説明

光学的反応測定装置および光学的反応測定方法

【課題】試料と試薬の混和液の光学的性質の時間的な変化に基づいて、試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定する光学的反応測定装置において、試料と試薬との混和時点と光学的性質の測定開始時点との関係のバラツキを低減し、測定精度を向上させることが可能となる技術を提供する。
【解決手段】試料と試薬との混和作業などを行うための準備時間が予め定められており、測定装置のスタートスイッチをONすると、タイマーが作動し、準備時間の開始までの時間が操作者にカウントダウン式に報知され、さらにカウントゼロとなり準備時間が開始したことが操作者に報知される。準備時間の開始時期からの時間が、測定データに付随する時間データとして用いられるとともに、準備時間の終期からの光学的特性のデータが解析に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に対して所定の試薬を加えて反応させることで試料の光学的性質が変化することを利用して、光学的な手法によって前記試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定する光学的反応測定装置および光学的反応測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料と試薬との反応によって試料の光学的性質を変化させ、この光学的性質の変化を取得することで試料と試薬の反応の有無または進行度合を測定する技術は良く知られている。例えば、窒素、リン、硝酸、亜硝酸、アンモニア、リン酸、重金属類などの水質汚染成分の濃度を、予め用意された専用の発色試薬を用いて、サンプルと試薬を測定容器中で混合して発色させて吸光度を測定する技術を挙げることができる。また、検体中の抗原または抗体と反応する試薬として抗原に対する抗体、抗体に対する抗原を加えて特異的な抗原抗体反応を起こさせ、この抗原抗体反応により形成される凝集塊を光学的に検出する免疫学的測定法もその一つである。
【0003】
さらに、エンドトキシンやβ−D−グルカンといった生物由来の生理活性物質を含んだ試料にLAL試薬を加え、それらの反応による混和液のゲル化を光学的に測定する技術も一例として挙げることができる。以下、この例について説明を加える。
【0004】
エンドトキシンはグラム陰性菌の細胞壁に存在するリポ多糖であり、最も代表的な発熱性物質である。このエンドトキシンに汚染された輸液、注射薬剤、血液などが人体に入ると、発熱やショックなどの重篤な副作用を惹起するおそれがある。このため、上記の薬剤などは、エンドトキシンにより汚染されることが無いように管理することが義務付けられている。
【0005】
ところで、カブトガニの血球抽出物(以下、「LAL : Limulus amoebocyte lysate」ともいう。)の中には、エンドトキシンによって活性化されるセリンプロテアーゼが存在する。そして、LALとエンドトキシンとが反応する際には、エンドトキシンの量に応じて活性化されたセリンプロテアーゼによる酵素カスケードによって、LAL中に存在するコアギュロゲンがコアギュリンへと水解されて会合し、不溶性のゲルが生成される。このLALの特性を用いて、エンドトキシンを高感度に検出することが可能である。
【0006】
また、β−D−グルカンは真菌に特徴的な細胞膜を構成しているポリサッカライド(多糖体)である。β−D−グルカンを測定することによりカンジダやスペルギルス、クリプトコッカスのような一般の臨床でよく見られる真菌のみならず、稀な真菌も含む広範囲で真菌感染症のスクリーニングなどに有効である。
【0007】
β−D−グルカンの測定においても、カブトガニの血球抽出成分がβ−D−グルカンによって凝固(ゲル凝固)する特性を利用して、β−D−グルカンを高感度に検出することが可能である。
【0008】
このエンドトキシンやβ−D−グルカンなどの、カブトガニの血球抽出成分によって検出可能な生物由来の生理活性物質(以下、所定生理活性物質ともいう)の検出または濃度測定を行う方法としては、所定生理活性物質の検出または濃度測定(以下、単純に「所定生理活性物質の測定」ともいう。)をすべき試料とLALとを混和した混和液を静置し、LALと所定生理活性物質との反応によるゲルの生成に伴う試料の濁りを経時的に計測して解析する比濁法がある。
【0009】
上記の比濁法によって所定生理活性物質の測定を行う場合には、乾熱滅菌処理されたガラス製測定セルに測定試料とLALとの混和液を生成させる。そして、混和液のゲル化を外部から光学的に測定する。
【0010】
また、測定試料とLALとの混和液を例えば磁性攪拌子を用いて攪拌することにより、ゲル微粒子を生成せしめ、ゲル粒子により散乱されるレーザー光の強度、あるいは、混和液を透過する光の強度から、試料中の所定生理活性物質の存在を短時間で測定できるレーザー光散乱粒子計測法(以下、単に光散乱法ともいう。)、あるいは、比濁法の一形態ではあるものの測定試料を攪拌して混和液におけるゲル化の状態を均一化し反応を促進する攪拌比濁法が提案されている。さらに、酵素カスケードにより水解されて発色する合成基質を用い、上記発色を光学的に測定する比色法などもある。
【0011】
ここで、上記した比濁法及び攪拌比濁法では光透過率を検出しており、光散乱法では生成された粒子を検出し、比色法では発色による吸光度の変化を検出している点が異なるが、いずれも、測定試料とLALとを混和させた時点から、混和液からの透過光の強度あるいは、散乱光における強度またはピーク数が閾値を超えるまでの時間を計測する閾値法を判定の基礎にしている。
【0012】
この場合、測定試料とLALとを混和させたタイミングのバラツキが、所定生理活性物質の濃度測定の精度に影響を及ぼすこととなる。従来は例えば、測定者が測定試料とLALとを容器内で混和させた後、混和液が収容された測定容器を測定装置に設置した時点から時間測定が開始されていたため、測定者による測定試料とLALとの実際の混和タイミングと、測定開始時期(または解析開始時期)との関係が管理されておらず、このことが所定生理活性物質の濃度測定の精度に影響を及ぼす場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3322282号公報
【特許文献2】特開2004−239813号公報
