説明

光学素子、光学素子の製造方法、および、光源ユニット

【課題】光源からの光を効率良く利用することが可能な光学素子、このような光学素子を効率良く製造可能な光学素子の製造方法、および、このような光学素子を備えた光源ユニットを提供すること。
【解決手段】光学素子1は、基体11と、基体11の一方の面(光の出射側の面)に形成された多数の円柱体12と、基体11の他方の面(光の入射側の面)に形成された多数の微小の凹凸13とを有している。多数の円柱体12は、その横断面の径が入射する光の波長の0.5〜4倍のものであり、かつ、その径の0.5〜3倍のピッチで配列したものである。また、凹凸13の隣接する凸部同士の平均ピッチ、凹凸13の幅、および、凹凸13の高低差が前記光の波長の30〜50%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、光学素子の製造方法、および、光源ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
屈折率が異なる二つの物質が、所定のピッチで規則正しく繰り返して並んだ構造、すなわち、フォトニック構造を有する光学素子を備えた光源ユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この光源ユニットは、一般に、有機ELやLED等の光源と、当該光源に対向するように配置された光学素子とを備えたものであり、光の取り出し効率が高く、近年注目されている。
しかしながら、従来の光源ユニットでは、光源から照射した光が、光学素子の上記フォトニック構造が形成されている面とは反対の面において反射されてしまい、光源からの光を効率良く用いるのが困難であった。
【0003】
【特許文献1】特開2006−49855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、光源からの光を効率良く利用することが可能な光学素子、このような光学素子を容易に製造可能な光学素子の製造方法、および、このような光学素子を備えた光源ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の光学素子は、光源から照射した光を所定の方向へ導く光学素子であって、
基体と、
前記基体の一方の面側に規則的に配列した多数の円柱体と、
前記基体の他方の面側に設けられた多数の微小の凹凸とを有し、
多数の前記円柱体は、その横断面の径が前記光の波長の0.5〜4倍のもので、かつ、前記径の0.5〜3倍のピッチで配列したものであり、
前記凹凸の隣接する凸部同士の平均ピッチ、前記凹凸の幅、および、前記凹凸の高低差が前記光の波長の30〜50%であることを特徴とする。
これにより、光源からの光を効率良く利用することが可能な光学素子を提供することができる。
【0006】
本発明の光学素子では、前記円柱体の高さは、前記円柱体の横断面の径の1倍以上であることが好ましい。
これにより、光学素子に入射した光を、より効率良く取り出すことができる。
本発明の光学素子では、前記円柱体を構成する材料の屈折率は、1.4以上であることが好ましい。
これにより、光学素子に入射した光を、さらに効率良く取り出すことができる。
本発明の光学素子では、多数の前記円柱体は、千鳥格子状に配列していることが好ましい。
これにより、円柱体をより均一に配置させることができ、場所による出射光の光量のばらつきを効果的に抑えることができる。
【0007】
本発明の光学素子では、前記凹凸の隣接する凸部同士の平均ピッチ、前記凹凸の幅、および、前記凹凸の高低差は、100〜400nmであることが好ましい。
これにより、光の入射面における光の反射をより効果的に防止または抑制することができる。
本発明の光学素子では、前記凹凸が形成された面の表面粗さRz(JIS B 0601に規定の十点平均粗さ)は、0.3μm以下であることが好ましい。
これにより、光の入射面における光の反射をさらに効果的に防止または抑制することができる。
【0008】
本発明の光学素子の製造方法は、本発明の光学素子を製造する製造方法であって、
表面に多数の前記円柱体に対応した形状を有する第1の型を用意する工程と、
表面に微小の前記凹凸に対応した形状を有する第2の型を用意する工程と、
前記第1の型および前記第2の型の表面形状を、樹脂基板に転写する工程とを有することを特徴とする。
