。一例は、透明で、光学異方性が小さいポリマーフィルムであるが、これに限定されるものではない。ここで支持体が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。また、光学異方性が小さいとは、具体的には、面内レターデーション(Re)が20nm以下であることを意味し、10nm以下であることがさらに好ましい。透明支持体は、長尺状であってロール形態に巻き上げられた形状であっても、最終製品の大きさである、例えば、長方形のシート状であってもよい。ロール状に巻き上げられた長尺のポリマーフィルムを、支持体として用い、配向膜及び光学異方性層を連続的に形成してから、必要な大きさに切断することが好ましい。
【0112】
支持体として使用可能なポリマーフィルムの例には、セルロースアシレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート及びポリメタクリレート、環状ポリオレフィン等のフィルムが含まれる。セルロースアシレートフィルムが好ましく、セルロースアセテートフィルムがさらに好ましい。
セルロースアシレートフィルムを用いると、正面コントラストの低下がより抑えられ、例えば、
【0113】
支持体として用いられるポリマーフィルム厚みについては特に制限はないが、一般的には、20〜500μmであることが好ましく、30〜200μmであることがさらに好ましい。
【0114】
支持体用のポリマーフィルムは、溶液製膜法及び溶融製膜法のいずれの方法で製造されたフィルムであってもよい。セルロースアシレートフィルムについては、ソルベントキャスト法により製造されたフィルムが好ましい。また、透明支持体として用いられるポリマーフィルムには、その上に設けられる配向膜との接着を改善するため、表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理、ケン化処理)を実施してもよい。透明支持体の上に、接着層(下塗り層)を設けてもよい。
【0115】
2.偏光板
本発明は、偏光膜と、本発明の光学フィルムとを少なくとも有する偏光板にも関する。本発明の偏光板の一態様は、偏光膜の一方の表面に本発明の光学フィルムが積層され、他方の表面に保護フィルムが積層された偏光板である。本態様では、本発明の光学フィルムの支持体の裏面(配向膜及び光学異方性層が形成されていない側の面)が、偏光膜の一方の表面に貼合されているのが好ましい。他方の表面に貼合される保護フィルムについては特に制限はなく、上記支持体として利用可能なポリマーフィルムの例から選択するのが好ましい。保護フィルムの好ましい一例は、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロースアシレートフィルムである。
【0116】
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜があり、本発明にはいずれを使用してもよい。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
【0117】
長尺状の偏光膜と、長尺状の本発明の光学フィルムとを、連続的に貼合して、偏光板を作製することができる。光学フィルムの製造において、支持体の長手方向に沿ってラビング処理をすることが製造適性の観点では好ましいことは上記した通りである。本発明の光学フィルムでは、光学異方性層の遅相軸はラビング方向に直交する方向にあり、即ち、長手方向に対して直交した方向にある。よって、長尺状の偏光膜と貼り合せる際に、長手方向を一致させて本発明の光学フィルムを積層することで、光学異方性層の遅相軸と、偏光膜の吸収軸とが直交した偏光板を、容易に連続的に作製することができる。
【0118】
3.液晶表示装置
本発明は、本発明の偏光板を有する液晶表示装置にも関する。本発明の光学フィルムは、TN型液晶表示装置の光学補償に適している。従って、本発明の液晶表示装置の好ましい態様は、TN型液晶表示装置である。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置とについては、従来からよく知られている。液晶セルのΔn・dは300〜500nm程度である。本発明の偏光板は、本発明の光学フィルムを、液晶セル側にして配置されるのが好ましい。光学補償に利用される光学異方性層中にマクロな乱れがあると、それは例えば、液晶表示装置の正面コントラストの低下の一因となる。本発明の光学フィルムが有する光学異方性層は、ディスコティック液晶分子の逆ハイブリッド配向を固定した層であるので、正ハイブリッドを固定した層と比較して、マクロな配向乱れが非常に小さい。よって、本発明によれば、液晶表示装置の正面コントラストを低下させることなく、本発明の光学フィルムにより十分な光学補償を達成することができる。
【実施例】
【0119】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0120】
1.光学フィルムの作製
(1)透明支持体の作製
(1)−1 支持体1の準備
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液を調製した。
────────────────────────────────────
セルロースアシレート溶液組成(質量部) 内層 外層
────────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアシレート 100 100
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8 7.8
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑 3.9 3.9
メチレンクロライド(第1溶媒) 293 314
メタノール(第2溶媒) 71 76
1−ブタノール(第3溶媒) 1.5 1.6
シリカ微粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
0 0.8
下記レタデーション上昇剤 1.3 1.3
────────────────────────────────────
【0121】
【化20】

