説明

光学的情報記録再生装置

【目的】 情報記録媒体の往路と復路でそれぞれ記録即ベリファイを可能とし、記録速度を著しく高速化する。
【構成】 光ビームを相対的に往復移動する情報記録媒体に照射して情報を記録あるいは再生する光学的情報記録再生装置において、情報再生用の第1の光源と、情報記録用の第2の光源と、この第2の光源の光路に配置された光路変更用の光学部材とを設け、前記情報記録媒体の移動方向に応じて前記光学部材を第2の光源の光軸に対して所定方向に一定量あおり駆動し、記録用光スポットを再生用光スポットに対して先行した位置に切り換え制御することにより、情報記録媒体の往路及び復路でそれぞれ情報の記録及びその記録情報のベリファイを行なう。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光学的情報記録媒体に情報を記録あるいは再生する光学的情報記録再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、光を用いて情報の記録、再生を行なう情報記録媒体としては、ディスク状、カード状、テープ状等各種のものが知られている。これらの光学的情報記録媒体には記録及び再生の可能なものや再生のみ可能なもの等がある。記録可能な媒体へ情報を記録するには、記録情報に従って変調され、微小スポット状に絞られた光ビームを情報トラックを走査することにより行なわれ、光学的に検出可能な情報ピット列として情報が記録される。また、記録媒体から情報を再生するには、該媒体に記録が行なわれない程度の一定のパワーの光ビームスポットで情報トラックの情報ピット列を走査し、記録媒体からの反射光または透過光を検出することにより行なわれる。
【0003】上述した記録媒体への情報の記録、再生に用いられる光ヘッドは、記録媒体に対しその情報トラック方向及び該方向を横切る方向に相対的に移動可能とされており、この移動により光ビームスポットの情報トラック走査が行なわれる。光ヘッドにおける光ビームスポットの絞り込み用レンズとしては、例えば対物レンズが用いられる。この対物レンズはその光軸方向(フォーカシング方向)及び該光軸方向と記録媒体の情報トラック方向との双方に直交する方向(トラッキング方向)に光ヘッド本体についてそれぞれの方向に独立して移動することができるように保持されている。このような対物レンズの保持は、一般に弾性部材を介して成され、対物レンズの上記2方向の移動は一般に磁気的相互作用を利用したアクチュエータにより駆動される。
【0004】ところで、上述した光学的情報記録媒体のうちカード状の光学的情報記録媒体(以下、光カードと称する)は、小型軽量で持ち運びに便利な比較的大容量の情報記録媒体として今後大きな需要が見込まれている。図11に追記型光カードの模式的平面図、図12にその部分拡大図を示してある。図11において、光カード1の情報記録面には多数本の情報トラック2がL−F方向に平行に配列されている。又、光カード1の情報記録面には上記情報トラック2へのアクセスの基準位置となるホームポジション3が設けられている。情報トラック2は、ホームポジション3に近い方から順に2−1,2−2,2−3,…と配列され、図12に示すようにこれらの各情報トラックに隣接してトラッキングトラックが4−1,4−2,4−3というように順次設けられている。これらのトラッキングトラック4は、情報記録再生時の光ビームスポット走査の際に該ビームスポットが所定の情報トラックから逸脱しないように制御するオートトラッキング(以下、ATと記す)のためのガイドとして用いられる。
【0005】このATサーボは、光ヘッドにおいて上記光ビームスポットの情報トラックからのずれ(AT誤差)を検出し、該検出信号を上記トラッキングアクチュエータへと負帰還させ、光ヘッド本体に対し対物レンズをトラッキング方向(D方向)に移動させて光ビームスポットを所望の情報トラックへと追従させることにより行なわれる。又、情報記録再生時において、光ビームスポットで情報トラックを走査する際、該光ビームを光カード面上にて適当な大きさのスポット状とする(合焦させる)ために、オートフォーカシング(以下、AFと記す)サーボが行なわれる。このAFサーボは、光ヘッドにおいて上記光ビームスポットの合焦状態からのずれ(AF誤差)を検出し、該検出信号を上記フォーカシングアクチュエータへと負帰還させ、光ヘッド本体に対し対物レンズをフォーカシング方向に移動させて光ビームスポットを光カード面上に合焦させることにより行なわれる。そして、これらのAT/AF制御を行ないつつ、各ビームスポットに対して光カードをL−F方向に往復運動させることで記録再生が行なわれる。
