説明

光学式測定装置およびタービン

【課題】タービン車室に壁内にそこから車室内部に突出することなしに組み込むことができ、タービン翼の表面における複数の被測定部位の温度を熱放射のスペクトルを十分に得て同時に並行測定することができる高温計を提供する。
【解決手段】測定が流体流路の壁を介して行われる流体流路内の対象物を測定するための光学式測定装置であって、対象物から到達する放射を転向させるための反射プリズム3と、放射の少なくとも一部を焦束させるための少なくとも1つのレンズ4とを備えている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特にガスタービン内で用いられる光学式測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の温度検出方式に高温測定がある。その場合、対象物から出る熱放射が検出されて求められる。熱放射のスペクトルを求めることができるか、または放出された全パワーを求めることができる。極めて高温の対象物の場合、ここでは一方では接触式測定が困難であり、他方では熱放射が非常に強いために、高温測定が特に有利である。
【0003】
この測定様式は従って通常、ガスタービンのタービン翼の温度を検出するために用いられる。タービン翼は代表的に1200℃以上の温度にある。ガスタービンにおける将来的効率向上は運転温度の増大に関連する。これに伴ってタービン翼の材料特性についての要件が厳しくなる。同時にタービン翼の局所的過熱を認識し損傷を防止するために、タービン翼表面の温度および温度分布の監視が必要である。
【0004】
タービン翼表面の被測定場所における温度を高温計(pyrometer)により検出することが知られている。その場合、タービン翼表面上の温度分布に関する情報が得られない欠点がある。また、いわゆる「トラバーシング(Traversing)」」を実施すること、即ち、光センサを短時間の間タービン車室の中に挿入することが知られている。この場合一方では、トラバーシング用の機構が必要であり、他方ではセンサがタービン車室の中に一時的に突入するという欠点がある。後者はガス流速が極めて高いためにセンサの大きな強度を必要とし、またガス流を乱し、従ってタービンの運転に支障を与える。
【0005】
さらに高温計内に分散プリズムを設けることが特許文献1で知られている。そのプリズムは、波長選択に基づいて場所選択が実施されることによってタービン翼上の異なる場所の温度を測定することを可能にする。しかしこの方式は観察しようとする場所における個々の波長に対するフィルタを必要とする。また、1つの場所から常に1つの波長しか明らかにできず、従って、例えばスペクトルの形態の多くの情報および熱放射出力が失われるという欠点がある。これは測定精度に不利に作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4240706号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、対象物から到達する放射のスペクトルが少なくとも複数の場所に分けて同時に得られるようにして、対象物上における複数の場所の温度を同時に並行測定あるいは並行監視できる光学式測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は請求項1に記載の特徴事項を有する光学式測定装置によって解決される。本発明の有利な実施態様および発展形態は従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明に基づく光学式測定装置は流体流路内における対象物を測定するために形成され、その測定は流体流路の壁を介して行われる。この光学式測定装置は対象物から到達する放射を反射するためのミラー要素を有している。また本発明に基づく光学式測定装置は、放射の少なくとも一部を焦束するための少なくとも1つの結像要素を有している。
【0010】
本発明に基づく光学式測定装置のそれらの要素によって、測定装置内の特定の場所における両要素の通過後の放射において、測定装置内のそれぞれの位置と放射の放出場所、即ち、対象物の表面において放射が放出された部位との間に関連性が存立することが有利に達成される。しかし同時に、それらの要素の材料特性および放射を通過させねばならない他の要素がそれを許す限りにおいて、放射は元々放出された全スペクトルから成っている。いずれにしても実質的に波長についてのフィルタリングは行われない。さらにそのスペクトルは、たとえ元々放出されたスペクトルに対して一部が不完全であっても、測定装置の内部では完全なスペクトルと見なされる。
【0011】
従って、光学式測定装置において放射をその場所について選択することによって、対象物の表面における複数の被測定部位を同時に並行に観察し、測定しかつ監視することができ、その場合、全スペクトルが利用される。同時にミラー要素がそのために測定装置の機械運動も測定装置内部におけるそのような運動も有利に不要とすることを可能とする。むしろ、測定装置は例えば観察すべき表面に対して或る程度横にずれて設けられ、その場合、ミラー要素が放射を適切に転向させる。