【0122】
得られた内層用ドープ及び外層用ドープを、三層共流延ダイを用いて、−10℃に冷却したドラム上に流延した。セルロースアシレート100質量部に対し、残留溶剤量が290質量部のフィルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターにて固定して搬送方向のドロー比を115%として搬送しながら給気温度70℃で乾燥させ、残留溶剤量が40質量部となったところで、給気温度140℃で乾燥させた。その後、給気温度140℃の温度で10分間乾燥し、残留溶剤が0.2質量%のセルロースアシレートフィルム(外層膜厚:3μm、内層膜厚:74μm(総膜厚:80μm)、長さ:2000m、幅:1490mm)を作製した。
【0123】
作製したセルロースアシレートフィルムについて、エリプソメータ(M−150、日本分光(株)製)を用いて、波長632.8nmにおける面内方向のレターデーション値(Re)および厚み方向のレターデーション値(Rth)を測定した。遅相軸は搬送方向に直交であり、Reは15nm、Rthは100nmであった。
【0124】
(アルカリ鹸化処理)
セルロースアシレートフィルムを、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0125】
(アルカリ溶液組成)
────────────────────────────────────
アルカリ溶液組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
【0126】
この様にして作製したセルロースアシレートフィルムを、下記表に示す実施例のいくつかでは、支持体1として用いた。このセルロースアシレートフィルムを支持体として用いた場合には、下記表中、支持体の欄に「1」と示してある。
【0127】
(1)−2 支持体2の準備
ゼオノア(日本ゼオン社製)を準備し、下記表に示す実施例において、支持体として用いた。ゼオノアフィルムを支持体として用いた場合には、下記表中、支持体の欄に「2」と示してある。
【0128】
(2)配向膜の形成
上記作製した支持体の、鹸化処理を施した面に、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。
配向膜形成用塗布液の組成
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
【0129】
下記表中、配向膜の欄に「PVA」と記載のあるのは、下記構造のポリビニルアルコールを使用したことを意味し、「PI」と記載のあるのは、前記配向膜形成用塗布液の代わりに、市販の液晶用配向膜JALS−2021−R1(JSR社製)を使用したことを意味する。
【0130】
【化21】

