説明

光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物の製造方法

【課題】光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物の新たな製造方法の提供。
【解決手段】触媒量の高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物存在下、光学活性な2級アリルアルコールを1,3−不斉転写を伴う分子内S2’型環化反応させる工程を含む、光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物の製造方法。


(式中、n個のR1は独立して水素原子、ハロゲン原子、C2−C6アルケニル基等、R2は、アミノ基の保護基、R3は、置換されていてもよいC1−C6アルキル基、nは、1〜4の整数を表し、かつ*が付された炭素原子の立体配置は、S又はRを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロイソキノリン化合物、特に1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物は、多くの生物活性アルカロイドの重要な部分構造であることから、医薬、農薬等の製造中間体として有用であることが知られている。1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物を医薬品の製造中間体として供給する際には、当該化合物の1位に不斉中心が存在することから、その光学活性体の製造方法を確立することが重要である。
これまでに光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物は、主に以下の6つのアプローチによる合成例が報告されている。
【0003】
【化1】

【0004】
[式中、Rは、水素原子以外の基(アルキル基等)を表し、R’は、水素原子又はそれ以外の基を表し、R’は、キラル補助基を表し、かつXは脱離基を表す。]
【0005】
非特許文献1には、キラルルテニウム触媒存在下、高圧条件にて1位置換3,4−ジヒドロイソキノリンのイミノ基を不斉還元することにより、光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物を得る方法が記載されている。
【0006】
非特許文献2〜4には、それぞれテトラヒドロイソキノリンの窒素原子上に不斉補助基を取り付け、無水溶媒中、低温下で1位を脱プロトンし、アニオンを発生させてジアステレオ選択的に1位をアルキル化する方法が記載されている。
【0007】
非特許文献5〜8には、それぞれ3,4−ジヒドロイソキノリンのイミノ基に対するジアステレオ選択的、又はエナンチオ選択的付加による光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物を得る方法が記載されている。
【0008】
非特許文献9、10には、アザマイケル反応、又はパラジウムπ−アリル錯体を経由してエナンチオ選択的に光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物を得る方法が記載されている。
【0009】
非特許文献11には、不斉ピクテ・スペングラー(Pictet−Spengler)反応によりジアステレオ選択的に光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物を得る方法が記載されている。
【0010】
上記各方法は、高圧条件、厳密な無水条件、低温条件等の特殊な反応条件が必要、高価な金属触媒の使用が必要、等量の不斉補助基が必要、化学収率や光学収率が低い、或いは反応基質としてイミンを用いる場合には基質の化学安定性や反応性の低さが問題となる等の問題点を有していた。
【0011】
一方、本発明者らは、触媒量のビスマス(III)トリフラート(Bi(OTf))存在下、光学活性な2級アリルアルコールを分子内S2’型環化反応させることにより、高い1,3−不斉転写率で光学活性1位ビニル置換テトラヒドロイソキノリン化合物が得られることを報告している(非特許文献12)。しかし、この方法においても、高い化学収率、及び光学収率を得るためには低温条件を必要とし、また、使用するビスマス触媒が水に不安定であるため不活性ガス雰囲気下で反応を行う必要がある等の実用面での問題を有していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.1989,111,4859−4863.
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.1987,109,1263−1265.
【非特許文献3】Tetrahedron Lett.1991,32,5509−5512.
【非特許文献4】Tetrahedron 1992,48,2589−2612.
【非特許文献5】Tetrahedron Lett.1995,36,6709−6712.
【非特許文献6】Synlett.2003,1075−1087.
【非特許文献7】J.Am.Chem.Soc.2006,128,14010−14011.
【非特許文献8】Org.Lett.2006,7,1295−1297.
【非特許文献9】Heterocycles 2003,59,51−55.
【非特許文献10】Synlett 2003,1809−1812.
【非特許文献11】Synthesis 1998,162−166.
【非特許文献12】Tetrahedron Lett.2009,50,6580−6583.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、従来法に比較して実用性の高い光学活性1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物の新たな製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、かかる状況下、鋭意検討を重ねた結果、触媒として安価で入手容易な高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物の存在下、光学活性な2級アリルアルコール化合物を分子内S2’型環化反応に付すだけで、含水条件下、及び/又は室温下であっても、1,3−不斉転写を伴い、光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物を高化学収率、及び高光学収率で製造できることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物の存在下、光学活性な式(I):
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、n個のRは、独立してそれぞれ置換されていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、C1−アルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基、C−Cシクロアルキル基、C−C10アリール基、C−C14アラルキル基、C1−アルコキシ基、C−C10アリールオキシ基、C1−アルキルチオ基、C−C10アリールチオ基、C1−アルキル−カルボニル基、C−C10アリール−カルボニル基、C1−アルキル−カルボニルオキシ基、C−C10アリール−カルボニルオキシ基、C1−アルコキシ−カルボニル基、C−C10アリールオキシ−カルボニル基、C1−アルキルスルホニル基、C−C10アリールスルホニル基、C1−アルキルスルホニルオキシ基、C−C10アリールスルホニルオキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルバモイル基、アジド基、トリC1−アルキルシリル基、及び保護されたアミノ基からなる群より選択される基を表し;
は、アミノ基の保護基を表し;
は、置換されていてもよいC1−アルキル基、置換されていてもよいC−Cシクロアルキル基、又は置換されていてもよいC−C10アリール基を表し;
nは、1〜4の整数を表し;かつ
*が付された炭素原子の立体配置は、S又はRを表す。ここで、隣接する2個のRが存在する場合には、一緒になってメチレンジオキシ基を形成してもよい。)
で示される化合物を分子内S2’型環化反応させる工程を含む、光学活性な式(II):
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R、R、R、n、及び*は上記で定義した通りである。)
で示される化合物の製造方法。
[2]高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物が、過ハロゲン酸、過ハロゲン酸エステル、ニトロ基、ハロゲン原子、若しくはC1−アルキル基で置換されていてもよいフェニルスルホン酸、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−アルキルスルホン酸、及びハロゲン原子により置換されていてもよいC1−アルキルスルホン酸エステルからなる群より選択される化合物である、上記[1]記載の製造方法。
[3]高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物が、過塩素酸、過臭素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ジメチル硫酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸C1−アルキルエステル、又はトリフルオロメタンスルホン酸トリC1−アルキルシリルエステルである、上記[1]又は[2]記載の製造方法。
[4]反応が溶媒の存在下で行われる、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]溶媒が、ハロゲン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、及び脂肪族炭化水素系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒を含む、上記[4]記載の製造方法。
[6]溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、又は四塩化炭素である、上記[5]記載の製造方法。
[7]溶媒が、キシレン、トルエン、ベンゼン、ヘプタン、ヘキサン、又はペンタンである、上記[5]記載の製造方法。
【0019】
本発明は、また上記製造方法により得られる新規な光学活性1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物を提供する。
【0020】
上記新規な光学活性1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物は、(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−7−メトキシ−6−ピバロイルオキシ−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(化合物(IIb))、及び(R,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−7−メトキシ−6−ピバロイルオキシ−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(化合物(IIb’))である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の製造方法によれば、光学活性1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物を、温度、水分等の反応条件を厳密に制御する必要なく、収率良く、高立体選択的に製造できる新たな方法を提供することができる。また、本発明の製造方法は、高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物として、安価な過塩素酸、ジメチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸等を触媒量使用するだけでよい実用的な方法であり、さらに光学活性な2級アリルアルコール化合物の合成の際に使用するビニルホウ酸ピナコールエステルの光学異性体を使い分けることで、環化生成物である1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物の両エナンチオマーをそれぞれ高い光学純度で効率よく製造することができるという利点も有する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0023】
(定義)
本明細書中、「高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物」とは、高酸化状態のカルコゲン元素若しくは高酸化状態のハロゲン元素を中心元素として含有する化合物を意味する。ここで、「高酸化状態」とは、3価以上の原子価状態を意味し、好ましくは、5価以上である。本明細書で使用する「カルコゲン」とは、周期律表の第16族元素を意味し、中でも安定な高酸化状態をとり得る硫黄、セレン、又はテルルが好ましく、特に好ましくは、硫黄である。本明細書で使用する「ハロゲン」とは、周期律表の第17族元素を意味し、中でも安定な高酸化状態をとり得る塩素、臭素、又はヨウ素が好ましく、特に好ましくは、塩素である。本発明における「高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物」の好ましい例としては、過ハロゲン酸、過ハロゲン酸エステル、ニトロ基、ハロゲン原子、若しくはC1−アルキル基で置換されていてもよいフェニルスルホン酸、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−アルキルスルホン酸、並びに1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−アルキルスルホン酸エステルからなる群より選択される化合物等が挙げられ、中でも、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ジメチル硫酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸C1−アルキルエステル、又はトリフルオロメタンスルホン酸トリアルキルシリルエステルが好ましく、特に過塩素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ジメチル硫酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステル、又はトリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリルエステルが好ましい。これらは市販品をそのまま使用することが可能である。