【0012】
光学式測定装置は例えば対象物上における放出場所の温度を高温測定するために用いられる。この場合、放射は対象物自体の材料から放出される。しかし正確には、この測定装置を被測定部位に当たる散乱光や反射光を受光するために用いることができる。
【0013】
測定装置の内部に対象物からの放射路上にまずミラー要素が配置され、これによって、放射はミラー要素の通過後にはじめて結像要素に当たると好ましい。それに代えて、ミラー要素と結像要素とを放射に関して逆に配置して、放射が先ずはじめに結像要素に当たり次にミラー要素に当たるようにすることもできる。
【0014】
本発明の特に有利な実施態様において、ミラー要素は反射プリズムである。反射プリズムは、本来の鏡面がプリズム材料内に位置し汚れることがないので、鏡面の汚れをほとんど受けない利点を有する。また反射プリズムにおいて内部の全反射が利用され、これは反射の際のパワー損失を減少させる。反射プリズムが石英ガラスから成っていると特に有利である。というのは、石英ガラスは大きな耐熱性を有すると共に熱放射の自己放出が僅かであるからである。これによって測定精度が向上する。他の材料として例えばサファイヤが挙げられる。あるいはまた、ミラー要素を鏡として例えば金属鏡として形成することもできる。
【0015】
本発明の実施態様において結像要素はシャドウマスクとして形成され、これは特に単純な構造を可能とする。結像要素として1個あるいは複数個のレンズを利用すると有利である。非球面レンズを利用すると特に有利であり、これによって、対象物上における放出場所の広い範囲からの放射の正確な光学的結像が可能となる。これは高い測定精度を生じる。
【0016】
本発明の特に有利な実施態様および発展形態において、光学式測定装置がミラー要素および結像要素に続いて2本、3本・・・7本あるいはそれ以上の光導波路を有している。これらの光導波路はミラー要素および結像要素の通過後の放射を例えば1つあるいは複数の検出器に案内するために使われる。これによって、放射案内は光導波路の始端において測定装置の異なった幾何学的構造に左右されない。光導波路が測定装置の要素の近くで終えれば終えるほど、ビーム発散による損失が少なくなる。
【0017】
ミラー要素および結像要素によって、各光導波路が対象物の表面上におけるそれぞれの被測定部位から放射を受けて案内することが達成される。その被測定部位の位置およびその大きさはミラー要素および結像要素を介して並びにそれぞれの光導波路の先端の場所を介して決定される。特にそれらの被測定部位は対象物の広い部分が検出されるように設計される。特にそれらの被測定部位は重なり合っていてもよいしあるいは重なり合っていなくてもよい。
【0018】
本発明の発展形態において結像要素は光導波路の一部として形成されている。そのために測定装置内において光導波路はその先端に例えば光導波路に組み込まれた1つのレンズをそれぞれ有している。これらのレンズは例えば光導波路の先端のミクロ構造によって実現されるか又は溶融プロセスによって作成される。この実施態様は構造に非常に柔軟性をもたせる。結像時における高い精度のために、結像要素として光導波路内に組み込まれたレンズと組み合わせて1個あるいは複数個のレンズを利用することもできる。
【0019】
本発明の有利な実施態様および発展形態において、光学式測定装置は流体に対して密閉するための窓を有している。この窓は流体に対して適切に密封することによって測定装置の内部を保護し、特に上述の要素を保護する。この窓は対象物から放出される放射のそれぞれのスペクトルの少なくとも一部を透過させることができると好ましい。この窓は例えば石英ガラス、プラスチック窓あるいはサファイヤ窓である。
【0020】
光学式測定装置は有利にタービン内、例えばガスタービン内で単独であるいは複数で用いられる。ガスタービン内の温度が高いために、タービン翼における高温測定に利用すると特に有利である。この測定装置は他の形式のタービンあるいは他の種類の流体、例えば液体および異なった温度においても用いることができる。またこの測定装置は放出された熱放射を検出するためではなく、放射が1つあるいは複数の対象物自体から放出されていない拡散反射あるいは鏡面反射について測定する場合に用いることも考えられる。
【0021】
殊にタービン、特にガスタービンの場合、光学式測定装置は、光学式測定装置自体が、即ち、場合によってはその閉鎖窓がタービン車室の内壁と面一の終端面を有するように組み込まれていると有利である。これによって、流体流れの乱れが防止され、窓による閉鎖において窓しかタービン内の状態に曝されない。
【0022】
以下において図に示した実施例を参照して本発明の利点および詳細を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は光学式測定装置の概略構成図を示す。
【図2】図2はタービン内の測定装置の側面図を示す。