【特許文献3】特許第3283078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上述の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、試料と試薬の混和液の光学的性質の時間的な変化に基づいて、試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定する光学的反応測定装置において、試料と試薬との混和時点と光学的性質の測定または解析開始時点との関係のバラツキを低減し、測定精度を向上させることが可能となる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明においては、試料と試薬との混和液の光学的性質の時間的な変化に基づいて、前記試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定する光学的反応測定装置であって、試料と試薬との混和液を生成して測定可能な状態とするための準備期間が予め定められており、測定装置のスイッチをONすると、準備期間の開始までの時間が操作者に継続的に報知され、さらに準備期間が開始したことが操作者に報知され、準備期間の終期から、混和液の光学的特性の解析が開始されることを最大の特徴とする。
【0016】
より詳しくは、試料と該試料に対して反応する所定の試薬との混和液を収容した試料セルを保持する保持手段と、
前記試料セル内の混和液に光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段により前記混和液に照射された光の散乱光または透過光を受光し、該散乱光または透過光の強度を検出する光強度検出手段と、
前記光強度検出手段により検出された前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値の時間的な変化を算出する算出手段と、を備え、
前記算出手段により算出された前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値の時間的な変化に基づいて、前記試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定する光学的反応測定装置において、
操作者がスイッチをONすることにより、該スイッチがONされた時点からの経過時間の計測を開始するタイマーと、
前記試料と前記試薬とを混合して前記混和液を生成し測定可能な状態とするための期間として長さが予め定められ、前記スイッチがONされた時点から所定時間経過後を始期とする準備期間の開始までの時間を継続的に操作者に報知する時間報知手段と、
前記準備期間の開始を前記操作者に報知する準備期間開始報知手段と、
をさらに備え、
前記準備期間の終期以降の、前記算出手段により算出された前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値の時間的な変化に基づいて、前記試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定する。
【0017】
すなわち、本発明においては、前記試料と試薬とを混合して混和液を生成して測定可能な状態とするための準備期間は、上記スイッチがONされた時点から所定時間後に開始するように設定されている。また、準備期間の長さも予め設定されている。そして、スイッチがONされた後には、時間報知手段により、準備期間の開始までの時間が継続的に操作者に報知される。これにより、操作者は準備期間の到来についての物心両面での備えをすることができる。
【0018】
さらに本発明では、準備期間開始報知手段によって、準備期間が開始したことが操作者に報知されるので、準備期間の開始とともに、操作者が試料と試薬とを混合して混和液を生成し、迅速に光学的特性の測定が可能な状態とすることができる。
【0019】
加えて本発明では、準備期間の終期以降の、算出手段により算出された散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値の時間的な変化に基づいて、反応の有無または進行度合を測定する。従って、準備期間の終期を混和液の光学的特性の解析の開始時とすることができる。これにより、操作者による、試料と試薬とを混合して混和液を生成し測定可能とする作業(以下、単純に「混和作業」ともいう。)の開始時点および完了時点、光学的特性の解析の開始時点を準備期間始期から終期の間に収めることができ、これらの関係のバラツキを低減することができる。
【0020】
これにより、試料と試薬の実際の混和タイミングと、光学的特性の解析の開始タイミングとを精度良く一致させることができ、試料と試薬との反応の有無または進行度合の測定精度を向上させることが可能となる。
【0021】
また、本発明においては、前記時間報知手段は、カウントダウン表示により準備期間の開始までの時間を操作者に報知するようにしてもよい。
【0022】
そうすると、操作者は、カウントダウン表示により、準備期間の開始時期の到来までの残り時間をより明確に認識することができ、より精度よく、混和作業の開始タイミングを、準備期間の開始時期に合わせることができ、試料と試薬の実際の混和タイミングと、混和液の光学的特性の解析の開始タイミングとの間のバラツキをより確実に低減することができる。
【0023】
また、本発明においては、前記スイッチがONされた時点から準備期間の始期までの所定時間と、準備期間の長さとを調整可能としてもよい。
【0024】
そうすれば、試料及び試薬の種類、混和作業の内容や操作者に応じて、準備期間の開始時期と長さとを適切に設定することが可能となる。これにより、より確実に、試料と試薬の実際の混和タイミングと、光学的特性の解析の開始タイミングの関係のバラツキを低減することが可能となり、試料と試薬の実際の混和タイミングと光学的特性の解析の開始タイミングとの時間差を適宜調整することも可能となる。
【0025】
また、本発明においては、前記保持手段は、複数の試料セルを保持可能であり、
前記複数の試料セル内の混和液に対し、独立に前記試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定可能であり、
前記スイッチがONされた時点から準備期間の始期までの前記所定時間及び前記準備期間の長さは、前記複数の試料セル内の混和液に対し同一の値に設定され、
一の前記スイッチをONすることで、前記複数の試料セル内の混和液に対して、前記時間報知手段及び前記準備期間開始報知手段が作動するようにしてもよい。