【0006】なお、図12において、S1,S2,S3は光ビームスポットを示し、S1とS3の光スポットを使用してトラッキング制御が行なわれ、S2の光スポットを使用してフォーカシング制御及び記録時の情報ピットの作成、再生時の情報ピットの読出しが行なわれる。又、各情報トラックにおいて、6−1,6−2及び7−1,7−2はそれぞれプリフォーマットされた左側アドレス部及び右側アドレス部を示し、このアドレス部を読出すことによりトラックの識別が行なわれる。更に、5(図中、5−1,5−2が相当する)はデータ部であり、ここに所定の情報が記録される。
【0007】ここで、光学的情報記録の方式を簡単に説明する。従来、光学的情報記録方式には大別して2通りある。1つは記録と再生を同一光源で行なう1光源方式であり、もう1つは記録と再生を異なる2つの光源で行なう2光源方式である。2光源方式は1光源方式に比べ、再生光劣化、高速化などの点で有利であると言われている。図13に従来の2光源方式の光ヘッド光学系の概略図を示す。2光源方式は、記録光と再生光を別々の光源にすることによって、再生光劣化の防止や高速記録を可能にしたものである。
【0008】図13において、21,22は光源であるところの半導体レーザであり、ここでは半導体レーザ21は780nm、半導体レーザ22は830nmの波長の光を発する。23,24はコリメータレンズ、25は光束分割のための回折格子、26はP偏光成分の780nmの光を透過し、830nmの光を反射するように設計されたダイクロイックプリズム、27はビーム整形プリズム、28は偏光ビームスプリッタである。また、29は1/4波長板、30は対物レンズ、31は780nmの光だけ透過するバンドパスフィルタ、32はストッパ、33はトーリックレンズ、34は光検出器、35は記録スポット位置調整用の平行平板ガラスである。
【0009】半導体レーザ21,22から射出された光ビームは、発散光束となってそれぞれコリメータレンズ23,24に入射し、該レンズにより略平行光ビームに修正される。780nmの光はさらに回折格子25に入射し、該回折格子25により有効な3つの光ビーム(0次回折光及び±1次回折光)に分割される。780nmの光ビームと830nmの光ビームは、図14に示すような分光特性を有するダイクロイックプリズム26の接着面に積層された誘電体多層膜にP偏光成分として入射する。ダイクロイックプリズム26は、図14から明らかなように、P偏光の780nmの光は透過し、830nmの光は反射する特性を有するため、780nmの光ビームは透過し、830nmの光ビームは反射して両方の光ビームが合成された状態でダイクロイックプリズム26から出射される。そして、このダイクロイックプリズム26を経た光ビームは、ビーム整形プリズム27により所定の光強度分布に整形された上で偏光ビームスプリッタ28に入射する。偏光ビームスプリッタ28は図1515に示すように、P偏光は透過し、S偏光は反射するような分光特性を有しており、2つの波長の光ビームはP偏光成分であるのでこれを透過する。次いで、これら2波長の光ビームは、1/4波長板29を透過する際に円偏光に変換され、対物レンズ30によって集束される。そして、780nmの光ビームは、光カード1上に3つの微小ビームスポットS1(+1次回折光)、S2(0次回折光)、S3(−1次回折光)として照射される。これらの光スポットは再生光及びAT,AF制御の信号光として用いられる。また、830nmの光ビームは、S2の微小ビームスポットとして光カード1上に照射される。この光スポットは記録光として用いられる。
【0010】光カード1上における光ビームスポット位置は、図12と同様であり、光ビームスポットS1,S3は隣接するトラッキングトラック4上に位置し、光ビームスポットS2は該トラッキングトラック間の情報トラック2上に位置する。また780nmのS2と830nmのS2の位置関係は、記録即ベリファイができるという点で記録光である830nmの光ビームスポットS2の方が光カード進行方向とは逆側に位置した方が良いが、原理的には自由である。かくして、光カード1上に照射された光ビームスポットからの反射光は、対物レンズ30を通って略平行とされ、再び1/4波長板29を透過することによって、入射時とは偏光方向が90°回転した光ビームとなる。そのため、偏光ビームスプリッタ28にはS偏光ビームとして入射し、このスプリッタ28は前述の如くS偏光は反射するので、光ビームはバンドパスフィルタ31側へ反射される。そして、図16に示すように780nm付近の光だけ透過するような分光特性を有するバンドパスフィルタ31によって、780nm付近の光だけを透過させ、それ以外の波長の光を反射させることで、780nmの光だけが信号用として検出光学系へ導かれる。バンドパスフィルタ31を透過してきた光は、トーリックレンズ33により集束され、光検出器34に入射する。光検出器34は図17のような構成をしており、受光素子11,13の受光信号でトラッキング制御が行なわれ、4分割素子になっている受光素子12の受光信号でフォーカス制御及び再生信号検出が行なわれる。
