説明

光学活性ビスホスフィニルアルカンの調製方法

本発明は、対応するように置換されたラセミ体1,2-ジオールから出発して、光学活性ビスホスフィニルアルカンを調製する方法に関する。これにより得ることができる光学活性ビスホスフィニルアルカンは、キラル遷移金属触媒を調製するためのリガンドとしての使用に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対応するように置換されたラセミ体1,2-ジオールから光学活性ビスホスフィニルアルカンを調製する方法に関する。この方法により得られる光学活性ビスホスフィニルアルカンはキラル遷移金属触媒を調製するためのリガンドとして好適である。
【背景技術】
【0002】
キラル遷移金属触媒を調製するためにキラルビスホスフィニルアルカンを使用することは公知である。特に高性能触媒の多くの応用に関して、Rh錯体と(R,R)-2,3-ビスジフェニルホスフィノブタン(「(R,R)-キラホス」)などのキラルビスホスファンとの組合せが有用であることが見出されている。このリガンドおよびそれを調製する方法は、既に1977年に記載されている(Bosnichら、J. Am. Chem. Soc. 1977, 99, 6262-6267)。長年にわたって、このリガンドを調製するための別の方法が記載されてきた(Jansenら、Tetrahedron:Asymmetry 1990, 1, 719-720; Matteoliら、Tetrahedron:Asymmetry 1997, 8, 1403-1410)。類似のリガンドを調製する方法も同様に記載されてきた(Chem. Ber. 1986, 119, 3326; Tetrahedron:Asymmetry 1990, 1, 895-912; Chem. Pharm. Bull. 1990, 38, 818; Synthesis 1992, 951; J. Organomet. Chem. 1998, 560, 257; EP1182205)。
【0003】
これまでに記載された(R,R)-キラホスおよびその類似物を調製する方法/プロセスは、経済的に有利な工業的規模での実施には適していない。
【0004】
DE-A 100 33 956には、環状アルキレンスルフェートをリン(III)アルカリ金属化合物と反応させることにより対称および非対称のビスホスフィノ化合物を調製する方法が開示されている。
【0005】
J. Chem. Soc., Chem. Comm., 1983, 805-805において、R.L. Wifeらは、ジアリールホスフィンオキシドアニオンと好適なオキシランとの反応による1,2-エチレンビス(ジアリールホスフィンオキシド)の合成について記載している。ここでは、開環および置換が連続的に起こる。
【0006】
同じ方法を極性非プロトン性溶媒中、塩基性化合物の存在下でおこなうと、ホスフィノイルアニオンを形成できることが、EP-A 0 111 950に開示されている。
【0007】
EP-A 0 807 636には、1価または多価に荷電したジホスフィンアニオンおよび対イオンとして対応する数のアンモニウムカチオンを有する、カルボン酸、スルホン酸またはホスホン酸アンモニウムの形である特定のジホスフィンが開示されている。さらに、ジフェニルホスフィンオキシドを塩基の存在下で適切なジハライドと反応させることによるこれらの化合物の調製方法が開示されている。
【0008】
DE 196 09 336は、アミン置換アリール基を有し、対イオンと共にカチオンの形で存在し得る特定のビス(ジアリールホスフィン)、ならびに個々のホスファンリガンドを好適なジハライドによる置換により連続して結合するそれらの調製方法に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、安価で容易に入手可能な出発物質を用いて、全体の工程数を減らすことにより高い収率で実施することができ、工業的規模での反応に適した光学活性隣位ビスホスフィニルアルカンの調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この目的は、式(I)
【化1】

【0011】
[式中、基、
R1およびR2は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1〜12個の炭素原子を有し、置換基ハロゲン、C6〜C12-アリール、NR5R6、NHR7およびOR8からなる群より選択される1個以上の同一のもしくは異なる置換基を有してもよい直鎖、分枝鎖もしくは環状アルキル基、または6〜12個の炭素原子を有し、置換基C1〜C12-アルキル、ハロゲン、C6〜C12-アリール、NR5’R6’、NHR7’およびOR8’からなる群より選択される1個以上の同一のもしくは異なる置換基を有してもよいアリール基であり;または一緒になって、4〜12個の環原子を有し、置換基ハロゲン、オキソ、C6〜C12-アリール、C1〜C10-アシルおよびC1〜C10-スルホニルからなる群より選択される1個以上の置換基を有してもよく、1個以上のヘテロ原子OまたはNR9を含んでもよい脂肪族環または二環を形成し、
R3およびR4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1〜12個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状アルキル基、または6〜12個の炭素原子を有するアリール基であり、それらはいずれも置換基C1〜C12-アルキル、ハロゲン、NR5”R6”、NHR7”、OR8”、スルホニルおよびNR10R11R12R13、C(O)OR14、C(O)NR14’R14”からなる群より選択される1個以上の同一のまたは異なる置換基を有してもよく、基
R5、R6〜R5”、R6”は互いに独立して、それぞれC1〜C12-アルキルまたはC6〜C12-アリールであり、
R7〜R7”は、それぞれC1〜C10-アシルまたはC1〜C10-スルホニルであり、
R8〜R8”は、それぞれC1〜C12-アルキルまたはC6〜C12-アリールであり、
R9は、C1〜C12-アルキル、C6〜C12-アリール、C1〜C10-アシルまたはC1〜C10-スルホニルであり、
R10〜R13は互いに独立して、それぞれC1〜C12-アルキル、C6〜C12-アリールまたはC7〜C17-アラルキルであり、
R14、R14’は、それぞれ水素、C1〜C12-アルキル、C6〜C12-アリールまたはC7〜C17-アラルキルであり、
R14”は、C1〜C12-アルキル、C6〜C12-アリールまたはC7〜C17-アラルキルであり、
*は、不斉置換された炭素原子を意味する]
の光学活性ビスホスフィニルアルカンを調製する方法であって、反応工程a)〜d):
a) 式(II)
【化2】

【0012】
[式中、基R1およびR2は式(I)と同じ意味を有する]
のジオールの反応により、式(III)
【化3】

【0013】
[式中、
基R1およびR2は式(I)と同じ意味を有し、
基Zは、それぞれ脱離基であり、または一緒になって、構造フラグメント-O-S(O)2-O-、-O-P(O)(OR15)2-O-、-O-C(O)-O-および-O-C(O)-C(O)-O-からなる群より選択される構造フラグメントを形成し、そこにおいてR15はC1〜C12-アルキル、C7〜C17-アラルキルまたはC6〜C12-アリールである]
の化合物を形成し、
b) 工程a)において得られた式(III)の化合物を、式(IV)
【化4】

【0014】
[式中、基R3およびR4は式(I)と同じ意味を有する]
のホスファイトと、使用する式(IV)のホスファイトを脱プロトン化することができる塩基の存在下で反応させて、式(V)
【化5】

