説明

光学的に純粋な12‐ヒドロキシステアリン酸の製造方法

【課題】
従来困難であるとされた、光学的に純粋で立体化学の絶対配置が明確な12−ヒドロキシステアリン酸を製造する方法、すなわち、光学的に100%e.e.の(S)−12−ヒドロキシステアリン酸及び(R)−12−ヒドロキシステアリン酸の製造方法の提供。
【解決手段】
分子内に三重結合を導入した12‐ヒドロキシステアリン酸誘導体(a)を合成する工程、(a)とラセミ体アルコールと光学分割剤を反応させてエステル(b)を生成せしめる工程、前記エステル(b)のジアステレオマーをHPLCにて分取した後、各エステルのNMR測定を行い、アドバンスモッシャー法を用いてアルコール部の絶対配置を決定する工程、前記誘導体(a)を脱保護、酸化反応を経てカルボン酸エステル(c)に誘導する工程、(c)の三重結合を還元することにより飽和の12‐ヒドロキシステアリン酸誘導体(d)を得た後、それらを加水分解する工程、
とからなる方法で製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料の増粘剤などの各種添加剤として広く利用されている、12‐ヒドロキシステアリン酸に関し、詳しくは、化粧品、医薬分野へ適用し得る、光学的に純粋で立体化学の絶対配置が明確な12−ヒドロキシステアリン酸の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
12‐ヒドロキシステアリン酸は、塗料添加剤、工業用潤滑剤、化粧品、医薬品などに広く利用されており、ヒマシ油の主成分であるリシノール酸の水添で得ることができる。しかし、その天産品は、旋光度[α]が−0.3度と小さく光学純度や絶対配置は不明のまま利用されていた。リシノール酸を多く含む植物油脂はヒマシ油以外にはないが、生産地はインドやブラジルなどの熱帯地方であり、現地の気候や政治情勢の変化による原料供給の不安、あるいは近年のバイオマス需要の高まりから、販売価値の高いトウモロコシ等のバイオ燃料用穀物の栽培へと変化してゆくことも懸念されている。
【0003】
そのような中で、多量に利用する時代から、付加価値をもった新しい材料として、化粧品、医薬分野への展開を進めるためには、純度や絶対配置のはっきりした材料として、その標準物質を製造して行く必要がある。
しかし、光学的に純粋な12−ヒドロキシステアリン酸を得る方法は、これまで知られていなかった。これは、長鎖脂肪族アルコール類の光学純度及び絶対配置の決定が、従来法では大変困難であることが知られており、12−ヒドロキシステアリン酸についても行われていなかったことによる。
【0004】
光学活性な化合物を製造する技術としては、特許文献1が挙げられる。この文献の方法は、ナフタレン環と定量的に反応することができるカルボキシル基を4級炭素原子上に有する光学活性化合物を用いてアルコールのラセミ体と反応させてエステルを生成せしめ、このエステルのジアステレオマーをHPLCにて分取した後、加水分解することにより光学活性アルコールの製造方法である。この方法によれば、光学純度100%で生成させることができる。
【0005】
また、特許文献2によれば、第三級カルボン酸の光学分割法が提供され、ラセミ第三級カルボン酸と光学活性フェニルアラニノールのアミド体ジアステレオマーを使用することにより可能となった、光学的に純粋な第三級カルボン酸の製造について開示されている。
【0006】
不斉補助化合物:2−メトキシ−2−(1−ナフチル)プロピオン酸[MαNP acid3]が第2級アルコール類の光学分割及び絶対配置決定に有効であることは報告されている。(非特許文献1)
【0007】
本発明者らは、既に(R)-(-)-MαNP acidを用いて天産品の12-ヒドロキシステアリン酸の絶対配置をR体と決定し、(R)-(-)-MαNP acidを用いて光学活性なヒドロキシステアリン酸化合物の合成も検討している(非特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−261586号公報
【特許文献2】特開2006−328036号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】N.Harada,;M.Watababe,;et al,Chirality,16,569-585,(2004)
【非特許文献2】佐藤ら,第52回TEAC講演要項集,P.486-488,(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来困難であるとされた、光学的に純粋で立体化学の絶対配置が明確な12−ヒドロキシステアリン酸を製造する方法、すなわち、光学的に100%e.e.の(S)−12−ヒドロキシステアリン酸及び(R)−12−ヒドロキシステアリン酸の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
長鎖脂ヒドロキシカルボン酸誘導体である12−ヒドロキシステアリン酸誘導体に、炭素数が少ない側鎖に三重結合を持たせ、二級アルコール部を光学分割剤MαNPacidでエステル体として、1H−NMR法を用いることによって、その絶対配置を明確とし、さらにそれを還元することによって、光学的に純粋な12−ヒドロキシステアリン酸を製造する。
【0012】
その結果、それを基準に天産品(ヒマシ油)由来の12−ヒドロキシステアリン酸がR体であることが証明された。さらに、これを基準として、初めから三重結合を持たないラセミ体の12−ヒドロキシステアリン酸に光学分割剤を反応したジアステレオマーをHPLC分取し、そのデータを比較することによって絶対配置が明確で光学的に純粋な12−ヒドロキシステアリン酸を得ることができた。この手法を用いることによって、絶対配置が明確で光学的に純粋な、炭素数の異なる(アルコール部の両端の炭素数がR=C3〜C20ぐらいまで)長鎖ヒドロキシカルボン酸誘導体の製造が可能となった。
【0013】
すなわち、本発明は、次の技術を基礎とする。
光学的に純粋で立体化学の絶対配置が明確な12‐ヒドロキシステアリン酸を製造する方法であって、
