説明

光学活性2−置換−3−アミノピペリジン誘導体および製造方法

【課題】本発明は、生理活性物質の合成中間体として有用な新規な光学活性2-置換-3-アミノピペリジン誘導体およびその新規な製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】安価な無保護オルニチンのメチルエステルを環化したのち、3位のアミノ基と1位の窒素原子に所定の保護基を導入する。次に、2位のカルボニル基を還元してアミナ-ル化した後、リンイリドを使用したウィッティヒ反応等によってこれを増炭し、α,β-不飽和カルボニル化合物に変換する。最後に、アザマイケル反応によってα,β-不飽和カルボニル化合物を環化することによって、3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体のシス-トランス異性体を高ジアステレオ選択性をもって選択的に取得することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な光学活性2-置換-3-アミノピペリジン誘導体および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、創薬分野において、2-置換-3-アミノピペリジン誘導体は、生理活性物質を生成するための中間体として、その有用性が認められている。この点につき、Isabel Gomez-Monterrey, et al., Tetrahedron Lett., 1993, 34, 3593-3594(非特許文献1)、M. Martin-Martinez, et al., J. Med. Chem., 1997, 40, 3402-3407(非特許文献2)、Pilar Munoz-Ruiz, et al., J. Med. Chem., 2004, 47, 5318-5329(非特許文献3)は、L-オルニチンからCCKレセプタ-アンタゴニストの中間体であるトランス-2-オキソオクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン誘導体の前駆体として3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体を合成する方法を開示する。
【0003】
3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体は、2位と3位、および、1位と2位において縮合環を形成することが可能であり、様々な分子構造への展開が見込まれる有用な合成中間体であるが、分子内に2つの不斉中心(2位と3位)を持つため、その合成において立体化学の制御が問題となる。この点につき、非特許文献1〜3の合成方法は、ジアステレオ選択性が低く(トランス体:シス体=54:27)、加えて、トランス体の一部はラセミ化しており(4%)、工業化を考える場合、その分離精製コストが過大になる虞がある。さらに加えて、当該合成方法においては、δ-炭素上およびα炭素上の側鎖アミンが保護された高価なアミノ酸原料(L-オルニチン)を出発物質としているため、その製造コストが高くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Isabel Gomez-Monterrey, et al., Tetrahedron Lett., 1993, 34, 3593-3594
【非特許文献2】M. Martin-Martinez, et al., J. Med. Chem., 1997, 40, 3402-3407
【非特許文献3】Pilar Munoz-Ruiz, et al., J. Med. Chem., 2004, 47, 5318-5329
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、本発明は、生理活性物質の合成中間体として有用な新規な光学活性2-置換-3-アミノピペリジン誘導体およびその新規な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、光学活性2-置換-3-アミノピペリジン誘導体の合成方法につき鋭意検討した結果、安価な原料からより少ない工数で目的物質を合成することができ、且つ、立体化学を好適に制御することができる新規な製造方法を見出した。また、その製造方法を用いて新規な光学活性2-置換-3-アミノピペリジン誘導体の合成に成功し、本発明に至ったのである。
【発明の効果】
【0007】
上述したように、本発明によれば、生理活性物質の合成中間体として有用な新規な光学活性2-置換-3-アミノピペリジン誘導体およびその新規な製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(2E)-4,7-ジアミノ-2-へプテン酸誘導体の合成工程を示す図。
【図2】3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体の合成工程を示す図。
【図3】実施例1の合成工程を示す図。
【図4】実施例1の合成工程を示す図。
【図5】実施例2の合成工程を示す図。
【図6】実施例3の合成工程を示す図。
【図7】実施例4,5の合成工程を示す図。
【図8】実施例6,7の合成工程を示す図。
【図9】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図10】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図11】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図12】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図13】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図14】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図15】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図16】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図17】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図18】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図19】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図20】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図21】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図22】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図23】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図24】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図25】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図26】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図27】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図28】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図29】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図30】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図31】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図32】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図33】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図34】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図35】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図36】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図37】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図38】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図39】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図40】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図41】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図42】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図43】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【図44】実施例についてのNMRの測定結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。
【0010】
本発明は、下記一般式(1)および(2)で表される3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体について、その新規な製造方法を開示する。
【0011】
【化1】

(上記一般式(1)中、NXは保護されたアミノ基を表し、Yは保護基を表し、Rは、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アルコキシ基,チオアルコキシ基,置換基を有してもよいアミノ基からなる群から選択される置換基を示す。)
【0012】
【化2】

(上記一般式(2)中、NXは保護されたアミノ基を表し、Yは保護基を表し、Rは、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アルコキシ基,チオアルコキシ基,置換基を有してもよいアミノ基からなる群から選択される置換基を示す。)
【0013】
さらに、本発明は、3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体の前駆物質として、下記一般式(3)で表される(2E)-4,7-ジアミノ-2-へプテン酸誘導体の新規な製造方法を開示する。
【0014】
【化3】

(上記一般式(2)中、NXおよびNHYは、保護されたアミノ基を表し、Rは、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アルコキシ基,チオアルコキシ基,置換基を有してもよいアミノ基からなる群から選択される置換基を示す。)
【0015】
さらに加えて、本発明は、3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体を前駆物質して合成される新規な化合物として、下記一般式(4)〜(6)で表される化合物およびその製造方法を開示する。なお上記一般式(4)〜(6)中、RおよびRは、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,炭素数3-6のアルケニル基,炭素数3-6のアルキニル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アシル基,アルコキシカルボニル基,スルホニル基からなる群から選択される置換基を示す。
【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

