説明

光学レンズの成形方法

【課題】本発明は、光学素材をプレス成形し光学レンズを成形する光学レンズの成形方法に関し、生産性の向上を目的とする。
【解決手段】本発明は、一対のプレス金型4およびこのプレス金型4の摺動をガイドする胴型3を用いて光学レンズをプレス成形するにあたり、プレス工程後の冷却工程と型開き工程の間に胴型3を選択的に加熱しプレス金型4より昇温させ、その後光学素材1がプレス金型4と接した状態で胴型3をプレス金型4の摺動方向に摺動させる胴型摺動工程を設けたのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素材をプレス成形する光学レンズの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の光学レンズの成形装置は、一対のプレス金型と、このプレス金型のプレス摺動をガイドする胴型と、光学素材の温度制御を行うプレス金型に当接したヒーターブロックにより構成され、この成形装置を用いて光学レンズを成形する方法としては、プレス金型と胴型で形成される成形空間に光学素材を配置し、ヒーターブロックにより光学素材の温度をガラス転移点以上に加熱しプレス金型でプレスしてその成形面を光学素材に転写し、プレス成形された光学レンズを取り出し可能なガラス転移点温度以下の温度まで冷却し、成形空間から取り出す方法が知られている。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−48726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような成形装置を用いた場合、プレス成形に際して光学素材と胴型の内周面とが融着してしまうことがあり、この場合成形空間から光学レンズを取り出す際に光学レンズが筒状の胴型内に残ってしまい、これを取り除くためにプレス金型および胴型を成形装置から取り外さなければならず生産性を劣化させる要因となっていた。
【0006】
そこで本発明は、このような問題を解決し光学レンズの生産性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために本発明は、一対のプレス金型およびこのプレス金型の摺動をガイドする胴型を用いて光学レンズをプレス成形するにあたり、プレス工程後の冷却工程と型開き工程の間に胴型を選択的に加熱しプレス金型より昇温させ、その後光学素材がプレス金型と接した状態で胴型をプレス金型の摺動方向に摺動させる胴型摺動工程を設けたのである。
【発明の効果】
【0008】
これにより本発明は光学レンズの生産性を高めることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態の光学レンズの成形方法の準備工程を示す模式図
【図2】同光学レンズの成形方法のプレス工程と冷却工程を示す模式図
【図3】同光学レンズの成形方法の胴型摺動工程を示す模式図
【図4】同光学レンズの成形方法の型開き工程を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図を用いて説明する。
【0011】
図1から図4は光学素材1を加熱・加圧成形して光学レンズを形成する成形工程を順に示したものであり、光学レンズをプレス成形する成形装置2の基本構造は、貫通孔を有する円筒状の胴型3の下端側にプレス金型4を固定し、胴型3の上端側より貫通孔の内周面に沿って摺動可能にプレス金型4を挿入する構成となっている。なお、それぞれのプレス金型4にはヒーターブロック5を接続し光学素材1に対する成形温度制御を行うとともに胴型3の周囲には赤外線ランプヒーター6を配置し胴型3を選択的に加熱できる構成としている。
【0012】
また、この成形装置2を用いたレンズ成形は、図1に示す胴型3と一体化されたプレス金型4の成形面に光学素材1を配置し光学素材1がプレス成形可能な温度まで加熱する準備工程と、図2に示す成形可能温度に達した光学素材1に対してプレス金型4を摺動させてプレス成形することでプレス金型4の成形面を光学素材1に転写するプレス工程およびプレス成形された光学素材1がプレス金型4と接した状態のまま光学素材1を成形空間から取り出し可能なガラス転移点温度以下の温度まで冷却する冷却工程と、図4に示す胴型3からプレス金型4を取り外し成形空間からプレス成形された光学レンズを取り出す型開き工程を実施する。
【0013】
そして、この一実施の形態においては、図2に示す冷却工程と図4に示す型開き工程との間に図3に示す胴型3の周囲に設けた赤外線ランプヒーター6を用いて胴型3部分を選択的に加熱し、光学素材1がプレス金型4と接した状態つまり光学素材1を一対のプレス金型4で挟持した状態で胴型3のみをプレス金型4の摺動方向に摺動させる胴型摺動工程を設けたのである。
【0014】
このように冷却工程と型開き工程との間に胴型摺動工程を設けることで、型開き工程の前に一対のプレス金型4により挟持された光学素材1に対して胴型3のみを摺動させるため、型開き前に胴型3と光学素材1の融着を取り除くことができる。また、胴型3を摺動させる前に、一旦取り出し可能温度にまで降温された成形装置2において、赤外線ランプヒーター6により胴型3を選択的に加熱することで、胴型3の温度が光学素材1やプレス金型4より高くなり、胴型3のみが熱膨張するため光学素材1に対する胴型3の摺動性を良くすることができ、胴型3の摺動に伴う光学素子1の破損を抑制できるので結果的に光学レンズの生産性を高められるのである。
【0015】
また、胴型3を選択的に加熱する手段として赤外線ランプヒーター6を挙げたが、この赤外線ランプヒーター6は局所的に加熱できるとともに、急激に温度上昇させることが出来るため、短時間で胴型3と光学素材1およびプレス金型4との温度差を大きくすることが可能で、熱膨張による分離作用を効果的に得ることが出来るのである。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、光学レンズの生産性を高めることが出来るという効果を有し、特に高屈折ガラスや低分散ガラスといったプレス成形可能な温度が高い光学素材に対して有用である。
【符号の説明】
【0017】
1 光学素材
3 胴型
4 プレス金型
5 ヒーターブロック
6 赤外線ランプヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下一対のプレス金型およびこのプレス金型の摺動をガイドする胴型を用いて光学素材をプレス成形し光学レンズを成形する方法であって、前記プレス金型および胴型により形成される成形空間に光学素材を配置し加熱する準備工程と、前記光学素材がプレス成形可能な温度に達した後に前記プレス金型でプレス成形するプレス工程と、前記プレス成形された光学素材が前記プレス金型と接した状態のまま前記光学素材を成形空間から取り出し可能なガラス転移点温度以下の温度まで冷却する冷却工程と、前記胴型から前記プレス金型を取り外し前記成形空間からプレス成形された光学素材を取り出す型開き工程を備え、前記冷却工程と前記型開き工程の間に前記胴型を選択的に加熱し前記プレス金型より昇温させ、その後前記光学素材が前記プレス金型と接した状態で前記胴型を前記プレス金型の摺動方向に摺動させる胴型摺動工程を設けたことを特徴とする光学レンズの成形方法。
【請求項2】
光学素材をプレス成形可能な温度に加熱するヒーターブロックをプレス金型に当接配置するとともに胴型の周囲に赤外線ランプヒーターを設け、この赤外線ランプヒーターを用いて前記胴型を選択的に加熱することを特徴とした請求項1に記載の光学レンズの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−178618(P2011−178618A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45164(P2010−45164)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】