分子内に三重結合を導入した12‐ヒドロキシステアリン酸誘導体(a)を合成する工程、
(a)とラセミ体アルコールと光学分割剤を反応させてエステル(b)を生成せしめる工程、
前記エステル(b)のジアステレオマーをHPLCにて分取した後、各エステルのNMR測定を行い、アドバンスモッシャー法を用いてアルコール部の絶対配置を決定する工程、
前記誘導体(a)を脱保護、酸化反応を経てカルボン酸エステル(c)に誘導する工程、
(c)の三重結合を還元することにより飽和の12‐ヒドロキシステアリン酸誘導体(d)を得た後、それらを加水分解する工程、
からなることを特徴とする、光学的に純粋で立体化学の絶対配置が明確な12‐ヒドロキシステアリン酸の製造方法。
光学的に純粋で立体化学の絶対配置が明確な12‐ヒドロキシステアリン酸として、(S)−12−ヒドロキシステアリン酸及び(R)−12−ヒドロキシステアリン酸の双方を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、従来困難であるとされた、光学的に純粋で立体化学の絶対配置が明確な12−ヒドロキシステアリン酸を製造する方法、すなわち、光学的に100%e.e.の(S)−12−ヒドロキシステアリン酸及び(R)−12−ヒドロキシステアリン酸の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明による(±)-Methyl 12-hydroxyoctadec-13-ynoate の合成例を示す図である。
【図2】図2は 本発明による18-(tert-butyldimethylsilyloxy)octadec-5-yn-7-ol の合成例を示す図である。
【図3】図3は、本発明による(2R)-18-(tert-butyldimethylsilyloxy)octadec-5-yn-7-yl 2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoateの合成と光学分割の例を示す図である。
【図4】図4は、本発明による(2R)-18-(tert-butyldimethylsilyloxy)octadec-5-yn-7-yl 2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoateの脱保護と光学分割の例を示す図である。
【図5】図5は、本発明による(2R)-18-hydroxyoctadec-5-yn-7-yl 2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoateの酸化例を示す図である。
【図6】図6は、本発明による(2R)-18-oxooctadec-5-yn-7-yl 2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoateの酸化例を示す図である。
【図7】図7は、本発明によるmethyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadec-13-ynoateの合成例を示す図である。
【図8】図8は、本発明による(R)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadecanoateの合成 (三重結合の還元)例を示す図である。
【図9】図9は、本発明による(S)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadecanoateの合成例を示す図である。
【図10】図10は、本発明による(±)methyl 12-hydroxyoctadecanoateの光学分割の例を示す図である。
【図11】図11は、本発明による(R)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadecanoateの加水分解例を示す図である。
【図12】図12は、本発明による(S)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadecanoateの加水分解を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の方法により、構造式−1(化1)及び構造式−2(化2)に示す、光学的に純粋な12−ヒドロキシステアリン酸を得ることに成功した。
【0017】
【化1】

【0018】
【化2】

【0019】
分子内に三重結合を導入した12−ヒドロキシステアリン酸誘導体(構造式−3:化3)をそれぞれの合成法によって化学合成後、ラセミ体アルコールと光学分割剤(構造式−4:化4)を反応させエステル(構造式−5:化5)を生成せしめる。
【0020】
【化3】

(式中、Rは、CHOTBS又はCOOMe)
【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

(式中、Rは、CHOTBS又はCOOMe)
【0023】
このエステルのジアステレオマーをHPLCにて分取した後、各エステルのNMR測定を行い、アドバンスモッシャー法を用いてアルコール部の絶対配置を明確に決定した三重結合を有する12−ヒドロキシステアリン酸誘導体(構造式−6及び7:化6及び7)を得る。
【0024】
【化6】

(式中、Rは、CHOTBS又はCOOMe)
【0025】
【化7】

(式中、Rは、CHOTBS又はCOOMe)
【0026】
この誘導体のRがCHOTBSであるジオール誘導体を、脱保護、酸化反応を経てカルボン酸エステル(R=COOMe)に誘導した後、三重結合を還元することにより飽和の12−ヒドロキシステアリン酸誘導体(構造式−8及び9:化8及び9)を得、それらエステルを加水分解することにより12−ヒドロキシステアリン酸(構造式‐1及び2:化1及び2)を得る。
これらの12−ヒドロキシステアリン酸は光学的に純粋である。
【0027】
【化8】

【0028】
【化9】

【0029】
