説明

光学的血管機能撮像システムと癌性腫瘍の発見と診断方法

【課題】乳癌の早期発見を目的として信頼性が高く安価な測定装置と方法を提供する。
【解決手段】生体内での光学的撮像システムと、腫瘍の血管構造と関連がある異常な血管構造を識別する方法を提供する。撮像システムにより、乳房を透過して像を得る。無害で非侵襲性のOとCOを血管活性剤として用いて、吸気により投与して血管変化を励起する。吸入前と最中で像を撮り減算する。光学的血管機能撮像システムは、様々な濃度のOとCOとを吸入中のオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンを光学的に測定することにより、異常血管構造を監視する。癌性腫瘍と正常組織の間のコントラストは大きく、癌性腫瘍の正確な早期発見を容易にする。本発明は、マンモグラフィ、皮膚病、前立腺の撮像等、光が到達できる部位において使用できる。
14291.doc

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像診断システムと方法に係り、特に画像品質や感度、特異部位強調能力が大きく改良され、乳癌のような癌性腫瘍の早期発見と診断に役立つ、革新的な光学的血管機能の撮像技術に関する。
【背景技術】
【0002】
早期発見は乳癌の死亡率を低下させるカギとなる。安全で非侵襲かつ比較的安価な乳癌の正確な早期発見方法が必要とされ続けている。必要のない生検の数を減らすためにも改良された診断手法が強く望まれている。
現在、乳癌の標準的な撮画検査法は、X線マンモグラフィである。しかし残念ながら、X線マンモグラフィは、年配女性の乳房よりも密度が高い若い女性の乳房に発生する癌の発見には、効果が低くなる。更にX線マンモグラフィによる発癌の危険性は比較的低いが、何年にもわたる検査に対する被爆の危険性は否定できない。これらの理由からX線マンモグラフィを増補するために、超音波、MRI、Tc−99mセスタミビを用いたシンチグラフィ、ポジトロンCTといった新しい撮像技術が使用され、研究されている。それらの撮像技術は、それぞれの分野で知られているので、ここでは記載は省略する。
【0003】
光学的撮像技術もまた研究されてきた。光学的撮像技術は多くの利点がある。例えば、非侵襲性、電離放射線を用いない、痛い乳房の圧縮を必要としない等である。光学的マンモグラフィは、1970−1980年代に詳しく研究され、X線マンモグラフィより劣っているという結果が導かれた。光学的マンモグラフィの基本的な問題は、空間分解能にある。光学的マンモグラフィの空間分解能は、0.5−1cmであり、小さな腫瘍はコントラストがぼけてしまう。
【0004】
特許文献1は、電離放射線を使用せずに乳房の平面を選択的に撮像することによりこの問題を解決しようとした。ポラスの電離放射線を使用しない撮像システムは、検出器と撮像される細胞組織の間に設置された特別な接触ウインドウと、撮像する薄切り平面部分の深さに焦点を合わせたカメラを使用する。
【特許文献1】米国特許公開20050010114 (ポラス著、2005年1月13日公開、「OPTICALMAMMOGRAPHY」)
【0005】
また他の研究者により、散乱を減らすため注射や局所使用によって造影剤を患者に投与することが提案されている。例えば、特許文献2は、光撮像方法において散乱造影剤として特定の物質を導入することによって、コントラストを強めることに成功している。
【特許文献2】米国特許公開20030157021 (クラベネスら著、2003年8月21日公開、「LIGHT IMAGING CONTRAST AGENTS」)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
血管を形成する過程において、腫瘍は異常な血管構造を作り、その結果、癌組織はしばしばヘモグロビン酸化測定により観察されるような低酸素状態となる。本発明では、光学的撮像技術による癌性腫瘍の測定を向上させるため、外因性の血管活性物質をヘモグロビンに加え、ヘモグロビンの分光特性により発生する内因性のコントラストを利用する。
【0007】
我々は、酸素(O)と二酸化炭素(CO)の吸入により、生体内の光学的画像において大きなコントラストが発生することを発見した。血管の変化を励起するためにOとCOを血管活性物質として使用することで、比較的安全に、非侵襲で、注射の必要もなく、投与や撮像に時間がかからないという利点が得られる。
【0008】
吸入時のコントラストを利用した示差撮像により得られた追加されたコントラストから、従来の光学的撮像に比べてより優れた画像品質を得ることが容易となる。腫瘍(癌性)と正常組織(癌性でない)の間でコントラストが劇的に増加する。信号変化における2つの変化因子が確認された。本発明では、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンに起因する内部コントラストを外部から増強することにより、40歳以下の女性の乳癌を含む癌性腫瘍の早期発見や診断に有用である明瞭なコントラスト像を提供する。
【0009】
本発明による撮像システムにより、乳房を透過しての画像を得ることができる。そして、OやCOの吸気の前と最中に得られた画像の差を見る。増強血管機能光学的撮像システムは、様々な濃度のOとCOの吸入によるオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの光学的測定により、異常な血管構造を監視する。そこで、増強データ分析手段を用いて、大量の得られたデータを基にした画像分析を行う。実施例では、一つの光学的撮像システムが、静的および動的なコントラスト機構を監視することにより、実現しうる最良の分解能と特異部位強調能力を達成する。
【0010】