【0026】
これによれば、操作者としては、準備期間中に試料と試薬とを混合して混和液を生成し、この混和液を複数の試料セルに導入し、保持手段に装着し終わればよい(混和作業を終了すればよい)という、単純な作業に集中することができ、より簡単に、複数の混和液に対して試料と試薬との反応の有無または進行度合の測定を行うことが可能となる。
【0027】
また、本発明においては、前記試料はエンドトキシンまたはβ−D−グルカンの検出またはそれらの濃度測定の対象試料であり、
前記所定の試薬はカブトガニの血球抽出物であるLALであってもよい。
【0028】
これによれば、最も代表的な発熱性物質であるエンドトキシンの検出または濃度測定がより正確に行なえ、エンドトキシンによる汚染によって人体に副作用が惹起される危険性を低減できる。同様に、β−D−グルカンの検出または濃度測定がより正確に行なえ、カンジダやスペルギルス、クリプトコッカスのような一般の臨床でよく見られる真菌のみならず、稀な真菌も含む広範囲で真菌感染症のスクリーニングをより正確に行なうことが可能となる。
【0029】
また、その場合には、前記光強度検出手段により検出された前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値に付随する時間測定値は、前記準備期間の始期からの経過時間としてもよい。
【0030】
すなわち、前記散乱光または透過光の強度の測定値または該測定値に所定の演算を施した値に付随する時間情報は、準備期間の始期からの経過時間とする。そうすれば準備期間の始期(スイッチONから準備期間の始期までの時間がカウントダウン表示される場合には、カウントゼロの時点)において、試料と試薬とが混合されたものとして、散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値の時間的な変化の解析を行うことができる。
【0031】
ここで、本発明においては、準備期間の開始前から操作者が混和作業の物心両面での備えをしていることを鑑みると、試料と試薬の実際の混和タイミングが最も近いのは、準備期間の終期ではなく始期であると考えられる。そこで、前記光強度検出手段により検出された前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値に付随する時間測定値は、前記準備期間の始期からの経過時間とすることで、例えばエンドトキシンとL
ALの反応開始時点といった時間情報を、より実際の混和時間に近い値にすることができる。
【0032】
また、本発明は、試料と該試料に対して反応する所定の試薬との混和液に光を照射し、
前記混和液に照射された光の散乱光または透過光の強度を検出し、
検出された前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値の時間的な変化に基づいて、前記試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定する光学的反応測定方法において、
測定者により、前記試料と前記試薬を混合して前記混和液を準備して測定を開始する意志の表示を行う意志表示工程と、
前記試料と前記試薬とを混合して前記混和液を生成し測定可能な状態にするための期間として長さが予め定められ、前記意志表示が行われた時点から所定時間経過後を始期とする準備期間の開始までの時間を継続的に測定者に報知する時間報知工程と、
前記準備期間の開始を前記測定者に報知する準備期間開始報知工程と、
をさらに有し、
前記準備期間の終期以降の前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値の変化に基づいて、前記試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定することを特徴とする光学的反応測定方法であってもよい。
【0033】
これによれば、測定者が、混和作業を行い混和液の光学的特性の測定を開始する意志表示を行った後に、準備期間の開始時期までの残り時間をより明確に認識することができ、準備期間の開始までに物心両面において混和作業の備えをすることができる。その結果、準備期間の開始時期の到来に合わせて、混和作業をより円滑に、または迅速に行うことが可能となる。
【0034】
これにより、測定者による混和作業の開始時点、完了時点、光学的特性の解析の開始時点を準備期間始期から終期の間に収めることができ、これらの関係のバラツキを低減することができる。
【0035】
また、本発明においては、複数の前記混和液に対して、独立に前記試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定し、
前記意志表示工程における意志表示は、前記試料と前記試薬を混合して複数の前記混和液を準備するとともに複数の前記混和液に対して前記測定を開始する意志表示であり、
前記意志表示がされた時点から前記準備期間の始期までの前記所定時間及び前記準備期間の長さは、複数の前記混和液に対し同一の値に設定され、
前記意志表示をすることで、前記複数の試料セル内の混和液に対して、前記時間報知工程及び前記準備期間開始報知工程が実行されるようにしてもよい。
【0036】
これによれば、測定者としては、準備期間中に試料と試薬とを混合して混和液を複数の試料セルに導入し、保持手段に装着し終わればよいという、単純な作業に集中することができ、より簡単に、複数の混和液に対して試料と試薬の反応の有無または進行度合の測定を行うことが可能となる。
【0037】
また、本発明においては、前記試料はエンドトキシンまたはβ−D−グルカンの検出またはそれらの濃度測定の対象試料であり、
前記所定の試薬はカブトガニの血球抽出物であるLALであるようにしてもよい。
【0038】
これによれば、最も代表的な発熱性物質であるエンドトキシンの検出または濃度測定がより正確に行なえ、エンドトキシンによる汚染によって人体に副作用が惹起される危険性を低減できる。同様に、β−D−グルカンの検出または濃度測定がより正確に行なえ、カ
ンジダやスペルギルス、クリプトコッカスのような一般の臨床でよく見られる真菌のみならず、稀な真菌も含む広範囲で真菌感染症のスクリーニングをより正確に行なうことが可能となる。
【0039】
また、この場合、前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値に付随する時間測定値は、前記準備期間の始期からの経過時間としてもよい。