【0011】
【発明が解決しようとしている課題】ところで、光カードのように情報記録媒体を光ビームに対して相対的に往復運動させて情報の記録あるいは再生を行なう光学的情報記録再生装置では、情報記録媒体の往復運動中の反転時にはかならず一時的な停止状態が存在する。そのため、一方向に一定回転させて情報の記録あるいは再生を行なうフロッピーディスクドライバのような情報記録再生装置に比較すると、その記録・再生速度は劣っているのが現状であり、記録及び再生速度の高速化のための技術開発が急務となっている。そこで、記録と同時にベリファイを行なうという記録即ベリファイによって記録速度を高速化できるのであるが、光カードのように往復移動する記録媒体では、記録即ベリファイをできるのは片方向だけであり、往路と復路の双方向で記録即ベリファイを行なうのは困難であった。また、記録即ベリファイを行なわなければ、原理的に往復移動中の双方向で記録が可能であるが、記録の信頼性あるいはエラー時の対処を考慮すると、記録後のベリファイは不可欠である。そのため、従来にあっては、1トラックごとに往路で情報の記録、復路でベリファイを行なうのが一般的であり、情報の記録に2倍の時間を要するのが実情であった。
【0012】本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、情報記録媒体の往路、復路で情報の記録とベリファイを行なう双方向記録即ベリファイを可能とし、情報の記録速度を大幅に高速化した光学的情報記録再生装置を提供することを目的としたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、光ビームを相対的に往復移動する情報記録媒体に照射して情報を記録あるいは再生する光学的情報記録再生装置において、情報再生用の第1の光源と、情報記録用の第2の光源と、この第2の光源の光路に配置された光路変更用の光学部材とを設け、前記情報記録媒体の移動方向に応じて前記光学部材を第2の光源の光軸に対して所定方向に一定量あおり駆動し、記録用光スポットを再生用光スポットに対して先行した位置に切り換え制御することにより、情報記録媒体の往路及び復路でそれぞれ情報の記録及びその記録情報のベリファイを行なうことを特徴とする光学的情報記録再生装置によって達成される。
【0014】また、本発明の目的は、光ビームを相対的に往復移動する情報記録媒体に照射して情報を記録あるいは再生する光学的情報記録再生装置において、情報再生用の第1の光源と、情報記録用の第2の光源と、この第2の光源の光路に配置された光路変更用の光学部材とを設け、前記情報記録媒体の移動方向に応じて前記光学部材を第2の光源の光軸を中心に一定量回転駆動し、記録用光スポットを再生用光スポットに対して先行した位置に切り換え制御することにより、情報記録媒体の往路及び復路でそれぞれ情報の記録及びその記録情報のベリファイを行なうことを特徴とする光学的情報記録再生装置によって達成される。
【0015】更に、本発明の目的は、光ビームを相対的に往復移動する情報記録媒体に照射して情報を記録あるいは再生する光学的情報記録再生装置において、情報再生用の第1の光源と、情報記録用の第2及び第3の光源と、前記情報記録媒体の情報トラック上に前記第2,第3の光源の記録用光スポットを前記第1の光源の再生用光スポットを中心としてその前後にそれぞれ照射するための手段とを設け、前記情報記録媒体の移動方向に応じて前記第2及び第3の光源の点灯を制御し、再生用光スポットに対して先行する記録用光スポットを選択点灯することにより、情報記録媒体の往路及び復路でそれぞれ情報の記録及びその記録情報のベリファイを行なうことを特徴とする光学的情報記録再生装置によって達成される。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の光学的情報記録再生装置の一実施例を示したブロック図である。図1において、101は光カード記録再生装置、102は上位制御装置であるところのCPUである。光カード記録再生装置101はCPU102に接続され、CPU102の指示に基づいて情報の記録や再生を実行する。光カード記録再生装置101の構成は以下の通りである。