X線により得られる物質的な画像情報と比較して、本発明は乳癌の早期発見や診断に対してより特異部が強調され、機能を表す画像情報を提供する。本発明は、X線マンモグラフィにより見逃された(誤って陰性となった)腫瘍を発見することによって、病気の発見が遅れることにより発生する経済的なコストや犠牲者を減らすことができる。また、誤った陽性診断の数を低減することにより、必要のない生検の手間や経済的コストを低減することができる。
【0011】
さらに、光学的な測定装置は安価であるため、本発明はX線マンモグラフィと組み合わせて使用することができ、X線単独での使用に比べて優れた分解能と特異部位強調能力を得ることができる。デジタルX線マンモグラフィへの移行により、本発明はX線撮像装置のカメラを共有することができ、2つの異なる撮画手段の優れた効果を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の主要な課題は、乳癌の早期発見と診断における分解能と特異部位強調能力を改良する(誤った陽性や陰性の割合を減らす)ために、信頼性が高く安価な技術を開発することである。我々は、この課題を腫瘍の異常な血管機能(不規則な酸化反応、不規則な血管活性、血液の滞留)に基づくコントラストの新しい型を用いた増強機能(生理学的な)光学的撮像により達成した。
【0013】
もう一つの目的はX線マンモグラフィがあまり効果的でない密度の高い乳房を透過しての撮像を改良することである。我々は、この示差血管活性光学的撮像(DVOI)について動物実験を行ってきた。この実験により齧歯類において、OとCOの気体混合物の吸入に関係して、示差撮像によって癌性と癌性でない組織の間に強いコントラストが得られることが確認した。
【0014】
DVOIにより得られるコントラストは腫瘍中の血管構造に由来して発生し、吸入されたOとCOの濃度を変化させることによって見られる不規則な酸化反応、不規則な血管活性、血液の滞留の結果発生する。これらの示差血管機能測定は、(1)血管形成によるヘモグロビン濃度の増加、(2)腫瘍の低酸素状態から起こる部分的なヘモグロビン酸化の減少、によって発生する癌に特異的な静的コントラストを増強することにより得られる。
【0015】
DVOIシステムは静的と動的なコントラスト機構を測定し、光学的撮像システムにより実現し得る最高の分解能と特異部位強調能力を提供する。COとOは魅力的なコントラスト増強剤である。なぜなら、それらは適当な濃度や吸引期間であれば害がなく安全であり、注射も必要なく、また投与や撮像に長い時間を要しないためである。
【0016】
これらの吸気コントラスト試薬を使用することにより、吸入前と吸入中から得られた画像の間に強いコントラストを観察することができた。光学的測定技術はヒトの乳房の厚さと同程度の光学的厚さで、発色団のピコモルの濃度変化を感知し、位置を示すことができる。以下の章にDVOI法により得られるコントラストの差の特異性により、ヒトの乳房を透過しての光学的撮像を使用して得られる空間的分解能が低くても、高感度で腫瘍を検知することができる理由を示す。
【0017】
乳房の撮像にDVOIを使用する利点は、機能的撮像(例えば組織の状態や機能に基づいた情報が得られる撮像)である点、装置が安価である点、電離放射線を使用しない点を含む。DVOIは、第1の検査用撮画手段として使用できる。或いは、DVOIは乳癌の診断や病期の分類、処置の監視のためのX線撮像の第2撮像手段として使用することができる。DVOIは簡素で安価なため、X線や超音波画像診断による身体の撮像診断の補足として機能的情報を付加する目的で、組み合わせることができる。DVOIは密度の高い乳房の撮像により効果的であり、X線マンモグラフィのために必要な不愉快で痛い乳房の圧縮を軽減もしくはなくすことができる。
【0018】
<<光学的乳房撮像>>
上記したように、光学的マンモグラフィの主要な問題点は空間分解能である。光学的マンモグラフィは、0.5−1cmの空間分解能しかなく、小さな腫瘍はぼけによってコントラストが減少する。この制限は、機能撮像情報により克服できる。
【0019】
<<機能の光学的撮像>>
X線撮像は主に構造的な情報を提供するのに対して、光学分光学的な撮像は構造と組織の機能に基づいた情報を提供する。例えば、異なった波長での光学的な測定は乳癌の発見に重要な全ヘモグロビンの内容と酸化機能に関する情報を示す。腫瘍の血管形成は、一般的に局所的なヘモグロビンの濃度上昇を引き起こす。加えて、腫瘍はしばしば低酸素状態となり、この状態はヘモグロビン酸化の減少として光学的に観察される。低酸素状態である腫瘍は、放射線治療や化学療法に耐性を示す傾向があり、より転移性や侵襲性になりやすいため、腫瘍の低酸素の程度は治療の指針として使用され得る。
【0020】
腫瘍の形態は、光学的散乱係数の変化によるコントラストの発生源となる。本発明のシステムは、利用し得る光学的コントラストの全てを利用して、腫瘍の血管機能に関連する示差測定を行い、こりにより得られる機能上の光学的像を増強する。利用できるコントラストを広く使用することが感度と特異部位強調能力を改善するために最も効率がよい。
【0021】
ここで開示する示差血管活性光学的撮像の方法に対する科学的な根拠は、腫瘍の血管形成を通して形成される血管系の不規則な特徴により支持されている。以下に参照した文献は、腫瘍の血管形成について開示している。(J. M. Brown, A. J. Giaccia, "The unique physiology of solid tumors: Opportunities (and problems) for cancer therapy" Cancer Res. 58,1408-1416 (1998))、(P. Carmeliet, R. K. Jain, "Angiogenesis in cancer and other diseases" Nature 407,249-257 (2000))
【0022】