【0040】
すなわち、前記散乱光または透過光の強度の測定値または測定地に所定の演算を施した値に付随する時間情報は、準備期間の始期からの経過時間とする。
【0041】
ここで、本発明においては、準備期間の開始前から測定者が混和作業の物心両面での準備をしていることを鑑みると、試料と試薬の実際の混和タイミングが最も近いのは、準備期間の終期ではなく始期であると考えられる。そこで、前記散乱光または透過光の強度の測定値に付随する時間情報は、準備期間の始期からの経過時間とすることで、例えばエンドトキシンとLALの反応開始時点といった時間情報を、より実際の混和時間に近い値として扱うことができる。
【0042】
なお、上記した本発明の課題を解決する手段については、可能なかぎり組み合わせて用いることができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明にあっては、試料と試薬の混和液の光学的性質の時間的な変化に基づいて、試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定する光学的反応測定装置において、試料と試薬との混和時点と光学的特性の解析の開始時点との関係のバラツキを低減し、測定精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例1における光散乱粒子計測装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例1における光散乱粒子計測装置の内部構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例1における準備時間制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例1における表示部に表示される測定画面を示す図である。
【図5】本発明の実施例1における表示部に表示される条件設定画面を示す図である。
【図6】本発明の実施例2における測定画面を示す図である。
【図7】本発明の実施例3における比濁計測装置の内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明に光学的反応測定装置及び、光学的反応測定方法について、図面を参照して詳細に説明する。本発明が適用される測定は、上述のとおり、試料と試薬との反応によって試料の光学的特性を変化させ、この光学的特性の変化を取得することで試料と試薬の反応の有無または進行度合を測定する技術である。
【0046】
上記技術としては、例えば、水質汚染成分の濃度を、予め用意された専用の発色試薬を用いて、サンプルと試薬を測定容器中で混合して発色させて吸光度を測定する技術を挙げることができる。また、検体中の抗原または抗体と反応する試薬として抗原に対する抗体、抗体に対する抗原を加えて特異的な抗原抗体反応を起こさせ、この抗原抗体反応により形成される凝集塊を光学的に検出する免疫学的測定法を挙げることができる。
【0047】
以下の実施例においては、本発明が適用される様々な測定の中で、エンドトキシンやβ−D−グルカンといった生物由来の生理活性物質を含んだ試料にLAL試薬を加え、それらの反応による混和液のゲル化を光学的に測定する技術の例について説明する。
【0048】
LALとエンドトキシンとが反応してゲルが生成される過程(以下、リムルス反応ともいう。)はよく調べられている。すなわち、エンドトキシンがLAL中のセリンプロテアーゼであるC因子に結合すると、C因子は活性化して活性型C因子となる、活性型C因子はLAL中の別のセリンプロテアーゼであるB因子を水解して活性化させ活性化B因子とする。この活性化B因子は直ちにLAL中の凝固酵素の前駆体を水解して凝固酵素とし、さらに、この凝固酵素がLAL中のコアギュロゲンを水解してコアギュリンを生成する。そして、生成したコアギュリンが互いに会合して不溶性のゲルをさらに生成し、LAL全体がこれに巻き込まれてゲル化すると考えられている。
【0049】
また、同様にβ−D−グルカンがLAL中のG因子に結合すると、G因子は活性化して活性型G因子となる、活性型G因子はLAL中の凝固酵素の前駆体を水解して凝固酵素とする。その結果、エンドトキシンとLALとの反応と同様、コアギュリンが生成され、生成したコアギュリンが互いに会合して不溶性のゲルをさらに生成する。
【0050】
このような酵素カスケード反応はごく少量の活性化因子であっても、その後のカスケードを連鎖して活性化していくために非常に強い増幅作用を有する。従って、LALを用いた所定生理活性物質の測定法によれば、サブピコグラム/mLオーダーのきわめて微量の所定生理活性物質を検出することが可能になっている。
【0051】
エンドトキシンやβ−D−グルカンなどの所定生理活性物質を定量することが可能な測定法としては前述のように比濁法、攪拌比濁法ならびに、光散乱法が挙げられる。これらの測定法はこのLALの酵素カスケード反応によって生成されるコアギュリンの会合物を前者は試料の濁りとして、後者は系内に生成されるゲルの微粒子として光学的な手法で検出することで、高感度な測定を可能にしている。
【0052】
比濁法は、特別な試薬が不要である点と、測定可能な所定生理活性物質の濃度範囲が広い点などにおいて、現場での使い勝手のよさがあるという評価がある。しかしながらコアギュリンの濃度がある程度以上の濃度に達しないとゲル化は生じないため、比濁法において所定生理活性物質が検出されるにはゲルが生じるまで待つ必要がある。そのため、所定生理活性物質濃度が高い場合には速やかに必要充分濃度のコアギュリンが生成してゲル化が始まるため測定時間は短くなるが、所定生理活性物質濃度が低いとゲル化に必要なコアギュリン濃度に達するのに時間がかかり測定時間が長くなってしまう。その点、攪拌比濁法においては所定生理活性物質とLALとの混和液を攪拌することで両者の反応を促進し測定時間の短縮が図られている。
【0053】
また、光散乱法は試料を攪拌する点とレーザーによりゲル化ではなく粒子を検出する点が比濁法からの改良点であり、比濁法に比べると測定時間を大幅に短縮することができる。比濁法及び攪拌比濁法と、光散乱法とでは、見ている物理量は異なるものの、ある一定の閾値を越えた時点を反応の開始点として捉えるという点では共通である。
【0054】
〔実施例1〕
次に、実施例1として、光散乱法を用いた測定装置について説明する。図1には、本実施の形態におけるエンドトキシンの測定装置としての光散乱粒子計測装置1についての外観を示す。
