説明

光学照光装置及び方法

サンプル36の二次元領域から光を検出するための光学システムは、サンプルの収集領域から光を収集するための収集レンズ34を有する。光検出器44はサンプルに対して位置的に固定であり、そして反射体配置61は収集された光を検出器に導く。反射体配置は可動コンポーネントを有し、収集レンズ34はサンプルに対して可動である。収集レンズ及び可動コンポーネントは異なる収集領域を定めるように設定可能であり、そしてコンポーネントの動きは収集領域から実質的に変化しない光検出器44の領域への光の経路に変化を生じさせる。この装置は、サンプル全体を走査することによって形成される二次元サンプル領域から信号を検出するための扱いにくい検出器の必要性を回避する。これは、よりコンパクトで、より安価かつより単純なソリューションを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学照光装置及び方法に関する。例えば、光学照光は、蛍光検出システム及び方法に用いられる。
【背景技術】
【0002】
蛍光検出の使用の例は、核酸検査(NAT)である。これは、疾患に対する遺伝性素因を検出するため、RNA発現レベルを決定するため、又は感染を引き起こす細菌及びウイルスのような病原体の同定のための、分子診断における核心要素である。
【0003】
多くの場合、特に、病原体の同定において、適当なサンプルボリューム中に存在するターゲットDNAの量は非常に少なく、これは直接検出を可能にしない。検出可能な量のターゲット材料を得るために、増幅技術が必要である。さまざまな増幅技術が提案されて、日々の実務において用いられている。最も広く用いられるものは、いわゆるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく。
【0004】
増幅は、上昇する温度(一般的に摂氏90度以上)での二本鎖DNAの変性、低下した温度(約65度)におけるDNAサンプルに対するプライマの特異的結合、及び、(約70度における)プライマ位置から始まる元の配列の複製を含む。この手順が繰り返されて、そしてサイクルごとに、特定の配列を有するDNAの量が2倍になる(100%の効率で進行する場合)。
【0005】
増幅の後、ターゲットDNAの存在は、例えば毛細管における電気泳動分離の後、又は、増幅生成物がその上を流される表面上のスポットに適用されるいわゆる捕捉プローブへのハイブリッド形成の後、ラベル付けされている増幅されたDNAの蛍光強度を測定することによって検出される。
【0006】
本発明は、サンプルに照光を供給するために使用される装置及び使用方法に関する。
【0007】
蛍光検出のための標準的な技術は、走査共焦点顕微鏡の使用である。一般的に、小さい(<1μm)回折限界スポットが、焦点面における蛍光を励起するために用いられる。システムの検出部において、この単一の励起位置に由来する光のみが検出される。
【0008】
複数のスポット又は平行な完全なラインの励起が、検出システムの共焦点性(confocality)への重大な影響を伴わずに、走査速度の増加を可能にすることがすでに提案されている。画素化された検出器が、蛍光性放射を検出するために用いられることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
カメラの主な短所は、読出し速度と、これらの検出器が扱いにくく高価であることである。励起ラインに沿った空間分解能を犠牲にすることによってこれらの問題を解決することが本発明の目標である。よりコンパクトなソリューションが、ポイント・オブ・ケア(Point of Care)検査ソリューションにとって重要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、サンプルの二次元領域からの光を検出するための光学システムが提供され、当該光学システムは、
- サンプルの収集領域から光を収集するための収集レンズ、
- サンプルに対して位置的に固定されて用いられる光検出器、
- 収集された光を検出器へと導くための反射体配置、
を有し、
反射体配置は可動コンポーネントを有し、収集レンズはサンプルに対して可動であり、
収集レンズ及び可動コンポーネントは、異なる収集領域を定めるように設定可能であり、
コンポーネントの動きは、収集領域から光検出器の実質的に変化しない領域への光の経路に変化を生じさせる。
【0011】
この配置は、サンプル全体を走査することによって形成される二次元サンプル領域からの信号を検出するための扱いにくい検出器の必要性を回避する。これは、よりコンパクトで安価であり、そしてより簡素なソリューションを可能にする。