腫瘍中の血管は、管壁が漏れやすくまた流速が遅い毛細血管が膨張した形状を呈する。これらの特徴は、吸入したOやCOの濃度変化と連動する光学的撮像に対して少なくとも3形態のコントラストを示す。これらのコントラストは、不規則な酸化、不規則な血管活性、血液の滞留により発生する。OとCOは血管活性があるため、それらのガス濃度を変化させて投与することによって不規則な腫瘍の血管活性が励起され、強いコントラスト像が得られる。腫瘍の血管は多くの場合、よじれた構造を有し漏れやすい。そのためそれらの血管内に滞留した血液は酸化変化に対する反応が遅れ、よいコントラスト機構を与えてくれる。滞留した血液そのものは、腫瘍の不規則な酸化の原因となる。しかし、我々の実験から不規則な酸化は、滞留した血液によって発生する一時的な応答を経た後も持続することが確認された。
【0023】
機能光学的撮像を用いることによる、ここで開示するDVOIシステムは、腫瘍内の異常な血管構造を確実に測定することができる。例えば、15%COと85%Oから成るカーボゲンを投与する前後のヘモグロビン量を比較することによって、カーボゲン吸入後の血管拡張や血管縮小応答を直ちに感知することができる。同様に、増加させたOを投与した後の腫瘍内の酸化応答は、Oが増加する前後のヘモグロビン酸化をモニタリングすることにより容易に測定することができる。滞留した血液と関係がある変化は腫瘍内では遅延した酸化変化として観察される。また、DVOI法は全体の感度と特異部位強調能力を改善するために、オキシヘモグロビンとデオキシヒモグロビンの定量測定と組み合わせることができる。
【0024】
DVOIは、良性と悪性の病変を機能的に区別し得る。良性の病変では血管構造は丸みをもつ傾向があるが、悪性の病変ではより角張る傾向がある。血管構造が異なるため、OやCOに対する血管の応答も異なり得る。
【0025】
腫瘍の血管機能に関したコントラストの相違を測定する意義は更にある。第1に、乳房は、葉(腺組織)と、脂肪と、結合組織と、管と、血管系とから成る非常に不均一な組織であるため、測定幅の広いコントラスト機構を使うことにより、光学的撮像において感度が向上し、不均一さを補うことができる。第2に、より成功的な無侵襲光学的測定(例えば、脳機能を撮像するパルス酸素濃度計)は示差測定あるいは動的測定である。最後に、最近の理論研究により、経時変化する光学的コントラストを動的あるいは示差光学的撮像手法を用いて得た結果の改善方法が示されている。続く実施例で、実現し得る最高の結果を得るために動的測定と機能測定を組み合わせる。
【0026】
<実施例>
<<動物実験のための示差血管活性光学的撮像システムの構成>>
腫瘍の大きさと進行段階の確認を目的としてコントラストを測定するために、DVOIを実施し、非侵襲性測定をマウスに行った。ヒトの乳房と同程度の厚さの組織を複製するために、ヒトの乳房組織の光学特性を擬似した組織ファントム溶液に麻酔した動物の一部を浸積し使用する。この方法では乳房中の組織の不均一さによる効果が現れないが、実際のヒト組織を使用しないでコントラストの試験を行う最も現実的な方法である。測定は非侵襲性であるため、動物で繰り返して測定を行い、器具と方法を洗練し最適化した。
【0027】
図1(a)に浸積を伴うDVOIを行う連続波(CW)浸積撮像システム100を示す。システム100は、近赤外線(NIR)光源と、カメラとを含み、光源とカメラとはコンピュータと接続し、リアルタイムで連続して画像データを分析することができる。浸積コンテナは撮像の対象物を保持するために光源とカメラの間に設置される。いくつかの実施例では、光源は一列に配列された発光ダイオード(LEDs)であり、カメラは高感度かつ高SNRのデジタルカメラである。
【0028】
当業者によって理解されるように、このシステムは容易に様々な方法で実施し得る。図1(b)に動物実験に適した典型的なシステム110を示す。ある実施例では、これらのLEDsは780nmか840nmにピーク強度をもつ近赤外線(NIR)を発する(それぞれ「EpitexL780−OlAU」と「Epitex840−0lKSB」)。LED配列間の切り替えによって異なる波長での測定が可能であり、ヘモグロビン量と酸化ヘモグロビンの量を測定することができる。高NIR伝搬装置(JML Optics)に大きな開口レンズを設置することにより撮像センサー上の光の通過量を20%増加させた。
【0029】
NIR光源は、サンプル浸積ボックスの方を向いて設置される。サンプル浸積ボックスは水とインクとマイクロメーター以下の大きさの球体ポリマー(Ropaque:Rohm and Haas社)を含む適合媒体が満たされており、37℃に加熱されて対象動物が浸積される。この浸積媒体はマウス組織の散乱と吸収特性に近づける。浸積ボックスの前面はカメラに撮影される。各波長で画像が撮影されると共に8ビットの分解能でデジタル化され、分析のためコンピュータに送られる。
【0030】
DVOIシステムは、適当な様々なカメラを用いて実施することができる。例として、
「Dragonfly」CCD(電荷結合素子)カメラ(Point Grey Research社)、「Stanford Photonics Gen III」画像増強装置に連結した「Pulnix TM−9701」CCDカメラ、「ImagingSourceDMK−3002−IR」が挙げられる。好ましくは、「digital Dragonfly」CCDカメラがよい。なぜならば、他のビデオカメラに比べ、信号対雑音比(SNR)において大きな改良がなされているからである。「Dragonfly」カメラは、他のビデオカメラに比べてNIR域での絶対感度が低いが、ノイズを拾いにくく、また露光時間が長い(60秒以上)。これらの特徴は、厚いサンプル組織を撮像するのに重要である。感度と視野に優れた「Retiga Exi(QImaging社)」のような更に高価なカメラも利用することができる。
【0031】
組織ファントムに動物(あるいは関心領域)を浸積することによって、組織の厚さや配置の変化に伴うコントラストの変化が除去されて画像品質を改善し、またカメラのダイナミックレンジを向上し、照度が均一となる。調整を良く一致させることにより、組織はほとんど見えなくなり、様々な内部構造や、コントラストといった目的としている生体内の画像を得ることができる。浸積媒体は(1)ヒトの乳房として一般的な厚みと同程度の厚さを持つ細胞の試験を可能とし、(2)境界を消すことにより測定を増強する。組織ファントムはヒトの乳房のような不均一性を持たないが、動物そのものに相当な不均一性が存在する。