以下、本発明に係る製造方法を、実施例により説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
<(±)-Methyl 12-hydroxyoctadec-13-ynoate の合成>
図1に示す反応で合成を行った。
【0031】
(Grignard 試薬の調整)
アルゴンで満たした 100ml の二口フラスコに、Mg 92mg(3.78mmol)、I2、Dry - ether 28ml を入れて攪拌した。I2 の色が消えるまでドライヤーで反応容器を温めた。ドライヤーで容器を温めつつ、Dry - ether 3.6mlで希釈したEthyl bromide 395mg (3.62mmol)を滴下した。Mgが完全に消失するまで、1時間攪拌した。次に室温で、Dry - ether 4.0mlで希釈した1-Hexyne 336mg (4.09mmol)を滴下し、3時間加熱還流することにより、Grignard 試薬を調整した。
【0032】
(Grignard 反応)
アルゴンで満たした 200ml の二口フラスコに、Aldehyde 14, Dry - ether 11ml を入れて氷温で攪拌した。先に調整したGrignard 試薬 をシリンジで吸い上げ、Aldehyde 14 の入った反応容器にゆっくりと氷温で滴下した。氷温で1時間攪拌した後、室温に戻して一晩攪拌した。氷温で反応液に 飽和NH4Cl 水溶液を滴下して反応を停止した。反応液を分液し、有機層を飽和NaCl 水溶液で2回洗った。水層を EtOAc で抽出し、先の有機層といっしょにし MgSO4 で脱水した後、減圧濃縮した。濃縮残留物を 綿、 シリカゲル、 セライト の順に詰めたカラムに通し、EtOAc を流してろ過した。ろ液を減圧濃縮し、得られた粗精製物をシリカゲルカラム (Hexane / EtOAc = 10 / 1) で精製し、目的物381mg(収率39%)を無色油状物として得た。
【0033】
得られた、(±)-Methyl 12-hydroxyoctadec-13-ynoateの物性値は以下の通りであった。
[物性値]:
Colorless oil; IR (KBr) ν cm-1: 3482, 2929, 2856, 1741, 1465, 1436, 1170, 1016; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.88 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.17-1.51 (m, 19H), 1.53-1.70 (m, 4H), 2.18 (dt, J = 6.8, 6.8, 1.8 Hz, 2H), 2.28 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 3.64 (s, 3H), 4.32 (dddd, J = 6.6, 6.6, 1.8, 1.8 Hz, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 13.5, 18.3, 21.8, 24.8, 25.1, 29.0, 29.1, 29.2, 29.3, 29.40, 29.45, 30.7, 34.0, 38.1, 43.8, 51.3, 62.6, 81.3, 85.3, 174.3.
【0034】
<18-(tert-butyldimethylsilyloxy)octadec-5-yn-7-ol の合成>
図2に示す反応で合成を行った。
【0035】
アルゴンで満たした100 ml の二口フラスコに、1-hexyne 337mg(4.10mmol)、Dry-ether 8mlを加えて0℃で10分攪拌した。0℃でn-BuLiをゆっくり滴下し、15分攪拌した。0℃でDry-ether 8ml で希釈した 原料アルデヒド を滴下し、30分攪拌した。TLC (Hexane / EtOAc = 10 / 1) にて原料の消失を確認し、0℃で飽和NH4Cl水溶液を加えて反応を停止した。反応液にEtOAcを加えて希釈し、MgSO4を加えて脱水した。反応液を、綿、セライト、シリカゲルの順に詰めたカラムに通して溶媒 (EtOAc ) を流してろ過し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮残留物をシリカゲルカラム (Hexane / EtOAc = 18 / 1) にて精製した。目的物を無色油状物として910mg,収率82%で得た。
【0036】
得られた、(R)-((R)-18-(tert-butyldimethylsilyloxy)octadec-5-yn-7-yl) 2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoate の物性値は以下の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (KBr) ν cm-1: 3365, 2927, 2856, 1741, 1463, 1255, 1099, 835, 775; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.03 (s, 6H), 0.89 (m, 12H), 1.20 (m, 15H), 1.34-1.52 (m, 8H), 1.57-1.71 (m, 2H), 2.19 (ddd, J = 7.1, 7.0, 1.8 Hz, 2H), 3.58 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 4.32 (dddd, J = 6.6, 6.6, 1.8, 1.8 Hz, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: -5.2, 13.8, 18.3, 21.8, 25.1, 25.7, 25.9, 29.2, 29.4, 29.52, 29.54, 29.59, 30.7, 32.8, 38.1, 62.7, 63.3, 81.33, 85.3.