【0012】
反射体配置は、垂直平面に前記収集された光を反射する第1反射体及び第2反射体、並びに、第2反射体から出力された前記収集された光を検出器へと導く第3反射体を有することができる。垂直な反射面の使用は、1つの反射体が、他の反射体の入出力ビームの位置に影響を及ぼさずに、線形に移動することができることを意味する。したがって、第1反射体及び第2反射体は、好ましくは、反射された前記収集された光の軸に沿って可動である可動コンポーネントからなる。第3反射体に入力されて第3反射体から出力される光の位置は静的であり、小さな静的検出器が用いられることができる。
【0013】
システムは、サンプルを照らす照光システムをさらに有することができ、
当該照光システムは、
-光源、及び
-反射体配置に光源出力を導くための装置、
を有し、
反射体配置は光源出力をサンプルに導く。
【0014】
したがって、同じ反射体配置が、サンプルを照らすため、及びサンプルからの光(例えば照光に応じて生成される励起光)を収集するために用いられる。
【0015】
反射体配置は、ここでも、垂直平面に収集された光を反射する第1反射体及び第2反射体、並びに、第2反射体から出力された前記収集された光を検出器へと導く第3反射体を有することができる。加えて、波長依存反射体が設けられることができる。この配置は、
- サンプルと検出器との間の第1の収集光経路が、波長依存反射体の透過、第1反射体における反射、第2反射体における反射、及び、第3反射体における反射を含み、
-反射体配置への入力とサンプルとの間の第2の光源光経路が、第2反射体における反射、及び、波長依存反射体における反射を含む、
ことを定めることができる。
【0016】
これらの2つの経路は、経路間の波長選択性によって、サンプルへの励起光のルーティング及び光の収集を提供する。第2の経路は、好ましくは、第3反射体及び第1反射体をはずれる。
【0017】
反射体配置は、第2の光源経路中にのみ円柱レンズをさらに有することができる。これは、サンプルを照らすために用いられるライン形の照光を可能にする。
【0018】
システムは蛍光検出システムを有することができ、前記照光システムは、蛍光を発生させるためのサンプルの励起のためのシステムである。収集領域は、回折限界の幅のラインからなることができる。
【0019】
検出器の感光性領域は、反射体配置によって検出器に供給される照光のサイズ及び形状に好ましくは適合される。例えば、検出器は、単一の感光性領域(例えばフォトダイオード)を有することができる。検出器は、検出面上に焦点を合わせる結像レンズをさらに有することができる。
【0020】
本発明はさらに、サンプルからの光を収集する方法を提供し、当該方法は、
- サンプルの連続する収集領域から光を収集するために収集レンズを走査し、
- 収集された光を検出器に導くために反射体配置を用い、
反射体配置は可動コンポーネントを有し、収集レンズはサンプルに対して可動であり、当該方法は、異なる収集領域を定めるように収集レンズ及び可動コンポーネントを設定し、前記コンポーネントの動きは、前記収集領域から前記光検出器の実質的に変化しない領域への光の経路に変化を生じさせる。
【0021】
本発明はさらに、サンプルからの蛍光を測定する方法を提供し、当該方法は、
- サンプルにわたって光学信号を走査し、それによって収集領域に励起放射を供給し、
- 本発明の収集方法を用いて、励起誘導蛍光によってサンプルの分析領域から放射される光を収集し、
- 収集された光を検出する。
【0022】
本発明の例は、以下で添付の図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】DVD光学システムに基づく既知の蛍光スキャナを示す図。
【図2】本発明の光学走査装置を用いる共焦スキャナの例を示す図。
【図3】図2のシステムにおいて使用される検出器を更に詳細に示す図。
【図4】共焦走査に対する要件を説明するために用いられる図。
【図5】用いられることができる検出増幅器の例を示す図。
【図6】図5の回路中のそれぞれのポイントにおける信号のプロットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
一般に、本発明は、サンプルから光を収集するための光学システムに関連する。反射体配置は、収集された光を検出器に導いて、サンプル上の異なる収集領域を定めるように構成可能である。反射体配置のコンポーネントの移動は、収集領域から光検出器の実質的に変化しない領域への光の経路の変化を生じさせる。
【0025】
