説明

光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーン

【課題】 大量生産、使用する際のロット間、ロット内の色バラツキが小さい光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンを提供する。
【解決手段】 屈折率の異なる少なくとも2種の重合体が偏平断面の長軸方向と並行に積層してなる、偏平状の光干渉性フィラメントで構成されるマルチフィラメントヤーンにおいて、該偏平断面を長軸方向の少なくとも一方の辺に凹部を1〜5個有する光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率の異なる少なくとも2種の重合体を偏平断面の長軸方向と並行に交互に積層してなる偏平状フィラメントで構成され、発色バラツキの少ない光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自然光の反射、干渉作用によって可視光線領域の波長の色を発色する多層薄膜構造を有するフィラメントとしては、例えば、フィラメント基材の上に透明金属化合物を薄膜蒸着させた構造のもの、屈折率の異なる2種の透明性重合体を交互に積層した薄膜多層状構造のものが知られている。
【0003】
特に、後者については、フィラメントそのものが光干渉性を有するので、使用上の耐剥離性は蒸着構造のものに比べて格段に優れている。また、かかるマルチフィラメントヤーンは、例えば、特許文献1などに開示されている。
【0004】
しかしながら、上記マルチフィラメントヤーンは、積層厚さが数nm違うだけで人間が視認できるほどの色の違いを呈するため、布帛や光輝材として大量生産し、これを使用する際、色のバラツキが大きいという問題がある。
【特許文献1】特開平11−124748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、色のバラツキが改善された光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らの研究によれば、上記課題は、「屈折率の異なる少なくとも2種の重合体が偏平断面の長軸方向と並行に積層してなる、偏平状の光干渉性フィラメントで構成される光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンにおいて、該偏平断面は長手方向の少なくとも一方の辺に1〜5個の凹部を有していることを特徴とするマルチフィラメントヤーン」により達成できることが見出された。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンは、断面形状の工夫により光干渉反射光を適度に散乱させることで、大量生産、使用時のロット間、ロット内の色のバラツキを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、詳細に本発明の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンについて説明する。本発明の屈折率の異なる少なくとも2種の重合体が偏平断面の長軸方向と並行に積層してなる、偏平状の光干渉性フィラメントから構成される光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンである。
【0009】
本発明においては、上記の光干渉性フィラメントの偏平断面が、その長軸方向の少なくとも一方の辺に1〜5個の凹部を有していることが肝要である。以下、図1および2により本発明を詳細に説明する。図1(a)および(b)には従来の光干渉性フィラメントの繊維横断面を模式的に示した図である。光干渉性フィラメントは偏平断面を有し、2種の重合体が偏平断面の長軸方向と並列に積層されている。これに対して、本発明の光干渉性フィラメントは、偏平断面の長軸方向の少なくとも一方の辺に凹部を1〜5個有していればよく、長軸方向の両側に1〜5個凹部を有してものであってよい。図2には、偏平断面の長軸方向の両側に凹部を8個有する断面を後者の例を示す。上記の凹部の数が1個未満、すなわち従来の偏平断面では、大量生産した際のロット間、ロット内の色のバラツキが大きくなる。一方、凹部の数が6を越えると製糸性が悪くなり、安定して本発明のマルチフィラメントヤーンを製造することができない。
【0010】
本発明者は、光干渉性フィラメントを、上記のように偏平断面の長軸方向の少なくとも一方の辺に凹部を1〜5個有する断面とすることで、偏平断面の長軸方向に並行に配置された2種の重合体の積層構造がナノサイズで歪み、長軸方向との並行が部分的に微小に崩れる(乱れる)ことにより、従来の光干渉性繊維よりも波長範囲の広い光を反射するようになり、かかる繊維を大量生産したときでもロット内、あるいはロット間の色のバラツキを小さくできることを見出した。
【0011】
また本発明においては、マルチフィラメントヤーンの分光率を測定したとき、波長400〜700nmの範囲における分光反射率のピーク反射率値と波長350nmにおける反射率値との差(以下、単に反射率差と称することがある)が7%以上、好ましくは8%以上の範囲にあることが望ましい。この反射率差が7%未満の場合には、光干渉による発色が弱くなるので好ましくない。
【0012】
さらに、上記マルチフィラメントの分光反射率曲線において、ピーク反射率値から1%低い反射率における反射曲線の波長幅が50nm以上200nm以下となるとき、本発明の効果が顕著に現れる。すなわち、この波長幅は、いわゆる半価幅などと類似の考え方による尺度で、波長値が小さいほど反射光の色は限定された混じり気の少ない色になり、波長幅が大きいほど多くの色が混在した色になる。本発明では、光干渉繊維を大量生産、使用する際のロット間、ロット内の見た目の色バラツキを小さくすることを目的としており、検討の結果、波長幅が50nm以上200nm以下の時、目的とする発色が得られやすい。
【0013】
なお、上記の分光反射率曲線はいずれもマルチフィラメントヤーンを黒色板に40ターン/cmで巻き付けたもの用い分光反射を測定したものである。
【0014】
