説明

光学フィルム

【課題】従来の光学フィルムでは、フラットパネル表示装置に黒表示すると青味や赤味を帯びて見えたり、白表示すると黄色味を帯びて見えたりするなど、いわゆる色抜けについて、必ずしも十分に満足できない場合があった。
【解決手段】重合性液晶化合物が配向してなる光学フィルムであり、溶液(a)を用いて測定される重合性液晶化合物の400nmにおける吸光度Aが0.1以下であり、溶液(a)を用いて測定される重合性液晶化合物の極大吸収波長における光学フィルムの配向秩序度Sが、−0.50<S<−0.15を充足する光学フィルム。溶液(a):重合性液晶化合物を10−4mol/lの濃度になるようにクロロホルムに溶解させた溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム等に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)には、偏光板、位相差板等の光学フィルムを用いた部材が含まれている。光学フィルムには、例えば、重合性液晶化合物を溶剤に溶かして得られる溶液を、支持基材に塗布後、重合して得られる光学フィルム等が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−31223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の光学フィルムでは、フラットパネル表示装置に黒表示すると青味や赤味を帯びて見えたり、白表示すると黄色味を帯びて見えたりするなど、いわゆる色抜けについて、必ずしも十分に満足できない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の[1]〜[8]を提供するものである。
[1]重合性液晶化合物が配向してなる光学フィルムであり、溶液(a)を用いて測定される重合性液晶化合物の400nmにおける吸光度Aが0.1以下であり、溶液(a)を用いて測定される重合性液晶化合物の極大吸収波長における光学フィルムの配向秩序度Sが、−0.50<S<−0.15を充足する光学フィルムである。
ここで、溶液(a)は、重合性液晶化合物を10−4mol/lの濃度になるようにクロロホルムに溶解させた溶液である。
[2]溶液(a)の極大吸収波長が、300nm以上400nm以下である[1]記載の光学フィルムである。
[3]−0.50<S(λ)<−0.15を充足する波長範囲が40nm以上である[1]又は[2]記載の光学フィルムである。
【0006】
[4]重合性液晶化合物が、式(A)で表される化合物である[1]〜[3]のいずれか記載の光学フィルムである。
−G−D−Ar−D−G−L (A)
[式(A)中、Arは、芳香環を有する2価の基を表し、該芳香環に含まれるπ電子の数は、12以上22以下である。
及びDは、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−C(=S)−O−、−CR−、−CR−CR−、−O−CR−、−CO−O−CR−、−O−CO−CR−、−CR−O−CR−、−CR−O−CO−CR−、−CR−CO−O−CR−、−NR−CR−又は−CO−NR−を表す。
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5〜8の2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH(−)−は、−N(−)−で置き換っていてもよい。
は、重合性基又は1価の有機基を表す。
は、重合性基を表す。]
[5]G及びGが、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基である[4]記載の光学フィルムである。
【0007】
[6]重合性液晶化合物を含む組成物を基板に塗布し、重合性液晶化合物を配向させ、該組成物に含まれる重合性成分を重合してなる[1]〜[5]のいずれか記載の光学フィルムである。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の光学フィルム及び偏光フィルムを含む偏光板。
[8][1]〜[6]のいずれかに記載の光学フィルムを含むフラットパネル表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光学フィルムによれば、フラットパネル表示装置における色抜けを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る偏光板の一例の断面図である。
【図2】本発明に係る液晶表示装置の一例の断面図である。
【図3】本発明に係る有機EL表示装置の一例の断面図である。
【図4】本発明に係るカラーフィルタの一例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の光学フィルムは、重合性液晶化合物が配向してなる光学フィルムであり、溶液(a)を用いて測定される重合性液晶化合物の400nmにおける吸光度Aが0.1以下であり、溶液(a)を用いて測定される重合性液晶化合物の極大吸収波長における光学フィルムの配向秩序度Sが、−0.50<S<−0.15である光学フィルムである。ここで、溶液(a)とは、重合性液晶化合物を10−4mol/lの濃度になるようにクロロホルムに溶解させた溶液である。
【0011】
本明細書において、波長λnmにおける光学フィルムの配向秩序度S(λ)は、式(1)で表される値である。
S(λ)=(A−A)/(A+2A) (1)
[式(1)中、Aは、光学フィルムに含まれる重合性液晶化合物の配向方向に対して平行方向に偏光した光に対する吸光度を表す。Aは、光学フィルムに含まれる重合性液晶化合物の配向方向に対して垂直方向に偏光した光に対する吸光度を示す。]
【0012】
光学フィルムの配向秩序度S(λ)は、偏光吸収測定により求めることができる。
光学フィルムの配向秩序度S(λ)は、光学フィルムに含まれる重合性液晶化合物の分子が完全に1軸配向している場合には1を示し、該液晶化合物の分子がランダムな向きに存在している場合には0を示し、該液晶化合物の分子長軸が配向軸に垂直な面内に分布する場合には−0.5を示す。
溶液(a)を用いて測定される重合性液晶化合物の極大吸収波長における光学フィルムの配向秩序度Sが、−0.50より大きく−0.15より小さい範囲にあると、該光学フィルムは優れた光学補償が可能となり、色抜けが低減される。
【0013】
溶液(a)を用いて測定される重合性液晶化合物の極大吸収波長は、300〜400nmの範囲にあることが好ましい。該極大吸収波長が上記範囲内にあると、得られる光学フィルムの着色が少なく透明性が高い。
【0014】
光学フィルムの配向秩序度S(λ)が、40nm以上の波長範囲で、−0.50<S(λ)<−0.15を充足することが好ましく、300〜400nmのうち40nm以上の波長範囲で、−0.50<S(λ)<−0.15を充足することがより好ましい。−0.50<S(λ)<−0.15を充足する波長範囲が広いほど、光学フィルムの色抜けはより低減される。
【0015】
本発明の光学フィルムは、重合性液晶化合物が配向しているため複屈折を有する。本発明の光学フィルムをλ/4板として使用する場合には、その位相差値を113〜163nmに、λ/2板として使用する場合にはその位相差値を250〜300nmに調整することにより、色抜けをさらに低減させることができる。
【0016】
本発明の光学フィルムは、重合性液晶化合物を含む組成物(以下「組成物(A)」という場合がある)を用いて形成される。
重合性液晶化合物としては、式(A)で表される化合物(以下「化合物(A)」という場合がある)であることが好ましい。

−G−D−Ar−D−G−L (A)

[式(A)中、Arは、芳香環を有する2価の基を表し、該芳香環に含まれるπ電子の数は、12以上22以下である。
及びDは、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−C(=S)−O−、−CR−、−CR−CR−、−O−CR−、−CO−O−CR−、−O−CO−CR−、−CR−O−CR−、−CR−O−CO−CR−、−CR−CO−O−CR−、−NR−CR−又は−CO−NR−を表す。
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5〜8の2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH(−)−は、−N(−)−で置き換っていてもよい。
は、重合性基又は1価の有機基を表す。
は、重合性基を表す。]
【0017】
及びDは、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−O−CO−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CR−、−CR−CR−、−O−CR−、−CR−O−、−CR−O−CR−、−CR−O−CO−、−O−CO−CR−、−CR−O−CO−CR−、−CR−CO−O−CR−、−NR−CR−、−CR−NR−、−CO−NR−、又は−NR−CO−である。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である。
炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
及びDは、*−O−CO−、*−O−C(=S)−、*−O−CR−、*−NR−CR−又は*−NR−CO−(*はArとの結合手を表わす。)であることが好ましい。D及びDが、*−O−CO−、*−O−C(=S)−又は*−NR−CO−(*はArとの結合手を表す。)であることがより好ましい。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。Rは、水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0018】
及びGは、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の芳香族炭化水素基、又は炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基である。該芳香族炭化水素基及び該脂環式炭化水素基は、ハロゲノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のフッ化アルキル基、炭素数1〜4アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基を有していてもよい。該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH(−)−は、−N(−)−で置き換っていてもよい。
【0019】
炭素数5〜8の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフタレンジイル基等が挙げられる。置換基を有する該芳香族炭化水素基としては、クロロフェニレン基、メチルフェニレン基、トリフルオロメチルフェニレン基、シアノフェニレン基、ニトロフェニレン基、メトキシナフタレンジイル基等が挙げられる。
炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基としては、式(g−1)〜式(g−4)で表される基が挙げられ、−CH−が置き換わっている該脂環式炭化水素基としては、式(g−5)〜式(g−10)で表される基が挙げられる。
【0020】

【0021】
上記式(g−1)〜(g−10)で表される基は、前記例示された基の水素原子の一部が、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のフッ化アルキル基;トリフルオロメトキシ基等の炭素数1〜4のフッ化アルコキシ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0022】
及びGとしては、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、5員環又は6員環の脂環式炭化水素基であることがより好ましく、シクロヘキサン−1,4−ジイル基であることがさらに好ましく、trans−シクロヘキサン−1,4−ジイル基であることが特に好ましい。G及びGが上記の基であると、色抜けが低減される傾向がある。
【0023】
Arは、芳香環を有する2価の基であり、該芳香環は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1種である。該芳香環に含まれるπ電子の数は、12以上22以下であり、好ましくは13以上22以下である。
【0024】
Arとしては、式(Ar−1)〜式(Ar−13)で表される基等が挙げられ、好ましくは式(Ar−6)で表される基である。
【0025】