【0015】
[式中、基R1〜R4は式(I)と同じ意味を有する]
のラセミ体1,2-トランス配置ジホスファイトを形成し、
c) 工程b)において得られた式(V)のラセミ体ジホスファイトの分割により、式(V*)
【化6】

【0016】
[式中、
基R1〜R4は式(I)と同じ意味を有し、
*は不斉置換された炭素原子を意味する]
の光学活性ジホスファイトを得て、
d) 工程c)において得られた式(V*)の化合物を還元して式(I)の化合物を得ること
を含む前記調製方法を提供することにより達成された。
【0017】
本発明の方法は、基R1〜R4および置換基R5〜R15が上記の意味を有する式(I)の光学活性ビスホスフィニルアルカンを調製するのに好適である。基R1〜R4のそれぞれについて記載した炭素原子の数は、それぞれの基に結合する置換基の炭素数を含まない。前記の置換基の意味として、下記のものを例として挙げることができる。
【0018】
C1〜C6-アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピルまたは1-エチル-2-メチルプロピルである。
【0019】
C1〜C12-アルキルは、例えば、前記のC1〜C6-アルキル、ならびにヘプチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、3-エチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,2,3-トリメチルブチル、オクチル、2-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、4-メチルヘプチル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルヘキシル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、3,4-ジメチルヘキシル、3,5-ジメチルヘキシル、2,3,4-トリメチルペンチル、2,2,3-トリメチルペンチル、2,2,4-トリメチルペンチル、2,3,3-トリメチルペンチル、3-エチル-2-メチルペンチル、3-エチル-3-メチルペンチル、2,2,3,3-テトラメチルブチル、ノニル、2-メチルオクチル、3-メチルオクチル、4-メチルオクチル、3-エチルヘプチル、4-エチルヘプチル、2,2-ジメチルヘプチル、3,3-ジメチルヘプチル、4,4-ジメチルヘプチル、2,3-ジメチルヘプチル、2,4-ジメチルヘプチル、2,5-ジメチルヘプチル、2,6-ジメチルヘプチル、3,4-ジメチルヘプチル、3,5-ジメチルヘプチル、3,6-ジメチルヘプチル、2,3,4-トリメチルヘキシル、2,2,3-トリメチルヘキシル、2,2,4-トリメチルヘキシル、2,2,5-トリメチルヘキシル、2,3,3-トリメチルヘキシル、3,3,4-トリメチルヘキシル、3,3,5-トリメチルヘキシル、3-エチル-2-メチルヘキシル、3-エチル-3-メチルヘキシル、3-エチル-4-メチルヘキシル、3-エチル-5-メチルヘキシル、2,2,3,3-テトラメチルペンチル、2,2,4,4-テトラメチルペンチル、2,2,3,4-テトラメチルペンチル、2,3,3,4-テトラメチルペンチル、3,3-テトラエチルペンチル、デシル、2-メチルノニル、3-メチルノニル、4-メチルノニル、5-メチルノニル、3-エチルオクチル、4-エチルオクチル、5-エチルオクチル、2,2-ジメチルオクチル、3,3-ジメチルオクチル、4,4-ジメチルオクチル、5,5-ジメチルオクチル、2,3-ジメチルオクチル、2,4-ジメチルオクチル、2,5-ジメチルオクチル、2,6-ジメチルオクチル、2,7-ジメチルオクチル、3,4-ジメチルオクチル、3,5-ジメチルオクチル、3,6-ジメチルオクチル、4,5-ジメチルオクチル、2,3,4-トリメチルヘプチル、2,2,3-トリメチルヘプチル、2,2,4-トリメチルヘプチル、2,2,5-トリメチルヘプチル、2,3,3-トリメチルヘプチル、3,3,4-トリメチルヘプチル、3,3,5-トリメチルヘプチル、3-エチル-2-メチルヘプチル、3-エチル-3-メチルヘプチル、3-エチル-4-メチルヘプチル、3-エチル-5-メチルヘプチル、2,2,3,3-テトラメチルヘキシル、2,2,4,4-テトラメチルヘキシル、2,2,3,4-テトラメチルヘキシル、2,3,3,4-テトラメチルヘキシル、3,3-テトラエチルヘキシル、ウンデシル、2-メチルデシル、3-メチルデシル、4-メチルデシル、5-メチルデシル、3-エチルノニル、4-エチルノニル、5-エチルノニル、2,2-ジメチルノニル、3,3-ジメチルノニル、4,4-ジメチルノニル、5,5-ジメチルノニル、2,3-ジメチルノニル、2,4-ジメチルノニル、2,5-ジメチルノニル、2,6-ジメチルノニル、2,7-ジメチルノニル、3,4-ジメチルノニル、3,5-ジメチルノニル、3,6-ジメチルノニル、4,5-ジメチルノニル、2,3,4-トリメチルオクチル、2,2,3-トリメチルオクチル、2,2,4-トリメチルオクチル、2,2,5-トリメチルオクチル、2,3,3-トリメチルオクチル、3,3,4-トリメチルオクチル、3,3,5-トリメチルオクチル、3-エチル-2-メチルオクチル、3-エチル-3-メチルオクチル、3-エチル-4-メチルオクチル、3-エチル-5-メチルオクチル、2,2,3,3-テトラメチルヘプチル、2,2,4,4-テトラメチルヘプチル、2,2,3,4-テトラメチルヘプチル、2,3,3,4-テトラメチルヘプチル、3,3-テトラエチルヘプチル、ドデシル、2-メチルウンデシル、3-メチルウンデシル、4-メチルウンデシル、5-メチルウンデシル、3-エチルデシル、4-エチルデシル、5-エチルデシル、2,2-ジメチルデシル、3,3-ジメチルデシル、4,4-ジメチルデシル、5,5-ジメチルデシル、2,3-ジメチルデシル、2,4-ジメチルデシル、2,5-ジメチルデシル、2,6-ジメチルデシル、2,7-ジメチルデシル、3,4-ジメチルデシル、3,5-ジメチルデシル、3,6-ジメチルデシル、4,5-ジメチルデシル、2,3,4-トリメチルノニル、2,2,3-トリメチルノニル、2,2,4-トリメチルノニル、2,2,5-トリメチルノニル、2,3,3-トリメチルノニル、3,3,4-トリメチルノニル、3,3,5-トリメチルノニル、3-エチル-2-メチルノニル、3-エチル-3-メチルノニル、3-エチル-4-メチルノニル、3-エチル-5-メチルノニル、2,2,3,3-テトラメチルオクチル、2,2,4,4-テトラメチルオクチル、2,2,3,4-テトラメチルオクチル、2,3,3,4-テトラメチルオクチル、3,3-テトラエチルオクチルである。
【0020】
さらに、本発明において、ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、好ましくは塩素、臭素またはヨウ素である。
【0021】
C6〜C12-アリールは、例えば、フェニル、1-メチルフェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、1-エチルフェニル、2-エチルフェニル、3-エチルフェニル、1-プロピルフェニル、2-プロピルフェニル、3-プロピルフェニル、1-イソプロピルフェニル、2-イソプロピルフェニル、3-イソプロピルフェニル、1-ブチルフェニル、2-ブチルフェニル、3-ブチルフェニル、1-イソブチルフェニル、2-イソブチルフェニル、3-イソブチルフェニル、1-sec-ブチルフェニル、2-sec-ブチルフェニル、3-sec-ブチルフェニル、1-tert-ブチルフェニル、2-tert-ブチルフェニル、3-tert-ブチルフェニル、1-(1-ペンテニル)フェニル、2-(1-ペンテニル)フェニル、3-(1-ペンテニル)フェニル、1-(2-ペンテニル)フェニル、2-(2-ペンテニル)フェニル、3-(2-ペンテニル)フェニル、1-(3-ペンテニル)フェニル、2-(3-ペンテニル)フェニル、3-(3-ペンテニル)フェニル、1-(1-(2-メチルブチル))フェニル、2-(1-(2-メチルブチル))フェニル、3-(1-(2-メチルブチル))フェニル、1-(2-(2-メチルブチル))フェニル、2-(2-(2-メチルブチル))フェニル、3-(2-(2-メチルブチル))フェニル、1-(3-(2-メチルブチル))フェニル、2-(3-(2-メチルブチル))フェニル、3-(3-(2-メチルブチル))フェニル、1-(4-(2-メチルブチル))フェニル、2-(4-(2-メチルブチル))フェニル、3-(4-(2-メチルブチル))フェニル、1-(1-(2,2-ジメチルプロピル))フェニル、2-(1-(2,2-ジメチルプロピル))フェニル、3-(1-(2,2-ジメチルプロピル))フェニル、1-(1-ヘキセニル)フェニル、2-(1-ヘキセニル)フェニル、3-(1-ヘキセニル)フェニル、1-(2-ヘキセニル)フェニル、2-(2-ヘキセニル)フェニル、3-(2-ヘキセニル)フェニル、1-(3-ヘキセニル)フェニル、2-(3-ヘキセニル)フェニル、3-(3-ヘキセニル)フェニル、1-(1-(2-メチルペンテニル))フェニル、2-(1-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(1-(2-メチルペンテニル))フェニル、1-(2-(2-メチルペンテニル))フェニル、2-(2-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(2-(2-メチルペンテニル))フェニル、1-(3-(2-メチルペンテニル))フェニル、2-(3-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(3-(2-メチルペンテニル))フェニル、1-(4-(2-メチルペンテニル))フェニル、2-(4-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(4-(2-メチルペンテニル))フェニル、1-(5-(2-メチルペンテニル))フェニル、2-(5-(2-メチルペンテニル))フェニル、3-(5-(2-メチルペンテニル))フェニル、1-(1-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、2-(1-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、3-(1-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、1-(3-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、2-(3-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、3-(3-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、1-(4-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、2-(4-(2,2-ジメチルブテニル))フェニル、3-(4-(2,2-ジメチルブテニル))フェニルまたはナフチルである。
【0022】
C1〜C10-アシルは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状アシル基、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ピバロイル、1-シクロヘキシルホルミル、フタロイル、アルキルオキシカルボニル、例えば、メチルオキシカルボニル、エチルオキシカルボニル、プロピルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ノニルオキシカルボニル、tert-ブチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルまたはアルキルアミドカルボニル、例えば、N,N-ジメチルアミドカルボニルである。
【0023】
本発明において、C1〜C10-スルホニルは、1〜10個の炭素原子を有するスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル、ノニルスルホニル、デシルスルホニル、フェニルスルホニル、(3-ブロモ)フェニルスルホニル、(3-メチル)フェニルスルホニルまたはトリフルオロメチルスルホニルである。
【0024】
本発明において、C7〜C17-アラルキルは、例えば、フェニルメチル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-フェニルブチル、2-フェニルブチル、3-フェニルブチル、4-フェニルブチル、1-フェニルペンチル、2-フェニルペンチル、3-フェニルペンチル、4-フェニルペンチル、5-フェニルペンチル、6-フェニルヘキシル、7-フェニルヘプチル、8-フェニルオクチル、9-フェニルノニル、10-フェニルデシル、11-フェニルウンデシル、メチル(1-ナフチル)、メチル(2-ナフチル)、2-エチル(1-ナフチル)、2-エチル(2-ナフチル)、3-プロピル(1-ナフチル)、3-プロピル(2-ナフチル)、4-ブチル(1-ナフチル)、4-ブチル(2-ナフチル)、5-ペンチル(1-ナフチル)、5-ペンチル(2-ナフチル)、6-ヘキシル(1-ナフチル)、6-ヘキシル(2-ナフチル)、7-ヘプチル(1-ナフチル)、7-ヘプチル(2-ナフチル)、メチル(1-ビフェニル)、メチル(2-ビフェニル)、メチル(3-ビフェニル)、2-エチル(1-ビフェニル)、2-エチル(2-ビフェニル)、2-エチル(3-ビフェニル)、3-プロピル(1-ビフェニル)、3-プロピル(2-ビフェニル)、3-プロピル(3-ビフェニル)、4-ブチル(1-ビフェニル)、4-ブチル(2-ビフェニル)、4-ブチル(3-ビフェニル)、5-ペンチル(1-ビフェニル)、5-ペンチル(2-ビフェニル)、5-ペンチル(3-ビフェニル)、6-ヘキシル(1-ビフェニル)、6-ヘキシル(2-ビフェニル)、6-ヘキシル(3-ビフェニル)、7-ヘプチル(1-ビフェニル)、7-ヘプチル(2-ビフェニル)、7-ヘプチル(3-ビフェニル)またはメチルアントラセニルである。
【0025】
前記の置換基の好ましい意味として、下記のものを例として挙げることができる。
【0026】
NR5R6は、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジフェニルアミノ、ジ(3-メトキシフェニル)アミノ、ジ(3-ブロモフェニル)アミノ、ジベンジルアミノ、ジ(3-メトキシフェニル)アミノ、ジ(3’-ブロモフェニルメチル)アミノまたはフタロイルアミノであり、
NHR7は、例えば、アセチルアミノ、プロパノイルアミノ、ブタノイルアミノ、ピバロイルアミノ、トシルまたはメタンスルホニルアミノであり、
OR8は、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシまたはベンジルオキシであり、
NR9は、例えば、フェニルアミノ、アセチルアミノ、メチルスルホニルアミノおよびトルエンスルホニルアミノであり、
NR10R11R12R13は、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウムまたはベンジルトリエチルアンモニウムである。
【0027】
記号(*)は、不斉置換された炭素原子、すなわち4個の異なる基を有する四面体炭素原子であって、大部分がその2つの可能な鏡像型のうちの1つの形で存在するものを意味する。
【0028】
好ましくは、本発明の方法は、基R1およびR2が、同一であるか異なっており、好ましくは同一であって、それぞれ1〜12個、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状アルキル基であり、および一緒になって、4〜12個の環原子を有し、置換基ハロゲン、C6〜C10-アリール、C1〜C10-アシルおよびC1〜C10-スルホニルからなる群より選択される1個以上、一般的には1〜約3個の置換基を有してもよく、1個以上のヘテロ原子OまたはNR9を含んでもよい脂肪族環または二環を形成してもよい式(I)の光学活性ビスホスフィニルアルカンの調製に好適である。基R3およびR4は、好ましくは同一であるか異なっており、それぞれ6〜10個の炭素原子を有し、それぞれ置換基C1〜C6-アルキル、ハロゲン、NR5”R6”、NHR7”、OR8”、スルホニルおよびNR10R11R12R13、C(O)OR14、C(O)NR14’R14”からなる群より選択される1個以上の、一般的には1〜約3個の同一のまたは異なる置換基を有してもよいアリール基である。
【0029】
本発明おいて、特に好ましい一般式(I)の反応生成物は、基R1およびR2が一緒になってシクロヘキシル環を形成し、基R3およびR4がそれぞれ無置換フェニルまたは上記の通りに置換されたフェニルであるものである。同様に、本発明によれば、基R1およびR2がそれぞれメチルであり、基R3およびR4がそれぞれ無置換フェニルまたは上記の通りに置換されたフェニルである式(I)の反応生成物も好ましい。
【0030】
本発明において好ましい反応生成物の例として、下記の式(1)〜(7)の化合物が挙げられる。
【化7】

