説明

光学用フィルム

【課題】 LCD等の高品質な光学用途に安定して使用しうる光学用フィルムとその製造方法を提供する。
【解決手段】 上記課題は、
フィルムの少なくとも片面の5m当りの最大キズの大きさが1個単独あるいは複数のキズが結合して形成された1個のキズが長さ50μm以下、幅15μm以下、深さ0.1μm以下であるセルロースアセテートフィルムと、
フィルムを溶液製膜法で製造する際の乾燥工程において、駆動サクションロールの表面温度及び該駆動ロール直前のフィルム温度を150℃未満とし、サクション圧力を50mmAq〜450mmAqとし、かつ該駆動ロール表面温度とフィルムの温度差を50℃未満とすることを特徴とする厚さ20〜200μmのセルロースアセテートフィルムからなる上記の光学用フィルムの製造方法、
によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、溶液製膜法による該フィルムの製造方法、及び該フィルムが装着されている偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、光学用フィルムとして使用されているセルロースアセテート、ポリカーボネート、セロファン等のフィルムの一部は溶液製膜法で製造されている。この溶液製膜法は、ダイから流延されたポリマー溶液のフィルムをベルト式又はドラム式の支持体で支持して搬送しながら固化し、支持体から剥ぎ取って乾燥するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記のフィルムをLCD等の高品質な光学用途に用いた場合、従来は問題にならなかった極微細なキズが問題になることが判明した。
【0004】
本発明の目的は、LCD等の高品質な光学用途に安定して使用しうる光学用フィルムとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
通常、スリキズはフィルムとパスロールあるいは駆動ロールとのスリップで発生する。この場合はフィルムの速度とパスロールあるいは駆動ロールの周速が同一となるよう保持力を調整するが、この操作を完全に行ったとしても微小なスリキズが残り、このスリキズも極めて均一な光学特性が要求される偏光板用等のフィルムとしては問題になることがわかった。そこで、本発明者はこの微小なスリキズの発生原因を追求した結果、次のことが判明した。
【0006】
すなわち、この微小なスリキズは、
(1)駆動ロール(サクションドラム)の孔部でフィルムが吸引される際に生じる微小スリップ
(2)前後でテンション差が大きい駆動ロール上でフィルム幅が変わることによる微小スリップ
が原因であった。これらのスリップは本質的に避けることはできない。ただし、スリキズの大きさを明確にし、設備・条件を最適化することにより実質欠陥とならないレベルまで改良することができることがわかった。
【0007】
まず、(1)の微小スリップによるスリキズは、サクション孔を有しない駆動ロールを使用すれば、避けることができるが、この場合は、通常プレスロールが必要となり、押しキズ等の致命的な故障が発生しやすく好ましくない。一方、サクション圧力、フィルム面硬さ(フィルム温度、残留揮発分等)を調整することにより光学用途において欠陥が認められないフィルムを得られることがわかった。厚み20μm〜200μmのセルロースアセテートフィルムにおいては、駆動ロールの表面温度およびフィルム温度を150℃未満とし、サクション圧力を50mmAq〜450mmAqにするとともに、駆動ロール表面温度とフィルムの温度差を50℃未満とすることでスリキズの大きさを上記サイズ以下にすることができた。
【0008】
すなわち、一般にサクション圧を上げると、キズは深くなる。また、フィルムの剛性が小さい場合は、サクション圧を上げると、サクション穴周辺のフィルムが吸引により移動し、長さも長くなる。但し、フィルム剛性が高い場合は、適切なサクション圧であればむしろフィルムが固定され、長さも小さくなる。サクション圧が小さすぎる場合は、全体の保持力が低下し、駆動ロールとフィルムのスリップによるキズが生じる。
【0009】
フィルム面硬さ、剛性は一般に大きい方が有利である。フィルム温度が上昇しあるいは残留揮発分が上昇すると、フィルムの面硬さが低下しキズがつきやすくなる。また、駆動ロール温度とフィルムで温度差が大きい場合は、接触時フィルムの寸法が変化し、やはりキズが生じる。
【0010】
(2)の微小スリップによるスリキズもその大きさを上記サイズ以下とすることにより、製品上問題とならないことがわかった。また、上記セルロースアセテートフィルムにおいて、駆動ロール前後のフィルムの温度差を60℃以下とし、前後のテンションによる応力差を0.1kg/mm未満とすることで、スリキズの大きさを上記サイズ以下にすることができた。
