説明

光学系レンズ及びその光学系レンズを用いたレンズユニット

【課題】撮像領域に写り込む不要光を傾斜面で物体側に反射させて撮像領域に不要光が写り込むゴースト現象を低減する。
【解決手段】第1プラスチックレンズ2の第2面に形成した凹面2Bを囲むように、第1プラスチックレンズ2のコバ部5に環状の傾斜面8を形成する。傾斜面8は、凹面2Bで反射した不要光Hが、レンズ部4、10の有効領域の未遮光部分を通過して撮像領域に写り込まないように反射する。これにより、撮像面の不要光Hの写り込みによるゴーストやフレアの発生を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistance)等の小型で薄型の電子機器に用いられる小型撮像装置に使用される光学系レンズ及びその光学系レンズを用いたレンズユニット、特に複数のレンズの光軸を合わせた状態で鏡筒内に収納してレンズ相互間の位置関係を決定する光学系レンズ及びその光学系レンズを用いたレンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置を備えた携帯端末の市場の拡大に伴い、この撮像装置には高画素数で小型の固体撮像素子が搭載されるようになった。このような撮像素子の小型化・高画素化に対応し、複数枚のレンズを鏡筒内に重ね合わせてユニット化した撮像レンズが一般化している。
【0003】
複数枚のレンズを重ね合わせてレンズユニットを構成する場合、重ね合わせた各レンズの光軸をそれぞれ一致させる必要があり、このような光軸合わせを行う方法として例えば特許文献1では、プラスチックレンズの外径を鏡筒の内径より僅かに小さく形成して、鏡筒とプラスチックレンズとの間に径方向のクリアランスを保って鏡筒に挿入するとともに、各レンズの重ね合わせ面に光軸を中心としたテーパ状の円錐面を形成し、鏡筒に遊嵌した最後段のプラスチックレンズを光軸方向に押圧して各レンズの円錐面を嵌合させることによって、各レンズの光軸をそれぞれ一致させた状態で最後段レンズを鏡筒に接着固定する方法が知られている。
【0004】
ところで、複数枚のレンズを重ね合わせる場合、各レンズに入射した光がレンズ内において内部反射し、結像に寄与しない不要な光(以下、単に不要光という)となって撮像素子に写り込んでゴーストやフレアを発生する場合が有る。このような不要光を抑制してゴーストやフレアを抑えるための技術として、例えば特許文献2で示すように、各レンズのレンズ部の有効領域外側に位置して環状の遮光板を配置し、鏡筒内に各レンズを組み付ける際、各レンズ間に遮光板を介在させる方法が知られている。すなわち、図3に示すように、2枚の組レンズR1,R2の場合、レンズR1,R2間に遮光板Lを介在させ、その遮光板LをレンズR1,R2の間に挟み付けることによって、レンズR1の第2面の凹面R1aで反射した不要光Hの光路を遮光板Lで遮ることにより、撮像素子の有効領域に不要光Hが写り込まないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−286987号公報
【特許文献2】特開2010−32902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、各レンズR1,R2の間に遮光板Lを介在させて不要光Hを遮光する場合、図3に示すように、各レンズR1,R2のコバ部がフラットに連続する平坦面である場合、レンズ部の外側、すなわち、各レンズR1,R2のコバ部のほぼ全域に渡って不要光Hを遮光する遮光板Lを介在させることができる。しかし、特許文献1で示すような円錐面の嵌合による調芯構造、例えば、図4に示すように、2枚のレンズR1,R2のコバ部にそれぞれ円錐面K1,K2を形成する、あるいは図5に示すように3枚のレンズR1〜R3にそれぞれ円錐面K1〜K4を形成し、これら円錐面K1,K2又はK1〜K4、(以下、円錐面K1,K2(K1〜K4)とする)を嵌合させて各レンズR1,R2(R1〜R3)の光軸を合わせる場合、各レンズR1,R2(R1〜R3)のコバ部が円錐面K1,K2(K1〜K4)を介して段差状となり、その円錐面K1,K2(K1〜K4)の外側に遮光板Lを配置することが困難となる。