【0026】
[式(Ar−1)〜式(Ar−13)中、Zは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基又は炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基を表す。
及びQは、それぞれ独立に、−CR10−、−S−、−NR−、−CO−又は−O−を表す。
及びR10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
、Y及びYは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
及びWは、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基又はハロゲン原子を表す。
mは、0〜6の整数を表す。
nは、0〜2の整数を表す。]
【0027】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0028】
炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0029】
炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、イソブチルスルフィニル基、sec−ブチルスルフィニル基、tert−ブチルスルフィニル基、ペンチルスルフィニル基、ヘキシル基スルフィニル等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルスルフィニル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルスルフィニル基がより好ましく、メチルスルフィニル基が特に好ましい。
【0030】
炭素数1〜6のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルスルホニル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルスルホニル基がより好ましく、メチルスルホニル基が特に好ましい。
【0031】
炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられ、炭素数1〜4のフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0032】
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0033】
炭素数1〜6のアルキルスルファニル基としては、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、プロピルスルファニル基、イソプロピルスルファニル基、ブチルスルファニル基、イソブチルスルファニル基、sec−ブチルスルファニル基、tert−ブチルスルファニル基、ペンチルスルファニル基、ヘキシルスルファニル基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルスルファニル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルスルファニル基がより好ましく、メチルスルファニル基が特に好ましい。
【0034】
炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基としては、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N−イソブチルアミノ基、N−sec−ブチルアミノ基、N−tert−ブチルアミノ基、N−ペンチルアミノ基、N−ヘキシルアミノ基等が挙げられ、炭素数1〜4のN−アルキルアミノ基が好ましく、炭素数1〜2のN−アルキルアミノ基がより好ましく、N−メチルアミノ基が特に好ましい。
【0035】
炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基としては、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N,N−ジイソブチルアミノ基、N,N−ジペンチルアミノ基、N,N−ジヘキシルアミノ基等が挙げられ、炭素数2〜8のN,N−ジアルキルアミノ基が好ましく、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルアミノ基がより好ましく、N,N−ジメチルアミノ基が特に好ましい。
【0036】
炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基としては、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−プロピルスルファモイル基、N−イソプロピルスルファモイル基、N−ブチルスルファモイル基、N−イソブチルスルファモイル基、N−sec−ブチルスルファモイル基、N−tert−ブチルスルファモイル基、N−ペンチルスルファモイル基、N−ヘキシルスルファモイル基等が挙げられ、炭素数1〜4のN−アルキルスルファモイル基が好ましく、炭素数1〜2のN−アルキルスルファモイル基がより好ましく、N−メチルスルファモイル基が特に好ましい。
【0037】
炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−メチル−N−エチルスルファモイル基、N,N−ジエチルスルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N,N−ジイソプロピルスルファモイル基、N,N−ジブチルスルファモイル基、N,N−ジイソブチルスルファモイル基、N,N−ジペンチルスルファモイル基、N,N−ジヘキシルスルファモイル基等が挙げられ、炭素数2〜8のN,N−ジアルキルスルファモイル基が好ましく、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルスルファモイル基がより好ましく、N,N−ジメチルスルファモイル基が特に好ましい。
【0038】
は、ハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、メチルスルホニル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メチルスルファニル基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチルスルファモイル基又はN,N−ジメチルスルファモイル基であることが好ましい。
【0039】
及びR10における炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0040】
は、−S−、−CO−、−NH−又は−N(CH)−であることが好ましく、Qは、−S−又は−CO−であることが好ましい。
【0041】
、Y及びYを表す芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基としては、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が挙げられる。
【0042】
、Y及びYにおける芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも一つ含み、炭素数4〜20の芳香族複素環基が挙げられ、フリル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基が好ましい。
【0043】
かかる芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基は、少なくとも一つの置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基等が挙げられ、ハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜2のアルキルスルホニル基、炭素数1〜2のフルオロアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキルチオ基、炭素数1〜2のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜2のアルキルスルファモイル基が好ましい。
【0044】
ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基及び炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、前記におけるものと同様のものが挙げられる。
【0045】
単環の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基としては、式(Y−1)〜式(Y−6)で表される基が挙げられる。
【0046】

【0047】
[式(Y−1)〜式(Y−6)中、*は結合手を表す。Zは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基又は炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基を表す。
a1は、0〜5の整数を表し、a2は、0〜4の整数を表し、b1は、0〜3の整数を表し、b2は、0〜2の整数を表し、Rは、水素原子又はメチル基を表す。]
【0048】
としては、ハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシ基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メチルスルファニル基、N,N−ジメチルアミノ基又はN−メチルアミノ基が好ましい。
、Y及びYは、それぞれ独立に、式(Y−1)又は式(Y−3)で表される基であることが、製造工程やコストの点で好ましい。
【0049】
多環の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基としては、式(Y−1)〜式(Y−7)で表される基が挙げられる。
【0050】

【0051】
[式(Y−1)〜式(Y−7)中、*は結合手を表し、Zは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、カルボキシ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数2〜8のN,N−ジアルキルアミノ基又は炭素数1〜4のN−アルキルアミノ基を表す。
及びVは、それぞれ独立に、−CO−、−S−、−NR11−、−O−、−Se−又は−SO−を表す。
〜Wは、それぞれ独立に、−CR11=又は−N=を表す。
ただし、V、V及びW〜Wのうち少なくとも1つは、S、N、O又はSeを含む基を表す。
11は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
aは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。
bは、それぞれ独立に、0〜2の整数を表す。]
【0052】
、Y及びYとしては、式(Y−1)〜式(Y−6)で表される基であることが好ましい。
【0053】

【0054】
[式(Y−1)〜式(Y−6)中、*、Z、a、b、V、V及びWは、上記と同じ意味を表す。]
【0055】
としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基等が挙げられ、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ニトロソ基、カルボキシ基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メチルスルファニル基、N,N−ジメチルアミノ基又はN−メチルアミノ基が好ましく、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が特に好ましい。
【0056】
ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基及び炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、前記におけるものと同様のものが挙げられる。
【0057】
及びVは、それぞれ独立に、−S−、−NR11−又は−O−であることが好ましい。
〜Wは、それぞれ独立に、−CR11=又は−N=であることが好ましい。
、V及びW〜Wのうち少なくとも1つは、S、N又はOを含む基であることが好ましい。
aは0又は1であることが好ましい。bは0であることが好ましい。
【0058】
式(Ar−1)〜式(Ar−4)で表される基の具体例として、式(ar−1)〜式(ar−29)で表される基が挙げられる。下記式中、*は結合位置を表す。
【0059】

【0060】

【0061】

【0062】

【0063】

【0064】

【0065】
式(Ar−5)で表される基の具体例として、式(ar−30)〜式(ar−39)で表される基が挙げられる。
【0066】

【0067】

【0068】
式(Ar−6)又は式(Ar−7)で表される基の具体例として、式(ar−40)〜式(ar−99)で表される基が挙げられる。
【0069】

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

【0079】

【0080】

【0081】
式(Ar−8)又は式(Ar−9)で表される基の具体例として、式(ar−100)〜式(ar−109)で表される基が挙げられる。
【0082】

【0083】

【0084】
式(Ar−10)で表される基の具体例として、式(ar−110)〜式(ar−129)で表される基が挙げられる。
【0085】

【0086】

【0087】

【0088】

【0089】
式(Ar−11)で表される基の具体例としては、式(ar−130)〜式(ar−139)で表される基が挙げられる。
【0090】

【0091】

【0092】
式(Ar−12)で表される基の具体例として、式(ar−140)〜式(ar−159)で表される基が挙げられる。
【0093】

【0094】

【0095】

【0096】

【0097】
式(Ar−13)で表される基の具体例としては、式(ar−160)〜式(ar−169)で表される基が挙げられる。
【0098】

【0099】

【0100】
化合物(A)において、Lが式(D)で表される基であり、かつLが式(E)で表される基であることが好ましい。

−F−(B−A−E− (D)
−F−(B−A−E− (E)

[式(D)中、B、B、E及びEは、それぞれ独立に、−CR−、−CH−CH−、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−O−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−O−、−CO−NR−、−O−CH−、−S−CH−又は単結合を表す。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びAは、置換基を有していてもよい炭素数6〜8の2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH(−)−は、−N(−)−で置き換っていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。kが2以上の整数である場合、複数のB及びAは互いに同一であっても異なっていてもよい。lが2以上の整数である場合、複数のB及びAは互いに同一であっても異なっていてもよい。
及びFは、炭素数1〜12の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
は、重合性基を表す。
は、水素原子又は重合性基を表す。]
【0101】
及びAは、それぞれ独立に、炭素数6〜8の2価の芳香族炭化水素基、又は炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基である。該芳香族炭化水素基及び該脂環式炭化水素基は、ハロゲノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のフッ化アルキル基、炭素数1〜4アルコキシ基、炭素数1〜4フッ化アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基を有していてもよい。該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH(−)−は、−N(−)−で置き換っていてもよい。
【0102】
及びAにおける2価の芳香族炭化水素基としては、式(a−1)〜式(a−8)で表される基等が挙げられ、2価の脂環式炭化水素基としては、前記の式(g−1)〜式(g−10)で表される基等が挙げられる。