まず、103は装置を統括的に制御するためのMPU、104はMPU103の指示に基づいて光カード1上に照射される光スポットの位置を制御するためのスポット位置制御回路、105は光カード1の載置用の台であるシャトル(図示せず)を駆動するためのシャトル駆動回路である。113はこのシャトル駆動回路105によって駆動されるモータで、この駆動力によってシャトルが両方向に往復移動される。106は反転検出センサ111及び112を駆動するためのセンサ駆動回路、107は反転検出センサ111及び112の検出信号に基づいて光カード1の反転を検出するための反転検出回路、108は記録再生用の光ヘッドである。光ヘッド108の内部には、詳しくは後述するが、記録用半導体レーザ22光路変更用のくさび状ガラス板109が設けられている。このくさび状板ガラス109はモータ110により所定方向にあおり駆動される。
【0017】図2は光ヘッド108の内部構成を詳細に示した構成図である。図2において109は断面形状がくさび状に形成されたくさび状板ガラスである。くさび状板ガラス109はケーシング109内に設けられ、このケーシング109aにモータ110の回転軸が連結されている。従って、くさび状板ガラス109はモータ110のあおり駆動により光軸に対して傾いた状態となり、記録用光スポットに対する再生用光スポットの相対位置が変えられるように構成されている。なお、その他の構成は図13に示した従来の光ヘッドと同じであるので、説明は省略する。また、記録用の半導体レーザ22と再生用の半導体レーザ21の波長は異なるものとする。
【0018】次に、本実施例の具体的な動作について説明する。ここでは、情報記録時の動作を説明する。情報を記録する場合、CPU102から光カード記録再生装置101に記録命令が発行される。記録命令はMPU103で受信され、MPU103ではシャトル駆動回路105にシャトルを往復移動させるよう制御信号を出力する。また、MPU103は図示しない光ヘッド移動機構を制御して光ヘッドの光スポットをCPU102で指示された情報トラック上へ移動させる。こうしてシャトルは光カード1を載置した状態でA,Bの両方向に往復移動を開始し、光スポットは指示された情報トラック上に位置決めされる。また、シャトルが移動する際には、A,Bの両方向にそれぞれ設けられた反転検出センサ111及び112によって検出される。反転検出センサ111及び112はシャトルの両側に一定間隔を置いて設けられており、反転検出回路107ではそれらの検出信号によりシャトルが反転すべき位置に達したことを検知し、MPU103は反転検出回路107の出力信号に基づいてシャトル駆動回路105を制御する。例えば、シャトルがA方向に移動して反転検出センサ111で検出されると、MPU103は逆方向のB方向に反転させるべくシャトル駆動回路105に制御信号を出力する。シャトルがB方向に移動した際にも反転検出センサ112の検出信号に基づいて逆方向に反転され、こうしてシャトルはA,Bの両方向に往復運動を行なう。反転検出センサ111及び112としては、一対の発光素子と受光素子を用いて光学的に検知するセンサが使用されている。即ち、発光素子と受光素子の間をシャトルの一部が通過するように構成され、シャトルによって光が遮断されたときにシャトルが反転すべき位置に到達したことが検出される。その他にもスイッチなどを用いて機械的に検出する方法があるが、振動の発生が避けられないので不向である。
【0019】ここで、MPU103は反転検出回路107の反転情報に基づいてシャトルの移動方向を判断し、その判断結果に応じてスポット位置制御回路104を制御する。図3(a)はシャトルがB方向に移動するときのくさび状板ガラス109の状態を示した図で、このときはくさび状板ガラス109の入射面が光軸に対して略直角になるように位置調整がなされている。また、シャトルがB方向に移動するときの光スポットの位置関係を図4(a)に示す。図中211はトラッキングトラック、212は情報トラックである。202〜204は前述のように再生用半導体レーザ21から射出された光束をコリメータレンズ23で平行化した後、回折格子25で3つに分割し、更に対物レンズ30で光カード上に結像された光スポットである。光スポット202はフォーカシング制御と再生用、光スポット203及び204はトラッキング制御用として用いられる。また、201は記録用半導体レーザ22から射出された光束をコリメータレンズ24で平行化し、その後くさび状板ガラス109を透過した光束を対物レンズ30で光カード上に結像した記録用の光スポットである。記録用光スポット201は再生用光スポット202よりも先行した位置に照射される。この場合、再生用の光束が対物レンズ30の面に垂直に入射するのに対して、記録用の光束はくさび状板ガラス109が断面くさび状形状であることから対物レンズ30にある角度をもって入射するため、記録用光スポットは再生用光スポットに対して像高をもつ。対物レンズ30の焦点距離をf、記録用光束のくさび状板ガラス109の入射角に対する射出角をθとすると、記録用光スポットの像高xはf・tanθで求められる。