【0011】
さらに、フィルム中(表層のみでも全層でも可)に0.01μmから10μmの固体微粒子を分散させることにより、フィルム表面に微小な凹凸が形成され、スリキズがつきにくくなり、スリキズを小さくすることができることがわかった。
【0012】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものであり、
フィルムの少なくとも片面の5m当りの最大キズの大きさが1個単独あるいは複数のキズが結合して形成された1個のキズが長さ50μm以下、幅15μm以下、深さ0.1μm以下である光学用フィルムと、
フィルムの少なくとも表層に0.01μm〜10μmの固体粒子が分散され、かつヘイズが0.5以下の上記の光学用フィルムと、
フィルムを溶液製膜法で製造する際の乾燥工程において、駆動サクションロールの表面温度及び該駆動ロール直前のフィルム温度を150℃未満とし、サクション圧力を50mmAq〜450mmAqとし、かつ該駆動ロール表面温度とフィルムの温度差を50℃未満とすることを特徴とする厚さ20〜200μmのセルロースアセテートフィルムからなる上記の光学用フィルムの製造方法と、
駆動ロール(サクションロールに限定されない)前後のフィルムの温度差を40℃未満とし、前後のテンション差による応力差を0.1kg/mm未満とすることを特徴とする上記の光学用フィルムの製造方法
に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の光学用フィルムには、セルロースエステルフィルム、ポリカーボネートフィルムなどを含む。セルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステル(例、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートおよびセルロースアセテートプロピオネート)が代表的である。低級脂肪酸は、炭素原子数6以下の脂肪酸を意味する。セルロースアセテートには、セルローストリアセテート(TAC)やセルロースジアセテート(DAC)が含まれる。このフィルムの厚さは20〜500μm程度、通常20〜300μm程度であるが、本発明は特に薄いフィルム、例えば厚みが20〜200μm程度、特に20〜80μm程度のフィルムに対して有効である。本発明では、フィルム面の5m当りの最大キズの大きさを、長さ50μm以下、幅15μm以下、深さ0.1μm以下とすることにより、光学用途において欠陥が認められないフィルムを得ることができることを見出した。この最大キズは、望ましくは長さ30μm以下、幅5μm以下、深さ0.05μm以下、さらに望ましくは長さ10μm以下、幅3μm以下、深さ0.01μm以下である。
【0014】
本発明のフィルムは溶液製膜法で製膜されるものであり、まず、前記ポリマーを溶剤に溶かした溶液が作製される。
【0015】
このポリマーの溶剤としては、低級脂肪族炭化水素の塩化物や低級脂肪族アルコールが一般に使用される。低級脂肪族炭化水素の塩化物の例としては、メチレンクロライドを挙げることができる。低級脂肪族アルコールの例には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールおよびn−ブタノールが含まれる。その他の溶剤の例としては、ハロゲン化炭化水素を実質的に含まない、アセトン、炭素原子数4から12までのケトンとしては例えばメチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれ、炭素原子数3から12までのエステルとしては例えばギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル及び2−エトキシ−エチルアセテート等が含まれ、炭素原子数1から6までのアルコールとしては例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソ−プロパノール、1−ブタノール、t−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノール等が含まれ、炭素原子数が3から12までのエーテルとしては例えばジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトール等が含まれ、また炭素原子数が5から8までの環状炭化水素類としてはシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン及びシクロオクタン等が含まれる。
