説明

光学的情報読取装置

【課題】筐体の開封検知のための機構が把握されにくい光学的情報読取装置を提供する。
【解決手段】筐体11内に、情報コードBに対して光を照射するための読取用光源21とは異なる開封検知用光源22が設けられており、この開封検知用光源22は、受光センサ28の受光面Sに対して検知用照射光Ldを照射する。また、表側ケース12には、受光センサ28の撮像外領域Soの一部と開封検知用光源22との間を通過するように突出する第1リブ12aが設けられている。また、裏側ケース13には、受光センサ28の撮像外領域Soの他部と開封検知用光源22との間を通過するように突出する第2リブ13aが設けられている。そして、制御回路40は、開封検知用光源22からの検知用照射光Ldに応じて受光センサ28から出力される受光信号の信号パターンPと開封検知用パターンPdとの比較に基づいて筐体11の開封を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の不正開封を検知し得る機能を有する光学的情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、筐体の不正開封を検知し得る機能を有する光学的情報読取装置に関する技術として、下記特許文献1に示す端末装置が知られている。この端末装置では、制御基板が固定される筐体上ケースと筐体下ケースとにより筐体が構成されている。制御基板の筐体下ケース側にはスイッチが設けられており、筐体下ケースの底壁には所定の配線パターンが設けられたプラスチックシートが貼り付けられている。そして、筐体上ケースと筐体下ケースとを組み付けると、制御基板のスイッチの端子と筐体下ケースの底壁の配線とが接続されて閉回路が構成される。
【0003】
そして、不正開封のために筐体上ケースと筐体下ケースとが分離されると、スイッチの端子と配線との接続が断たれて上記閉回路が切断されるので、この閉回路の切断状態を検知することにより、不正開封を検知している。
【0004】
また、下記特許文献2の光学的読取装置では、照明用赤色発光ダイオードから照射されて読取口の周辺領域にて反射された反射光(以下、間接反射光ともいう)の輝度に基づいて、照明用赤色発光ダイオードの劣化の程度を測定している。この光学的読取装置は、筐体の不正開封を検知し得る機構を有していないが、筐体が開封されない場合の間接反射光と筐体が開封される場合の間接反射光との輝度の差を利用することにより、筐体の不正開封を検知することが考えられる。
【特許文献1】特開2001−242951号公報
【特許文献2】特開平10−334178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構成では、筐体が一度開封されてしまうと、その筐体内部を詳細に調査することで筐体の不正開封を検知するための開封検知機構が把握されてしまう。このため、次にその開封検知機構を有する装置の筐体を不正開封する場合には、当該開封検知機構を作動させない対策がとられてしまうという問題がある。
【0006】
また、上記特許文献2に記載の構成を利用した筐体の不正開封検知機能では、筐体を開封するだけでは開封検知機構が把握されないものの、上述した間接反射光は筐体の内面で反射する間接光であることから輝度が弱く、読取口から入射する外乱光の影響を受けやすいため、不正開封の誤検知の可能性が大きくなってしまう。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、筐体の開封検知のための機構が把握されにくい光学的情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の光学的情報読取装置では、情報コード(B)に対して光を照射するための第1の発光手段(21)と、前記第1の発光手段により照射されて前記情報コードにより反射された反射光(Lr)を受光領域(S)にて受光しこの反射光に応じた受光信号を出力する受光手段(28)と、前記受光手段からの前記受光信号に基づいて前記情報コードの読取処理を行う読取手段(40)と、前記読取処理により取得した情報を記憶する記憶手段(35)と、第1ケース(12)および第2ケース(13)が組み付けられて構成される筐体(11)であって少なくとも前記記憶手段および前記受光手段を収容する筐体と、を備える光学的情報読取装置(10)であって、前記筐体内に配置されて前記受光領域に対して検知用照射光(Ld)を照射する第2の発光手段(22)と、前記受光領域