【0020】こうしてシャトルがB方向に移動する場合、記録用光スポット201は再生用光スポット202に対して先行した位置に照射され、その直後に一定距離を置いて再生用光スポット202が照射される。MPU103はCPU102から送られた記録データを図示しない変調回路に出力して所定の変調方式で変調し、更に得られた変調信号に従い図示しないレーザ駆動回路により半導体レーザ22の光強度を変調することで、情報トラック上に一連の情報が記録される。また、再生用光スポット202の反射光が光ヘッド108内の光センサで検出され、これをもとに図示しない信号処理回路で2値化、復調処理などを行なうことにより、記録データがリアルタイムで再生される。得られた再生データは図示しないベリファイ判定回路へ送られ、記録データと比較することで、記録即ベリファイが行なわれる。そして、シャトルがB方向に移動し、光カードの1つの情報トラックへの情報の記録が終了すると、反転検出センサ112で反転すべき位置に到達したことが検出される。MPU103はこの検出信号に基づいて前述のようにシャトル駆動回路105にシャトルの反転を指示すると同時に、スポット位置制御回路104にスポット位置の変更を指示する。これにより、シャトルの移動方向がA方向に反転され、またスポット位置制御回路104はモータ110を制御してくさび状板ガラス109を一定量あおるように駆動する。
【0021】図3(b)はこのときのくさび状板ガラス109の状態を示した図で、くさび状板ガラス109はモータ110の駆動により一定角度回転され、くさび状板ガラス109は一定量あおった状態に保持される。このあおり方向を図2で説明すると、記録用半導体レーザ22の直線偏光面は紙面に平行方向であり、くさび状板ガラス109のあおり方向はこの偏光面に垂直な方向の面内である。また、くさび状板ガラス109を360度回転させた場合、記録用光スポットは再生用光スポットを中心に略円形状の軌跡を描いて移動するのであるが、くさび状板ガラス109のあおり量はシャトルがB方向に移動したときに対して記録用光スポットが再生用光スポットの反対側に位置するように設定されている。これにより、シャトルがA方向に反転した場合は、図4(b)に示すように記録用光スポット201の再生用光スポット202に対する相対位置が反対となり、記録用光スポット201は再生用光スポット202に対して先行した位置となるように切り換えられる。
【0022】こうしてシャトルの反転時にはくさび状板ガラス109のあおり制御により記録用光スポットと再生用光スポットの位置が入れ換えられ、次の情報トラックへの情報の記録が開始される。もちろん、情報の記録に際しては記録用半導体レーザ22の光強度が記録すべき情報に応じて変調され、情報トラック上に一連の情報が記録される。また、再生用光スポット202の反射光をもとにリアルタイムで記録データが再生され、記録即ベリファイが行なわれる。そして、シャトルがA方向に移動し、やがて反転検出センサ111で検出されると、シャトルは再びB方向に反転し、くさび状板ガラス109は再度図3(a)に示した状態に戻され、次の情報トラックへの情報の記録が開始される。
【0023】このように本実施例にあっては、光カードの往復移動時に移動方向に対応してくさび状板ガラスをあおり制御することにより、光カードの往路、復路のいずれにおいても記録用光スポットを再生用光スポットの先行した位置に照射することができる。従って、従来困難とされていた往路及び復路でそれぞれ情報の記録とベリファイを行なうという双方向記録即ベリファイが可能となり、記録速度を従来に比べて著しく高速化することができる。