【0007】
すなわち、円錐面K1,K2(K1〜K4)を介して段差状となったコバ部にそれぞれ遮光板Lを配置しようとすると、円錐面K1,K2(K1〜K4)の内側と外側にそれぞれ二分割した遮光板Lを二重に配置することになる。しかしながら、各レンズR1,R2(R1〜R3)に対して遮光板Lを位置決めして組み付けるには、円錐面K1,K2(K1〜K4)を基準として位置決めする。ここで、段差状に凹んだ円錐面K1(図4)あるいは円錐面K2(図5(a)、図5(b))円錐面K4(図5(a))は、その周縁角部が遮光板Lの外周縁の位置決め部となるが、円錐面K1,K2,K4の外側は遮光板Lを位置決めするための基準が無いため、各レンズR1,R2(R1〜R3)に遮光板Lを位置決めすることができなくなってしまう。さらに、各レンズR1,R2(R1〜R3)を位置決めする円錐面K1,K2(K1〜K4)は、互いに嵌合するように高精度に成形され、その円錐面に遮光膜や反射膜などを形成すると、円錐面K1,K2(K1〜K4)による位置決め精度に影響を与えることになるから、円錐面K1,K2(K1〜K4)には遮光膜などを形成することも困難である。
【0008】
このため、特許文献1のように円錐面K1,K2(K1〜K4)を嵌合させて各レンズR1,R2(R1〜R3)の光軸を合わせる場合、円錐面K1,K2(K1〜K4)の内側にのみ遮光板Lを配置し、円錐面K1,K2(K1〜K4)の外側の遮光板Lを省略することが一般的である。これにより、円錐面K1,K2(K1〜K4)及びその外側は未遮光部分となり、レンズR1の第2面のレンズ部R1aで内部反射した光が円錐面K1,K2(K1〜K4)を通過し、さらにレンズR1の外周端で内部反射して前記未遮光部分から撮像素子へと向かい、結像に寄与しない不要光Hとなって撮像素子に到達してしまう。特に、レンズR1内に入射した光が臨界角を越えてレンズ部R1aに入射すると、その光はレンズ部R1aで屈折してレンズR1から抜け出ることなく、全反射してコバ部に向かうことから、撮像素子の有効領域への不要光Hの写り込みがより一層、顕著となり、ゴーストやフレアを誘発する、という課題を有していた。
【0009】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、複数のレンズを円錐面によって互いに光軸を合わせる調芯構造を採用する光学系レンズにおいて、撮像素子に到達する不要な光を効果的に抑制し、ゴーストやフレアの発生を抑えることできる光学系レンズ及びその光学系レンズを用いたレンズユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の光学系レンズは、レンズ部とコバ部を有する複数のレンズと、この各レンズのコバ部にそれぞれ形成された円錐面と、各レンズ間に配置する遮光板とを備え、該遮光板を介在させて前記各レンズの円錐面を係合させることによって、各レンズの光軸を合わせた状態で各レンズを重ね合わせた光学系レンズにおいて、前記レンズ部のコバ部に、前記レンズ部で反射してコバ部に向かう光を物体側へと反射させる環状の傾斜面を形成したことを特徴とする。
【0011】
請求項1の光学系レンズによれば、レンズに入射してレンズ部に到達した光は、レンズ部で屈折してレンズ部から抜けるが、レンズ部への入射角によっては、光の一部はレンズ部で反射して撮像面に向かう光も存在し、このような迷光によってゴーストやフレア現象を誘発する原因となり、特に、レンズ部への入射角が臨界角を越えると、レンズ部で屈折することなく全反射し、レンズから抜けることなく、レンズのコバ部へと向かい、その光がさらに反射を繰り返して撮像素子の撮像領域に到達し、ゴーストやフレア現象が発生する。このようなレンズの内部反射による迷光によって生じる不要光をレンズのコバ部に形成した傾斜面で撮像領域外、すなわち、物体側に反射させることにより、撮像面への不要光の写り込みを抑制し、ゴーストやフレアの発生を抑える。
【0012】