のうち前記反射光が到達する撮像領域(Si)とは異なる撮像外領域(So)の一部と前記第2の発光手段との間を通過するように前記第1ケースから突出する第1の突出部(12a)と、前記撮像外領域の他部と前記第2の発光手段との間を通過するように前記第2ケースから突出する第2の突出部(13a)と、を有し、前記読取手段は、前記第2の発光手段からの前記検知用照射光に応じて前記受光手段から出力される前記受光信号のパターン(P)と所定の信号パターン(Pd)との比較に基づいて前記筐体の開封を検知することを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、第1ケースおよび第2ケースが組み付けられて構成される筐体内に、情報コードに対して光を照射するための第1の発光手段とは異なる第2の発光手段が設けられており、この第2の発光手段は、受光手段の受光領域に対して検知用照射光を照射する。また、第1ケースには、受光手段の撮像外領域の一部と第2の発光手段との間を通過するように突出する第1の突出部が設けられている。また、第2ケースには、受光手段の撮像外領域の他部と第2の発光手段との間を通過するように突出する第2の突出部が設けられている。そして、読取手段は、第2の発光手段からの検知用照射光に応じて受光手段から出力される受光信号のパターンと所定の信号パターンとの比較に基づいて筐体の開封を検知する。
【0010】
筐体が開封されていない場合には、第1の突出部および第2の突出部は、第2の発光手段と受光手段の撮像外領域との間にてそれぞれ異なる所定の位置に配置されている。このため、第2の発光手段からの検知用照射光に応じて受光手段から出力される受光信号のパターンは、第1の突出部および第2の突出部の双方の存在が影響する所定の信号パターンとなる。
【0011】
一方、例えば、第1ケースと第2ケースとを分離して第1ケースを取り払うことにより筐体を開封すると、第1の突出部が第2の発光手段と受光手段の撮像外領域との間に配置されていない状態となる。このとき、第2の発光手段からの検知用照射光に応じて受光手段から出力される受光信号のパターンは、第2の突出部の存在が主に影響し第1の突出部が影響しない信号パターンとなるため、上記所定の信号パターンと異なることとなる。
【0012】
そこで、読取手段により、第2の発光手段からの検知用照射光に応じて受光手段から出力される受光信号のパターンと上記所定の信号パターンとを比較することで、筐体の開封を検知することができる。このように、開封検知のための機構は、光学的情報読取装置として通常使用される受光手段と、第2の発光手段および両突出部とにより構成されている。そのため、開封した筐体内を調査しても、第2の発光手段および両突出部が開封検知のための機構の一部であることを把握することは困難である。
【0013】
したがって、筐体の開封検知のための機構を把握されにくくすることができる。
なお、第1の突出部と第2の突出部は、第2の発光手段と受光手段の撮像外領域との間に配置されるため、両突出部が情報コードからの反射光を遮ることもない。
【0014】
請求項2の発明では、上記所定の信号パターンは、第2の発光手段からの検知用照射光に応じて受光手段から出力される受光信号のパターンと所定の信号パターンとの比較に基づいて筐体の開封が検知されない場合には、この比較時の受光信号のパターンに等しくなるように更新される。
【0015】
第2の発光手段が経年変化等して検知用照射光が徐々に変化すると、筐体が開封されていない場合であっても、この検知用照射光に応じて受光手段から出力される受光信号のパターンが上記所定の信号パターンと異なってしまい、開封の誤検知が生じてしまう。そこで、所定の信号パターンを、筐体の開封が検知されない場合にこの比較時の受光信号のパターンに等しくなるように更新することにより、経年変化等による検知用照射光の変化に起因する開封の誤検知を防止することができる。
【0016】
請求項3の発明では、読取手段は、当該読取手段への電力供給の開始時または遮断時に、筐体の開封を検知するための比較を行う。筐体の開封を検知するためには、第2の発光手段から検知用照射光を照射させる必要があり、例えば、一定時間経過する毎に検知用照射光を照射する場合には、開封検知のための消費電力が大きくなってしまう。そこで、開封検知をするのに最適なタイミングである読取手段への電力供給の開始時または遮断時に検知用照射光を照射して両パターンを比較することにより、開封検知のための消費電力を低く抑えることができる。
【0017】