【0024】なお、実施例では情報記録時の動作について説明したが、情報の再生時には再生用半導体レーザ21のみ点灯して再生用光スポットを情報トラック上に走査すればよい。また、実施例ではくさび状板ガラスを用いて記録用光スポットの位置を変える例を示したが、平行平板ガラスを用いてもよい。この場合、コリメータレンズ24から出射する光束を若干発散または収束状態に調整しておき、その光束中に平行平板ガラスを挿入する必要がある。そして、この平行平板ガラスを光軸に対して傾きをもたせ、光軸中心に回転させて再生用光スポットに対する記録用光スポットの軸合わせを行なっておく。また、この状態からモータなどにより平行平板ガラスをあおることによって前記と同様に光スポットの位置を変えることができる。従って、光カードの移動方向に対応して平行平板ガラスをあおり制御することによって、光カードの往路、復路のいずれにおいても記録用光スポットを先行した位置に照射することができる。また、くさび状板ガラスのあおりのタイミングをシャトルの反転時としたが、これに限ることなく光カードの速度制御における減速開始時から加速終了時までの期間内であればよい。更に、くさび状板ガラスのあおり手段としてモータを用いたが、これ以外にも例えばソレノイドなどの押し引き可能な手段であってもよい。この場合は、押し引き手段と板ガラスの一端を連結し、板ガラスを略光軸方向に押し引きするように構成すればよい。
【0025】図5は本発明の光学的情報記録再生装置の他の実施例を示したブロック図である。なお、図5では図1の実施例と同一部分は同一符号を付し、その詳しい説明は省略する。図5において、109は光ヘッド108内の記録用半導体レーザ22の光路に設けられたくさび状板ガラスである。また、110はこのくさび状板ガラス109を光軸を中心に回転駆動するためのモータ、120はモータとくさび状板ガラス109に巻回されたベルトである。その他の構成は図1の実施例と全く同じである。図6は光ヘッド108の具体的な構成を示した図で、109は前述のように記録用半導体レーザ22の光路に設けられたくさび状板ガラスである。この実施例では、くさび状板ガラス109をモータ110及びベルト120の回転機構により光軸を中心に回転することで、図1の実施例と同様に光カード上における記録用光スポットの再生用光スポットに対する相対位置を変えるようにしたものである。
【0026】具体的に説明すると、まずシャトルがB方向に移動する場合、くさび状板ガラス109は図6に示す状態にある。即ち、図3(a)に示したように記録用半導体レーザ22の光束に対してくさび状板ガラス109の入射面が直交するように位置しており、従って光カード上においては図4(a)に示したように記録用光スポット201は再生用光スポット202に対して先行した位置に照射される。一方、シャトルがA方向に反転すると、MPU103の指示によりスポット位置制御回路104がモータ110を制御してくさび状板ガラス109を光軸を中心に180度回転させる。これにより、図4R>4(b)に示したように記録用光スポット201と再生用光スポット202の位置が入れ換わり、記録用光スポット201は再生用光スポット202に対して先行した位置となる。なお、回転方向としてはCW方向(順方向)でもよいし、CW方向とCCW方向(逆方向)の併用であってもよい。
【0027】このように本実施例においても、シャトルの移動方向に応じてくさび状板ガラスの回転を制御することにより、光カードの往路、復路で記録用光スポットを再生用光スポットよりも先行した位置に照射することができる。従って、図1の実施例と同様に双方向記録即ベリファイが可能となり、記録時間を著しく短縮することができる。
【0028】なお、くさび状板ガラス109を回転させる機構としては、図7(a)に示すようにモータ110の駆動力をベルト120によって伝達する機構であったが、これ以外にも種々の機構がある。例えば、図7(b)に示すようにくさび状板ガラス109のケーシングにギヤ109bを設け、これとモータ110側のギヤ110aと噛合させることで、くさび状板ガラス109を光軸中心に回転させる方法がある。また、図7(c)に示すようにくさび状板ガラス109のギヤ109bとモータ110のギヤ110aを直線状のギヤ121に噛合させ、このギヤ121を矢印方向に往復移動させることで、くさび状板ガラス109を回転させる方法もある。更に、くさび状板ガラス109を回転させるタイミングとしては、シャトル減速開始時から加速終了時の期間内であればよく、またくさび状板ガラス109に限らず、平行平板ガラスであってもよい。
【0029】図8は本発明の光学的情報記録再生装置の更に他の実施例を示したブロック図である。この実施例では、光ヘッド108内に記録用光源として2つの半導体レーザを有する半導体レーザダイオードアレイ123が設けられている。この半導体ダイオードアレイ123の2つの半導体レーザは、詳しく後述するように光カードの往路と復路でそれぞれ再生用光スポットに対して先行する方に切り換えられる。124はMPU103の指示により光カードの往路と復路で半導体レーザダイオードアレイ123の点灯を制御して駆動するためのLDドライバである。その他の構成は図1及び図5の実施例と同じである。なお、再生用半導体レーザ21と記録用半導体レーザダイオードアレイ123の波長は異なるものとする。