請求項2の光学系レンズは、前記傾斜面を、前記レンズ部と前記円錐面との間に位置して前記レンズ部を囲むように形成したことを特徴とする
【0013】
請求項2の光学系レンズによれば、レンズ部で反射する不要光を、レンズ部を囲む傾斜面で効率的に物体側に反射させることによって、円錐面及び円錐面外側のコバ部に生じる未遮光部分から撮像面に到達する不要光が低減される。
【0014】
請求項3の光学系レンズは、前記各レンズの少なくとも1枚のレンズは、像側に位置する第2面が物体側に向かって湾曲状に窪ませた凹面であり、その凹面を囲む位置に前記傾斜面を形成したことを特徴とする。
【0015】
請求項3の光学系レンズによれば、レンズの第2面が物体側に向かって湾曲状に窪ませた凹面とすると、レンズに入射して凹面で反射する光は、ゴーストやフレア現象を発生させる不要光となり易い。このレンズの第2面で反射する光を傾斜面で撮像面の撮像領域外に反射させることによって、ゴーストやフレア現象を誘発する不要光を効率的に物体側へと反射させることが可能となる。
【0016】
請求項4の光学系レンズは、前記傾斜面は、レンズ内に入射した光が臨界角を越えて前記凹面で全反射してコバ部に向かう光路を遮る位置に形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4の光学系レンズによれば、レンズ内に入射した光が臨界角を越えて凹面で到達すると、そのレンズ内に入射した光が全反射してゴーストやフレア現象を発生させる不要光となって撮像面の撮像領域に写り込みやすくなる。この凹面で全反射する不要光を傾斜面によって撮像領域外に反射させることによって、ゴーストやフレア現象を効果的に抑制することが可能となる。
【0018】
請求項5の光学系レンズは、前記凹面で全反射した光の少なくとも70パーセント以上を前記傾斜面で物体側に反射又は遮光させたことを特徴とする。
【0019】
請求項5の光学系レンズによれば、凹面で全反射した光の少なくとも70パーセント以上を傾斜面で物体側に反射又は遮光させれば、ゴーストやフレア現象を誘発する不要光を効率的に物体側へと反射させることが可能となる。
【0020】
請求項6のレンズユニットは、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の光学系レンズにおいて、前記遮光板を介在させて前記各レンズの円錐面を係合させることによって、各レンズの光軸を合わせた状態で鏡筒内に収納したことを特徴とする。
【0021】
請求項6のレンズユニットによれば、各レンズは、それぞれの円錐面を相互に嵌合させて各レンズの光軸を合わせた状態で鏡筒内に収納され、かつ、各レンズ間に介在する遮光板で遮光できない不要光を傾斜面で物体側に反射させることによって、ゴーストやフレア現象を抑制したレンズユニットとなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数のプラスチックレンズを互いに光軸を合わせた状態で位置決めするために、各プラスチックレンズのコバ部にそれぞれ円錐面を形成した光学系レンズにおいて、各プラスチックレンズの内部反射によって生じる不要光を傾斜面によって撮像素子の有効撮像領域外である物体側に反射させることによって、不要光、特に、凹面で全反射する不要光がレンズ部の有効領域外側に位置するコバ部の未遮光部分を通過して撮像領域に写り込まないように撮像素子の有効撮像領域外である物体側に反射させることによって、撮像面の不要光の写り込みによるゴーストやフレア現象の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1を示す光学系レンズの断面図である。
【図2】実施例2を示す光学系レンズの断面図である。
【図3】従来の2枚構造の光学系レンズにおける遮光板の機能を示す光学系レンズの断面図である。
【図4】従来の円錐面による調芯構造を採用した2枚構造の光学系レンズにおいて不要光の光路を示す光学系レンズの断面図である。