【0019】
最初に、上記一般式(1)および(2)で表される3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体の製造方法について以下説明する。本発明の3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体の製造方法は、ジアミノ不飽和化合物である(2E)-4,7-ジアミノ-2-へプテン酸誘導体をその前駆体とすることを特徴とする。本発明においては、(2E)-4,7-ジアミノ-2-へプテン酸誘導体を前駆物質とすることによって、3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体について、所望のジアステレオマ-を選択的に合成することが可能になる。本発明者は、この製造上のキ-化合物である、(2E)-4,7-ジアミノ-2-へプテン酸誘導体について、安価且つ簡便な新規合成方法を発見した。その詳細について、以下説明する。
【0020】
図1は、(2E)-4,7-ジアミノ-2-へプテン酸誘導体の合成工程を示す図である。本発明の製造方法によれば、無保護のL-オルニチンまたはその塩を出発物質とし、わずか4工程で、(2E)-4,7-ジアミノ-2-へプテン酸誘導体を安価に合成することができる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0021】
[工程1]
本発明においては、無保護のL-オルニチン塩を出発物質とすることを特徴とする。無保護のL-オルニチンは安価な汎用材料であり、この点が製造コストの低減に大きく寄与する。L-オルニチン塩は好ましくは塩酸塩を使用することができる。なお、出発物質としてL-オルニチン以外にも、D-オルニチンを使用することができ、また、オルニチンのラセミ体を使用することもできる。
【0022】
工程1においては、まず、出発物質であるL-オルニチンを、常法のアミノ酸のメチルエステル化法を用い、メタノ-ル中での酸処理によりL-オルニチンメチルエステルを調整する。酸処理は、トリメチルシリルクロリド(TMSCl)、チオニルクロリド(SOCl2)などを使用して行なうことができる。その後、調製したメチルエステルをNaOCH3、 NaOH、Na2CO3などを使用したアルカリ処理により環化したのち、BnBr、BnCl、(Boc)2O、CbzClなどの保護試薬を用いて処理し、3位のアミノ基に対して保護基(ベンジル基などのアラルキル基や、t-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基)を導入する。すなわち、図1の一般式中の{-NX }は、{-NBn2 }、{-NHBoc }、{-NHCbz }などとして参照することができる。
【0023】
[工程2]
工程2においては、N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ブチルリチウム、NaHなどの適当な塩基存在下で、(Boc)2O、CbzCl などの保護試薬を用いて処理し、上記環化化合物の1位の窒素原子に保護基を導入する。すなわち、図1の一般式中の{-Y }は、{-Boc }、{-Cbz }などとして参照することができる。
【0024】
[工程3]
続いて、工程3においては、上記環化化合物の2位のカルボニル基を、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL)、NaBH4 などの還元剤を用いて還元し、アミナ-ル化する。なお、ジイソブチルアルミニウムヒドリドを用いて還元する場合は、ジクロロメタンやトルエンなどを反応溶媒にて、-80℃前後の低温条件が必要となるが、NaBH4によれば、塩酸を加えたエタノ-ル-水混合溶媒にて、-20℃前後の温度で収率よく反応を進行させることができる。
【0025】
[工程4]
最後に、工程4においては、上記アミナ-ルを増炭反応によって、α, β-不飽和カルボニル化合物に変換する。本発明においては、上記増炭反応として、リンイリドを使用したウィッティヒ反応や、ホスホネ-トイオンを使用したホ-ナ-・ワズワ-ス・エモンズ反応を適用することができる。なお、ホ-ナ-・ワズワ-ス・エモンズ反応を用いる場合、ホスホネ-トイオンを調整する際の塩基(例えば、NaHなど)を過剰量用いることによって、α, β-不飽和カルボニル化合物への変換と、後述するアザマイケル反応が同時に進行して環化体が得られ、1工程を短縮することができる。
【0026】
なお、別法として、図1に破線で囲んで示すように、2位のカルボニル基へのエノレ-トの求核攻撃を経て得られるケトンを還元した後、脱水することによって、α, β-不飽和カルボニル化合物を合成することもできる(工程a〜c)。
【0027】
以上、本発明の(2E)-4,7-ジアミノ-2-へプテン酸誘導体の合成方法について説明してきたが、次に、この(2E)-4,7-ジアミノ-2-へプテン酸誘導体から3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体を合成する方法、さらには、3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体を前駆物質として、上記一般式(4)〜(6)で表される新規な化合物を合成する方法について、図2を参照して説明する。
【0028】
本発明においては、上述した手順で合成した(2E)-4,7-ジアミノ-2-へプテン酸誘導体(α, β-不飽和カルボニル化合物)のβ位に対して、分子末端の窒素原子が共役付加する反応(アザマイケル反応)によって、分子内環化し、3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体を合成する。ここで、本発明においては、前駆物質である(2E)-4,7-ジアミノ-2-へプテン酸誘導体(以下、前駆体として参照する)において、図中の一般式に示す、{-NX }、{-Y }、{-R}について、所定の組み合わせを選択することによって、2-置換-3アミノピペリジン骨格について、立体選択的に2,3-シス体と2,3-トランス体とを作り分けることができる。以下、この点について具体的に説明する。
【0029】
(A)シス体の合成 [工程5]
前駆体の置換基について、{-NX }をジベンジル基{-NBn2 }とし、{-Y }をBoc基のようなカルバメ-ト系保護基とし、塩基存在下(NaHなど)、分子内アザマイケル反応を行なった場合、シス環化体を選択的に得ることができる(シス:トランス=~20:1から>40:1)。なお、この際、{-R}置換基を立体的にかさ高くすることによって、シス選択性をより高くすることができる( OEt < OBn < OtBu )。
【0030】
(B)トランス体の合成 [工程5’]
前駆体の置換基について、{-NX }をジベンジル基{-NBn2 }とし、{-Y }を{-H }とした場合、トリエチルアミンのような弱塩基存在下でもアザマイケル反応(分子内環化)が容易に進行し、トランス環化体を選択的に得ることができる(シス:トランス=1:~15から1:~20)。なお、この際、{-R}置換基を立体的にかさ高くすることによって、トランス選択性をより高くすることができる( OEt < OBn )。さらに、前駆体の置換基について、{-NX }を{-NHBoc }、{-NHCbz }のようなカルバメ-ト系保護基とし、{-Y }についても、Boc基のようなカルバメ-ト系保護基として、塩基存在下(NaHなど)、分子内アザマイケル反応を行なった場合トランス環化体のみを得ることができる。以上、説明したように、本発明によれば、3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体の合成において、立体化学を好適に制御することができる。
【0031】
次に、上述した手順で立体選択的に合成された3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体の各異性体(シス、トランス)を前駆物質として上記一般式(4)〜(6)で表される新規な化合物を合成する方法について、引き続き、図2を参照して説明する。
【0032】
(1)シス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン-2-オン誘導体の合成[工程6]
上述した手順で立体選択的に合成した3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体のシス体について、{-NX }を脱保護した後、塩基(例えば、NaH、トリエチルアミンなど)で処理することにより、縮合環化反応が進行して、上記一般式(4)で表されるシス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン-2-オン誘導体が立体選択的に合成される。
【0033】
(2)シス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン誘導体の合成[工程7]
上述した手順で合成されたシス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン-2-オン誘導体の2位のカルボニル基への還元反応により、上記一般式(5)で表されるシス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン誘導体が立体選択的に合成される。なお、還元剤としてボランなどを用いることができる。
【0034】
(3)トランス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン誘導体の合成[工程6’7’]
上述した手順で立体選択的に合成した3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体のトランス体について、{-NX }を脱保護した後、塩基(例えば、NaH、トリエチルアミンなど)で処理することにより、縮合環化した後(工程6’)、2位のカルボニル基への還元反応により(工程7’)、上記一般式(6)で表されるトランス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン誘導体が立体選択的に合成される。なお、還元剤としてボランなどを用いることができる。
【0035】
なお、シス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン誘導体を合成する別の方法として、シス-3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体のエステル基をアルコ-ルへと還元し、得られたアルコ-ルを塩基性条件下、脱離しやすい官能基(例えば、メシル基)にすることによって、直ちに環化反応を進行させることもできる。さらに、Pd/C触媒等を用いることによって、{-NX }について1つのベンジル基が脱保護された化合物を合成することもできる。
【0036】
以上、本発明の3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体を立体選択的に合成するための新規な製造方法について説明してきたが、本発明の方法を適用することによって、(+)-Epiquinamide 、ならびに、(+)-10-Epi-equinamideを立体選択的に合成することが可能になる。(+)-Epiquinamide、および、(+)-10-Epi-equinamide は、南米産ヤドクガエル由来のキノリチジンアルカロイドの1種であり、アセチルコリンレセプタ-のアゴニスト作用を有する中枢神経系薬剤のリ-ド化合物として注目されている。(+)-Epiquinamide の構造式(7)、および、(+)-10-Epi-equinamideの構造式(8)を下記に示す。
【0037】
【化7】