【0055】
光散乱粒子計測装置1は、本体部2と演算部3、表示部4、演算部3に種々の入力を行うためのキーボード5a、マウス5bを含んだ入力部5を備えている。本体部2には、4つのセルホルダ2a〜2dが設けられており、4つの試料セルを保持可能な構成となっており、各々の試料セルに収容された試料について4チャンネルの測定が可能となっている。本実施例においてセルホルダ2a〜2dは保持手段に相当する。
【0056】
次に、図2を用いて、光散乱粒子計測装置1の内部の構成について説明する。なお、簡単のために、図2においては、光散乱粒子計測装置が1チャンネル対応として説明する。光散乱粒子計測装置1に使用される光源12にはレーザー光源が用いられているが、他に、超高輝度LEDなどを用いてもよい。光源12から照射された光は、入射光学系13で絞られ、試料セル14に入射する。この試料セル14にはエンドトキシンの測定をすべき試料とLAL試薬の混和液が保持されている。試料セル14に入射した光は、混和液中の粒子(コアギュロゲンモノマー、ならびに、コアギュロゲンオリゴマーなどの測定対象)で散乱される。
【0057】
試料セル14の、入射光軸の側方には出射光学系15が配置されている。また、出射光学系15の光軸の延長上には、試料セル14内の混和液中の粒子で散乱され出射光学系15で絞られた散乱光を受光し電気信号に変換する受光素子16が配置されている。受光素子16には、受光素子16で光電変換された電気信号を増幅する増幅回路17、増幅回路17によって増幅された電気信号からノイズを除去するためのフィルタ18、ノイズが除去された後の電気信号のピーク数からゲル粒子数を演算し、さらに反応開始時刻を判定してエンドトキシンの濃度を導出する演算装置19及び、結果を表示する表示器20が電気的に接続されている。図中一点鎖線で囲んだ部分については本体部2に、演算装置19は演算部3に、表示器20については表示部4に格納されている。
【0058】
また、試料セル14には、外部から電磁力を及ぼすことで回転し、試料としての混和液を攪拌する攪拌子21が備えられており、試料セル14の外部には、攪拌器12が備えられている。これらにより、攪拌の有無及び攪拌速度の調整が可能となっている。
【0059】
ここで、光源12及び入射光学系13は光照射手段に相当する。出射光学系15及び受光素子16は光強度検出手段に相当する。演算装置19は算出手段に相当する。
【0060】
次に、上記の光散乱粒子計測装置1の測定開始の際の準備時間(本実施例における準備時間は準備期間に相当する。)の制御について説明する。図3には、本実施例における準備時間制御ルーチンのフローチャートについて示す。本ルーチンは演算部3内の図示しないCPUによって実行されるフローである。
【0061】
本ルーチンが実行されると、まず、S101において、後述するスイッチがONされることで、操作者又は測定者(以下単純に操作者とする)によって光散乱粒子計測を行う意志表示がされたかどうかが判定される。ここで、スイッチがONされていないと判定された場合には、そのまま本ルーチンが一旦終了する。一方、スイッチがONされたと判定された場合にはS102に進む。
【0062】
S102においては、スイッチONされた時点からの経過時間を計測するカウンタが作動する。S102の処理が終了するとS103に進む。S103においてはカウントダウン表示がされる。後述のように、本実施例では、カウントダウンの初期値は10秒に設定されている。従って、10秒から時間が減少する形で、準備時間の開始時期までの残り時間が表示される。このカウントダウン表示は、表示部4の画面に表示されてもよいし、本体部2に特別なインジケータを設け、当該インジケータに表示してもよい。S103の処理が終了するとS104に進む。
【0063】
S104においては、カウントダウン値が0となったか否かが判定される。ここでカウントダウン値がまだ0でないと判定された場合には、S103の前に戻り、カウントダウン値の表示を続行する。一方、カウントダウン値が0と判定された場合にはS105に進む。
【0064】
S105においてはカウンタをリセットし、準備時間が開始してからの経過時間のカウントを再開する。S105の処理が終了するとS106に進む。
【0065】
S106においては、準備時間が開始された旨のメッセージを表示する。このメッセージは、カウントダウン表示と同様、表示部4の画面に表示されてもよいし、本体部2に特別なインジケータを設け、当該インジケータに表示してもよい。また、音声によってメッセージを報知してもよい。さらには、カウントダウン表示がゼロとなることで表示(代用)しても構わない。S106の処理が終了するとS107に進む。
【0066】
S107においては、準備時間の開始時からの経過時間が予め定められた準備時間長さ以上か否かが判定される。本実施例では、後述のように準備時間長さは30秒に設定されているので、経過時間が30秒未満であれば、S107の前に戻り、繰り返しS107の処理が実行される。一方、経過時間が30秒以上であれば、S108に進む。
【0067】
S108においては、光散乱粒子計測法による測定データの解析が開始される。具体的には、受光素子16で検出された散乱光強度のピーク値がカウントされ、混和液中のゲル粒子の総数が算出され始める。S108の処理が終了すると本ルーチンは一旦終了する。なお、光散乱粒子計測自体の制御は、別ルーチンで行われるが、ここでは説明は省略する。なお、上記の準備時間制御ルーチンにおいて、S102からS104の処理を実行する演算部3のCPUは、本実施例における時間報知手段を構成する。また、S105からS106の処理を実行する演算部3のCPUは、本実施例における準備期間開始報知手段を構成する。また、上記の準備時間制御ルーチンにおいて、S103〜S104の処理は時間報知工程に相当する。また、S106の処理は準備期間開始報知工程に相当する。
【0068】
図4には、本実施例の光散乱粒子測定装置1の表示部4において、測定時に表示される測定画面100について示す。この画面においては、チャンネル1〜チャンネル4の測定系において、セルホルダ2a〜2dに保持されている試料セル14内の混和液からの散乱光強度に基づいて演算装置19で算出された粒子総数が縦軸に、測定時間を横軸としたグラフが各々表示される。
【0069】