【0103】
及びAが同じ種類の基であると、化合物(A)の製造が容易であるため好ましい。またA及びAとしては、1,4−フェニレン基又はシクロヘキサン−1,4−ジイル基が好ましく、化合物(A)の製造が容易であるため、1,4−フェニレン基がより好ましい。
【0104】
、B、E及びEは、それぞれ独立に、−CR−、−CH−CH−、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−O−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−O−、−CO−NR−、−O−CH−、−S−CH−又は単結合である。これらの基は、どちらの向きに結合してもよい。
及びBは、同じ種類の基であると、化合物(A)の製造が容易であるため好ましい。
にのみ結合しているB及びAにのみ結合しているBが、それぞれ独立に、−CH−CH−、−CO−O−、−CO−NH−、−O−CH−又は単結合であり、かつ、Fに結合しているB及びFに結合しているBが、それぞれ独立に、−O−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NH−又は単結合であることが好ましい。これらの基であると、化合物(A)の製造が容易である。
またAにのみ結合しているB及びAにのみ結合しているBが、−CO−O−であると、高い液晶性を示す傾向があるため、より好ましい。
【0105】
及びEとしては、−CO−O−、−O−、−O−CO−O−及び単結合が好ましい。
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数である。
k及びlは、液晶性の観点から、それぞれ独立に、0〜3の整数を表すことが好ましく、k及びlは0〜2であることがより好ましい。k及びlの合計は、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0106】
は、重合性基であり、Pは、水素原子又は重合性基である。重合性基とは、化合物(A)の重合反応に関与し得る基を意味する。P及びPがともに重合性基であると、得られる光学フィルムの硬度が優れる傾向がある。
重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、スチリル基、p−(2−フェニルエテニル)フェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、カルボキシ基、アセチル基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、炭素数1〜4のN−アルキルアミノ基、アミノ基、オキシラニル基、オキセタニル基、ホルミル基、イソシアナト基又はイソチオシアナト基等が挙げられる。中でも、光重合に適するという点で、ラジカル重合性基、カチオン重合性基が好ましく、取り扱いが容易で、化合物(A)の製造も容易であるという点でアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0107】
−D−G−E−(A−B−F−P及び−D−G−E−(A−B−F−Pの具体例としては、式(R−1)〜式(R−134)で表される基が挙げられる。*は、Arとの結合手を示す。また式(R−1)〜式(R−134)におけるnは2〜12の整数を表す。
【0108】

【0109】

【0110】

【0111】

【0112】

【0113】

【0114】

【0115】

【0116】

【0117】

【0118】

【0119】

【0120】
さらに化合物(A)としては、化合物(i)〜化合物(xxvi)が挙げられる。表1中のR1は、−D−G−E−(A−B−F−Pを、R2は、−D−G−E−(A−B−F−Pを表す。
【0121】
【表1】

【0122】
なお、化合物(xxv)及び化合物(xxvi)においては、R1で表される基及び式R2で表される基のうちのいずれか一方は、(R−57)〜(R−131)のいずれかである。
上記表1中、化合物(xv)は、Arが式(ar−74)で表される基である化合物、Arが式(ar−75)で表される基である化合物又はArが式(ar−74)で表される基である化合物と式(ar−75)で表される基である化合物との混合物のいずれかであることを意味する。
【0123】
さらに表1の化合物(i)、化合物(ii)、化合物(iv)、化合物(v)、化合物(vi)、化合物(ix)、化合物(x)、化合物(xvi)、化合物(xvii)、化合物(xviii)、化合物(xx)、化合物(xxi)、化合物(xxii)、化合物(xxiii)、化合物(xxiv)、化合物(xxv)及び化合物(xxvi)の代表的な構造式を下記に例示する。本発明の光学フィルムの作製に用いられる重合性液晶化合物として、化合物(A)は単独で用いても、異なる複数種を併用してもよい。
【0124】


【0125】

【0126】

【0127】

【0128】

【0129】

【0130】


【0131】

【0132】

【0133】

【0134】

【0135】

【0136】

【0137】

【0138】

【0139】

【0140】
また、化合物(A)としては、式(A1−1)〜式(A64−8)で表される化合物が挙げられる。*は結合手を表し、例えば式(A1−1)で表される化合物は、下記のように表される化合物である。
【0141】

【0142】

【0143】

【0144】

【0145】

【0146】

【0147】

【0148】

【0149】

【0150】

【0151】

【0152】

【0153】

【0154】

【0155】

【0156】

【0157】

【0158】

【0159】

【0160】

【0161】

【0162】

【0163】

【0164】

【0165】

【0166】

【0167】

【0168】

【0169】

【0170】

【0171】

【0172】

【0173】

【0174】

【0175】

【0176】

【0177】

【0178】

【0179】

【0180】

【0181】

【0182】

【0183】

【0184】

【0185】

【0186】

【0187】

【0188】

【0189】

【0190】

【0191】

【0192】

【0193】

【0194】

【0195】

【0196】

【0197】

【0198】

【0199】

【0200】

【0201】

【0202】

【0203】

【0204】

【0205】

【0206】

【0207】

【0208】

【0209】
化合物(A)の製造方法について以下説明する。
化合物(A)は、Methoden der Organischen Chemie、Organic Reactions、Organic Syntheses、Comprehensive Organic Synthesis、新実験化学講座等に記載されている公知の有機合成反応(例えば、縮合反応、エステル化反応、ウイリアムソン反応、ウルマン反応、ウイッティヒ反応、シッフ塩基生成反応、ベンジル化反応、薗頭反応、鈴木−宮浦反応、根岸反応、熊田反応、檜山反応、ブッフバルト−ハートウィッグ反応、フリーデルクラフト反応、ヘック反応、アルドール反応等)を、その構造に応じて、適宜組み合わせることにより、製造することができる。
【0210】
例えば、D及びDが*−O−CO−(*はArとの結合手を表す)である化合物(A)の場合には、式(1−1)
【0211】

(式中、Arは上記と同一の意味を表す。)
で表される化合物と式(1−2)
【0212】

(式中、G、E、A、B、F、P及びkは上記と同一の意味を表す。)
で表される化合物とを反応させることにより、式(1−3)
【0213】

(式中、Ar、G、E、A、B、F、P及びkは上記と同一の意味を表わす。)
で表される化合物を得、得られた式(1−3)で表される化合物と式(1−4)
【0214】

(式中、G、E、A、B、F、P及びlは上記と同一の意味を表わす。)
で表される化合物とを反応させることにより製造することができる。
【0215】
式(1−1)で表される化合物と式(1−2)で表される化合物との反応及び式(1−3)で表される化合物と式(1−4)で表される化合物との反応は、縮合剤の存在下に実施することが好ましい。
【0216】
縮合剤としては、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメト−パラ−トルエンスルホネート、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド 塩酸塩(一部水溶性カルボジイミド:WSCとして市販されている)、ビス(2、6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ビスイソプロピルカルボジイミド、等のカルボジイミド、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物、2,2’−カルボニルビス−1H−イミダゾール、1,1’−オキサリルジイミダゾール、ジフェニルホスフォリルアジド、1(4−ニトロベンゼンスルフォニル)−1H−1、2、4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート、N−(1,2,2,2−テトラクロロエトキシカルボニルオキシ)スクシンイミド、N−カルボベンゾキシスクシンイミド、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2−ブロモ−1−エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェート、2−クロロ−1−メチルピリジニウムアイオダイド、2−クロロ−1−メチルピリジニウム パラートルエンスルホネート、2−フルオロ−1−メチルピリジニウム パラートルエンスルホネート、トリクロロ酢酸ペンタクロロフェニルエステル、が挙げられる。反応性、コスト、使用できる溶媒の点から、縮合剤としてはジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド 塩酸塩、ビス(2、6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ビスイソプロピルカルボジイミド、2,2’−カルボニルビス−1H−イミダゾールがより好ましい。
【0217】
組成物(A)は、重合性液晶化合物として、重合性基を有し、かつ化合物(A)とは異なる液晶化合物(以下「液晶化合物(A1)」という場合がある)を含んでいてもよい。液晶化合物(A1)の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物等が挙げられる。
【0218】
液晶化合物(A1)としては、例えば、式(F)で表される化合物(以下「化合物(F)」という場合がある)等が挙げられる。
【0219】
11−E11−(B11−A11−B12−G (F)
[式(F)中、A11は、炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜18の2価の脂環式炭化水素基を表し、該芳香族炭化水素基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、フルオロ基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、フルオロ基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又はで置換されていてもよい。
11及びB12は、それぞれ独立に、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−C(=O)−NR16−、−NR16−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−CHO−、−CFO−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)又は単結合を表す。R16は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、炭素数1〜13のフルオロアルキル基、炭素数1〜13のN−アルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基又は−E12−P12を表す。
11及びE12は、炭素数1〜18のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
11及びP12は、重合性基を表す。
tは、1〜5の整数を表す。tが2以上の整数である場合、複数のB11及びA11は、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0220】
11及びP12としては、化合物(A)のP及びPと同様の基が挙げられる。より低温での硬化が可能であることから光重合性基が好ましく、ラジカル重合性基又はカチオン重合性基が好ましく、特に取り扱いが容易な上、化合物(F)の製造も容易であることから、式(P−1)〜式(P−5)で表される基が好ましく、ビニル基、イソプロペニル基、オキシラニル基、3−メチルオキシラン−2−イル基、3−メチルオキセタン−3−イル基、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基がより好ましく、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基が特に好ましい。
【0221】

【0222】
[式(P−1)〜(P−5)中、R17〜R21はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は水素原子を表す。*は、B11との結合手を表す。]
【0223】
11の芳香族炭化水素基及び脂環式炭化水素基の炭素数は、例えば3〜18であり、5〜12であることが好ましく、5又は6であることが特に好ましい。A11としては、シクロヘキサン−1,4−ジイル基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
【0224】
11及びE12としては、炭素数1〜18のアルカンジイル基であり、直鎖状であるか分岐が1箇所である炭素数1〜12のアルカンジイル基が好ましい。該アルカンジイル基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
【0225】
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基、ウンデカンジイル基、ドデカンジイル基、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−及び−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−等が挙げられる。
【0226】
化合物(F)のうち、tが4であり、かつGが−E12−P12である化合物の具体例として式(I−1)〜式(I−4)で表される化合物が挙げられる。
下記式において、式中k1及びk2は、2〜12の整数を表す。これらの液晶化合物であれば、合成が容易であり、市販されている等、入手が容易である。
【0227】