請求項4の発明では、第2の発光手段は、第1の発光手段が配置される基板の受光手段側に配置されている。このように、第2の発光手段および第1の発光手段の両発光手段が1つの基板に配置されるので、別々の基板にそれぞれの発光手段を設ける場合と比較して製造コストを低減することができる。さらに、1つの基板に同じ発光機能を有する第2の発光手段および第1の発光手段が配置されるので、第2の発光手段が開封検知のための機構の一部であることを、より把握されにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る光学的情報読取装置について図を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る光学的情報読取装置10の構成概要を示す説明図である。図2は、図1の2−2断面を示す断面図である。図3は、図1の光学的情報読取装置10の電気的構成を例示するブロック図である。
【0019】
図1に示す光学的情報読取装置10は、例えば、バーコード等の情報コードBを読み取る携帯型のコードリーダとして用いられるもので、表側ケース12および裏側ケース13を組み付けて構成される筐体11内にコードリーダを構成するための回路部20等が収容されている。
【0020】
図1および図2から判るように、表側ケース12の内面には、受光センサ28の撮像外領域Soの一部(後述する)と開封検知用光源22との間を通過するように、裏側ケース13に向けて突出する平板状の第1リブ12aが設けられている。この第1リブ12aの先端部は、表側ケース12と裏側ケース13とを組み付けたとき、裏側ケース13の環状突起13bの挿入穴に挿入するように形成されている。
【0021】
また、裏側ケース13の内面には、受光センサ28の撮像外領域Soの他部(後述する)と開封検知用光源22との間を通過するように、表側ケース12に向けて突出する平板状の第2リブ13aが設けられている。この第2リブ13aの先端部は、表側ケース12と裏側ケース13とを組み付けたとき、表側ケース12の環状突起12bの挿入穴に挿入するように形成されている。
【0022】
筐体11の一端側(図1中の左側)には、後述する照明光Lfの出射や反射光Lrの入射を可能にする読取口14が設けられている。また、筐体11のほぼ中央側面には、情報コードBに対して照明光Lfを照射する際に押圧されるトリガースイッチ42が設けられている。また、筐体11の他端側(図1中の右側)における表側ケース12上には、情報コードBに関する情報等を入力するための複数のキー15が設けられるとともに、その隅に、当該光学的情報読取装置10が落下等したときに受ける衝撃を緩和可能なプロテクタ16が取り付けられている。
【0023】
図3に示すように、回路部20は、主に、読取用光源21、開封検知用光源22、結像レンズ27、受光センサ28等の光学系と、メモリ35、制御回路40、トリガースイッチ42等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、から構成されている。
【0024】
光学系は、投光光学系と、受光光学系とに分かれている。投光光学系を構成する読取用光源21は、照明光Lfを発光可能な照明光源として機能するもので、例えば、複数の赤色LEDと各LEDの出射側にそれぞれ設けられるレンズとから構成されている。読取用光源21は、図1に示すように、光源用基板23に実装されている。なお、図3では、情報コードBとして例えばバーコードが印刷された読取対象物Rに向けて照明光Lfを照射する例を概念的に示している。
【0025】
図1に示すように、開封検知用光源22は、一側面23aに読取用光源21が実装される光源用基板23の他側面23bに実装されており、受光センサ28の受光面Sに向けて直接検知用照射光Ldを発光可能な照明光源として構成されている。
【0026】
受光光学系は、結像レンズ27、受光センサ28、反射鏡(図示略)などによって構成されている。結像レンズ27は、外部から読取口14を介して入射する入射光を集光して受光センサ28の受光面Sに像を結像可能な結像光学系として機能するものである。本実施形態では、読取用光源21から照射された照明光Lfが情報コードBにて反射した後、この反射光Lrを結像レンズ27で集光し、受光センサ28の受光面Sの撮像領域Si(後述する)にコード像を結像させている。
【0027】
