説明

光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸の製造方法

【課題】従来よりも簡便な操作で、十分な純度の光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸を製造できる方法を提供する。
【解決手段】光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸を有機酸の水溶液で精製する工程を含む、光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸の製造方法。有機酸は酢酸であることが好ましく、また、有機酸水溶液の濃度が0.2〜3%であることが好ましい。さらに、光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸は、(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸または(S)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として有用な光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸の製造方法、並びにその精製法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記一般式で表される光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸には、医薬品として有用な化合物が含まれており、たとえば(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸((R)−(−)−バクロフェン)は、逆流性食道炎治療薬や鎮痙剤として有用な化合物である。
【0003】
【化1】

【0004】
光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸を効率的に合成する方法として、たとえば、Tomotaka Okino et al., "Enantio- and Diastereoselective Michael Reaction of 1,3-Dicarbonyl Compounds to Nitroolefins Catalyzed by a Bifunctional Thiourea", Journal of American Chemical Society, 2005, 127, p119-125(非特許文献1)記載された方法、特開2007−332129号公報(特許文献1)に記載された方法などが知られている。このうち、非特許文献1には、下記スキームに示すようにしてたとえば(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸を合成する方法が記載されている。
【0005】
【化2】

【0006】
このような4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸は所謂両性のアミノ酸の誘導体である。このため、医薬品として純度を向上させるためには、たとえば特公昭45−16692号公報(特許文献2)に記載されたようなイオン交換樹脂を使用する精製法など、工業的に煩雑な精製法などが必要であるという問題があった。
【特許文献1】特開2007−332129号公報
【特許文献2】特公昭45−16692号公報
【非特許文献1】Tomotaka Okino et al., "Enantio- and Diastereoselective Michael Reaction of 1,3-Dicarbonyl Compounds to Nitroolefins Catalyzed by a Bifunctional Thiourea", Journal of American Chemical Society, 2005, 127, p119-125
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、従来よりも簡便な操作で、十分な純度の光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸を製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸の製造方法は、光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸を有機酸の水溶液で精製する工程を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸の製造方法において、有機酸が酢酸であることが好ましい。
【0010】
また本発明の光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸の製造方法において、有機酸水溶液の濃度は0.2〜3%であることが好ましい。
【0011】
また、本発明における光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸は、(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸または(S)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸であることが、好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来のような煩雑な工程を経ることなく、医薬品またはその中間体として十分な純度の光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、以下の一般式で表される光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸を製造する方法であって、光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸を有機酸の水溶液で精製する工程を含むことを特徴とする。
【0014】
【化3】

【0015】
なお、光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸を表す上記一般式中、nは1〜3の整数を示し、Rは、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基またはシクロアルキル基を示し、nが2または3の場合、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、また、2つのRが一緒になってアルキレンジオキシ基を形成していてもよい。
【0016】
上記一般式中、Rで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、中でも塩素原子または臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0017】
上記一般式中、Rで示されるアルキル基は、直鎖状または分子鎖状の、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは1〜6のアルキル基であり、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ノニル、ウンデシル、ドデシルなどが挙げられ、中でもメチル、エチルが好ましい。
【0018】
上記一般式中、Rで示されるアルコキシ基は、上述したアルキル基で置換されたヒドロキシ基であり、たとえばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられ、中でもメトキシが好ましい。
【0019】
上記一般式中、Rで示されるハロアルキル基としては、上述したハロゲン原子で置換された上述したアルキル基であり、当該ハロゲン原子の置換数は特に限定されず、アルキル基の全ての水素原子が置換されていてもよい。ハロアルキル基の具体例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1−フルオロメチル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、1−フルオロプロピル、1−フルオロブチル、1−フルオロペンチル、1−フルオロヘキシル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、1−クロロエチル、2−クロロエチル、2,2−ジクロロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、1−クロロプロピル、1−クロロブチル、1−クロロペンチル、1−クロロヘキシル、ブロモメチル、1−ブロモエチル、2−ブロモエチル、1−ブロモプロピル、ヨードメチル、1−ヨードエチル、2−ヨードエチル、1−ヨードプロピルなどが挙げられる。中でも、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルが好ましい。
【0020】
上記一般式中、Rで示されるシクロアルキルオキシ基は、好ましくは炭素数3〜8、より好ましくは3〜6の環状アルキル基で置換されたヒドロキシ基であり、たとえばシクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられる。中でも、シクロペンチルオキシが好ましい。
【0021】
上記一般式中、2つのRが一緒になって形成するアルキレンジオキシ基としては、直鎖状または分岐鎖状の、好ましくは炭素数1〜5、より好ましくは1〜2のアルキレンジオキシ基であり、たとえばメチレンジオキシ、エチレンジオキシ、テトラメチレンジオキシなどが挙げられる。中でも、メチレンジオキシ、エチレンジオキシが好ましい。
【0022】
上記一般式中、Rはハロゲン原子であることが好ましく、塩素原子であることが特に好ましい。また上記一般式中、nは1〜3であり、特に好ましくは1である。この場合、ベンゼン環上のRの位置は4位であることが好ましい。すなわち、本発明における光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸は、下記式で表される(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸または(S)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸であることが特に好ましい。
【0023】
【化4】

