説明

光学用積層フィルム

【課題】拡散フィルムとして用いたときに輝度斑が少なく、光拡散性を備え、隣接する部材との密着が抑制され、さらに生産性がよい光学用積層フィルムを提供する。
【解決手段】光拡散層およびその少なくとも一方の面に設けられた表層からなる光学用積層フィルムであって、表層はポリエステルからなり、光拡散層は表層のポリエステルより融点が5〜50℃低い共重合ポリエステルおよび光拡散粒子からなり実質的にボイドを含有しない層であり、光拡散粒子は平均粒径d50が1〜10μmの粒子であり、表層の厚みは光拡散粒子の平均粒径の0.1〜0.9倍であり、表層の十点平均粗さRzは光拡散粒子の平均粒径d50の0.1〜0.9倍であり,表面突起が表層の表面に50個/mm以上存在することを特徴とする、光学用積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の光学部材として用いられる、光学用積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、各種光学用フィルムに多く用いられている。例えば、液晶表示装置の部材として、プリズムシート、レンズシート、拡散フィルムの用途に用いられている。
【0003】
近年、液晶ディスプレイの薄型化が進んでおり、光学部材として用いられるフィルムの薄膜化と多機能化が求められている。この中、フィルム自体が光拡散性を有する光拡散性フィルムが提案されている。例えば、特開2001−272508号公報や特開2001−272511号公報には、フィルム内部に光拡散粒子を含有させることで光拡散性を付与する技術が記載され、特開2002−178472号公報には、フィルムの内部に球状または凸レンズ状の粒子を含有させることで光拡散性を付与する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−272508号公報
【特許文献2】特開2001−272511号公報
【特許文献3】特開2002−178472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光拡散フィルムでは、液晶ディスプレイのバックライトユニットに組み込んだときに、バックライトユニットでの熱や湿度によって、撓みが発生し、表示面に輝度斑を発生してしまう。また、他の部材と貼り付きやすいため、バックライトユニットへの組込み時のハンドリングが難しい。
【0006】
本発明は、液晶表示装置のバックライトユニットに、光拡散フィルムとして用いたときに輝度斑が少なく、かつ、バックライトの輝線を隠蔽することができる優れた光拡散性を備え、バックライトユニットに組み込まれるときに隣接する部材との密着が抑制され、さらに延伸工程で、フィルムのエッジ部にクリップが融着することがないことで、生産性の向上した光学用積層フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、光拡散層およびその少なくとも一方の面に設けられた表層からなる光学用積層フィルムであって、表層はポリエステルからなり、光拡散層は表層のポリエステルより融点が5〜50℃低い共重合ポリエステルおよび光拡散粒子からなり実質的にボイドを含有しない層であり、光拡散粒子は平均粒径d50が1〜10μmの粒子であり、表層の厚みは光拡散粒子の平均粒径の0.1〜0.9倍であり、表層の十点平均粗さRzは光拡散粒子の平均粒径d50の0.1〜0.9倍であり,表面突起が表層の表面に50個/mm以上存在することを特徴とする、光学用積層フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液晶表示装置のバックライトユニットに、光拡散フィルムとして用いたときに輝度斑が少なく、かつ、バックライトの輝線を隠蔽することができる優れた光拡散性を備え、バックライトユニットに組み込まれるときに隣接する部材との密着が抑制され、さらに延伸工程で、フィルムのエッジ部にクリップが融着することがないことで、生産性の向上した光学用積層フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の光学用積層フィルムは、光拡散層およびその少なくとも一方の面に設けられた表層からなる。
【0010】
[層構成]
本発明の光学用積層フィルムは、光拡散層および少なくとも一方の面に設けられた表層からなる。光拡散層の一方の面にのみ表層を設けた構成をとることができるが、好ましい構成は光拡散層の両方の面に表層を設けた構成である。この構成であると対称性がよいため平面性を維持しやすい。
【0011】
本発明の光学用積層フィルムの総厚みは、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは10〜400μmである。この範囲の総厚みであることによって、延伸性がよく生産性のよい光学用積層フィルムを得ることができる。