【0038】
【化8】

【0039】
本発明によれば、上記一般式(1)および(2)で表される3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体のシス体の縮合環化反応により、シス-6,6縮合ジアミン環を形成することで、上記構造式(7)で表される (+)-Epiquinamide を立体選択的に合成することができる。また、3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体のトランス体の縮合環化反応により、トランス-6,6縮合ジアミン環が形成することで、上記構造式(8)で表される(+)-10-Epi-equinamideを立体選択的に合成することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の光学活性2-置換-3-アミノピペリジン誘導体について、実施例を用いてより具体的に説明を行なうが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。なお、実施例の説明は、適宜、図3〜8に示した合成工程図を参照して行なうものとする。また、以下の説明において参照する工程番号は、図3〜8に示した合成工程図において括弧付き番号で示した。さらに、以下の説明においては、便宜上、化合物を番号で示すが、当該番号は、図3〜8の各構造式に付された太字の番号に対応するものとして参照されたい。
【0041】
<実施例1> (2E)-4,7-ジアミノ-2-へプテン酸誘導体の合成
図3および図4に示した合成工程を経て、(2E)-4,7-ジアミノ-2-へプテン酸誘導体(4、5、6、12、16)を立体選択的に得ることができた。以下、各工程の詳細について説明する。
【0042】
(工程1)
L-オルニチン一塩酸塩50.80g (301.3mmol)にアルゴン雰囲気下、無水MeOH(1L)、クロロトリメチルシラン (114.7ml, 903.6mmol)を加えた後、2時間還流した。TLCにより原料の消失を確認後、0℃に冷却し、ナトリウム27.70g (1.205mmol)と無水のMeOHから調整したナトリウムメトキシドを加え、室温で15分間撹拌した。反応混合物に炭酸ナトリウム159.7g(1.507mol) を撹拌しながら数回に分けて加え、次にBnBr (107.5ml, 0.9038mol )を加えた。その反応溶液を4時間加熱還流した。減圧濃縮して得た粉状の白い塊に氷水を入れ、撹拌しながらゆっくりと塩酸 (275mL, 6mol/L, 1.65mol)を加え酸性にした。溶け残った白い塊を吸引濾過した。その溶液をヘキサンで4回抽出した。その集めたヘキサン層を塩酸 (100mL, 6mol/L)で再度抽出した。集めた水層を氷浴で0°Cに冷却し、炭酸カリウム80g(578.8mmol)を加えアルカリ性にした。その水層に食塩959gと酢酸エチルを加えて抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。その溶液を減圧濃縮し、沈殿が出てきたところでヘキサンを加えて十分沈殿させ、白色粉末として1 (64.190g,218.0mmol)を72%で得た。残渣をヘキサンと酢酸エチルより結晶化させると、さらに白色粉末が13.367g(45.41mmol, 収率15%)得られた。合わせて収率87%。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C19H23N2O [M+H]+ 295.1810, found 295.1808
【0043】
(工程2)
アセトニトリル (200mL) に溶かした1 (21.74g, 73.85mmol)へ4-Dimethylaminopyridine (1.804g, 14.77mmol) とBoc2O (27.40g, 124.9mmol) を加え、70℃で3時間加熱した。TLCにより原料の消失を確認後、減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、2 (29.01g, 100%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C24H30N2O3Na [M+Na]+ 417.2154, found 417.2162
【0044】
(工程3)
2 (25.415g, 65.08mmol) をアルゴン雰囲気下、200mLの無水のTHFを加えて溶かし-78℃にて、DIBAL-H (199.0mL, 1.0M in toluene, 199.0mmol) を滴下した。1時間撹拌した後、冷やした酢酸エチル (50mL) とロッシェル塩水溶液 (50mL) を加え、室温で4時間撹拌した。その溶液を酢酸エチルで2回抽出し、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄、Na2SO4で乾燥した後、減圧濃縮して、3 (26.296g) を得た。精製せずに、次の反応に用いた。
【0045】
また、(工程3)の別の方法では、
2 (2.77g, 7.03mmol)をEtOH-H2O(9:1, 50ml)に溶かして-20℃に冷却し、NaBH4 (1.201g, 56.4mmol)を加えた。-20℃にて2N-HCl(0.995ml, 3.52mmol)を少しずつ加え、16時間攪拌した。反応溶液に、冷ヘキサン(50ml)と飽和NaCl 水溶液 (50ml)を加えて分液し、有機層(上層)は、飽和NH4Cl水溶液で洗浄し、水層(下層)は、飽和NH4Cl水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出した。2つの有機層(上層)を合わせ、濃縮せずに、シリカゲルに通し、減圧下濃縮し、3 (2.76g, 99%) を得た。
【0046】
(工程4)
3 (24.41g, 61.56mmol)を250mLのトルエンに溶かし、Ph3P=CHCO2Et (62.10g, 178.26mmol) を加えた。その混合物を8時間還流した。TLCにより原料の消失を確認後、室温まで冷やし、減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルで精製し、4を28.44g (60.94mmol, 99%)得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C28H39N2O4 [M+H]+ 467.2910, found 467.2911
【0047】
得られた生成物4は、図9に示されるH-NMRおよび図10に示される13C-NMRにより同定した。
【0048】
(工程5)
3 (2.013g, 5.077mmol)をトルエン(20mL) に溶かし、Ph3P=CHCO2tBu (3.885g,10.153mmol) を加えた。その混合物を21時間還流した。TLCにより原料の消失を確認後、室温まで冷やし、減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルで精製し、5を (1.931g, 77%)得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C30H43N2O4 [M+H]+ 495.3223, found 495.3209
【0049】
得られた生成物5は、図11に示されるH-NMRおよび図12に示される13C-NMRにより同定した。
【0050】
(工程6)
3 (5.40g, 13.62mmol)をトルエン(54mL) に溶かし、Ph3P=CHCO2Bn (11.826g, 27.24mmol) を加えた。その混合物を18時間還流した。TLCにより原料の消失を確認後、室温まで冷やし、減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルで精製し、6を (6.75g, 94%)得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C33H41N2O4 [M+H]+ 529.3066, found 529.3053
【0051】
得られた生成物6は、図13に示されるH-NMRおよび図14に示される13C-NMRにより同定した。
【0052】
(工程7)
アルゴン雰囲気下、diisopropylamine (3ml, 22.3mmol) の無水THF (10ml) 溶液へ、-15℃にて、1.6M n-BuLi (12.8ml, 20.3mmol) を加えて15分攪拌したのち、-78℃へ冷却し、酢酸エチル (2ml, 20.3mmol) を加え、1時間攪拌した。そこに2(2.003g, 5.03mmol)を加えて-78℃にて2時間攪拌した。NH4Cl (20ml) を加えて、反応を停止し、酢酸エチルにより3回抽出し、有機層をNa2SO4で乾燥、濾過、減圧濃縮して得たオイルをシリカゲルカラムクロマトグラフィ-により精製し、7 (1.972g, 83%)を得た。
【0053】
(工程8)
7 (0.136g, 0.282mmol)をEtOH (1.4ml) に溶かし、0℃にて、NaBH4 (0.0213g,0.564eq) を加え、5分後、室温に戻し、1時間撹拌した。反応の終了を確認し、0℃にて、飽和NH4Cl水溶液を加え、酢酸エチルを用いて3回抽出した。有機層を集めてNa2SO4で乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-で精製し、アルコ-ル 8 (0.136g, 99%) を得た。