これにより、光源からの光を効率良く利用することが可能な光学素子を容易に製造することが可能な光学素子の製造方法を提供することができる。
【0009】
本発明の光学素子の製造方法は、本発明の光学素子を製造する製造方法であって、
表面に多数の前記円柱体に対応した形状を有する第1の型を用意する工程と、
表面に微小の前記凹凸に対応した形状を有する第2の型を用意する工程と、
樹脂基板の一方の面に、前記第2の型の表面形状を転写する工程と、
前記樹脂基板の他方の面と前記第1の型との間に流動性を有する樹脂材料を付与する工程と、
前記樹脂基板と前記第1の型とで、前記樹脂材料を押圧する工程と、
前記樹脂材料を硬化させる工程とを有することを特徴とする。
これにより、光源からの光を効率良く利用することが可能な光学素子を容易に製造することが可能な光学素子の製造方法を提供することができる。
本発明の光源ユニットは、本発明の光学素子を備えたことを特徴とする。
これにより、光の利用効率に優れた光源ユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の光学素子、光学素子の製造方法、および、光源ユニットの好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<光学素子>
まず、本発明の光学素子について説明する。
図1は、本発明の光学素子を模式的に示した縦断面図、図2は、図1に示す光学素子を光の出射側から見た平面図である。なお、以下の説明では、図1中の右側を「(光の)入射側」、左側を「(光の)出射側」と言う。
【0011】
光学素子1は、例えば、後述する光源ユニット100、100’を構成する部材として用いられるものであり、図1に示すように、基体11と、基体11の一方の面(光の出射側の面)に形成された多数の円柱体12と、基体11の他方の面(光の入射側の面)に形成された多数の微小の凹凸13とを有している。
基体11は、後述する円柱体12および凹凸13を支持する機能を有している。
基体11の構成材料は、特に限定されないが、主として樹脂材料で構成され、所定の屈折率を有する透明な材料で構成されている。
【0012】
基体11の具体的な構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等として)用いることができる。
【0013】
多数の円柱体12は、上述した基体11の光の出射側の面に規則的に配列したものである。
本発明において、多数の円柱体は、その横断面の径(図中、Dで表される径)が入射する光の波長の0.5〜4倍のものであり、かつ、その径の0.5〜3倍のピッチ(図中、Pで表されるピッチ)で配列したものである。
【0014】
このような多数の円柱体は、隣接する円柱体間に存在する空気層とで、フォトニック構造(フォトニック結晶)を構成している。
すなわち、互いに屈折率が異なる2つの物質である円柱体と空気層とが、所定のピッチで規則正しく繰り返して並んだ構造となっている。
このような構造を有することにより、光学素子に入射した光を、光の出射面側(図1中の左側)に効率良く取り出す(出射させる)ことができる。
【0015】
上述したように、本発明の光学素子が備える円柱体の横断面の径は、入射する光の波長の0.5〜4倍であるが、2〜3倍であるのが好ましい。これにより、光学素子に入射した光を、より効率良く取り出すことができる。
多数の円柱体12の横断面の径は、具体的には、0.5〜2μmであるのが好ましく、0.8〜1.5μmであるのがより好ましい。
また、本発明の光学素子が備える多数の円柱体のピッチは、円柱体の横断面の径の0.5〜3倍であるが、1〜3倍であるのが好ましく、1〜2倍であるのがより好ましい。これにより、光学素子に入射した光を、より効率良く取り出すことができる。
【0016】
多数の円柱体12のピッチは、具体的には、1〜3μmであるのが好ましく、1〜2μmであるのがより好ましい。
また、円柱体12の高さ(図中、Hで表される高さ)は、円柱体12の横断面の径の1倍以上であるのが好ましく、1〜5倍であるのがより好ましく、1〜2.5倍であるのがさらに好ましい。これにより、これにより、光学素子1に入射した光を、より効率良く取り出すことができる。
【0017】
円柱体12の高さは、具体的には、0.8〜5μmであるのが好ましく、1〜2.5μmであるのがより好ましい。