【0032】
組織ファントムは以下の参考文献に記載されている我々が開発した方法を用いて調整した。(M. Gerken, G. W. Faris "Frequency-domain immersion technique for accurate optical property measurements of turbid media") Opt. Lett. 24,1726-1728 (1999))、(X. Wu, L. Stinger, and G. W. Faris "Determination of tissue properties by immersion in a matched scattering fluid, "Proc. SPIE 2979,300-306 (1997))
【0033】
最初の組織ファントムを調整した後、撮像のための目的領域を持つ動物は、基板と固定用ひもに挟まれ浸積される。振幅や位相における変化を測定し、ファントムの組成を浸積測定に決定された光学特性に従って調整する。この過程は浸積媒体と撮像する組織との光学特性が数パーセント以内で一致するまで繰り返し行う。組織ファントムの濃淡はCW測定のために組織ファントムを含むボックスに挿入するプレキシガラス板によって変化する。
【0034】
<<動物実験>>
ヒト乳癌細胞(MDA231)とマウス胚性線維肉腫をグルタミンと10%ウシ胎仔血清を含むダルベッコ最小必須培地(DMEM)で培養した。細胞は、0.25%トリプシンを用いて80%融合したところで収穫した。細胞は雌性無胸腺ヌードマウス(約23g、Harlan研究所)の背中の皮下に注入した。両方の細胞株は各マウス当たり、100μlのDMEM当たり2−3百万細胞の濃度で使用した。腫瘍の体積は週2回測定を行った。
【0035】
<<動物の撮像>>
腫瘍の体積が500−1000mmの動物の撮像実験を行った。各実験で、2−4匹の動物を用いた。マウスを40mg/kgペントバルビタールで麻酔した後、マウスを3mm厚のプレキシガラスに黒のビニルテープで固定した。浸水に伴うストレスを軽減するためと動物が動かないようにするため、更に20mg/kgの麻酔を与えた。カーボゲンもしくは空気を流速約3L/minでノーズコーンを通して浸水したマウスに投与した。浸積ボックスの光路長はマウスの厚さ(2−2.5cm)に一致するように調整した。この厚さでは、カメラの露光時間は各波長とも1秒当たり約3フレームで測定した。
各マウスに対してカーボゲンの吸入前、吸入中、吸入後の像を記録した。図2(a)にカーボゲンを吸入した後134秒後に撮影した静的像を示す。マウスと腫瘍のおおよその輪郭を像中に説明とともに示す。マウスの頭は浸積媒体の外にでており、視野の外上方にある。後肢と尾が図の下方に見える。図2(b)にバックグラウンドを除去した後の像を示す。バックグラウンドは単にカーボゲンが吸入される前のマウスの図である。マウスと腫瘍の境界は浸積媒体の一致により見えないが、図2(b)の示差像からマウスの腫瘍と周囲の組織の間に明確なコントラスが存在することがわかる。
【0036】
<<示差コントラストの一時的な変化>>
カーボゲンを吸入することによって腫瘍組織とマウス組織の間に発生する増強されたコントラストは示差像内の強度変化を平均化することによって測定される。図3と図4に780nmと840nmにおいて得られた差を平均化したデータをそれぞれ示す。四角は腫瘍組織における変化を表しており、円はマウスの腫瘍を含まない部分で腫瘍に隣接した部分を示しており、棒線はマウスを含まない画像の一部の平均を表している。
【0037】
通常のマウス組織と比較して、両波長における最大変化量は約±10であり、また腫瘍組織の動態に現れる明確な差を表す数値からも変化が明らかに見られる。また検出下限として測定したバックグラウンドはちょうど±0.2しか変化しない。
【0038】
図3と図4に示すように、いくつかの領域(例えば780nmでの約55秒や840nmでの約135秒)で腫瘍とその周囲の組織の間に強い差が見られる。更に他の大きな差としてカーボゲンを停止した後に、840nmでは腫瘍と周囲の組織の相対的強度が逆転しているのが見られる。
【0039】
図2(b)に示すような単一波長を用いて撮像した画像は癌の発見に利用することができるが、またオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンとの変化を測定することにも興味が持たれる。オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンのおおよその経路積分を計算するために、図3と図4とを作成するために使用した画像データを分析した。780nmと840nmでの吸収は次のように記載できる。

【0040】
ここで、lはある波長、[Hb]と[HbO]は脱酸素されたヘモグロビンと酸化ヘモグロビンの濃度を表し(moles/L)、eはモル吸光係数を表す。ベールの式を用いて、吸光係数mの変化を記述することができ、ベースラインからの時間t秒後における像は以下の式で表される。

【0041】
ここでIは透過光の強度を表し、lは光路長を表し(cm)、光路長は動物組織により異なるため適切に修正されている。両方の波長で光路長が同じと仮定すると、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの濃度の経路積分における変化をおおよそ測定することができる。式(1)と式(2)より

【0042】
LEDsの有限帯域幅から、各波長におけるLEDスペクトルを正規化した波長依存性の吸光係数を積分することにより、吸光係数を以下のように求めることができる。

【0043】