【0024】
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0025】
本明細書中、「C−Cアルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル等が挙げられる。中でも、C−Cアルキル基が好ましい。
【0026】
本明細書中、「C−Cアルケニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜6のアルケニル基を意味し、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、5−ヘキセニル等が挙げられる。中でも、特にC−Cアルケニル基が好ましい。
【0027】
本明細書中、「C−Cアルキニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜6のアルキニル基を意味し、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル等が挙げられる。中でも、C−Cアルキニル基が好ましい。
【0028】
本明細書中、「C−Cシクロアルキル基」としては、炭素原子数3〜8の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。中でも、C−Cシクロアルキル基が好ましい。
【0029】
本明細書中、「C−C10アリール基」とは、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭素原子数6〜10の炭化水素基を意味し、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等が挙げられる。
【0030】
本明細書中、「C−C14アラルキル基」とは、「C1−アルキル基」に「C−C10アリール基」が置換した基を意味し、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、(ナフチル−1−イル)メチル、(ナフチル−2−イル)メチル、1−(ナフチル−1−イル)エチル、1−(ナフチル−2−イル)エチル、2−(ナフチル−1−イル)エチル、2−(ナフチル−2−イル)エチル等が挙げられる。
【0031】
本明細書中、「C−Cアルコキシ基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。中でも、C−Cアルコキシ基が好ましい。
【0032】
本明細書中、「C−C10アリールオキシ基」とは、酸素原子に「C−C10アリール基」が結合した基を意味し、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。中でも、フェノキシ基が好ましい。
【0033】
本明細書中、「C−Cアルキルチオ基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキルチオ基を意味し、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、ヘキシルチオ等が挙げられる。中でも、C−Cアルキルチオ基が好ましい。
【0034】
本明細書中、「C−C10アリールチオ基」とは、硫黄原子に「C−C10アリール基」が結合した基を意味し、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ等が挙げられる。中でも、フェニルチオ基が好ましい。
【0035】
本明細書中、「C−Cアルキル−カルボニル基」とは、−C=O−に「C−Cアルキル基」が結合した基を意味し、例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、プロピルカルボニル、イソプロピルカルボニル、ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、sec−ブチルカルボニル、tert−ブチルカルボニル、ペンチルカルボニル、イソペンチルカルボニル、ネオペンチルカルボニル、ヘキシルカルボニル等が挙げられる。中でも、C−Cアルキル−カルボニル基が好ましい。
【0036】
本明細書中、「C−C10アリール−カルボニル基」とは、−C=O−に「C−C10アリール基」が結合した基を意味し、例えば、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル等が挙げられる。中でも、ベンゾイル基が好ましい。
【0037】
本明細書中、「C−Cアルキル−カルボニルオキシ基」とは、酸素原子に「C−Cアルキル−カルボニル基」が結合した基を意味し、例えば、メチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ、ペンチルカルボニルオキシ、イソペンチルカルボニルオキシ、ネオペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシ等が挙げられる。中でも、C−Cアルキル−カルボニルオキシ基が好ましい。
【0038】
本明細書中、「C−C10アリール−カルボニルオキシ基」とは、酸素原子に「C−C10アリール−カルボニル基」が結合した基を意味し、例えば、ベンゾイルオキシ、1−ナフトイルオキシ、2−ナフトイルオキシ等が挙げられる。中でも、ベンゾイル基が好ましい。
【0039】
本明細書中、「C−Cアルコキシ−カルボニル基」とは、−C=O−に「C−Cアルコキシ基」が結合した基を意味し、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、イソペンチルオキシカルボニル、ネオペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル等が挙げられる。中でも、C−Cアルコキシ−カルボニル基が好ましい。
【0040】
本明細書中、「C−C10アリールオキシ−カルボニル基」とは、−C=O−に「C−C10アリールオキシ基」が結合した基を意味し、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル、2−ナフチルオキシカルボニル等が挙げられる。中でも、フェノキシカルボニル基が好ましい。
【0041】
本明細書中、「C−Cアルキルスルホニル基」とは、−S(O)−に「C−Cアルキル基」が結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec−ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル等が挙げられる。中でも、C−Cアルキルスルホニル基が好ましい。
【0042】
本明細書中、「C−C10アリールスルホニル基」とは、−S(O)−に「C−C10アリール基」が結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル、2−ナフチルスルホニル等が挙げられる。中でも、フェニルスルホニル基が好ましい。
【0043】
本明細書中、「C−Cアルキルスルホニルオキシ基」とは、酸素原子に「C−Cアルキルスルホニル基」が結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ、プロピルスルホニルオキシ、イソプロピルスルホニルオキシ、ブチルスルホニルオキシ、イソブチルスルホニルオキシ、sec−ブチルスルホニルオキシ、tert−ブチルスルホニルオキシ、ペンチルスルホニルオキシ、イソペンチルスルホニルオキシ、ネオペンチルスルホニルオキシ、ヘキシルスルホニルオキシ等が挙げられる。中でも、C−Cアルキルスルホニルオキシ基が好ましい。
【0044】
本明細書中、「C−C10アリールスルホニルオキシ基」とは、酸素原子に「C−C10アリールスルホニル基」が結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニルオキシ、1−ナフチルスルホニルオキシ、2−ナフチルスルホニルオキシ等が挙げられる。中でも、フェニルスルホニルオキシ基が好ましい。
【0045】
本明細書中、「トリC1−アルキルシリル基」とは、同一又は異なる3個のC1−アルキル基により置換されたシリル基を意味し、当該アルキル基としては、C1−アルキル基が好ましい。トリC1−アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、又はtert−ブチルジメチルシリル基が好ましい。
【0046】
本明細書中、「保護されたアミノ基」は、「保護基」で保護されたアミノ基を意味する。当該「保護基」としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley and Sons刊(1980)に記載のアミノ基の保護基を使用し得、C1−アルキル基、C2−アルケニル基、C6−10アリール基、C7−14アラルキル基、C1−アルキル−カルボニル基、C1−アルコキシ−カルボニル基、C2−アルケニルオキシ−カルボニル基、C6−10アリール−カルボニル基、C7−14アラルキル−カルボニル基、C6−10アリールオキシ−カルボニル基、C7−14アラルキルオキシ−カルボニル基、C6−10アリールスルホニル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、トリC1−アルキルシリル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、フタロイル基等の保護基が挙げられる。上記の保護基は、ハロゲン原子、C1−アルキル基、C1−アルコキシ基又はニトロ基でそれぞれ置換されていてもよい。当該アミノ基の保護基の具体例としては、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、tert−ブトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンズヒドリル、トリチル、フタロイル、アリルオキシカルボニル、p−トルエンスルホニル、o−ニトロベンゼンスルホニル、トリメチルシリルエトキシカルボニル等が挙げられる。
【0047】
本明細書中、「置換されていてもよい」とは、1個以上の置換基により置換されていてもよいことを意味し、該「置換基」としては、(1)ハロゲン、(2)ニトロ、(3)シアノ、(4)ヒドロキシ、(5)C1−アルキル、(6)C3−シクロアルキル、(7)C2−アルケニル、(8)C2−アルキニル、(9)オキソ、(10)C1−アルコキシ、(11)C1−アルキレンジオキシ、(12)C6−10アリール、(13)C7−14アラルキル、(14)C1−アルコキシ−カルボニル、(15)C7−14アラルキルオキシ−カルボニル、(16)C1−アルキル−カルボニル、(17)C6−10アリール−カルボニル、(18)C1−アルキルスルホニル、(19)C6−10アリールスルホニル、(20)C1−アルキル−カルボニルオキシ、(21)C7−14アラルキルオキシ−カルボニルオキシ、(22)C6−10アリール−カルボニルオキシ、(23)C1−アルキルスルホニルオキシ、(24)C6−10アリールスルホニルオキシ、(25)チオキソ、(26)カルボキシ、(27)ホルミル、(28)アジド、(29)C−Cアルキルチオ、(30)C−C10アリールチオ、(31)カルバモイル、(32)トリC1−アルキルシリル基、(33)保護されたアミノ基等が挙げられる。中でも、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、C1−アルキル、オキソ、C1−アルコキシ、メチレンジオキシ、C1−アルコキシ−カルボニル、アセチル、ベンゾイル、カルボキシ、ホルミル、カルバモイル、アジド、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、ジメチルアミノ、アセチルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、tert−ブトキシカルボニルアミノが好ましい。
【0048】
本明細書中、「ハロゲン系溶媒」とは、炭化水素の水素原子がハロゲン原子に置換された化合物からなる溶媒を意味し、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。中でもジクロロメタン、又はクロロホルムが好ましい。
【0049】
本明細書中、「芳香族炭化水素系溶媒」とは、芳香族炭化水素からなる溶媒を意味し、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。中でもトルエンが好ましい。
【0050】
本明細書中、「脂肪族炭化水素系溶媒」とは、脂肪族炭化水素からなる溶媒を意味し、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が挙げられる。中でもペンタン、ヘキサン、又はヘプタンが好ましい。
【0051】
(本発明の化合物)
本発明の製造方法における反応基質(前駆体)である光学活性な2級アリルアルコール化合物は、式(I):
【0052】
【化4】