本発明の光干渉性フィラメントを構成する2種の重合体は、屈折率に差がある組み合わせとする必要がある。一般に重合体の屈折率は1.30〜1.82の範囲にあり、そのうち汎用重合体では1.35〜1.75の範囲にあることが好ましい。この中から高屈折率側の重合体成分の屈折率をnとし、低屈折率側の重合体成分の屈折率をnで表したとき、両重合体の屈折率の比n/nが1.02〜1.40の範囲となるものを選べばよい。具体的には、ポリエステルと、ナイロン、ポリオレフィンなどとの組合せがあげられる。
【0015】
本発明の光干渉性フィラメントにおいては、その偏平断面の長軸長さAと該長軸に直行する最大径の長さB(短軸)の比A/Bで表される偏平度が2.0〜15.0の範囲にあることが好ましく、3.0以上、さらには4.0以上と大きい方がより好ましい。また、図2に示したように、偏平断面の外層部に非積層領域を形成しているときは、偏平率はその外層部も含めて算出する。偏平率の上限については、その値が15.0を越えると、過度に薄平な形状となるため、偏平断面を保ち難くなり、一部が断面内で折れ曲がる等の懸念も出てくる。この点から、扱いやすい偏平率は高々15.0であり、特に10.0以下が好ましい。
【0016】
光干渉性フィラメントにおける重合体の積層数は、光学干渉理論によれば、層の厚みが全て基準の厚さに等しいときには、高々10層もあれば得られる干渉光量は飽和状態に達し、それ以上層数を増やすことはフィラメント成形の工程を複雑困難にするだけとなってしまう。ところが、偏平率を2.0以上とすると、各積層単位の厚みにゆらぎが生じやすくなり、積層数を15以上にしないと、干渉光量が不十分な場合も生じる。よって、積層数は15以上が好ましい。さらに、偏平率を3.0、4.0と大きくすればするほど、積層数は多い方が好ましく、20層以上、25層以上がより好ましい。
【0017】
この積層数は多い方が前記厚みのゆらぎを補償して干渉性を高めることができるが、その製造技術の難しさ、特に紡糸口金の複雑さ、溶融ポリマー流れのコントロールの点から、扱いやすいのは50層までである。それを越えると、また積層の厚みのゆらぎ幅が広がり、積層を増しただけの効果を得にくくなるので、実用的には120層以下とするのが好ましい。
【0018】
さらに、ポリマー固有の屈折率に繊維の複屈折率を加味して、交互積層を構成する重合体間の屈折率差を拡大させ、光干渉性を高めるような工夫も可能である。すなわち、上記重合体間の屈折率差が大きいほどフィラメントの光干渉性は高まるが、屈折率が決まっている重合体を用いる限り自ずと限界がある。その限界を越えて屈折率差を高める手段として、繊維分子の配向によって生じる複屈折率を利用するものがある。屈折率が高くかつ延伸によって複屈折率の大きくできる重合体と、屈折率が低くかつ延伸によって複屈折率差があまり大きくならない重合体を組み合わせることにより、重合体間の屈折率差を拡大させることができる。その屈折率を増大させる手段として、フィラメントの延伸作用を利用でき(伸度が低くなるほど複屈折率は逆に高くなる)、複屈折率の増大と製編織等後工程の取扱い性とを満足させるために、延伸後のマルチフィラメントヤーンの伸度を10〜50%の範囲とすることが好ましい。この伸度は、15〜40%の範囲にあればより好ましい。
【0019】
本発明の偏平断面を有するフィラメントからなるマルチフィラメントヤーンにおいては、これを製織編する際に特有の、糸の摩擦係数の高さに起因する糸切れ、停台や布帛欠点誘発といった製織編トラブルも、本発明のような偏平の長軸方向に辺凹みがある断面形状とすることで軽減化できる効果があることがわかった。
【0020】
さらに、このような断面を有するフィラメントからなるマルチフィラメントヤーンを製織編した布帛には、フィラメントの凹み部分で毛細管現象が発生し、布帛に吸水、吸汗、速乾性能が付与され易いという特長も有している。
【0021】
以上に説明した本発明の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンは、例えば以下の方法により製造することができる。すなわち、特開平11−124748号公報の図3に示されているような、2種の重合体を交互に積層した状態で矩形状の吐出孔から、偏平断面の長軸方向と平行に積層されるように吐出するが、その際、紡糸口金吐出孔の形状を、例えば図3(a)〜(e)に示す凹部を有する形状の繊維断面が得られるものに変更することで可能である。
【0022】
ここで、積層の断面長軸方向との並行の部分的なズレはナノオーダーの極小のものであることが望ましい。このような断面を形成させるには、紡糸口金の積層形成部の構造を変更することは好ましくなく、積層の形成を完了したのち、最後に吐出する部分のみを上記図3(a)〜(e)に示す形状として、異型化させることが特に有効である。
【0023】
本発明の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンは、その使用形態によって様々に異なる発色外観を呈し、それが故に、広汎な用途分野で用いることができる。例えば、地糸を濃色特に黒色フィラメントとし、本発明のマルチフィラメントヤーンを浮き糸として、ドビーやジヤカードで柄を表現した布帛は、日本古来の雅趣があり、和服、帯、帯留め、巾着袋、風呂敷、草履、ハンドバッグ、ネクタイ、緞帳等に適している。
【0024】
また、地糸を白として、本発明のマルチフィラメントヤーンでジャカード柄を織り込んだ薄手の布帛は、透け感があって、またジャカード柄が上品で優美なパール光沢に輝き、ウェディングドレス等のブライダルウェアー、パーティードレス、舞台衣装、ギフト用品の包装紙、リボン、テープ、カーテン等に適している。
【0025】
さらに、本発明のマルチフィラメントヤーン独特の金属光沢カラーを生かして、従来、光沢糸や蛍光糸が使用されてきたスポーツウェアーの分野で、一段と視認性に優れたウェアーを提供できる。例えば、スキーウェアー、テニスウェアー、水着、レオタード等であり、テントや日傘、リュックサック、靴特にスニーカー等のスポーツ用品にも適している。
【0026】
同様に、金属光沢カラーやパール調カラーによって人目を引く用途として、エンブレム、ワッペン、アートフラワー等の美術工芸品、刺繍、壁紙、人工毛髪、カーシート、パンティストッキング等がある。
【0027】
また、本発明のマルチフィラメントヤーンからなる布帛に、加熱エンボスロールや型アイロンを当てて熱処理すると、その型柄の部分だけが収縮して、干渉を示す交互積層の層厚みが異なり、地の部分とは違った色が発現するので、衣服にワンポイントマークや絵柄を付けることができる。