【図5】従来の円錐面による調芯構造を採用した3枚構造の光学系レンズにおいて不要光の光路を示す光学系レンズの断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、図1、図2において物体側は図示上方側、像側は図示下方とする。
【実施例1】
【0025】
図1に示すように、レンズユニット20は2枚の第1及び第2のプラスチックレンズ2、3を組み合わせて構成させ、遮光板15を介して前記第1及び第2のプラスチックレンズ2、3を重ね合わせて円筒状の鏡筒16に組み込むことによって光学系レンズ1を構成している。
【0026】
前記第1プラスチックレンズ2は、物体側(図示上側)の第1面が物体側に向かって曲面状に突出した凸面2A、像側(図示下側)の第2面が物体側に向かって曲面状に窪んだ凹面2Bとするレンズ部4と、そのレンズ部4の最大有効径の外側に位置するフランジ状のコバ部5で構成され、コバ部5の外径を鏡筒16の内径より僅かに小さく形成することによって、第1プラスチックレンズ2が鏡筒16との間にクリアランスを保って遊嵌自在に組み込まれている。また、コバ部5の物体側に前記鏡筒16の上面に形成する受け面17と当接する当接面6を形成するとともに、コバ部5の像側にはテーパ状の円錐面7を形成している。また、円錐面7と第2面の凹面2Bとの間は、前記凹面2Bで内部反射する不要光Hを撮像素子(図示しない)の有効撮像範囲外、すなわち、物体側へと反射させるための環状の傾斜面8が物体側に向かって窪ませて形成されている。この傾斜面8は、第1プラスチックレンズ1内に入射した光が臨界角を越えて前記凹面2Bで全反射してコバ部5に向かう不要光Hの光路を遮る位置に形成され、かつ、その傾斜面8の傾斜角は、前記不要光Hの入射角に対して不要光Hを全反射させる角度が望ましいが、不要光Hの少なくとも70パーセント以上を反射可能な角度、又は遮光であれば、不要光Hによるゴーストやフレア現象を効果的に抑制することが可能である。
【0027】
前記第2プラスチックレンズ3は、第1プラスチックレンズ2とは対称的に物体側(図示上側)の第1面が像側に窪んだ凹面3A、像側(図示下側)の第2面が像側に向かって曲面状に突出した凸面3Bとするレンズ部10と、そのレンズ部10の最大有効径の外側に位置するフランジ状のコバ部11で構成され、コバ部11の外径を鏡筒16の内径より僅かに小さく形成することによって、第2プラスチックレンズ3が鏡筒16との間にクリアランスを保って遊嵌自在に組み込まれている。また、第2プラスチックレンズ3のコバ部11には、物体側に位置して前記円錐面7と嵌合するテーパ状の円錐面12を形成し、これら円錐面7,12の内側に前記遮光板15を介在させて第1及び第2プラスチックレンズ2,3を重ね合わせ、各円錐面7,12を嵌合させることによって、第1及び第2プラスチックレンズ2,3の光軸を一致させた状態で鏡筒16内に組み込まれている。
【0028】
なお、本実施例では、各円錐面7,12を嵌合させように各円錐面7,12を同傾斜で形成した例を示したが、上段側に位置する円錐面7を下段側に位置する円錐面12より鈍角に形成し、第1及び第2プラスチックレンズ2,3を重ね合わせる際、下段側に位置する円錐面12の上端角部を、上段側に位置する円錐面7に誘い込んで、円錐面12の上端角部を円錐面7の内周面に線接触状態で係合させることによって、第1及び第2のプラスチックレンズ2,3を相互に位置決めするようにしてもよい。すなわち、円錐面7,12は、互いに嵌合構造とする以外、円錐面7,12を係合させて第1及び第2のプラスチックレンズ2,3を位置決めしてもよく、円錐面7,12による第1及び第2のプラスチックレンズ2,3の位置決め構造は問わない。
【0029】
次に、第1プラスチックレンズ2に形成する傾斜面8によるフレアやゴースト現象の抑制作用について説明する。本発明の光学系レンズ1は携帯電話の撮像装置として利用され、撮像装置に組み込まれる撮像素子(図示せず)の有効画角によってレンズユニット20を光学的に設計し、レンズユニット20を構成する第1及び第2のプラスチックレンズ2,3の最適な屈折率や曲率半径が設定され、その有効画角内の入射角度でレンズユニット20に入射した光が撮像素子の撮像面に到達し、所望の像が得られるよう光学的に設計されている。