【0031】
上記の一般式(I)の反応生成物は、所望により、本発明の方法の工程c)の型に応じて、本発明に従って、それらの2つのエナンチオマーの形で調製することができる。
【0032】
本発明の方法は、反応工程a)〜d)を含むが、それについて下により詳細に説明する。
【0033】
本発明の方法の工程a)において、出発物質である一般式(II)
【化8】

【0034】
[式中、基R1およびR2は、目的とする一般式(I)の反応生成物と同じ意味を有する]
のジオールを反応させて、式(III)
【化9】

【0035】
[式(III)における基R1およびR2は式(II)と同じ意味を有し、基Zはそれぞれ脱離基であり、または一緒になって架橋構造フラグメント-O-S(O)2-O-、-O-P(O)(OR15)2-O-、-O-C(O)-O-および-O-C(O)-C(O)-O-からなる群より選択される構造フラグメントを形成し、そこにおいてR15はC1〜C12-アルキル、C7〜C17-アラルキルまたはC6〜C12-アリールである]
の化合物を形成する。
【0036】
本発明において、脱離基は、求核試薬による攻撃または求核試薬との反応により置換され得る構造要素である。
【0037】
式(III)の化合物を調製するのに適した出発化合物は式(II)の1,2-ジオールであり、これは、存在し得るジアステレオマーの混合物の形、ならびに、所望の場合には立体化学的に均一な化合物の形で使用することができる。好ましい式(II)の出発化合物は、例えば、2,3-ブタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、2,3-ジヒドロキシデカリン、3,4-ジヒドロキシピラン、3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン、N-メチル-3,4-ジヒドロキシピロリジン、N-ベンジル-3,4-ジヒドロキシピロリジン、N-アセチル-3,4-ジヒドロキシピロリジン、N-ピバロイル-3,4-ジヒドロキシピロリジンまたは3,4-ジヒドロキシチオフェンである。
【0038】
選択された式(II)の出発化合物の2個のヒドロキシ基を、本発明の工程a)において好適な脱離基に変換する。好適な脱離基は、例えば、ハロゲン、好ましくは塩素、臭素またはヨウ素、メシレート、トシレート、トリフレート、ノナフレート、アセテート、トルフルオロアセテートおよびベンゾエートである。本発明の工程a)において特に好ましい脱離基は、塩素、臭素、ヨウ素、トシレート、メシレートおよびトリフルオロアセテートである。選択された式(II)の出発化合物を式(III)の化合物に変換する方法自体は当業者に公知であり、例えば、J. Am. Chem. Soc. 1977, 99, 6262-6267またはSynthesis 1992, 951に記載されている。さらに、例えばルイス酸との錯体形成により、またはMitsunobu, O.によりSynthesis 1981, 1に記載された条件を用いて、in situ置換のためのヒドロキシル基の活性化もおこなうことができる。
【0039】
別の実施形態において、式(III)における2個の構造要素Zは、一緒になって、構造フラグメント-O-S(O)2-O-、-O-P(O)(OR15)2-O-、-O-C(O)-O-および-O-C(O)-C(O)-O-からなる群より選択される構造フラグメントを形成してもよく、そこにおいてR15はC1〜C12-アルキル、C7〜C17-アラルキルまたはC6〜C12-アリールである。その結果、式(III)の化合物は、環状硫酸エステル、リン酸エステル、炭酸エステルまたはシュウ酸エステルであり、そこにおいて、前記のリン酸エステルは上記の通りの好適な基により、好ましくは、メチル、フェニルまたはベンジルによりエステル化されている。本発明の方法の好ましい実施形態において、式(II)のジオールを式(VII)の環状硫酸エステルに変換する。
【化10】

【0040】
これは、使用する式(II)のジオールを、例えば塩化チオニルの作用により式(VI)の環状亜硫酸エステルとした後、KMnO4またはTPAP(過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム)などの好適な酸化剤を用いて酸化して、スルホン化することにより有利に達成される。
【0041】
工程a)により得ることができる一般式(III)の中間物質は、通常の方法により単離し、必要に応じてさらに精製することができる。それらは本発明の方法の工程b)の出発化合物として使用される。
【0042】
本発明の方法の工程b)において、工程a)において得られた式(III)の化合物を式(IV)
【化11】

【0043】
[式中、基R3およびR4は式(I)の反応生成物において望まれる意味を有する]
のホスファイトと反応させる。反応は、使用する式(IV)のホスファイトを脱プロトン化することができる塩基の存在下でおこなう。この方法で、本方法の工程b)により式(V)
【化12】