測定を開始する前に、本画面のタイマー設定部100aにおいて、カウントダウンタイマー(表示:カウントダウン)と、解析開始タイマー(表示:準備時間)を設定する。図4においては、カウントダウンタイマーの設定値は10秒、解析開始までの準備時間は30秒である。なお、本画面において、操作者は、4チャンネルのうちの使用チャンネルを独立に選んで独立にカウントダウンをスタートさせることも可能であるし、予め設定された複数のチャンネルについて同時にカウントダウンをスタートさせることもできる。ここでは、操作者は、使用チャンネルを独立に選んで独立にカウントダウンをスタートさせる場合には、エンドトキシンの濃度測定の試料及びLAL試薬を準備した後、使用チャンネルのスタートボタン100cをクリックする。また、複数チャンネルについてカウントダウンをまとめてスタートさせる場合には、エンドトキシンの濃度測定の試料及びLAL試薬を準備した後、同時スタートボタン部100bのボタンをクリックする。
【0070】
そうすると、測定画面100の使用チャンネルについてのチャンネル表示部100dの下側に、カウントダウン値が表示される。そして、このカウントダウン値が10秒から1
カウントずつ減少していく。このカウントダウン表示によって、操作者は、カウントダウンの値が0になったタイミングで、準備作業を開始するように促される。カウントダウンの値が0になったタイミングをきっかけとして操作者は、準備時間として設定されている30秒の間に、予め準備しておいた試料とLAL試薬とを混合させて遠心機等で攪拌することで混和液を作成する。そして、混和液を必要本数の試料セル14に分注し、混和液が導入された必要本数の試料セル14をセルホルダ2a〜2dのうちの該当セルホルダに装着する。すなわち、操作者は、準備時間として設定されている30秒数以内に、「試料とLAL試薬との混和」「試料セル14への分注(移注)」、「セルホルダ2a〜2dへの試料セル14の装着」を完了させる。
【0071】
その後、準備時間の30秒が経過した時点で、演算部3に格納されたアプリケーションにより、受光素子16で検出された散乱光強度に基づいて、混和液内のゲル粒子総数が算出される。そして、ゲル粒子総数の変化が測定画面100にチャンネル毎に表示されるとともに、図示しないメモリに記憶される。なお、上記においてカウントダウンタイマーの設定値である10秒は、本実施例において所定時間に相当する。また、操作者が同時スタートボタン部100bのボタンをクリックする工程は、本実施例において意志表示工程に相当する。また、受光素子16で検出された散乱光強度に基づいて算出された、混和液内のゲル粒子総数は、本実施例において、散乱光の強度に所定の演算を施した値に相当する。
【0072】
図5には、本実施例において複数チャンネルによる測定を同時にスタートさせる場合の、条件設定画面110を示す。この条件設定画面110の測定タイマー設定部110aにおいては、測定画面100において同時スタートボタン部100bにおける1−3のボタンに割り当てるチャンネルの組み合わせを設定することが可能となっている。この例では、測定画面100における同時スタートボタン部100bのボタン1をクリックした場合には、チャンネル1と2のカウントダウン、準備時間計測および粒子数測定が開始される。同様に、ボタン2をクリックした場合には、チャンネル3と4のカウントダウン、準備時間計測および粒子数測定が、ボタン3をクリックした場合には、チャンネル1−4の全てのチャンネルについてカウントダウン、準備時間計測および粒子数測定が開始される。
【0073】
以上、説明したように、本実施例においては、操作者によって使用チャンネルのスタートボタン100cまたは同時スタートボタン部100bのボタンがクリックされた後には、カウントダウンが開始され、このカウントダウンの間に、操作者は、試料及びLAL試薬の準備を含め、物心両面において試料とLAL試薬の混和作業に備えることができる。
【0074】
そして、カウントダウン値がゼロになり準備時間が開始してから、操作者は、準備時間30秒の間に、試料とLAL試薬の混和及び、各試料セル14への移注、各セルホルダへの装着を完了させることが可能である。
【0075】
これにより、まず、準備時間の開始前にカウンドダウンが行われることにより、操作者が試料とLAL試薬の混和及び、各試料セル14への移注、各セルホルダへの装着といった測定準備作業に対する備えを集中して行うことが可能となる。また、準備時間が設定されていることにより、操作者が試料とLAL試薬の混和及び、各試料セル14への移注、各セルホルダへの装着といった測定準備作業を一定の時間内に終了させるよう、操作者を促すことが可能となる。
【0076】
なお、本実施例においては、粒子総数データに付随する時間データは、準備時間の開始時(カウントダウン値がゼロの時点)とした。従って、測定データの時間的な基準が明確となり、その時間的な基準を、実際に試料とLAL試薬が混合されたタイミングに可及的に近づけることができる。さらに、実際の粒子総数データの解析自体は、準備時間の終了
時に開始されるので、試料とLAL試薬の混和液が試料セルに導入され、セルホルダに完全に装着した状態でのデータのみを用いて解析を行うことができる。その結果、各チャンネルにおけるエンドトキシンの検出または濃度測定のバラツキを抑え、測定精度を向上させることが可能となる。なお、粒子総数データの算出と記憶自体は、準備時間の開始時から行うようにしても構わない。
【0077】
また、上記の実施例においては、同時スタートボタン部100bのボタン1〜ボタン3の各々に、測定するチャンネルの組合せを対応させて予め設定させることが可能であるので、複数チャンネルによる測定をまとめて行う場合に、測定毎にチャンネルの設定をする必要が無く、3通りの組合せについて1クリックで測定を開始することが可能となる。
【0078】
なお、上記の実施例1においては、操作者が同時スタートボタン部100bをクリックした後、準備時間が開始されるまでの間の10秒に関し、カウントダウン表示がなされたが、この表示は必ずしもカウントダウン表示でなくてもよい。例えば、同時スタートボタング100bのクリックから10秒後に準備時間が開始されることが分かっている場合には、1秒から10秒までカウントアップ表示されてもよいことは当然である。また、測定画面100においては、表示されたカウントダウンの値がゼロになったことをもって、準備時間の開始を操作者に報知するメッセージを兼ねたが、別途準備時間開始メッセージを表示するためのウィンドウを開くなどの処理を行うようにしても構わない。
【0079】
〔実施例2〕