円柱体12は、前述した基体11を構成する樹脂材料と略同等の屈折率を有する材料(樹脂材料)で構成されているのが好ましい。これにより、円柱体12と基体11との界面における入射光の反射を効果的に防止することができる。
【0018】
また、円柱体12を構成する材料の屈折率は、具体的には、空気の屈折率よりも高い値であれば特に限定されないが、1.4以上であるのが好ましく、1.4〜1.7であるのがより好ましい。これにより、光学素子1に入射した光を、さらに効率良く出射させることができる。これに対して、円柱体12を構成する材料の屈折率が前記下限値未満であると、光学素子1の周辺の気温や湿度等によっては、フォトニック構造としての機能が十分に発揮されない可能性がある。
【0019】
また、多数の円柱体12の配列としては、上述したような関係を満足するものであれば特に限定されず、例えば、格子状、千鳥格子状等が挙げられる。これらの中でも、特に、図2に示すように千鳥格子状に配列しているのが好ましい。これにより、円柱体12をより均一に配置させることができ、場所による出射光の光量のばらつきを効果的に抑えることができる。
【0020】
また、光学素子1は、図1に示すように、光の入射側の面、すなわち、円柱体12が形成されている面とは反対側の面に、多数の微小の凹凸13が設けられている。
この多数の微小の凹凸13は、その凸部同士の平均ピッチ(図中、Pで表されるピッチの平均値)、凹凸の幅(図中、Wで表される幅)、および、凹凸の高低差(図中、Hで表される高低差)が照射する光の波長の30〜50%であるという条件を満たすものである。
【0021】
ところで、フォトニック構造を有する光学素子を備えた従来の光源ユニットでは、光源から照射した光が、光学素子の上記フォトニック構造が形成されている面とは反対の面において反射されてしまい、光源からの光を効率良く用いるのが困難であった。
これに対して、本発明のように、光学素子の光の入射面に、上記のような条件を満たす微小の凹凸を多数設けることにより、光の入射面における光の反射を防止または抑制することができる。これにより、光学素子の円柱体(フォトニック構造)に入射する光の光量を多くすることができる。さらに、本発明の光学素子は、出射面側に上述したようなフォトニック構造を有していることから、上記反射防止の効果とフォトニック構造による効果(光の取り出し効率が高いという効果)との相乗効果から、光源からの光を特に高い効率で利用することができる。なお、一般的な有機物等で構成された反射防止膜を形成することも考えられるが、そのような反射防止膜を設けた場合、反射防止膜と基体との間の界面において反射が生じてしまい、十分な光の利用効率を発揮させることができない。また、通常用いられている反射防止膜を設けた場合と比較して、このような多数の微小の凹凸を設ける場合、反射防止の効果が得られる光の波長の幅が広いという利点がある。
【0022】
このように本発明は、光の入射面に、凸部同士の平均ピッチ、凹凸の幅、および、凹凸の高低差が照射する光の波長の30〜50%であるという条件を満たす多数の微小の凹凸を備えた点に特徴を有するものであるが、微小の凹凸は、その凸部同士の平均ピッチ、凹凸の幅、および、凹凸の高低差が照射する光の波長の20〜40%である条件を満たすのが好ましく、25〜35%である条件を満たすのがより好ましい。これにより、光の入射面における光の反射をより効果的に防止または抑制できる。これに対して、凸部同士の平均ピッチ、凹凸の幅、および、凹凸の高低差が前記下限値未満であると、光の入射面における光の反射を防止または抑制するのが困難となる。一方、凸部同士の平均ピッチ、凹凸の幅、および、凹凸の高低差が前記上限値を超えると、光の透過率が低下して、十分な光を光学素子内に入射させることができない。
【0023】
凸部同士の平均ピッチ、凹凸の幅、および、凹凸の高低差は、具体的には、100〜400nmであるのが好ましく、200〜300nm程度であるのがより好ましい。これにより、光の入射面における光の反射をより効果的に防止または抑制することができる。
また、微小の凹凸13が設けられている面の表面粗さRz(JIS B 0601に規定の十点平均粗さ)は、0.3μm以下であるのが好ましく、0.2〜0.3μmであるのがより好ましい。これにより、光の入射面における光の反射をさらに効果的に防止または抑制することができる。
上述したような基体11、円柱体12、および、凹凸13は、図1に示すように、一体的に形成されているのが好ましく、同一の材料で一体的に形成されているのがより好ましい。これにより、本発明の効果をより顕著なものとすることができる。
【0024】
<光学素子の製造方法>
次に、本発明の光学素子の製造方法の第1実施形態について説明する。
図3〜図6は、本発明の光学素子の製造方法の第1実施形態を示す工程図である。
本実施形態では、まず、表面に前述した多数の円柱体12に対応した形状を有する第1の型2と、表面に前述した多数の凹凸13に対応した形状を有する第2の型3を用意する。
【0025】
[第1の型2の製造(第1の型用意工程)]
まず、シリコンウェハー等の基板42と、該基板42上に設けられ、主として、レジスト剤で構成されたレジスト層43とを備えた基材4を用意する(図3(a)参照)。
本実施形態において、レジスト剤としては、ポジレジスト、ネガレジストのいずれのものも用いることができる。
次に、EB直描方法により、基材4(レジスト層43)上に前述した多数の円柱体12と同様の形状を描画し、露光、現像を行うことにより、図3(b)に示すように、表面に円柱体41を有する基材4’が得られる。
【0026】
次に、図3(c)に示すように、基材4’の円柱体41が形成されている側の表面に、導電膜21を形成する。
導電膜21を構成する材料としては、導電性材料であれば特に限定されず、例えば、ニッケル、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、銀等およびそれらの合金等が挙げられる。
導電膜21の形成は、例えば、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の気相成膜法、電解めっき、無電解めっき等の湿式めっき法等により行うことができる。
【0027】
次に、電鋳法により、導電膜21の表面に、金属(電鋳金属)を電着させ、電鋳金属層22を形成する(図4(d)参照)。このような電鋳法を用いることにより、基材4’の表面形状を精密に転写することができる。
電鋳金属としては、例えば、ニッケル、銅、鉄、銀、金等およびそれらの合金等が挙げられる。
その後、基材4’を取り外し(除去)することにより、図4(e)に示すような、円柱体12の形状に対応した凹部23を有する第1の型2が得られる。
【0028】
[第2の型3の製造(第2の型用意工程)]
まず、前述した第1の型用意工程と同様に、シリコンウェハー等の基板52と、該基板52上に設けられ、主として、レジスト剤で構成されたレジスト層53とを備えた基材5を用意する(図5(a)参照)。
次に、前述した第1の型用意工程と同様に、EB直描方法により、基材5(レジスト層53)上に前述した多数の凹凸13と同様の形状を描画し、露光、現像を行うことにより、図5(b)に示すように、表面に多数の微小の凹凸51を有する基材5’が得られる。
次に、前述した第1の型用意工程と同様に、基材5’の凹凸51が形成されている側の表面に、導電膜31を形成する。
【0029】
次に、前述した第1の型用意工程と同様に、電鋳法により、導電膜31の表面に、金属(電鋳金属)を電着させ、電鋳金属層32を形成する(図5(d)参照)。このような電鋳法を用いることにより、基材5’の表面形状を精密に転写することができる。
その後、基材5’を取り外し(除去)することにより、図5(e)に示すような、凹凸13の形状に対応した凹凸33を有する第2の型3が得られる。
【0030】
[転写工程]
まず、主として、前述したような樹脂材料で構成された樹脂基板6を用意する。
次に、図6(a)に示すように、樹脂基板6を、上記のようにして得られた第1の型2と第2の型3との間に設置する。
次に、第1の型2と第2の型3とを加熱し、図6(b)に示すように、樹脂基板6をプレスし、第1の型2および第2の型3の表面形状を樹脂基板6に転写する。
なお、第1の型2および第2の型3の加熱は、樹脂材料のガラス転移点よりも、20〜40℃程度高い温度となるように行うのが好ましい。
【0031】
そして、第1の型2および第2の型3の形状を転写した樹脂基板6を冷却する。
その後、第1の型2および第2の型3を除去することにより、図1および図6(c)に示すような光学素子1(本発明の光学素子)が得られる。