【0054】
(工程9)
8 (0.053g,0.109mmol) をCH2Cl2 (0.53ml) で溶かし、0°Cにて、Et3N (0.0426g, 0.305mmol)とMs-Cl (0.0101ml, 0.131mmol) を加え、5分撹拌した。さらに、室温で30分撹拌した後、再び0℃に冷却し、飽和NH4Cl水溶液を加えた。(C2H5)2Oを用いて3回抽出し、集めた有機層をNa2SO4で乾燥、ろ過後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-で精製し、4 (0.39g, 77%) を得た。
【0055】
得られた生成物4のH-NMRおよび13C-NMRは、それぞれ図9および図10と同様であった。
【0056】
(工程10)
L-Ornithine methyl ester hydrochloride (200 g, 0.913mol) にMeOH(1000ml)、Na2CO3 (484 g, 4.57mol) を加えて還流しながら6時間撹拌した後、0℃に冷却した溶液へ、Cbz-Cl(156.4 ml, 1.096mol) を加えて室温で撹拌した。1時間後、水を500ml加えて濃縮し、大部分のMeOHを除いた後、酢酸エチルを加えて抽出し、Na2SO4 にて乾燥、濾過、減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルとヘキサンで結晶化させ、9(223.5 g, 90%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C13H17N2O3 [M+H]+ 249.1239, found249.1238
【0057】
(工程11)
アルゴン雰囲気下、9 (10.55g, 0.0425mol)を酢酸エチル (100ml) に溶かし、4-dimethylaminopyridine (0.55g, 0.045mol) とBoc2O (10.5g, 0.483mol) を加えて50°C にて4時間撹拌した。反応溶液を減圧下濃縮して生じた結晶を濾過し、白色粉末10 (9.345g, 0.0268mol, 63%)を得た。さらに、濾液を濃縮して得た残渣をシリカゲルクロマトグラフィ-にて精製し、10 (2.573g, 0.0074mol, 17%)を得た。合わせて収率80%。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C18H24N2O5Na [M+Na]+ 371.1583, found 371.1583
【0058】
(工程12)
10(25.0g, 71.8mmol)をEtOH-H2O (9:1, 175ml) に溶かして-20℃に冷却し、NaBH4 (10.9g, 287.2mmol) を加えた。-20℃にて2N-HCl(18ml)を少しずつ加え、3時間攪拌した。反応溶液に、冷ヘキサン(150ml)と飽和NaCl水溶液(150ml)を加えて分液し、有機層(上層)は、飽和NH4Cl水溶液で洗浄した。水層(下層)は、飽和NH4Cl水溶液加えた後、酢酸エチルで抽出した。2つの有機層(上層)を合わせ、濃縮せずに、シリカゲルに通し、減圧下濃縮し、11 (24.42g, 97%)を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C18H26N2O5Na [M+Na]+ 373.1739, found 373.1729
【0059】
(工程13)
アルゴン雰囲気下、NaH(0.828g, 20.7mmol)の無水THF (50 ml) 懸濁液を入れ、0°Cにして (EtO)2P(O)CH2CO2Et (4.27 ml, 21.5mmol)を加えた後、11 (5.02g, 14.3 mmol) の無水 THF 溶液を滴下し、0°C から室温まで徐々に温度を上げ2時間撹拌した。再び、0°C に冷却し、飽和NH4Cl水溶液を加え、酢酸エチルを用いて3回抽出した。有機層を集め、Na2SO4で乾燥、ろ過、減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-にて精製し、12 (5.351g, 89%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C22H32N2O6Na [M+Na]+ 443.2158, found 443.2155
【0060】
得られた生成物12は、図15に示されるH-NMRにより同定した。
【0061】
(工程14)
アルゴン雰囲気下にて、L-Ornithine hydrochloride (1.0g, 5.93 mmol) に無水 MeOH (20 ml) とTMSCl (2.26 ml, 17.8 mmol) を加え、一晩還流した。0°Cに冷やしてNa2CO3 (4.39 g, 41.5 mmol) を加えて3時間半撹拌後、室温にて、(Boc)2O (1.42g, 6.52 mmol, 1.10 eq) を加えた。10分撹拌後、濃縮し、水と酢酸エチルを加えて抽出し、Na2SO4乾燥、濾過、減圧濃縮して得た残渣を酢酸エチル、ヘキサンを用いて結晶化させ、結晶13(1.19 g, 94%)を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C10H18N2O3Na [M+Na]+ 237.1215, found 237.1208
【0062】
(工程15)
アルゴン雰囲気下、13 (9.233g, 0.0431mol)と4-dimethylaminopyridine (1.05g, 8.62 mmol)を入れ、さらに無水 CH2Cl2 (100 ml)と(Boc)2O (10.34 g, 0.0474 mmol)を加えて、1時間還流した。室温に戻した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ-にて精製し、14 (8.713g, 64%)を得た。
【0063】
(工程16)
アルゴン雰囲気下、14 (1.004g, 3.19mmol) を無水 CH2Cl2 (4 ml) に溶かし、-78°CにてDIBAL (9.54 ml, 1M in toluene, 9.57 mmol) を加えて撹拌した。1時間後、冷却した酢酸エチルを加えて反応を停止し、飽和ロッシェル塩水溶液を加えて撹拌した。さらに酢酸エチルを加えて抽出し、有機層をNa2SO4で乾燥、ろ過、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-にて精製し、15 (0.918 g, 91%)を得た。
【0064】
(工程17)
アルゴン雰囲気下、0°CにてNaH (0.025g, 0.632mmol) の無水THF(10 ml) の懸濁液へ (EtO)2P(O)CH2CO2Et (0.14 ml, 0.664 mmol) を加えて1時間撹拌した。その溶液へ15 (0.100g, 0.316 mmol) の無水 THF 溶液を加え、0°Cにて3時間撹拌した後、飽和NH4Cl水溶液を加えた。酢酸エチルを加えて2回抽出した。集めた有機層をNa2SO4で乾燥、ろ過、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-にて精製し、16 (0.113 g, 92%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C19H34N2O6Na [M+Na]+ 409.2315, found 409.2303
【0065】
得られた生成物16は、図16に示されるH-NMRにより同定した。
【0066】
<実施例2> 3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体のシス体の合成
図5に示した合成工程を経て、3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体のシス体(17、18、19)を立体選択的に得ることができた。以下、各工程の詳細について説明する。
【0067】
(工程18)
アルゴン雰囲気下、NaH (2.111g, 52.78mmol, 60% in oil)、無水THF (50ml)の懸濁溶液を氷浴で冷やし、そこに無水THF (30 ml) に溶解した4 (6.157g, 13.195mmol) を加えた。室温で4時間撹拌したのち、その溶液を氷浴で冷却し、飽和塩化アンモニウムを加えた。その溶液は酢酸エチルで3回抽出し、有機層を集め、飽和食塩水で洗い、Na2SO4で乾燥した。その溶液を減圧濃縮して得た残渣をシリカゲル100gで精製し、17 (6.011g, 98%, 2,3-cis : 2,3-trans = >20:1) を得た。
【0068】
また、(工程19)の別の方法では、
アルゴン雰囲気下、NaH (173mg, 4.32mmol, 60% in oil)の無水 THF(10ml)懸濁溶液へ(EtO)2POCH2CO2Et (600μL, 3.03mmol)を入れ、試薬の調整をした後、0℃にて3 (1.000g, 2.522mmol)を加え、3時間撹拌し、TLCで反応の終了を確認後、塩化アンモニウム水溶液 (20mL) を加えた。酢酸エチルを用いて抽出し、有機層をNa2SO4で乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製して、17 (1.118g, 95%, 2,3-cis : 2,3-trans = >20:1) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C28H39N2O4 [M+H]+ 467.2910, found 467.2910