以下、まず表層を説明し、つぎに光拡散層を説明する。
【0012】
[表層]
表層は、ポリエステルからなる層であり、好ましくは二軸配向した層である。表層が二軸配向した層でないとフィルムの熱収縮率が高くなり耐熱性が不足し機械的特性が劣るほか、延伸時にフィルムエッヂ部分でクリップの融着が発生してフィルムの生産性が低下する。また、光学部材として光拡散フィルムやプリズムシートの用途に用いる場合にバックライトユニット内で隣接部材と過度に密着して表示面に輝度斑を発生させることになる。
【0013】
表層のポリエステルとしては、芳香族飽和ポリエステルを用いる。これは、芳香族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とからなるポリエステルである。ポリエステルとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを挙げることができる。これらは共重合ポリマーであってもよいが、ホモポリマーが好ましい。最も好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートのホモポリマーである。
【0014】
表層の厚みは、好ましくは1〜18μm、さらに好ましくは1〜10μmである。この範囲の厚みであることによって機械的強度を維持し、隣接部材との密着や生産時のクリップとの融着を防止することができる。
【0015】
表層の厚みは、光拡散層の光拡散粒子の平均粒径d50の0.1〜0.9倍である。0.1倍未満であると、光拡散粒子が表層からフィルム表面に突き出すぎて脱落してしまい、0.9倍を超えると表層から突き出しが少なく、隣接部材との密着を防止する効果を得ることができない。
【0016】
表層の十点平均粗さRzは、光拡散粒子の平均粒径の0.1〜0.9倍である。この十点平均粗さRzが0.1倍未満であると隣接部材との密着を防止する効果を得ることができず、0.9倍を超えると粒子が脱落してしまう。
【0017】
表層の表面には表面突起が50個/mm以上存在する。表面突起が50個/mm未満であると一つの突起にかかる接触面圧が高くなりフィルム表面の耐摩耗性が低下し、また、隣接部材との密着を防止する機能を得ることができない。
【0018】
[光拡散層]
光拡散層は表層のポリエステルより融点が5〜50℃低い共重合ポリエステルおよび光拡散粒子からなり実質的にボイドを含有しない層である。
光拡散層のポリエステルとして、表層のポリエステルより融点が5〜50℃低いポリエステルを用いる。本発明においては、フィルムの延伸により発生した光拡散層のボイドを、フィルムを熱処理することで消滅させて、ボイドのない光拡散層を得る。表層のポリエステルとの融点差が5℃未満であるとフィルムの機械的強度を保ったまま光拡散層のポリエステルを再融解させることができず、延伸時に光拡散粒子の周辺に発生するボイドをフィルムの熱処理によっても十分に消滅させることができず、表層のポリエステルとの融点差が50℃を超えると耐熱性が不足する。
【0019】
光拡散層には共重合ポリエステルを用いる。例えば、表層のポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートを用いる場合には、光拡散層のポリエステルとして、共重合ポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。共重合成分として、ジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の如き芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸を例示することができる。ジオール成分としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールの如き脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール、ビスフェノールAの如き芳香族ジオールを例示することができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0020】
例えば、表層のポリエステルとして、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを用いる場合には、光拡散層の共重合ポリエステルとして、共重合ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを用いることが好ましい。共重合成分として、ジカルボン酸成分としては、例えばフタル酸、イソフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸を例示することができる。ジオール成分としては、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールの如き脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール、ビスフェノールAの如き芳香族ジオールを挙げることができる。これらは単独または二種以上を使用することができる。
