説明

光学画像安定化

光学画像安定化を実現することができるカメラ装置は、支持構造と、イメージセンサおよびレンズシステムを備えたカメラユニットと、複数のたわみエレメントを備えたサスペンションシステムであって、複数のたわみエレメントが、カメラユニットが傾斜することを可能にするように、カメラユニットを支持構造で支持するサスペンションシステムと、複数のSMAアクチュエータであって、それぞれ、カメラユニットと支持構造の間に接続され、収縮するとカメラユニットを傾斜させるように配置されたSMAワイヤとして形成された複数のSMAアクチュエータとを備えている。SMAワイヤは、その末端でカメラユニットに固定し、かつ、支持構造のエレメントに引っ掛けることができる。その出力が駆動信号を生成するための基本として使用される振動センサは、カメラユニットに取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサおよび画像をイメージセンサ上に結像させるためのレンズシステムを備えたカメラ装置の光学画像安定化(OIS:Optical Image Stabilization)に関する。
【背景技術】
【0002】
OISの目的は、典型的には使用者の手の動きによって生じるカメラ装置の振動であって、イメージセンサによって捕獲される画像の品質を劣化させるカメラのぶれを補償することである。OISには、通常、捕獲された画像に対する振動の影響を補償するために、ジャイロスコープセンサなどの振動センサによる振動の検出、およびカメラ装置を調整するアクチュエータ構造の検出された振動に基づく制御が必要である。
【0003】
カメラ装置を調整するためのいくつかの技法が知られている。ディジタルスチールカメラに広く使用されている技法の1つは、固定された全体としてのカメラ装置(イメージセンサおよびレンズシステムの大部分を含む)の位置を維持し、かつ、1つのレンズ群を光軸に対して垂直な方向に移動させることである。この技法は、カメラの残りの部分と比較するとレンズ群のサイズおよび慣性が小さいため、大型カメラにとりわけ適している。一代替技法は、レンズシステムを静止状態に維持し、かつ、イメージセンサを光軸に対して垂直な方向に移動させることである。
【0004】
これらの技法は、ディジタルスチールカメラなどの比較的大型のカメラ装置では成功しているが、それらは小型化が困難である。小型カメラ装置におけるコンポーネントの極めて緊密なパッケージングは、所望のパッケージ内へのOISアクチュエータの追加を著しく困難にしている。
【0005】
US−2006/0272328に、異なる技法を使用してOISを実現するカメラ装置が開示されている。詳細には、イメージセンサおよびレンズシステムを含んだカメラユニットが、互いに垂直で、かつ、光軸に対して垂直な2つの仮想軸の周りにカメラユニットを傾斜させることができる弾性支持部材によって支持構造に支持されている。支持構造とカメラユニットの間に2対のSMAワイヤが接続され、光軸に対して鋭角で延在している。個々の対のSMAワイヤは、差動収縮によってカメラユニットが傾斜するよう、プッシュ−プル構成で互いに対向して整列している。SMAワイヤに印加される駆動電流は、カメラぶれを補償するために支持構造に取り付けられた振動センサの出力に基づいて引き出される。US−2006/0272328は、SMAワイヤの直径を小さくすることによって十分に高い周波数応答を達成することができることを教示している。アクチュエータとしてのSMAの広く認識されている欠点は、その応答時間が遅いことである。SMAアクチュエータは熱によって駆動されるため、応答時間は、SMA材料の温度上昇および降下によって制限されており、その温度上昇および降下は、SMA材料の熱伝導率、比熱容量および熱質量に関連している。
【0006】
したがってOISは、カメラユニットを光軸に対して垂直な方向に傾斜させることによって達成されている。これが可能であるのは、カメラユニットのサイズおよび慣性が小さく、また、OIS機能を他のカメラ機能から有利に分離することができることによるものである。特に、許容誤差が大きい光学コンポーネントなどのカメラユニットの複雑な内部設計を変更する必要がない。さらに、SMAをアクチュエータとして使用することにより、エネルギー密度(所与の材料質量に対して利用することができる機械的なエネルギー)が極めて高い利点が達成される。言い換えると、SMAをアクチュエータとして使用することによってアクチュエータ構造を極端に小さくすることができる。同様に、SMAアクチュエータは大きい力を引き渡すことができる。これらの要因は、いずれも、SMAアクチュエータは小型カメラのためのOISを実現するのに極めて適していることを意味している。
【0007】
しかしながら、US−2006/0272328に開示されているカメラ装置は、SMAワイヤの個々の対がプッシュ−プル構成で配置されることに起因する位置制御および寿命ならびに疲労に関連する欠点を抱えている。具体的には、2本のSMAワイヤが光軸に対して垂直な方向に互いに逆方向に引っ張り合う、という意味でそれらは互いに作用を及ぼし合う。つまり、個々のSMAワイヤの応力、延いてはSMAワイヤの長さは、もう一方のSMAワイヤに依存している。
【0008】
第1に、これは、正確な位置制御の達成に関わる問題をもたらしている。カメラ装置の所望の角度は、特定のワイヤ長に対応しているが、この特定のワイヤ長では、個々のSMAワイヤは、もう一方のSMAワイヤの応力に応じて様々な応力を有することができる。したがって個々のSMAワイヤの位置を独立して制御することができない。位置制御は、原理的には依然として達成可能であるが、実際にはこの位置制御を正確に実施することは困難である。例えばSMAワイヤの抵抗に基づく制御を実現しようと試みる場合、相転移温度は応力に対する依存性を有しており、また、SMAワイヤの抵抗率も温度によって変化する。したがってもう一方のワイヤに対する作動の場合、所与のワイヤ長は所与の抵抗に対応していない。
【0009】
第2に、対をなしているSMAワイヤは互いに対して作用するため、例えば両方のSMAワイヤが駆動されるか、あるいは周囲温度が十分に高くなって相転移温度範囲に到達すると、SMAワイヤは、通常、比較的大きい応力にさらされることになる。SMAワイヤのこのような大きい応力は疲労の原因になり、延いてはSMAワイヤの寿命を短くする原因になることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの問題が緩和されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、
支持構造と、
イメージセンサおよびイメージセンサ上に画像を結像させるためのレンズシステムを備えたカメラユニットと、
前記カメラユニットが、互いに垂直でかつレンズシステムの光軸に対して垂直な2つの仮想軸の周りで自在に傾斜し、さらに光軸に沿って移動することを可能にするように、カメラユニットを支持構造で支持するサスペンションシステム(suspension system)と、
少なくとも3つのSMAアクチュエータであって、それぞれカメラユニットと支持構造の間に接続され、かつ、収縮するとカメラユニットを光軸に沿って支持構造に対して変位させるように配置され、また、収縮して差動変位(differential displacement)するとカメラユニットを傾斜させるよう、光軸の周りの異なる位置に配置されたSMAアクチュエータと
を備えたカメラ装置が提供される。
【0012】
したがってカメラユニットは、SMAアクチュエータによって駆動される光軸に対して垂直な方向に傾斜することができる。これは、上で説明した、カメラユニットの複雑な内部設計を変更する必要がなく、また、SMAのエネルギー密度が高いために装置がコンパクトであるUS−2006/0272328の利点と同様の利点を有するOIS機能の達成を可能にしている。
【0013】
しかしながら、US−2006/0272328とは異なり、カメラユニットは、カメラユニットを光軸に沿って移動させることができるサスペンションシステムを備えており、また、同様にSMAアクチュエータは、カメラユニットを光軸に沿って変位させるように配置されている。したがって差動変位するSMAアクチュエータによって傾斜が達成されているが、SMAアクチュエータは互いに対向していない。これは、US−2006/0272328と比較すると、位置制御および疲労ならびに寿命に関連する改善を提供している。具体的には、当該SMAアクチュエータの所望の変位を達成するために個々のSMAアクチュエータの変位を独立して制御することができる。差動変位の結果としてカメラユニットの傾斜がもたらされるため、これらの変位は相俟って選択されるが、個々のSMAアクチュエータは、例えばそのSMAアクチュエータの抵抗に基づいて個々のSMAアクチュエータ自体が制御することができる。これは、固定支点の周りの傾斜をもたらすのではなく、サスペンションシステムの形態を変えることによって光軸に沿った運動を可能にすることによるSMAアクチュエータの減結合と見なすことができる。
【0014】
同様に、SMAアクチュエータは、それぞれ、光軸に沿った運動を駆動するため、それらは互いに対向していない。そのため、対向するSMAアクチュエータが被ることになる比較的大きい応力が回避され、また、寿命の短縮をもたらすことになる関連する疲労の問題が緩和される。
【0015】
本発明の第2の態様は、イメージセンサおよびレンズシステムを備えたカメラユニットが、互いに垂直で、かつ、レンズシステムの光軸に対して垂直な2つの仮想軸の周りに傾斜する技法によってOISが実現されるカメラ装置の設計の改善に関している。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、
支持構造と、
イメージセンサおよびイメージセンサ上に画像を結像させるためのレンズシステムを備えたカメラユニットと、
複数のたわみエレメント(flexure element)を備えたサスペンションシステムであって、複数のたわみエレメントは、該たわみエレメントが偏倚(deflection)するとき、互いに垂直かつレンズシステムの光軸に対して垂直な2つの仮想軸の周りでカメラユニットが傾斜することを可能にするように、カメラユニットを支持構造で支持するサスペンションシステムと、
複数のSMAアクチュエータであって、それぞれカメラユニットと支持構造の間に接続され、かつ、収縮するとカメラユニットを傾斜させるように配置された複数のSMAアクチュエータと
を備えたカメラ装置が提供される。
【0017】
したがってカメラユニットは、SMAアクチュエータによって駆動される光軸に対して垂直な方向に傾斜することができる。これは、上で説明した、カメラユニットの複雑な内部設計を変更する必要がなく、また、SMAのエネルギー密度が高いために装置がコンパクトであるUS−2006/0272328の利点と同様の利点を有するOIS機能の達成を可能にしている。