【0228】
化合物(F)のうち、tが4であり、かつGが−E12−P12以外の基である化合物の具体例として式(II−1)〜式(II−4)で表される化合物が挙げられる。
【0229】

【0230】
化合物(F)のうち、tが3であり、かつGが−E12−P12である化合物の具体例として式(III−1)〜式(III−26)で表される化合物が挙げられる。
【0231】

【0232】

【0233】

【0234】
化合物(F)のうち、tが3であり、かつGが−E12−P12以外の基である化合物の具体例として式(IV−1)〜式(IV−19)表される化合物が挙げられる。
【0235】

【0236】

【0237】
化合物(F)のうち、tが2であり、かつGが−E12−P12である化合物の具体例として式(V−1)及び式(V−2)で表される化合物が挙げられ、tが2であり、かつGが−E12−P12以外の基である化合物の具体例として式(VI−1)〜式(VI−6)で表される化合物等が挙げられる。
【0238】


【0239】
化合物(A)の含有量は、液晶化合物(A1)と化合物(A)との合計量100質量部に対して、10〜100質量部が好ましく、より好ましくは30〜100質量部である、さらに好ましくは60〜100質量部である。液晶化合物(A1)の含有量は、液晶化合物(A1)と化合物(A)との合計量100質量部に対して、0〜90質量部が好ましく、より好ましくは0〜70質量部である、さらに好ましくは0〜40質量部である。化合物(A)及び液晶化合物(A1)の含有量が上記範囲内であると、優れた偏光変換が可能となる。
本発明の光学フィルムは、化合物(A)に由来する構造単位の含有量が多いほど、色抜けは低減される。
【0240】
組成物(A)は、重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤は、光や熱の作用により、ラジカルや酸を発生し、組成物(A)に含まれる重合性液晶化合物の重合を開始しうる化合物である。重合開始剤としては、低温で重合反応することができる点で、光重合開始剤であることが好ましく、光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤がより好ましい。重合開始剤を含有することで、光学フィルムの耐久性が向上する。
【0241】
熱重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の過酸化物等が挙げられる。
光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジルケタール等のベンジルケタール類;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニル−2,2−ジメトキシ−1−エタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン類;2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジルブタン−1−オン等のα−アミノケトン類、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩等が挙げられる。イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てBASFジャパン(株)製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学(株)製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬(株)製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152又はアデカオプトマーSP−170(以上、全て(株)ADEKA製)等市販されている光重合開始剤を使用することもできる。
重合開始剤の含有量は、化合物(A)と液晶化合物(A1)との合計量100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部が好ましく、より好ましくは0.5質量部〜10質量部である。上記範囲内であれば、化合物(A)や液晶化合物(A1)等の重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0242】
組成物(A)は、光増感剤を含んでもよい。光増感剤としては、例えばキサントン又はチオキサントン等のキサントン系化合物(例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等)、アントラセン又はアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン系化合物(例えば、ジブトキシアントラセン等)、フェノチアジン或いはルブレンを挙げることができる。
【0243】
光増感剤を用いることにより、重合性液晶化合物の重合を高感度化することができる。光増感剤の含有量は、化合物(A)と液晶化合物(A1)との合計量100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部が好ましく、0.5質量部〜10質量部がより好ましい。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0244】
組成物(A)は、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン又はアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2、6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類或いはβ−ナフトール類等を挙げることができる。
【0245】
重合禁止剤を用いることにより、重合性液晶化合物の重合を制御することができ、さらに組成物の安定性を向上させることができる。
重合禁止剤の含有量は、化合物(A)と液晶化合物(A1)との合計量100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部が好ましく、0.5質量部〜10質量部がより好ましい。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0246】
組成物(A)は、溶媒を含むことが好ましい。
溶媒としては、組成物(A)を構成する成分を溶解し、重合性液晶化合物の重合に関与しない溶媒であれば特に限定されない。具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶媒;
酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の塩素系脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の非塩素系芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶媒;クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素含有溶媒等が挙げられる。
これら溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。かかる溶媒は、水を含んでいてもよい。
【0247】
溶媒の含有量は、組成物(A)に対して、50〜95質量%であることが好ましい。
さらに、組成物(A)の粘度は、10mPa・s以下が好ましく、0.1〜7mPa・sがより好ましい。粘度が上記範囲内であると、塗布しやすく、本発明の光学フィルムを所望の膜厚に調整することができる。粘度は溶媒の含有量で調整することができる。
【0248】
組成物(A)は、レベリング剤を含んでもよい。
レベリング剤としては、放射線硬化塗料用添加剤(例えば、BYK−352,BYK−353,BYK−361N;ビックケミージャパン製)、塗料添加剤(例えば、SH28PA、DC11PA、ST80PA;東レ・ダウコーニング(株)製)、塗料添加剤(例えば、KP321、KP323、X22−161A、KF6001;信越化学工業(株)製)又はフッ素系添加剤(例えば、F−445、F−470、F−477、F−479;DIC(株)製)等が挙げられる。
レベリング剤を用いることにより、本発明の光学フィルムを平滑にすることができる。さらに、組成物(A)の流動性を制御したり、本発明の光学フィルムの架橋密度を調整したりすることもできる。レベリング剤の含有量は、液晶化合物(A1)と化合物(A)との合計量100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。
【0249】
本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。
本発明の光学フィルムは、組成物(A)を基板に塗布し、溶媒を除去し、該組成物に含まれる重合性成分を重合することにより得られる。
【0250】
基板への塗布方法としては、例えば押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法又はダイコーティング法等が挙げられる。またディップコーター、バーコーター又はスピンコーター等のコーターを用いて塗布する方法等が挙げられる。
【0251】
基板としては、ガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム又は透光性フィルム等を挙げることができる。板状でもフィルム状でもよい。前記透光性フィルムとしては、ポリオレフィンフィルム(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等)、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム又はポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。
基板を用いると、本発明の光学フィルムを製造したり、運搬したり、保管したりする際に破れ等なく容易に取り扱うことができる。
【0252】
本発明の光学フィルムを製造する際、基板には配向膜が形成されていることが好ましい。好ましくは、基板上に配向膜を形成した後、配向膜の上に組成物(A)を塗布することが好ましい。配向膜は、組成物(A)の塗布等により溶解しない溶剤耐性を有することが好ましい。また、溶剤の除去や液晶の配向ための加熱処理において耐熱性を有することが好ましい。さらに、ラビングによる摩擦等による剥がれ等が生じない配向膜であることが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーまたは配向性ポリマーを含有する組成物からなることが好ましい。配向膜を用いることにより、重合性液晶化合物の配向が容易になり、得られる光学フィルムの複屈折の面内ばらつきが小さくなる。また、配向の制御が容易でなり、水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向、傾斜配向等の様々な配向を得ることができる。
【0253】
上記配向性ポリマーとしては、例えば分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸エステル類等のポリマーを挙げることができる。これらのポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上混ぜたり、共重合体したりしてもよい。これらのポリマーは、脱水や脱アミンなどによる重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等で容易に得ることができる。
【0254】
配向性ポリマーは、溶媒に溶解して、塗布することができる。溶媒は、特に制限はないが、具体的には、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン
、メチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒;ペンタン、ヘキサン又はヘプタンなどの非塩素系脂肪族炭化水素溶媒;トルエン又はキシレンなどの非塩素系芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリルなどのニトリル溶媒;テトラヒドロフラン又はジメトキシエタンなどのエーテル溶媒;クロロホルム又はクロロベンゼンなどの塩素含有溶媒;などが挙げられる。これら溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0255】