【0021】
光拡散層の光拡散粒子としては、好ましくは球状粒子を用いる。球状粒子は真球度の高いものほど好ましく、アスペクト比が1.1以下のものが特に好ましい。
光拡散層の光拡散粒子は、その平均粒径d50が1〜10μmである。平均粒径d50が1μm未満であると光拡散性が不足するとともに、表面粗さが十分に得られずクリップの融着が発生して生産性が低下する。他方、平均粒径d50が10μmを超えると光拡散性と表面の突起高さは十分だが全光線透過率が不足して輝度が劣り、また、光拡散粒子とポリエステルとの界面で発生するボイドが大きくなり、熱処理によってボイドを消滅させることが困難となる。なお、球状粒子は、無色透明な粒子であることが好ましい。
【0022】
光拡散粒子として、例えば、シリカ、アクリル、ポリスチレン、シリコーンの粒子を用いることができる。光拡散粒子の屈折率と光拡散層のポリエステルとの屈折率の差と、光拡散粒子の平均粒子径との積(屈折率差×平均粒子径(μm))は0.1〜0.5[μm]であることが好ましい。この範囲であると、とても良好な光拡散性を得ることができる。
【0023】
光拡散層における光拡散粒子の含有量は、光拡散層の重量を基準として、好ましくは0.01〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%である。光拡散粒子の含有量が0.01重量%未満であるとフィルムを巻き取るときのハンドリング性が劣る。他方、20重量%を越えると密着防止性および光拡散性は優れるものの、平行光線透過率が低下し液晶ディスプレイのバックライトユニットに光拡散板して用いたときに高い輝度を得ることができない。
【0024】
光拡散層は二軸延伸後に、光拡散層のポリエステルの融点より高い温度で熱処理されることによって、配向が緩和もしくは配向が無くされていることが好ましい。光拡散層に配向が残っていると光拡散粒子との界面で延伸時に発生するボイドを十分に消失させることができず、光線透過率の低下を招くことになる。
【0025】
本発明では、光拡散層に含有させる光拡散粒子によって、表層の表面を粗くしている。光拡散層に隣接する表層の十点平均粗さRzは、好ましくは500〜20000nm、さらに好ましくは、1000〜10000nmである。この範囲の十点平均粗さRzであることによって、ロールとして巻き取った場合にブロッキングが発生しない。
光拡散層の厚みは、好ましくは9〜499μm、さらに好ましくは9〜399μmである。この範囲の厚みであることによって良好な光拡散性を得ることができる。
【0026】
[製造方法]
本発明の光学用積層フィルムは、溶融押出成形によって未延伸積層シートを得、これを延伸して得ることができる。
光拡散粒子のポリエステルへの添加は、ポリエステルの重合段階で行ってもよく、ポリエステルを重合した後で溶融混練する際に添加してもよい。
例えば、真球状粒子を粉体の状態で供給する場合、原料であるポリエステル用の押出機と当該押出機に定量的に粉体供給できる供給装置を兼ね備える溶融混錬押出機を用意し、これにポリエステルと真球状粒子とを供給して溶融混錬し、押出し、冷却すればよい。
【0027】
押出機は、均一な混錬が可能で粒子の分散に効果的な二軸タイプが好ましく、例えばニーディングディスクおよび逆ねじの混錬用エレメントを配したスクリュー構成を有するベント式二軸混錬押出機を用いることができる。
溶融混練したポリエステル組成物は、フィードブロックを用いた同時多層押出法により、積層未延伸シートを製造し、これを製膜方向もしくは幅方向、好ましくはその両方向に延伸し、必要に応じて熱固定処理、弛緩処理を行い、本発明の光学用積層フィルムとすることができる。
【0028】
製膜方向の延伸としては、2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度は、好ましくはポリエステルのガラス転移点(以下「Tg」という)以上の温度、さらに好ましくはTg〜(Tg+70℃)の範囲の温度である。延伸倍率は、用途の要求特性にもよるが、製膜方向、幅方向とも、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.8〜4.0倍である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を、実施例を用いて詳細に説明する。なお、物性は以下の方法で測定、評価した。