【0018】
しかしながら、US−2006/0272328とは異なり、カメラユニットは、複数のたわみエレメントによって形成されたサスペンションシステムを備えている。たわみエレメントは、サスペンションシステムとして多くの利点を提供している。たわみエレメントは、運動軸に沿って小さい剛性が付与され、また、運動軸に対して直角に大きい剛性が付与されるように配置することができる。同様に、たわみは、例えば軸受と比較すると、運動に対する最小の摩擦度に遭遇する。最後に、たわみによって形成されるサスペンションシステムは、コンパクトで、かつ、製造が容易である。
【0019】
さらに、たわみエレメントを使用することにより、カメラユニットを光軸に沿って移動させることができるサスペンションシステムが提供され、それにより上で説明した本発明の第1の態様と同じ利点が提供される。
【0020】
第2の態様の第1の任意選択の特徴は、イメージセンサおよびレンズシステムを備えたカメラユニットが、互いに垂直であり、かつ、レンズシステムの光軸に対して垂直な2つの仮想軸の周りに傾斜する技法によってOISが実現されるカメラ装置のサイズの最小化に関している。これは、例えば携帯型電子デバイスに使用することが意図された小型カメラの場合にとりわけ望ましい。
【0021】
第2の態様のこの第1の任意選択の特徴は、個々のSMAアクチュエータが一片のSMAワイヤを備え、該SMAワイヤは、その両方の末端でカメラユニットおよび支持構造のうちの一方に固定され、またその末端を介して、中央部がカメラユニットおよび支持構造のうちのもう一方に接続された個々のたわみエレメントの一部に引っ掛けられ、SMAアクチュエータが、収縮するとカメラユニットを傾斜させ、それによって生じるたわみエレメントの偏倚によって、SMAアクチュエータに対して反作用する付勢力を提供するように配置されることである。
【0022】
US−2006/0272328とは異なり、カメラユニットは、複数のたわみエレメントによって形成されたサスペンションシステムを備えており、SMAアクチュエータは、個々のたわみエレメントの一部に引っ掛けられた一片のSMAワイヤとして形成されている。この構造によれば、カメラ装置のサイズが最小化される。カメラ装置は、主としてたわみエレメントおよびSMAワイヤの緊密な配置のため、極めてコンパクトである。SMAワイヤがたわみエレメントに引っ掛けられると、SMAワイヤは、SMAワイヤの固定を本質とすることなくカメラユニットおよび支持構造のうちのもう一方に接続される。
【0023】
有利には、たわみエレメントは、それぞれ、カメラユニットおよび支持構造のうちの前記もう一方に接続されている中間部分から、カメラユニットおよび支持構造のうちの前記一方に接続されている部分まで延在している一対のたわみビームを備えることができる。中間部分は、光軸に沿ってたわみビームから突出させることができる。その場合、便利でコンパクトな構造を提供する中間部分にSMAワイヤ片を引っ掛けることができる。
【0024】
有利には、SMAワイヤ片は、カメラユニットと支持構造の間を、光軸からの仮想線(notional line radial of the optical axis)に対して垂直に延在させることができる。そのようにすることにより、SMAワイヤの半径方向の範囲全体が最小化されるため、構造のサイズがさらに最小化される。
【0025】
この場合、SMAワイヤ片も光軸に対して非ゼロ角度で延在させることができる。この幾何構造によれば、収縮するとSMAワイヤの配向が変化するため、SMAワイヤ片を光軸に対して非ゼロ角度で延在させることにより、SMAワイヤの所与の長さによって達成することができる変位度が拡大される。それにより、事実上、必要な変位を達成するために必要な長さが短くなるため、光軸に平行のSMAワイヤと比較するとカメラ装置のサイズが縮小される。
【0026】
第2の態様の第2の任意選択の特徴は、イメージセンサおよびレンズシステムを備えたカメラユニットが、互いに垂直であり、かつ、レンズシステムの光軸に対して垂直な2つの仮想軸の周りに傾斜する技法によってOISが実現されるカメラ装置の性能の改善に関している。SMA材料の構造および特性、ならびにサスペンションシステムのたわみの構造および特性を始めとする様々な可変要因および制約が存在している。
【0027】
第2の態様のこの第2の任意選択の特徴は、カメラ装置が、サスペンションシステムとは別に、SMAアクチュエータが収縮するとSMAアクチュエータに対して反作用する付勢力を提供する付勢エレメントをさらに備えていることである。
【0028】
サスペンションシステムが複数のたわみエレメントを備えている場合、利点は、たわみエレメントが同じく付勢手段として作用し、収縮する際にSMAアクチュエータによって印加される力とは逆方向の付勢力を提供することであることが認識されよう。しかしながら、その代わりに、個別の付勢エレメントは、以下の利点を備えている。
【0029】
望ましいことには、装置は、比較的大きい応力をSMAアクチュエータ内に展開するように構成される。このような応力により、SMA材料の応力が付勢手段に対する収縮をもたらすだけの十分な温度が高くなる。これは、装置を使用することができる周囲温度の範囲を高くするためには望ましい。しかしながら、SMAアクチュエータに印加されるこのような応力は、他の設計制約、とりわけ達成可能な運動の範囲とバランスを取る必要がある。たわみエレメントの材料限界を超える原因になるたわみエレメントの偏倚度を回避する必要があるため、達成可能な最大運動が制限されている。応力は、たわみエレメントの剛性を大きくすることによって大きくすることができる。しかしながら、たわみエレメントが偏倚すると、これも、より速くたわみエレメントの材料限界に接近し、したがって運動の範囲を間接的に狭くする原因になる。
【0030】
しかしながら、サスペンションシステムとは別に付勢エレメントを実現することにより、サスペンションシステムに対するこれらの限界に影響を及ぼすことなく比較的大きい応力を展開させることができる利点が提供される。つまり、付勢エレメントは、SMAアクチュエータ内に展開される力を大きくしてカメラユニットを移動させる比較的大きい力を印加する。しかしながら、付勢エレメントは支持構造でカメラユニットをサスペンションしないため、追加付勢エレメントの設計に対する制約が著しく緩和される。例えば、付勢エレメントは、コイルに巻かれた単純なばねとして提供することができる。
【0031】
これにより、全体としての装置に対する設計制約が緩和され、改良型設計が可能になる。例えば、追加付勢エレメントがない等価装置と比較すると、最大運動度を大きくすることができ、かつ/またはたわみの設計に対する制約を緩和することができる。
【0032】
本発明の第3の態様は、イメージセンサおよびレンズシステムを備えたカメラユニットが、互いに垂直で、かつ、レンズシステムの光軸に対して垂直な2つの仮想軸の周りに傾斜する技法によってOISが実現されるカメラ装置の実施態様の単純化に関している。
【0033】
本発明の第3の態様によれば、
支持構造と、
イメージセンサおよびイメージセンサ上に画像を結像させるためのレンズシステムを備えたカメラユニットと、
互いに垂直でかつレンズシステムの光軸に対して垂直な2つの仮想軸の周りでカメラユニットが傾斜することを可能にするように、カメラユニットを支持構造で支持するサスペンションシステムと、
複数のSMAアクチュエータであって、それぞれ、収縮するとカメラユニットを傾斜させるように配置された一片のSMAワイヤを備え、個々のSMAワイヤ片がその両方の末端でカメラユニットに固定され、かつ、支持構造のエレメントに引っ掛けられた複数のSMAアクチュエータと
を備えたカメラ装置が提供される。
【0034】
本発明の第3の態様によれば、SMAワイヤ片が支持構造ではなくカメラユニットに固定されるため、OIS機能を組み込んだカメラ装置全体が単純化される利点が提供される。したがって駆動信号を供給するための制御回路からカメラユニットに固定されるSMAワイヤ片の末端までの電気接続を容易に実施することができる。例えば、SMAワイヤ片は、通常、SMAワイヤを圧着する、同じく簡便に電気接続を提供することができる圧着部材によってカメラユニットに固定される。利点は、それ自体が多くの電気接続を有しており、また、一般的にはプリント回路基板を必要とするイメージセンサがカメラユニットに含まれていることを考慮することによって認識されよう。したがってカメラユニットのところでSMAワイヤ片およびイメージセンサの両方に対して電気接続が実施され、したがって、何にしても電気接続を必要とすることになるカメラユニットを介した共通電気配線であるため、電気的構造が単純化される。例えば、場合によっては支持構造には電気接続がまったく不要である。
【0035】
有利には、カメラユニットの振動を表す出力信号を生成するようになされた振動センサをカメラユニット上に取り付けることも可能であり、制御回路は、この出力信号に応答して駆動信号を生成する。したがって、振動センサへの電気接続が同じくカメラユニット上で提供される点で電気的構造が単純化される同様の利点が提供される。さらに、本発明のこの第3の態様によれば、光学画像安定化の品質に対する技術的な改善が可能になる。それは、制御回路によって実施される制御アルゴリズムが、この場合、検知された傾斜とは逆の修正を施すのではなく、振動センサによって検出される振動の最小化を追及することによるものである。実際には、振動センサが支持構造に取り付けられる場合よりも信頼性の高い補償が実現される。
【0036】
本発明の第4の態様は、光学画像安定化の品質の改善に関している。
【0037】
本発明の第4の態様によれば、
支持構造と、
イメージセンサおよびイメージセンサ上に画像を結像させるためのレンズシステムを備えたカメラユニットと、
互いに垂直で、かつ、レンズシステムの光軸に対して垂直な2つの仮想軸の周りでカメラユニットが傾斜することを可能にするように、カメラユニットを支持構造で支持するサスペンションシステムと、
カメラユニットを傾斜させるようになされたアクチュエータ構造と、
カメラユニットに取り付けられ、かつ、カメラユニットの振動を表す出力信号を生成するようになされた振動センサと、
駆動信号を供給するためにアクチュエータ構造に接続された制御回路であって、振動センサの出力信号に応答して駆動信号を生成するようになされた制御回路と
を備えたカメラ装置が提供される。
【0038】
本発明のこの第4の態様によれば、光学画像安定化の品質に対する技術的な改善が可能になる。それは、制御回路によって実施される制御アルゴリズムが、この場合、検知された傾斜とは逆の修正を施すのではなく、振動センサによって検出される振動の最小化を追及することによるものである。実際には、振動センサが支持構造に取り付けられる場合よりも信頼性の高い補償が実現される。
【0039】