【0024】
本発明において、光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸を精製する際に用いられる有機酸としては、たとえばギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられ、中でも入手の容易さ、安価であることの理由から、酢酸が好ましい。
【0025】
また本発明において用いられる有機酸の水溶液の濃度は、0.2〜3%の範囲内であることが好ましく、0.5〜2%の範囲内であることがより好ましい。有機酸の水溶液の濃度が0.2%未満である場合には、精製の効果が低くなる傾向にあるためであり、また、3%を超える場合には、収率が低下する傾向にあるためである。
【0026】
また、当該工程において用いられる水の量は、通常、光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸1重量部に対して、3〜8重量部、好ましくは4〜6重量部である。
【0027】
光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸の精製の操作は、具体的には、上述した有機酸の水溶液中で光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸を処理(攪拌)することで行われる。このように本発明の光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸の製造方法は、従来のような煩雑な工程を経ることなく、簡便な操作で4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸の光学純度を向上させ、医薬品またはその中間体として十分な純度の光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸を製造することができる。
【0028】
このような精製の際の温度は特に制限されないが、通常、0〜40℃、好ましくは20〜30℃である。また、精製を行う時間としては、使用量にもよるが、通常、30分間〜2時間である。
【0029】
本発明の光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸の製造方法は、上述した精製の工程を含むのであればその他の工程については特に制限されるものではなく、従来公知の適宜の工程、たとえば上述した非特許文献1、特許文献1に記載されたような方法を行う工程を含むことができる。
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
<合成例>
(1)4−クロロ−β−ニトロスチレンの合成
酢酸1066.8gに4−クロルベンズアルデヒド200.14g(1.356モル)とベンジルアミン153.4g(1.429モル)を加えて溶解した。この溶液を78℃に加温し、ニトロメタン325.7g(5.336モル)を78〜80℃で2時間50分かけて滴下した後、約79℃の温度で40分間攪拌した。約50℃で水1016gを2時間25分で滴下した。1時間50分かけて約10℃まで冷却し、6〜10℃で1時間50分攪拌した。結晶をろ過し、水1016.2gで洗浄した。約50℃で湿結晶をトルエン572.8gに溶解した。分液して水層を除き、水330.8gで洗浄した。トルエン層(803.24g)をHPLCにより分析したところ、4−クロロ−β−ニトロスチレン(trans−β−ニトロスチレン)が253.8g含まれていた。収率は97.1%であった。
【0032】
(2)(S)−2−エトキシカルボニル−4−ニトロ−3−フェニル酪酸エチルの合成
窒素雰囲気下、trans−β−ニトロスチレン(1492g、8.1mol)を含むトルエン溶液3730gと、国際公開2005/000803号パンフレットに記載された方法で製造した(R,R)−trans−1−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−3−[2−(N,N−ジメチルアミノ)シクロヘキシル]チオ尿素(34g、0.0082mol)をトルエン100gに溶解した溶液を混合した。約20℃でマロン酸ジエチル(3905g、24.4mol)を添加した。24時間後、原料残が1%以下を確認し、反応混合物を減圧下濃縮し、(S)−2−エトキシカルボニル−4−ニトロ−3−フェニル酪酸エチルを2598gを含むトルエン溶液5648gを得た。収率93%であった。一部取り出し、HPLCによって、(S)−2−エトキシカルボニル−4−ニトロ−3−フェニル酪酸エチルが得られたことを確認した。融点は45−47℃であった。
【0033】
(3)(3S,4R)−4−(4−クロロフェニル)−2−オキソピロリジン−3−カルボン酸エチルの合成
窒素雰囲気下、2−プロパノール(7144g)に、(S)−2−エトキシカルボニル−4−ニトロ−3−フェニル酪酸エチル(2597g、7.55mol)を含むトルエン溶液5646g、展開ニッケルPL9T(川研ファインケミカル製)519gを加え、0.5MPa(ゲージ圧)の水素圧下、約70℃で反応させた。反応終了後、ニッケル触媒をろ別し、ろ液を減圧濃縮した。1,2−ジクロルベンゼン3392gを加えた。この溶液をHPLCにより分析したところ、(3S,4R)−4−(4−クロロフェニル)−2−オキソピロリジン−3−カルボン酸エチルは1618g含まれていた。1H-NMR(CDCl3) δ7.31(m, 2H), 7.20(d, J=8.2Hz, 2H), 7.12(s, 1H), 4.24(q, J=7.0Hz, 1H), 4.09(m, 1H), 3.81(m, 2H), 3.54(m, 1H), 3.41(m, 1H), 1.28(t, J=6.9Hz, 3H).
(4)(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸塩酸塩の合成
(3S,4R)−4−(4−クロロフェニル)−2−オキソピロリジン−3−カルボン酸エチル1618gを含む1,2−ジクロルベンゼン溶液7035gに水2425gと35%塩酸3236gを加え、約100℃で24時間攪拌した。原料残1%以下を確認し、冷却後分液した。水層に1,2−ジクロルベンゼン3392gを加えて洗浄し、水層を分液した。水層を加熱還流下に反応し、(R)−4−(4−クロロフェニル)ピロリジン−2−オンの残量が0.5%以下になったことを確認して、70〜90℃でトルエン8417gを加えた。内溶液の温度が110℃になるまで共沸脱水して水分を留去し、次いで内温が111℃になるまでトルエンを留去した。水143gおよびアセトニトリル2494gを加えて冷却し、約20℃で1時間攪拌した。濾過、水63gとアセトニトリル2494gの混合液で洗浄、乾燥し、(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸塩酸塩1361gを得た。1H-NMR(D2O/Methanol-d4) δ7.34(d, J=8.55Hz, 2H), 7.25(d, J=8.5Hz, 2H), 3.24(m, 3H), 2.78(dd, J=5.6, 16.3Hz, 1H), 2.63(dd, J=8.7, 16.4Hz, 1H).