【0069】
得られた生成物17は、図17に示されるH-NMRおよび図18に示される13C-NMRにより同定した。
【0070】
(工程20)
アルゴン雰囲気下、NaH (0.983g, 24.6mmol, 60% in oil)、無水THF (20ml)の懸濁溶液を氷浴で冷やし、そこに無水THF (5 ml) に溶解した6 (1.037g, 1.961mmol) を加えた。室温で30分撹拌したのち、その溶液を氷浴で冷却し、飽和塩化アンモニウムを加えた。その溶液は酢酸エチルで3回抽出し、有機層を集め、飽和食塩水で洗い、Na2SO4で乾燥した。その溶液を減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルで精製し、18 (0.861g, 83%, 2,3-cis : 2,3-trans = >40:1) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C33H41N2O4 [M+H]+ 529.3066, found 529.3055
【0071】
得られた生成物18は、図19に示されるH-NMRにより同定した。
【0072】
(工程21)
アルゴン雰囲気下、NaH (0.507g, 12.7mmol, 60% in oil)、無水THF (20ml)の懸濁溶液を氷浴で冷やし、そこに無水THF (5 ml) に溶解した5 (0.587g, 1.187mmol) を加えた。室温で12時間撹拌したのち、その溶液を氷浴で冷却し、飽和塩化アンモニウムを加えた。その溶液は酢酸エチルで3回抽出し、有機層を集め、飽和食塩水で洗い、Na2SO4で乾燥した。その溶液を減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルで精製し、19 (0.438g, 75%, 2,3-cis : 2,3-trans = >40:1) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C30H43N2O4 [M+H]+ 495.3223, found 495.3210
【0073】
得られた生成物19は、図20に示されるH-NMRにより同定した。
【0074】
<実施例3> 3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体のトランス体の合成
図6に示した合成工程を経て、3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体のトランス体(21、22、23、24)を立体選択的に得ることができた。以下、各工程の詳細について説明する。
【0075】
(工程22)
氷浴で冷やしながら、4 (7.289g, 15.62mmol) に、4N-HCl dioxane (12.1ml, 48.4mmol)を加え、室温で3時間撹拌したのち、減圧濃縮した。得られた残渣へCH2Cl2 (50ml) とtriethylamine (4.36ml, 59.43mmol) を加え、19時間撹拌した後、Boc2O (4.091g, 15.62mmol) を加え、3時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、21 (7.138g , 100%, 2,3-cis : 2,3-trans = 1:~15) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C28H39N2O4 [M+Na]+ 467.2910, found 467.2910
【0076】
得られた生成物21は、図21に示されるH-NMRおよび図22に示される13C-NMRにより同定した。
【0077】
(工程23)
氷浴で冷やしながら、6 (0.604g, 1.256mmol) に、4N-HCl dioxane (3.2ml, 12.8mmol)を加え、室温で12時間撹拌したのち、減圧濃縮した。得られた残渣へCH2Cl2 (10ml) とtriethylamine (0.875ml, 6.28mmol) を加え、5時間撹拌した後、Boc2O (0.353g, 1.38mmol) を加え、12時間撹拌した。反応溶液を減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、22 (0.581g , 88%, 2,3-cis : 2,3-trans = 1:~20) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C33H41N2O4 [M+H]+ 529.3066, found 529.3046
【0078】
得られた生成物22は、図23に示されるH-NMRにより同定した。
【0079】
(工程24)
アルゴン雰囲気下、無水THF (5ml) とNaH (0.096g, 2.378 mmol) に12 (0.500g, 1.189 mmol)を加え0℃で9.5時間攪拌し、さらに室温にて1時間攪拌した。飽和NH4Cl 水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出した。集めた有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過、濃縮して得た残渣をカラムクロマトグラフィ-で精製し、23 (0.341mg, 68%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C22H32N2O6Na [M+Na]+ 443.2158, found 443.2152
【0080】
得られた生成物23は、図24に示されるH-NMRにより同定した。
【0081】
(工程25)
アルゴン雰囲気下、無水THF (2ml) とNaH (0.071g, 1.77 mmol) に16 (0.228g, 0.59 mmol) の無水THF (2ml) 溶液を0℃で加え、4時間室温で攪拌した。その反応溶液へ飽和NH4Cl 水溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出した。集めた有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過、濃縮して得た残渣をカラムクロマトグラフィ-で精製し、24 (0.170g, 75%) を得た。
【0082】
得られた生成物24は、図25に示されるH-NMRにより同定した。
【0083】
<実施例4> 3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体のシス体の合成
図7に示した合成工程を経て、シス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン-2-オン誘導体(26)、ならびに、シス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン誘導体(27、30)を立体選択的に得ることができた。以下、各工程の詳細について説明する。
【0084】
(工程26)
水素雰囲気下、無水 MeOH(50 mL)と10% Pd/C(1 g)に17(10.149 g, 21.75 mmol)を加え室温で3.5時間撹拌した。原料の消失を確認した後、ろ過し、濃縮し、25とした。これを未精製のまま次の反応に用いた。得られた25にトルエン(50 mL)、Et3N (9.10 mL, 65.251 mmol, 3eq)を加え、室温で12時間撹拌後、9.5時間還流した。原料の消失を確認後、飽和NaHCO3水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、酢酸エチルで抽出した。Na2SO4にて乾燥、濾過、減圧濃縮して得た残渣をカラムクロマトグラフィ-で精製し、白色粉末として26 (5.090 g, 98%)を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C12H20N2O3Na [M+Na]+ 263.1372, found 263.1368
【0085】
得られた生成物26は、図26に示されるH-NMRおよび図27に示される13C-NMRにより同定した。
【0086】
(工程27)
アルゴン雰囲気下、26 (102mg, 0.424mmol) の無水THF (2ml) 溶液へ BH3・Me2S (10M, 0.43ml) を加えた後、3時間還流した。室温まで冷却した後、0°C にてMeOH (2ml) を加え、減圧下にてその溶液を濃縮した。そこにトルエン (5ml) を加え、1,2-ethylenediamine (1ml)を加えて、90°Cで3時間撹拌した。その後、室温まで冷やして、減圧下にてその溶液を濃縮した。得られた残渣にCH2Cl2 (10ml) および飽和NaHCO3水溶液 (10ml) を加え、CH2Cl2 にて3回抽出した。集めた有機層をK2CO3にて乾燥し、減圧濃縮して得た油状物をシリカゲルクロマトグラフィ- (CH2Cl2:MeOH:aqNH3 =10:1:0.1) にて精製し、27 (63mg, 0.254mmol, 60%)を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C12H23N2O2 [M+H]+ 227.1760, found 227.1763