本発明の様々な態様は、任意の組合せで相俟って使用することができる。
【0040】
より深く理解することができるよう、以下、本発明の一実施形態について、添付の図面を参照して非制限の例によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】カメラ装置の略横断面図である。
【図2】カメラ装置の第1の構造の斜視図である。
【図3】シャーシの斜視図である。
【図4】サスペンションシステムの斜視図である。
【図5】SMAアクチュエータの側面図である。
【図6】シャーシおよびSMAアクチュエータの斜視図である。
【図7】たわみエレメントおよびSMAアクチュエータの側面図である。
【図8】カメラ装置の第2の構造の斜視図である。
【図9】ハウジングが省略されたカメラ装置の第2の構造の斜視図である。
【図10】カメラ装置の第3の構造の斜視図である。
【図11】シャーシの斜視図である。
【図12】キャリッジの斜視図である。
【図13】キャリッジおよびシャーシを下から見た斜視図である。
【図14】サスペンションシステムの平面図である。
【図15】サスペンションシステムを使用してアセンブルされたキャリッジおよびシャーシを下から見た斜視図である。
【図16】底部プレートを使用してアセンブルされたキャリッジ、シャーシおよびサスペンションシステムを下から見た斜視図である。
【図17】キャリッジおよびSMAアクチュエータの斜視図である。
【図18】シャーシを使用してアセンブルされたキャリッジおよびSMAアクチュエータの斜視図である。
【図19】SMAアクチュエータ内に展開した応力対第1の構造内の位置のグラフである。
【図20】SMAアクチュエータ内に展開した応力対第2の構造内の位置のグラフである。
【図21】SMAアクチュエータのための駆動信号を生成するための制御回路の線図である。
【図22】制御回路の駆動回路の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
概説
図1は、OISを実行するようになされたカメラ装置1を横断面図で概略的に示したもので、断面は、カメラ装置1の光軸Oに沿って取られている。カメラ装置1は、移動電話、メディアプレーヤあるいは携帯型ディジタルアシスタントなどの携帯型電子デバイスに組み込まれることになる。したがって小型化は重要な設計基準である。
【0043】
カメラ装置1は、支持構造2および以下でより詳細に説明するサスペンションシステムによって支持構造2上で支持されるカメラユニット100を備えている。
【0044】
カメラユニット100は機能カメラであり、いずれもカメラサポート(camera support)103上で支持されたイメージセンサ101およびレンズシステム102を備えている。レンズエレメント102およびイメージセンサ101は、レンズシステム102がイメージセンサ101上に画像を結像させるよう、光軸Oに沿って配置されている。イメージセンサ101は画像を捕獲し、また、イメージセンサ101は、適切な任意のタイプのイメージセンサ、例えばCCD(電荷結合デバイス)またはCMOS(相補性金属酸化膜半導体)デバイスであってもよい。カメラユニット1は、直径が最大10mmの1つまたは複数のレンズを有する小型カメラである。
【0045】
以下でさらに説明するように、OISは、光軸Oに対して垂直な軸の周りにカメラユニット100全体を傾斜させることによって実現され、カメラユニット100の内部構造をこの目的のために適合させる必要がない利点を有している。したがってカメラユニット100は機能的に標準のカメラであってもよい。したがってカメラユニット100は、OIS機能に無関係に、所望の光学性能を提供するための任意の所望の構造を有することができる。例えば、カメラユニット100は、光学性能とコストの所望のバランスを実現する必要に応じて、単一のレンズまたは複数のレンズを備えたレンズシステム102を含むことができる。同様に、レンズシステム102は、固定焦点または可変焦点を実現することができる。後者の場合、カメラユニット100は、SMA駆動構造の使用を含む、焦点を変化させるための適切な任意の構造を使用することができる。例えば、カメラユニット100は、WO−2007/113478、WO−2008/099156または国際出願第PCT/GB08/003657号に記載されているタイプのカメラであってもよい。
【0046】
次に、カメラ装置、詳細には、支持構造2上でカメラユニット100をサスペンションするためのサスペンションシステムのいくつかの異なる構造について説明する。これらの異なる構造では、共通のエレメントは共通の参照数表示で示されており、それらの説明は反復されていない。
【0047】
第1の構造
図2は、カメラ装置1の第1の構造を示したもので、以下で行うサスペンションシステムのコンポーネントを説明するためにカメラユニット100は省略されている。通常、機械的アーキテクチャはサイズが制限されていないが、この第1の構造は、標準の8.5mm平方のフットプリントを有する、典型的には移動電話に使用するためのカメラユニット100のためのOISを実現している。
【0048】
支持構造2は、シャーシ3、およびカメラ装置1の様々な電気コンポーネントへの接続のための回路を備えたプリント回路基板(Printed Circuit Board:PCB)であるベース4を備えている。ベース4は、正方形部分5および正方形部分5から横方向に突出している延長部分(extension)6を有しており、延長部分6は、制御回路への接続のためのコンタクト(contact)7を有している。シャーシ3は、図3に単体で示されており、まったく同じ形の4つの側壁8を有する環状壁の形態を取っており、側壁の各々は、ベース4の正方形部分5の縁に沿って延在し、そこから突出している。シャーシ3は、射出成形コンポーネントとして形成することができ、以下のように、その上にアセンブルされた他のコンポーネントを有している。
【0049】
シャーシ3は、カメラユニット100のための、図4に単体で示されているサスペンションシステム10を支持している。サスペンションシステム10は、4つのたわみエレメント11を備えており、これらのたわみエレメント11の各々は、それぞれシャーシ3の1つの側壁8に沿って延在している。個々のたわみエレメント11は、カメラユニット100が接続される最も内側の面に取り付け部14を有する中間部分13から外側に向かって延在している一対のたわみビーム12を備えている。たわみビーム12は、中間部分13から隅部分15まで延在しており、これらの隅部分15自体は、シャーシ3の隅に接続されている。全部で4つのたわみエレメント11からなるサスペンションシステム10全体は、典型的には金属である単一片の材料から形成されているが、原理的には、たわみエレメント11の各々は、隅部分15がシャーシ3に接続されることを前提として、個別のエレメントとして形成することも同じく可能である。
【0050】
光軸Oに沿って見たたわみビーム12の幅は、光軸Oに対して垂直な方向から見た厚さより広く、それにより光軸Oに対して垂直な運動を阻止しながらの光軸Oに沿った偏倚を可能にしている。したがってたわみエレメント11は、支持構造2上でカメラユニット100を支持しているが、たわみエレメント11が偏倚すると、光軸Oに沿ったカメラユニット100の運動が可能になる。さらに、カメラユニット100の4つの面の各々にたわみエレメント11が存在しているため、サスペンションシステム10は、互いに垂直でかつ光軸Oに対して垂直な2つの仮想軸の周りでカメラユニット100が傾斜することを可能にしており、これは、互いに対向して配置された複数のたわみエレメント11が異なった偏倚をすると起こる。2つの垂直軸の周りのこのような傾斜は、全体として、光軸Oに対して垂直な任意の軸の周りでカメラユニット100が傾斜することを可能にする。
【0051】
中間部分13は、中間部分13が光軸Oに沿ってたわみビーム12から突出するよう、光軸Oに対して垂直な方向から見るとU字形を有している。取付け部14は、たわみビーム12から遠位の中間部分13の末端に形成されている。
【0052】
シャーシ3は、さらに、その上に位置し、かつ、個々の側壁8からサスペンションシステム10の外側を上に向かって突出している缶(can)18を有している。缶8は、光軸Oに向かって内側に延在している、サスペンションシステム10を覆うためのリップ19を有している。缶18は、カメラ装置1の内部コンポーネントを保護している。サスペンションシステム10の隅部分15を直接シャーシ3に接続する代替として、例えばスポット溶接によって隅部分15を缶18のリップ19に接続することも可能である。
【0053】
カメラ装置1は、さらに、以下のようになされた4つのSMAアクチュエータ20を備えている。図5は、SMAアクチュエータ20を単体で示したもので、SMAアクチュエータ20は一片のSMAワイヤ21を備えており、この一片のSMAワイヤ21は、SMAワイヤ片21を個々の末端で圧着し、それにより機械的端子となる2つの圧着部材22の間に取り付けられている。圧着部材22は、図6に示されているようにそれぞれシャーシ3に固定されており、シャーシ3へのSMAアクチュエータ20の機械的接続を提供している。この取付けは、接着剤を使用して強化された機械的嵌合によって達成することができる。個々のSMAアクチュエータ20の圧着部材22は、シャーシ3の個々の側壁8の互いに反対側の末端に配置されており、したがってSMAワイヤ片21は、側壁8の線に沿って延在している。したがってSMAワイヤ21は、光軸Oからの仮想線に対して垂直に延在している。
【0054】
さらに、圧着部材22は、SMAワイヤ片21への電気接続を提供しており、SMAワイヤ片21を介した駆動電流の供給を可能にしている。圧着部材22は、例えばベース4上に設けられている該当するパッドへのはんだ付けによってベース4上の回路に電気接続される。これによりSMAアクチュエータ20をベースを介して、以下でさらに説明する制御回路に接続するためのコンタクト7に電気配線接続することができる。
【0055】
詳細には、個々のSMAワイヤ片21は、たわみエレメント11のうちの1つに隣接して配置されており、SMAワイヤ片21は中間部分13に引っ掛けられている。図7は、SMAアクチュエータ20およびたわみエレメント11の特定の構造を詳細に示したものである。したがって個々のSMAワイヤ片21は、カメラユニット100と支持構造2の間に、光軸Oに対して鋭い非ゼロ角度で延在している。カメラ装置をアセンブルしている間、最初にSMAアクチュエータ20がシャーシ3に取り付けられ、次に、たわみエレメント11の中間部分13に適切に引っ掛かるよう、SMAワイヤ21が激しく上下前後に揺すられ、あるいは位置決めされる。
【0056】