これにより、時間tにおけるHb,HbO,Hbtotalの濃度に対する式が得られる。

【0044】
図5に示すように、これらの式を使って全ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビンのおおよその一時的な変化量を決定した。図6に示すように、これらの値を用いておおよそのO含有量(オキシヘモグロビンの増加量、デオキシヒモグロビンの減少量)を求めることができる。これらの図から以下のことがわかる。カーボゲンの吸入を開始したときの振幅から分かるように腫瘍の血管構造はより不規則な挙動を示す。またカーボゲンの吸入停止時に、全ヘモグロビン濃度はベースラインに戻ることができず(図5)、O量が下がり過ぎる(図6)。オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの変化の規模は、腫瘍において顕著である(図5)。腫瘍中のO含有量の増加は、動物の腫瘍部以外と比較して遅れて現れ(図5中段と図6)、これは腫瘍中の滞留血液に起因すると考えられる。
【0045】
図5と図6に対して行った処理と同様の処理を行い、図7(a)と図7(b)それぞれに示すように、おおよその経路積分をしたオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンを表す図を作成した。これらの示差血管活性画像は、図2(a)のように加工していない静的な図に比べて、腫瘍部のコントラストにおいて劇的な増加を示す。
【0046】
<<主成分分析>>
上記の撮像実験は大量のデータを発生する。一般的に、2つの波長に対して10画素の画像がカーボゲンの吸入を繰り返し行う期間中(おおよそ10から20分間)に2−10秒毎に記録される。これらの実験の結果から、カーボゲンの吸入によって、画像強度は7%以下の変化を示すことが期待できる。巨大なデータからこのような小さな変化を抽出することは大変な作業であるため、研究者達は、発生したデータを表すために、以下に参照するような、より小さなオーソゴナル画像を作成する手法を使用してきた。(L. Sirovich and E. Kaplan, "Analysis methods for optical imaging,"in Methodsfor In Vivo Optical Imaging of the Central Nervous System, R. Frostig, Ed. (CRC Press, 2001))、( L. Sirovich and R. Everson, "Management and analysis of large scientific datasets, "Intl. J. Supercomputer Applications 6,50-68 (1992)) 実際にこれらの手法によって、1組10,000の画像データを、1組100以下の固有画像に表すことができる。
【0047】
主成分分析(PCA)として知られるこれらの方法を最も簡単に適用すると、記録した画像は以下の式で表される。

【0048】
ここで、xは像の空間画素のグレースケール値を表し、tは像を採取した時間を表す。f(t,x)で表される像は直行する関数a(t)とj(x)に分解して以下のように表される。

【0049】
P画素を含み、連続するT時間の画像は以下の行列で表される。

【0050】
この行列は、特異値分解の一般的な手法により異なるa(t)成分とj(x)成分に分解することができる。

【0051】
列Vは正規直交空間基底関数であり、正規直交列Aは空間基底関数の時間依存性を表し、Uは行列AとVの重み係数である。
【0052】
PCA法を用いてオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの変化を決定するデータ処理の第一段階として、光路長lは上述したように測定する。D[Hb]とD[HbO]を表す時間に依存する像は、式(10)に表される行列に配列され、そして特異値分解により、行列A,U,Vを得る。図8に、行列Uの対角線に沿って示されたスケーリング因子をプロットしたグラフを示す。我々の研究では最初の3もしくは4の固有像のみがヘモグロビンの動態を表す像に大きく貢献する。
図9に示すように、最初の2つの固有像は行列Vの最初の2つの列に一致する。腫瘍と腫瘍の周囲との間のコントラストは、第2像中で明らかである。D[Hb](t)とD[HbO](t)の第2固有像の時間依存性の重み付けは、A・U行列から決定され、図10に示す。
【0053】
<<ヒトを対象とした示差血管活性光学的撮像システムの構成>>
DVOIは乳癌の発見に効果的であり、乳癌を進行させる傾向があることが知られている若い女性の検査に適している。X線撮像といった他の撮画手段と組み合わせることによって、DVOIシステムは疾病に対抗する有力な道具となる。
【0054】
ヒトを対象とする場合、異なった撮像方法が乳房の示差血管活性の撮像に使用されるかもしれない。撮像は、乳房の圧縮と浸積とを行い、あるいはそれぞれ行わないで実施し得る。いくつかの場合で、最適な撮像を行うため最小限の乳房の圧縮と浸積を伴う。
【0055】
緩い圧縮は、2つの理由で利点がある。第1の理由は圧縮することにより全撮像距離が短くなり高いSNRが得られ、その結果より小さな腫瘍を発見できる可能性が増加する。第2の理由はX線マンモグラフィが圧縮を使うためである。X線による撮像に光学的な撮像を組み合わせることによって、低コストなX線撮像や2種類の撮像を同時実施といった本発明の実施例が得られる。更なる実施形態として、両者の撮像システムでデジタルマンモグラフィが半導体カメラを使用した場合、同じ検出器を共有することができる。この結合により、撮画手段を単体で使用する場合よりも感度と特異部位強調能力とが向上する。この実施形態は、乳房の圧縮をするのであれば、2つの撮画手段からの同時に像を得ることができる。
【0056】