【0037】
<(2R)-18-(tert-butyldimethylsilyloxy)octadec-5-yn-7-yl 2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoateの合成と光学分割>
図3に示す反応で合成と光学分割を行った。
【0038】
アルゴンで満たした 20 ml のナス型フラスコに、(R )-(-)-4 138mg (0.60mmol)、DIC(ジイソプロピルカルボジイミド)101mg (0.79mmol)、DMAP・1/5 CSA 混合試薬 67mg (0.39mmol)、Dry - CH2Cl2 0.8 mlを入れ、0℃に冷却した。氷冷下、原料 のアルコール を加え、0℃で30分攪拌した後、室温で24時間攪拌した。TLC (Hexane / EtOAc= 10 / 1) にて原料の消失を確認し、少量の水を加えて反応を停止した。EtOAc を加えて希釈し、MgSO4 を加えて脱水した後、セライト を詰めたカラムに通し、EtOAc を流してろ過した。ろ液を減圧濃縮し、得られた粗精製物をシリカゲルカラム (Hexane / EtOAc = 10 / 1) で粗分離し、減圧濃縮した後、HPLC (順相中圧カラム ; Hexane / EtOAc= 30 / 1) で光学分割した。第一溶出成分 (R,R )-体 (無色油状物 99 mg, Y. 41%), 及び 第二溶出成分 (R,S )- 体 (無色油状物 103 mg, Y. 42%) を得た。
【0039】
(R)-((R)-18-(tert-butyldimethylsilyloxy)octadec-5-yn-7-yl) 2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoate の物性値は以下の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (neat) ν cm-1: 2927, 2856, 1735, 1509, 1463, 1249, 1101, 835, 777; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.05 (s, 6H), 0.84 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.89 (s, 9H), 1.09-1.36 (m, 20H), 1.50 (dddd, J = 7.0, 7.0, 7.0, 7.0 Hz, 2H), 1.59 (m, 2H), 1.96-2.04 (m, 2H), 1.98 (s, 3H), 3.17 (s, 3H), 3.58 (dt, J = 17.2, 6.4, 6.4 Hz, 1H), 3.62 (dt, J = 17.3, 6.4, 6.4 Hz, 1H), 5.33 (ddt, J = 6.7, 6.6, 1.9, 1.9 Hz, 1H), 7.42-7.47 (m, 3H), 7.63 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 7.80-7.86 (m, 2H), 8.33-8.38 (m, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: -5.2, 13.6, 18.1, 18.2, 21.7, 22.1, 24.8, 25.7, 25.9, 28.8, 29.3, 29.4, 29.5, 29.6, 30.3, 32.7, 34.8, 51.2, 63.3, 65.6, 81.8, 86.1, 124.6, 125.2, 125.4, 126.1, 128.6, 129.2, 131.2, 134.1, 134.8, 173.0
【0040】
(R)-((S)-18-(tert-butyldimethylsilyloxy)octadec-5-yn-7-yl) 2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoate の物性値は次の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (neat) ν cm-1: 2929, 2856, 1752, 1463, 1249, 1133, 1101, 835, 777; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.05 (s, 6H), 0.55-0.67 (m, 1H), 0.67-0.96 (m, 5H), 0.87 (m, 3H), 0.89 (s, 9H), 1.04 (m, 2H), 1.11-1.45 (m, 8H), 1.51 (dddd, J = 7.0, 7.0, 6.9, 6.8 Hz, 2H), 2.00 (s, 3H), 2.13 (dt, J = 6.8, 6.8, 1.9 Hz, 1H), 2.14 (dt, J = 7.0, 7.0, 1.9 Hz, 1H), 3.09 (s, 3H), 3.58 (ddd, J = 14.0, 6.6, 6.6 Hz, 1H), 3.62 (ddd, J = 14.0, 6.6, 6.6 Hz, 1H), 5.32 (m, 1H), 7.38-7.49 (m, 3H), 7.59 (d, J = 6.8 Hz, 1H), 7.77-7.86 (m, 2H), 8.38-8.44 (m, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: -5.3, 13.5, 18.2, 18.3, 21.3, 21.7, 24.1, 25.7, 25.9, 28.6, 29.1, 29.3, 29.4, 29.50, 29.57, 30.4, 32.8, 34.5, 50.8, 63.2, 65.1, 81.3, 86.0, 124.5, 125.2, 125.6, 125.8, 126.3, 128.5, 129.4, 131.4, 134.1, 134.8, 173.1.
【0041】
<(2R)-18-(tert-butyldimethylsilyloxy)octadec-5-yn-7-yl 2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoateの脱保護と光学分割>
図4に示す反応で脱保護と光学分割を行った。
【0042】
100 ml のナス型フラスコに、原料のMαNP ester 808mg (1.33mmol)、THF 4.4mlを入れ攪拌した。室温でTBAF (1.0M) 417mg (1.59mmol)を加えて、8時間攪拌した。TLC (Hexane / EtOAc = 2 / 1) にて原料の消失を確認し、反応を終了した。反応液を減圧濃縮し、得られた濃縮物をシリカゲルカラム (Hexane / EtOAc = 2 / 1) で粗分離した。減圧濃縮した後、HPLC (順相中圧カラム ; Hexane / EtOAc= 7 / 1) で光学分割した。第一溶出成分 (R,R)-体(無色油状物 283 mg, Y. 43%), 及び 第二溶出成分 (R,S )- 体 (無色油状物 289 mg, Y. 44%) を得た。
【0043】
得られた、(2R)-18-(tert-butyldimethylsilyloxy)octadec-5-yn-7-yl 2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoate の第一溶出成分 (R,R)-体の物性値は以下の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (neat) ν cm-1: 3453, 2927, 2854, 1735, 1465, 1247, 1133, 1052, 804, 779; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.84 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.08-1.39 (m, 20H), 1.51-1.67 (m, 6H), 1.98 (s, 3H), 1.98-2.02 (m, 2H), 3.17 (s, 3H), 3.63 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 5.34 (dddd, J = 6.4, 6.4, 2.0, 2.0 Hz, 1H), 7.42-7.48 (m, 3H), 7.64 (dd, J = 7.3, 0.9 Hz, 1H), 7.80-7.87 (m, 2H), 8.33-8.39 (m, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 13.5, 18.1, 21.7, 22.1, 24.8, 25.7, 28.8, 29.30, 29.39, 29.4, 29.5, 30.3, 32.7, 34.6, 51.2, 63.0, 65.6, 81.8, 86.2, 124.6, 125.2, 125.3, 125.4, 126.1, 128.6, 129.2, 131.0, 134.1, 135.4, 173.0.