【0028】
さらに、本発明のマルチフィラメントヤーンは、用途に合わせ、例えば0.01mm〜10cmの範囲に切断して用いることもできる。そのカットしたフィラメントの偏平面を表として物品の表面に透明樹脂によって固定するのもよく、例えば自動車のドア表面にモルフォ蝶を形取って固定すると、太陽の光を受けてモルフォ蝶の如く、金属光沢をもって青く輝いて見える。また、0.01〜10mmにカットしたものを化粧品に混ぜて使用すると、これもまた太陽の光を受けて優美に輝いて見える。
【0029】
さらに、本発明のマルチフィラメントヤーンを短くカットして光学干渉性を有する光輝材として、塗料、樹脂組成物、インキ組成物、人造大理石成型品、塗被紙、化粧料組成物といった用途に用いる場合について詳細に説明する。
【0030】
塗料中に上記光輝材を配合する場合は、母材樹脂に熱硬化性樹脂としてアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル−ウレタン硬化系樹脂、エポキシ−ポリエステル硬化系樹脂、アクリル−ポリエステル系樹脂、アクリル−ウレタン硬化系樹脂、アクリル−メラミン硬化系樹脂もしくはポリエステル−メラミン硬化系樹脂などを、熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂もしくは熱可塑性フッ素樹脂などを使用し、また硬化剤にポリイソシアネート、アミン、ポリアミド、多塩基酸、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素酸、酸ジヒドラジドもしくはイミダゾールなどを使用することが好ましい。塗料中における光輝材の含有率は、乾燥硬化後の塗膜において0.1〜30重量%となるように調整することが好ましい。より好ましい含有率は、1〜20重量%である。光輝材の含有率が0.1重量%よりも少ない場合は、塗膜に十分な光輝性がなく、一方30重量%よりも多いと、含有率の割には光輝性の向上が小さくなり、却って素地の色調を損なってしまうおそれが生じる。この光輝材は、素地の色調を損なうことがないので、あらゆる色の塗料に利用することができる。たとえば、赤、青、緑、黒などの原色に加え、色調の調整が困難なパステルカラーなどにも使用できる。
【0031】
樹脂組成物中に配合する場合は、母材樹脂に上記の各種熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を利用することができる。また、上記光輝材を構成するポリマーの融点よりも低融点あるいは低軟化点の熱可塑性樹脂を使用すれば、射出成形が可能となるため、複雑な形状の成型品を得ることができる。
【0032】
インキ組成物に配合する場合は、繊維長が500μm以下のものを使用することが好ましい。繊維長があまり長いと、筆跡の外観上、光輝材が飛び出したようになり、滑らかさが損なわれる傾向にある。
【0033】
インキ組成物には、各種ボールペン、サインペンなどの筆記具用インキならびにグラビアインキ、オフセットインキなどの印刷インキがあるが、いずれのインキ組成物にも使用することができる。筆記具用インキのビヒクルの例としては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、アクリル酢酸ビニル共重合体、ザンサンガムなどの微生物産性多糖類またはグアーガムなどの水溶性植物性多糖類などと、溶剤としての水、アルコール、炭化水素、エステルなどからなるものとが挙げられる。
【0034】
グラビアインキ用ビヒクルの例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、ライムロジン、ロジンエスエル、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ギルソナイト、ダンマルもしくはセラックなどの樹脂混合物、上記樹脂の混合物、上記樹脂を水溶化した水溶性樹脂または水性エマルション樹脂と、炭化水素、アルコール、エーテル、エステルまたは水などの溶剤とからなるものが挙げられる。
【0035】
オフセットインキ用ビヒクルの例としては、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキド樹脂またはこれらの乾性変性樹脂などの樹脂と、アマニ油、桐油または大豆油などの植物油と、n−パラフィン、イソパラフィン、アロマテック、ナフテン、α−オレフィンまたは水などの溶剤とからなるものが挙げられる。
【0036】
なお、上記の各種ビヒクル成分には、染料、顔料、各種界面活性剤、潤滑剤、消泡剤、レベリング剤などの慣用の添加剤を適宜選択して配合してもよい。
【0037】
人造大理石成型品に光輝材を使用する場合は、最表層に透明ゲルコート層、その内部に光輝材を含む中間層、その中間層の下に着色された骨材を含む人造大理石層の3層構造にすることが好ましい。この構成であれば、最表層が透明ゲルコート層であるため、中間層の発する強い反射光と人造大理石層の模様とが相まって、キラキラとした高い光輝感を有する大理石調の外観が形成される。
【0038】
透明ゲルコート層の厚さは、奥行き感と可視光透過率の低減とを勘案して、0.3〜0.7mmとすることが好ましい。透明ゲルコート層の成分は、とくに限定されないが、取り扱い易さや加工成形性の高さから熱硬化性樹脂が好ましい。具体的には、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂またはこれらの混合物もしくは変性物(たとえば、不飽和ポリエステル樹脂の末端基をアクリル系に変えた変性物など)などが挙げられる。とくに、不飽和ポリエステル樹脂は、透明性が高く、安価で入手し易いので好ましい。
【0039】
中間層は、大理石調の外観に高い光輝感を与えるためのものであり、人造大理石層の模様を覆い隠すものであってはならない。そのため、少なくとも可視光透過性を備える必要がある。ただし、その主成分に最表層の透明ゲルコートと同一のものを使用する必要はない。なお、外観が損なわれない限り、透明ゲルコート層と人造大理石層との間に、上記中間層以外の層をさらに設けてもよい。具体的には、可視光透過性の高い色付きフイルムを配置することにより、人造大理石成型品の色調を簡便に調整することができる。