【0030】
(1)光拡散粒子の平均粒径(d50)
フィルムに配合する粒子について平均粒径の測定は島津製作所製「CP−50型Centrifugal Particle Size Analyzer」を用いて行った。この測定器によって得られる遠心沈降曲線をもとに算出した各粒径の粒子とその存在量とのcumulative曲線から、50mass percentに相当する粒径を読み取り、この値を上記平均粒径とした(参照「粒度測定技術」、242〜247頁、日刊工業新聞社、1975年発行)。
【0031】
(2)屈折率
・光拡散層のポリエステル
溶融押出しする前のポリエステルを板状に成型して、アッベ屈折率計(D線589nm)で測定した。
・光拡散粒子
光拡散粒子の粒子を、屈折率の異なる種々の25℃の液に懸濁させ、懸濁液が最も透明に見える液の屈折率をアッベの屈折率計(D線589nm)によって測定した。
【0032】
(3)アスペクト比
フィルムを走査型電子顕微鏡用試料台に固定し、日本電子(株)製スパッタリング装置(JIS−1100型イオンスパッタリング装置)を用いてシート表面に、1×10−3torrの真空下で、0.25kV、1.25mAの条件でイオンエッチング処理を10分間施した。(株)日立製走査型電子顕微鏡S−4700にて観察し、100個の粒子について長径と短径を測定してアスペクト比を算出し、その平均値をアスペクト比とした。
【0033】
(4)ボイド
フィルムを厚み方向にミクロトームで切断し、切断面を(株)日立製走査型電子顕微鏡S−4700にて観察し、粒子もしくは非相溶樹脂ドメインの断面積に対するボイド断面積の割合を計算した。少なくとも10点について粒子もしくは非相溶樹脂ドメインの断面積に対するボイド断面積の割合を算出してその平均により、下記の評価基準でボイドを評価した。
○: ボイド断面積の割合が30%以下
△: ボイド断面積の割合が30%超、50%以下
×: ボイド断面積の割合が50%超
【0034】
(5)融点およびガラス転移温度
各層をそれぞれ分離して得たサンプル10mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(デュポン社製・V4.OB2000型DSC)に装着し、25℃から20℃/分の速度で300℃まで昇温させ、融点を測定し、300℃で5分間保持した後取出し、直ちに氷の上に移して急冷した。このパンを再度、示差熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させて、ガラス転移温度を測定した。
【0035】
(6)十点平均粗さRzおよび表面突起個数
小坂研究所社製の表面粗さ測定器SE−3FATを用い、JIS B0601の測定法により、フィルム表面の十点平均粗さRzを測定するとともに、平均表面突起個数を測定した。
【0036】
(7)全光線透過率
JIS K7361に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用してフィルムの全光線透過率を測定した。
【0037】
(8)ヘーズ
JIS K7136に準じ、日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH−2000)を使用してフィルムのヘーズ値を測定した。
【0038】
(9)光拡散性
DIN5036に準じ、(株)村上色彩技術研究所製 自動変角計GP−200を使用し、受光角度5度、20度および70度での輝度値を測定し、下記式より光拡散率を算出して、光拡散性の評価とした。
光拡散率(%)
=(20度での輝度値+70度での輝度値)×100/(5度での輝度値×2)
【0039】
(10)輝度斑
ソニー(株)製液晶テレビKDL−32V2500からバックライトユニットを取出して、光拡散ボード上に評価対象のフィルムを載せ、大塚電子(株)製輝度計MC−940で、中心点左右にある蛍光管上(a)と、さらに隣接する蛍光管の間の上(b)をそれぞれ3箇所ずつについて輝度(cd/m)を測定した。輝度相対値を下記式で算出して、輝度斑の評価とした。なお、蛍光管同士の間隔が23mmであった。
輝度相対値=輝度(a)/輝度(b)
○: 相対輝度値が1.1以下
△: 相対輝度値が1.1を超え1.2以下
×: 相対輝度値が1.2を超え1.3以下
【0040】
(11)密着防止性(輝点)
ソニー(株)製液晶テレビKDL−32V2500からバックライトユニットを取出して、光拡散ボード上に評価対象のフィルムを載せ、輝点の発生度合に着目して密着度合を観察して、密着防止性の評価とした。
○: どの角度から観察しても、輝点がまったく発生しない。
△: フィルムを斜めから観察して、輝点が一箇所以上発生する。
×: フィルムを正面から観察して、輝点が一箇所以上発生する。
【0041】
(12)密着防止性(摩擦)