【0044】
同じく、第二溶出成分 (R,S)- 体の物性値は以下の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (neat) ν cm-1: 2929, 2854, 1739, 1465, 1436, 1251, 1171, 1133, 805, 781; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.54-0.66 (m, 1H), 0.67-0.97 (m, 5H), 0.88 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.01-1.92 (m, 2H), 1.13-1.48 (m, 12H), 1.62 (dddd, J = 7.4, 7.4, 7.3, 7.3 Hz, 2H), 2.00 (s, 3H), 2.14 (dt, J = 6.8, 6.8, 1.8 Hz, 2H), 2.31 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 3.09 (s, 3H), 3.67 (s, 3H), 5.32 (dddd, J = 6.4, 6.4, 1.8, 1.8 Hz, 1H), 7.41-7.47 (m, 3H), 7.59 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 7.80-7.84 (m, 2H), 8.40-8.44 (m, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 13.4, 18.2, 21.6, 21.7, 24.1, 24.9, 28.6, 29.1, 29.20, 29.28, 29.3, 30.4, 34.0, 34.2, 50.8, 51.4, 65.1, 81.4, 86.1, 124.5, 125.3, 125.6, 126.3, 128.5, 129.4, 131.8, 133.9, 135.0, 173.1, 174.3
【0045】
<(2R)-18-hydroxyoctadec-5-yn-7-yl 2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoateの酸化>
図5に示す反応で酸化を行った。
【0046】
PCC 297mg (1.38mmol)をすり鉢に入れてよくすり潰し、アルゴンで満たした50 ml の二口フラスコに、 PCC、セライト4g、Dry - CH2Cl2 10mlを入れ攪拌した。室温で 原料のMαNP ester 572mg ( 1.15mmol)を加えて、1時間攪拌した。TLC (Hexane / EtOAc = 5 / 1) にて原料の消失を確認し、反応を終了した。反応液を 綿、シリカゲル、セライト の順に詰めたカラムに通し、EtOAc を流してろ過した。ろ液を減圧濃縮し、得られた粗精製物をシリカゲルカラム (Hexane / EtOAc = 5 / 1) で粗分離した。減圧濃縮した後、HPLC (順相中圧カラム ; Hexane / EtOAc= 10 / 1) で光学分割した。第一溶出成分 (R,R)-体 (無色油状物 198 mg, Y. 35%), 及び 第二溶出成分 (R,S )- 体 (無色油状物 220 mg, Y. 39%) を得た。
【0047】
第一溶出成分(R,R)-体の物性値は以下の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (neat) ν cm-1: 2929, 2856, 2717, 1727, 1463, 1238, 1133, 806, 779; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.84 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.08-1.36 (m, 18H), 1.52-1.67 (m, 2H), 1.96-2.05 (m, 2H), 1.98 (s, 3H), 2.41 (ddd, J = 7.3, 7.3, 1.8 Hz, 2H), 3.17 (s, 3H), 5.34 (dddd, J = 6.6, 6.6, 1.8, 1.8 Hz, 1H), 7.40-7.48 (m, 3H), 7.64 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 7.76-7.86 (m, 2H), 8.33-8.37 (m, 1H), 9.75 (t, J = 1.8 Hz, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 13.5, 18.1, 21.7, 22.0, 22.1, 24.8, 28.8, 29.1, 29.3, 30.3, 34.6, 43.8, 51.2, 65.5, 81.7, 86.1, 124.6, 125.2, 125.3, 125.4, 128.6, 129.2, 131.3, 134.2, 135.8, 173.0, 202.9
【0048】
第二溶出成分(R,S)- 体の物性値は以下の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (neat) ν cm-1: 2929, 2856, 2717, 1728, 1463, 1238, 1133, 806, 779; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.55-0.67 (m, 1H), 0.68-0.96 (m, 5H), 0.87 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.01-1.09 (dddd, J = 7.2, 7.2, 7.1, 6.9 Hz, 2H), 1.13-1.47 (m, 12H), 1.62 (dddd, J = 7.6, 7.6, 7.4, 7.3 Hz, 2H), 2.00 (s, 3H), 2.13 (ddd, J = 7.1, 7.1, 1.8 Hz, 2H), 2.42 (ddd, J = 7.3, 7.3, 1.8 Hz, 2H), 3.09 (s, 3H), 5.32 (m, 1H), 7.42-7.47 (m, 3H), 7.59 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 7.79-7.83 (m, 2H), 8.40-8.45 (m, 1H), 9.76 (t, J = 1.6 Hz, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 13.5, 18.2, 21.3, 21.7, 22.0, 24.1, 28.6, 29.1, 29.3, 30.4, 34.6, 43.8, 50.8, 65.1, 81.4, 86.1, 124.5, 125.6, 125.8, 126.3, 128.5, 129.4, 131.7, 134.2, 135.0, 173.1, 202.9
【0049】
<(2R)-18-oxooctadec-5-yn-7-yl 2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoateの酸化>
図6に示す反応で酸化を行った。
【0050】
PDC 1.38g(3.66mmol)をすり鉢に入れてよくすり潰し、アルゴンで満たした100 ml の二口フラスコに、 PDC、セライト1g、Dry-MeOH 0.15ml (3.66mmol)、Dry-DMF 6.0ml (0.1M)を入れ攪拌した。室温で 原料のMαNP ester 300mg (0.61mmol)を加えて、4時間攪拌した。TLC (Hexane / EtOAc = 10 / 1) にて原料の消失を確認し、反応を終了した。反応液にEtOAcを加えて希釈し、反応液を 綿、シリカゲル、セライト の順に詰めたカラムに通し、EtOAc を流してろ過した。ろ液を減圧濃縮し、得られた粗精製物をシリカゲルカラム (Hexane / EtOAc = 10 / 1) で粗分離した。減圧濃縮した後、HPLC (順相中圧カラム ; Hexane / EtOAc= 10 / 1) で光学分割した。第一溶出成分 (R,R)-体(無色油状物 121 mg, Y. 38%), 及び 第二溶出成分 (R,S )-体 (無色油状物 121 mg, Y. 38%) を得た。