次に、本発明の実施例2について説明する。図6に示すのは、本実施例に係る測定画面120である。本実施例においても、基本的な操作は実施例1において説明したものと同じだが、実施例1では条件設定画面110において、予め同時スタートボタン部100bのボタン1〜3に対して作動チャンネルの組み合わせを割り当てていたのに対して、実施例2においては、測定毎にスタートボタン部120aにおいて、同時スタートするチャンネルの組み合わせを設定するようにした。
【0080】
これによれば、複数チャンネルによる測定をまとめて行う場合に、測定毎に同時に測定開始するチャンネルの組み合わせを設定するため、同時スタートボタン部100bのボタン番号と、作動チャンネルの組合せとの関係を把握しておく必要がなく、幅広い用途の測定に臨機応変に対応できる。
【0081】
〔実施例3〕
次に、実施例3として、本発明が適用可能なエンドトキシンの測定装置としての比濁計測装置について説明する。本実施例における比濁測定装置の外観は図1に示したものと同等であり、やはり4チャンネルの測定が可能となっている。図7には、比濁計測装置の内部構成を示す。図中一点鎖線で示した部分は各チャンネル用に合計4個備えられているが、ここでは簡単のために、1チャンネルについてのみ説明する。本実施例の比濁計測装置では、攪拌比濁法によってエンドトキシンの測定を行う。本実施例においては、エンドトキシンを含んだ試料とLAL試薬との混和液を試料セル32に導入する。試料セル32の周囲を囲うように保温器25が設けられている。この保温器25の内部には図示しない電熱線が備えられており、この電熱線に通電されることにより、試料セル32を約37℃に保温するようになっている。なお、本実施例において保温器25は保持手段の一部を兼ねている。この試料セル32の中にはステンレス製の攪拌子23が備えられている。攪拌子23は、試料セル32の下部に設置された攪拌器24の作用によって試料セル32の中で回転する。すなわち、攪拌器24はモータ24aとモータ24aの出力軸に設けられた永久磁石24bとからなっている。そして、モータ24aに通電されることで永久磁石24bが回転する。この永久磁石24bからの磁界が回転するために、攪拌子23が回転磁界の作用で回転する。
【0082】
なお、本実施例の比濁測定装置には光照射手段としての光源26と光強度検出手段としての受光素子29が設置されている。光源26から出射した光はアパーチャ27を通過した後、保温器25に設けられた入射孔25aを通過して試料セル32中の試料に入射される。試料セル32中の試料を透過した光は保温器25に設けられた出射孔25bから出射され、アパーチャ28を通過して受光素子29に照射される。受光素子29では、受光した光の強度に応じた光電信号を出力する。この光電信号の出力は、演算部3に備えられた算出手段としての演算装置30に入力される。演算装置30においては、予め格納されたプログラム(アルゴリズム)に従い、透過光強度の時間的変化が算出される。また、反応開始時刻の判定及び、エンドトキシン濃度の導出が行われる。なお、演算装置30で算出された透過光強度は表示部4に備えられた表示装置31に入力されて適宜表示される。
【0083】
このような比濁測定装置についても、実施例1及び2で説明した本発明を略そのまま適用可能である。その場合、測定画面100、120におけるグラフの縦軸は透過光強度となる。また、条件設定画面における測定タイマー設定部110a以外の部分は適宜変更される。
【0084】
なお、上記の実施例においては、本発明が、エンドトキシンを含む試料とLAL試薬との反応の有無または反応の進行度合の測定に適用されたが、本発明は、β−D−グルカンを含む試料とLAL試薬との反応に適用可能であることはもちろんである。また、本発明は、他の種類の試料と試薬との反応の有無または反応の進行度合の測定に適用されてもよい。例えば、水質汚染成分の濃度を、予め用意された専用の発色試薬を用いて、サンプルと試薬を測定容器中で混合して発色させて吸光度を測定する技術にも適用可能である。また、検体中の抗原または抗体と反応する試薬として抗原に対する抗体、抗体に対する抗原を加えて特異的な抗原抗体反応を起こさせ、この抗原抗体反応により形成される凝集塊を光学的に検出する免疫学的測定法にも、当然に適用することができる。
【0085】
〔参考例〕
次に、本発明の参考例として、スタートボタンをクリックしてから準備時間の開始までの期間についてカウントダウンを行う上記の実施例とは異なり、操作者が、準備時間の開始時にフットスイッチをONする例について言及する。この参考例では、上記の実施例で説明したカウントダウン機能をなくし、その代わりに、操作者が、試料とLAL試薬の混和作業に対する物心両方の備えができた時点でフットスイッチをONする。そして、フットスイッチがONすることで、予め設定されたチャンネルのタイマーがスタートし、準備時間の計測が開始される。準備時間経過後に測定値の解析を開始する点は上記の実施例と同様である。
【0086】
この参考例によれば、試料とLAL試薬と混合させる際に、自分で物心両方の備えが充分であるタイミングを判断してフットスイッチをONすることができる。また、カウントダウン中や準備時間中のトラブルで再トライしたい場合に、最初から全てをやり直す必要がなくなる。
【符号の説明】
【0087】
1・・・光散乱粒子測定装置
2・・・本体部
2a−2d・・・セルホルダ
3・・・演算部
4・・・表示部
5・・・入力部
5a・・・キーボード
5b・・・マウス
12・・・光源
13・・・入射光学系
14・・・試料セル
15・・・出射光学系
16・・・受光素子
17・・・増幅回路
18・・・ノイズ除去フィルタ
19・・・演算装置
20・・・表示装置
21・・・攪拌子
22・・・攪拌器
23・・・攪拌子
24・・・攪拌器
24a・・・モータ
24b・・・永久磁石
25・・・保温器
25a・・・入射孔
25b・・・出射孔
26・・・光源
27・・・アパーチャ
28・・・アパーチャ
29・・・受光素子
30・・・演算装置
31・・・表示装置
32・・・試料セル
100・・・測定画面
100a・・・タイマー設定部
100b・・・同時スタートボタン部
100c・・・スタートボタン
100d・・・チャンネル表示部
110・・・条件設定画面
110a・・・測定タイマー設定部
120・・・測定画面
120a・・・スタートボタン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と該試料に対して反応する所定の試薬との混和液を収容した試料セルを保持する保持手段と、