【0040】
中間層は、厚さが0.05〜1mmの範囲が好ましく、その構成成分として可視光透過性の高い熱硬化性樹脂が好適である。また、光輝材の他に、硬化剤や促進剤を含有してもよく、必要に応じて増粘剤、揺変剤、消泡剤または特性向上剤が配合されてもよい。さらに、着色顔料、その他の金属顔料(アルミニウム顔料や酸化鉄顔料など)、干渉色顔料(金属酸化物で被覆したマイカなど)から選ばれた1種または2種以上が素地の色調を著しく損なわない範囲で配合されてもよい。
【0041】
人造大理石層は、厚さ3〜25mmが好ましく、その主成分は熱硬化性樹脂であり、その他の成分として骨材、促進剤、硬化剤および着色剤を含有する。この熱硬化性樹脂には、上記透明ゲルコート層の熱硬化性樹脂を利用できる。たとえば、不飽和ポリエステル樹脂である。骨材としては、ガラスフリット、寒水石、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムまたはシリカ粉体などの無機材料、あるいは熱可塑性ポリエステル樹脂などの有機材料が使用できる。さらに、必要に応じて強化材としてガラス繊維を含有してもよい。
【0042】
中間層における光輝材の配合率が過度に低い場合は、光輝性と奥行き感が得られ難くなり、一方過度に高いとコスト面および物性面などで問題が生じる。そこで、中間層における光輝材の配合率は、熱硬化性樹脂100重量部に対し0.01〜10重量部が好ましい。
【0043】
人造大理石成型品に強度が求められる場合は、人造大理石層の背面にFRP層を設けてもよい。この場合、FRP層は人造大理石層の背面に配置されるため、人造大理石成型品の光輝性は損なわれない。FRP層は、たとえばチョップドストランドグラスマットに不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂またはエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂を含浸させ、加熱硬化することによって得られる。また、FRP層に着色剤を添加すれば、人造大理石成型品に彩りを与えたり、背面からの光線を遮蔽することができる。
【0044】
人造大理石成型品の製造方法は、とくに限定されるものではなく、従来の方法をそのまま利用できる。たとえば、浴槽のように複雑な形状のものを製造する場合は、注型法やプレス成形法などの方法を利用できる。また、FRP層を備えた浴槽を製造する場合は、人造大理石層を形成させた後、チョップドストランドグラスを含有する熱硬化性樹脂を人造大理石層の表面にスプレーガンで吹き付ける方法(スプレーアップ法)や、熱硬化性樹脂を含浸させたチョップドストランドグラスマットを人造大理石層の表面にハンドレイアップ法により取り付けた後に50℃で1時間キュアリングする方法などによることができる。あるいは、人造大理石層を成形する前に、上記のスプレーアップ法またはハンドレイアップ法により、浴槽の裏型材の表面に予めFRP層を形成させてもよい。
【0045】
人造大理石成型品に使用する光輝材の長さは、0.01〜2mmが好ましい。長さが2mmを越える場合は、中間層の成形加工過程において割れが生じ易くなり、一方0.01mm未満になると、光輝感の低下が著しくなる傾向にある。
【0046】
塗被紙に光輝材を配合する場合は、ステアリン酸、ラウリル酸のアルカリ塩、共重合ラテックスもしくは澱粉などからなる接着剤、界面活性剤および水などの溶媒に、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐水化剤、防腐防黴剤、殺菌剤、消泡剤、香料および/または染料を配合して得られる溶液を、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーターまたはサイズプレスコーターなどの塗被装置で原紙上に片面または両面に単層または二層以上塗被することで、光輝性の高い塗被紙が得られる。
【0047】
また、上記光輝材は、化粧品、特に、顔およびヒトの体の皮膚、唇ならびに爪、まつ毛または髪などの表層成長部のための化粧品(以下、化粧品組成物と称することがある)に含有させて用いることができる。
【0048】
光輝材は、化粧品組成物中に、該組成物の全量に対して0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは、0.3〜20重量%の範囲で含有させることができる。
【0049】
さらに具体的には、肌用の製品(ファンデーション)、頬またはアイシャドーのためのメイクアップ製品、リップ製品、コンシーラー、頬紅、マスカラ、アイライナー、まゆ毛のためのメイクアップ製品、リップまたはアイ・ペンシル、爪用製品、体用のメイクアップ製品、髪のためのメイクアップ製品(ヘア・マスカラまたはヘア・スプレー)などをあげることができる。これらの化粧品組成物は、ケラチン物質に付与するためのように使用することができるか、ケラチン物質の上に既に堆積しているメイクアップの上に、例えば、メイクアップを改質するために使用することができる(組成物を、通常トップ・コートと称されるトップ製品として付与する)。
【0050】
化粧品組成物は、付け爪、付けまつ毛、人工頭髪、かつら、皮膚または唇に付着しているパステルまたはパッチ(つけボクロタイプのもの)などのメイクアップ・アクセサリ(支持体)の上に付与することもできる。
【0051】
この際、上記光輝材は、親水性媒体または親油性媒体に含有させ、化粧品組成物とすることができる。
【0052】
上記化粧品組成物、あるいはそのベース(下地用)組成物および/またはトップ組成物には、水または、水とアルコールなどの親水性有機溶剤、特にエタノール、イソプロパノールまたはn−プロパノールなどの2〜5個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖低級モノアルコール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、ペンチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリオールとの混合物を含んでよい。また、親水性相は、親水性であるCエーテルおよびC〜Cアルデヒドを含有してもよい。水または、水と親水性有機溶剤との混合物は、本発明による組成物あるいはベースおよび/またはトップ組成物のうち少なくとも一方中に、組成物の全重量に対して、0〜90重量%(特に、0.1〜90重量%)、好ましくは0〜60重量%(特に、0.1〜60重量%)の範囲の量で含有してよい。