【0051】
第一溶出成分(R,R)-体の物性値は以下の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (neat) ν cm-1: 2929, 2854, 1739, 1465, 1436, 1251, 1170, 1133, 806, 782; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.84 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.12-1.36 (m, 18H), 1.57 (m, 2H), 1.59 (m, 2H), 1.98 (s, 3H), 2.00 (m, 1H), 2.01 (m, 1H), 2.30 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 3.17 (s, 3H), 3.66 (s, 3H), 5.33 (dddd, J = 6.7, 6.7, 1.8, 1.8 Hz, 1H), 7.40-7.47 (m, 3H), 7.63 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 7.78-7.86 (m, 2H), 8.31-8.38 (m, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 13.5, 18.2, 21.8, 22.2, 28.8, 29.1, 29.2, 29.30, 29.35, 30.3, 34.1, 34.7, 51.2, 51.4, 65.6, 81.8, 86.2, 124.6, 125.2, 125.3, 126.1, 128.6, 129.2, 131.1, 134.0, 135.7, 173.0, 174.3
【0052】
第二溶出成分(R,S )- 体の物性値は以下の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (neat) ν cm-1: 2929, 2854, 1739, 1465, 1436, 1251, 1171, 1133, 805, 781; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.54-0.66 (m, 1H), 0.67-0.97 (m, 5H), 0.88 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.01-1.92 (m, 2H), 1.13-1.48 (m, 12H), 1.62 (dddd, J = 7.4, 7.4, 7.3, 7.3 Hz, 2H), 2.00 (s, 3H), 2.14 (dt, J = 6.8, 6.8, 1.8 Hz, 2H), 2.31 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 3.09 (s, 3H), 3.67 (s, 3H), 5.32 (dddd, J = 6.4, 6.4, 1.8, 1.8 Hz, 1H), 7.41-7.47 (m, 3H), 7.59 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 7.80-7.84 (m, 2H), 8.40-8.44 (m, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 13.4, 18.2, 21.6, 21.7, 24.1, 24.9, 28.6, 29.1, 29.20, 29.28, 29.3, 30.4, 34.0, 34.2, 50.8, 51.4, 65.1, 81.4, 86.1, 124.5, 125.3, 125.6, 126.3, 128.5, 129.4, 131.8, 133.9, 135.0, 173.1, 174.3
【0053】
<methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadec-13-ynoateの合成>
図7に示す反応で合成を行った。
【0054】
アルゴンで満たした 20 ml のナス型フラスコに、光学分割剤(R )-(-)-4 288mg(1.25mmol)、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド182mg (1.44mmol)、DMAP・1/5 CSA 混合試薬 105mg (0.62mmol)、Dry - CH2Cl2 1.0ml を入れ、0℃に冷却した。氷冷下、原料 (±)-Methyl 12-hydroxyoctadec-13-ynoate 300mg (0.96mmol) を加え、0℃で30分攪拌した後、室温で24時間攪拌した。TLC (Hexane / EtOAc= 10 / 1) にて原料の消失を確認し、少量の水を加えて反応を停止した。EtOAc を加えて希釈し、MgSO4 を加えて脱水した後、セライト を詰めたカラムに通し、EtOAc を流してろ過した。ろ液を減圧濃縮し、得られた粗精製物をシリカゲルカラム (Hexane / EtOAc = 10 / 1) で粗分離し、減圧濃縮した後、HPLC (順相中圧カラム ; Hexane / EtOAc= 10 / 1) で光学分割した。第一溶出成分(R)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadec-13-ynoate (無色油状物)を196mg、収率39%、第二溶出成分(S)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadec-13-ynoate(無色油状物)を収率39%で196mg得た。
【0055】
(R)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadec-13-ynoate の物性値は以下の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (neat) ν cm-1: 2929, 2854, 1739, 1465, 1436, 1251, 1170, 1133, 806, 782; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.84 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.12-1.36 (m, 18H), 1.57 (m, 2H), 1.59 (m, 2H), 1.98 (s, 3H), 2.00 (m, 1H), 2.01 (m, 1H), 2.30 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 3.17 (s, 3H), 3.66 (s, 3H), 5.33 (dddd, J = 6.7, 6.7, 1.8, 1.8 Hz, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 13.5, 18.2, 21.8, 22.2, 28.8, 29.1, 29.2, 29.30, 29.35, 30.3, 34.1, 34.7, 51.2, 51.4, 65.6, 81.8, 86.2, 124.6, 125.2, 125.3, 126.1, 128.6, 129.2, 131.1, 134.0, 135.7, 173.0, 174.3.