【0016】
溶剤としては、メチレンクロライドが特に好ましい。メチレンクロライドに他の溶剤を混合して用いてもよい。ただし、メチレンクロライドの混合率は70重量%以上であることが好ましい。特に好ましい混合率は、メチレンクロライドが75乃至93重量%、そして他の溶剤が7乃至25重量%である。
【0017】
ポリマー溶液におけるポリマーの濃度は好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上、特に好ましくは19重量%以上である。濃度の上限はポリマー溶液の流動性などによって定まり、一般に30重量%程度である。
【0018】
前述の如く、フィルムに固体微粒子を含有させることによってスリキズを小さくすることができる。この固体微粒子は無色、白色のもののみであり、例えばシリカ等である。粒径は0.01〜10μm、好ましくは0.02〜5μm程度である。固体微粒子はフィルム全体のほか表層のみでもよく、表層の厚さは5μm以上あればよい。含有させる層における固体微粒子の含有率は0.05〜1.0重量%程度、好ましくは0.07〜0.5重量%程度が適当である。
【0019】
また、可塑剤や紫外線吸収剤、劣化防止剤などの添加剤を加えてもよい。
【0020】
製膜速度vは、通常3m/分〜150m/分の範囲で設定し、好ましくは10m/分〜100m/分の範囲で設定するのがよいが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明の溶液製膜方法を実施する溶液製膜装置の一実施形態を図面を参照して説明する。図1は流延支持体として流延バンドを用いた溶液製膜装置の概略図である。
【0022】
図1において、1はミキシングタンクで、セルローストリアセテート、添加剤及び溶剤を投入してドープを調製するものである。このミキシングタンク1は、送液ポンプ2及びフィルタ3を介して流延ダイ4に連結されている。流延ダイ4の下方には、ステンレススチール製の流延バンド5が配置されており、この流延バンド5は流延部側回転ドラム6及び非流延部側回転ドラム7に巻き掛けられており、また、流延部側回転ドラム6と非流延部側回転ドラム7との間にはガイドロール8が複数設けられている。さらに、流延バンド5の上方及び下方には、流延バンド5上に流延されたドープに熱風を吹付けて乾燥させるための、乾燥風吹付け手段(図示せず)が設けられている。
【0023】
流延部側回転ドラム6及び非流延部側回転ドラム7の内部には、熱媒体を流通させる流路(図示せず)が形成されており、この流路に熱媒体を流通させることにより、流延バンド5の幅方向の温度を均一にするようになっている。
【0024】
前記流延ダイ4側の流延部側回転ドラム6に隣接して剥ぎ取りロール9が設けられ、さらに多数のガイドロール10及び巻取りロール11が設けられ、剥ぎ取りロール9と巻取りロール11間は乾燥部12となっている。
【0025】
この乾燥部12には多数のロールが設けられ、フィルムはその間を蛇行しながら走行している間に乾燥が行われる。このロールには、駆動サクションロール13、サクション機構のない駆動ロール14及び駆動力を持たないパスロール15(図1中の剥ぎ取りロール9から巻取りロール11の間の白丸で示されたロール)がある。駆動サクションロール13の形状を図2に示す。
【0026】
本発明のフィルムの製造方法は、流延されて支持体から剥ぎ取られたフィルムの上記の乾燥部に特徴がある。すなわち、厚さ20μm〜200μmのセルロースアセテートフィルムにおいては、駆動ロール(サクションロール)の表面温度及びフィルム温度を150℃未満とし、サクション圧力を50mmAq〜450mmAqにするとともに、駆動ロール表面温度とフィルムの温度差を50℃未満とするのである。
【0027】
駆動サクションロール及びフィルム温度は150℃未満であるが、好ましくは30〜140℃であり、このような温度にするには、フィルムに熱風を吹くあるいは赤外、遠赤外線ヒーター等によって加熱する、あるいはロール自体にヒートロールを用いる等の手段をとりうる。サクション圧力は50〜450mmAqであるが、好ましくは100〜350mmAgである。駆動サクションロールの表面温度とフィルムの温度差を50℃未満、好ましくは30℃未満とする。このような温度差にするには、直前にヒートロール等でフィルム温度を調整する。あるいは、直前に低温ゾーン(低温風)あるいは高温ゾーン(高温風)を設け、フィルム温度を調整する、サクションロール表面に温度コントロールされた風を吹く、あるいはサクションロール本体を温度コントロールされた雰囲気(ゾーン)に設置する、等の手段をとりうる。