【0053】
化粧品組成物あるいはベースおよび/またはトップ組成物のいずれかには、特に、室温(通常は25℃)で液体である脂肪物質および/またはろうなどの室温で固体である脂肪物質、ペースト状脂肪物質、ゴムおよびこれらの混合物からなる脂肪相を含んでいてもよい。さらに、この脂肪相は、親油性有機溶剤を含有してよい。
【0054】
上記祖化粧品で使用することができる、一般にオイルと称される室温で液体である脂肪物質として、ペルヒドロスクアレンなどの動物由来の炭化水素油、ヘプタン酸またはオクタン酸のトリグリセリドなどの4〜10個の炭素原子を有する脂肪酸の液体トリグリセリドまたはヒマワリ油、トウモロコシ油、ダイズ油、ブドウ種子油、ゴマ油、アプリコット油、マカダミア油、ヒマシ油およびアボカド油、カプリル酸/カプリン酸のトリグリセリド、ホホバ油、シアバターなどの植物性炭化水素油、パラフィン油およびその誘導体、石油ゼリー、ポリデセン、パーリーム(parleam)などの水素化ポリイソブテンなどの鉱物または合成由来の直鎖または分枝鎖炭化水素、例えば、パーセリン油(Purcellin oil)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸2−オクチルドデシル、エルカ酸2−オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリルなどの、特には脂肪酸の合成エステルおよびエーテル、乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、クエン酸トリイソセチル、脂肪族アルコールのヘプタン酸エステル、オクタン酸エステル、デカン酸エステル、ジオクタン酸プロピレングリコール、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコールなどのポリオールエステル、およびペンタエリトリトールエステル、オクチルドデカノール、2−ブチルオクタノール、2−ヘキシルデカノール、2−ウンデシルペンタデカノール、オレイルアルコールなどの12〜26個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、部分的に炭化水素−および/またはシリコーンベースのフッ素化オイル、フェニルトリメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルメチルジメチルトリシロキサン、ジフェニルジメチコン、フェニルジメチコン、ポリメチルフェニルシロキサンなどの場合によってフェニル基を有するシクロメチコン(cyclomethicone)、ジメチコンなどの揮発性か、あるいは、直鎖または環式で、室温で液体またはペースト状であるポリメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーンオイル、および、これらの混合物を挙げることができる。
【0055】
これらのオイルは、組成物の全重量に対して、0.01〜90重量%、好ましくは0.1〜85重量%の範囲で含有してもよい。
【0056】
化粧品組成物、あるいはベースおよび/またはトップ組成物のいずれかは、1種または複数の化粧品的に許容される有機溶剤を含有してもよい(許容しうる許容性、毒性および感触)。これらの溶剤は、組成物の全重量に対して、0〜90重量%、好ましくは0〜60重量%、さらに好ましくは0.1〜30重量%の範囲で含有してよい。
【0057】
本発明の組成物中で使用することができる溶剤として、酢酸メチル、エチル、ブチル、アミル、2−メトキシエチルまたはイソプロピルなどの酢酸エステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、5〜10個の炭素原子を有するアルデヒド、少なくとも3個の炭素原子を有するエーテル、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0058】
さらに、本発明の組成物あるいはベースおよび/またはトップ組成物のいずれかには、ゴムまたはろうなどの、室温で固体またはペースト状の脂肪物質を含んでよい。ろうは、炭化水素ベース、フッ素化物ベースおよび/またはシリコーンベースであってよく、植物、鉱物、動物または合成由来であってよい。特に、ろうは、25℃より高い、さらに好ましくは、45℃より高い融点を有するものが好ましい。
【0059】
本発明で使用できる「ろう」としては、蜜蝋、カルナウバろうまたはカンデリラろう、パラフィン、微結晶ろう、セレシンろうまたはオゾケライト、ポリエチレンまたはフィッシャー−トロプシュろう、16から45個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシジメチコーンなどのシリコーンろうなどの合成ろうを挙げることができる。
【0060】
ゴムは通常、高分子量のポリジメチルシロキサン(PDMS)またはセルロースゴムまたは多糖類であり、ペースト状の物質は通常、ラノリンおよびその誘導体またはPDMSなどの炭化水素化合物である。
【0061】
固体物質の性質および品質は、所望の機械的特性および手触りに左右される。これらは化粧品組成物の全重量に対して、0〜50重量%、好ましくは1〜30重量%のろうを含有すればよい。
【0062】
さらに、化粧品組成物、あるいはベースおよび/またはトップ組成物のいずれかは、被膜形成ポリマーを含有してもよい。本発明において、「被膜形成ポリマー」とは、単独で、または被膜形成助剤の存在下で、連続的かつ付着性の被膜を支持体、特に、ケラチン物質上に被膜をつくるポリマーをいう。
【0063】
被膜形成ポリマーは、ビニルポリマー、重縮合物またはポリマーまたは天然由来から選択することができる。被膜形成ポリマーとして特に、アクリルポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、セルロースポリマーを挙げることができる。被膜形成ポリマーは、溶解するか、組成物の生理学的に許容される媒体中に固体粒子の形で分散させることができる。
【0064】