上記のような方法によれば、本発明の光学素子を容易に製造することができるとともに、大量生産にも容易に対応することができる。
【0032】
次に、本発明の光学素子の製造方法の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様の部分はその説明を省略する。
図7は、本発明の光学素子の製造方法の第2実施形態を示す工程図である。
まず、前述した第1実施形態と同様にして、第1の型2と第2の型3とを用意する。
一方、主として、前述したような樹脂材料で構成された樹脂基板7を用意する。
【0033】
次に、図7(a)に示すように、樹脂基板7と第2の型3とを対向させて設置する。
次に、第2の型3を加熱する。
次に、図7(b)に示すように、樹脂基板7の一方の面に第2の型3を加熱および押圧し、第2の型3の表面形状を樹脂基板7に対して転写する(凹凸転写工程)。これにより、図7(c)に示すような多数の微小の凹凸13’を有する樹脂基板7’が得られる。
【0034】
次に、第1の型2の凹部23が形成されている面と、樹脂基板7’の凹凸13’が形成されている側とは反対側の面とが、対向するように設置する。
次に、第1の型2と樹脂基板7’との間に、流動性を有する樹脂材料を付与する(樹脂材料付与工程)。このように、円柱体の形成に流動性を有する樹脂材料を用いた場合、第1の型2の表面形状の転写をより効率良く行うことができる。
この流動性を有する樹脂材料としては、樹脂基板7’を構成する樹脂材料と同等の屈折率を有するものを用いるのが好ましい。これにより、樹脂基板7’と、硬化した後の硬化樹脂層8との界面における入射光の反射を効果的に防止することができる。
【0035】
次に、第1の型2と樹脂基板7’とで、樹脂材料を押圧した(押圧工程)後、紫外線照射や加熱等によって、樹脂材料を硬化させる。これにより、図7(d)に示すように、第1の型2と樹脂基板7’との間に硬化樹脂層8が形成される。
その後、第1の型2を除去することにより、図7(e)に示すような光学素子1’(本発明の光学素子)が得られる。
上記のような方法によれば、本発明の光学素子を容易に製造することができるとともに、大量生産にも容易に対応することができる。
【0036】
<光源ユニット>
次に、上述したような本発明の光学素子を備えた光源ユニットについて説明する。
まず、本発明の光源ユニットの第1実施形態について説明する。
図8は、図1に示す光学素子を備えた光源ユニットの第1実施形態を示す模式図である。
【0037】
光源ユニット100は、前述した光学素子1と、光学素子1の光の入射側に配置された有機EL素子10とを備えている。
以上のように構成された光源ユニット100は、有機EL素子10から照射された光が、光学素子1の微小の凹凸13が設けられた面側からに入射し、円柱体12が設けられた面側から出射するよう構成されている。
光源ユニット100は、光学素子1(本発明の光学素子)を備えているので、入射した光は、不本意な反射等を生じず、十分な透過率で、円柱体12が設けられた面に到達する。その結果、従来のものと比較して、有機EL素子10から発した光を効率良く利用することができ、十分に明るい光を照射することができる。
【0038】
次に、本発明の光源ユニットの第2実施形態について説明する。
図9は、図1に示す光学素子を備えた光源ユニットの第2実施形態を示す模式図である。
光源ユニット100’は、前述した光学素子1と、光学素子1の光の入射側に配置されたLED素子10’とを備えている。
【0039】
以上のように構成された光源ユニット100’は、LED素子10’から照射された光が、光学素子1の微小の凹凸13が設けられた面側からに入射し、円柱体12が設けられた面側から出射するよう構成されている。
光源ユニット100’は、光学素子1(本発明の光学素子)を備えているので、入射した光は、不本意な反射等を生じず、十分な透過率で、円柱体12が設けられた面に到達する。その結果、従来のものと比較して、LED素子10’から発した光を効率良く利用することができ、十分に明るい光を照射することができる。
【0040】
以上、本発明の光学素子、光学素子の製造方法および光源ユニットについて、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の光学素子の製造方法では、必要に応じて、任意の目的の工程を追加することもできる。