また配向膜を形成するために、市販の配向膜材料を使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)又はオプトマー(登録商標、JSR(株)製)などが挙げられる。
【0256】
前記基板上に、市販の配向膜材料や配向性ポリマーまたは配向性ポリマーを含有する組成物を塗布し、その後、アニールすることにより、前記基板上に配向膜を形成することができる。市販の配向膜材料や配向性ポリマーまたは配向性ポリマーを含有する組成物を基板に塗布する方法としては、組成物(A)を基板に塗布する方法として挙げたものと同じ方法が挙げられる。
このようにして得られる配向膜の厚さは、例えば10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmである。上記範囲であれば、重合性液晶化合物を該配向膜上で所望の角度に配向させることができる。
【0257】
また配向膜は、必要に応じてラビングもしくは偏光UV照射を行うことができる。これらにより重合性液晶化合物を所望の方向に配向させることができる。
配向膜をラビングする方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを、ステージに載せられて搬送されている基板上の配向膜に接触させる方法が挙げられる。ラビングもしくは偏光UV照射を行う時に、マスキングを行えば、パターンを有する光学フィルムを作製することもできる。
【0258】
波長λnmの光に対する位相差値(Re(λ))は、複屈折率Δnと本発明の光学フィルムの厚みdとの積で表される(Re(λ)=Δn×d)。本発明の光学フィルムにおいて、位相差値(Re(λ))は、本発明の光学フィルム中に含まれる化合物(A)に由来する構造単位の含有量を適宜選択し、さらに本発明の光学フィルムの厚みdを調整することにより、所望の値を得ることができる。位相差値(Re(λ))は、その用途により、30〜300nmの範囲で適宜選択すればよい。
【0259】
具体的に位相差値を調整するには、化合物(A)の含有量が異なる組成物を2〜5種類調製し、それぞれの組成物について、同じ膜厚の本発明の光学フィルムを製造してこれらの位相差値を求め、その結果から、組成物中の化合物(A)の含有量と本発明の光学フィルムの位相差値との相関を求め、得られた相関関係から、上記膜厚における本発明の光学フィルムに所望の位相差値を与えるために必要な化合物(A)の含有量を決定することができる。
また、化合物(A)の含有量が決定している組成物について、得られる光学フィルムの厚みdを適宜変更することによっても、位相差値を調整することができる。
【0260】
本発明の光学フィルムを位相差板として用いる場合、厚みdは、0.1〜10μmであることが好ましく、光弾性を小さくする点で0.5〜3μmであることがより好ましい。
λ/4板として用いる場合は、得られる位相差板のRe(550)を113〜163nm、好ましくは、130〜150nmに調整すればよく、λ/2板として用いる場合は、得られる位相差板のRe(550)を250〜300nm、好ましくは、265〜285nmとなるように調整すればよい。
また、本発明の光学フィルムをVA(Vertical Alingment)モード用の光学フィルムとして用いる場合、Re(550)が例えば、40〜100nm、好ましくは60〜80nmとなるように調整すればよい。
【0261】
組成物(A)を基板に塗布後、溶媒を除去する。溶媒を除去する方法としては、自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥等の方法が挙げられる。溶媒を除去する温度としては、10〜150℃であることが好ましく、25〜120℃であることがより好ましい。溶媒を除去する時間としては、10秒間〜60分間であることが好ましく、30秒間〜30分間であることがより好ましい。除去する温度及び除去する時間が、上記範囲内であれば、耐熱性の低い基板及び配向膜を用いても、本発明の光学フィルムを製造することができる。
【0262】
組成物(A)を基板した塗膜は、重合性液晶化合物を0〜150℃、好ましくは25〜120℃で配向させる。モノドメイン配向した重合性液晶化合物は、複屈折性を有する。加熱して重合性液晶化合物を配向させる場合、溶媒を除去するのと同時に行ってもよいし、溶媒を除去した後さらに加熱して配向させてもよい。
【0263】
重合性液晶化合物を配向させた状態で、塗膜中の重合性液晶化合物等を重合させることにより、本発明の光学フィルムが得られる。重合させることにより、重合性液晶化合物の配向が固定されるため、光学フィルムは熱によって複屈折が変化しにくくなる。
重合性液晶化合物を重合する方法は、重合性液晶化合物の重合性基の種類に応じて、選択すればよい。重合性液晶化合物の重合性基が光重合性基であれば光重合法が用いられ、該重合性基が熱重合性基であれば熱重合法が用いられる。光重合法によれば、低温で重合性液晶化合物を重合することができ、基板の耐熱性の選択幅が広がるという点および工業的にも製造が容易であるという点で、光重合性基を有する重合性液晶化合物を用いることが好ましい。光重合反応は、組成物(A)を塗布し重合性液晶化合物を配向させた膜に、可視光、紫外光またはレーザー光を照射することにより行われる。取り扱いの点で、紫外光が特に好ましい。
【0264】
本発明の光学フィルムは、単層で用いてもよいし、基板及び/又は配向膜等と積層させて用いてもよい。なお、本発明の光学フィルムを複数層積層する場合、それらは互いに、同一であってもよいし、異なるものを組み合わせて用いてもよい。
【0265】
本発明の光学フィルムは、アンチリフレクション(AR)フィルム等の反射防止フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、視野角拡大フィルム及び透過型液晶ディスプレイの視野角補償用光学補償フィルム等に用いられる。
本発明の光学フィルムと、偏光フィルムとを含む偏光板として用いることが好ましい。本発明の光学フィルムと偏光フィルムとを貼合することにより、楕円偏光板が得られ、該楕円偏光板にさらに本発明の光学フィルムを貼合することにより、広帯域λ/4板が得られる。
【0266】
以下の図の説明において、本発明の光学フィルムとしては、本発明の光学フィルムのみであってもよいし、本発明の光学フィルムと配向膜とが積層しているものであってもよいし、本発明の光学フィルムと配向膜と支持基材とが積層しているものであってもよい。
【0267】
本発明の偏光板としては、図1(a)〜図1(e)に示すように、(1)本発明の光学フィルム1と、偏光フィルム層2とが、直接積層された偏光板4a(図1(a))、(2)本発明の光学フィルム1と偏光フィルム層2とが、接着剤層3を介して貼り合わされた偏光板4b(図1(b))、(3)本発明の光学フィルム1と本発明の光学フィルム1’とを積層させ、さらに、本発明の光学フィルム1’と偏光フィルム層2とを積層させた偏光板4c(図1(c))、(4)本発明の光学フィルム1と本発明の光学フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本発明の光学フィルム1’上に偏光フィルム層2を積層させた偏光板4d(図1(d))、及び(5)本発明の光学フィルム1と本発明の光学フィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本発明の光学フィルム1’と偏光フィルム層2とを接着剤層3’を介して貼り合せた偏光板4e(図1(e))等が挙げられる。ここで接着剤とは、接着剤及び/又は粘着剤のことを総称していう。
【0268】
偏光フィルム層は、偏光機能を有するフィルムであればよく、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに沃素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸して沃素や二色性色素を吸着させたフィルム等が挙げられる。また、偏光フィルム層は、必要に応じて、保護フィルムとなるフィルムを備えていてもよい。
たとえば保護フィルムとしては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム及びポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。
接着剤層3及び接着剤層3’に用いられる接着剤は、透明性が高く耐熱性に優れた接着剤であることが好ましい。そのような接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤あるいはウレタン系接着剤等が用いられる。
また、偏光フィルムにおいて、図1(c)〜図1(e)に示すように、2以上の本発明の光学フィルムを直接または接着剤層を介して貼り合わせてもよい。
【0269】
本発明のフラットパネル表示装置は、本発明の光学フィルムを備えるものであり、例えば、本発明の光学フィルムと、液晶パネルとを備える液晶表示装置や、本発明の光学フィルムと、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」ともいう)パネルとを備える有機EL表示装置を挙げることができる。
本発明のフラットパネル表示装置の実施形態として、液晶表示装置と、有機EL表示装置とについて、以下詳細に述べる。
【0270】
〔液晶表示装置〕
液晶表示装置としては、例えば、図2(a)及び図2(b)に示すような液晶表示装置等が挙げられる。図2(a)に示す液晶表示装置10aは、本発明の偏光板4と液晶パネル6とを、接着層5を介して貼り合わせてなるものであり、図2(b)に示す液晶表示装置10bは、本発明の偏光板4と本発明の偏光板4’とを液晶パネル6の両面に接着層5及び接着層5’を介して貼り合わせたものである。上記構成によれば、図示しない駆動回路から液晶パネルに印加する電圧で、液晶分子の配向を変化させることにより、液晶表示装置に白黒表示させることができる。液晶パネルは、アレイ基板とカラーフィルタとを貼り合わせ、両者の間に液晶を注入及び封止したものである。
【0271】
〔有機EL表示装置〕
有機EL表示装置としては、図3に示す有機EL表示装置等が挙げられる。上記有機EL表示装置としては、本発明の偏光板4と、有機ELパネル7とを、接着層5を介して貼り合わせてなる有機EL表示装置11が挙げられる。上記有機ELパネル7は、導電性有機化合物からなる少なくとも1層の層である。上記構成によれば、図示しない駆動回路から有機ELパネルに印加する電圧で、有機ELパネルに含まれる発光性化合物を発光させることにより、有機EL表示装置に白黒表示させることができる。有機ELパネルは、発光層等の有機層、画素電極、スイッチング素子等を積層したものである。
なお、上記有機EL表示装置11において、偏光板4は、広帯域円偏光板として機能するものであることが好ましい。広帯域円偏光板として機能するものであると、有機EL表示装置11の表面において外光の反射を防止することができる。
【0272】
〔カラーフィルタ〕
図4は、本発明のカラーフィルタ14を示す概略図である。
カラーフィルタ14は、本発明の光学フィルム12の上にカラーフィルタ層13が形成されてなるカラーフィルタである。カラーフィルタ層とは、可視光領域の特定の光を吸収する機能を有する層であり、例えば、白色光を赤、青、緑等の色の光に変換する層である。
カラーフィルタ14の製造方法の一例を説明する。まず、支持基材上に、配向膜材料を塗布し、ラビング処理又は偏光UV処理を施して、配向膜を形成する。次に得られた配向膜上に、組成物(A)を、得られる光学フィルムが所望の位相差値になるよう厚みを調製しながら塗布して、膜を形成する。膜に含まれる重合性液晶化合物を配向させて得られた本発明の光学フィルム12上に、カラーフィルタ層13を形成する。本発明の光学フィルム12は、重合性液晶化合物が配向する向きが異なる領域を複数有するパターン形成された光学フィルムであってもよい。パターン形成された光学フィルムは、前記のラビング処理又は偏光UV処理を行う際にマスクを介して行うことにより、得ることができる。
【実施例】
【0273】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0274】
合成例1
<化合物(A11−1)の合成>
化合物(A11−1)は下記のスキームに従って合成した。
【0275】