この構成のSMAアクチュエータ20の場合、SMAワイヤ片21は、たわみエレメント11によって張力がかかった状態で保持され、それにより光軸Oに沿った方向Aの力の成分が印加される。それによりたわみエレメント11が偏倚し、この偏倚により、SMAアクチュエータ20に対して反作用する、光軸Oに沿った逆方向Bの付勢力が提供される。カメラ装置1のこの第1の構造の場合、複数のたわみエレメント11は、SMAアクチュエータ20に対して反作用する唯一の付勢力(sole biasing force)を提供している。
【0057】
したがって、アセンブルされたカメラ装置1では、たわみエレメント11はSMAアクチュエータ20に予荷重を印加している。この予荷重は、たわみエレメント11の中間部分13の一部を形成している突起24と接触しているシャーシ3の側壁8に形成されているエンドストップ23によって制限されており、それにより方向Bの運動を制限している。
【0058】
SMAアクチュエータ20およびサスペンションシステム10が図1に示されているようにアセンブルされると、カメラ装置1は、いつでもカメラユニット100をアセンブルすることができる。これを達成するために、激しく上下前後に揺することによってカメラユニット100がカメラ装置1内の所定の位置に配置され、次に、たわみエレメント11の各々の取付けプレート40に固定される。これは、取付けプレート(mounting plate)14に形成されている孔を介して、かつ孔に接するように接着剤を加え、カメラユニット100への結着を形成することによって達成することができる。これを達成するために、シャーシ3は開口25を備えることができ、これらの開口を介して接着剤が加えられ、また、これらの開口25は、引き続いて、例えば機構を保護するために所定の位置で結合されるポリアミド膜であってもよいカバー26によって覆われる。
【0059】
また、支持構造2のベース4は、さらに、支持構造の角速度を表す信号を出力するジャイロスコープセンサ71を備えており、それによりカメラ装置1が遭遇する振動を検出する振動センサとして作用している。ジャイロスコープセンサ71は、典型的には、互いに垂直であり、かつ、光軸に対して垂直な2つの軸の周りの振動を検出するための一対の小型ジャイロスコープであるが、一般的にはもっと多くのジャイロスコープあるいは他のタイプの振動センサを使用することも可能である。制御回路にはジャイロスコープセンサ71からの出力信号が供給され、制御回路は、以下でより詳細に説明するように、その出力信号に基づいて駆動信号を生成する。
【0060】
第2の構造
図8および9は、カメラ装置1の第2の構造を示したもので、図8および9の両図にはカメラユニット100が省略されており、また、図9にはハウジング30およびカメラマウント31が省略されている。第1の構造と同様、カメラ装置1のこの第2の構造も、標準の8.5mm平方のフットプリントを有するカメラユニット100のためのOISを実現している。
【0061】
第2の構造では、カメラ装置1は、第1の構造の支持構造2と同様の支持構造2を有しており、支持構造2は、PCBであるベース4、およびまったく同じ形の4つの側壁8を有する環状壁の形態を取っているシャーシ3を備えている。
【0062】
シャーシ3は、それぞれシャーシ3の1つの側壁8に沿って延在している4つのたわみエレメント33を備えたサスペンションシステム32を支持している。個々のたわみエレメント33は、その末端でシャーシ3の隅に接続された弓形のたわみビームを備えている。この第2の構造では、個々のたわみビーム33は個別のエレメントであるが、それらは、原理的には、すべて単一片の材料から形成することができる。
【0063】
4つのたわみエレメント33は、シャーシ3の側壁8の内側を平行に延在している4つの壁34を備えたカメラマウント31を支持している。個々の壁34は、外側に向かって延在している、個々のたわみエレメント33の中央部に接続されるフランジ35を有している。カメラユニット100は、カメラマウント31の壁34に接続され、したがってたわみエレメント33によってサスペンションされる。
【0064】
光軸Oに沿って見たたわみエレメント33の幅は、光軸Oに対して垂直な方向から見た厚さより広く、それにより光軸Oに対して垂直な運動を阻止しながらの光軸Oに沿った偏倚を可能にしている。したがってたわみエレメント33は、支持構造2上でカメラユニット100を支持しているが、たわみエレメント11が偏倚すると、光軸Oに沿った運動が可能になる。第1の構造と同様、サスペンションシステム32も、複数のたわみエレメント33が異なった偏倚をすると、互いに垂直でかつ光軸Oに対して垂直な2つの仮想軸の周りでカメラユニット100が傾斜することを可能にする。
【0065】
カメラ装置1は、第1の構造と同様、さらに、それぞれ一片のSMAワイヤ21を備えた4つのSMAアクチュエータ20を備えており、個々のSMAワイヤ片21は、SMAワイヤ片21を個々の末端で圧着する2つの圧着部材22の間に取り付けられている。圧着部材22は、それぞれシャーシ3に固定され、個々の側壁8の互いに反対側の末端に配置されており、したがってSMAワイヤ片21は、個々の側壁8に沿って、光軸からの仮想線に対して垂直に延在している。
【0066】
個々のSMAアクチュエータ20のSMAワイヤ片21は、カメラマウント31の個々の壁34から外側に向かって突出しているボス34に引っ掛けられている。この構成のSMAアクチュエータ20の場合、SMAワイヤ片21は、個々のたわみエレメント31によって張力がかかった状態で保持され、それにより光軸Oに沿った方向Cの力の成分が印加される。それによりたわみエレメント33が偏倚し、この偏倚により、SMAアクチュエータ20に対して反作用する、光軸Oに沿った逆方向Dの付勢力が提供される。カメラ装置1のこの第2の構造の場合、複数のたわみエレメント33は、SMAアクチュエータ20に対して作用する唯一の付勢力を供給している。
【0067】
カメラ装置1には、さらに、ベース4から上に向かってシャーシ3の外側に突出しているハウジング30が含まれており、また、ハウジング30には、光軸Oに向かって内側に延在している、サスペンションシステム32を覆うためのリップ36が含まれている。
【0068】
第3の構造
図10は、カメラ装置1の第3の構造を示したもので、以下のようになされている。この第3の構造では、すべての電気接続は、支持構造2に対してではなく、カメラユニット100に対して実施される。
【0069】
支持構造2は、ベースマウント41に取り付けられるシャーシ40を備えている。図11はシャーシ40を単体で示したもので、シャーシ40は、環状の形態で配置されたまったく同じ形の4つの側壁42を備えており、これらの側壁42は、それぞれ正方形の辺に沿って延在している。個々の側壁42は、その中心に配置されており、その最も下側の縁(図10および11に示されている)からカットアウト43が延在し、また、側壁42の内側に、カットアウト43に隣接してフック44が配置されている。
【0070】
ベースマウント41は、製品の中に取り付けられる際に、カメラユニット100およびその下側のあらゆる電子機器コンポーネントを機械的接地から分離している。ベースマウント41中にスロット45が設けられており、より幅の広い製品システム電子機器からのカメラユニット100への電気的なアクセス、例えば可撓プリント回路(FPC)リボンを介したアクセスを可能にしている。
【0071】
カメラ装置1は、さらに、カメラユニット100を取り付けるためのキャリッジ50を備えている。図12はキャリッジ50を単体で示したもので、キャリッジ50は、環状の形態で配置されたまったく同じ形の4つの側壁51を備えており、これらの側壁51は、それぞれ正方形の辺に沿って延在している。カメラユニット100はキャリッジ50の内側に固定される。
【0072】
図13に示されているように、キャリッジ50は、光軸Oに沿った相対運動を可能にするようにシャーシ40の内側に嵌合するように寸法設定されている。個々の側壁51はその中心に配置されており、取付けブロック52は外側に向かって突出し、かつ、シャーシ40のカットアウト43のうちの1つの内側に嵌合している。カットアウト43の末端表面45は、取付けブロック52と係合して支持構造2に対するカメラユニット100の光軸Oに沿った運動を制限するエンドストップを形成している。個々の取付けブロック52は、さらに、最も下方の末端(図13の一番上)で開いている凹所53を有している。
【0073】
シャーシ3は、カメラユニット100のための、図14に単体で示されているサスペンションシステム60を支持している。サスペンションシステム60は、4つのたわみエレメント61を備えており、これらのたわみエレメント61の各々は、シャーシ40の1つの側壁42に沿って延在している。個々のたわみエレメント61は、中間取付けプレート63から隅取付けプレート65まで外側に向かって延在している一対のたわみビーム62を備えている。図15に示されているように、中間取付けプレート63は、キャリッジ50の取付けブロック52の最も下方の表面に接続されており、それによりカメラユニット100を接続している。隅取付けプレート65は、シャーシ40の隅に接続されている。したがって、
【0074】
全部で4つのたわみエレメント61からなるサスペンションシステム60全体は、典型的には金属である単一片の材料から形成されているが、原理的には、たわみエレメント61の各々は、隅部分65がシャーシ40に接続されることを前提として、個別のエレメントとして形成することも同じく可能である。
【0075】
光軸Oに沿って見たたわみビーム62の幅は、光軸Oに対して垂直な方向から見た厚さより広く、それにより光軸Oに対して垂直な運動を阻止しながらの光軸Oに沿った偏倚を可能にしている。したがって、たわみエレメント61は、キャリッジ50を介して支持構造2でカメラユニット100を支持しているが、たわみエレメント61が偏倚すると、光軸Oに沿ったカメラユニット100の運動が可能になる。カメラユニット100の4つの面の各々にたわみエレメント61が存在しているため、サスペンションシステム10は、互いに垂直でかつ光軸Oに対して垂直な2つの仮想軸の周りでカメラユニット100が傾斜することを可能にしており、これは、互いに対向するように配置された複数のたわみエレメント61が異なった偏倚をすると起こる。2つの垂直軸の周りのこのような傾斜は、全体として、光軸Oに対して垂直な任意の軸の周りでカメラユニット100が傾斜することを可能にする。
【0076】
たわみビーム62が偏倚すると、支持構造2とカメラユニット100の間に作用する、この偏倚を阻止する力が光軸Oに沿って生成される。さらに、コイルに巻かれたばねである付勢ばね66が個々の取付けブロック52の凹所53の内側に取り付けられている。図16に示されているように、シャーシ40は、シャーシ40の側壁42に沿って延在し、かつ、側壁42に固定された4つの面を備えた環状の形態のベースプレート67を有している。個々の付勢ばね66は、キャリッジ50の取付けブロック52とシャーシ40のベースプレート67の間に圧縮された状態で保持されており、それにより、たわみビームと同様の形で、支持構造2とカメラユニット100の間に作用する力が光軸Oに沿って印加される。それにより付勢ばね66は、たわみビーム62と相俟って、支持構造2とカメラユニット100の間に予荷重を印加している。