【0053】
で示される化合物であり、目的化合物は、式(II):
【0054】
【化5】

【0055】
で示される光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物である。
【0056】
以下、式(I)、及び式(II)で示される化合物(以下、それぞれ化合物(I)、及び化合物(II)と略称することもある。)の各基について説明する。
【0057】
は、水素原子、ハロゲン原子、C1−アルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基、C−Cシクロアルキル基、C−C10アリール基、C−C14アラルキル基、C1−アルコキシ基、C−C10アリールオキシ基、C1−アルキルチオ基、C−C10アリールチオ基、C1−アルキル−カルボニル基、C−C10アリール−カルボニル基、C1−アルキル−カルボニルオキシ基、C−C10アリール−カルボニルオキシ基、C1−アルコキシ−カルボニル基、C−C10アリールオキシ−カルボニル基、C1−アルキルスルホニル基、C−C10アリールスルホニル基、C1−アルキルスルホニルオキシ基、C−C10アリールスルホニルオキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルバモイル基、アジド基、トリC1−アルキルシリル基、及び保護されたアミノ基からなる群より選択される基を表し、各基は、それぞれ置換されていてもよい。ここで、nが2乃至4である場合、n個のRは、同一でも異なっていてもよい。2個のRが隣接する場合には、一緒になって、メチレンジオキシ基を形成してもよい。
【0058】
は、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、C1−アルキル基、C1−アルコキシ基、C1−アルキル−カルボニル基、C−C10アリール−カルボニル基、C1−アルキル−カルボニルオキシ基、C−C10アリール−カルボニルオキシ基、C1−アルコキシ−カルボニル基、C1−アルキルスルホニルオキシ基、C−C10アリールスルホニルオキシ基、ホルミル基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルバモイル基、アジド基、トリC1−アルキルシリル基、又は保護されたアミノ基であり、各基は、それぞれ1個以上のハロゲン原子、ニトロ基、又はC1−アルキル基により置換されていてもよい。より好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、C1−アルキル基、C1−アルコキシ基、C1−アルキル−カルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、C1−アルコキシ−カルボニル基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基、ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、ホルミル基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルバモイル基、アジド基、トリメチルシリル基、又はアセチルアミノ基である。
【0059】
は、アミノ基の保護基を表し、例えば、C1−アルキル基、C2−アルケニル基、C6−10アリール基、C7−14アラルキル基、C1−アルキル−カルボニル基、C1−アルコキシ−カルボニル基、C2−アルケニルオキシ−カルボニル基、C6−10アリール−カルボニル基、C7−14アラルキル−カルボニル基、C6−10アリールオキシ−カルボニル基、C7−14アラルキルオキシ−カルボニル基、C6−10アリールスルホニル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、トリC1−アルキルシリル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、フタロイル基等が挙げられ、上記各基は、それぞれハロゲン原子、C1−アルキル基、C1−アルコキシ基又はニトロ基で置換されていてもよい。
【0060】
は、好ましくは、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、tert−ブトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンズヒドリル、トリチル、フタロイル、アリルオキシカルボニル、p−トルエンスルホニル、o−ニトロベンゼンスルホニル、又はトリメチルシリルエトキシカルボニルである。
【0061】
は、C1−アルキル基、C−Cシクロアルキル基、又はC−C10アリール基を表し、各基は、それぞれ置換されていてもよい。
【0062】
は、好ましくは、C1−アルキル基、又はフェニル基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、又はフェニル基である。
【0063】
nは、1〜4の整数を表し、好ましくは、1又は2である。
【0064】
*が付された炭素原子の立体配置は、S又はRを表す。
【0065】
本発明では、触媒として、安価で入手容易な特定の高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物の存在下、光学活性な2級アリルアルコール化合物(I)を分子内S2’型環化反応に付すことにより、1,3−不斉転写を伴って、光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物(II)を製造する。
【0066】
本発明における1,3−不斉転写を伴う分子内S2’型環化反応の原料化合物である光学活性な2級アリルアルコール化合物(I)の製造方法について説明する。なお、各工程で得られた化合物は反応液のまま、又は粗生成物として得た後に次反応に用いることもできるが、常法に従って、反応混合物から単離することもでき、再結晶、蒸留、クロマトグラフィー等の分離手段により容易に精製することができる。
【0067】
(化合物(I)の合成)
化合物(I)は、自体公知の方法に従って、例えば、下記式のルートにより製造することができる。
【0068】
【化6】