【0276】
[4,6−ジメチルベンゾフランの合成]
3,5−ジメチルフェノール25gをN,N’−ジメチルアセトアミド150.0gに溶解させた。溶液を氷浴により冷却した後に、水酸化ナトリウム9.82を加えた。室温で1時間攪拌し、クロロアセトアルデヒドジメチルアセタール25.49gを滴下した。100℃で15時間攪拌し、反応液を水1000mL、メチルイソブチルケトン400mLに加えて分液した。有機層を回収し、2回500mLの1N−水酸化ナトリウム水溶液で、さらに2回800mLの純水で有機層を洗浄した。有機層を回収後、無水硫酸ナトリウムで脱水し、エバポレータにて減圧濃縮させ淡赤色粘長液体を得た。一方で、400gのトルエンと、オルトリン酸3.01gを混合し110℃に加熱した。該溶液に淡赤色粘長液体をトルエン100mLに溶解させた溶液を滴下した。3時間110℃で攪拌した後、室温まで冷却した。反応液を1N−炭酸水素ナトリウム水溶液で二回洗浄し、最後に純水500mLで洗浄した。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、エバポレータにて減圧濃縮、真空乾燥させて、4,6−ジメチルベンゾフランを16.5g淡赤色粘長液体として得た。収率は3,5−ジメチルフェノール基準で55%であった。
【0277】
[2−ホルミル−4,6−ジメチルベンゾフランの合成]
4,6−ジメチルベンゾフラン21.62gをN,N’−ジメチルホルムアミド28.4gに溶解させた。溶液を水浴により冷却した後に、オキシ塩化リン25gを滴下した。ピンク色溶液を室温で1時間攪拌した後、100℃で10時間攪拌した。反応液を室温まで放冷し、純水100mLを加えて一時間攪拌後、1N炭酸水素ナトリウムで中和した。pHを8に調節後、トルエンと分液した。有機層を回収し、活性炭を2.6g加えて濾過した。エバポレータにて減圧濃縮し、残渣をクロロホルムに溶解させ、ヘプタンにて結晶化させた。結晶を濾取、真空乾燥して、2−ホルミル−4,6−ジメチルベンゾフランを19.5g淡黄色粉末として得た。収率は4,6−ジメチルベンゾフラン基準で76%であった。
【0278】
[4,6−ジメチルベンゾフラン−2−カルボン酸の合成]
2−ホルミル−4,6−ジメチルベンゾフラン19.50g、アミド硫酸13.04gを100mLの純水と混合した。氷浴で冷却し、亜塩素酸ナトリウム12.15gの水100mL溶液を滴下した。水浴で36時間反応させた。反応溶液にトルエン100mL、水酸化カリウム25gを加えてpHを12に調整した。分液し、水層を回収し水層をさらに200mLのトルエンで洗浄した。水層を回収し、2N−塩酸にてpHを2にした後、トルエン400mLを加えて分液した。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、エバポレータにて減圧濃縮、真空乾燥して、4,6−ジメチルベンゾフラン−2−カルボン酸を14.27g黄色粉末として得た。収率は2−ホルミル−4,6−ジメチルベンゾフラン基準で67%であった。
【0279】
[化合物(11−a)の合成]
2,5−ジメトキシアニリン11.49g、4,6−ジメチルベンゾフラン−2−カルボン酸14.27g、トリエチルアミン7.59g、N,N’−ジメチルアミノピリジン1.83g及び脱水N,N’−ジメチルアセトアミド100.0gを混合した。得られた溶液を氷浴にて冷却した後、BOP試薬34.85gを加えて室温で24時間反応させた。得られた混合液に水、メタノールの混合溶液(水2体積部、メタノール1体積部)を加えて晶析させた。得られた沈殿を濾取し水―メタノールの混合溶液(水3体積部、メタノール2体積部)で洗浄、真空乾燥して、淡黄色粉末として化合物(11−a)を16.2g得た。収率は2,5−ジメトキシアニリン基準で66%であった。
【0280】
[化合物(11−b)の合成]
化合物(11−a)16.0g、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジホスフェタン−2,4−ジスルフィド(ローソン試薬)9.2g及びトルエン100gを混合し、得られた混合液を80℃に昇温して12時間反応させた。冷却後濃縮し、化合物(11−b)とローソン試薬の分解物とを主成分とする赤色粘長固体を得た。
【0281】
[化合物(11−c)の合成例]
前項で得られた化合物(11−b)を含む混合物、水酸化ナトリウム11.8g(262mmol)及び水250gを混合し、得られた混合液を氷冷下で反応させた。続いてフェリシアン化カリウム44.17gを含む水溶液を、氷冷下で加え、反応させた。60℃で12時間反応させて、析出した黄色沈殿を濾取した。濾取した沈殿を水、次いでヘキサンで洗浄し、トルエンで結晶化させた。得られた黄色を真空乾燥して、化合物(11−c)を主成分とする黄土色固体4.1gを得た。収率は化合物(11−a)基準で25%であった。
【0282】
[化合物(11−d)の合成例]
化合物(11−c)4.0g及び塩化ピリジニウム40.0g(10倍質量)を混合し、180℃に昇温して3時間反応させた。得られた混合液を氷に加え、得られた沈殿を濾取した。水で懸洗後、トルエンで洗浄、真空乾燥させて、化合物(11−d)を主成分とする黄土色固体3.4gを得た。収率は化合物(11−c)基準で93%であった。
【0283】
[化合物(A11−1)の合成例]
化合物(11−d)3.00g、化合物(A)8.47g、ジメチルアミノピリジン0.12g及びクロロホルム40mLを混合した。得られた混合液にN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド2.92gを氷冷下で加えた。得られた反応溶液を室温で終夜反応させ、シリカゲル濾過したのち、減圧濃縮した。残渣にメタノールを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、クロロホルムに再溶解させ0.3gの活性炭を加えて、室温で一時間攪拌した。溶液を濾過して濾液をエバポレータにて1/3まで減圧濃縮後、攪拌しながらメタノールを加えて、生成した白色沈殿を濾取し、ヘプタンで洗浄、真空乾燥して化合物(A11−1)を白色粉末として7.60g得た。収率は化合物(11−d)基準で71%であった。
【0284】
化合物(A11−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.45〜1.85(m、24H)、2.36〜2.87(m、18H)、3.93〜3.97(t、4H)、4.15〜4.20(t、4H)、5.79〜5.84(dd、2H)、6.07〜6.17(m、2H)、6.37〜6.45(m、2H)、6.87〜7.01(m、9H)、7.20(s,1H)、7.23(s、2H)、7.53(s,1H)
【0285】
得られた化合物(A11−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって確認した。化合物(A11−1)は、昇温時において、105℃から137℃まで粘性の高い中間相を示した。液晶相の判別は困難であったが、137℃以上で明確なネマチック液晶相を呈した。ネマチック液晶相は180℃以上まであり、降温時においては、61℃までネマチック相を呈し結晶化した。
【0286】
合成例2
<化合物(A5−1)の合成>
化合物(A5−1)は下記のスキームに従って合成した。
【0287】

【0288】
[化合物(5−a)の合成]
2,5−ジメトキシアニリン18.9g、ベンゾフラン−2−カルボン酸20.0g及び脱水クロロホルム125.0gを混合し反応させた。得られた混合液にN,N−ジメチルアミノピリジン1.51gを加えた。得られた混合液を氷浴で冷却して、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド28.0gを加えて一時間反応させた。その後室温まで戻し、終夜反応させた。得られた混合液をシリカゲルを通して濾過して白色沈殿及び褐色成分を除去後、減圧濃縮した。残渣に酢酸エチル−ヘプタンの1/2(v/v)溶液を加えて結晶化させた。析出した結晶を濾過、真空乾燥して、淡黄色粉末として化合物(5−a)を14.4g得た。収率は2,5−ジメトキシアニリン基準で39%であった。
【0289】
[化合物(5−b)の合成]
化合物(5−a)13.0g、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジホスフェタン−2,4−ジスルフィド(ローソン試薬)9.2g及びトルエン100gを混合し、得られた混合液を80℃に昇温して5時間反応させた。冷却後濃縮し、化合物(5−b)とローソン試薬の分解物とを主成分とする赤色粘長固体を得た。
【0290】
[化合物(5−c)の合成]
前項で得られた化合物(5−b)を含む混合物、水酸化ナトリウム10.5g及び水250gを混合し、得られた混合液を氷冷下で反応させた。続いてフェリシアン化カリウム39.3gを含む水溶液を、氷冷下で加え、反応させた。室温で12時間反応させて、析出した黄色沈殿を濾取した。濾取した沈殿を水、次いでヘキサンで洗浄し、エタノールで洗浄して、真空乾燥して、化合物(5−c)を主成分とする淡黄色固体9.3gを得た。収率は化合物(5−a)基準で69%であった。
【0291】
[化合物(5−d)の合成]
化合物(5−c)7.0g及び塩化ピリジニウム35.0g(5倍質量)を混合し、180℃に昇温して2時間反応させた。得られた混合液を冷却後、水を加え、得られた沈殿を濾取し、水、ヘキサンで洗浄して、化合物(5−d)を主成分とする固体6.5gを得た。収率は化合物(5−c)基準で100%であった。
【0292】
[化合物(A5−1)の合成]
化合物(5−d)1.60g、化合物(A)4.96g、ジメチルアミノピリジン0.07g及びクロロホルム30mLを混合した。得られた混合液にN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド1.71gを氷冷下で加えた。得られた反応溶液を室温で終夜反応させ、シリカゲル濾過したのち、減圧濃縮した。残渣にメタノールを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、クロロホルムに再溶解させた。得られた溶液を攪拌しながらメタノールを加えて、生成した白色沈殿を濾取し、エタノールで洗浄、真空乾燥して化合物(A5−1)を白色粉末として4.73g得た。収率は化合物(5−d)基準で77%であった。
【0293】
化合物(A5−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.45〜1.91(m、24H)、2.35〜2.83(m、12H)、3.92〜3.97(t、4H)、4.15〜4.20(t、4H)、5.79〜5.84(dd、2H)、6.07〜6.17(m、2H)、6.37〜6.44(m、2H)、6.87〜7.01(m、8H)、7.25(s、2H)、7.31〜7.34(t、1H)、7.40〜7.42(t、1H)、7.55〜7.60(m、2H)、7.68〜7.71(d、1H)
【0294】
得られた化合物(A5−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって確認した。化合物(A5−1)は、昇温時において、139℃から180℃以上までネマチック相を呈し、降温時において、93℃までネマチック相を呈し結晶化した。
【0295】
合成例3
<化合物(A10−1)の合成>
化合物(A10−1)は下記のスキームに従って合成した。
【0296】