【図3】図3はタービン内の測定装置の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1における本発明の実施例において光学式測定装置はチューブ2で実現されている。このチューブ2は例えば図2および図3に示されているようにガスタービン内で用いるのに適している。チューブ2は筒型形状をし、例えば長さが7cm、外径が1cmとなっている。チューブ2はガスタービン内で用いる場合にそこで生ずる温度に耐えるように形成されていると好ましい。
【0025】
チューブ2はタービン側端がサファイヤ窓1で閉鎖されている。このサファイヤ窓1は特に熱安定性を有し、温度検出のために測定装置で感知しなければならない発生した熱放射を透過させる。同時にサファイヤ窓1はチューブ2内への高温ガスの侵入を防止し、これによって他の構成部品を保護する。
【0026】
サファイヤ窓1の後方範囲に反射プリズム3が配置されている。この反射プリズム3は到達する放射をスペクトル成分に分解することなしに転向する。この放射は転向後にレンズ4に当たる。このレンズ4はその放射を、例えば図2および図3に示されているタービン翼の種々の部位8から出る光が例えば7本設けられたグラスファイバ5のうちの複数のグラスファイバ内に導かれるように焦束させる。これらのグラスファイバ5は放射をさらに、到達するスペクトルあるいは到達する光量を求めることのできる検出器に案内する。
【0027】
図2はタービン翼6を備えたタービンの一部を概略的に側面図で示している。図3はタービンの部分を概略的に平面図で示している。図1における光学式測定装置で温度が時間的に並行して監視されねばならないタービン翼6の複数の被測定部位8が示されている。そのために測定装置はタービンロータに半径方向に向いているが、図2および図3から理解できるようにタービン翼6に対して横にずれて組み込まれている。
【0028】
タービン翼6からサファイヤ窓1に或る角度を成して当たる熱放射が図3において光経路によって示されている。放射はチューブ2内で反射プリズム3によって転向され、図1で上述したようにレンズ4によって7本のグラスファイバ5に分配される。各グラスファイバ5はそれぞれ特定の被測定部位8の熱放射だけを案内する。これによって、タービン翼6の高速通過中に7つの被測定部位8を並行温度測定することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 サファイヤ窓
2 チューブ
3 反射プリズム
4 レンズ
5 グラスファイバ
6 タービン翼
7 タービン車室
8 被測定部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定が流体流路の壁を介して行われる流体流路内の対象物を測定するための光学式測定装置であって、
対象物から到達する放射を転向させるためのミラー要素と、
放射の少なくとも一部を焦束させるための少なくとも1つの結像要素と
を備えていることを特徴とする光学式測定装置。
【請求項2】
ミラー要素が反射プリズムとして形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学式測定装置。
【請求項3】
反射プリズムが石英ガラスから成っていることを特徴とする請求項2に記載の光学式測定装置。
【請求項4】
結像要素が非球面レンズとして形成されていることを特徴とする請求項1ないし3の1つに記載の光学式測定装置。
【請求項5】
ミラー要素および結像要素に続いて放射を案内するための光導波路が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4の1つに記載の光学式測定装置。
【請求項6】
光導波路がそれぞれ、光導波路に組み込まれた1つのレンズを有するか又は光導波路の先端にミクロ構造を有することによって、結像要素が光導波路の一部として形成されていることを特徴とする請求項5に記載の光学式測定装置。
【請求項7】
流体に対して密閉するための窓を有していることを特徴とする請求項1ないし6の1つに記載の光学式測定装置。
【請求項8】
タービン翼を測定するために請求項1ないし7の1つに記載の光学式測定装置を少なくとも1つ備えていることを特徴とするタービン、正確にはガスタービン。
【請求項9】
光学式測定装置が、該光学式測定装置がタービン車室の内壁と面一の終端面を有するように組み込まれていることを特徴とする請求項8に記載のタービン、正確にはガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−515671(P2011−515671A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500196(P2011−500196)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053141
【国際公開番号】WO2009/115520
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】