【0069】
[式中の各記号は、前記と同義である。]
【0070】
具体的には、Rが水素原子、Rがtert−ブトキシカルボニル基、Rがメチル基、及びnが4の場合、2−ブロモベンジルブロミド(1−1)とシアン化ナトリウムとを反応させ、2−ブロモベンジルシアニド(1−2)へと変換後、ニッケル(II)クロリド、及びジtert−ブチルジカルボナート(BocO)存在下、水素化ホウ素ナトリウム還元により、N−tert−ブトキシカルボニル−N−[2−(2−ブロモフェニル)エチル]アミン(1−3)を合成する。続いて、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウムジクロリド(PdCl(dppf))存在下、N−tert−ブトキシカルボニル−N−[2−(2−ブロモフェニル)エチル]アミン(1−3)と対応する2級アリル基を有するビニルホウ酸ピナコールエステル(1−4)とを反応させて化合物(1−5)に変換後、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基をテトラn−ブチルアンモニウムフルオリドを用いて除去することにより製造することができる。
【0071】
(化合物(I)から化合物(II)への1,3−不斉転写を伴う分子内S2’型環化反応)
【0072】
【化7】

【0073】
[式中の各記号は、前記と同義である。]
【0074】
本発明における1,3−不斉転写を伴う分子内S2’型環化反応において、触媒である高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物の使用量は、使用する化合物の種類にも依るが、収率及び経済性の点から、光学活性な2級アリルアルコール化合物(I)に対して、好ましくは0.5〜30モル%、より好ましくは1〜20モル%、特に好ましくは5〜10モル%である。
【0075】
本発明において使用する高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物の反応中心元素としては、硫黄、セレン、テルル、塩素、臭素、及びヨウ素からなる群から選択されるカルコゲン若しくはハロゲン元素が好ましく、特に好ましくは、硫黄、又は塩素である。「高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物」の好ましい例としては、過ハロゲン酸、過ハロゲン酸エステル、ニトロ基、ハロゲン原子、若しくはC1−アルキル基で置換されていてもよいフェニルスルホン酸、1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−アルキルスルホン酸、並びに1個以上のハロゲン原子により置換されていてもよいC1−アルキルスルホン酸エステルからなる群より選択される化合物等が挙げられ、中でも、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ジメチル硫酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、又はトリフルオロメタンスルホン酸メチルエステルが好ましい。
【0076】
本発明における1,3−不斉転写を伴う分子内S2’型環化反応は、反応に不活性な溶媒中で行うのが有利である。このような溶媒としては、反応が進行する限り特に限定されないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、又はペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、或いはそれらの混合溶媒が好ましい。中でもジクロロメタン、又はクロロホルムが特に好ましい。また、溶媒として上記のものを使用する場合、光学活性な2級アリルアルコール化合物(I)に対して、約1〜約100等量のメタノール等のアルコール、又は水が混合されていてもよい。
【0077】
溶媒の使用量は、光学活性な2級アリルアルコール化合物(I)1mmolに対して、好ましくは1〜100mL、より好ましくは5〜50mLである。
【0078】
本発明における1,3−不斉転写を伴う分子内S2’型環化反応は、光学活性な2級アリルアルコール化合物(I)と溶媒の混合物中に、高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物を添加する方法等により行われる。
【0079】
本発明における1,3−不斉転写を伴う分子内S2’型環化反応は、使用する溶媒や化合物(I)の種類にもよるが、好ましくは−78℃〜室温の範囲内、より好ましくは0〜25℃の範囲内で行われる。
また、その反応時間は、化合物(I)の種類及び反応温度にもよるが、通常1分〜24時間、好ましくは5分〜12時間である。反応の進行度合いは、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の分析手段により確認することができる。
【0080】
このようにして得られた反応混合物に含まれる光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物(II)の単離は、反応混合物を常法による後処理(例えば、中和、抽出、水洗、蒸留、結晶化等)に付すことにより行うことができる。また、その精製は光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物(II)を再結晶処理、抽出精製処理、蒸留処理、活性炭、シリカ、アルミナ等の吸着処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー処理に付すことにより行うことができる。
【0081】
光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物(II)の光学純度、すなわち、エナンチオマー過剰率(ee(%))、は、キラルカラムを備えたHPLCにより、対応するラセミ体の測定結果と比較することにより決定することができる。
【0082】
(天然物合成への応用)
以上のようにして製造した光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物(II)を用いれば、各種アルカロイドを効率良く合成することができる。すなわち、本発明によれば、下記の各ルートにより、光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物(IIb)及び(IIb’)から(S)−(−)−trolline、(R)−(−)−crispine A、(S)−(+)−trolline、及び(+)−colchiethamineの全合成を行うことができる。
【0083】
【化8】

【0084】
【化9】

【0085】
以下に参考例、実施例及び試験例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
以下の実施例中の「室温」は通常約10℃ないし約35℃を示す。混合溶媒において示した比は、特に断らない限り容量比を示す。%は、特に断らない限り重量%を示す。
【実施例】
【0086】
反応は、Merck 60 F254 プレコートシリカゲルプレート(厚さ0.25mm)を用いて、薄層クロマトグラフィーによりモニターした。
FT−IRスペクトルは、JASCO FT/IR−400分光計で記録した。
H及び13C−NMRスペクトルは、JEOL JNM−AL 500型装置を用い、重クロロホルムを溶媒として測定した。H−NMRについてのデータは、化学シフト(δppm)、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、m=マルチプレット、dd=ダブルダブレット、brs=ブロードシングレット)、カップリング定数(Hz)、積分及び割当てとして報告する。
高分解能質量スペクトル解析(HRMS)は、JEOL JMS−SSX 102A QQを用いて実行した。
融点(mp)測定は、Yanaco MP−J3を用いて行った。
元素分析は、パーキンエルマー社製の2400II全自動元素分析装置N241−06を用いて実行した。
分取薄層クロマトグラフィーは、和光純薬工業株式会社(日本、東京)より購入したWakogel B−5Fを用いて行った。フラッシュクロマトグラフィーは、関東化学株式会社(日本、東京)のシリカゲル60Nを用いて行った。
分子内閉環後の化合物(II)のエナンチオマー過剰率(ee)は、JASCO LC−2000 plus シリーズHPLCにより、UV検出をそれぞれ適切な波長でモニターしながら、Daicel Chiralcel AD−H(0.46cm×25cm)、及びDaicel Chiralcel OD−H(0.46cm×25cm)を用いて行った。
【0087】
(参考例1)
光学活性な前駆体、(3S)−(E)−N−tert−ブトキシカルボニル−N−{2−[2−(3−ヒドロキシブタ−1−エン−1−イル)フェニル]エチル}アミン(Ia)の製造例
【0088】
(A)2−ブロモベンジルシアニド(1−2)の合成
【0089】
【化10】

【0090】
シアン化ナトリウム(1.65g,33.8mmol)のジメチルスルホキシド(45ml)溶液に、室温にて2−ブロモベンジルブロミド(1−1)(7.68g,30.7mmol)のジメチルスルホキシド(5ml)溶液を加え、10分間撹拌した。反応終了後、反応溶液を水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、2−ブロモベンジルシアニド化合物(1−2)(5.73g,収率96%)を無色油状物質として得た。
Rf=0.42(10%酢酸エチル/ヘキサン);
H−NMR:δ3.86(2H,s),7.22(1H,m),7.37(1H,td,J=7.8,1.2Hz),7.54(1H,dd,J=7.8,1.2Hz),7.61(1H,dd,J=7.8,1.2Hz).
【0091】
(B)N−tert−ブトキシカルボニル−N−[2−(2−ブロモフェニル)エチル]アミン(1−3)の合成
【0092】
【化11】