【0087】
得られた生成物27は、図28に示されるH-NMRおよび図29に示される13C-NMRにより同定した。
【0088】
(工程28)
アルゴン雰囲気下、17 (0.104g, 0.223mmol) の無水トルエン (1 ml) 溶液を入れ、-20°CにしてNa[AlH2(OCH2CH2OCH3)2 (0.134ml, 0.446mmol, 65% トルエン溶液) を加えた。70分後、飽和ロッシェル塩水溶液を加えて、一晩撹拌した。この溶液を酢酸エチルで3回抽出し、集めた有機層を、Na2SO4で乾燥、ろ過、減圧濃縮した。得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-にて精製し、28 (92mg, 92%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C26H37N2O3 [M+H]+ 425.2804, found 425.2802
【0089】
(工程29)
アルゴン雰囲気下、28 (71 mg, 0.167 mmol) の無水 CH2Cl2 (2mL) 溶液を氷冷し、Et3N (50 μL, 0.335 mmol)、MsCl(16.8μL, 0.217 mmol) を加え、室温で2.5時間撹拌した。その後、MeOH (6 mL) を加え、濃縮した。得られた29の未精製物をそのまま次の反応に用いた。水素雰囲気下、乾燥 MeOH (1 mL)と10% Pd/C (10 mg)に29のMeOH溶液を加え、室温で12時間撹拌した。原料の消失を確認した後、ろ過し、減圧濃縮後、飽和NaHCO3水溶液とCH2Cl2で分液し、有機層を、Na2SO4で乾燥、ろ過、減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-にて精製した。30 (37 mg, 70%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C19H29N2O2 [M+H]+ 317.2229, found 317.2230
【0090】
得られた生成物30は、図30に示されるH-NMRおよび図31に示される13C-NMRにより同定した。
【0091】
<実施例5> トランス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン誘導体の合成
図7に示した合成工程を経て、トランス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン誘導体(32、33)を立体選択的に得ることができた。以下、各工程の詳細について説明する。
【0092】
(工程30)
水素雰囲気下、10% Pd/C (600mg)、無水 MeOH(50 mL) に21 (5.893 g, 12.629 mmol)を加え室温で9時間撹拌した。原料の消失を確認し、吸引ろ過した後のろ液を濃縮し、得られた31の粗生成物を未精製のまま次の反応に用いた。
アルゴン雰囲気下、31に無水 THF(50 mL)、60% NaH(2.682 g, 63.147 mmol)を加え、3.5時間還流した。原料の消失を確認後、飽和NH4Cl水溶液と酢酸エチルを加えた。分液操作の後、有機層をNa2SO4で乾燥濃縮し、白色粉末32 (1.689 g, 55%)を得た。これを再結晶し、白色粉末32 (1.211 g, 40%)を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C12H20N2O3Na [M+Na]+ 263.1372, found 263.1373
【0093】
得られた生成物32は、図32に示されるH-NMRおよび図33に示される13C-NMRにより同定した。
【0094】
(工程31)
アルゴン雰囲気下、32 (100mg, 0.424mmol) の無水THF (2ml) 溶液へ BH3・Me2S (10M, 0.43ml) を加えた後、3時間還流した。室温まで冷却した後、0°C にてMeOH (2ml) を加え、減圧下にてその溶液を濃縮した。そこにトルエン (5ml) 加え、1,2-ethylenediamine (1ml)を加えて、90°Cで3時間撹拌した。その後、室温まで冷やして、減圧下にてその溶液を濃縮した。得られた残渣にCH2Cl2 (10ml) および飽和NaHCO3水溶液 (10ml) を加え、CH2Cl2 にて3回抽出した。集めた有機層をK2CO3にて乾燥し、減圧濃縮して得た油状物をシリカゲルクロマトグラフィ- (CH2Cl2:MeOH:aqNH3 =10:1:0.1) にて精製し、33 (63mg, 0.278mmol, 66%)を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C12H23N2O2 [M+H]+ 227.1760, found 227.1754
【0095】
得られた生成物33は、図34に示されるH-NMRおよび図35に示される13C-NMRにより同定した。
【0096】
<実施例6>(1S,10S)-1-アミノキノリチジン誘導体の合成
図8に示した合成工程を経て、(1S,10S)-1-アミノキノリチジン誘導体(37、38、39、42)を立体選択的に得ることができた。以下、各工程の詳細について説明する。
【0097】
(工程32)
アルゴン雰囲気下、17 (853mg, 1.828mmol) の無水トルエン(20mL)溶液を-78°Cに冷却し、DIBAL (2.19mL, 1.0M in toluene, 2.19mmol) を加えた。30分撹拌した後、酢酸エチル (10mL) そしてロッシェル塩飽和水溶液を加えた。その溶液を12時間室温で撹拌した後、酢酸エチルで3回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。減圧濃縮により得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、34 (652.4mg, 84%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C26H35N2O3 [M+H]+ 423.2648, found 423.2655
【0098】
(工程33)
34 (4.600g, 11.83mmol)をtoluene (60mL)に溶かし、Ph3P=CHCO2Et (7.624g, 21.88mmol)を加え、5.5時間還流した。反応混合物を室温まで冷やし、減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、35 (5.402g, 100%, E:Z = ~10:1) を得た。
E form HRMS(ESI +): m/z calcd for C30H41N2O4 [M+H]+ 493.3066, found 493.3077
Z form HRMS(ESI +): m/z calcd for C30H41N2O4 [M+H]+ 493.3066, found 493.3058
HRMS(ESI +): m/z calcd for C19H23N2O (M+H+) 295.1805, found
【0099】
(工程34)
アルゴン雰囲気下、35 (1.060g, 2.508mmol) の無水のメタノ-ル (10ml) 溶液を0°Cに冷却し、マグネシウム (427mg, 17.56mmol) を加えた。その後氷浴を除き16時間室温で撹拌した後、再びその溶液を0°Cに冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。大部分のMeOHを減圧下除去したのち、飽和塩化アンモニウム水溶液と酢酸エチルを加えた。酢酸エチルで3回抽出し、その集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥、ろ過、減圧濃縮した。その残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、36 (1.109g , 92%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C29H41N2O4 [M+H]+ 481.3066, found 481.3063
【0100】
(工程35)
アルゴン雰囲気下、36 (2.767g, 5.757mmol) の無水ジクロロメタン (20mL) 溶液を0°Cに冷却し、トリフルオロ酢酸 (3.04mL) を加えた。反応が完結したら、その溶液を減圧濃縮して得た残渣にトルエン (50mL)を入れて0°Cに冷却し、トリエチルアミン(30.4mL)を加えて5時間還流した。その溶液を減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、37 (1.361g , 68%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C23H29N2O [M+H]+ 349.2280, found 349.2280
【0101】
得られた生成物37は、図36に示されるH-NMRおよび図37に示される13C-NMRにより同定した。
【0102】
(工程36)