被膜形成ポリマーは、本発明による組成物あるいはベースおよび/またはトップ組成物のいずれかに、組成物の全重量に対して、0.01〜60重量%、好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは1〜30重量%の範囲で含有させてもよい。
【0065】
被膜形成ポリマーを、被膜形成助剤と組み合わせることができる。このような被膜形成剤は、公知の化合物から選択することができ、特に、可塑剤および融合助剤から選択することができる。
【0066】
化粧品組成物、あるいはベースおよび/またはトップ組成物の一方は、特に、懸濁液、分散液、溶液、ゲル、特に水中油型(O/W)または油中水型(W/O)のエマルション、または多重(W/O/Wまたはポリオール/O/WまたはO/W/O)エマルションの形、クリーム、ペースト、フォーム、特にイオン性または非イオン性脂質中のベシクルの分散液、2相または多相ローション、スプレー、パウダー、ペースト、特に軟性ペースト(特に、円錐/平面幾何での測定の10分後に、200s−1のせん断速度で、0.1から40Pa.s程度の25℃での動的粘度を有するペースト)の形状であってもよい。組成物は、有機、特に無水の連続相を含んでいてもよい。
【0067】
上記の化粧品組成物、あるいはベースおよび/またはトップ組成物の一方はさらに、ビタミン、増粘剤(特に、場合によって改質されている粘土)、微量元素、皮膚軟化剤、金属イオン封鎖剤、香料、アルカリ化剤または酸性化剤、防腐剤、紫外線遮断剤またはこれらの混合物などの化粧品で一般的に使用される成分を含有していてもよい。
【0068】
化粧品組成物、特にベースおよびトップ組成物は、化粧品または皮膚科学分野で通常使用される調製方法により、得ることができる。
【0069】
上記化粧品組成物中には、あるいはベースおよび/またはトップ組成物中に着色剤を含有していてもよい。付加的な着色剤は、顔料、真珠箔剤、着色剤およびこれらの混合物から選択することができる。ここで、顔料とは、白色か、着色されていて、無機または有機で、生理食塩水中に不溶性で、組成物の着色を目的とする何らかの形の粒子をいう。また、真珠箔剤とは、特に、一定の軟体動物によりその殻で生産されるか、合成される何らかの形の虹色粒子をいう。
【0070】
顔料は、化粧品組成物中に、特にベースおよび/またはトップ組成物中に、組成物の重量に対して、0から15重量%(特に、0.01重量%から15重量%)、好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.02〜5重量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0071】
顔料は、白色であるか、着色されており、無機および/または有機であってよい。無機顔料のうち、場合によって表面処理されている二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄(黒色、黄色または赤色)、酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、クロム水和物、鉄ブルー、アルミニウム粉末および銅粉末などの金属粉末を挙げることができる。
【0072】
有機顔料のうち、カーボンブラック、D&Cタイプの顔料およびカルミン、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、アルミニウムをベースとするラッカーを挙げることができる。
【0073】
真珠箔剤は、組成物中に、特にベースおよび/またはトップ組成物中に、組成物の全重量に対して、0〜25重量%(特に、0.01〜25重量%)、好ましくは0.01〜15重量%、さらに好ましくは0.02〜5重量%の範囲で含有されていてもよい。
【0074】
真珠箔顔料は、チタンまたはオキシ塩化ビスマスでコーティングされた雲母などの真珠箔顔料、酸化鉄でコーティングされた雲母-チタン、特に鉄ブルーまたは酸化クロムでコーティングされた雲母-チタン、前記のタイプの有機顔料でコーティングされた雲母-チタンなどの着色真珠箔顔料およびオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠箔顔料から選択することができる。
【0075】
着色剤は、水溶性または脂溶性着色剤または着色ポリマーから選択される着色物質であってもよい。着色物質は、組成物中に、特にベースおよび/またはトップ組成物中に、組成物の全重量に対して、0〜6重量%(特に、0.01〜6重量%)、好ましくは0.01〜3重量%の範囲で含有させてもよい。
【0076】
脂溶性着色剤は例えば、ダイズ油、スダンブラウン、DC Yellow 11、DC orange 5、キノリンイエロー、スダンレッドIII(CTFA名称、D & C red 17)、ルテイン、キニザリングリーン(CTFA名称、DC green 6)、Alizurolpurple SS(CTFA名称、DC violet No.2)、リコピン、ベータカロチン、ビキシン、カプサンチン(capsantein)などのカロテノイド誘導体および/またはこれらの混合物が挙げられる。
【0077】
水溶性着色剤のうち、例えば、Aleurites Moluccana Willd、Alkanna Tinctoria Tausch、Areca Catechu L.、Arrabidaea Chica E.およびB.、Bixa Orellana L(annatto)、Butea Monosperma Lam、Caesalpina Echinata Lam、Caesalpina Sappan L.、Calophyllum Inophyllum L.、Carthamus Tinctorius L.、Cassia Alata L.、Chrozophora Tinctoria L.、Crocus Sativus L.、Curcuma Longa L.、Diospyros Gilletii de Wild、Eclipta Prostrata L.、Gardenia Erubescens Stapf.およびHutch.、Gardenia Terniflora Schum.およびThonn.、Genipa Americana L.、Genipa Brasiliensis L.