【0131】
形成した配向膜の表面に、フィルムの長手方向に沿ってラビング処理を行った。
【0132】
(3)光学異方性層の形成
下記組成の光学異方性層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布量4ml/m2で塗布した。下記表に示す温度で120秒間加熱し、液晶化合物を配向させた。その後、その温度を維持して、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mW/cm2の紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させ、液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の光学フィルムを得た。
【0133】
(光学異方性層用塗布液組成)
────────────────────────────────────
光学異方性層塗布液組成(質量部)
────────────────────────────────────
下記表に示す液晶化合物 100.0質量部
下記表に示すピリジニウム塩化合物 下記表に示す質量部
下記表に示すトリアジン環を有する化合物 下記表に示す質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3.0質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 341.8質量部
────────────────────────────────────
【0134】
(4)光学フィルムの評価
作製した各光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶化合物分子のチルト角、及び空気界面のディスコティック液晶化合物の分子のチルト角をそれぞれ測定した。下記表に結果を示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表し、水平とは、チルト角0°〜30°を表す。上記以外の範囲については、測定角度を示す。
また、各光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、前記方法に従って、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。
下記表に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。
【0135】
下記記表に示す結果から、所定の式(I)で表されるディスコティック液晶化合物を、所定の式(II)で表されるピリジニウム塩化合物、及び所定の式(III)で表されるピリジン環化合物の存在下で、PVA系配向膜上で配向させることによって、逆ハイブリッド配向であるとともに、遅相軸をラビング方向に対して直交方向に発現する光学異方性層が得られることが理解できる。
一方、ピリジニウム塩ではあるが、式(II)の範囲外の化合物CII-1及びCII-2を用いた比較例4及び5では、逆ハイブリッド配向にならず、しかも遅相軸がラビング方向に対して平行に発現する光学異方性層しか得られず;同様に、トリアジン環を含む化合物ではあるが、式(III)の範囲外の化合物CIII-1及びCIII-2を用いた比較例6及び7では、逆ハイブリッド配向にならず、しかも遅相軸がラビング方向に対して平行に発現する光学異方性層しか得られなかった。
また、配向膜としてポリイミドを用いた比較例2では、式(I)のディスコティック液晶化合物を配向させることすらできなかった。
【0136】
2.液晶表示装置の作製と評価
(1)偏光板の作製
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒間浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒間浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した。その後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
市販のセルロースアセテートフィルムを1.5モル/Lで、55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し、希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
前記の方法で作製した光学フィルムと、鹸化処理を行った市販のセルロースアセテートフィルムとを組み合わせて前記の偏光膜を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せて偏光板を得た。ここで、光学フィルムの光学異方性層が、外側にくるように配置した。また市販のセルロースアセテートフィルムとしてはフジタックTF80UL(富士フイルム(株)製)を用いた。このとき、偏光膜及び偏光膜両側の保護膜はロール形態で作製されているため各ロールフィルムの長手方向が平行となっており連続的に貼り合わした。従って光学フィルムのロール長手方向(セルロースアセテートフィルムの流延方向)と偏光子吸収軸とは平行な方向となった。
【0137】
(2)TNモード液晶表示装置の作製
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AL2216W、日本エイサー(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記の作製した偏光板を、光学フィルムが液晶セル側となるように、即ち、光学異方性層を最も液晶セル側にして、粘着剤を介して、観察者側及びバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。このとき、観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とを直交にして配置した。
【0138】
(3)TNモード液晶表示装置の評価
作製した液晶表示装置について、輝度計(TOPCON製BM−5)を用いて、正面の黒状態の輝度、および白状態の輝度を測定し、正面コントラストを算出した。正面コントラストを以下の基準で評価した。
◎:1200以上2000未満
○:800以上1200未満
△:400以上800未満
×:400未満
結果を下記表に示す。
【0139】
また、上下左右方向の視野角特性を評価した。具体的には、黒表示時の上下左右視野角コントラストを測定機(例えば、Ez−contrast160D、ELDIM社製)を用いて測定し、以下の基準で評価した。
◎・・・CR>10となる上下左右の極角の和が350以上
○・・・CR>10となる上下左右の極角の和が250以上350未満
△・・・CR>10となる上下左右の極角の和が150以上250未満
×・・・CR>10となる上下左右の極角の和が0以上150未満
結果を下記表に示す。
【0140】
下記表に示す結果から、実施例、特に実施例1〜10の液晶表示装置では、光学フィルムによる正面CRの低下の影響をほとんど受けずに、視野角が補償されていることが理解できる。
実施例11〜13では、光学異方性層の形成時に、所望の逆ハイブリッドが得られたが、一方で、式(II)のピリジニウム塩化合物及び式(III)のトリアジン環化合物の添加量が、好ましい範囲からずれているため、配向が不安定となり、それが、正面CRを低下させたものと推測される。
実施例14では、光学異方性層の形成時に、所望の逆ハイブリッドが得られたが、一方で、式(II)のピリジニウム塩化合物が、一般式(II)中のY22が置換されておらず、一般式(II')中の置換基R24を含まない構造となっているため、配向膜界面側での配向規制力が低下し、正面CRが低下したものと推測される。
比較例1は、棒状液晶化合物の逆ハイブリッド配向を固定した光学異方性層を有する光学フィルムを用いた例であり、正面CRは実施例と同程度によかったが、視野角補償が不十分となったことが理解できる。
また、上記した通り、比較例3〜7では、逆ハイブリッド配向状態となっていないため、同様に視野角補償作用が不十分であったことが理解できる。
比較例16では、正ハイブリッド配向を固定した光学異方性層を有する光学フィルムを用いた例であり、逆ハイブリッド配向に比べ、ミクロな配向軸ズレが多いため正面CRが低下していることが理解できる。
【0141】
【表1】

【0142】
【化22】

【0143】
【化23】

【0144】
【化24】

【0145】
【化25】

【0146】
3.配向時の温度が配向状態に与える影響
実施例4では、ディスコティック液晶化合物を温度80℃で配向させたが、温度70℃及び100℃にそれぞれ代えて、同様に光学異方性層の形成を試みた。
形成した2つの光学異方性層それぞれについて、上記方法でディスコティック液晶化合物の分子の配向状態を確認した。
温度70℃で配向させた例では、ディスコティック液晶は配向していなかった。
一方、温度100℃で配向させた例では、ディスコティック液晶は配向はしていたものの、配向膜界面及び空気界面のいずれにおいてもチルト角が大きく、ほぼ一様な垂直配向状態となっていて、逆ハイブリッド配向状態にはなっていなかった。さらに、遅相軸は、ラビング方向に対して直交であった。
この結果から、式(I)のディスコティック液晶化合物を、式(II)のピリジニウム塩化合物及び式(III)のトリアジン環を有する化合物の存在下で、PVA系配向膜上で、温度80〜90℃で配向させることによって、遅相軸がラビング方向に対して直交方向に発現する、逆ハイブリッド配向状態が、安定的に得られることが理解できる。
【符号の説明】
【0147】
1 支持体
2 配向膜
3 光学異方性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、ラビング処理された配向膜と、光学異方性層とをこの順で有する光学フィルムであって、
前記配向膜が、変性又は未変性ポリビニルアルコールを主成分として含有する膜であり、
前記光学異方性層が、下記一般式(I)で表されるディスコティック液晶化合物の少なくとも1種、下記一般式(II)で表されるピリジニウム化合物の少なくとも1種、及び下記一般式(III)で表されるトリアジン環基を含む化合物の少なくとも1種を含有する組成物から形成され、
前記光学異方性層中、前記ディスコティック液晶化合物の分子が、配向膜側チルト角が、空気界面側チルト角より大きい配向状態に固定され、及び
前記光学異方性層の遅相軸方向が、前記配向膜のラビング方向と直交することを特徴とする光学フィルム:
【化1】