図2に示すように、受光センサ28は、例えば、CCDセンサ等の複数の受光素子を配列して構成されている。当該受光センサ28は、結像レンズ27を介して入射する反射光Lrや開封検知用光源22から直接照射される検知用照射光Ldを受光面Sにて受光可能であり、これら反射光Lrまたは検知用照射光Ldに応じた受光信号を出力可能に構成されている。
【0028】
この受光センサ28の受光面Sは、結像レンズ27で集光された反射光Lrが到達してコード像を結像する領域である撮像領域Si(図2に示す波線内)と、この撮像領域Si以外の領域である撮像外領域So(図2に示す一点鎖線内)とに区分けされる。
【0029】
マイコン系は、増幅回路31、A/D変換回路33、メモリ35、アドレス発生回路36、同期信号発生回路38、制御回路40、トリガースイッチ42、ブザー44、表示LED45、液晶表示器46、通信インタフェース48等から構成されている。
【0030】
光学系の受光センサ28から出力される受光信号(アナログ信号)は、増幅回路31に入力されることで所定ゲインで増幅された後、A/D変換回路33に入力されると、アナログ信号からディジタル信号に変換される。そして、ディジタル化された信号、つまり画像データ(画像情報)は、メモリ35に入力されると、所定のコード画像情報格納領域に蓄積される。なお、同期信号発生回路38は、受光センサ28およびアドレス発生回路36に対する同期信号を発生可能に構成されており、またアドレス発生回路36は、この同期信号発生回路38から供給される同期信号に基づいて、メモリ35に格納される画像データの格納アドレスを発生可能に構成されている。
【0031】
メモリ35は、電源が供給される場合に情報を読み出し可能な半導体メモリ装置で、このメモリ35には、後述する読取処理や不正開封検知処理等を実行可能な所定プログラムや、読取処理により得られる情報コードBに関するデータ、上記画像データや後述する開封検知用パターンPdが記憶される。
【0032】
制御回路40は、光学的情報読取装置10全体を制御可能なマイコンによって構成されており、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有すると共に、情報処理機能を備えており、メモリ35とともに情報処理装置を構成している。本実施形態では、制御回路40に対し、トリガースイッチ42、ブザー44、表示LED45、液晶表示器46、通信インタフェース48等が接続されており、例えば、トリガースイッチ42の監視や管理、ビープ音やアラーム音を発生可能なブザー44の鳴動のオンオフ、表示LED45の点灯、非点灯、液晶表示器46の表示制御、通信インタフェース48の制御等が制御回路40によって行われるようになっている。
【0033】
このように構成される光学的情報読取装置10の読取処理は以下のように行われる。
例えば、電源スイッチ(図示略)がオンされて所定の自己診断処理等が正常終了し、情報コードBの読み取りが可能な状態になると、照明光Lfの発光を指示するトリガースイッチ42の入力を受け付ける。このような状態で、作業者がトリガースイッチ42を押圧しオンにすると、それをトリガとして制御回路40が同期信号を基準に読取用光源21に発光信号を出力する。当該発光信号を受けた読取用光源21は、LEDを発光させて照明光Lfを照射する。照明光Lfは、読取口14を通って情報コードBに照射される。
【0034】
すると、情報コードBに照射された照明光Lfが反射し、その反射光Lrが読取口14を通って筐体11内に入射することとなる。この反射光Lrが結像レンズ27を介して受光センサ28の受光面Sに到達することにより、当該受光面Sの撮像領域Siには情報コードBの像、つまりコード像が結像されることとなる。これにより、受光センサ28を構成する各受光素子が露光され、それら各受光素子から情報コードBの像に応じた受光信号が出力され、画像データとしてメモリ35に記憶される。そして、メモリ35に記憶されたコード画像を2値化した後、公知のデコード処理が行われ、情報コードBとして符号化された文字データ等が解読される。なお、デコードに成功した場合には、その旨を示す報知出力(例えば「OK」の文字、短いビープ音や緑色光)を、またデコードに失敗した場合には、その旨を示す報知出力(例えば「NG」の文字、長いビープ音や赤色光)を、液晶表示器46、ブザー44やLED45によって出力し、当該光学的情報読取装置10の使用者に情報コードBの読み取りの可否を報知する。また、デコードに成功した場合には、デコードされたデータ、つまり情報コードBの内容を液晶表示器46に出力したり、通信インタフェース48を介してホストコンピュータ(図示略)等に出力する。