本システムは、バイオセンシング手順の一部としての以降の検出のために、サンプルにおいて蛍光を励起するために用いられることができる。
【0026】
対物レンズによる光放射によって蛍光色素分子を励起して、例えば反射モードにおいて同じレンズを通してルミネセンスを収集することによって、装置中の蛍光色素分子を検出するための方法が知られている。ルミネセンス放射は、適切な波長帯を選択するためのフィルタ装置を通過した後に、センサ装置上へ投射される。レンズは、関連するサンプル上の走査を可能にするために、異なる駆動手段によって3つの方向に制御された態様で動かされることができる。共焦点撮像装置が一般的に用いられる。
【0027】
図1は、DVD光学システムに基づく既知の蛍光スキャナの基本的なコンポーネントを示す。調査されるサンプルは、基板12の近くに微小流体部分10を形成する所与のボリュームに閉じ込められる。レーザのような光源14によって生成される光が、蛍光を励起するために用いられる。光は、コリメータレンズL1によってコリメートされて、その後、励起レンズ16によってサンプル中に焦点を定められる。
【0028】
レンズ16は、好ましくは三次元の全方向に、サンプルに対して移動することができる。この相対的な動きは任意に分離されることができ、例えば、サンプルはx-y平面中を動き、レンズはz方向に動くことができる。別の態様では、サンプルは固定されることができ、そしてレンズはそれ自体で全ての3つの自由度(x-y-z)を持つ。任意の他の配置も可能である。
【0029】
レーザ光は、偏光ビームスプリッタPBS(すなわち偏光依存反射体)によって反射され、そして1/4波長板λ/4及び第1バンドパスフィルタBP1を通過する。
【0030】
ダイクロイックビームスプリッタDBS(すなわち波長依存反射体)は、レーザ光を励起レンズ16に導く。
【0031】
(サンプルに焦束される励起光の結果として)引き起こされた蛍光は、この例では励起レンズ16と同じコンポーネントである収集レンズによって収集され、そして検出器18の方へ導かれる。
【0032】
任意の反射された吸収されていないレーザ光はビームスプリッタDBSによって再び反射され、一方、蛍光輝度はビームスプリッタDBSを通過する。第2バンドパスフィルタBP2は更なるフィルタリングを提供し、そして光は、検出器上へサンプルを結像する結像レンズL2によって検出器28に焦束される。
【0033】
多くの異なるタイプの検出器(例えば光子増倍管、アバランシェ光子検出器、CCD検出器又はフォトダイオード検出器) が、用いられることができる。
【0034】
共焦点撮像では、励起ボリュームは最小限に維持され、理想的には、励起レンズ16が生成することができる回折限界スポットに維持される。典型的な共焦点ボリュームは立方ミクロンのオーダーであり、励起レンズ16の力(開口数NA)によって決まる。このボリューム中で生成される蛍光は、収集レンズによって収集されて、検出器上に結像される。共焦点方法において、焦点は、検出経路中のポイントと焦点を共有する。検出経路中のこの点で、焦点とは別の位置に由来する任意の光を除去するために、小さいピンホールが一般的に配置される。
【0035】
ピンホールを通過する光は、検出器の方へ導かれる。検出器自体がピンホールの役割を担うことが可能であるが、検出器の横方向サイズが、「結像レンズL2の焦点距離」によって割られる「収集レンズ16の焦点距離によってスケーリングされる焦点のサイズ」と一致しなければならないという制限を伴う。
【0036】
この共焦点モードは、エンドポイントバイオ実験の結果として、表面固定アッセイを調査するために最も適している。表面は、全サンプルを分析するためにスキャンされる。
【0037】
検出器の横方向の大きさは、収集レンズ16及び結像レンズL2の視野を考慮して設計される。
【0038】
制御装置19は、検体に接触する分析装置の内側表面に、同表面をスキャンする間、対物レンズの焦点を正確に維持する。対物レンズの焦点は、故意にオフセットされることもできる。
【0039】
本発明は、図1を参照して説明される回折点分析装置に適用されることができる。
【0040】
しかしながら、複数のスポット又は完全なラインを並列に用いてサンプルを照らすことが提案される。これは、分析時間を低減することを可能にする。共焦点スポットではなく共焦点ラインの形の励起ビームが用いられることができる。
【0041】
本発明は、共焦点ライン励起システムを参照して説明される。基本システムが図2に示される。
【0042】
図2の例は、光学部品の一部が固定されて光学部品の一部が移動する、分割光学設計を用いる。
【0043】