アルゴン雰囲気下、NaBH4 (598mg, 15.8mmol) の無水THF懸濁液にBF3・(C2H5)2O (2.66ml, 21.1mmol) を加え3時間還流した。室温まで冷却後、無水THFに溶かした37(244.8mg, 0.7025mmol)を加え、20分還流をした。その後、室温に冷却後、遠心分離機を用いて沈殿物と分離、上澄み液を濃縮した。濃縮後の残渣に4N-HCl dioxane (703μl, 2.812mmol)を加えて濃縮した後、無水MeOHに溶かした。この溶液を、水素置換した無水MeOH、Pd(OH)2(49.0mg, 20wt%)、AcOH(4滴)の溶液に加えた。この溶液を水素雰囲気下で16時間撹拌した後、ろ過、濃縮し、化合物38 を得た。これに1,4-dioxane (5mL)、1N NaOH 5ml、無水酢酸(132μl, 1.40mmol)を加えて20分間室温で撹拌した。この溶液を減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-(クロロホルム:メタノ-ル=10:1+アンモニア水1%)にて精製し、39 (111.4mg, 81%)を白色の粉で得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C11H21N2O [M+H]+ 197.1654, found 197.1654
【0103】
得られた生成物39は、図38に示されるH-NMRおよび図39に示される13C-NMRにより同定した。
【0104】
(工程37)
アルゴン雰囲気下、36 (134mg, 0.274mmol) のジエチルエ-テル (10mL) 溶液を-20°Cに冷却し、DIBAL (1.17mL, 1.0M in toluene, 1.17mmol) を加えた。30分撹拌した後、酢酸エチル (10mL) そしてロッシェル塩飽和水溶液を加えた。その溶液を12時間室温で撹拌した後、酢酸エチルで抽出し、有機層をNa2SO4で乾燥した。減圧濃縮により得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、40 (75mg, 60%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C28H41N2O3 [M+H]+ 453.3117, found 453.3115
【0105】
(工程38)
アルゴン雰囲気下、40 (72 mg, 0.159 mmol) の無水 CH2Cl2 (3mL) 溶液を氷冷し、Et3N (178μL, 1.27 mmol)、MsCl (86μL, 1.11 mmol) を加え、0°Cで3時間撹拌した。その後、飽和NaHCO3 水溶液 (3 mL) 、ジエチルエ-テルを加えて2回抽出した。有機層を、Na2SO4で乾燥、ろ過、減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-にて精製した。41 (91 mg, 100%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C29H43N2O5S [M+H]+ 531.2893, found 531.2905
【0106】
(工程39)
氷浴で冷やしながら、41 (91mg, 0.17mmol) に、CH2Cl2 (1.2ml)と 4N-HCl dioxane (0.3ml, 1.20mmol)を加え、室温で3時間撹拌したのち、減圧濃縮した。得られた残渣へトルエン (50ml) とtriethylamine (0.111ml, 0.797mmol) を加え、加熱した。反応が完結したことをTLCで確認した後、反応溶液を減圧濃縮し、得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、42 (29mg , 55%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C23H31N2 [M+H]+ 335.2487, found 335.2486
【0107】
得られた生成物42は、図40に示されるH-NMRにより同定した。
【0108】
<実施例7> (1S,10R)-1-アミノキノリチジン誘導体の合成
図8に示した合成工程を経て、(1S,10R)-1-アミノキノリチジン誘導体(46、47、48)を立体選択的に得ることができた。以下、各工程の詳細について説明する。
【0109】
(工程40、41)
アルゴン雰囲気下、21 (5.992g, 12.84mmol) の無水トルエン(200mL)溶液を-78°Cに冷却し、DIBAL (20.2mL, 1.0M in toluene, 20.2mmol) を加えた。60分撹拌した後、酢酸エチル (10mL) そしてロッシェル塩飽和水溶液を加えた。その溶液を12時間室温で撹拌した後、酢酸エチルで2回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した。減圧濃縮により得た未精製43をトルエン(30mL)に溶かし、Ph3P=CHCO2Et (8.95g, 25.7mmol) を加えた。その混合物を5時間還流した。TLCにより原料の消失を確認後、室温まで冷やし、減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルで精製し、44 (4.75g, 75%) を得た。
E-form HRMS(ESI +): m/z calcd for C30H41N2O4 [M+H]+ 493.3066, found 493.3066
Z form HRMS(ESI +): m/z calcd for C30H41N2O4 [M+H]+ 493.3066, found 493.3066
【0110】
(工程42)
アルゴン雰囲気下、44 (2.49g, 5.05mmol) の無水のメタノ-ル (100ml) 溶液を0°Cに冷却し、マグネシウム (1.23g, 50.6mmol) を加えた。その後氷浴を除き20時間室温で撹拌した後、再びその溶液を0°Cに冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。大部分のMeOHを減圧下除去したのち、飽和塩化アンモニウム水溶液と酢酸エチルを加えた。酢酸エチルで3回抽出し、その集めた有機層を飽和食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥、ろ過、減圧濃縮した。その残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製して、45 (1.973g , 81%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C29H41N2O4 [M+H]+ 481.3066, found 481.3066
【0111】
(工程43)
アルゴン雰囲気下、45 (517mg, 1.08mmol) に4N-HCl dioxane (1.08ml, 4.32mmol)を加え、室温で4時間、50°Cで1時間撹拌したのち、減圧濃縮した。得られた残渣へトルエン (12mL)を入れ、トリエチルアミン(0.825ml, 5.92mmol)を加えて6時間還流した。その溶液を減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-で精製し、46 (321mg , 86%) を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C23H29N2O [M+H]+ 349.2280, found 349.2280
【0112】
得られた生成物46は、図41に示されるH-NMRおよび図42に示される13C-NMRにより同定した。
【0113】
(工程44)
アルゴン雰囲気下、NaBH4 (1.704g, 45.0mmol) の無水THF懸濁液にBF3・(C2H5)2O (7.59ml, 61.4mmol) を加え3時間還流した。室温まで冷却後、無水THFに溶かした46(349mg, 1.00mmol)を加え、3時間還流をした。その後、室温に冷却後、遠心分離機を用いて沈殿物と分離、上澄み液を濃縮した。濃縮後の残渣に4N-HCl dioxane (290μl, 1.16mmol)を加えて濃縮した後、無水MeOHに溶かした。この溶液を、水素置換した無水MeOH、Pd(OH)2(20mg, 20% 水酸化パラジウム炭素)、AcOH(3滴)の溶液に加えた。この溶液を水素雰囲気下で60時間撹拌した後、ろ過、濃縮し、化合物47 を得た。これに1,4-dioxane (6.3ml)、1N NaOH (6.3ml)、無水酢酸(284μl, 3.00mmol)を加えて3時間室温で撹拌した。この溶液を減圧濃縮して得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ-(クロロホルム:メタノ-ル=10:1+アンモニア水1%)にて精製し、48 (125mg, 64%)を得た。
HRMS(ESI +): m/z calcd for C11H21N2O [M+H]+ 197.1654, found 197.1648
【0114】
得られた生成物48は、図43に示されるH-NMRおよび図44に示される13C-NMRにより同定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式
【化1】