【0030】図9は光ヘッド108を詳細に示した構成図である。図中123は前述したように2つの半導体レーザから構成された記録用半導体レーザダイオードアレイ、125はその記録用光束の光路に設けられたくさび状板ガラスである。半導体レーザダイオードアレイ123から射出された2つの光束は、くさび状板ガラス125の光学的作用により対物レンズ30に角度をもって入射する。従って、この作用を利用して2つの半導体レーザの記録用光スポットが光カードの情報トラック上における再生用半導体レーザ21の再生光スポットの前後に照射されるように光スポットの位置調整がなされている。
【0031】情報を記録する場合、MPU103は反転検出回路107の反転情報をもとにシャトルの移動方向を判断し、その判断結果をもとにLDドライバ124を制御する。シャトルがB方向に移動する場合は、MPU103はLDドライバ124を制御し、図10(a)に示すように再生用光スポット202の前後に照射される記録用光スポット201a及び201bのうち先行する光スポット201aのみを点灯させる。これにより、先行する記録用光スポット201aで情報が記録され、その直後を走査する再生用光スポット202で記録情報を再生して記録即ベリファイが行なわれる。一方、シャトルがA方向に反転すると、MPU103はLDドライバ124を制御し、図10(b)に示すように光スポット201aを消灯、光スポット201bを点灯して記録用光スポットが切り換えられる。従って、先行する記録用光スポット201bにより情報が記録され、再生用光スポット202でその記録情報を再生して記録即ベリファイが行なわれる。
【0032】このように本実施例では、2つの記録用半導体レーザを設け、この2つのレーザの記録用光スポットを光カードの往路と復路で再生用光スポットに対して先行する光スポットに切り換え制御することにより、図1R>1,図5の実施例と同様に双方向記録即ベリファイを行なうことができ、記録時間を著しく短縮することができる。
【0033】なお、実施例では、記録用光源として半導体レーザダイオードアレイを設けたが、2つの半導体レーザを設けてもよい。この場合は、2つの光ビームを1つの光路に合流させるための光学素子やそれぞれの半導体レーザに対応してコリメータレンズと光路変更用のくさび状板ガラスが必要である。また、くさび状板ガラスの代わりに平行平板ガラスであってもよいし、更に記録用光スポットの点灯の切り換えはシャトルの反転時に限ることなく、シャトルの減速開始時から加速終了時の期間内であればよい。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、情報記録媒体の移動方向に応じて記録用光スポットと再生用光スポットの相対位置を制御し、記録用光スポットが再生用光スポットに対して先行するように制御することにより、情報記録媒体の往路と復路でそれぞれ情報の記録とベリファイを行なうという双方向記録即ベリファイが可能となり、情報の記録速度を従来に比べて著しく高速化できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学的情報記録再生装置の一実施例を示したブロック図である。
【図2】図1の実施例の光ヘッドを詳細に示した構成図である。
【図3】図1の実施例に使用されるくさび状板ガラスの光軸に対する相対位置を光カードの移動方向に対応させて示した図である。
【図4】図1の実施例の再生用半導体レーザと記録用半導体レーザの光スポットの位置関係を光カードの移動方向に対応させて示した図である。
【図5】本発明の他の実施例を示したブロック図である。
【図6】図5の実施例の光ヘッドを詳細に示した構成図である。
【図7】図5の実施例に使用されるくさび状板ガラスを回転駆動するための駆動機構の例を示した図である。
【図8】本発明の更に他の実施例を示したブロック図である。
【図9】図8の実施例の光ヘッドを詳細に示した構成図である。
【図10】図8の実施例の再生用半導体レーザと記録用半導体レーザの光スポットの位置関係を光カードの移動方向に対応させて示した図である。
【図11】一般的な光カードを示した平面図である。
【図12】その図11の光カードの一部を拡大して示した図である。
【図13】従来の2光源方式の光ヘッドを示した構成図である。
【図14】図13の光ヘッドのダイクロイックプリズムの特性を示した図である。
【図15】図13の光ヘッドの偏光ビームスプリッタの特性を示した図である。
【図16】図13の光ヘッドのバンドパスフィルタの特性を示した図である。
【図17】図13の光ヘッドの光検出器を示した図である。