【0297】
[5−イソブチルベンゾフランの合成]
4−イソプロピルフェノール40gをN,N’−ジメチルアセトアミド240.0gに溶解させた。溶液を氷浴により冷却した後に、水素化ナトリウム10.9gを10回に分けて加えた。室温で1時間攪拌し、水素発生が終了したら、クロロアセトアルデヒドジメチルアセタール33.17gを滴下した。80℃で5時間攪拌し、反応終了を確認したら、反応液を水1000mL、メチルイソブチルケトン400mLに加えて分液した。有機層を回収し、さらに2回800mLの純水で有機層を洗浄した。有機層を回収後、無水硫酸ナトリウムで脱水し、エバポレータにて減圧濃縮させ赤色粘長液体を得た。一方で、400gのトルエンと、オルトリン酸2.61gを混合し110℃に加熱した。該溶液に赤色粘長液体をトルエン100mLに溶解させた溶液を滴下した。3時間110℃で攪拌した後、室温まで冷却した。反応液を1N−炭酸水素ナトリウム水溶液で二回洗浄し、最後に純水500mLで洗浄した。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、エバポレータにて減圧濃縮、真空乾燥させて、5−イソブチルベンゾフランを41.9g淡赤色粘長液体として得た。収率は4−イソプロピルフェノール基準で90%であった。
【0298】
[2−ホルミル−5−イソブチルベンゾフランの合成]
5−イソブチルベンゾフラン25.77gをN,N’−ジメチルホルムアミド28.4gに溶解させた。溶液を水浴により冷却した後に、オキシ塩化リン25gを滴下した。ピンク色溶液を室温で1時間攪拌した後、100℃で10時間攪拌した。反応液を室温まで放冷し、純水100mLを加えて一時間攪拌後、1N炭酸水素ナトリウムで中和した。pHを8に調節後、トルエンと分液した。有機層を回収し、活性炭を2.6g加えて濾過した。エバポレータにて減圧濃縮し、残渣をクロロホルムに溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルムーヘプタン1:1vol/vol→クロロホルム100vol%)にかけた。先頭成分を取りエバポレータにて濃縮、真空乾燥して、2−ホルミル−5−イソブチルベンゾフランを8.5g淡赤色粘長液体として得た。収率は5−イソブチルベンゾフラン基準で28%であった。
【0299】
[5−イソブチルベンゾフラン−2−カルボン酸の合成]
2−ホルミル−5−イソブチルベンゾフラン16.40g、アミド硫酸9.43gを60mLの純水と混合した。氷浴で冷却し、亜塩素酸ナトリウム8.78gの水50mL溶液を滴下した。水浴で36時間反応させた。反応溶液にトルエン100mL、水酸化カリウム5gを加えてpHを12に調整した。分液し、水層を回収し水層をさらに300mLのトルエンで洗浄した。水層を回収し、2N−塩酸にてpHを2にした後、トルエン300mLを加えて分液した。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、エバポレータにて減圧濃縮、真空乾燥して、5−イソブチルベンゾフラン−2−カルボン酸を6.7g淡赤色粘長液体として得た。収率は2−ホルミル−5−イソブチルベンゾフラン基準で38%であった。
【0300】
[化合物(10−a)の合成]
2,5−ジメトキシアニリン4.71g、5−イソブチルベンゾフラン−2−カルボン酸8.71g、トリエチルアミン3.11g、N,N’−ジメチルアミノピリジン0.75g及び脱水N,N’−ジメチルアセトアミド35.0gを混合した。得られた溶液を氷浴にて冷却した後、BOP試薬14.28gを加えて室温で24時間反応させた。得られた混合液に水、メタノールの混合溶液(水2体積部、メタノール1体積部)を加えて晶析させた。得られた沈殿を濾取し水―メタノールの混合溶液(水1体積部、メタノール1体積部)で洗浄、真空乾燥して、淡黄色粉末として化合物(10−a)を5.7g得た。収率は2,5−ジメトキシアニリン基準で53%であった。
【0301】
[化合物(10−b)の合成]
化合物(10−a)4.7g、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジホスフェタン−2,4−ジスルフィド(ローソン試薬)9.2g及びトルエン100gを混合し、得られた混合液を80℃に昇温して5時間反応させた。冷却後濃縮し、化合物(10−b)とローソン試薬の分解物とを主成分とする赤色粘長固体を得た。
【0302】
[化合物(10−c)の合成]
前項で得られた化合物(10−b)を含む混合物、水酸化ナトリウム3.1g及び水50gを混合し、得られた混合液を氷冷下で攪拌した。続いてフェリシアン化カリウム11.94gを含む水溶液を、氷冷下で加え、反応させた。室温で24時間反応させて、析出した黄色沈殿を濾取した。濾取した沈殿を水、次いでヘキサンで洗浄し、メタノールで洗浄した。黄色粉末をヘプタン−酢酸エチル1:1(体積比)の溶媒を加えて、室温で1時間攪拌後、氷浴で終夜静置した。得られた淡黄色粉末を濾取、真空乾燥させて、化合物(10−c)を主成分とする淡黄色固体2.5gを得た。収率は化合物(10−a)基準で51%であった。
【0303】
[化合物(10−d)の合成]
化合物(10−c)2.5g及び塩化ピリジニウム12.5g(5倍質量)を混合し、180℃に昇温して2時間反応させた。得られた混合液を冷却後、水を加え、得られた沈殿を濾取し、水、トルエン、ヘキサンで洗浄して、化合物(10−d)を主成分とする固体1.8gを得た。収率は化合物(10−c)基準で77%であった。
【0304】
[化合物(A10−1)の合成]
化合物(10−d)1.80g、化合物(A)4.92g、ジメチルアミノピリジン0.07g及びクロロホルム30mLを混合した。得られた混合液にN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド1.70g(13.4mmol)を氷冷下で加えた。得られた反応溶液を室温で終夜反応させ、シリカゲル濾過したのち、減圧濃縮した。残渣にメタノールを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、クロロホルムに再溶解させた。得られた溶液を攪拌しながらメタノールを加えて、生成した白色沈殿を濾取し、エタノールで洗浄、シリカゲルカラムクロマトグラフィーでクロロホルム80vol%−アセトン20vol%で溶出する第一成分を回収、エバポレータにて減圧濃縮後、冷メタノールで結晶化させた。生成した淡黄色粉末を濾取、真空乾燥して化合物(A10−1)を白色粉末として4.60g得た。収率は化合物(10−d)基準で72%であった。
【0305】
化合物(A10−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)0.81〜0.87(t、3H)、1.29〜1.31(d、3H)、1.48〜1.79(m、26H)、2.35〜2.47(m、8H)、2.63〜2.83(m、5H)、3.93〜3.97(m、4H)、4.15〜4.20(t、4H)、5.79〜5.84(dd、2H)、6.07〜6.17(m、2H)、6.37〜6.44(m、2H)、6.87〜7.02(m、8H)、7.23(m、3H)、7.48〜7.50(m、3H)
【0306】
得られた化合物(A10−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって確認した。化合物(A10−1)は、昇温時において、144℃から粘性の高い相を示し169℃で透明点を示した。降温時において、167℃から明確なネマチック相を有し、105℃までネマチック相を呈し結晶化した。
【0307】
合成例4
<化合物(z−1)の合成>
化合物(z−1)は以下のスキームで合成した。