システムの基本的な機能は、図1を参照して説明されたものと同様である。したがって、レーザ20からの光は、平行な励起ビーム22を形成するために、レンズ21でコリメートされる。この光は、偏光ビームスプリッタ23によって反射されるように偏光している。光はそれから1/4λ板24を通過して、結果として円偏光になる。次に、光は、励起光から任意の望ましくない波長を排除するために、バンドパスフィルタ25を通過する。光はそれからスキャナ40へと渡される。
【0044】
スキャナ40は、共焦点ライン走査を実現して、さらに本発明の単純化された検出装置を実現する。
【0045】
図3は、さらに詳細にスキャナ40を示し、スキャナ中の光路を示す。
【0046】
入力光23は、ミラー42上を通過して、ミラー31によって反射される。円柱レンズ32は、共焦点ラインへの変換を提供するために、一方向に光を屈折させる。そして光は、ダイクロイックミラー33によって反射されて、対物レンズ34によってサンプル36上に焦束される。
【0047】
レンズ32によって実現される一方向の発散のため、焦点は、結果としてライン35になる。蛍光分子は、この励起光によって励起される。
【0048】
蛍光はより長い波長を持ち、そして図1の例のように、これは蛍光が波長依存コンポーネントによって、励起経路と異なる経路をたどることを可能にする。
【0049】
対物レンズ34は、サンプル上でのフォーカシングを可能にするために、深さ方向71に(サンプルに垂直に向うように、又はサンプルから垂直に離れるように)動かされることができる。加えて、方向72にレンズ34を動かすことによって、サンプル上のライン35は、焦点ラインの長軸に対して垂直な方向72に動かされることができる。したがって、方向72の単軸走査は、サンプルの二次元領域の励起を可能にする。
【0050】
蛍光と反射光の両方が、対物レンズ34で収集される。反射光は、ダイクロイックミラー33によって再び反射されて、再び円柱レンズ32を通過する。これは、一方向に僅かに収束するビームをもたらす。そして、光はミラー31によって反射されて、図2のビーム26のように再び光学部品に入る。
【0051】
図2を参照して、この光は、それから再びバンドパスフィルタ25及び1/4λ板24を通過する。この光は、1/4λ板を2回通過したので、元のレーザ光線に対して90°回転し、したがって今では偏光ビームスプリッタ23を透過する。
【0052】
反射光の一部は、ビームスプリッタ27によって反射される。これは、レンズ28aによってフーコープリズム29を通って分れた検出器30a上に焦束される。この検出器からの信号は、光をサンプル36上へ自動に焦束するために用いられる。
【0053】
ビームスプリッタ27に当たった光の一部は透過し、レンズ28bによって分れた検出器30b上に焦束される。この分れた検出器の信号は、サンプル36上の特徴の追跡を可能にするために用いられる。
【0054】
図3に戻って、蛍光は、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー41によって反射される。それからこの光は、ミラー31上で入力光の下で反射されて、その結果、ミラー42によって反射される。フィルタ45は、励起光から蛍光をさらに分離するために用いられる。レンズ43は、光を検出器44に投射するために用いられる。円柱レンズ32は、サンプル36上のラインの照光をもたらし、そして検出器44上の画像はこのラインの投射である。
【0055】
スキャナ40が2つの光学経路を実現することが分かる。1つは、サンプル36と検出器44との間の収集光のための経路である。これは、波長依存反射体33による透過、第1反射体(ミラー41)における反射、第2反射体(ミラー31)における反射及び第3反射体(ミラー42)における反射を有する。他方の経路は、反射体配置23への入力とサンプル36との間の光源光路である。これは、第2反射体(ミラー31)における反射及び波長依存反射体33における反射を有する。この第2の経路は、第3反射体(ミラー42)及び第1反射体(ミラー41)をはずれるが、円柱レンズ32を含む。
【0056】
61としてラベル付けされるボックス中に示されるコンポーネントは、共に反射体配置を定めるとみなされることができる。2つのミラー31及び41は、垂直平面に収集された光を反射する。これにより、ミラー41に対する入出力光ビームは、このミラーの表面に対する法線を含む第1平面中にあることを意味する。ミラー31に対する入出力光ビームは、このミラーの表面に対する法線を含む第2平面中にあり、そして第1平面及び第2平面は互いに対して垂直である。このようにして、(直角のコーナーを持つ)三次元のZ形状の経路が、図3で分かるように定められる。これは、1つの軸に沿ったラインビームの走査を提供するために、各々のミラーが独立に調整されることができることを意味する。さらに、ラインビームがサンプル全体にスキャンされる場合であっても、ミラー42に対するビームの位置は変化しないことを意味する。