式中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表し;
1、L2及びL3は、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し;
1、H2及びH3は、それぞれ独立に一般式(I−A):
【化2】

(一般式(I−A)中、YA1及びYA2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;
XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;
*は上記一般式(I)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;
**は上記一般式(I)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。)
又は一般式(I−B):
【化3】

(一般式(I−B)中、YB1及びYB2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;
XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;
*は上記一般式(I)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;
**は上記一般式(I)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。)を表し;
1、R2及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(I−R):
一般式(I−R)
*−(−L21−Q2n1−L22−L23−Q1
(一般式(I−R)中、
*は一般式(I)におけるH1〜H3側と結合する位置を表し;
21は単結合又は二価の連結基を表し;
2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基を表し;
n1は、0〜4の整数を表し、L22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、*−N(R)−、**−CH2−、**−CH=CH−又は**−C≡C−を表し、ここで、**はQ2側と結合する位置を表し;
22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、*−N(R101)−、**−CH2−、**−CH=CH−又は**−C≡C−を表し、R101は、炭素数1〜5のアルキル基を表し、**はQ2側と結合する位置を表し;
23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及びC≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し;
1は重合性基又は水素原子を表す)
を表す;
【化4】

式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基であり;R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基であり;Xはアニオンであり;Y22及びY23はそれぞれ、置換されていてもよい5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基であり;Z21はハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基であり;pは1〜10の数であり;並びにmは1又は2である;
【化5】

式中、R31、R32及びR33は、末端にCF3基を有するアルキル基又はアルコキシ基を表し、但し、アルキル基(アルコキシ基中のアルキル基も含む)中の隣接していない2以上の炭素原子は、酸素原子又は硫黄原子に置換されていてもよい;X31、X32及びX33は、アルキレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−、−SO2−及びそれらの群より選ばれる二価の連結基を少なくとも二つ組み合わせた基を表し;m31、m32及びm33はそれぞれ、1〜5の数である。
【請求項2】
前記ピリジニウム化合物の添加量が、ディスコティック液晶化合物100質量部に対し、0.5〜3質量部である請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記トリアジン環基を含む化合物の添加量が、ディスコティック液晶化合物100質量部に対し、0.2〜0.4質量部である請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記ピリジニウム化合物が、下記式(II')で表される化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム:
【化6】

式(II’)中、式(II)と同一の符号は同一の意義であり;L25はL24と同義であり;R23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12のアルキル基を表し、n23は0〜4、n24は1〜4、及びn25は0〜4を表す。
【請求項5】
式(III)中、R31、R32及びR33がそれぞれ、下記式で表される基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム:
−O(Cn2nn1O(Cm2mm1−Ck2k+1
式中、n及びmはそれぞれ1〜3であり、n1及びm1はそれぞれ1〜3であり、kは1〜10である。
【請求項6】
変性又は未変性ポリビニルアルコールを主成分として含有する配向膜のラビング処理面上で、請求項1中に記載の一般式(I)で表されるディスコティック液晶化合物の少なくとも1種、一般式(II)で表されるピリジニウム化合物の少なくとも1種、及び一般式(III)で表されるトリアジン環基を含む化合物の少なくとも1種を含む組成物を80〜90℃で加熱して、配向させる配向工程、及び
前記組成物の硬化反応を進行させて、その配向状態を固定し、光学異方性層を形成する硬化工程、
を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
偏光子と、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルムを少なくとも有する偏光板。
【請求項8】
請求項7に記載の偏光板を少なくとも有する液晶表示装置。
【請求項9】
TNモードである請求項8に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−133549(P2011−133549A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290641(P2009−290641)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】