【0035】
次に、本発明の特徴部分である、筐体11が不正に開封された場合にこの開封を検知する不正開封検知処理について、図4〜図7を参照して詳細に説明する。
図4は、不正開封検知処理の流れを例示するフローチャートである。図5は、図4の開封検知用パターン設定処理のサブルーチンを例示するフローチャートである。図6は、開封検知用パターンPdを例示する説明図である。図7は、筐体11が開封された状態での受光信号の信号パターンPを例示する説明図である。
【0036】
まず、図4のステップS101において、電源のオン操作またはオフ操作がされるか、すなわち、制御回路40に対して上記読取処理を実行するための電力供給が開始されるかまたはその電力供給が遮断されるかについて判定される。ここで、電源のオン操作またはオフ操作がされない場合には、ステップS101にてNoとの判定が繰り返され、特に、電源のオン操作後の状態である電源オン状態では上記読取処理が実行されている。
【0037】
ここで、電源のオン操作またはオフ操作がされるか否かについて判定する理由について説明する。筐体11の開封を検知するためには、後述するように開封検知用光源22から検知用照射光Ldを照射させる必要があり、例えば、一定時間経過する毎に検知用照射光Ldを照射する場合には、開封検知のための消費電力が大きくなってしまう。そこで、開封検知をするのに最適なタイミングである電源のオン操作時またはオフ操作時に検知用照射光Ldを照射することにより、開封検知のための消費電力を低く抑えることができる。
【0038】
上記ステップS101におけるNoとの繰り返し判定中に、電源のオン操作またはオフ操作がされると(S101でYes)、ステップS103において、開封検知用パターンPdがメモリ35に記憶されているか否かについて判定される。この開封検知用パターンPdは、筐体11が開封されているか否かを判定するための信号パターンである。
【0039】
ここで、例えば、当該光学的情報読取装置10の製品出荷段階であり、開封検知用パターンPdがメモリ35に記憶されていなければ(S103でNo)、ステップS200における開封検知用パターン設定処理のサブルーチンが実行される。
【0040】
開封検知用パターン設定処理のサブルーチンでは、図5に示すように、まず、ステップS201において、特殊コードが読み取られたか否かについて判定される。この特殊コードは、例えば、製品出荷時等に開封検知用パターンPdをメモリ35に記憶するための特別なコードであり、作業者の操作に応じてこの特殊コードが読み取られると、ステップS201にてYesと判定される。
【0041】
次に、ステップS203において、開封検知用光源22の照射処理がなされる。この処理では、制御回路40からの指示に応じて開封検知用光源22から受光センサ28の受光面Sに向けて検知用照射光Ldが照射される。
【0042】
そして、ステップS205において、信号パターン取得処理がなされる。この処理では、検知用照射光Ldに応じて受光センサ28から出力される受光信号の信号パターンPが取得される。
【0043】
この段階では、上述のように製品出荷段階であるため、筐体11は開封されておらず、開封検知用光源22と受光センサ28の受光面Sの撮像外領域Soとの間には、第1リブ12aおよび第2リブ13aがそれぞれ異なる位置にて配置された状態である。このため、検知用照射光Ldに応じて受光センサ28から出力される受光信号の信号パターンPは、図6に示すように、第1リブ12aおよび第2リブ13aの双方の存在が影響する(図6に示す一点鎖線楕円参照)所定の信号パターンとなる。
【0044】
そして、ステップS207の開封検知用パターン設定処理により、上述のように取得された信号パターンPが開封検知用パターンPdとして設定されてメモリ35に記憶される。
【0045】
このように、筐体11が開封されていなければ、検知用照射光Ldに応じて受光センサ28から出力される受光信号の信号パターンPは、図6に示す信号パターンにほぼ等しくなる。そこで、筐体11が開封されていない状態の信号パターンを開封検知用パターンPdとして設定し、この開封検知用パターンPdと、開封判定時に検知用照射光Ldに応じて受光センサ28から出力される受光信号の信号パターンPとを比較することにより、両信号パターンが異なっている場合に、筐体11の開封を検知することができる。
【0046】
上述のように開封検知用パターンPdがメモリ35に記憶されると、ステップS209により開封検知用光源22が消灯して、開封検知用パターン設定処理のサブルーチンが終了する。