【0093】
2−ブロモベンジルシアニド化合物(1−2)(55.4mg,0.28mmol)のメタノール(2.8ml)溶液を0℃に冷却し、その溶液にジtert−ブチルジカルボナート(BocO)(123.6mg,0.56mmol),ニッケル(II)クロリド・6水和物(7.1mg,0.03mmol),水素化ホウ素ナトリウム(75.3mg,2.00mmol)を順次加え、0℃で10分間撹拌し、さらに室温で2時間撹拌した。反応終了後、ジエチルアミン(0.5ml)を加えて30分間撹拌した。溶媒を減圧留去後、酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(15%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、無色油状物質として化合物(1−3)(58mg,収率68%)を得た。
Rf=0.4(10%酢酸エチル/ヘキサン);
H−NMR:δ1.43(9H,s),2.95(2H,m),3.39(2H,m),4.56(1H,bs),7.09(1H,m),7.26−7.31(2H,m),7.54(1H,d,J=8.4Hz).
【0094】
(C)ビニルホウ酸ピナコールエステル(1−4)、(1−4’)の合成
【0095】
【化12】

【0096】
封管中に、アルキン(3.53g)のTHF(1ml)溶液を加え、50℃に加熱し窒素置換を行った。ピナコールボラン(2.76g,21.4mmol)を加え、密閉し、130℃で48時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1%ジエチルエーテル/ヘキサン)により精製し、無色油状物質としてビニルホウ酸ピナコールエステル(1−4)を収率77%で得た。
Rf=0.66(1%ジエチルエーテル/ヘキサン);
H−NMR:δ0.04(6H,s),0.89(9H,s),1.21(3H,d,J=6.7Hz),1.26(12H,s),4.33(1H,qdd,J=6.7,4.3,1.8Hz),5.61(1H,dd,J=17.7,1.8Hz),6.59(1H,dd,J=17.7,4.3Hz).
【0097】
化合物(1−4)と逆の立体配置を有するビニルホウ酸ピナコールエステル(1−4’)は、対応する立体配置のアルキンから化合物(1−4)と同様の方法により合成することができる。
【0098】
(D)光学活性2級アリルアルコール化合物(Ia)の合成
【0099】
【化13】

【0100】
化合物(1−3)(674mg,2.24mmol)に、ビニルホウ酸ピナコールエステル(1−4)(1.4g,4.48mmol)、炭酸水素ナトリウム(933mg,10.98mmol)、ジオキサン(30ml),蒸留水(12ml)を加え、窒素置換を行った後、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウムジクロリド(PdCl(dppf))(91.5mg,0.11mmol)を加え、80℃で一晩撹拌した。反応終了後、溶液を室温に戻し、水及び酢酸エチルを加えた後、セライト濾過し、ろ液を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、無色油状物質として化合物(1−5)(782mg,収率86%)を得た。
[α]20 −19.3(c1.10,CHCl);Rf=0.38(10%酢酸エチル/ヘキサン);
H−NMR:δ0.09(3H,s),0.11(3H,s),0.94(9H,s),1.14(9H,s),1.31(3H,d,J=6.4Hz),2.89(2H,t,J=6.8Hz),3.44(2H,m),4.51(1H,qdd,J=6.4,5.1,1.3Hz),5.58(1H,s),6.13(1H,dd,J=15.6,5.1Hz),6.80(1H,d,J=15.6Hz),7.10(1H,dd,J=6.4,2.4Hz),7.20(2H,m),7.46(1H,dd,J=7.2,2.4Hz).
MS(EI)m/z405(M);
HRMS計算値([C2339NOSi]として)(M):405.2699;実測値:405.2703.
【0101】
【化14】

【0102】
化合物(1−5)(782mg,1.93mmol)のTHF(8ml)溶液にテトラn−ブチルアンモニウムフルオリド(1.0M in THF,3.86ml,3.86mmol)を加え、2時間室温で撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20%酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、化合物(Ia)(519mg,収率92%)を無色油状物質として得た。
無色針状結晶、mp 60−62℃、[α]20 19.5(c0.98,CHCl);Rf=0.18(30%酢酸エチル/ヘキサン);
H−NMR:δ1.37(3H,d,J=6.1Hz),1.44(9H,s),2.80−1.90(2H,m),3.22−3.31(2H,m),4.53(1H,qd,J=6.1,5.5Hz),4.72(1H,s),6.14(1H,dd,J=15.3,5.5Hz),6.95(1H,d,J=15.3Hz),7.12(1H,m),7.20(2H,m),7.46(1H,d,J=6.1Hz).
元素分析([C1828NO]として)計算値:C,70.79;H,8.91;N,4.59.実測値:C,71.08;H,9.18;N,4.43.
【0103】
以下の実施例において使用する光学的に純粋な前駆体(Ib)〜(Ih)は、上記前駆体(Ia)の製造方法(参考例1)と同様の方法により市販されている対応するブロモベンジルブロミドを出発原料として製造することができる。化合物(Ib)〜(Ih)の化学収率、物性データ及び光学純度を以下に示す。
【0104】
(参考例2)
(3S)−(E)−N−tert−ブトキシカルボニル−N−{2−[2−(3−ヒドロキシブタ−1−エン−1−イル)−4−メトキシ−5−ピバロイルオキシフェニル]エチル}アミン(Ib)
【0105】
【化15】

【0106】
無色油状物、[α]20+6.2(c1.00,CHCl);
H−NMR:δ6.97(s,1H),6.87(d,J=15.7Hz,1H),6.76(s,1H),6.09(dd,J=15.7,5.4Hz,1H),4.77(brs,1H),4.61−4.45(m,1H),3.80(s,3H),3.33−3.16(m,2H),3.02(brs.1H),2.89−2.72(m,1H),1.43(s,9H),1.37(d,J=6.4Hz,3H),1.35(s,9H);
MS(EI)m/z421(M);
HRMS(EI)計算値([C2335NO]として):421.2464;実測値:421.2467.
【0107】
(参考例3)
(3S)−(E)−N−tert−ブトキシカルボニル−N−{2−[5−クロロ−2−(3−ヒドロキシブタ−1−エン−1−イル)フェニル]エチル}アミン(Ic)
【0108】
【化16】

【0109】
無色結晶、mp84−86℃;[α]20 +19.8(c1.00,CHCl);
H−NMR:δ7.34(d,J=8.1Hz,1H),7.16(dd,J=8.1,1.8Hz,1H),7.10(d,J=1.8Hz,1H),6.88(d,J=15.6Hz,1H),6.12(dd,J=15.6,5.2Hz,1H),4.78(brs,1H),4.51(brs,1H),3.24−3.22(m,2H),3.05(brs,1H),2.82(t,J=7.0Hz,2H),1.43(s,9H),1.36(d,J=5.2Hz,3H);
元素分析([C1724ClNO]として)計算値:C,62.67;H,7.42;N,4.30.実測値:C,62.95;H,7.42;N,4.34.
【0110】
(参考例4)
(3S)−(E)−N−tert−ブトキシカルボニル−N−{2−[2−(3−ヒドロキシブタ−1−エン−1−イル)−5−メチルフェニル]エチル}アミン(Id)
【0111】
【化17】