【0057】
サンプルの画像を構築するために、選択項目50中の素子(レンズ34、円柱レンズ32、反射体41及び波長依存反射体33)は、矢印51によって示される方向に動かされる。この方向は、円柱レンズ32によって生成されるラインの方向に対して垂直であり、そしてミラー41によって反射された収集光の経路に対して平行であり、すなわち波長依存反射体33に入射する励起光の経路と平行である。これは、励起ラインの軸に沿った第1方向における走査を可能にする。
【0058】
垂直な方向に走査するために、選択項目50の素子は、62として示される方向にミラー31と共に動かされる。これは、ミラー31へ入力する励起光と平行であり、すなわち、ミラー31によって反射された収集光と平行である。
【0059】
この配置は、サンプル上の異なる位置を測定する間、検出器44上の画像及び図2に示される他の光学コンポーネント上の光が移動しないことを保証する。走査の間、検出器は、特定の積分時間/帯域幅で読み出される。
【0060】
したがって、反射体配置は、関連するサンプル上のラインビームの走査を可能にする。加えて、共有された光学コンポーネントは、検出器44に供給されるビームが変化しないままであることを保証する。
【0061】
本発明のこの実施態様は、したがって、検出器44としての単純なフォトダイオードと組み合わせて、並列励起アプローチの使用を可能にする。検出器の有効領域の形状は、照光スポットの形状に適合され、これは変化しないままである。
【0062】
共焦点動作のために、検出器のフォトダイオードの形状及びサイズを励起ラインのサイズに適合させることが重要である。これは、共焦点顕微鏡の光路を示すことによって共焦点検出の一般的な原理を示す図4から分かる。
【0063】
図4aに示されるように、レーザ100からの光201は、レンズ102によって基板103上に焦束される。励起焦点において生成される蛍光202は、ダイクロイックミラー101を介して、レンズ102によって検出器104上に結像される。
【0064】
図4bは、検出器面における光を示す。焦点の合った光は小さいスポット301に焦束され、そして、焦点がずれた寄与203は結果として検出器面上のより大きいスポット302をもたらす。サンプルを照らすためにラインが用いられる場合、結果として生じる蛍光も、検出器面304において細いラインを形成し、この状況は図4cに示される。ここでも、レンズ(102)の焦点面の外側で生成される蛍光は、検出器面におけるより大きいスポット303を形成する。
【0065】
バックグラウンドを排除するために、検出器のサイズ及び方向が検出器面における蛍光ラインに適合されることを保証することが重要である。基板上の励起ラインは、大体100 μm×1 μmであることができる。検出経路において10倍の倍率が用いられる場合、蛍光は大体1 mm x 10μmのストライプを検出器上に形成する。
【0066】
このサイズの有効領域を有するダイオードを製造することは、原則として可能である。この利点は、有効領域が非常に小さく、結果として暗電流が低減されることである。しかしながら、特別なダイオードを設計することができない場合、有効領域の一部がマスクされるダイオードを用いることが可能である。これは、ダイオード上に(金属)マスクを直接追加することによって、又はダイオードの前に狭いスリットを有するスクリーンを配置することによって、実行されることができる。その場合、(図3中の)レンズ43の焦点は、スリットの開口と一致しなければならない。そしてダイオードは、スリットを通過する全ての光が収集される限り、スリット後の任意の距離で配置されることができる。
【0067】
検出された信号は、好ましくは、積分増幅器を用いて読み出される。これは、関連する電流レベルが低いために好ましい。例えば、生成される蛍光の量は、700nmで約200fWである場合がある。これは、結果として約100fAの電流信号になる。
【0068】
この電流は、原則として、相互インピーダンス増幅器によって電圧に変換されることができる。しかしながら、そのような増幅器に関する問題は、必要とされる大きい抵抗によって大量の雑音が追加されることである。より良い方法は、小さい積分コンデンサC(例えば100pF)を備えた、図5に示されるような積分演算増幅器の使用である。これは、電流を、高速かつ正確なD/A変換器によって測定されることができる電圧に変換する。