【0044】
[式中、基R1〜R4は、式(I)の反応生成物において望まれる意味であって、工程a)において用いた式(II)および(III)の化合物と一致する意味を有する]
のラセミ体1,2-trans-配置ジホスファイトが得られる。
【0045】
工程b)において、脱離基または環状脱離基Zを、使用した式(IV)のホスファイトおよび使用した塩基から脱プロトン化により形成された求核試薬により置換する。反応は、好ましくは、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、スルホランまたは当業者に好適であることが明らかな他の溶媒などの双極性非プロトン性溶媒中、水の存在下でおこなう。好適な塩基は、特に、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化カルシウムまたは水酸化マグネシウム)、アルカリ金属アルコキシド(例えば、ナトリウムまたはカリウムのメトキシドまたはエトキシド)、およびアルカリ土類金属アルコキシド(例えば、カルシウムエトキシドまたはマグネシウムエトキシド)などの少なくとも部分的に水溶性の塩基である。前記の塩基は、脱プロトン化される式(IV)のホスファイトに基づいて通常約1〜約10当量のモル量で、好ましくは水溶液の形で使用する。反応は約0℃以上の温度で有利に実施される。それ以外の基質または試薬に特異的な反応条件は、通常の実験により確認することができる。
【0046】
この方法により、所望の式(V)の1,2-trans-配置ジホスファイトが高い収率および選択性で得られ、当業者に公知の方法により単離し、例えば結晶化によりさらに精製することができる。本発明の工程b)により調製した一般式(V)のジホスファイトは、しばしば、使用した対応する式(III)または(II)の前駆化合物と比べて高いジアステレオマー純度を有することが見出されており、これは、2倍の置換反応の後に、おそらく使用した塩基の作用により異性化反応が起こっていることを示している。したがって、工程b)により調製された式(V)のジホスファイトは、高いジアステレオマー純度で、ラセミ混合物の形で得られ、本発明に従って、さらに以下の工程c)に記載されるように処理される。
【0047】
本発明の工程c)において、工程b)において得られた式(V)のラセミ体ジホスファイトの分割をおこなって、式(V*)
【化13】