【0112】
無色結晶、mp60−62℃;[α]20 +20.7(c1.00,CHCl);
H−NMR:δ7.33(d,J=7.5Hz,1H),7.02(d,J=7.5Hz,1H),6.94(s,1H),6.90(d,J=15.5Hz,1H),6.10(dd,J=15.5,5.5Hz,1H),4.73(brs,1H),4.55−4.48(m,1H),3.26−3.24(m,2H),2.84−2.82(m,3H),2.31(s,3H),1.44(s,9H),1.36(d,J=6.5Hz,3H);
元素分析([C1828NO]として)計算値:C,70.79;H,8.91;N,4.59.実測値:C,71.08;H,9.18;N,4.43.
【0113】
(参考例5)
(3S)−(E)−N−tert−ブトキシカルボニル−N−{2−[4−クロロ−2−(3−ヒドロキシブタ−1−エン−1−イル)フェニル]エチル}アミン(Ie)
【0114】
【化18】

【0115】
無色油状物、[α]20+11.0(c0.84,CHCl);
H−NMR:δ7.40(s,1H),7.14(d,J=8.0Hz,1H),7.04(d,J=8.0Hz,1H),6.91(d,J=15.5Hz,1H),6.16(dd,J=15.5,5.0Hz,1H),4.70(brs,1H),4.53(brs,1H),3.25−3.18(m,2H),2.88(brs,1H),2.84−2.82(m,2H),1.44(s,9H),1.37(d,J=6.5Hz,3H);
MS(EI)m/z325(M);
HRMS(EI)計算値([C1724ClNO]として):325.1445;実測値:325.1451.
【0116】
(参考例6)
(3S)−(E)−N−tert−ブトキシカルボニル−N−{2−[2−(3−ヒドロキシブタ−1−エン−1−イル)−3−メチルフェニル]エチル}アミン(If)
【0117】
【化19】

【0118】
無色油状物、[α]20-3.3(c0.54,CHCl);
H−NMR:δ7.08(dd,J=6.3,6.3Hz,1H),7.06(dd,J=6.3,2.1Hz,1H),6.99(dd,J=6.3,2.1Hz,1H),6.62(d,J=16.2Hz,1H),5.80(dd,J=16.2,6.8Hz,1H),4.82(brs,1H),4.51(dq,J=6.8,6.3Hz,1H),3.83(brs,1H),3.19(dd,J=8.7,7.2Hz,2H),2.91−2.74(m,2H),2.26(s,3H),1.44(s,9H),1.38(d,J=6.3Hz,3H);
MS(EI)m/z305(M);
HRMS(EI)計算値([C1827NO]として):305.1991;実測値:305.1986.
【0119】
(参考例7)
(3S)−(E)−N−tert−ブトキシカルボニル−N−{2−[2−(3−ヒドロキシブタ−1−エン−1−イル)−4−メトキシフェニル]エチル}アミン(Ig)
【0120】
【化20】

【0121】
無色油状物、[α]20+11.7(c1.00,CHCl);
H−NMR:δ7.03(d,J=8.4Hz,1H),6.96(d,J=1.7Hz,1H),6.92(d,J=15.7Hz,1H),6.75(dd,J=8.4Hz,1H),6.14(dd,J=15.7,5.5Hz,1H),4.69(brs,1H),4.52(brs,1H),3.81(s,3H),3.22−3.21(m,2H),2.80(brs,1H),2.82−2.79(m,2H),1.44(s,9H),1.38(d,J=5.5Hz,3H);
MS(EI)m/z321(M);
HRMS(EI)計算値([C1827NO]として):321.1940;実測値:321.1947.
【0122】
(参考例8)
(3S)−(E)−N−tert−ブトキシカルボニル−N−{2−[2−(3−ヒドロキシブタ−1−エン−1−イル)−5−ピバロイルオキシフェニル]エチル}アミン(Ih)
【0123】
【化21】

【0124】
無色結晶、mp 90−93℃、[α]20 +14.8(c0.1,CHCl);
H−NMR:δ7.40(d,J=8.4Hz,1H),6.89(dd,J=8.4,2.3Hz,1H),6.88(d,J=15.5Hz,1H),6.82(d,J=2.3Hz,1H),6.10(dd,J=15.5,6.4Hz,1H),4.80(brs,1H),4.45−4.54(m,1H),3.27−3.20(m,2H),3.20(brs,1H),2.80−2.88(m,2H),1.43(s,9H),1.35(d,J=6.4Hz,3H),1.34(s,9H);
元素分析([C2233NO]として)計算値:C,67.49;H,8.50;N,3.58.実測値:C,67.28;H,8.33;N,3.50.
【0125】
(実施例1)
(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IIa)
【0126】
【化22】

【0127】
光学的に純粋な2級アリルアルコール(Ia)(純度99%ee以上、2.91g,10mmol)をジクロロメタン(300mL)に溶解し、氷浴上で過塩素酸(60%水溶液108μL、1mmol)を加えて、5分間反応させた。反応後、酢酸エチルで希釈し、炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、環化生成物を得た。この時点で純度は95%以上であったが、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、収率83%で光学的に純粋な(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IIa)を得た。選択比(S:R)は95:5であった。
無色針状結晶、mp41−42℃;Rf=0.63(20%酢酸エチル/へキサン):
[α]20 +151.9(c0.95,CHCl);
H−NMR:δ7.19−7.11(4H,m),5.62−5.47(3H,m),4.12(1H,brs),3.20(1H,brs),2.94−2.85(1H,m),2.75−2.70(1H,m),1.68(3H,d,J=6.1Hz),1.48(9H,s);
MS(EI)m/z273(M);
元素分析([C1723NO]として)計算値:C,74.69;H,8.48;N,5.12.実測値:C,74.95;H,8.30;N,5.13.
カラム;Daicel Chiralcel AD−H、溶媒;ヘキサン:イソプロパノール-95:5、流速;0.5mL/分、温度;20℃、UV検出器;254nm、保持時間;t=9.7分、t=12.5分
【0128】
(実施例2)
【0129】
【化23】

【0130】
2級アリルアルコール(Ia)(純度99%ee以上、146mg,0.5mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、0℃でトリフルオロメタンスルホン酸(7.5mg、4.4μL、0.05mmol)を加えて、5分間反応させた。反応後、ジクロロメタンで希釈し、炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、環化生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、収率79%で光学的に純粋な(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IIa)を得た。選択比(S:R)は93:7であった。
【0131】
(実施例3)
【0132】
【化24】

【0133】
2級アリルアルコール(Ia)(純度99%ee以上、146mg,0.5mmol)をジクロロメタン(7.5mL)に溶解し、0℃でトリフルオロメタンスルホン酸メチル(8.2mg、6μL、0.05mmol)を加えて、5分間反応させた。反応後ジクロロメタンで希釈し、炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、環化生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、収率85%で光学的に純粋な(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IIa)を得た。選択比(S:R)は93:7であった。
【0134】
(実施例4)
【0135】
【化25】

【0136】
2級アリルアルコール(Ia)(純度99%ee以上、146mg,0.5mmol)をジクロロメタン(7.5mL)に溶解し、0℃でジメチル硫酸(6.3mg、4.7μL、0.05mmol)を加えて、30分間反応させた。反応後ジクロロメタンで希釈し、炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、環化生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、収率71%で純粋な(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IIa)を得た。選択比(S:R)は92:8であった。
【0137】
(実施例5)
【0138】
【化26】