また、前述した実施形態では、EB直描方法により、基材上に多数の円柱体の形状を描画した後、露光・現像するものとして説明したが、これに限定されず、例えば、所定の開口部を有するマスクを用いて、露光・現像するものであってもよい。
【0041】
また、前述した実施形態では、光学素子の微小の凹凸に対応する形状、円柱体に対応する形状を、フォトリソ工程により形成するものとして説明したが、これに限定されず、例えば、エッチング加工や、レーザ加工等を用いて形成するものであってもよい。
また、本発明の光学素子は、前述したような有機EL素子やLED素子を備えた光源ユニットに適用するものに限定されず、例えば、ハロゲンなどのランプ等にも適用することができる。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
以下のように、光学素子を製造した。
まず、シリコンウェハー上にレジスト剤(ポジレジスト)を塗布することにより、レジスト層を形成した第1の基材を用意した。
次に、第1の基材のレジスト層に、EB直描方法を用いて、多数の円柱体を描画した。
その後、露光・現像を行うことにより、多数の円柱体が規則的に配列した第1の原盤を得た。なお、形成した円柱体は、千鳥格子状に配列したもので、その横断面の径が0.8μm、高さが2.0μmのものであった。また、円柱体のピッチは、1.3μmであった。
【0043】
次に、第1の原盤の円柱体を形成した表面に、蒸着法により、ニッケルで構成された導電膜を形成した。
その後、スルファミン酸ニッケル浴電鋳を行った後、第1の原盤を除去し、図4(e)に示すような第1の型を得た。
一方、上記と同様の方法を用いて、表面に多数の微小の凹凸を有する第2の原盤を得た。なお、形成された凹凸の凸部同士の平均ピッチは、250nm、凹凸の幅は、250nm、凹凸の高低差は、250nmであった。また、微小な凹凸が形成された面の表面粗さRzは、0.25μmであった。
次に、上記と同様にして、第2の原盤の凹凸を形成した面に導電膜を形成した。
その後、スルファミン酸ニッケル浴電鋳を行った後、第2の原盤を除去し、図5(e)に示すような第2の型を得た。
【0044】
次に、第1の型と第2の型を用いて、ポリメチルメタクリレート(PMMA)で構成された樹脂基板に熱プレス方式により各型の表面形状を転写した。なお、PMMAとして、屈折率:1.49、ガラス転移点:105℃のものを用いた。また、樹脂基板の厚さは、0.5mmであった。また、転写の際の各型の温度は、130℃とした。
樹脂基板を冷却した後、各型を除去することにより、光学素子を得た。
得られた光学素子の光の出射面側に形成された円柱体は、千鳥格子状に配列したもので、その横断面の径が0.8μm、高さが2.0μmのものであった。また、円柱体のピッチは、1.3μmであった。また、形成された凹凸の凸部同士の平均ピッチは、250nm、凹凸の幅は、250nm、凹凸の高低差は、250nmであった。また、入射面の表面粗さRzは、0.25μmであった。
【0045】
(実施例2)
前記実施例1と同様にして第1の型および第2の型を得た。
次に、ポリメチルメタクリレート(PMMA)で構成された樹脂基板に、第2の型を用いて、熱プレス方式により第2の型の表面形状を転写した。なお、PMMAとして、屈折率:1.49、ガラス転移点:105℃のものを用いた。また、樹脂基板の厚さは、0.4mmであった。また、転写の際の各型の温度は、130℃とした。
その後、樹脂基板を冷却した。
【0046】
次に、第1の型の凹部が形成されている面と、樹脂基板の第2の型の表面形状を転写した面とは反対側の面との間に、未硬化のエポキシ系樹脂を付与した。
次に、第1の型と、樹脂基板とで、上記未硬化のエポキシ系樹脂を押圧した後、樹脂基板側から、紫外線を照射し、未硬化のエポキシ系樹脂を硬化させた。なお、エポキシ系樹脂の硬化後の屈折率は、1.54であった。
【0047】
その後、第1の型を除去することにより、光学素子を得た。
得られた光学素子の光の出射面側に形成された円柱体は、千鳥格子状に配列したもので、その横断面の径が0.8μm、高さが2.0μmのものであった。また、円柱体のピッチは、1.3μmであった。また、形成された凹凸の凸部同士の平均ピッチは、250nm、凹凸の幅は、250nm、凹凸の高低差は、250nmであった。また、入射面の表面粗さRzは、0.25μmであった。