(5)(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸の合成
(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸塩酸塩1361gを水4083gに加えて溶解し、活性炭14gを加えてた後、濾過し、水1361gで洗浄した。濾液に、水酸化ナトリウム224gを水2722gに溶解した溶液を約70℃で滴下してpHを5〜6に調整した。約20℃まで冷却して濾過、水2042gで結晶を洗浄し、減圧乾燥して(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸1163gを得た。光学純度は97.8%であった。1H-NMR(D2O) δ7.33(d, J=7.7Hz, 2H), 7.22 (d, J=7.5Hz, 2H), 3.22(d, J=11.3Hz, 2H), 3.06-3.14(m, 1H), 2.55-2.37(m, 2H).
<実施例1>
合成例で得られた(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸10.06gに水50gを加え、攪拌下酢酸1gを加え、約70℃で60分間攪拌した。約25℃に冷却し、30分間攪拌し、濾過、乾燥した。以下の条件でHPLC分析を行った結果、(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸の収率は92%であった。
【0034】
(HPLC分析条件(1))
・カラム:CHIRALPAK C8 DD(4.6mm×150mm、5μm)
・移動相:A液=0.1%リン酸水溶液
B液=アセトニトリル
・移動相グラジエント:B液 0分−10%→20分−60%→35分−60%→35.1分−10%→45分
・カラム温度:35℃
・流量:1ml/min
・検出器:UV210nm
また以下の条件でHPLC分析を行って測定された光学純度は99.2%であった。
【0035】
(HPLC分析条件(2))
・カラム:CROWNPAK CR(+)(4.6mm×250mm)
・移動相:HClO4でpHを2に調整した水
・流量:2.0ml/min
・カラム温度:40℃
・検出機:UV220nm
<実施例2>
合成例で得られた(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸10.06gに水50gを加え、攪拌下酢酸0.66gを加え、約70℃で60分間攪拌した。約25℃に冷却し、30分間攪拌し、濾過、乾燥した。実施例1と同様に測定された(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸の収率は92.1%、光学純度は99.3%であった。
【0036】
<実施例3>
合成例で得られた(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸10.06gに水50gを加え、攪拌下酢酸0.33gを加え、約70℃で60間分攪拌した。約25℃に冷却し、30分間攪拌し、濾過、乾燥した。実施例1と同様に測定された(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸の収率は94.2%、光学純度は99.2%であった。
【0037】
<比較例1>
合成例で得られた(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸10.0gに水50gを加え、攪拌下塩酸を加えてpHを5.0として約70℃で60分間攪拌した。約25℃に冷却し30分間攪拌し、濾過、乾燥した。実施例1と同様に測定された(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸の収率は95.4%、光学純度は97.1%であった。
【0038】
<比較例2>
合成例で得られた(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸10.0gに水50gを加え、攪拌下水酸化ナトリウムを加えてpHを8.0として約70℃で60分間攪拌した。約25℃に冷却し30分間攪拌し、濾過、乾燥した。実施例1と同様に測定された(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸の収率は97.6%、光学純度は98.5%であった。
【0039】
<比較例3>
合成例で得られた(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸10.0gに水50gを加え、攪拌下水酸化ナトリウムを加えてpHを9.0として約70℃で60分間攪拌した。約25℃に冷却し30分間攪拌し、濾過、乾燥した。実施例1と同様に測定された(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸の収率は95.3%、光学純度は97.9%であった。
【0040】
<比較例4>
合成例で得られた(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸10.0gに水50gを加え、約70℃で60分間攪拌した。約25℃に冷却し30分間攪拌し、濾過、乾燥した。実施例1と同様に測定された(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸の収率は94.5%、光学純度は97.5%であった。
【0041】
今回開示された実施の形態および実験例は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸を有機酸の水溶液で精製する工程を含む、光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸の製造方法。
【請求項2】
有機酸が酢酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機酸水溶液の濃度が0.2〜3%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
光学活性な4−アミノ−3−置換フェニルブタン酸が、(R)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸または(S)−4−アミノ−3−(4−クロロフェニル)ブタン酸である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2010−1235(P2010−1235A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160314(P2008−160314)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】