【0028】
また、上記セルロースアセテートフィルムの製造方法において、駆動ロール(サクションロールに限定されない)前後のフィルムの温度差を40℃未満とし、前後のテンション差による応力差を0.1kg/mm未満とすることが好ましい。
【0029】
このような温度差にするには、恒温ゾーンを細かく仕切り、温度差が小さくなるよう各仕切り間の温度を設定する。また、温度が制御された風の吹きつけ、ヒートまたは冷却ロールの使用によりフィルム温度をコントロールする、等の手段をとりうる。また、このようなテンション差にするには、駆動ロール前後の設定テンションをテンション差が大きくならないよう設定する。一般にこの場合、テンション分離ゾーンの数を多くし(駆動ロールも増える)、各ゾーン間のテンション差が大きくならないようにする、等の手段をとりうる。
【0030】
本発明のフィルムはヘイズが0.5以下、特に0.4以下のものが好ましい。
【0031】
本発明の方法で得られたフィルムは、極めて均一な光学特性が必要で、また反射防止層等の機能性膜を精密に塗布する偏光板用の保護フィルムとして使用することができる。
【0032】
偏光板は延伸されたPVA膜と、それをサンドイッチしている保護フィルムで構成され、保護フィルムの平面性、光学特性、機械物性により大きく性能が左右される。一般に、保護フィルムには平滑な外観、均一な厚さ、異方性が小さい光学特性、適度の強度と柔軟性を有し、寸度変化が小さい物理特性が要求される。本発明のフィルムは、微小キズのある面を偏光膜との貼り合わせ面に使用するあるいはハードコート等の塗布面に使用することにより、製品欠陥をさらに避けることができる。
【実施例】
【0033】
[原料ドープの調製]
(微粒子分散液aの調製)
シリカ(日本アエロジル(株)製,『アエロジルR972』) 0.67重量%
セルロースアセテート(置換度2.8) 2.93重量%
トリフェニルフォスフェート 0.23重量%
ビフェニルジフェニルフォスフェート 0.12重量%
メチレンクロライド 88.37重量%
メタノール 7.68重量%
なる溶液を調製し、アトライターにて体積平均粒径0.7μmになるよう分散を行った。
【0034】
(原料ドープAの調製)
セルローストリアセテート(置換度2.8) 89.3重量%
トリフェニルフォスフェート 7.1重量%
ビフェニルジフェニルフォスフェート 3.6重量%
なる固形分100重量部に対し上記微粒子分散液aを17.9重量部添加し、さらに、
ジクロルメタン 92重量%
メタノール 8重量%
なる混合溶媒を適宜添加、攪拌溶解しドープを調製した。ドープの固形分濃度は18.5%であった。このドープを濾紙(東洋濾紙(株)製,『#63』)にて濾過後さらに燒結金属フィルタ(日本精線(株)製,『06N』、公称孔径10μm)で濾過し、さらにメッシュフィルタ(日本ポール(株)製,『RM』、公称孔径45μ)で濾過した。
【0035】
(紫外線吸収剤溶液bの調製)
2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 11.66重量%
2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール 5.83重量%
セルロースアセテート(置換度2.8) 1.48重量%
トリフェニルフォスフェート 0.12重量%
ビフェニルジフェニルフォスフェート 0.06重量%
メチレンクロライド 74.38重量%
メタノール 6.47重量%
上記処方で紫外線吸収剤溶液を調製し、富士写真フイルム(株)製,『アストロポア10フィルタ』にて濾過した。
【0036】
(微粒子分散・紫外線吸収剤溶液cの調製)
2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 5.40重量%
2(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール 10.79重量%
シリカ(日本アエロジル(株)製,『アエロジルR972』) 0.39重量%
セルロースアセテート(置換度2.8) 2.58重量%
トリフェニルフォスフェート 0.28重量%
ビフェニルジフェニルフォスフェート 0.14重量%
メチレンクロライド 67.71重量%
メタノール 10.86重量%
n−ブタノール 1.85重量%
なる溶液を調製し、アトライターにてシリカ粒子の体積平均粒径が0.6μmになるように分散を行った。分散後の溶液を富士写真フイルム(株)製,『アストロポア10フィルタ』にて濾過し、さらに燒結金属フィルタ(日本精線(株)製,『07N』)にて濾過した。