(上記一般式中、RおよびRは、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,炭素数3-6のアルケニル基,炭素数3-6のアルキニル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アシル基,アルコキシカルボニル基,スルホニル基からなる群から選択される置換基を示す。)で表されるシス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン-2-オン誘導体。
【請求項2】
下記一般式
【化2】

(上記一般式中、RおよびRは、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,炭素数3-6のアルケニル基,炭素数3-6のアルキニル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アシル基,アルコキシカルボニル基,スルホニル基からなる群から選択される置換基を示す。)で表されるシス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン誘導体。
【請求項3】
下記一般式
【化3】

(上記一般式中、RおよびRは、それぞれ同一でも異なっていても良く、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,炭素数3-6のアルケニル基,炭素数3-6のアルキニル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アシル基,アルコキシカルボニル基,スルホニル基からなる群から選択される置換基を示す。)で表されるトランス-オクタヒドロピロロ[3,2-b]ピリジン誘導体。
【請求項4】
下記一般式
【化4】

(上記一般式中、NXおよびNHYは、それぞれ保護されたアミノ基を表し、Rは、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アルコキシ基,チオアルコキシ基,置換基を有してもよいアミノ基からなる群から選択される置換基を示す。)で表される(2E)-4,7-ジアミノ-2-へプテン酸誘導体の製造方法であって、
オルニチンのエステルを環化して環化化合物を合成する工程と、
前記環化化合物の3位のアミノ基に第1の保護基を導入する工程と、
前記環化化合物の1位の窒素原子に第2の保護基を導入する工程と、
前記環化化合物の2位のカルボニル基を還元してアミナ-ルに変換する工程と、
前記アミナ-ルを増炭する工程と、
を含む製造方法。
【請求項5】
前記オルニチンは、L-オルニチン、D-オルニチン、またはこれらのラセミ体からなる群より選択される、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記増炭する工程は、リンイリドを使用したウィッティヒ反応、または、ホスホネ-トイオンを使用したホ-ナ-・ワズワ-ス・エモンズ反応による工程である、請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1の保護基および前記第2の保護基は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキル基、アラルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基からなる群より選択される、請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
下記一般式(1)
【化5】

(上記一般式(1)中、NXは保護されたアミノ基を表し、Yは保護基を表し、Rは、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アルコキシ基,チオアルコキシ基,置換基を有してもよいアミノ基からなる群から選択される置換基を示す。)で表されるシス-3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体の製造方法であって、
請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法によって、下記一般式(2)
【化6】

(上記一般式(2)中、Xはジアラルキル基を表し、Yはカルバメ-ト系保護基を表し、Rは、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アルコキシ基,チオアルコキシ基,置換基を有してもよいアミノ基からなる群から選択される置換基を示す。)で表されるα,β-不飽和カルボニル化合物を合成する工程と、
前記α,β-不飽和カルボニル化合物をアザマイケル反応によって環化する工程とを含む
製造方法。
【請求項9】
前記カルバメ-ト系保護基は、ベンジルオキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、その他のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記一般式(2)のRを立体的にかさ高い置換基とすることによって、ジアステレオ選択性を向上させることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
下記一般式(1)
【化7】

(上記一般式(1)中、NXは保護されたアミノ基を表し、Yは保護基を表し、Rは、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アルコキシ基,チオアルコキシ基,置換基を有してもよいアミノ基からなる群から選択される置換基を示す。)で表されるトランス-3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体の製造方法であって、
請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法によって、下記一般式(2)
【化8】

(上記一般式(2)中、Xはジアラルキル基を表し、Yは水素原子を表し、Rは、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アルコキシ基,チオアルコキシ基,置換基を有してもよいアミノ基からなる群から選択される置換基を示す。)で表されるα,β-不飽和カルボニル化合物を合成する工程と、
前記α,β-不飽和カルボニル化合物をアザマイケル反応によって環化する工程とを含む
製造方法。
【請求項12】
下記一般式(1)
【化9】

(上記一般式(1)中、NXは保護されたアミノ基を表し、Yは保護基を表し、Rは、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アルコキシ基,チオアルコキシ基,置換基を有してもよいアミノ基からなる群から選択される置換基を示す。)で表されるトランス-3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体の製造方法であって、
請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法によって、下記一般式(2)
【化10】

(上記一般式(2)中、NXおよびNHYは、カルバメ-ト系保護基によって保護されたアミノ基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよく、Rは、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アルコキシ基,チオアルコキシ基,置換基を有してもよいアミノ基からなる群から選択される置換基を示す。)で表されるα,β-不飽和カルボニル化合物を合成する工程と、
前記α,β-不飽和カルボニル化合物をアザマイケル反応によって環化する工程とを含む
製造方法。
【請求項13】
上記一般式(2)中、NXのカルバメ-ト系保護基とNHYのカルバメ-ト系保護基は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、ベンジルオキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、その他のアルコキシカルボニル基からなる群から選択される、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記一般式(2)中のRを立体的にかさ高い置換基とすることによって、ジアステレオ選択性を向上させることを特徴とする、請求項11または12に記載の製造方法。
【請求項15】
下記一般式
【化11】

(上記一般式中、NXは保護されたアミノ基を表し、Yは保護基を表し、Rは、水素原子,炭素数1-10個の分岐または直鎖のアルキル基,炭素数3-8個のシクロアルキル基,置換基を有してもよいフェニル基,アラルキル基,アルコキシ基,チオアルコキシ基,置換基を有してもよいアミノ基からなる群から選択される置換基を示す。)で表されるシス-3-アミノピペリジン-2-カルボン酸誘導体の製造方法であって、
オルニチンのエステルを環化して環化化合物を合成する工程と、
前記環化化合物の3位のアミノ基にジアラルキル基を導入する工程と、
前記環化化合物の1位の窒素原子にカルバメ-ト系保護基を導入する工程と、
前記環化化合物の2位のカルボニル基を還元してアミナ-ルに変換する工程と、
前記アミナ-ルを、過剰量の塩基存在下、ホスホネ-トイオンを使用したホ-ナ-・ワズワ-ス・エモンズ反応によって増炭するとともに、アザマイケル反応を進行させて環化する工程と
を含む製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【公開番号】特開2011−57639(P2011−57639A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210905(P2009−210905)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年3月13日、社団法人日本化学会発行の、日本化学会第89春季年会予稿集DVD−ROMにて発表、該当ページ 2J5−42,2J5−43
【出願人】(391022614)学校法人幾徳学園 (19)
【Fターム(参考)】