【0077】
カメラ装置1は、さらに、以下のようになされた4つのSMAアクチュエータ20を備えている。
【0078】
図17に示されているように、個々のSMAアクチュエータ20は一片のSMAワイヤ21を備えており、この一片のSMAワイヤ21は、SMAワイヤ片21を個々の末端で圧着し、それにより機械的端子となる2つの圧着部材22の間に取り付けられている。圧着部材22は、図17に示されているようにそれぞれキャリッジ50に固定されており、キャリッジ50へのSMAアクチュエータ20の機械的接続を提供している。この取付けは、接着剤を使用して強化された機械的嵌合によって達成することができる。別法としては、キャリッジ50が重合体材料でできており、かつ、圧着部材22を保持するための適切な熱変形可能特徴を有している場合、この取付けは、何らかの種類の熱かしめプロセスによって達成することも可能である。個々のSMAアクチュエータ20の圧着部材22は、シャーシ50の個々の側壁51の互いに反対側の末端に配置されており、したがってSMAワイヤ片21は、側壁50の線に沿って延在している。したがってSMAワイヤ21は、光軸Oからの仮想線に対して垂直に延在している。
【0079】
さらに、圧着部材22は、SMAワイヤ片21への電気接続を提供しており、SMAワイヤ片21を介した駆動電流の供給を可能にしている。圧着部材22は、図16に示されているカメラユニット100の最も下側に固定されているプリント回路基板(PCB)68に、例えばPCB68上に設けられている該当するパッドへのはんだ付けによって電気接続される。
【0080】
PCB68は、PCB68を介してSMAアクチュエータ20に供給するための駆動信号を生成するための制御回路が実施される集積回路(IC)チップ70を備えている。PCB68は、さらに、カメラユニット100の角速度を表す信号を出力するジャイロスコープセンサ71を備えており、それによりカメラユニット100が遭遇する振動を検出する振動センサとして作用している。ジャイロスコープセンサ71は、典型的には、互いに垂直であり、かつ、光軸に対して垂直な2つの軸の周りの振動を検出するための一対の小型ジャイロスコープであるが、一般的にはもっと多くのジャイロスコープあるいは他のタイプの振動センサを使用することも可能である。ICチップ70の中の制御回路にはジャイロスコープセンサ71からの出力信号が供給され、制御回路は、以下でより詳細に説明するように、その出力信号に基づいて駆動信号を生成する。
【0081】
PCB68は、さらに、その上面にイメージセンサ101を備えており、したがってPCB68は、イメージセンサ101への多数の電気接続を有していなければならない。
【0082】
図18に示されているように、個々のSMAアクチュエータ20のSMAワイヤ片21は、シャーシ40の個々のフック44に引っ掛けられている。したがって個々のSMAワイヤ片21は、カメラユニット100と支持構造2の間に、光軸Oに対して鋭い非ゼロ角度で延在している。この構成のSMAアクチュエータ20の場合、SMAワイヤ片21は、個々の付勢ばね66およびたわみエレメント61によって張力がかかった状態で保持され、それにより光軸Oに沿った方向Eの力の成分が印加される。付勢ばね66およびたわみエレメント61は、相俟って、SMAアクチュエータ20に対して反作用する、光軸Oに沿った逆方向Fの付勢力を提供している。
【0083】
したがって、アセンブルされたカメラ装置1では、付勢ばね66およびたわみエレメント61は、相俟って、SMAアクチュエータ20に予荷重を印加している。この予荷重は、取付けブロック52と接触しているシャーシのカットアウト43の末端表面45によって形成されているエンドストップによって制限されており、それによりカメラユニット100の方向Eの運動を制限している。これにより、事実上、駆動電流が小さくなるか、あるいはターンオフされた際のSMAワイヤ21の伸びが制限される。予荷重により、カメラユニット100が移動を開始する前に、個々のSMAワイヤ21によって、付勢ばね66およびたわみエレメント61によって生成される付勢力に打ち勝つだけの十分な特定の張力が確実に達成される。したがって、事実上、最小の張力によって、運動に必要なSMA材料の温度に対する下限が設定され、したがって高い周囲温度でのシステムの作動を可能にしている。
【0084】
付勢力がたわみエレメント11によってのみ印加される第1の構造とは異なり、この第3の構造の場合、付勢ばね66によって付勢力が追加で提供される。したがって以下のようにカメラ1に対する設計制約が緩和される。
【0085】
比較例として、図19は、第1の構造に関する、カメラユニット100の異なる位置xに展開する(サスペンションシステム10に展開し、したがって同じくSMAアクチュエータ20に展開する)応力Sのグラフである。位置P1aおよびP2aは、カメラユニット100の運動範囲Δxaの末端である。
【0086】
エンドストップ23の位置P1aは、静止状態におけるカメラユニット100の位置であり、したがってカメラユニット100の運動を開始するためにSMAアクチュエータ20に展開させなければならない応力である応力S1の予備応力がサスペンションシステム10にかかるように選択される。この予備応力は、2つの効果を達成するために十分に大きくなるように設計される。第1に、予備応力は、SMAアクチュエータ20の応力がたわみエレメントに対する収縮をもたらすだけの十分な温度を高くするため、この予備応力は、カメラ装置1を作動させる所望の周囲温度範囲を考慮して選択される。第2に、予備応力は、カメラユニット100の位置を正確に制御し、かつ、外力に起因するカメラユニット100の運動を防止するために、カメラユニット100がエンドストップ23に対して堅固に保持されるように選択される。
【0087】
位置P2aは、SMAアクチュエータ20が完全に収縮し、したがってSMAアクチュエータ20の構成に依存している場合のカメラユニット100の位置である。この位置P2aでは応力S2が展開する。位置P2aは、この位置P2aではたわみエレメント11の材料限界を超えないように選択される。
【0088】
図20は、第3の構造のカメラユニット100の異なる位置xに展開する応力Sの等価グラフを示したものである。詳細には、線L1は、付勢ばね61に展開する応力であり、線L2は、サスペンションシステム60に展開する応力であり、また、線L3は、付勢ばね61およびサスペンションシステム60に展開する総応力であり、したがってそれらを合わせると、SMAアクチュエータ20に展開する応力である。位置P1bおよびP2bは、カメラユニット100の運動範囲Δxbの末端である。
【0089】
この例では、凹所43の末端表面45の位置P1bは、カメラユニット100の静止位置では、サスペンションシステム60は偏倚せず、したがって応力が展開しないように、しかも、付勢ばね61によって、図19における静止位置と同じ値を有する応力S1が展開するように選択される。したがってこの応力S1も、同じく、カメラユニット100の運動を開始するためにSMAアクチュエータ20に展開させなければならない応力であり、上で説明したようにして選択される。
【0090】
位置P2bは、SMAアクチュエータ20が完全に収縮し、したがってSMAアクチュエータ20の構成に依存している場合のカメラユニット100の位置である。SMAアクチュエータ20は、この位置P2bでは応力S3が付勢ばね61に展開し、かつ、サスペンションシステム10に展開する応力S2bが付勢ばね61およびたわみエレメント61の材料限界を超えないように構成される。図2に示されている第1の構造と比較すると、たわみエレメント60の設計に対する制約が著しく緩和されている。第1に、サスペンションシステム10は、SMAアクチュエータ20を付勢するために必要なすべての剛性を付与する必要はなく、これは、主として付勢ばね61によって与えられる。第2に、たわみエレメント60をより小さい偏倚度で作動させることができる。したがって、図20の特定の例では、運動範囲Δxbは、図19の比較例における運動範囲Δxaより広いが、サスペンションシステム9に付与される応力S2bは、図19の比較例における応力S2aより小さい。
【0091】
作用
次に、OISを実現するためのカメラ装置1の作用について説明する。
【0092】
SMA材料は、加熱すると固体相が変化し、SMA材料が収縮する特性を有している。低温では、SMA材料はマルテンサイト相に入る。高温では、SMAは、SMA材料を収縮させる変形を含むオーステナイト相に入る。相変化は、SMA結晶構造における転移温度の統計的広がりのため、一定の温度範囲にわたって生じる。したがってSMAワイヤ片21を加熱すると、その長さが短くなる。
【0093】
SMAアクチュエータ20を加熱すると、その応力が大きくなり、SMAアクチュエータ20は、付勢力に対して縮小する。そのため、たわみエレメント61に接続されているカメラユニット100が光軸Oに沿って運動する。SMAアクチュエータ20の温度が、マルテンサイト相からオーステナイト相へのSMA材料の移行が生じる温度範囲にわたって高くなると、一定の範囲の運動が生じる。逆に、その応力が小さくなるようにSMAアクチュエータ20を冷却すると、たわみエレメント61によって提供される付勢によってSMAアクチュエータ20が膨張し、カメラユニット100が逆方向に移動する。
【0094】
支持構造2に対するカメラユニット100の光軸Oに沿った位置は、SMAアクチュエータ20の温度を変化させることによって制御される。これは、抵抗性加熱を行う駆動電流をSMAアクチュエータ20に流すことによって達成される。加熱は駆動電流によって行なわれる。冷却は、駆動電流を小さくするか、あるいは停止し、その周囲への伝導によるSMAアクチュエータ20の冷却を可能にすることによって行なわれる。
【0095】
光軸Oに沿った達成可能な変位度は、SMAアクチュエータ20内に展開するひずみで決まり、また、カメラユニット1と支持構造2の間に延在するSMAワイヤ片21の光軸Oに対する鋭角で決まる。SMAワイヤ21に展開する可能性のあるひずみは、相変化の物理現象によって制限される。SMAワイヤ21は、光軸Oに対して鋭い非ゼロ角度で延在するため、SMAワイヤ21は、その長さが変化するとその配向が変化する。これは、事実上、運動を調整し、したがって光軸Oに沿った変位度は、光軸Oに沿って分解されるSMAワイヤの長さの変化より大きい。
【0096】
SMAワイヤ21は、適切な任意のSMA材料、例えばニチノールまたは他のチタン合金SMA材料を使用して製造することができる。有利には、SMAワイヤ片21の材料組成および予備処理は、位置制御度を最大化するために、通常の作動の間、期待周囲温度より高い、可能な限り広い一定の温度範囲にわたる相変化が実現されるように選択される。