【0030】
しかし、図1において破線で示すように、第1プラスチックレンズ2に入射して第1プラスチックレンズ2の第2面に形成される凹面2Bに到達した光は、凹面2Bで屈折して第1プラスチックレンズ2から抜けるが、凹面2Bへの入射角によっては、光の一部は凹面2Bで反射し、さらに、第1及び第2プラスチックレンズ2,3で内部反射を繰り返して撮像面に向かう光も存在し、このような迷光によってゴーストやフレア現象を誘発する原因となる。特に、入射角が臨界角を越えると、凹面2Bで屈折することなく全反射し、凹面2Bで全反射した光は、第1プラスチックレンズ2から抜け出ることなく、第1プラスチックレンズ2のコバ部5へと向かい、その光がさらにコバ部5の外端面で反射して撮像素子の撮像領域に到達すると、顕著なゴーストやフレア現象が発生する。このような迷光による不要光Hは、従来、第1及び第2プラスチックレンズ2,3の間に介在する遮光板15で遮光することによって撮像面に到達させない工夫が成されているが、前述したように各円錐面7,12によって第1及び第2プラスチックレンズ2,3の光軸を一致させる場合、各円錐面7,12及びその外側には遮光板15を配置することができない。そこで、本実施例においては、第1プラスチックレンズ2の第2面に形成する凹面2Bを囲むようにして第1プラスチックレンズ2のコバ部5に傾斜面8を形成し、この傾斜面8によって、凹面2Bで全反射する不要光Hを撮像素子の有効撮像領域外、すなわち、物体側へと反射させる。これにより、第1プラスチックレンズ2の内部において不要光Hが反射を繰り返して撮像面に写り込むことを効果的に抑制して、撮像面の不要光Hの写り込みによるゴーストやフレア現象の発生を抑えることができる。
【0031】
以上のように本実施例は、第1及び第2プラスチックレンズ2,3を互いに光軸を合わせた状態で位置決めするために、第1及び第2プラスチックレンズ2,3のコバ部5,11にそれぞれ円錐面7,12を形成したレンズユニット20において、第1,第2プラスチックレンズ2,3の内部反射によって生じる不要光Hを傾斜面8によって撮像素子の有効撮像領域外である物体側に反射させることによって、不要光H、特に、凹面2Bで全反射する不要光Hが第1及び第2プラスチックレンズ2,3のレンズ部4,10の有効領域外側に位置するコバ部5,11の未遮光部分を通過して撮像領域に写り込まないように撮像素子の有効撮像領域外である物体側に反射させることによって、撮像面の不要光Hの写り込みによるゴーストやフレア現象の発生を抑えることができる。
【実施例2】
【0032】
図2は、本発明の実施例2を示しており、前記実施例1と共通する部分には同一符号を付し、重複する部分の説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。本実施例は、実施例1の第1及び第2のプラスチックレンズ2,3に第3レンズ22を加えて3枚レンズによってレンズユニット20を構成する以外、前記実施例1と実質同一である。
【0033】
第3のプラスチックレンズ22は、物体側(図示上側)の第1面が物体側に向かって曲面状に窪ませた凹面22A、像側(図示下側)の第2面が変曲点を有して物体側に向かって曲面状に窪ませた凹面22Bと物体側に向かって曲面状に突出した凸面22Cとが連続させたレンズ部23と、そのレンズ部23の最大有効径の外側に位置するフランジ状のコバ部24で構成され、コバ部24の外径を鏡筒16の内径より僅かに小さく形成することによって、第3プラスチックレンズ22が鏡筒16との間にクリアランスを保って遊嵌自在に組み込まれている。また、コバ部24の物体側には、第2プラスチックレンズ3の像側に形成する円錐面26と嵌合させるテーパ状の円錐面27を形成し、その円錐面27の内側に第2プラスチックレンズ3と第3プラスチックレンズ22との間に介在させる遮光板15を配置している。
【0034】