【0048】
[式中、基R1〜R4は、式(I)の反応生成物において望まれる意味であって、工程a)およびb)に使用した式(II)、(III)、(IV)および(V)の化合物と一致する意味を有し、記号*は不斉置換された炭素原子を表す]
の光学活性ジホスファイトを得る。
【0049】
キラルジホスファイトのラセミ分割は公知であり、例えば、J. Org. Chem. 1986, 51, 629-635に記載されている。工程b)において得られた式(V)のラセミ体ジホスファイトの分割は、好ましくは、光学活性型のキラル酸、例えばキラルカルボン酸またはスルホン酸などの好適なキラル補助試薬を用いて付加物を形成することにより実施する。この目的に適したキラル酸は、例えば、(+)-もしくは(-)-ジベンゾイル酒石酸または(+)-もしくは(-)-カンファースルホン酸である。本発明の方法の工程c)において、工程b)において得られた式(V)のラセミ体の結晶化を、上記の純粋なエナンチオマーである補助試薬の存在下で、適切な場合には低温でおこなうことが好ましい。次に、この方法により得られたジアステレオマー付加物を当業者に公知の方法により単離することができる。この方法により単離されたジアステレオマー付加物を解離することにより、遊離の式(V*)の光学活性ジホスファイトおよび使用したキラル補助試薬が得られ、この補助試薬は別の反応に再使用することができる。
【0050】
本発明の方法の工程c)によりこの方法で得られた式(V*)の光学活性ジホスファイトを、最後に工程d)において還元して、目的とする式(I)の光学活性ビスホスフィニルアルカンを得る。望まれない光学活性異性体は、例えば、塩基の存在下でラセミ化して、本方法の工程c)に再使用することができる。ジホスファイトからビスホスフィニルアルカンへの還元は公知であり、例えば、沸騰したキシレン中でトリクロロシランを用いる方法がMatteoliらによりTetrahedron: Asymmetry 1997, 8, 1403-1409に記載されている。好適な還元の方法は、それぞれの場合に使用する式(V*)のキラルジホスファイトおよび形成される式(I)のビスホスフィニルアルカンのラセミ化が起こらないか、起こってもわずかであるようなものであると考えられる。そこで、本発明の方法の工程d)において有利に使用することができる別の好適な還元剤は、例えば、水素化リチウムアルミニウム、アラン、トリエトキシシランおよびフェニルシランである。
【0051】
本発明の方法により、反応を4工程のみで簡単におこなうことができ、安価な出発物質(ラセミ体ジアステレオマー混合物の形で使用することができる)および試薬を使用する、式(I)の光学活性キラルビスホスフィニルアルカンの経済的な合成経路が開発された。プロセス工学において問題となる反応条件、例えば多くの工程、低い温度または反応性の強い試薬を使用しないので、本発明の方法は特に工業規模での使用に適している。
【0052】
本発明の方法により得ることができる式(I)の光学活性キラルビスホスフィニルアルカンは、不斉合成のための有機金属触媒、特に有機遷移金属触媒のリガンドとして使用するのに適している。それらは、例えば「触媒的不斉合成」(Catalytic Asymmetric Synthesis), Wiley-VCH 2000, I. Ojima編に記載されるような、不斉水素化、ヒドロホルミル化、ヒドロホウ素化およびアリルアルキル化のためのキラル遷移金属触媒を調製するのに適している。
【0053】
したがって、本発明は、上記の方法により式(I)の光学活性キラルビスホスフィニルアルカンを調製した後、この方法で調製した式(I)のビスホスフィニルアルカンを好適な遷移金属化合物と接触させることにより光学活性遷移金属触媒を調製する方法をも提供する。この目的で、好適な遷移金属、例えばFe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgまたはAuを、有利には、選択された反応媒体に可溶性の化合物の形で、例えばカルボニル、アセチルアセトネート、ヒドロキシ、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、シクロオクテン、メトキシ、ベンゼン、チモール、塩素、臭素もしくはヨウ素などのハロゲン、アセチルまたは他の脂肪族もしくは芳香族カルボキシレートなどの好適なリガンドとの塩または錯体として、本発明により調製した式(I)のキラルビスホスフィニルアルカンと接触させる。本発明の方法において好ましい遷移金属化合物は、例えば、Rh(I)、Rh(II)およびRh(III)ならびにRh(0)化合物、Ir(I)、Ir(II)、Ir(III)、Ir(IV)およびIr(0)化合物、Ru(II)、Ru(III)、Ru(IV)およびRu(0)化合物、Pd(II)、Pd(IV)およびPd(0)化合物およびPt(II)、Pt(IV)およびPt(0)化合物、Cu(I)、Cu(II)、Cu(III)化合物、Ag(I)またはAg(III)化合物、Au(I)またはAu(III)化合物であって、例えば、Ru(cod)(メタリル)2、Ru(cod)(アリル)2、[Ru(ベンゼン)Cl]2、[Ru(チモール)Cl]2、[Ru(チモール)I]2、RhCl3、Rh(OAc)3、[Rh(cod)Cl]2、Rh(CO)2acac、[Rh(cod)OH]2、[Rh(cod)OMe]2、[Rh(cod)2]BF4、[Rh(cod)2]PF6、[Rh(cod)2]OTf、[Rh(cod)2]SbF6、[Rh(nbd)Cl]2、[Rh(nbd)OH]2、[Rh(nbd)OMe]2、[Rh(nbd)2]BF4、[Rh(nbd)2]PF6、[Rh(nbd)2]OTf、[Rh(nbd)2]SbF6、Rh4(CO)12、Rh6(CO)16またはIr4(CO)12、[Ir(cod)Cl]2、[Ir(cod)2]BF4、[Ir(nbd)Cl]2、[Ir(nbd)2]BF4、Pd(OAc)2、Pd(OC(O)CF)3、[Pd(アリル)Cl]2、Pd(dba)2、Pd2(dba)3CHCl3、PdCl2、PtCl2、[Pt(cod)2]OTf2、[Pt(cod)2](BF4)2、[Pt(nbd)2]OTf2、[Pt(nbd)2](BF4)2、CuOTf、AgOTf、AuCl3の形であるものであり、そこにおいて、「acac」はアセチルアセトネートリガンドであり、「dba」はジベンジリデンアセトンであり、「cod」は1,5-シクロオクタジエンリガンドであり、「nbd」はノルボルナジエンリガンドであり、「Tf」はトリフレートである。
【0054】
前記の遷移金属化合物および本発明により調製した式(I)の光学活性キラルビスホスフィニルアルカンを、例えば「有機合成のための遷移金属」(Transition Metals for Organic Synthesis), Wiley-VCH 1998, M. Beller, C. Bolm編に記載されるような、当業者に公知の方法により互いに接触させることができる。この方法により得ることができるキラル遷移金属触媒は、単離した後に使用することができ、または触媒する反応においてin situで形成することができる。
【0055】
上記のおよびその他の好適な遷移金属化合物および錯体は公知であり、文献に適切に記載されており、または当業者が公知の化合物と同様の方法を用いて調製することができる。
【0056】
特に好ましい実施形態において、本発明の方法は、光学活性シトロネラールを形成するためのシトラール、すなわちゲラニアールとネラールの混合物の不斉水素化に用いる光学活性遷移金属触媒を調製するのに適している。したがって、本発明はまた、上記の通りに調製された光学活性遷移金属触媒の存在下でシトラールまたはゲラニアールおよび/またはネラールを不斉水素化することにより、光学活性シトロネラール、好ましくはD-シトロネラールを調製する方法を提供する。この文脈において、好ましいキラル遷移金属触媒は、本発明の方法により調製した式(1)〜(7)のうちの一つの光学活性キラルビスホスフィニルアルカンを、上記の好ましい遷移金属化合物のうちの一つ、特に、Rh(CO)2acac、[Rh(cod)OH]2、[Rh(cod)OMe]2、Rh4(CO)12、Rh6(CO)16またはIr4(CO)12と接触させることにより調製することができるものである。本発明のこの態様において特に好ましいキラル遷移金属触媒は、式(1)のR,R-キラホスである。
【0057】
この方法により得ることができる光学活性シトロネラールは貴重な香料であり、より価値を高めた製品を製造するための貴重な中間物質である。特に、光学活性シトロネラールは、分子内環化により光学活性イソプレゴールを調製するのに有用である。光学活性イソプレゴールの水素化により光学活性メントールを調製することができる。
【実施例】
【0058】
下記の実施例を、本発明をいかなる意味でも限定することなく、説明のために提供する。
【0059】
記載された反応生成物のジアステレオマー純度は下記の条件のガスクロマトグラフィー分析により測定した:分析法:ガスクロマトグラフィー;カラム:OV-1 Macherey & Nagel、25 m(実施例1および2)または10 m;温度プログラム:50℃、5分(実施例1)または2分;20℃/分、300℃)。
【0060】
実施例1:4,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサチオラン2,2-ジオキシドの調製
0.88 mol (105 g)の塩化チオニルを、室温で、0.44 mol (40 g)の2,3-ジヒドロキシブタン(cis/trans混合物)の200 mlのCH2Cl2中の溶液に、冷却し、激しく撹拌しながら3時間かけて滴下した。形成されたHClガスを、NaOH溶液を満たした洗ビン中を通して中和した。添加が完了した後、反応混合物を1時間還流しながら撹拌した。溶媒を減圧除去し、残渣をすぐに次の反応に使用した。
【0061】
1300 mlの硫酸(10%)を、0℃で、0.37 mol (50.7 g)の4,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサチオラン2-オキシドの400 mlのCH2Cl2中の溶液に加えた。激しく撹拌しながら、0.42 mol (66 g)のKMnO4を、内部の温度を10℃未満に保つようにしながら少しずつ加えた。紫色が5分以上維持された後に添加を終了した。1時間加熱還流した後、混合物を室温に冷却し、亜硫酸水素ナトリウムを加えることにより反応を止めた。有機相を分離し、水相をCH2Cl2により5回抽出し、有機相を合わせて中性になるまで洗浄し、MgSO4により乾燥し、減圧蒸発させた。これにより、4,5-ジメチル-[1,3,2]ジオキサチオラン2,2-ジオキシドを褐色がかった液体(193 mmol、33 g、44%)の形で、cis/trans混合物(約2:1)として得た。しばらくするとここから白色の固体が沈殿した。
【0062】
実施例2:ヘキサヒドロベンゾ[1,3,2]ジオキサチオール2,2-ジオキシドの調製
0.32 mol (38 g)の塩化チオニルを、室温で、0.16 mol (19 g)の1,2-ジヒドロキシシクロヘキサン(cis/trans混合物)の150 mlのCH2Cl2中の溶液に、冷却し、激しく撹拌しながら3時間かけて滴下した。形成されたHClガスを、NaOH溶液を満たした洗ビン中を通して中和した。添加が完了した後、反応混合物を1時間還流しながら撹拌した。溶媒を減圧除去し、残渣(0.15 mol、24.4 g、92%)をすぐに次の反応に使用した。
【0063】
400 mlの硫酸(10%)を、0.12 mol (19.6 g)のこの方法により得られた亜硫酸エステルの100 mlのCH2Cl2中の溶液に0℃で加えた。激しく撹拌しながら、0.25 mol (40 g)のKMnO4を、内部の温度を10℃未満に保つようにしながら少しずつ加えた。紫色が5分以上維持された後に添加を終了した。1時間加熱還流した後、混合物を室温に冷却し、亜硫酸水素ナトリウムを加えることにより反応を止めた。有機相を分離し、水相をCH2Cl2により5回抽出し、有機相を合わせて中性になるまで洗浄し、MgSO4により乾燥し、減圧蒸発させた。これにより、ヘキサヒドロベンゾ[1,3,2]ジオキサチオール2,2-ジオキシドを無色の液体(39 mmol、6.9 g、32%)の形で、〜2:1のcis/trans混合物として得た。
【0064】
実施例3:化合物(8)の調製
【化14】

【0065】
30 mlの濃度50%の水酸化カリウム水溶液および41 mmol (6.25 g)の実施例1の反応生成物(cis/trans 〜2:1)を、121 mmol (24.4 g)のジフェニルホスフィンオキシドの125 mlのDMSO中の溶液に、撹拌および氷冷しながら連続して加え、混合物を室温で72時間攪拌した。最初に形成されたcis-およびtrans-キラホスジオキシドの混合物は、反応時間中に実質的に完全に目的とするtrans化合物に異性化した。反応が終了した後、混合物に1000 mlの飽和KHSO4溶液を加えることにより中和し、300 mlのCH2Cl2により希釈し、得られた不溶性の固体を濾過した。有機相を分離し、水相を合計1000 mlのCH2Cl2により5回抽出した。有機相を合わせて、50℃で完全に減圧蒸発させ、残渣を少量のペンタンにより3回洗浄し、減圧乾燥した。これにより、40.6 mmol (18.6 g)の少し黄色がかった粗生成物(cis/trans > 95:5)が得られた。Et2Oから結晶化して、28.1 mmol (12.9 g、68%)の化合物(8)を、>98%のtrans含有量を有する結晶性の白色の固体の形で得た。
【0066】
実施例4:化合物(9)の調製
【化15】