【0308】
[化合物(z−a)の合成]
2,5−ジメトキシアニリン52.3g、トリエチルアミン69.0g及び脱水クロロホルム365.7gを混合し攪拌し、さらに得られた混合液に3−チオフェンカルボン酸クロリド50.0gを加えた。その後氷冷下で攪拌後、混合液を水中に投入した。分離した有機層を水及び塩酸で洗浄した。得られた有機層を、減圧濃縮し、得られた固体をヘキサンで洗浄して、化合物(z−a)を主成分とする固体82.1gを得た。収率は2,5−ジメトキシアニリン基準で91%であった。
【0309】
[化合物(z−b)の合成]
化合物(z−a)を81.0g、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジホスフェタン−2,4−ジスルフィド(ローソン試薬)64.7g及びトルエン234gを混合し、得られた混合液を80℃に昇温して攪拌した。冷却後濃縮し、化合物(z−b)とローソン試薬の分解物とを主成分とする赤色粘長固体を得た。
【0310】
[化合物(z−c)の合成]
前項で得られた化合物(z−b)を含む混合物、水酸化ナトリウム73.8g及び水750gを混合し、得られた混合液を氷冷下で攪拌した。続いてフェリシアン化カリウム257.8gを含む水溶液を、氷冷下で加え、反応させた。室温で24時間反応させて、析出した黄色沈殿を濾取した。濾取した沈殿を水、エタノールで洗浄し、加熱還流して溶解させて、氷浴で終夜静置した。得られた淡黄色粉末を濾取、真空乾燥させて、化合物(z−c)を主成分とする黄緑色固体49.1gを得た。収率は化合物(z−a)基準で58%であった。
【0311】
[化合物(z−d)の合成]
化合物(z−c)40.0g及び塩化ピリジニウム200gを混合し、180℃に昇温して6時間反応させた。得られた混合液を冷却後、水を加え、得られた沈殿を濾取し、水、トルエン、ヘキサンで洗浄して、化合物(z−d)を主成分とする固体36.4gを得た。収率は化合物(z−c)基準で101%であった。
【0312】
[化合物(z−1)の合成]
化合物(z−d)3.00g、化合物(A)12.09g、ジメチルアミノピリジン0.15g及びクロロホルム181gを混合した。得られた混合液にN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド5.07gを室温下で加えた。得られた反応溶液を室温で2時間反応させ、反応液にメタノールを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、クロロホルムに再溶解させた。得られた溶液を攪拌しながらエタノールを加えて、生成した粉末を濾取、真空乾燥して化合物(z−1)を白色粉末として6.97g得た。収率は化合物(z−d)基準で55%であった。
【0313】
化合物(z−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)δ(ppm)1.43〜1.83(m、24H)、2.29〜2.82(m、12H)、3.92〜3.97(t、4H)、4.15〜4.20(t、4H)、5.81〜5.85(dd、2H)、6.08〜6.18(m、2H)、6.37〜6.45(m、2H)、6.86〜7.03(m、8H)、7.12(dt、1H)、7.19(s、2H)、7.44(dd、1H)、7.62(dd、1H)、7.98(dd、1H)
【0314】
得られた化合物(z−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行った。化合物(z−1)は、昇温時において、111℃から125℃までスメクチック相を呈し、125℃から242℃までネマチック相を呈し、降温時において、242℃から82℃までネマチック相を呈した。
【0315】
合成例5
<化合物(z−2)の合成>

原料の化合物(z−a)を、2,5−ジメトキシアニリンと4−フルオロ安息香酸クロリドとの反応で得られる化合物(z−2a)に変える以外は合成例4と同様の方法にて、化合物(z−2)を得た。収率は化合物(z−2a)基準で46%であった。
【0316】
化合物(z−2)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.44〜1.90(m、24H)、2.34〜2.81(m、12H)、3.92〜4.00(t、4H)、4.15〜4.20(t、4H)、5.79〜5.84(m、2H)、6.07〜6.18(m、2H)、6.36〜6.44(m、2H)、6.86〜7.02(m、8H)、7.14〜7.21(m、4H)、8.00〜8.07(m、2H)
【0317】
得られた化合物(z−2)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行った。化合物(z−2)は、昇温時において、137℃から146℃までスメクチック相を呈し、146℃から170℃以上までネマチック相を呈し、降温時において、78℃までネマチック相を呈し結晶化した。
【0318】
<組成物の調整>
表2に記載される成分をそれぞれ混合し、80℃で1時間攪拌した後、室温まで冷却して組成物1〜6を調製した。
【0319】
【表2】

【0320】
重合性液晶化合物;
(A11−1):合成例1で得られた化合物
(A5−1):合成例2で得られた化合物
(A10−1):合成例3で得られた化合物
(z−0):下記式で表される化合物(特表平11−513019号公報に記載される化合物)

(z−1):合成例4で得られた化合物
(z−2):合成例5で得られた化合物
重合開始剤;
イルガキュア369;2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジルブタン−1−オン(BASFジャパン社製)
イルガキュア819;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASFジャパン社製)
レベリング剤;BYK361N(ビックケミージャパン社製)
溶媒:シクロペンタノン
【0321】
<吸光度測定>
表2に記載の重合性液晶化合物をクロロホルムにそれぞれ溶解し、濃度10−4mol/lの溶液を得た。溶液を石英セル(10mm長四角セル)に入れ、紫外可視赤外分光光度計(UV−3150、島津製作所製)を用いて溶液の吸光度を300〜800nmの範囲で測定した。400nmにおける吸光度を表2に示す。
重合性液晶化合物の極大吸収波長λを表3に示す。
【0322】
(実施例1〜3、比較例1〜3)
<光学フィルムの作製>
ガラス基板に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液を塗布した後、120℃で60分加熱乾燥し、ガラス基板上に厚さ89nmのポリビニルアルコール膜を得た。続いて、ポリビニルアルコール膜の表面にラビング処理を施し、配向膜及びガラス基板の積層体を得た。得られた積層体のラビング処理を施した面に、表1の組成の溶液をスピンコート法により塗布した。溶液が塗布された積層体を、ホットプレート上で1分間乾燥させた後、加熱しながらで2400mJ/cmの紫外線を照射して、光学フィルムを得た。
【0323】
<配向秩序度S(λ)の測定>
得られた光学フィルムを紫外可視赤外分光光度計(UV−3150、島津製作所製)に偏光子付サンプルホルダー(島津製作所製)を設置し、光学フィルムに対して偏光を射出できるように、光学フィルムを前記サンプルホルダーにセットした。次いで、光学フィルムに含まれる重合性液晶化合物の配向方向と偏光の振動方向とが平行になる時の吸光度A、前記配向方向と偏光の振動方向とが垂直となる時の吸光度Aを測定した。測定された吸光度A及び吸光度Aから、式(1)を用いて配向秩序度S(λ)を算出した。また、−0.50<S(λ)<−0.15を満たす波長範囲を算出した。結果を表3に示す。
【0324】
【表3】

【0325】
<位相差板(λ/2板)の作製>
得られる位相差板の位相差値が270±5nmとなるように膜厚を調整し、光学フィルムの製造と同様の方法で、位相差板(λ/2板)を作製した。作製した位相差板の波長550nmにおける正面位相差値を、分光エリプソメータ(M−220型、日本分光株式会社製)を用いて測定した。また、組成物層の膜厚を、レーザー顕微鏡(LEXT OLS3000、オリンパス社製)を用いて測定した。結果を表4に示す。
【0326】
<色抜けの評価>
紫外可視赤外分光光度計(UV−3150、島津製作所製)に設置した偏光子付サンプルホルダー(島津製作所製)に、作製した位相差板を平行ニコルになるようにセットして測定した透過率を100%とし、遮蔽板を入れて測定した透過率をバックグラウンドとした。入射偏光の振動方向と位相差板に含まれる重合性液晶化合物の配向方向とが45°となるように、前記サンプルホルダーに作製した位相差板を設置して、透過率を測定した。測定した透過率からバックグラウンドの値を引いた値から、C光源の等色関数を用いて、L(CIE)表色系における色度a及びb、並びにこれらの絶対値である|a|及び|b|を算出した。|a|及び|b|は値が小さいほど、透過する光は無彩色により近いことを表すことから、色抜けが少なく優れた黒表示を示すと判断できる。結果を表4に示す。
【0327】
【表4】

【0328】
表3及び表4に示すように、配向秩序度Sが−0.5<S<−0.15を充足する光学フィルムであると、|a|及び|b|の値は小さいことから、色抜けは低減されることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0329】
本発明の光学フィルムによれば、フラットパネル表示装置における色抜けを低減することができる。
【符号の説明】
【0330】
1、1’、12 本発明の光学フィルム
2、2’ 偏光フィルム層
3、3’、3’’ 接着剤層
4a、4b、4c、4d、4e、4、4’ 本発明の偏光板
5、5’ 接着層
6 液晶パネル
10a、10b 液晶表示装置
7 有機ELパネル
11 有機EL表示装置
13 カラーフィルタ層
14 カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性液晶化合物が配向してなる光学フィルムであり、
溶液(a)を用いて測定される重合性液晶化合物の400nmにおける吸光度Aが0.1以下であり、
溶液(a)を用いて測定される重合性液晶化合物の極大吸収波長における光学フィルムの配向秩序度Sが、−0.50<S<−0.15を充足する光学フィルム。
溶液(a):重合性液晶化合物を10−4mol/lの濃度になるようにクロロホルムに溶解させた溶液。
【請求項2】
溶液(a)の極大吸収波長が、300nm以上400nm以下である請求項1記載の光学フィルム。
【請求項3】
−0.50<S(λ)<−0.15を充足する波長範囲が40nm以上である請求項1又は2記載の光学フィルム。
[S(λ)は波長λnmにおける光学フィルムの配向秩序度を表す。]
【請求項4】
重合性液晶化合物が、式(A)で表される化合物である請求項1〜3のいずれか記載の光学フィルム。
−G−D−Ar−D−G−L (A)
[式(A)中、Arは、芳香環を有する2価の基を表し、該芳香環に含まれるπ電子の数は、12以上22以下である。
及びDは、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−C(=S)−O−、−CR−、−CR−CR−、−O−CR−、−CO−O−CR−、−O−CO−CR−、−CR−O−CR−、−CR−O−CO−CR−、−CR−CO−O−CR−、−NR−CR−又は−CO−NR−を表す。
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5〜8の2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH(−)−は、−N(−)−で置き換っていてもよい。
は、重合性基又は1価の有機基を表す。
は、重合性基を表す。]
【請求項5】
及びGが、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基である請求項4記載の光学フィルム。
【請求項6】
重合性液晶化合物を含む組成物を基板に塗布し、重合性液晶化合物を配向させ、該組成物に含まれる重合性成分を重合してなる請求項1〜5のいずれか記載の光学フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム及び偏光フィルムを含む偏光板。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルムを含むフラットパネル表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−256304(P2011−256304A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132945(P2010−132945)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】