【0047】
このように、開封検知用パターン設定処理のサブルーチンにて、開封検知用パターンPdが設定されると、図4のステップS101の判定処理が再度なされる。そして、電源のオン操作またはオフ操作がされると(S101でYes)、開封検知用パターンPdがメモリ35に記憶されているので、ステップS103にてYesと判定される。
【0048】
次に、ステップS105にて、上記ステップS203と同様に、開封検知用光源22の照射処理がなされて、制御回路40からの指示に応じて開封検知用光源22から受光センサ28の受光面Sに向けて検知用照射光Ldが照射される。これにより、ステップS107にて、上記ステップS205と同様に、信号パターン取得処理がなされて、検知用照射光Ldに応じて受光センサ28から出力される受光信号の信号パターンPが取得される。
【0049】
そして、ステップS109にて信号パターン記憶処理により、上記信号パターンPがメモリ35に記憶されると、ステップS111により開封検知用光源22が消灯する。
【0050】
次に、ステップS113において、上記ステップS109にて記憶された信号パターンPと開封検知用パターンPdとが異なっているか否かについて判定される。ここで、筐体11が開封されていない状態であれば、信号パターンPは、第1リブ12aおよび第2リブ13aの双方の存在が影響する信号パターンとなっており、開封検知用パターンPdにほぼ等しくなるので、ステップS113にてNoと判定される。
【0051】
そして、ステップS115にて開封検知用パターン更新処理がなされる。この処理では、開封検知用パターンPdが上記ステップS109にて記憶された信号パターンPに等しくなるように更新されて、上記ステップS101からの処理が繰り返される。
【0052】
ここで、開封検知用パターンPdを上記信号パターンPに等しくなるように更新する理由について説明する。開封検知用光源22が経年変化等して検知用照射光Ldが徐々に変化すると、筐体11が開封されていない場合であっても、この検知用照射光Ldに応じて受光センサ28から出力される受光信号の信号パターンPが開封検知用パターンPdと異なってしまい、開封の誤検知が生じてしまう。そこで、開封検知用パターンPdを、筐体11の開封が検知されない場合にこの比較時の受光信号の信号パターンPに等しくなるように更新することにより、開封検知用光源22の経年劣化等による検知用照射光Ldの変化に起因する誤検知をなくしている。
【0053】
一方、例えば、筐体11が開封され、表側ケース12が取り除かれた状態では、上記ステップS109にて記憶された信号パターンPは、図7に示すように、第2リブ13aの存在が主に影響し(図7に示す一点鎖線楕円参照)、第1リブ12aが影響しない信号パターンとなる。このため、上記ステップS109にて記憶された信号パターンPと開封検知用パターンPdとが異なることとなり(S113でYes)、ステップS117にて筐体11の開封が検知される。
【0054】
上述のように筐体11の開封が検知されると、例えば、予め設定される正常開封であることを示す所定のキー15の操作がない場合には、不正開封であるとして、メモリ35に記憶されている情報コードBに関するデータ等を消去する。これにより、メモリ35に記憶された情報の不正使用を防止することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、表側ケース12および裏側ケース13が組み付けられて構成される筐体11内に、情報コードBに対して光を照射するための読取用光源21とは異なる開封検知用光源22が設けられており、この開封検知用光源22は、受光センサ28の受光面Sに対して検知用照射光Ldを照射する。また、表側ケース12には、受光センサ28の撮像外領域Soの一部と開封検知用光源22との間を通過するように突出する第1リブ12aが設けられている。また、裏側ケース13には、受光センサ28の撮像外領域Soの他部と開封検知用光源22との間を通過するように突出する第2リブ13aが設けられている。そして、制御回路40は、開封検知用光源22からの検知用照射光Ldに応じて受光センサ28から出力される受光信号の信号パターンPと開封検知用パターンPdとの比較に基づいて筐体11の開封を検知する。
【0056】