【0067】
5 mlの濃度50%のKOH水溶液を、19.5 mmol (4.5 g)のジ-p-トリルホスフィンオキシド(J. Gen. Chem. USSR 1992, 62, 1833-1839)の25 mlのDMSO中の溶液に0℃で加えた。7.2 mmol (1.1 g)の実施例1の反応生成物(cis/trans 〜2:1)を橙色になった溶液に加えた。反応混合物を室温に温めて、さらに72時間攪拌した。1000 mlの飽和KHSO4溶液および400 mlのCH2Cl2を加え、不溶性の物質を濾過により除去することにより反応を止めた。有機相を分離して、水相をCH2Cl2により5回抽出した。有機相を合わせて中性になるまで洗浄し、MgSO4により乾燥し、蒸発乾固させた。化合物(9)を黄色の泡の形で得た(5.9 mmol、3.0 g、82%、trans含有量 >98%)。
【0068】
実施例5:化合物(10)の調製
【化16】

【0069】
10 mlの濃度50%のKOH水溶液を、38.7 mmol (10.0 g)のビス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィンオキシド(org. Lett. 2001, 3, 243-246)の75 mlのDMSO中の溶液に0℃で加えた。14.5 mmol (2.2 g)の実施例1の反応生成物(cis/trans 〜2:1)を橙色になった溶液に加えた。反応混合物を室温に温めて、さらに18時間攪拌した。次にこれを60℃で14時間撹拌した。1000 mlの飽和KHSO4溶液および300 mlのCH2Cl2を加え、不溶性の物質を濾過により除去することにより反応を止めた。有機相を分離して、水相をCH2Cl2により5回抽出した。有機相を合わせて中性になるまで洗浄し、MgSO4により乾燥し、蒸発乾固させた。化合物(10)を黄色の固体の形で得た(14.4 mmol、8.2 g、99%、trans含有量 >98%)。
【0070】
実施例6:化合物(11)の調製
【化17】

【0071】
5 mlの濃度50%のKOH水溶液を、温めた18.5 mmol (9.0 g)のビス(2,3-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェニル)ホスフィンオキシド(Synth. Catal. 2003, 345, 180-4)の450 mlのDMSO中の溶液に40℃で加えた。7.2 mmol (1.1 g)の実施例1の反応生成物(cis/trans 〜2:1)を橙色になった溶液に加えた。反応混合物を室温に冷却し、さらに24時間攪拌した。次にこれを60℃で4時間、次いで室温で72時間攪拌した。400 mlの飽和KHSO4溶液および400 mlのCH2Cl2を加え、不溶性の物質を濾過により除去することにより反応を止めた。有機相を分離して、水相をCH2Cl2により5回抽出した。有機相を合わせて中性になるまで洗浄し、MgSO4により乾燥し、蒸発乾固させた。残渣を80 mlのMeOHに取り、濾過して、蒸発乾固させた。シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィー(MeOH/EtOAc = 1:5)により精製し、ペンタンにより洗浄した後に、化合物(11)を白色の固体として得た(7.30 mmol、0.75 g、11%、trans含有量 >98%)。
【0072】
実施例7:化合物(12)の調製
【化18】

【0073】
22 mlの濃度50%のKOH水溶液を、84.2 mmol (17.0 g)のジフェニルホスフィンオキシドの125 mlのDMSO中の溶液に加えた。28.1 mmol (5.0 g)の実施例2の反応生成物(cis/trans 〜2:1)を橙色になった溶液に加えた。反応混合物をさらに96時間攪拌した。500 mlの飽和KHSO4溶液および300 mlのCH2Cl2を加え、不溶性の物質を濾過により除去することにより反応を止めた。有機相を分離して、水相をCH2Cl2により5回抽出した。有機相を合わせて中性になるまで洗浄し、MgSO4により乾燥し、蒸発乾固させた。化合物(12)を白色の固体として得た(20.2 mmol、9.81 g、72%、trans含有量 >98%)。
【0074】
実施例8:ラセミ体の分割
【化19】

【0075】
35 mmol (16.1 g)の化合物8を100 mlのCH2Cl2に還流しながら溶解した。沸騰した35 mmol (12.54 g)の(+)-ジベンゾイルタータレート ((+)-DBT)の100 mlのEtOAc中の溶液を、第2のフラスコから管状針を用いてこの溶液に導入した。2〜3分間還流した後、反応混合物を室温に冷却し、溶媒を減圧除去し、残渣をペンタンに取ってからペンタンを蒸留することを3回繰り返した。残渣を450 mlのEtOAcに取り、加熱還流した。難溶性の8と(+)-DBTの付加物を濾過した。透明な溶液を約200 mlまで蒸発させ、さらに8と(+)-DBTの付加物を濾過した。合計7.6 mmol (6.23 g)の付加物が得られた。固体を100 ml of CH2Cl2に溶解し、0.1 N NaOHにより10回洗浄した。有機相を分離し、MgSO4により乾燥し、蒸発乾固させた。化合物(8*)を白色の固体の形で得た(9.2 mmol、4.2 g、52%)。
【0076】
実施例9:ラセミ体の分割
【化20】

【0077】
10.3 mmol (5.0 g)の化合物12、10.6 mmol (3.8 g)の(+)-DBT、20 mlのCH2Cl2および20 mlのEtOAcを用いて実施例8の方法を繰り返し、1.03 mmol (0.5 g、20%)の化合物12*を得た。
【0078】
実施例10:ラセミ体の分割
【化21】

【0079】
56 mmol (28.8 g)の化合物(9)、56 mmol (20.1 g)の(+)-DBT、160 mlのCH2Cl2および160 mlのEtOAcを用いて実施例8の方法を繰り返し、3回再結晶をおこなった後、23.9 mmol (12.3 g、43%)の化合物(9*)を得た。
【0080】
実施例11:還元
【化22】