以上のように構成される本実施例は、第1〜第3プラスチックレンズ2,3,22に形成する円錐面7,12,26,27はそれぞれ光軸を中心とした円錐状テーパ面であり、第1〜第3プラスチックレンズ2,3,22を重ねた合わせた際、それぞれの円錐面7,12,26,27が嵌合し、第1〜第3プラスチックレンズ2,3,22の光軸を合わせた状態で相互に位置決めされる。また、第1〜第3プラスチックレンズ2,3,22の間に介在する遮光板15は、それぞれ円錐面7,12,26,27の内側に配置され、円錐面7,12,26,27の外側に位置するコバ部5,11,24に未遮光部分が存在するが、前記実施例1と同様、第1プラスチックレンズ2の内部反射によって生じた不要光Hを傾斜面8によって物体側に反射させることによって、不要光H、特に、凹面2Bで全反射する不要光Hが第1〜第3プラスチックレンズ2,3,22のレンズ部4,10,22の有効領域外側に位置するコバ部5,11,24の未遮光部分を通過して撮像領域に写り込まないように撮像素子の有効撮像領域外である物体側に反射させることによって、撮像面の不要光Hの写り込みによるゴーストやフレア現象の発生を抑えることができる。
【0035】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、各レンズの形状やレンズの枚数といった基本的構成は適宜選定すればよい。また、不要光を反射する傾斜面は、第2、第3レンズに形成してもよく、要はプラスチックレンズの第2面で反射する不要光を物体側に反射させる位置に形成すればよく、さらに、傾斜面の表面に反射部材を形成すればより確実に撮像面に写り込む不要光を撮像面の有効領域外に反射させることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 光学系レンズ
2,3,24 プラスチックレンズ
2B 凹面
4,10,23 レンズ部
5,11,24 コバ部
7,12,26,27 円錐面
8 傾斜面
15 遮光板
16 鏡筒
20 レンズユニット
H 不要光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ部とコバ部を有する複数のレンズと、この各レンズのコバ部にそれぞれ形成された円錐面と、各レンズ間に配置する遮光板とを備え、該遮光板を介在させて前記各レンズの円錐面を係合させることによって、各レンズの光軸を合わせた状態で各レンズを重ね合わせた光学系レンズにおいて、前記レンズ部のコバ部に、前記レンズ部で反射してコバ部に向かう光を物体側へと反射させる環状の傾斜面を形成したことを特徴とする光学系レンズ。
【請求項2】
前記傾斜面を、前記レンズ部と前記円錐面との間に位置して前記レンズ部を囲むように形成したことを特徴とする請求項1記載の光学系レンズ。
【請求項3】
前記各レンズの少なくとも1枚のレンズは、像側に位置する第2面が物体側に向かって湾曲状に窪ませた凹面であり、その凹面を囲む位置に前記傾斜面を形成したことを特徴とする請求項2記載の光学系レンズ。
【請求項4】
前記傾斜面は、レンズ内に入射した光が臨界角を越えて前記凹面で全反射してコバ部に向かう光路を遮る位置に形成されていることを特徴とする請求項3記載の光学系レンズ。
【請求項5】
前記凹面で全反射した光の少なくとも70パーセント以上を前記傾斜面で物体側に反射又は遮光させたことを特徴とする請求項4記載の光学系レンズ。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の光学系レンズにおいて、前記遮光板を介在させて前記各レンズの円錐面を係合させることによって、各レンズの光軸を合わせた状態で鏡筒内に収納したことを特徴とするレンズユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−242504(P2011−242504A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112985(P2010−112985)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(391014055)カンタツ株式会社 (84)
【Fターム(参考)】