このように、開封検知のための機構は、光学的情報読取装置10として通常使用される受光センサ28と、開封検知用光源22および両リブ12a,13aとにより構成されている。そのため、開封した筐体11内を調査しても、開封検知用光源22および両リブ12a,13aが開封検知のための機構の一部であることを把握することは困難である。
【0057】
特に、第1リブ12aは、その先端にて裏側ケース13の環状突起13bに挿入されるように形成されており、第2リブ13aは、その先端にて表側ケース12の環状突起12bに挿入されるように形成されている。このため、両リブ12a,13aが補強のための部材と認識されやすくなり、両リブ12a,13aが開封検知のための機構の一部であることを把握することはより困難となる。
【0058】
したがって、筐体11の開封検知のための機構を把握されにくくすることができる。
なお、両リブ12a,13aは、開封検知用光源22と受光センサ28の受光面Sの撮像外領域Soとの間に配置されるため、両リブ12a,13aが情報コードBからの反射光Lrを遮ることもない。
【0059】
また、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、開封検知用パターンPdは、開封検知用光源22からの検知用照射光Ldに応じて受光センサ28から出力される受光信号の信号パターンPと開封検知用パターンPdとの比較に基づいて筐体11の開封が検知されない場合には、この比較時の信号パターンPに等しくなるように更新される。これにより、開封検知用光源22の経年変化等による検知用照射光Ldの変化に起因する開封の誤検知を防止することができる。
【0060】
さらに、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、制御回路40に対して上記読取処理を実行するための電力供給が開始されるかまたはその電力供給が遮断される(電源のオン操作またはオフ操作がされる)場合に、筐体11の開封を検知するための比較を行う。このように、開封検知をするのに最適なタイミングである電源のオン操作時またはオフ操作時に検知用照射光Ldを照射して信号パターンPと開封検知用パターンPdとを比較することにより、開封検知のための消費電力を低く抑えることができる。
【0061】
さらに、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、開封検知用光源22は、一側面23aに読取用光源21が実装される光源用基板23の他側面23bに実装されている。このように、開封検知用光源22および読取用光源21の両光源が1つの光源用基板23に配置されるので、別々の基板にそれぞれの光源を設ける場合と比較して製造コストを低減することができる。さらに、1つの光源用基板23に同じ発光機能を有する開封検知用光源22および読取用光源21が配置されるので、開封検知用光源22が開封検知のための機構の一部であることを、より把握されにくくすることができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)当該光学的情報読取装置10は、例えば、QRコード等の2次元コードを読み取り可能なコードリーダであってもよい。この場合、受光センサ28は、CCD等の複数の受光素子が2次元的に配列されて構成される。また、開封検知用パターンは、筐体11が開封されていない場合に上記受光センサ28から出力される受光信号の信号パターンに応じて設定される。そして、この開封検知用パターンと筐体開封判定時の信号パターンとの比較に応じて筐体11の開封を検知してもよい。
【0063】
(2)第1リブ12aおよび第2リブ13aは、平板状に形成されることに限らず、例えば、円柱状に形成されてもよい。また、第1リブ12aおよび第2リブ13aは、環状突起13bが廃止された裏側ケース13および環状突起12bが廃止された表側ケース12に対して所定の隙間を有するように形成されてもよい。
【0064】
(3)図8は、本実施形態の変形例に係る不正開封検知処理の流れを例示するフローチャートである。
上述した不正開封検知処理において、図4および図5に示すフローチャートに代えて、図8のフローチャートを採用してもよい。この図8のフローチャートに基づく不正開封検知処理では、ステップS103における判定処理および開封検知用パターン設定処理のサブルーチンが廃止されるとともに、ステップS112の判定処理が新たに追加されている。
【0065】