【0081】
Matteoliら(Tetrahedron: Asymmetry 1997, 8, 1403-1410)により記載された方法を、22.5 mmol (11.6 g)の化合物(9*)を用いて実施し、生成物を100 mlのメタノールから、次いで200 mlのエタノールから再結晶して、17.5 mmol (9.0 g、79%)の化合物(13)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、基、
R1およびR2は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1〜12個の炭素原子を有し、置換基ハロゲン、C6〜C12-アリール、NR5R6、NHR7およびOR8からなる群より選択される1個以上の同一のもしくは異なる置換基を有してもよい直鎖、分枝鎖もしくは環状アルキル基、または6〜12個の炭素原子を有し、置換基C1〜C6-アルキル、ハロゲン、C6〜C12-アリール、NR5’R6’、NHR7’およびOR8’からなる群より選択される1個以上の同一のもしくは異なる置換基を有してもよいアリール基であり;または一緒になって、4〜12個の環原子を有し、置換基ハロゲン、オキソ、C6〜C12-アリール、C1〜C10-アシルおよびC1〜C10-スルホニルからなる群より選択される1個以上の置換基を有してもよく、1個以上のヘテロ原子OまたはNR9を含んでもよい脂肪族環または二環を形成し、
R3およびR4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1〜12個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖もしくは環状アルキル基、または6〜12個の炭素原子を有するアリール基であり、それらはいずれも置換基C1〜C12-アルキル、ハロゲン、NR5”R6”、NHR7”、OR8”、スルホニルおよびNR10R11R12R13、C(O)OR14、C(O)NR14’R14”からなる群より選択される1個以上の同一のまたは異なる置換基を有してもよく、基
R5、R6〜R5”、R6”は互いに独立して、それぞれC1〜C12-アルキルまたはC6〜C12-アリールであり、
R7〜R7”は、それぞれC1〜C10-アシルまたはC1〜C10-スルホニルであり、
R8〜R8”は、それぞれC1〜C12-アルキルまたはC6〜C12-アリールであり、
R9は、C1〜C12-アルキル、C6〜C12-アリール、C1〜C10-アシルまたはC1〜C10-スルホニルであり、
R10〜R13は互いに独立して、それぞれC1〜C12-アルキル、C6〜C12-アリールまたはC7〜C17-アラルキルであり、
R14、R14’は、それぞれ水素、C1〜C12-アルキル、C6〜C12-アリールまたはC7〜C17-アラルキルであり、
R14”は、C1〜C12-アルキル、C6〜C12-アリールまたはC7〜C17-アラルキルであり、
*は、不斉置換された炭素原子を意味する]
の光学活性ビスホスフィニルアルカンを調製する方法であって、反応工程a)〜d):
a) 式(II)
【化2】

[式中、基R1およびR2は式(I)と同じ意味を有する]
のジオールの反応により、式(III)
【化3】

[式中、
基R1およびR2は式(I)と同じ意味を有し、
基Zは、それぞれ脱離基であり、または一緒になって、構造フラグメント-O-S(O)2-O-、-O-P(O)(OR15)2-O-、-O-C(O)-O-および-O-C(O)-C(O)-O-からなる群より選択される構造フラグメントを形成し、そこにおいてR15はC1〜C12-アルキル、C7〜C17-アラルキルまたはC6〜C12-アリールである]
の化合物を形成し、
b) 工程a)において得られた式(III)の化合物を、式(IV)
【化4】

[式中、基R3およびR4は式(I)と同じ意味を有する]
のホスファイトと、使用する式(IV)のホスファイトを脱プロトン化することができる塩基の存在下で反応させて、式(V)
【化5】

[式中、基R1〜R4は式(I)と同じ意味を有する]
のラセミ体1,2-トランス配置ジホスファイトを形成し、
c) 工程b)において得られた式(V)のラセミ体ジホスファイトの分割により、式(V*)
【化6】

[式中、
基R1〜R4は式(I)と同じ意味を有し、
*は不斉置換された炭素原子を意味する]
の光学活性ジホスファイトを得て、
d) 工程c)において得られた式(V*)の化合物を還元して式(I)の化合物を得ること
を含む前記方法。
【請求項2】
基、
R1およびR2が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ1〜12個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状アルキル基であり、または一緒になって、4〜12個の環原子を有し、置換基ハロゲン、オキソ、C6〜C12-アリール、C1〜C10-アシルおよびC1〜C10スルホニルからなる群より選択される1個以上の置換基を有してもよく、1個以上のヘテロ原子OまたはNR9を含んでもよい脂肪族環または二環を形成してもよく、
R3およびR4が、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ6〜12個の炭素原子を有し、それぞれ置換基C1〜C6-アルキル、ハロゲン、NR5”R6”、NHR7’、OR8”、カルボキシ、スルホニルおよびNR10R11R12R14からなる群より選択される1個以上の同一のまたは異なる置換基を有してもよいアリール基である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基、
R1およびR2が、同一であり、それぞれ1〜6個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状アルキル基であり、または一緒になって、4〜12個の環原子を有し、置換基ハロゲン、オキソ、C6〜C12-アリール、C1〜C10-アシルおよびC1〜C10スルホニルからなる群より選択される1個以上の置換基を有してもよく、1個以上のヘテロ原子OまたはNR9を含んでもよい脂肪族環または二環を形成してもよく、
R3およびR4が、同一であり、それぞれ6〜12個の炭素原子を有し、置換基C1〜C12-アルキル、ハロゲン、NR5”R6”、NHR7’、OR8”、カルボキシ、スルホニルおよびNR10R11R12R14からなる群より選択される1個以上の同一のまたは異なる置換基を有してもよいアリール基である、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
基R1およびR2が一緒になってシクロヘキシル環を形成し、基R3およびR4がそれぞれ置換または無置換フェニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
基R1およびR2がそれぞれメチルであり、基R3およびR4がそれぞれ置換または無置換フェニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式(III)における脱離基Zが、脱離基ハロゲン、メシレート、トシレート、トリフレート、ノナフレート、アセテート、トリフルオロアセテートおよびベンゾエートからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
式(III)における脱離基Zが一緒になって、構造フラグメント-O-S(O)2-O-、-O-P(O)(OR15)2-O-、-O-C(O)-O-および-O-C(O)-C(O)-O-からなる群より選択される構造フラグメントを形成し、そこにおいてR15がC1〜C12-アルキル、C7〜C17-アラルキルまたはC6〜C12-アリールである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)を極性非プロトン性溶媒の存在下でおこなう、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)において使用する塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシドおよびアルカリ土類金属アルコキシドからなる群より選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程c)におけるラセミ体の分割が、キラル補助試薬の存在下で結晶化をおこなうことにより達成される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
キラル補助試薬として、光学活性型のキラルカルボン酸またはスルホン酸を使用する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法に従って式(I)の光学活性キラルビスホスフィニルアルカンを調製し、それを好適な遷移金属化合物と接触させることによる、光学活性遷移金属触媒を調製する方法。
【請求項13】
遷移金属化合物として、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群より選択される金属の化合物を使用する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
キラルビスホスフィニルアルカンとして、(R,R)-キラホスを使用する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法に従って調製された遷移金属触媒の存在下でシトラールを不斉水素化することによる光学活性シトロネラールを調製する方法。

【公表番号】特表2009−502874(P2009−502874A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523361(P2008−523361)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064709
【国際公開番号】WO2007/012655
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】