【0056】
(S)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadec-13-ynoate の物性値は以下の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (neat) ν cm-1: 2929, 2854, 1739, 1465, 1436, 1251, 1171, 1133, 805, 781; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.54-0.66 (m, 1H), 0.67-0.97 (m, 5H), 0.88 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.01-1.92 (m, 2H), 1.13-1.48 (m, 12H), 1.62 (dddd, J = 7.4, 7.4, 7.3, 7.3 Hz, 2H), 2.00 (s, 3H), 2.14 (dt, J = 6.8, 6.8, 1.8 Hz, 2H), 2.31 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 3.09 (s, 3H), 3.67 (s, 3H), 5.32 (dddd, J = 6.4, 6.4, 1.8, 1.8 Hz, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 13.4, 18.2, 21.6, 21.7, 24.1, 24.9, 28.6, 29.1, 29.20, 29.28, 29.3, 30.4, 34.0, 34.2, 50.8, 51.4, 65.1, 81.4, 86.1, 124.5, 125.3, 125.6, 126.3, 128.5, 129.4, 131.8, 133.9, 135.0, 173.1, 174.3
【0057】
<(R)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadecanoateの合成 (三重結合の還元)>
図8に示す反応で合成(三重結合の還元)を行った。
【0058】
50 ml のナス型フラスコに、MeOH 5ml、5% Pd/C 12mg、(S)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadec-13-ynoate 300mg (0.57mmol) を加えた。反応容器内を水素置換した後、室温で6時間攪拌した。TLCにて原料の消失を確認した後反応を停止した。反応液にEtOAcを加えて希釈し、綿、セライトの順に詰めたカラムに通してろ過し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮残留物をシリカゲルカラム (CHCl3/ EtOAc = 15 / 1) にて粗精製した後、HPLC (順相中圧カラム ; Hexane / EtOAc= 30 / 1) で精製し、目的物を無色の油状物として収率70%で210mg得た。
【0059】
得られた還元物の物性値は以下の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (neat) ν cm-1: 2929, 2854, 1743, 1463, 1251, 1135, 806, 781; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.33-0.53 (m, 2H), 0.68-0.90 (m, 5H), 0.85 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.01 (dddd, J = 8.1, 7.9, 7.9, 7.2 Hz, 2H), 1.08-1.47 (m, 19H), 1.62 (dddd, J = 7.5, 7.4, 7.4, 7.4 Hz, 2H), 1.98 (s, 3H), 2.30 (t, J = 7.8 Hz, 3H), 3.08 (s, 3H), 3.66 (s, 3H), 4.81 (dddd, J = 6.3, 6.3, 6.3, 6.2 Hz, 1H), 7.37-7.49 (m, 3H), 7.59 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 7.76-7.86 (m, 2H), 8.38-8.49 (m, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 14.0, 21.5, 22.4, 24.0, 24.9, 25.0, 29.0, 29.1, 29.2, 29.3, 31.6, 33.3, 33.6, 34.0, 50.7, 51.4, 75.2, 81.3, 124.5, 125.3, 125.6, 126.3, 128.5, 129.2, 131.8, 134.1, 135.4, 173.7, 174.3
【0060】
<(S)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadecanoateの合成>
図9に示す反応で合成を行った。
【0061】
50 ml のナス型フラスコに、MeOH 5ml、5% Pd/C 12mg、(R)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadec-13-ynoate 300mg (0.57mmol) を加えた。反応容器内を水素置換した後、室温で6時間攪拌した。TLCにて原料の消失を確認した後反応を停止した。反応液にEtOAcを加えて希釈し、綿、セライトの順に詰めたカラムに通してろ過し、ろ液を減圧濃縮した。濃縮残留物をシリカゲルカラム (CHCl3/ EtOAc = 15 / 1) にて粗精製した後、HPLC (順相中圧カラム ; Hexane / EtOAc= 30 / 1) で精製し、目的物を無色の油状物として収率67%で201mg得た。
【0062】
得られた、(S)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadecanoateの物性値は以下の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (neat) ν cm-1: 2929, 2854, 1743, 1463, 1251, 1135, 806, 781; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.33-0.54 (m, 2H), 0.68-0.89 (m, 4H), 0.78 (t, J = 8.0 Hz, 3H), 0.99-1.46 (m, 20H), 1.61 (dddd, J = 7.4, 7.3, 7.2, 7.2 Hz, 2H), 1.98 (s, 3H), 2.29 (t, J = 7.7 Hz, 3H), 3.08 (s, 3H), 3.65 (s, 3H), 4.82 (dddd, J = 8.4, 7.9, 7.9, 6.2 Hz, 1H), 7.37-7.50 (m, 3H), 7.59 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.75-7.87 (m, 2H), 8.41- 8.50 (m, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 14.0, 21.5, 22.3, 24.0, 24.9, 25.1, 28.7, 29.0, 29.2, 29.36, 29.40, 31.3, 33.4, 33.6, 34.0, 50.7, 51.4, 75.2, 81.3, 124.5, 125.3, 125.6, 126.3, 128.5, 129.2, 131.7, 132.8, 134.3, 135.4, 173.7, 174.3
【0063】
<(±)methyl 12-hydroxyoctadecanoateの光学分割>
図10に示す反応で光学分割を行った。