【0097】
したがって個々のSMAアクチュエータ20は、カメラユニット100を支持構造2に対して光軸Oに沿って変位させる。SMAアクチュエータ20は、光軸Oの周りの異なる位置に配置されるため、これらのSMAアクチュエータ20は、相俟ってカメラユニットを傾斜させることができ、つまり、複数のSMAアクチュエータ20が収縮すると差動変位がもたらされる。したがって、SMAアクチュエータ20を適切に制御することにより、互いに垂直で、かつ、光軸Oに対して垂直な2つの仮想軸の周りにカメラユニット100を傾斜させることができる。具体的には、それぞれ対をなして向かい合ったSMAアクチュエータ20の異なる動きが、光軸Oに対して垂直をなす1つの仮想軸の周りでの動きを発生させる。したがって4つのアクチュエータ20を駆動することにより、光軸Oに対して垂直をなす任意の仮想軸の周りの傾斜を実現することができる。
【0098】
カメラ装置1の場合、4つのSMAアクチュエータ20が設置されており、光軸Oの周りに等間隔で配置されている。これは、実行される制御の性質を単純化しており、その上、4つのSMAアクチュエータ20の構成は、簡便で、かつ、コンパクトである。しかしながら、一般的にはSMAアクチュエータ20の数は、直交する2つの仮想軸の周りの傾斜を実現するために少なくとも3つのSMAアクチュエータ20が存在することを条件として変更が可能である。
【0099】
OISは、全体としてのカメラユニット100を傾斜させることによって達成されるため、これには、OIS機能を他のカメラ機能から分離することにより、カメラユニット100の内部設計が影響を受けない利点がある。これは、小型カメラユニット100の場合、そのサイズおよび慣性が小さいため、とりわけ容易である。
【0100】
さらに、SMAアクチュエータ20の使用は、他の駆動構造と比較するとSMA材料のエネルギー密度が高いため、駆動構造が垂直方向にコンパクトであることを意味している。
【0101】
また、第1の構造のカメラ装置1もとりわけコンパクトである。詳細には、第1の構造のカメラ装置1は、わずかに9.5mm平方、つまりフットプリントの幅にわずかに1mmを追加した総フットプリント内のサイズが8.5mm平方のカメラユニット100にOISを引き渡すことができる。これは、場合によっては、カメラユニット100のフットプリントが11mm平方に拡大している第2の構造とは対照的である。また、OISの実現に伴うカメラ装置1の高さに対する影響は極めて小さく、OIS中の傾斜運動のためのクリアランスを許容する必要を受け入れている。詳細には、第1の構造のカメラ装置1の高さはたったの3.8mmである。この小さいサイズは、SMA材料をアクチュエータとして使用することによって達成されており、また、さらに、SMAワイヤ片21がたわみエレメント11に引っ掛けられる特定の構造によって達成されている。この緊密な構造により、たわみエレメント内に3つの機能、つまり(1)SMAアクチュエータ20に対抗する付勢力の実現と、(2)SMAワイヤ片21が引っ掛けられる機構の実現と、(3)たわみエレメント11がカメラユニット100を全体としてのカメラ装置1内に横方向に垂直に配置し、かつ、SMAアクチュエータ20の運動と共に移動するようにカメラユニット100を拘束するようにカメラユニット100が接続される機構の実現とを組み合わせることによってサイズが小さくなっている。
【0102】
SMAアクチュエータ20は、大きい位置制御度で駆動することができる。サスペンションシステム10、32、60は、カメラユニット100が光軸Oに沿って移動することを可能にし、また、SMAアクチュエータ20は、光軸Oに沿った変位を駆動するようになされているため、傾斜は、差動変位を駆動する複数のSMAアクチュエータ20によって達成される。個々のSMAアクチュエータ20からの所望の相対変位度は、所望の差動変位が実現ように選択される。しかしながら、個々の個別のSMAアクチュエータ20は、個々の個別のSMAアクチュエータ20から要求される変位を実現するために、例えば、以下でさらに説明するように、そのSMAアクチュエータ20の抵抗に基づいて独立して制御することができる。サスペンションシステム10、32、60は、光軸Oに沿ったカメラユニット100の運動を可能にするため、この利点は達成可能である。
【0103】
さらに、サスペンションシステム10、32、60は、光軸Oに沿ったカメラユニット100の運動を可能にするため、駆動電流が印加されていない状態では、カメラユニットは、サスペンションシステム10、32、60および/または付勢ばね66によって、エンドストップに対して固定された位置で保持される追加利点がある。したがって、例えばSMAアクチュエータ20の制御回路80が故障した場合、OIS機能がなくても依然としてカメラ装置1を使用することができる。これは、電力が供給されていない場合、対向するSMAワイヤが両方ともたるみ、そのためにカメラユニットが支持構造に不安定な状態で取り付けられることになるUS−2006/0272328のカメラ装置とは対照的である。
【0104】
さらに、サスペンションシステム10、32、60は、たわみエレメント11、33、61を使用してカメラユニット100を支持することによって得られる利点、詳細には、光軸Oに沿って小さい剛性が付与され、また、垂直な方向に大きい剛性が付与されるようにたわみエレメント11、33、61を配置することができる利点を有している。同様に、たわみエレメント11、33、61は、他のサスペンションシステム、例えば軸受と比較すると、運動に対する最小の摩擦度に遭遇する。また、サスペンションシステム10、32、60は、コンパクトで、かつ、製造が容易である。
【0105】
アクチュエータ技術としてのSMA材料の重要な利点の1つは、そのエネルギー密度(所与の材料質量に対して利用することができる機械的なエネルギー)が極めて高いことである。したがってSMAアクチュエータ20および関連する機構を極端に小さくすることができ、したがってOISを実現するために必要なカメラ装置1のサイズの増加は、ごくわずかである。また、SMAアクチュエータ20は大きい力を引き渡すことも可能である。これらの要因は、いずれも、SMAを小型カメラユニット100用OISシステムのためのアクチュエータを提供するのに極めて適したものにしている。
【0106】
さらに、SMAアクチュエータ20は、OISを実現するだけの十分な応答速度を備えることができることが認識されている。通常、個々のSMAアクチュエータ20は比例駆動され、それにより最大10Hz、最大20Hzまたは最大30Hzの周波数帯域幅にわたって位置を制御する。アクチュエータとしてのSMAの認識されている欠点は、その応答時間が遅いことである。SMAアクチュエータ20は熱によって駆動されるため、応答時間は達成可能な温度変化によって制限されており、熱伝導率、比熱容量および熱質量に関連している。
【0107】
SMAワイヤの加熱は、駆動電流の電力を大きくすることによって強化することができるが、冷却は、SMAワイヤ片21の厚さに依存している。SMAワイヤ片21の厚さは、冷却中に所望の応答時間が実現されるように選択される。現時点における商用的に利用可能な最も薄い材料である厚さ25μmのSMAワイヤ21の場合、熱応答は、4Hzでロールオフを開始する。OIS機能の解析によれば、機能要求事項は、最大30Hzの帯域幅にわたる運動補償を実現することである。しかしながら、必要な応答の振幅は、作動帯域幅にわたって著しく小さくなり、したがってより小さい運動のみが必要である(例えば20Hzを超える周波数で10μm未満)。
【0108】
驚くべきことには、4Hzを超えるSMAワイヤ応答におけるロールオフにもかかわらず、SMAワイヤ21は、依然として30Hzにおける変位要求事項を引き渡すことができ、したがってSMAアクチュエータ20は、首尾よく小型カメラのためのOISの駆動要求事項を満足することができる。
【0109】
図21は、SMAアクチュエータ20のための駆動信号を生成するための制御回路80を示したもので、以下、この制御回路80について説明する。
【0110】
制御回路80は、ジャイロスコープセンサ71の出力信号が供給され、その出力信号に応答して、個々のSMAアクチュエータ20に関する制御信号を生成するSMAコントローラ81を備えている。SMAコントローラ81は、プロセッサの中で実施することができ、また、制御アルゴリズムに従って制御信号を生成することができる。制御信号は、ジャイロスコープセンサ71の出力信号によって表される振動を補償するために個々のSMAアクチュエータ20から要求される駆動度を表している。したがって、光軸Oに対して垂直な対応する仮想軸の周りの必要な傾斜度を実現する差動変位をもたらすために、対向する一対のSMAアクチュエータ20のための制御信号が生成される。事実上、これは、制御信号の差がその軸の周りの被要求傾斜角度を表していることを意味している。
【0111】
理想的には、ジャイロスコープセンサ71が整列して、対向するSMAアクチュエータ20の個々の対がカメラユニット100を傾斜させることができる軸と整列している直交軸の周りの傾斜を表す2つの出力信号が提供される。この場合、対向するSMAアクチュエータ20の個々の対のための制御信号は、出力信号のうちの単一の1つから引き出される。しかしながら、良好に整列していない場合、あるいはジャイロスコープセンサ71がより多くの出力信号を提供している場合、対向するSMAアクチュエータ20の個々の対のための制御信号は、出力信号の線形結合から引き出される。
【0112】
SMAコントローラ81の中で実施される制御アルゴリズムは、ジャイロスコープセンサ71の位置が異なっているため、第1の構造と第3の構造の間で異なっている。第1の構造では、ジャイロスコープセンサ71は支持構造2に固定されており、したがって出力信号は支持構造2の振動を表している。このような振動は必ず存在しており、OISは、カメラユニット100を逆方向に傾斜させることによって実施される。したがってSMAコントローラ81は、ジャイロスコープセンサ71によって測定される実際の傾斜とは逆の被要求傾斜角度を実現する制御信号を生成している。第3の構造では、ジャイロスコープセンサ71はカメラユニット100に固定されており、したがって出力信号はカメラユニット100の振動を表している。OISは、これらの振動を小さくするよう作用する形でカメラユニット100を傾斜させることによって実施される。したがってSMAコントローラ81は、ジャイロスコープセンサ71によって測定される実際の傾斜を小さくする被要求傾斜角度を実現する制御信号を生成している。実際には、これは、ジャイロスコープセンサ20とSMAアクチュエータ20の出力の間に大きい利得を使用して、駆動回路82にSMAアクチュエータ20の比例制御を適用することにより、第3の構造を使用してより正確な補償がより容易に実現されることを意味している。