、Guibourtia Demeusei(Harms)J.Leon、Haematoxylon Campechianum L.、Helianthus annuus、Humiria Balsamifera(Aubl.)St-Hi1.、Isatis Tinctoria L.、Mercurialis perenis、Monascus purpureus、Monascus ruber、Monascus pilosus、Morus Nigra L.、Picramnia Spruceana、Pterocarpus Erinaceus Poir.、Pterocarpus Soyauxii Taub.、Rocella Tinctoria L.、Rothmannia Whitfieldii(Lindl.)Dand.、Schlegelia Violacea(Aubl.)Griseb.、Simira Tinctoria Aublet、Stereospermum Kunthianum Cham.、Symphonia Globulifera L.、Terminalia Catappa L.、Sorgho、Aronia melanocarpaなどの着色剤植物の抽出物、Impatiens Balsaminaとも称されるLawsonia Inermis L.に由来するローソン(lawsone)を含むナフトキノン、赤色木材の抽出物、ビート液、フクシンの二ナトリウム塩、赤色果実の抽出物などのアントシアニン、ジヒドロキシアセトン、イサチンなどのモノ-またはポリカルボニル誘導体、アロキサン、ニンヒドリン、グリセルアルデヒド、メソ酒石酸アルデヒド、4,5-ピラゾリンジオン誘導体およびこれらの混合物を挙げることができ、これらの皮膚用着色剤を、直接着色剤またはインドール誘導体および/またはこれらの混合物と組み合わせてもよい。
【0078】
着色剤は、着色ポリマー、即ち少なくとも1種の有機着色基を含むポリマーであってもよい。着色ポリマーは通常、ポリマーの全重量に対して、10重量%未満の着色物質を含有する。
【0079】
着色ポリマーは、どのような化学的性質を有してもよく、特に、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリカーボネート、セルロースまたはキトサンポリマーなどの天然由来のポリマーまたはこれらの混合物であり、好ましくは、ポリエステルまたはポリウレタンポリマーである。
【0080】
着色ポリマーは、着色基を有してよく、特に、共有結合により、ポリマー鎖上でグラフトされていてもよい。
【0081】
特に、着色ポリマーは、そのうちの少なくとも1種が有機着色モノマーである少なくとも2種の異なるモノマーをベースとするコポリマーであってよい。
【0082】
着色ポリマーのモノマーは、アントラキノン、メチン、ビスメチン、アザメチン、アリリデン(arylidene)、3H−ジベンゾ[7,i-j]イソキノリン、2,5-ジアリールアミノテレフタル酸およびそのエステル、フタロイルフェノチアジン、フタロイルフェノキサジン、フタロイルアクリドン、アントラピリミジン、アントラピラゾール、フタロシアニン、キノフタロン、インドフェノール、ペリノン、ニトロアリールアミン、ベンゾジフラン、2H-1-ベンゾピラン-2-オン、キノフタロン、ペリレン、キナクリドン、トリフェノジオキサジン、フルオリジン(fluoridine)、4-アミノ-1,8-ナフタルイミド、チオキサントロン(thioxanthrone)、ベンゾアントロン、インダントロン、インジゴ、チオインジゴ、キサンテン、アクリジン、アジン、オキサジンから選択することができる。
【0083】
着色ポリマーは、本発明による組成物中に、特に、ベースおよび/またはトップ組成物中に、組成物の全重量に対して、0〜50重量%(特に、0.01〜50重量%)、好ましくは0.5〜25重量%、さらに好ましくは0.2〜20重量%の範囲で含有させてもよい。
【0084】
有利には、干渉性粒子および付加的な着色剤は、化粧品組成物中に、またはトップ組成物中に、2以上(特に、2〜500の範囲)、さらに好ましくは5以上(特に、5〜500の範囲)の、干渉性粒子/付加的な着色剤の活性物質の重量比で存在する。
【0085】
付加的な着色剤に加えて、本発明による組成物は、さらに充填剤を含有してもよい。充填剤との表現は、無色または白色で、無機または合成で、組成物が製造される温度に無関係に組成物の媒体中に不溶性である、何らかの形の粒子を意味すると理解すべきである。これらの充填剤は、組成物のレオロジーまたは手触りを改質するためにも役立つ。
【0086】
充填剤は、無機または有機であり、結晶形に関わらず、血小板形、球形または長円形の何らかの形であってよい(例えば、シート形、立方形、六方晶形、斜方晶形など)。タルク、雲母、シリカ、カオリン、ポリアミドの粉末、ポリ-β-アラニンの粉末およびポリエチレンの粉末、テトラフルオロエチレンポリマーの粉末、ラウロイルリシン、デンプン、窒化ホウ素、塩化ポリビニリデン/アクリロニトリル系ポリマー中空マイクロスフェア、アクリル酸コポリマーおよびシリコーン樹脂のマイクロビーズ、エラストマーポリオルガノシロキサンの粒子、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよびヒドロカーボネート、ヒドロキシアパタイト、シリカの中空マイクロスフェア、ガラスまたはセラミックマイクロカプセル、8〜22個の炭素原子、好ましくは12〜18個の炭素原子を有する有機カルボン酸に由来する金属石鹸、例えば、ステアリン酸亜鉛、マグネシウムまたはリチウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウムを挙げることができる。
【0087】
充填剤は、組成物、特にベースおよび/またはトップ組成物の全重量に対して、0〜90重量%、好ましくは0.01〜50重量%、さらに好ましくは0.02〜30重量%の範囲で含有させてもよい。
【0088】
上記化粧用組成物あるいはベースおよび/またはトップ組成物は、前記のような顔料および/または真珠箔剤および/または充填剤を含む粒子相を含んでよく、これらは、組成物の全重量に対して、0〜98重量%(特に、0.01〜98重量%)、好ましくは0.01〜30重量%から、さらに好ましくは0.02〜20重量%の範囲で含有させてもよい。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例における各項目は次の方法で測定した。