【0069】
図6は、100fAの最大信号強度及び150μmの直径を示す3つの領域がサンプル表面に定められるシミュレーションに基づいて、図5の回路中に現れるさまざまな波形を示す。シミュレーションの間、サンプルは、1mm/sの速度で走査された。
【0070】
図5の回路は、励起された蛍光から光子を受け取るための検出器44を有する。結果として生じる入力電流が図6aに示される。
【0071】
反転入力へのフィードバック経路中に並列のキャパシタC及びスイッチSを伴う演算増幅器が80として示される。これらは、演算増幅器パッケージのオンチップコンポーネントであることができる。ADC82は、図6bに示されるように、サンプリングされた積分器出力を出力として提供する。シミュレーションにおいて、現実の測定からの雑音がこの信号に追加された。
【0072】
ブロック84におけるシリアル処理、(60Hz及び120Hzにおける)ローパスフィルタリング並びにDeltaT=7.3ミリ秒による微分の後、図6cに示される出力が生じる。それぞれのスポットは、バックグラウンドから明確に区別されることができる。
【0073】
本発明は、特にポイント・オブ・ケア検査環境における使用のために、コンパクトな光学バイオセンサの分野において用いられることができる。そのようなバイオセンサは、分子診断の分野において、異なるタイプの分子(例えばタンパク質、DNA/RNA及び小分子)を検出するために用いられることができる。
【0074】
光学システムは、標準的なCD/DVDプレーヤ/ライタの光学部品に基づくことができる。
【0075】
上述の例では、レンズ34は、励起光及び蛍光の両方のために用いられ、そして、焦点合わせ及び信号の追跡のためにも用いられることができる。個別のレンズが、例えば、照光の非垂直方向によって、又は透過モードにおける動作によって、励起光及び蛍光のために用いられることができる。
【0076】
本発明は、共焦点走査/ライン走査に特に興味がある。しかしながら、さらに一般的にいえば、本発明は、サンプル上での光学収集装置の走査に関連し、検出器開口がサンプルの走査される領域のサイズに一致されることができるように、収集される信号は静止した検出器上の同じ位置に経路を定められる。このコンセプトは、励起光がサンプルに供給される蛍光検出のために用いられることができるが、例えばルミネセンスを検出するために励起が必要とされない光収集のためにのみ用いられることもできる。
【0077】
上で説明される例における走査は2方向であることができる。しかしながら、特に共焦点ライン収集領域が用いられる場合、1方向のみにおける走査で十分である場合がある。本発明はさらに、サンプル上で共焦点収集スポットを走査するシステムに適用されることができる。
【0078】
本発明の好ましいアプリケーションは、分子診断、臨床診断、ポイント・オブ・ケア診断、高度バイオ分子診断研究及び光学バイオセンサの分野であり、特に、PCR、q-PCRなどのような増幅方法と組み合わせたDNA検出に関する。本発明はさらに、例えば病理学目的のために細胞及び/又は組織を撮像するラインスキャナとして用いられることができる。この走査はさらに、タンパク質を検出するために、イムノアッセイにおける検出のために用いられる。
【0079】
上述の詳細な例は単なる一例である。全部の光学部品が走査されるシステム、又はサンプルが光学部品に関して走査されるシステムのような、多数の他の設計が可能である。
【0080】
上述の例は、ライン形の励起光及び収集領域を生成するために円柱レンズを用いる(実際には、このラインは、円柱レンズ及びサンプルレンズの合成伝達関数の結果である)。円柱レンズの代わりに位相板が用いられることができる。
【0081】
さまざまな他の変更は、当業者にとって明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの二次元領域からの光を検出するための光学システムであって、
前記サンプルの収集領域からの光を収集するための収集レンズ、
前記サンプルに対して位置的に固定されて用いられる光検出器、
収集された光を前記検出器に導くための反射体配置、
を有し、
前記反射体配置は可動コンポーネントを有し、前記収集レンズは前記サンプルに対して可動であり、
前記収集レンズ及び前記可動コンポーネントは、異なる収集領域を定めるように設定可能であり、
前記コンポーネントの動きは、前記収集領域から前記光検出器の実質的に変化しない領域への光の経路に変化を生じさせる、光学システム。
【請求項2】