好ましくは、乳房の浸積は画像の感度を向上させるために使用した方がよい。浸積することによって、おおむね同じ照度の光が検出部に届き、カメラのダイナミックレンジの最適な使用が可能となり、乳房のすべての部分を撮像できる。つまり、高水準の光により、全体の画像を得られることができ、SNRも高くなる。乳房を浸積しない場合は、乳房を透過する透過光の強度の変動が大きくなる。乳房が薄い部位でカメラが飽和するのを防ぐと、厚い部位では光の強度が低くなる。従って、厚い部位ではSNRが低くなり、画像品質が悪くなる。研究者はエッジ効果を修正するため、周波数領域の測定を利用した位相測定を使用している。浸積は同様の目的を達成する。
【0057】
図11と図12に示すように、浸積は少なくとも2つ以上の方法で行うことができる。図11に示すように、対象となるヒトは、定位固定の乳房の生検テーブルに似たテーブルにうつぶせに横たわり、乳房を下方の適合媒体に浸積する。光線はヒトの胴体を完全に透過する必要はない。光学的測定は、対象となる部位のみを透過した光を測定する。この例中では、光源は乳房のみを透過して照射され、胴体すべてではない。また、対象に酸素や二酸化炭素といった血管活性物質や薬剤を含む予混合ガスを吸入させるために、ガスを運ぶ適当な手段や装置を用いて投与することが望ましい。図11に示すシステムの構成は、浸積なしでも使用し得るが、図11と図12に示すシステムの構成は、図1(a)と図1(b)に示すものとほぼ同様である。
【0058】
図12に示すように、乳房は、ドーナツ型で組織ファントム溶液を含む透明なバッグにより覆われる。バッグは、血圧計のバンドのように乳房に圧をかけられるように少し高圧に充填されている。この方法は、浸積する場合と同じ利点があり、さらに準備と洗浄が軽減される。この第2の浸積方法は、各対象となるヒト毎に新しい浸積媒体が入った新しいバッグを用いて行うことが望ましい。浸積媒体は37℃に維持する。
【0059】
可能であれば、光学的撮像は生検の前に行いたい。この光学的撮像は生検に影響を与えないためである。この撮像方法は、単独もしくは2つの吸気手順を用いて行うことで、撮像に要する時間を数分にすることができる。
【0060】
当業者によって理解されるように、診断方法の相対的な感度な特異部位強調能力は使用する基準に依存する。適切な基準はヘモグロビンや酸化ヘモグロビンの含有量の割合変化や相対的兆候(それぞれの増加や減少)を含む。使用する基準を変更することにより、感度や特異部位強調能力は向上するが、他の特徴が犠牲になる。データ分析を助けるために、敏感度を偽陽性率に対してプロットした受信者動作特性曲線(ROC曲線)を使用した。ROC曲線の下で部位は測定の品質の指標となり、1に近い部位が理想的である。ROC曲線をそれぞれのコントラスト機構と複合したコントラスト機構に対して作成した。
【0061】
<<ガス手順>>
呼吸速度や、心拍数、体の大きさといった違いや、ヒトには使用しないが、本発明の動物実験では麻酔を使用した事実から、ガスの使用手順はヒトと動物では異なる。ガス吸入の適した手順を作成するため、動物とヒトで、吸入ガスの成分と吸入時間を変更して測定を行った。
【0062】
ここで開示する例では、空気、O,CO,O+COのガス混合物を要求に応じてコンピュータ制御のガス流量制御装置によって作成した。いくつかの実施例では、OとCOとの二つのガスを使用した。いくつかの実施例では、窒素とOとCOとからなるガス混合物を使用した。いくつかの場合では、決まった混合割合で調整したガスを調整し、ガス吸入手段は予混合ガスの吸入している間に切り替える手段も含む。
【0063】
ガス流量制御装置は素早くにガス組成を切り替えることができ、また連続的にCOとOの割合を、例えば窒素やカーボゲンに変更することができる。COとOは血管構造に反対の効果を及ぼす(血管拡張に対して血管収縮)ため、それらの2つの機構を交互に用いることにより、示差血管活性撮像に役に立つ結果を生み出す。例えば、高割合のCOを1分間吸入した後に、直ちにOの割合を上げる等である。同様の手順を増加させたCOとOの割合を少し重ねて繰り返す。
【0064】
高濃度の二酸化炭素を吸入すると有毒であるため、二酸化炭素の割合は毒性を避けるため5%以下とする。文献では、二酸化炭素は2%と低くても高い患者の耐容性をもった放射線治療に対して実際に血管活性を励起することが示されている。例えば以下の参照のように、Baddeley, P. M. Brodrick, N. J. Taylor, M. O. Abdelatti, L. C. Jordan, A. S. Vasudevan, H. Phillips, M.1. Saunders, and P. J.Hoskin,"Gas exchange parameters in radiotherapy patients during breathing of 2%, 3.5% and 5% carbogen gas mixtures, "Br. J. Radiol. 73, 1100-1104 (2000). 本発明では、二酸化炭素の量は好ましくは0−5%とする。
【0065】
コンピュータ制御された流量制御装置により、変化の間に血管構造が十分に元の状態に回復するよう注意しながら、予混合された、あるいはされていない、異なったガス混合物を連続的に投与することができる。我々は、より効果的に癌性と癌性ではない組織を区別することを期待しており、究極的には異なる腫瘍の型を区別する手段として利用し得る。
【0066】
<<画像分析装置>>
測定により、図13に示すような3次元の(3−D)データセットを含む示差血管活性画像が得られる。2つの空間次元と1つの時間的な次元は、他のMRIやコンピュータ断層撮影(CT)のような3つの空間次元を持つ撮画手段と異なる。これらの撮画手段では、視覚化装置は3−Dのデータセットから断面として2−Dの画像を作成する。興味のある部分は、断面の向きを変更して精査することができる。これは、超音波技師が超音波プローブの向きを変える操作に似ている。
【0067】