【0113】
個々のSMAアクチュエータ20のための制御信号は、その制御信号に基づいて駆動信号を生成し、かつ、SMAアクチュエータ20に駆動信号を供給する個々の駆動回路82に供給される。駆動回路82は、図22に示されている構造とまったく同じ構造を有している。
【0114】
駆動回路82には、SMAコントローラ81から制御信号が供給され、かつ、抵抗帰還を使用してドライバ84を制御する駆動コントローラ83が含まれている。駆動コントローラ83は、プロセッサの中で実施することができる。SMAコントローラ81および駆動コントローラ83は、理解を容易にするために個別のコンポーネントとして示されているが、それらは共通のプロセッサの中で実施することも可能である。
【0115】
ドライバ84は、SMAアクチュエータ20に駆動電流を供給するために接続されている。ドライバ84は、定電圧の電流源であっても、あるいは定電流の電流源であってもよい。例えば後者の場合、定電流は120mA程度にすることができる。
【0116】
駆動回路82には、さらに、SMAアクチュエータ20の抵抗を検出するようになされた検出回路85が含まれている。ドライバ84が定電流の電流源である場合、検出回路85は、SMAワイヤ片21の抵抗の測度であるSMAアクチュエータ20の両端間の電圧を検出するように作動させることができる電圧検出回路であってもよい。ドライバ84が定電圧の電流源である場合、検出回路85は電流検出回路であってもよい。精度の度合いがより高い場合、検出回路85は、SMAアクチュエータの両端間の電圧および電流の両方を検出し、かつ、それらの比率として抵抗の測度を引き出すように作動させることができる電圧検出回路および電流検出回路を備えることができる。
【0117】
駆動コントローラ82は、ドライバ84を制御してパルス幅変調電流を供給するようになされている。駆動コントローラ82は、検出回路54によって測定された抵抗を受け取り、受け取った抵抗を閉ループ制御アルゴリズムにおける帰還信号として使用してドライバ84のPWMデューティサイクルを制御し、それにより、駆動回路20に供給される制御信号によって表される要求に応じてSMAアクチュエータ20を駆動する。閉ループ制御は比例制御であってもよい。
【0118】
SMAアクチュエータ20の電気抵抗を機能運動範囲全体にわたる位置に関連する帰還パラメータとして使用することにより、SMA材料の収縮および膨張は、その電気抵抗に対して概ね線形関係にある。ヒステリシスおよびクリープを含む非線形性は、ある程度まで生じる。これらの非線形性は無視することができるが、より良好な線形性のためには、これらの非線形性を閉ループ制御アルゴリズムに考慮することも可能である。
【0119】
この駆動回路85およびそのアルゴリズムは、SMAアクチュエータ20の制御には極めてうまくいっているが、バッチ間におけるSMA材料特性の自然の変動、およびばね剛性などの他の製造公差ならびにアセンブリ配置公差のため、被要求傾斜の特定の変化に対応するカメラユニット100の実際の傾斜変化にはある程度の変動があり、精度は恐らくせいぜい約10%程度にすぎない。
【0120】
この変動は、多くの方法で抑制することができる。
【0121】
第1の構造の場合、簡便な手法の1つは、要約すると、SMAアクチュエータ20の精度誤差をSMA駆動制御利得の誤差、例えば個々のSMAアクチュエータ20の変位とその電気抵抗の間の利得の誤差として考慮することである。抵抗の特定の(準線形)変化に対応する位置の変化は利得に対応しており、したがってすべての誤差をこの利得の誤差として考慮することができる。この利得は、製造中に、アクチュエータ20の変位の測値に基づいて個々のカメラ装置1毎に較正することができる。
【0122】
他の手法は、カメラユニット100にジャイロスコープセンサ71または他の振動センサを配置し、それらがカメラユニット100の実際の振動を検知するようにすることである。これにより多くの利点が提供される。
【0123】
第1に、OIS制御アルゴリズムの目的は、検出された傾斜に対して逆の修正を施すのではなく、ジャイロスコープセンサ71によって検出された振動を最小化するようになっている。ジャイロスコープセンサ71の出力信号は、カメラの振動が使用者の手のぶれなどのシステムのベース励起によるものであるかどうかに無関係に、あるいはSMA制御利得の精度の誤差によるものであるかどうかに無関係に、実際の振動を検知している。したがってSMAアクチュエータ利得を最適化し、それによりジャイロスコープセンサによって検知される傾斜を最小化することが可能になっている。特に、制御回路80は調整可能利得を有しており、その利得を調整して検知された振動を最小化するようになされている。総合利得は、SMAコントローラ81および/または駆動コントローラ83の利得を調整することによって調整することができる。
【0124】
第2に、イメージセンサ101を取り付けるために使用されるPCB68と同じPCB68上にジャイロスコープセンサ71を取り付けることができるため、電気接続のために便利であり、また、制御回路80を取り付けるための便利な場所が提供される。
【0125】
第1または第3の構造に適用することができる代替スキームは、専用の較正ルーチンを使用することであり、制御回路80がSMAアクチュエータ20からの慎重な振動を要求し、次に、誘導された振動がジャイロスコープセンサ71によって検知され、したがって実際の傾斜振動を検知することができる。ジャイロスコープセンサ71の出力信号に基づいて、要求された傾斜と測定された傾斜が一致するまで利得が調整される。このスキームには、ベース励起振動を無視することができるか、あるいは検知された振動からデコンボルブ(deconvolve)できることが仮定されている。
【0126】
複数の個別のSMAアクチュエータ20が存在しているため、個々のSMAアクチュエータ20は、上で説明したアルゴリズムの一部として個々に最適化することができる可変利得を有することができる。
【0127】
第3の構造の特定の態様は、SMAアクチュエータ20の圧着部材22が、第1および第2の構造の場合のように支持構造にではなく、カメラユニット100に接続されていることである。事実上、これは、SMAアクチュエータ20を取り付ける方法とは逆である。この手法には2つの主要な利点がある。
【0128】
第1の利点は、カメラユニット100が実体のある固体コンポーネントであるため、カメラユニット100とSMAアクチュエータの統合が単純であることである。
【0129】
第2の利点は、より幅の広いOISシステムの電子機器構成に関連している。SMAアクチュエータ20はカメラユニット100に固定されるため、SMAアクチュエータ20およびイメージセンサ101の両方に対して電気接続がカメラユニット100の中で実施することができ、特にPCB68から実施することができる。そのため、同じコンポーネント内で両方の電気接続を実施することによって電子機器構成が単純化される。また実際には、これによりシステムの総体積が縮小される。
【0130】
関連するポイントは、第3の構造では同じくカメラユニット100に取り付けられるジャイロスコープセンサ71に関連している。一般に、OISの実現には、カメラの振動をモニタするためのジャイロスコープセンサ71などの振動センサが必要である。制御回路は、典型的にはプロセッサの中で実施される制御アルゴリズムに振動センサの出力信号を使用しており、それにより、振動を抑制し、かつ、カメラユニット100の配向を維持するために必要なSMAアクチュエータ20の駆動を表す制御信号を生成している。また、制御回路には、制御信号に基づいてSMAアクチュエータ20のための駆動信号を生成するための電子コンポーネントを含んだ駆動回路が含まれている。SMAアクチュエータ20はカメラユニット100に固定されるため、制御回路全体およびそのすべての接続をカメラユニット100の中に設置することができる。さらに、カメラユニット100にジャイロスコープセンサ71を設け、あるいは広く任意の振動センサを設けることにより、上で説明したように、制御回路の中で実施される制御アルゴリズムの作動における利点が提供される。
【0131】
この方法によれば、支持構造2には電気接続は不要であり、すべての接続は、単純に、いずれの場合においてもイメージセンサ101のための電気接続を必要とすることになるカメラユニット100に対して実施される。
【符号の説明】
【0132】
1 カメラ装置(カメラユニット)
2 支持構造
3、40 シャーシ
4 ベース
5 ベースの正方形部分
6 ベースの正方形部分から横方向に突出している延長部分
7 コンタクト
8、42 シャーシの側壁
10、32、60 サスペンションシステム
11、33、61 たわみエレメント(たわみビーム)
12、62 たわみビーム
13 サスペンションシステムの中間部分
14 マウント(取付け部分、取付けプレート)
15、65 サスペンションシステムの隅部分
18 缶
19 缶のリップ
20 SMAアクチュエータ
21 SMAワイヤ片
22 圧着部材
23 エンドストップ
24 中間部分の一部を形成している突起
25 開口
26 カバー
30 ハウジング
31 カメラマウント
34 シャーシの側壁の内側を平行に延在している壁
34 ボス
35 フランジ
36 ハウジングのリップ
40 取付けプレート
41 ベースマウント
43 カットアウト(凹所)
44 フック
45 ベースマウント中のスロット
45 カットアウトの末端表面
50 キャリッジ
51 キャリッジの側壁
52 取付けブロック
53 取付けブロックの凹所
63 中間取付けプレート
65 隅取付けプレート
66 付勢ばね
67 ベースプレート
68 プリント回路基板(PCB)
70 集積回路(IC)チップ
71 ジャイロスコープセンサ
80 制御回路
81 SMAコントローラ
82 駆動回路
83 駆動コントローラ
84 ドライバ
85 検出回路
100 カメラユニット
101 イメージセンサ
102 レンズシステム(レンズエレメント)
103 カメラサポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造と、
イメージセンサおよび前記イメージセンサ上に画像を結像させるためのレンズシステムを備えたカメラユニットと、
前記カメラユニットが、互いに垂直でかつ前記レンズシステムの光軸に対して垂直な2つの仮想軸の周りで自在に傾斜し、さらに前記光軸に沿って移動することを可能にするように、前記カメラユニットを前記支持構造で支持するサスペンションシステムと、
前記カメラユニットと前記支持構造の間に接続された少なくとも3つのSMAアクチュエータであって、収縮時に前記カメラユニットを前記光軸に沿って前記支持構造に対して移動させるように配置され、収縮して差動変位すると前記カメラユニットを傾斜させるように前記光軸の周りの異なる位置に配置されたSMAアクチュエータと、を備えたカメラ装置。