前記反射体配置は、垂直平面に前記収集された光を反射する第1反射体及び第2反射体、並びに、前記第2反射体から出力された前記収集された光を前記検出器に導く第3反射体を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1反射体及び前記第2反射体は、可動のコンポーネントからなり、反射された前記収集された光の軸に沿って可動である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記サンプルを照らすための照光システムをさらに有し、当該照光システムは、光源及び光源出力を前記反射体配置へと導くための装置を有し、
前記反射体配置は前記光源出力を前記サンプルへと導く、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記反射体配置は、垂直平面に前記収集された光を反射する第1反射体及び第2反射体、前記第2反射体から出力された前記収集された光を前記検出器に導く第3反射体、並びに、波長依存反射体を有し、
前記サンプルと前記検出器との間の第1の収集光経路は、前記波長依存反射体の透過、前記第1反射体における反射、前記第2反射体における反射、及び、前記第3反射体における反射を含み、
前記反射体配置への入力と前記サンプルとの間の第2の光源光経路は、前記第2反射体における反射、及び、前記波長依存反射体における反射を含む、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2の経路は、前記第3反射体及び前記第1反射体をはずれる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記反射体配置は、前記第2の光源経路のみに円柱レンズ又は位相板をさらに有する、請求項5又は請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
蛍光検出システムを有し、前記照光システムは、蛍光を発生させるための前記サンプルの励起のためのシステムである、請求項5から請求項7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記収集領域は回折限界の幅のラインからなる、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記検出器の感光性領域が、前記反射体配置によって前記検出器に供給される照光のサイズ及び形状に適合する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記検出器が単一の感光性領域を有する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記検出器がフォトダイオードを有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記検出器が、検出面上に焦点を合わせる結像レンズを有する、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
サンプルからの光を収集する方法であって、
前記サンプルの連続する収集領域から光を収集するために収集レンズを走査し、
収集された光を検出器へと導くために反射体配置を用い、
前記反射体配置は可動コンポーネントを有し、前記収集レンズは前記サンプルに対して可動であり、
当該方法は、異なる収集領域を定めるように前記収集レンズ及び前記可動コンポーネントを設定し、
前記コンポーネントの動きは、前記収集領域から前記光検出器の実質的に変化しない領域への光の経路に変化を生じさせる、方法。
【請求項15】
サンプルからの蛍光を測定する方法であって、
前記サンプルにわたって光信号を走査し、それにより収集領域に励起放射を供給し、
請求項14に記載の方法を用いて、励起誘導蛍光によって前記サンプルの分析領域から放射される光を収集し、
収集された光を検出する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6a−6c】
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【公表番号】特表2011−521269(P2011−521269A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511122(P2011−511122)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052055
【国際公開番号】WO2009/144614
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】