図13のようなデータの視覚化は、異なった向きでの断面をとることによって行われる。図2−4はデータセットの一定の時間と場所における断面を表している。しかし、空間的パターン(図2(b))と時間的パターン(図3)の両方が、このデータセットにおいて形状を画定するのに必要である。同時にこれら二つの形状を取り込むために、異なる種類の分析装置が必要である。このような道具のひとつはPCAである。PCAを適用することにより、DVOI法は、直ちにオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンと全ヘモグロビンとO2含有量の変化との時間的な画像データセットのデータ処理を自動で行うことができる。
【0068】
測定結果を改良するために、DVOI法は画像の形状を空間的、時間的に平均化する方法や、あるいはガス吸入手順の時間的な履歴といった事前の情報を掲載するといった方法を適用することができる。乳房の撮像では、固有画像の数は多く必要な可能性がある。DVOI法は固有画像を類別する手法を適用している(例えば、腫瘍の形状、血管のような他の構造)。
【0069】
<<示差血管活性光学的撮像システムの強化>>
当業者により理解されるように、ここで開示したDVOIシステムは最適化を行うことによって、また例として水の撮像を強化するための他波長の使用、光力の増加、カメラ感度の向上といった変更によって能力を向上させることができる。これらの変更により、画像化処理において根本的な制限となる散弾雑音によって影響を受けるSNR(ノイズに対する信号比)を持つ大きな組織ファントムを通過しての撮像が可能となる。高SNRでは、画像の不均一さは画像の減算処理時に取り除かれるため、示差撮像にとって大きな効果がある。つまり、もし何も変化がなければ、視野の同じ領域から得られる2つの像を減算処理することにより、強度ゼロの像が得られるということである。
【0070】
<<1.水の撮像の強化>>
水の濃度はヘモグロビン測定に影響を及ぼすことが知られている。そのため、水による吸収が支配的な波長で測定を行うことにより、オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの定量測定を支援することができる。水は血液中で大きな割合を占めるため、水の吸収に支配的な像から血液量を直接的に測定することができる。血管拡張や血管収縮と関係のある水の変化は比較的小さなものであるが、示差撮像はこのような変化に敏感であることを確認している。そのため、水の吸収に支配的な970nmでの示差撮像によって血液量の変化を直接的に測定することが可能である。水に基づいた血液量の測定から、ヘモグロビン測定から得られる情報とは異なり、血漿の変化についての情報が得られる。水の吸収に基づいた血漿や血液量の変化の測定は、我々の撮像方法の成功にとって重要なものではないが、それらは潜在的に強力な撮像方法に寄与する可能性がある。
【0071】
<<2.光度の増加>>
実施例の章で記載した像は、各波長21個のLEDを使用して得た。LEDアレイから得られる光量は、より多くのLEDを使用することで20倍増加する。それらの輝度は、高い駆動電流を用いることで増加する。通電テストから、LEDは一般的な使用電流よりかなり高い電流で、数週間問題なく操作できることが確認された。各波長で撮像を行う間の短い期間だけLEDの電源を入れることにより、高電流で使用してもLEDの損傷がなく実用性が向上する。
【0072】
<<3.カメラの感度の向上>>
カメラの感度は、Q−imaging社の「Retiga EXi」カメラのような高感度カメラを使用することにより直ちに向上する。このCCDカメラは、上記の実施例で使用したカメラよりNIRにおいて約2倍の感度を持つ。加えて、カメラの感度がある領域が4倍以上である。これら2つの改良により、おおよそ8倍カメラの感度が強化される。光量の増加とより感度の高いカメラの使用により、システムの感度は100倍以上に向上する。
【0073】
本発明とその利点について詳細に記載したが、本発明はここでの記載に制限や、画定されるわけではない。周知の方法やシステム、構成要素も本発明の本質を不明りょうにするのを避けるため詳細を記載していないが議論し得る。当業者によって理解されるように、様々な変更や置換、交換を行うことができ、本発明の本質から逸脱することなく実施することができる。ここで開示した実施例や図は、本発明の最適な実施形態を説明するためのものであり、本発明を制限するものと解してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲とそれらと法に均等であるものによって決定される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1a】液侵撮像システムの概略図である。
【図1b】動物に適用した液侵撮像システムの概略図である。
【図2a】カーボゲンを投与した後134秒後の840nmにおけるマウスの静的画像である。
【図2b】図2aの静的画像からバックグラウンドを取り除いた画像である。
【図3】780nmでの差分画像の部位における一時的な変化を表すグラフである。
【図4】840nmでの差分画像の部位における一時的な変化を表すグラフである。
【図5】カーボゲンを投与した際の全ヘモグロビン(上段)、オキシヘモグロビン(中段)、デオキシヘモグロビン(下段)における相対的変動の一時的な変化を示す図である。腫瘍部分は点線で示し、マウスの腫瘍から離れた胴体部は実線で示している。
【図6】カーボゲンを吸入した際の全O2量(デオキシヘモグロビンへの変化を差し引いたオキシヘモグロビンへの変化)における相対的変動の一時的な変化を示す図である。腫瘍部分は点線で示し、マウスの腫瘍から離れた胴体部は実線で示している。
【図7a】140秒時(カーボゲンを吸入してから100秒後)のオキシヘモグロビンの濃度を示す図である。
【図7b】140秒時(カーボゲンを吸入してから100秒後)のデオキシヘモグロビンの濃度を示す図である。
【図8】正規化固有値を示すグラフである。