このステップS112における判定処理では、開封検知用パターンPdがメモリ35に記憶されているか否かが判定され、開封検知用パターンPdがメモリ35に記憶されていなければ(S112でYes)、ステップS113における判定処理を実施することなく、ステップS115の処理がなされる。このように、開封検知用パターンPdがメモリ35に記憶されていなければ、ステップS109にて記憶された信号パターンPを開封検知用パターンPdとして設定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態に係る光学的情報読取装置の構成概要を示す説明図である。
【図2】図1の2−2断面を示す断面図である。
【図3】図1の光学的情報読取装置の電気的構成を例示するブロック図である。
【図4】不正開封検知処理の流れを例示するフローチャートである。
【図5】図4の検知用パターン設定処理のサブルーチンを例示するフローチャートである。
【図6】開封検知用パターンPdを例示する説明図である。
【図7】筐体が開封された状態での受光信号の信号パターンを例示する説明図である。
【図8】本実施形態の変形例に係る不正開封検知処理の流れを例示するフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
10…光学的情報読取装置
11…筐体
12…表側ケース(第1ケース)
12a…第1リブ(第1の突出部)
13…裏側ケース(第2ケース)
13a…第2リブ(第2の突出部)
20…回路部
21…読取用光源(第1の発光手段)
22…開封検知用光源(第2の発光手段)
23…光源用基板(基板)
23a…一側面
23b…他側面(基板の受光手段側)
28…受光センサ(受光手段)
35…メモリ(読取手段)
40…制御回路(読取手段)
B…情報コード
Lr…反射光
Ld…検知用照射光
P…信号パターン
Pd…開封検知用パターン(所定の信号パターン)
S…受光面(受光領域)
Si…撮像領域
So…撮像外領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報コードに対して光を照射するための第1の発光手段と、
前記第1の発光手段により照射されて前記情報コードにより反射された反射光を受光領域にて受光しこの反射光に応じた受光信号を出力する受光手段と、
前記受光手段からの前記受光信号に基づいて前記情報コードの読取処理を行う読取手段と、
前記読取処理により取得した情報を記憶する記憶手段と、
第1ケースおよび第2ケースが組み付けられて構成される筐体であって少なくとも前記記憶手段および前記受光手段を収容する筐体と、
を備える光学的情報読取装置であって、
前記筐体内に配置されて前記受光領域に対して検知用照射光を照射する第2の発光手段と、
前記受光領域のうち前記反射光が到達する撮像領域とは異なる撮像外領域の一部と前記第2の発光手段との間を通過するように前記第1ケースから突出する第1の突出部と、
前記撮像外領域の他部と前記第2の発光手段との間を通過するように前記第2ケースから突出する第2の突出部と、を有し、
前記読取手段は、前記第2の発光手段からの前記検知用照射光に応じて前記受光手段から出力される前記受光信号のパターンと所定の信号パターンとの比較に基づいて前記筐体の開封を検知することを特徴とする光学的情報読取装置。
【請求項2】
前記所定の信号パターンは、前記第2の発光手段からの前記検知用照射光に応じて前記受光手段から出力される前記受光信号のパターンと前記所定の信号パターンとの比較に基づいて前記筐体の開封が検知されない場合には、この比較時の前記受光信号のパターンに等しくなるように更新されることを特徴とする請求項1に記載の光学的情報読取装置。
【請求項3】
前記読取手段は、当該読取手段への電力供給の開始時または遮断時に、前記筐体の開封を検知するための前記比較を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の光学的情報読取装置。
【請求項4】
前記第2の発光手段は、前記第1の発光手段が配置される基板の受光手段側に配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学的情報読取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−66956(P2010−66956A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231944(P2008−231944)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】