【0037】
<体積平均粒径の測定>
前記微粒子分散液a及び微粒子分散・紫外線吸収剤溶液cにおける体積平均粒径は、MALVERN社製,『マスターサイザーMS20』にて測定した。
【0038】
<ドープ固形分濃度の測定>
前記原料ドープAにおけるドープ固形分濃度(%)は、湿量基準で、
(ドープを120℃,2時間加熱した減量分重量)/(元のドープ重量)
×100
で求めた。
【0039】
上記のドープAに対し、スタティックミキサを用い、上記紫外線吸収剤溶液bを、ドープ中の固形分に対し紫外線吸収剤量が1.04重量%になるよう調節しつつ、ドープの配管経路において添加、混合してドープを調製した。
【0040】
このドープを支持体であるステンレススチール製のバンド上に流延して、剥ぎ取り、乾燥部で乾燥して厚みが30〜200μmのセルローストリアセテートフィルム(シリカ0.13重量%、UV吸収剤1重量%、可塑剤TPP10.7重量%を含む)を得た。その際、乾燥部の駆動ロール(図1にAで示す)の表面温度、サクションロール(図1にBで示す)のサクションロールのサクション圧、駆動ロール上流側と下流側のフィルム温度とテンションを表1の如く調整した。
【0041】
【表1】

【0042】
得られた各フィルムの厚さ、5m当りの最大キズの長さと幅と深さ、ヘイズ、使用したマット剤の粒径、このフィルムの偏光板及びLCDへの使用適性を評価した結果を表2に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
キズ測定法:
1m×5mサンプルにおける最大のキズ。
まずルーペ・顕微鏡で長さと幅を測定し、大きく強いキズを抽出し、電子顕微鏡、光干渉計でさらに詳細に測定して求めた。
偏光板適性:
得られたフィルムを偏光膜の両側に保護フィルムとして貼着して作製した偏光板を評価した。
LCD適性:
LCDにフィルムを仮装着して評価した。
評価基準:
透過でキズが認識できない。透明性・ヘイズの低下及び白濁(表面が白っぽくなり、文字等のにじみが認められること)がない。光学特性を乱さない(LCD表示時、キズを認識できない。画像に異常(色の変化、欠陥、輝点・暗点)が認められない。
マット剤:
SiO流延する前の溶液中のマット剤の粒径分布をマスターサイザーで測定するとともに、製膜後のフィルムを表面走査型電子顕微鏡で観察、大きさを測定した。
【0045】
また、セルローストリアセテートフィルム(厚さ80μm、及び40μm)において、キズ(長さ30〜50μm、幅8〜15μm、深さ0.04〜0.08μm)のある面、あるいは多い面・強い面を、偏光板作製時、偏光膜側(PVA側)にして貼り合わせたところ透過及び反射等の外観検査でキズは認められなかった。また、前記フィルムのキズ面に対して、アクリル系の樹脂で塗布を行った(樹脂層の厚み3〜4μm)ところ、やはり透過及び反射でキズは認められなかった。
【0046】
本発明により、微小スリキズを改善して高品質な光学用途にも用いることができる光学用フィルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】溶液製膜装置の一例の概略構成を示す図である。
【図2】駆動サクションロールの一例の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの少なくとも片面の5m当りの最大キズの大きさが1個単独あるいは複数のキズが結合して形成された1個のキズが長さ50μm以下、幅15μm以下、深さ0.1μm以下であるセルロースアセテートフィルム
【請求項2】
フィルムの少なくとも表層に0.01μm〜10μmの固体粒子が分散され、かつヘイズが0.5以下の請求項1記載のセルロースアセテートフィルム
【請求項3】
請求項1もしくは2記載のセルロースアセテートフィルムを保護フィルムとして装着した偏光板

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−291262(P2008−291262A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157581(P2008−157581)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【分割の表示】特願2000−389767(P2000−389767)の分割
【原出願日】平成12年12月22日(2000.12.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】