【0090】
(1)偏平率
顕微鏡により長軸方向の長さ/短軸方向の長さ(の比)を求めた。
【0091】
(2)積層数
顕微鏡により各層を直接観察して求めた。
【0092】
(3)反射率差(光干渉発色強度)
マクベス社製分光測色計Color−Eye3100を用い、黒板にマルチフィラメントヤーンを40ターン/cmのピッチで捲き付けたものを測色し、波長400〜700nmの範囲における分光反射曲線のピーク反射率値から、波長350nmにおける反射率値を差し引いた値を反射率差とした。これは発色の強さを表す。
【0093】
(4)ピーク反射率−1%での反射波長幅
マクベス社製分光測色計Color−Eye3100を用い、黒板にマルチフィラメントヤーンを40ターン/cmのピッチで捲き付けたものを測色し、波長400〜700nmの範囲における分光反射曲線のピーク反射率値から、1%だけ低い反射率値を示す波長の幅を測定した。
【0094】
(5)伸度
東洋ボールドウィン社製RTM−300TENSILON引張り試験機を用い、試長20cm、引張り速度200mm/分で行う。なお、バラツキを考慮してn=5として測定して平均をとった。
【0095】
(6)色のバラツキ
紡糸錘または捲取日、捲取時刻の異なる繊維100本分をそれぞれ黒板に40ターン/cmのピッチで捲き付けたものを熟練者が目視判定し、発色バラツキが殆ど視認できない場合を○、100本のうち5本以内で色差を視認できる場合を△、100本のうち6本以上で色差を視認できる場合を×とした。
【0096】
[実施例1]
5−ナトリウムスルホイソフタル酸が0.9モル%共重合された、固有粘度0.57のポリエチレンテレフタレート系ポリエステルと、固有粘度1.20のナイロン6とを用い、特開平11−124748号に記載された複合紡糸口金の吐出孔に、繊維が図2に示す長軸方向の両側の辺にそれぞれ3個の凹部を有する(丸断面が4つ接合した)断面となる、吐出孔を12個有した紡糸口金を用い、口金温度280℃、引取速度1000m/分で紡糸し、一旦巻き取ることなく延伸倍率3.4倍、延伸温度(供給ローラの表面温度)90℃、セット温度180℃(延伸ローラの表面温度)で延伸し、120dtex12フィラメントの長繊維として巻き取った。得られたフィラメントの断面形態は偏平率3.0の偏平形状であり、重合体の交互積層数は30層であった。なお、偏平積層部の外周に、共重合ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルからなる非積層領域を設けた。
【0097】
得られた光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンは、反射率差が10%、ピーク反射率−1%での反射波長幅55nm、伸度30%であり、良好な発色強度を有すると共に、色のバラツキを視認できない良好なものであった。結果を表1に示す。
【0098】
[実施例2、3、比較例1]
複合紡糸口金の吐出孔形状を変更し、繊維横断面の偏平率および凹部の数を表1の通り変更した以外は実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
【0099】
[実施例4、5、比較例2]
光干渉性フィラメントを80dtex20フィラメントとし、繊維横断面の偏平率を表1の通り変更した以外は実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーンは、従来よりも広い範囲の波長帯の光を反射するので、見た目の色のバラツキが小さいという特性を生かし、用途各種和装、洋装分野、スポーツ分野などの衣料用途、インテリアなどの非衣料用途に展開できるだけでなく、繊維をショートカットしたパウダー用途においても、大量生産、使用時の発色バラツキの小さい優れた製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】(a)および(b)は従来の光干渉性フィラメントの横断面の一概略図である。
【図2】本発明にかかる光干渉性フィラメントの横断面の一概略図である。
【図3】(a)〜(e)は本発明にかかる光干渉性フィラメントを、(f)は従来の光干渉性フィラメントを紡糸する際に使用する吐出孔を示すの概略図である。
【図4】本発明にかかる光干渉性フィラメントと従来の光干渉性フィラメント(従来品)の分光反射率曲線の一概略図である。
【符号の説明】
【0103】
A 重合体
B Aと屈折率の異なる重合体
C 非積層部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率の異なる少なくとも2種の重合体が偏平断面の長軸方向と並行に積層してなる、偏平状の光干渉性フィラメントで構成されるマルチフィラメントヤーンであって、該偏平断面の長軸方向の少なくとも一方の辺に凹部を1〜5個有していることを特徴とする光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーン。
【請求項2】
屈折率の異なる2種の重合体がポリエステルおよびナイロンであり、光干渉性フィラメントの偏平率が2.0〜15.0、積層数が15〜140層で、かつ、マルチフィラメントヤーンの伸度が10〜50%である請求項1記載の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーン。
【請求項3】
分光反射率曲線が下記(1)および(2)を満足する、請求項1または2記載の光学干渉機能を有するマルチフィラメントヤーン。
(1)波長400〜700nmの範囲における分光反射率のピーク反射率値から波長350nmにおける反射率値を差し引いた反射率差が7%以上
(2)ピーク反射率値から1%低い反射率における波長幅が50nm以上200nm以下

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−16333(P2007−16333A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197278(P2005−197278)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】