【図9】主要な成分分析からの最初の2つの固有像を示す図である。
【図10】固有像のスケーリングファクタを示すグラフである。
【図11】胸の液浸を伴うヒトを対象とした撮像を表す図である。
【図12】胸の浸積と軽度の圧縮を伴うヒトを対象とした撮像を表す図である。
【図13】示差血管活性撮像の3Dデータの構成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心領域を撮像する方法であって、
前記関心領域の透過像を得る過程と、
前記関心領域に様々な濃度の前記関心領域の血管変化を励起する吸入造影剤を導入する過程と、
前記導入過程の実施中に前記関心領域のオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンを光学的に測定する過程と
を含むことを特徴とする癌性腫瘍の発見に利用する血管機能の差異情報を得る方法。
【請求項2】
前記関心領域を光源とカメラの間に位置決めする過程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記関心領域を適合媒体に浸積する過程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記適合媒体を37℃に維持する過程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記関心領域を軽度に圧縮する過程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記吸入造影剤が酸素と二酸化炭素とを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記関心領域がヒトの乳房であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
空気と前記吸気造影剤とを含むガス混合物を前記ヒトに呼吸によって投与する過程を含み、
ここで前記吸気造影剤は酸素と二酸化炭素であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記様々な濃度を1個もしくは数個の流量制御装置により自動的に制御する過程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1の方法を実施するために構成したシステム。
【請求項11】
生体内の癌性腫瘍を発見する非襲性の方法であって、
様々な濃度の血管活性物質の吸入前と吸入最中の関心領域の透過像を得るために示差血管活性光学的撮像方法を利用する過程と、
前記血管活性物質が酸素と二酸化炭素とを含み、
前記血管活性物質が前記関心領域において血管の変化を励起する過程と、
結果、前記関心領域の癌性と非癌性の組織の間のコントラストが劇的に増加する過程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記関心領域がヒトの体で光学的に到達できる領域であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記関心領域がヒトの乳房であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
撮像システムであって
様々な濃度の血管活性物質を関心領域を有する対象ヒトや対象動物に投与する手段と、
前記関心領域を向いた近赤外光源と、
前記血管活性物質の吸入前と吸入中の関心領域の像を得るための像収集手段と、
癌性腫瘍の血管形成由来の血管構造と関連した血管構造を識別するために前記画像を分析するための処理手段と
を備えることを特徴とする撮像システム。
【請求項15】
前記血管活性物質が酸素と二酸化炭素を含むことを特徴とする請求項14に記載の撮像システム。
【請求項16】
前記像収集手段が近赤外光線に感度が高い電荷結合素子カメラであることを特徴とする請求項14に記載の撮像システム。
【請求項17】
前記近赤外光源が780nm,840nm,970nmを含む波長で動作することができる発光ダイオードアレイであることを特徴とする請求項14に記載の撮像システム。
【請求項18】
前記関心領域を浸積する浸積媒体と、
前記浸積媒体を含む保持手段と
を備えることを特徴とする請求項14に記載の撮像システム。
【請求項19】
前記浸積媒体が前記関心領域の光学特性とおおよそ一致する光学特性を持つ組織ファントムであるであることを特徴とする請求項18に記載の撮像システム。
【請求項20】
前記保持手段が前記関心領域を圧迫できるように前記媒体が過圧状態に充填されたドーナツ型透過バッグであることを特徴とする請求項18に記載の撮像システム。
【請求項21】
前記対象に投与される前記血管活性物質の濃度を制御するための1もしくは複数個の流量制御装置を備えることを特徴とする請求項14に記載の撮像システム。
【請求項22】
前記流量制御装置は前記血管活性物質の濃度を連続的に変化させつつ、前記血管活性物質を含み異なったガス組成に素早く切り替えることができることを特徴とする請求項21に記載の撮像システム。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−522133(P2007−522133A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551564(P2006−551564)
【出願日】平成17年1月21日(2005.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/003090
【国際公開番号】WO2005/070470
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(593195026)エスアールアイ インターナショナル (14)
【氏名又は名称原語表記】SRI INTERNATIONAL
【Fターム(参考)】