【0139】
2級アリルアルコール(Ia)(純度99%ee以上、146mg,0.5mmol)をジクロロメタン(4mL)に溶解し、0℃でトリエチルシリルトリフルオロメタンスルホナート(13.2mg(11.3μL)、0.05mmol)を加えて、2時間反応させた。反応後ジクロロメタンで希釈し、炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、環化生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、収率45%で純粋な(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IIa)を得た。選択比(S:R)は90:10であった。
【0140】
(実施例6)
(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−7−メトキシ−6−ピバロイルオキシ−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IIb)
【0141】
【化27】

【0142】
2級アリルアルコール(Ib)(1.02g,2.53mmol)をジクロロメタン(50mL)に溶解し、氷冷下に過塩素酸(60%水溶液、27μL、0.253mmol)を加えて、15分間反応させた。反応後、酢酸エチルで希釈し、炭酸水素ナトリウム溶液及び水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、環化生成物を得た。この時点で純度は95%以上であったが、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、収率83%で光学的に純粋な(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−7−メトキシ−6−ピバロイルオキシ−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IIb)を得た。選択比(S:R)は94:6であった。
mp<30℃;[α]22 +109.0(c1.0CHCl);
H−NMR:δ6.75(s,1H),6.64(s,1H),5.58(dd,J=9.9,5.3Hz,1H),5.54−5.45(m.1H),5.60−5.28(m,1H),4.22−3.90(m,1H),3.74(s,3H),3.25−3.30(m,H),2.87−3.76(m,1H),2.63−2.56(m,1H),1.67(d,J=6.0Hz,3H),1.67(s,9H),1.34(s,9H);
MS m/z403(M);
元素分析([C2333NO]として)計算値:C,68.46;H,8.24;N,3.47.実測値:C,68.49;H,8.28;N,3.51.
カラム;Daicel Chiralcel OD−H、溶媒;ヘキサン:イソプロパノール=99:1、流速;0.3mL/分、温度;20℃、UV検出器;254nm、保持時間;t=12.3分、t=15.7分
【0143】
(実施例7)
鏡像体(Ib’)の閉環反応による(R,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−7−メトキシ−6−ピバロイルオキシ−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IIb’)の合成
【0144】
【化28】

【0145】
選択比(S:R)は7:93であった。R体(IIb’):[α]22 −100.0(c1.0,CHCl).
【0146】
(実施例8)〜(実施例13)は、上記(実施例1)、又は(実施例6)と同様の方法により、光学活性2級アリルアルコール(Ic)〜(Ih)から光学活性1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物(IIc)〜(IIh)を合成した。化合物(IIc)〜(IIh)の化学収率、物性データ及び光学純度を以下に示す。
【0147】
(実施例8)
(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−6−クロロ−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IIc)
【0148】
【化29】

【0149】
収率84%、無色油状物、[α]22 +117(c0.3,CHCl);
H−NMR:δ7.14(dd,J=8.2,2.1Hz,1H),7.13(s,1H),7.03(d,J=8.2Hz,1H),5.56(dd,J=15.4,5.2Hz,1H),5.47(dq,J=15.4,6.1Hz,1H),5.65−5.30(m,1H),4.10(brs,1H),3.14(brs,1H),2.90−2.83(m,1H),2.70−2.65(m,1H),1.68(d,J=6.1Hz,3H),1.48(s,9H);MSm/z;355(M);
HRMS(EI)計算値([C1722ClNO]として):307.1339;実測値:307.1336. 選択比(S:R)は94:6であった。
カラム;Daicel Chiralcel AD−H、溶媒;ヘキサン:イソプロパノール-95:5、流速;0.3mL/分、温度;20℃、UV検出器;254nm、保持時間;t=15.4分、t=20.2分
【0150】
(実施例9)
(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−6−メチル−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IId)
【0151】
【化30】

【0152】
収率74%、無色油状物、[α]22 +126.4(c0.6,CHCl);
H−NMR:δ7.00(s,1H),7.00(s,1H),6.95(s,1H),5.59(dd,J=15.0,5.1Hz,1H),5.50(dq,J=15.0,6.1Hz,1H),5.55−5.35(m,1H),4.20−3.90(m,1H),3.30−3.10(m,1H),2.95−2.80(m,1H),2.65−2.73(m,1H),2.31(s,3H),1.68(d,J=6.1Hz,3H),1.49(s,9H).選択比(S:R)は94:6であった。
カラム;Daicel Chiralcel AD−H、溶媒;ヘキサン:イソプロパノール=95:5、流速;0.3mL/分、温度;20℃、UV検出器;254nm、保持時間;t=17.8分、t=27.3分
【0153】
(実施例10)
(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−7−クロロ−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IIe)
【0154】
【化31】

【0155】
収率88%、無色油状物、[α]22 +148.1(c0.64,CHCl);H−NMR:δ7.12(d,J=8.1Hz,1H),7.10(s,1H),7.04(d,J=8.1Hz,1H),5.59−5.48(m,1H),5.55−5.51(m,1H),5.55−5.35(m,1H),4.12(brs,1H),3.13(brs,1H),2.88−2.81(m,2H),2.69−2.66(m,2H),1.70(d,J=5.2Hz,3H),1.48(s,9H).選択比(S:R)は95:5であった。
カラム;Daicel Chiralcel AD−H、溶媒;ヘキサン:イソプロパノール=98.75:1.25、流速;0.5mL/分、温度;20℃、UV検出器;254nm、保持時間;t=18.4分、t=21.0分
【0156】
(実施例11)
(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−8−メチル−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IIf)
【0157】
【化32】

【0158】
収率85%、無色油状物、[α]22+140.0(c0.4,CHCl);
H−NMR(当該化合物は、カルバメート回転異性体の1.12:1混合物として存在する。主回転異性体のシグナル):δ7.10(d,J=13.5Hz,1H),7.01(dd,J=13.5,7.5Hz,1H),6.97(d,J=13.5Hz,1H),5.75(brs,1H),5.25(dq,J=13.0,7.0Hz,1H),3.81−3.72(m,1H),3.45−3.25(m,1H),2.95−2.72(m,2H),2.26(s,3H),1.65(brd,J=7.0Hz,3H),1.49(s,9H);(副回転異性体のシグナル):δ7.09(d,J=13.5Hz,1H),7.01(dd,J=13.5,7.5Hz,1H),6.97(d,J=13.5Hz,1H),5.60−5.50(m,1H),5.25(dq,J=13.0,7.0Hz,1H),3.98−3.90(m,1H),3.45−3.25(m,1H),2.95−2.72(m,2H),2.24(s,3H),1.65(brd,J=7.0Hz,3H),1.48(s,9H).選択比(S:R)は92:8であった。
カラム;Daicel Chiralcel OD−H、溶媒;ヘキサン:イソプロパノール=99:1、流速;1.0mL/分、温度;20℃、UV検出器;254nm、保持時間;t=6.3分、t=4.6分
【0159】
(実施例12)
(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−7−メトキシ−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IIg)
【0160】
【化33】