ASTM D1894−63に準じ、東洋テスター社製のスリッパリー測定器を使用し、評価対象フィルムの表層面と、基準とするポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム製 商品名O3)との静摩擦係数(μs)を測定した。ただし、スレッド板はガラス板とし、荷重は1kgとした。フィルムの密着防止性を下記の基準で評価した。
○: 摩擦係数(μs)≦0.3 (極めて良好)
△: 0.3<摩擦係数(μs)≦0.5 (良好)
×: 0.5<摩擦係数(μs) (不良)
【0042】
(13)融着防止性
実施例において、クリップによる縦延伸および横延伸の後に、結晶化ゾーンで235℃にてフィルムを熱処理した際に延伸機出口から出てきたフィルムを観察し、フィルムのクリップによる把持部がクリップに融着しているか否かを目視で観察し、下記の基準で評価した。
○: クリップに融着せず、フィルムを得た
×: クリップに融着し、フィルムを得られなかった。
【0043】
(14)各層の厚み
サンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を50nm厚の薄膜切片にした後、透過型電子顕微鏡を用いて、加速電圧100kvにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定し、平均厚みを求めた。
【0044】
(15)フィルム厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
【0045】
[実施例1]
表層を構成する成分としてポリエチレンテレフタレートホモポリマーを用い、光拡散層を構成する成分として、イソフタル酸12モル%が共重合された共重合ポリエチレンテレフタレートに、平均粒径d50が8μmの真球状粒子を粒子含有量が3重量%になるように配合したポリエステル組成物を用いた。これらをそれぞれ溶融してダイから押出し、キャスティングドラム上で急冷し、積層未延伸シートを得た。この積層未延伸シートを75℃で余熱し延伸温度110℃で縦方向に3.3倍に延伸し、さらに110℃で余熱し延伸温度130℃にて横方向に3.6倍に延伸し、この後、結晶化ゾーンにて235℃にて熱処理して光学用積層フィルムを得た。なお、熱処理する際に、縦方向および横方向に弛緩を入れて、熱収縮率を調整した。実施例1での層構成は、表層/光拡散層/表層とした。評価結果を表1に示す。
【0046】
[実施例2〜6]
表層および光拡散層を構成する成分を、表1記載のものに変更した以外は実施例1と同様にして、光学用積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0047】
[比較例1]
表層を設けない他は実施例1と同様にしてフィルムを得た。表層がないため、光拡散層のボイドを消失させるのに十分な熱処理(235℃)をするとフィルムが破断およびクリップ融着を起こして安定した製膜ができなかった。評価結果を表1に示す。
【0048】
[比較例2〜3]
表層および光拡散層を構成する成分を表1記載のものに変更した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表中、「IA12molCoPET」は、イソフタル酸12モル%が共重合された共重合ポリエチレンテレフタレートを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の光学用積層フィルムは、光学部材、例えば、液晶表示装置の拡散フィルム、輝度向上シート、プリズムシートの基材として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光拡散層およびその少なくとも一方の面に設けられた表層からなる光学用積層フィルムであって、表層はポリエステルからなり、光拡散層は表層のポリエステルより融点が5〜50℃低い共重合ポリエステルおよび光拡散粒子からなり実質的にボイドを含有しない層であり、光拡散粒子は平均粒径d50が1〜10μmの粒子であり、表層の厚みは光拡散粒子の平均粒径の0.1〜0.9倍であり、表層の十点平均粗さRzは光拡散粒子の平均粒径d50の0.1〜0.9倍であり,表面突起が表層の表面に50個/mm以上存在することを特徴とする、光学用積層フィルム。
【請求項2】
光拡散層のポリエステルが共重合ポリエチレンテレフタレートであり、表層のポリエステルがポリエチレンテレフタレートである、請求項1記載の光学用積層フィルム。

【公開番号】特開2010−164690(P2010−164690A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5651(P2009−5651)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】