【0064】
アルゴンで満たした 30 ml のナス型フラスコに、(R )-(-)-4 127mg (0.55mmol)、DIC 70mg (0.55mmol)、DMAP・1/5 CSA 混合試薬 50mg(0.30mmol)、Dry - CH2Cl2 1mlを入れ、0℃に冷却した。氷冷下、 原料 アルコール146mg(0.46mmol) を加え、0℃で30分攪拌した後、室温に戻して24時間攪拌した。TLC (Hexane / EtOAc = 5 / 1) にて原料の消失を確認し、少量の水を加えて反応を停止した。EtOAc を加えて希釈し、 MgSO4 を加えて脱水した後、セライト を詰めたカラムに通し、 EtOAc を流してろ過した。ろ液を減圧濃縮し、得られた粗精製物をシリカゲルカラム (Hexane / EtOAc = 15 / 1) で粗分離し、減圧濃縮した後、 HPLC (順相中圧カラム ; Hexane / EtOAc = 30 / 1) で光学分割した。第一溶出成分 (R,R )-体 (無色油状物 109 mg, Y.45 %), 及び 第二溶出成分 (S,R )- 体 (無色油状物 111 mg, Y.46 %) を得た。
【0065】
得られた、(R)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadecanoate の物性値は以下の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (neat) ν cm-1: 2929, 2854, 1741, 1459, 1251, 1133, 806, 781; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.38-0.56 (m, 2H), 0.72-0.91 (m, 5H), 0.83 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 1.02 (dddd, J = 7.2, 7.2, 7.2, 7.2 Hz, 2H), 1.10-1.47 (m, 19H), 1.63 (dddd, J = 7.4, 7.4, 7.4, 7.4 Hz, 2H), 1.99 (s, 3H), 2.31 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 3.09 (s, 3H), 3.67 (s, 3H), 4.82 (dddd, J = 6.2, 6.2, 6.2, 6.1 Hz, 1H), 7.39-7.48 (m, 3H), 7.60 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 7.78-7.86 (m, 2H), 8.44-8.49 (m, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 14.0, 21.6, 22.5, 24.1, 24.9, 25.1, 29.0, 29.1, 31.6, 33.4, 33.6, 34.0, 50.7, 51.4, 75.2, 81.4, 124.5, 125.4, 125.6, 126.3, 128.5, 129.2, 131.7, 134.1, 135.4, 173.7, 174.3
【0066】
得られた、(S)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadecanoateの物性値は以下の通りであった。
(物性値):
Colorless oil; IR (neat) ν cm-1: 2927, 2854, 1743, 1463, 1251, 1135, 806, 781; 1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 0.36-0.56 (m, 2H), 0.71-0.89 (m, 4H), 0.79 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.00-1.46 (m, 20H), 1.61 (dddd, J = 7.5, 7.4, 7.4, 7.4 Hz, 2H), 1.99 (s, 3H), 2.30 (t, J = 7.5 Hz, 3H), 3.08 (s, 3H), 3.66 (s, 3H), 4.82 (dddd, J = 6.2, 6.2, 6.1, 6.1 Hz, 1H), 7.38-7.48 (m, 3H), 7.60 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.78-7.85 (m, 2H), 8.44-8.48 (m, 1H); 13C-NMR (400MHz, CDCl3) δ: 13.9, 21.6, 22.3, 24.0, 24.9, 25.1, 28.7, 29.0, 29.1, 29.36, 29.39, 31.3, 33.4, 33.6, 34.0, 50.7, 51.3, 75.2, 81.4, 124.5, 125.4, 125.6, 126.3, 128.5, 129.2, 131.8, 132.8, 134.2, 135.4, 173.7, 174.3
【0067】
<(R)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadecanoateの加水分解>
図11に示す反応で加水分解を行い、(R)-12-hydroxyoctadecanoic acidを得た。
【0068】
<(S)-methyl 12-((R)-2-methoxy-2-(naphthalen-1-yl)propanoyloxy)octadecanoateの加水分解>
図12に示す反応で加水分解を行い、(S)- 12-hydroxyoctadecanoic acid を得た。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の製造方法を採用することにより、光学的に100%e.e.の(S)−12−ヒドロキシステアリン酸及び(R)−12−ヒドロキシステアリン酸12‐ヒドロキシステアリン酸を得ることができるので、従来から適用されていた、塗料の増粘剤などの各種添加剤としての利用だけでなく、化粧品、医薬分野への適用が可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的に純粋で立体化学の絶対配置が明確な12‐ヒドロキシステアリン酸を製造する方法であって、
分子内に三重結合を導入した12‐ヒドロキシステアリン酸誘導体(a)を合成する工程、
(a)とラセミ体アルコールと光学分割剤を反応させてエステル(b)を生成せしめる工程、
前記エステル(b)のジアステレオマーをHPLCにて分取した後、各エステルのNMR測定を行い、アドバンスモッシャー法を用いてアルコール部の絶対配置を決定する工程、
前記誘導体(a)を脱保護、酸化反応を経てカルボン酸エステル(c)に誘導する工程、
(c)の三重結合を還元することにより飽和の12‐ヒドロキシステアリン酸誘導体(d)を得た後、それらを加水分解する工程、
からなることを特徴とする、光学的に純粋で立体化学の絶対配置が明確な12‐ヒドロキシステアリン酸の製造方法。
【請求項2】
12‐ヒドロキシステアリン酸が(S)‐12‐ヒドロキシステアリン酸であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−32214(P2011−32214A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180264(P2009−180264)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本化学会第89春季年会(2009)講演予稿集(DVD−ROM) 発行日:平成21年3月13日 会期:平成21年3月27日〜30日
【出願人】(509218526)
【出願人】(000225854)楠本化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】