【0161】
収率91%、無色結晶、mp 87−88℃;[α]22 +129.7(c0.315,CHCl);
H−NMR:δ7.03(d,J=8.4Hz,1H),6.74(dd,J=2.6,8.4Hz,1H),6.65(d,J=2.6Hz,1H),5.59(dd,J=5.3,15.0Hz,1H),5.52(dq,J=6.0,15.0Hz,1H),5.55−5.30(m,1H),4.20−3.95(m,1H),3.78(s,3H),3.25−3.05(m,1H),2.90−2.88(m,1H),2.65(dt,J=3.6,15.7Hz,1H),1.68(d,J=6.0Hz,3H),1.48(s,9H).
元素分析([C1828NO]として)計算値:C,71.26;H,8.31;N,4.62.実測値:C,70.95;H,8.46;N,4.50.選択比(S:R)は95:5であった。
カラム;Daicel Chiralcel AD−H、溶媒;ヘキサン:イソプロパノール=95:5、流速;0.5mL/分、温度;20℃、UV検出器;254nm、保持時間;t=13.7分,t=17.1分
【0162】
(実施例13)
(S,E)−N−tert−ブトキシカルボニル−6−ピバロイルオキシ−1−(1−プロペニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン(IIh)
【0163】
【化34】

【0164】
収率85%、無色油状物、[α]22 +125(c0.3,CHCl);
H−NMR:δ7.10(d,J=8.3Hz,1H),6.86(dd,J=8.3,2.3Hz,1H),6.82(d,J=2.3Hz,1H),5.56(dd,J=15.4,5.2Hz,1H),5.48(dq,J=15.4,6.1Hz,1H),5.51−5.42(m,1H),4.12(brs,1H),3.15(brs,1H),2.93−2.83(m,1H),2.71−2.67(m,1H),1.67(d,J=6.1Hz,3H),1.48(s,9H),1.34(s,9H).選択比(S:R)は94:6であった。
カラム;Daicel Chiralcel AD−H、溶媒;ヘキサン:イソプロパノール=95:5、流速;0.5mL/分、温度;20℃、UV検出器;254nm、保持時間;t=9.7分,t=11.7分
【0165】
(試験例1)1,3−不斉転写を伴う分子内S2’型環化反応の化学収率及び光学収率における他のプロトン酸触媒との比較
実施例1と同様の条件で、塩酸、トリフルオロ酢酸、又は酢酸を触媒として用いて、光学活性なアリルアルコール化合物(Ia)の分子内S2’型環化反応を検討した。その結果、過塩素酸、ジメチル硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸メチル等の高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物に比較して、反応の進行は遅く、例えば、10−30mol%では10時間かけてもほとんど反応は進行しない。また、その選択性は高くとも60%d.e.(ジアステレオマー過剰率)しか1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物(IIa)を与えなかった。
【0166】
上記結果から考察すると、触媒として通常のプロトン酸を使用した場合には、2級アリルアルコール(Ia)の水酸基へのプロトン化後の脱水反応は非常に遅く、また脱水が先に進行し、下記のようなアキラルなカチオン中間体を経る分子内S1’型環化反応を経由するため、低い立体選択性で化合物(IIa)を与えたと推察される。このことは6位に水酸基やメトキシ基を有する基質にではラセミ体を与えることからも妥当と考えられる。
【0167】
【化35】

【0168】
(試験例2)各種反応溶媒における1,3−不斉転写を伴う分子内S2’型環化反応の反応性、化学収率及び光学収率の比較
実施例1と同様、触媒として10mol%過塩素酸存在下、光学活性な2級アリルアルコール化合物(Ia)の分子内S2’型環化反応を、反応溶媒、及び温度条件を変えて検討した。
【0169】
【化36】

【0170】
【表1】

【0171】
その結果、表1に示した通り、ジクロロメタンやトルエン中では、0℃以上の温度では速やかに反応が進行し、良好な化学収率、及び光学収率で化合物(IIa)を与えた。一方、配位性を有し、かつカチオンを安定化するTHFやジエチルエーテル等のエーテル系溶媒中で反応を行うと、反応は進行するものの、化合物(IIa)は、ほぼラセミ体で得られることが分かった。また、溶媒としてクロロホルム、四塩化炭素、又はヘキサンを用いた場合にも、化学収率、及び光学収率の両方において、ジクロロメタンやトルエンと同様の結果を与えた。
【0172】
以上より、本発明の製造方法における溶媒としては、エーテル系溶媒以外のジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒が好適であることが分かった。また、上記溶媒に水やメタノールを添加しても、化合物(IIa)の立体選択性(選択比)は低下しないことが分かった。さらに、反応を加速するために25℃まで昇温しても立体選択性(選択比)の低下は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明によれば、光学活性な2級アリルアルコール化合物(I)から光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物(II)を製造できる新たな方法を提供することができる。当該方法では、厳密な温度制御や脱水溶媒を必要とすることなく、安価で入手しやすい過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸若しくはそのエステル、ジメチル硫酸等の高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物を触媒量使用するだけで、簡便かつ高立体選択的に医薬品等の中間体として有用な光学活性な1位置換テトラヒドロイソキノリン化合物を製造することができる。
また、化合物(II)の合成の際に使用するビニルホウ酸ピナコールエステルの光学異性体を使い分けることで、化合物(I)の両エナンチオマーをそれぞれ高い光学純度で効率よく製造することができる点においても有用な方法である。
加えて、1位アルケニル基は酸化的開裂でアルデヒドやカルボキシ基に誘導できるため、これを基に炭素鎖を伸長することが可能である。実際、この方法でいくつかのアルカロイドの全合成を達成することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物の存在下、光学活性な式(I):
【化1】

(式中、n個のRは、独立してそれぞれ置換されていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、C1−アルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルキニル基、C−Cシクロアルキル基、C−C10アリール基、C−C14アラルキル基、C1−アルコキシ基、C−C10アリールオキシ基、C1−アルキルチオ基、C−C10アリールチオ基、C1−アルキル−カルボニル基、C−C10アリール−カルボニル基、C1−アルキル−カルボニルオキシ基、C−C10アリール−カルボニルオキシ基、C1−アルコキシ−カルボニル基、C−C10アリールオキシ−カルボニル基、C1−アルキルスルホニル基、C−C10アリールスルホニル基、C1−アルキルスルホニルオキシ基、C−C10アリールスルホニルオキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルバモイル基、アジド基、トリC1−アルキルシリル基、及び保護されたアミノ基からなる群より選択される基を表し;
は、アミノ基の保護基を表し;
は、置換されていてもよいC1−アルキル基、置換されていてもよいC−Cシクロアルキル基、又は置換されていてもよいC−C10アリール基を表し;
nは、1〜4の整数を表し;かつ
*が付された炭素原子の立体配置は、S又はRを表す。ここで、隣接する2個のRが存在する場合には、一緒になってメチレンジオキシ基を形成してもよい。)
で示される化合物を分子内S2’型環化反応させる工程を含む、光学活性な式(II):
【化2】

(式中、R、R、R、n、及び*は上記で定義した通りである。)
で示される化合物の製造方法。
【請求項2】
高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物が、過ハロゲン酸、過ハロゲン酸エステル、ニトロ基、ハロゲン原子、若しくはC1−アルキル基で置換されていてもよいフェニルスルホン酸、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−アルキルスルホン酸、及びハロゲン原子により置換されていてもよいC1−アルキルスルホン酸エステルからなる群より選択される化合物である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
高酸化状態のカルコゲン若しくはハロゲン化合物が、過塩素酸、過臭素酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ジメチル硫酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸C1−アルキルエステル、又はトリフルオロメタンスルホン酸トリC1−アルキルシリルエステルである、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
反応が溶媒の存在下で行われる、請求項1〜3のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項5】
溶媒が、ハロゲン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、及び脂肪族炭化水素系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒を含む、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
溶媒が、ジクロロメタン、クロロホルム、又は四塩化炭素である、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
溶媒が、キシレン、トルエン、ベンゼン、ヘプタン、ヘキサン、又はペンタンである、請求項5記載の製造方法。