前記試料セル内の混和液に光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段により前記混和液に照射された光の散乱光または透過光を受光し、該散乱光または透過光の強度を検出する光強度検出手段と、
前記光強度検出手段により検出された前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値の時間的な変化を算出する算出手段と、を備え、
前記算出手段により算出された前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値の時間的な変化に基づいて、前記試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定する光学的反応測定装置において、
操作者がスイッチをONすることにより、該スイッチがONされた時点からの経過時間の計測を開始するタイマーと、
前記試料と前記試薬とを混合して前記混和液を生成し測定可能な状態とするための期間として長さが予め定められ、前記スイッチがONされた時点から所定時間経過後を始期とする準備期間の開始までの時間を継続的に操作者に報知する時間報知手段と、
前記準備期間の開始を前記操作者に報知する準備期間開始報知手段と、
をさらに備え、
前記準備期間の終期以降の、前記算出手段により算出された前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値の時間的な変化に基づいて、前記試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定することを特徴とする光学的反応測定装置。
【請求項2】
前記時間報知手段は、カウントダウン表示により準備期間の開始までの時間を操作者に報知することを特徴とする請求項1に記載の光学的反応測定装置。
【請求項3】
前記スイッチがONされた時点から準備期間の始期までの前記所定時間と、前記準備期間の長さとを調整可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の光学的反応測定装置。
【請求項4】
前記保持手段は、複数の試料セルを保持可能であり、
前記複数の試料セル内の混和液に対し、独立に前記試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定可能であり、
前記スイッチがONされた時点から準備期間の始期までの前記所定時間及び前記準備期間の長さは、前記複数の試料セル内の混和液に対し同一の値に設定され、
一の前記スイッチをONすることで、前記複数の試料セル内の混和液に対して、前記時間報知手段及び前記準備期間開始報知手段が作動することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学的反応測定装置。
【請求項5】
前記試料はエンドトキシンまたはβ−D−グルカンの検出またはそれらの濃度測定の対象試料であり、
前記所定の試薬はカブトガニの血球抽出物であるLALであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学的反応測定装置。
【請求項6】
前記光強度検出手段により検出された前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値に付随する時間測定値は、前記準備期間の始期からの経過時間であることを特徴とする、請求項5に記載の光学的反応測定装置。
【請求項7】
試料と該試料に対して反応する所定の試薬との混和液に光を照射し、
前記混和液に照射された光の散乱光または透過光の強度を検出し、
検出された前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値の時間的な変化に基づいて、前記試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定する光学的反応測定方法において、
測定者により、前記試料と前記試薬を混合して前記混和液を準備して測定を開始する意志の表示を行う意志表示工程と、
前記試料と前記試薬とを混合して前記混和液を生成し測定可能な状態にするための期間として長さが予め定められ、前記意志表示が行われた時点から所定時間経過後を始期とする準備期間の開始までの時間を継続的に測定者に報知する時間報知工程と、
前記準備期間の開始を前記測定者に報知する準備期間開始報知工程と、
をさらに有し、
前記準備期間の終期以降の前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値の変化に基づいて、前記試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定することを特徴とする光学的反応測定方法。
【請求項8】
複数の前記混和液に対して、独立に前記試料と試薬との反応の有無または進行度合を測定し、
前記意志表示工程における意志表示は、前記試料と前記試薬を混合して複数の前記混和液を準備するとともに複数の前記混和液に対して前記測定を開始する意志表示であり、
前記意志表示がされた時点から前記準備期間の始期までの前記所定時間及び前記準備期間の長さは、複数の前記混和液に対し同一の値に設定され、
前記意志表示をすることで、前記複数の試料セル内の混和液に対して、前記時間報知工程及び前記準備期間開始報知工程が実行されることを特徴とする請求項7に記載の光学的反応測定方法。
【請求項9】
前記試料はエンドトキシンまたはβ−D−グルカンの検出またはそれらの濃度測定の対象試料であり、
前記所定の試薬はカブトガニの血球抽出物であるLALであることを特徴とする請求項7または8に記載の光学的反応測定方法。
【請求項10】
前記散乱光または透過光の強度または該強度に所定の演算を施した値に付随する時間測定値は、前記準備期間の始期からの経過時間であることを特徴とする、請求項9に記載の光学的反応測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−2379(P2011−2379A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146821(P2009−146821)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】