【請求項2】
前記サスペンションシステムが複数のたわみエレメントを備え、前記複数のたわみエレメントが、前記たわみエレメントが偏倚するときに互いに垂直かつ前記レンズシステムの前記光軸に対して垂直な2つの仮想軸の周りで前記カメラユニットが傾斜できるように、前記カメラユニットを前記支持構造で支持する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記SMAアクチュエータの収縮時、複数の前記たわみエレメントの偏倚によって、前記SMAアクチュエータに対して反作用する唯一の付勢力が提供される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記サスペンションシステムとは別に、前記SMAアクチュエータが収縮すると前記SMAアクチュエータに対して反作用する付勢力を提供する付勢エレメントをさらに備えた、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
個々のSMAアクチュエータが、前記カメラユニットと前記支持構造との間で、前記光軸からの仮想線に対して垂直に延在するSMAワイヤ片を備えた、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
個々のSMAアクチュエータが、前記カメラユニットと前記支持構造との間で、前記光軸に対して非ゼロ角度で延在するSMAワイヤ片を備えた、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記SMAアクチュエータが前記光軸の周りの異なる位置に等間隔を隔てて配置された、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
4つのSMAアクチュエータを備えた、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
支持構造と、
イメージセンサおよび前記イメージセンサ上に画像を結像させるためのレンズシステムを備えたカメラユニットと、
複数のたわみエレメントを備えたサスペンションシステムであって、前記複数のたわみエレメントは、該たわみエレメントが偏倚すると、互いに垂直でかつ前記レンズシステムの光軸に対して垂直な2つの仮想軸の周りで前記カメラユニットが傾斜できるように、前記カメラユニットを前記支持構造で支持するサスペンションシステムと、
複数のSMAアクチュエータであって、それぞれ前記カメラユニットと前記支持構造との間で接続され、収縮すると前記カメラユニットを傾斜させるように配置された複数のSMAアクチュエータと、を備えたカメラ装置。
【請求項10】
前記SMAアクチュエータが、それぞれ一片のSMAワイヤを備え、前記SMAワイヤは、その両方の末端で前記カメラユニットおよび前記支持構造のうちの一方に固定され、その末端を介して、中央部が前記カメラユニットおよび前記支持構造のうちのもう一方に接続された個々のたわみエレメントの一部に引っ掛けられ、前記SMAアクチュエータの収縮時に前記カメラユニットを傾斜させるように配置され、前記たわみエレメントの偏倚によって、前記SMAアクチュエータに対して反作用する付勢力が提供される、請求項9に記載のカメラ装置。
【請求項11】
前記たわみエレメントが、それぞれ、前記カメラユニットおよび前記支持構造のうちの前記もう一方に接続されている中間部分から、前記カメラユニットおよび前記支持構造のうちの前記一方に接続されている部分まで延在している一対のたわみビームを備え、前記SMAワイヤ片が前記中間部分に引っ掛けられた、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記中間部分が前記光軸に沿って前記たわみビームから突出している、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記たわみエレメントが一体形成された、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記たわみエレメントがそれぞれ整形された材料シートである、請求項11または12に記載の装置。
【請求項15】
個々のSMAワイヤ片が、前記カメラユニットおよび前記支持構造のうちの前記一方と、前記カメラユニットおよび前記支持構造のうちの前記もう一方に接続された個々のたわみエレメントの一部の間を、前記光軸からの仮想線に対して垂直に延在している、請求項10から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記SMAワイヤ片が、前記光軸に対して非ゼロ角度で延在している、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
複数の前記たわみエレメントの偏倚によって、前記SMAアクチュエータに対して反作用する唯一の付勢力が提供される、請求項10から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記サスペンションシステムとは別に、前記SMAアクチュエータの収縮時に前記SMAアクチュエータに対して反作用する付勢力を提供する付勢エレメントをさらに備えた、請求項10から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記カメラユニットおよび前記支持構造のうちの前記一方が前記支持構造であり、また、前記カメラユニットおよび前記支持構造のうちの前記もう一方が前記カメラユニットである、請求項10から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記サスペンションシステムとは別に、前記SMAアクチュエータの収縮時に前記SMAアクチュエータに対して反作用する付勢力を提供する付勢エレメントをさらに備えた、請求項9に記載のカメラ装置。
【請求項21】
前記付勢エレメントがコイル状に巻かれたばねを備えた、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記SMAアクチュエータが、前記光軸の周りの異なる位置に等間隔で配置された、請求項20または21に記載の装置。
【請求項23】
4つのSMAアクチュエータを備えた、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
支持構造と、
イメージセンサおよび前記イメージセンサ上に画像を結像させるためのレンズシステムを備えたカメラユニットと、
互いに垂直で前記レンズシステムの光軸に対して垂直な2つの仮想軸の周りで前記カメラユニットが傾斜することを可能にするように、前記カメラユニットを前記支持構造で支持するサスペンションシステムと、
複数のSMAアクチュエータであって、それぞれ、収縮すると前記カメラユニットを傾斜させるように配置された一片のSMAワイヤを備え、個々のSMAワイヤ片がその両方の末端で前記カメラユニットに固定され、前記支持構造のエレメントに引っ掛けられた複数のSMAアクチュエータと、を備えたカメラ装置。
【請求項25】
前記SMAワイヤ片が、前記SMAワイヤを圧着する圧着部材によって前記カメラユニットに固定された、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記カメラユニットが、前記カメラユニットに固定された前記SMAワイヤ片の前記末端に電気接続され、前記カメラユニットに駆動信号を供給するための制御回路をさらに備えた、請求項24または25に記載の装置。
【請求項27】
前記カメラユニットに取り付けられ、前記カメラユニットの振動を表す出力信号を生成するようになされた振動センサをさらに備え、前記制御回路が、振動センサの前記出力信号に応答して前記駆動信号を生成するようになされた、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記制御回路が調整可能利得を有し、その利得を調整することによって検知された振動を最小化するようになされた、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
前記振動センサが、前記カメラユニットの角速度を表す出力信号を生成するようになされた、請求項27または28に記載の装置。
【請求項30】
前記振動センサがジャイロスコープセンサである、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
支持構造と、
イメージセンサおよび前記イメージセンサ上に画像を結像させるためのレンズシステムを備えたカメラユニットと、
互いに垂直でかつ前記レンズシステムの光軸に対して垂直な2つの仮想軸の周りで前記カメラユニットが傾斜することを可能にするように、前記カメラユニットを前記支持構造で支持するサスペンションシステムと、
前記カメラユニットを傾斜させるようになされたアクチュエータ構造と、
前記カメラユニットに取り付けられ、前記カメラユニットの振動を表す出力信号を生成するようになされた振動センサと、
駆動信号を供給するために前記アクチュエータ構造に接続された制御回路であって、前記振動センサの前記出力信号に応答して前記駆動信号を生成するようになされた制御回路と、を備えたカメラ装置。
【請求項32】
前記制御回路が調整可能利得を有し、その利得を調整することによって検知された振動を最小化するようになされた、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記振動センサが、前記カメラユニットの角速度を示す出力信号を生成するようになされた、請求項31または32に記載の装置。
【請求項34】
前記振動センサがジャイロスコープセンサである、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記アクチュエータ構造が、それぞれ、収縮すると前記カメラユニットを傾斜させるようになされた複数のSMAアクチュエータを備えた、請求項31から34のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2012−502323(P2012−502323A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526556(P2011−526556)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002195
【国際公開番号】WO2010/029316
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(509227089)ケンブリッジ メカトロニクス リミテッド (8)
【Fターム(参考)】