【符号の説明】
1 光カード
21 再生用半導体レーザ
22 記録用半導体レーザ
30 対物レンズ
101 光カード記録再生装置
102 CPU
103 MPU
104 スポット位置制御回路
105 シャトル駆動回路
108 光ヘッド
109 くさび状板ガラス
110 モータ
111,112 反転検出センサ
123 記録用半導体レーザダイオードアレイ
124 LDドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 光ビームを相対的に往復移動する情報記録媒体に照射して情報を記録あるいは再生する光学的情報記録再生装置において、情報再生用の第1の光源と、情報記録用の第2の光源と、この第2の光源の光路に配置された光路変更用の光学部材とを設け、前記情報記録媒体の移動方向に応じて前記光学部材を第2の光源の光軸に対して所定方向に一定量あおり駆動し、記録用光スポットを再生用光スポットに対して先行した位置に切り換え制御することにより、情報記録媒体の往路及び復路でそれぞれ情報の記録及びその記録情報のベリファイを行なうことを特徴とする光学的情報記録再生装置。
【請求項2】 前記光学部材のあおり方向は、前記第2の光源から射出された光束の直線偏光面に対して垂直面内方向であることを特徴とする請求項1の光学的情報記録再生装置。
【請求項3】 光ビームを相対的に往復移動する情報記録媒体に照射して情報を記録あるいは再生する光学的情報記録再生装置において、情報再生用の第1の光源と、情報記録用の第2の光源と、この第2の光源の光路に配置された光路変更用の光学部材とを設け、前記情報記録媒体の移動方向に応じて前記光学部材を第2の光源の光軸を中心に一定量回転駆動し、記録用光スポットを再生用光スポットに対して先行した位置に切り換え制御することにより、情報記録媒体の往路及び復路でそれぞれ情報の記録及びその記録情報のベリファイを行なうことを特徴とする光学的情報記録再生装置。
【請求項4】 前記光学部材の回転量は、略180度であることを特徴とする請求項3の光学的情報記録再生装置。
【請求項5】 前記光学部材は、くさび状のガラス板であることを特徴とする請求項1及び3の光学的情報記録再生装置。
【請求項6】 前記光学部材は、平行平板ガラスであることを特徴とする請求項1及び3の光学的情報記録再生装置。
【請求項7】 前記第1の光源と第2の光源は、互いに波長の異なる半導体レーザであることを特徴とする請求項1及び3の光学的情報記録再生装置。
【請求項8】 前記光学部材の駆動制御は、前記情報記録媒体の方向反転時に行なうことを特徴とする請求項1及び3の光学的情報記録再生装置。
【請求項9】 前記光学部材の駆動制御は、前記情報記録媒体の往復移動時の速度制御における減速開始時から加速終了時までの期間に行なうことを特徴とする請求項1及び3の光学的情報記録再生装置。
【請求項10】 光ビームを相対的に往復移動する情報記録媒体に照射して情報を記録あるいは再生する光学的情報記録再生装置において、情報再生用の第1の光源と、情報記録用の第2及び第3の光源と、前記情報記録媒体の情報トラック上に前記第2,第3の光源の記録用光スポットを前記第1の光源の再生用光スポットを中心としてその前後にそれぞれ照射するための手段とを設け、前記情報記録媒体の移動方向に応じて前記第2及び第3の光源の点灯を制御し、再生用光スポットに対して先行する記録用光スポットを選択点灯することにより、情報記録媒体の往路及び復路でそれぞれ情報の記録及び記録情報のベリファイを行なうことを特徴とする光学的情報記録再生装置。
【請求項11】 前記第1の光源と、第2及び第3の光源は、互いに波長の異なる半導体レーザであることを特徴とする請求項10の光学的情報記録再生装置。
【請求項12】 前記第2及び第3の光源は、半導体レーザダイオードアレイであることを特徴とする請求項10の光学的情報記録再生装置。
【請求項13】 前記第2,第3の光源の選択点灯は、前記情報記録媒体の方向反転時に行なうことを特徴とする請求項10の光学的情報記録再生装置。
【請求項14】 前記第2,第3の光源の選択点灯は、前記情報記録媒体の往復移動時の速度制御における減速開始時から加速終了時までの期間に行なうことを特徴とする請求項10の光学的情報記録再生装置。

【図3】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図17】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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