【0048】
(比較例1)
第2の型の代わりに微小の凹凸が形成されていない平板を用いた以外は、前記実施例1と同様にして光学素子を製造した。すなわち、入射面側に微小の凹凸が形成されていない光学素子を製造した。
(比較例2)
第2の型を用いた転写を行わなかった以外は、前記実施例2と同様にして光学素子を製造した。すなわち、入射面側に微小の凹凸が形成されていない光学素子を製造した。
【0049】
[評価]
各実施例および各比較例で得られた光学素子を用いて、図8に示すような光源ユニットを製造した。なお、有機EL素子から発される光の波長は、460nmと580nmの2つのピークを持つものであった。
各実施例および各比較例にかかる光源ユニットにおいて、有機EL素子が発した光の光量Aと、光源ユニットから出射した光の光量Bとを測定し、Aに対するBの割合、すなわち、光の利用効率(透過率)を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1からわかるように、実施例にかかる光源ユニットは、比較例のものと比較して、光を効率良く利用することが可能であることが確認された。
また、各実施例および各比較例で得られた光学素子を用いて、図9に示すような光源ユニットを製造し、上記と同様の評価を行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。なお、LED素子から発される光の波長は、460nmと580nmの2つのピークを持つものであった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の光学素子を模式的に示した縦断面図である。
【図2】図1に示す光学素子を光の出射側から見た平面図である。
【図3】本発明の光学素子の製造方法の第1実施形態を示す工程図である。
【図4】本発明の光学素子の製造方法の第1実施形態を示す工程図である。
【図5】本発明の光学素子の製造方法の第1実施形態を示す工程図である。
【図6】本発明の光学素子の製造方法の第1実施形態を示す工程図である。
【図7】本発明の光学素子の製造方法の第2実施形態を示す工程図である。
【図8】図1に示す光学素子を備えた光源ユニットの第1実施形態を示す模式図である。
【図9】図1に示す光学素子を備えた光源ユニットの第2実施形態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0053】
1、1’…光学素子 11…基体 12、12’…円柱体 13、13’…凹凸 2…第1の型 21…導電膜 22…電鋳金属層 23…凹部 3…第2の型 31…導電膜 32…電鋳金属層 33…凹凸 4、4’…基材 41…円柱体 42、52…基板 43、53…レジスト層 5、5’…基材 51…凹凸 6…樹脂基板 7、7’…樹脂基板 8…硬化樹脂層 10…有機EL素子 10’…LED素子 100、100’…光源ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射した光を所定の方向へ導く光学素子であって、
基体と、
前記基体の一方の面側に規則的に配列した多数の円柱体と、
前記基体の他方の面側に設けられた多数の微小の凹凸とを有し、
多数の前記円柱体は、その横断面の径が前記光の波長の0.5〜4倍のもので、かつ、前記径の0.5〜3倍のピッチで配列したものであり、
前記凹凸の隣接する凸部同士の平均ピッチ、前記凹凸の幅、および、前記凹凸の高低差が前記光の波長の30〜50%であることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記円柱体の高さは、前記円柱体の横断面の径の1倍以上である請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記円柱体を構成する材料の屈折率は、1.4以上である請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
多数の前記円柱体は、千鳥格子状に配列している請求項1ないし3のいずれかに記載の光学素子。
【請求項5】
前記凹凸の隣接する凸部同士の平均ピッチ、前記凹凸の幅、および、前記凹凸の高低差は、100〜400nmである請求項1ないし4のいずれかに記載の光学素子。
【請求項6】
前記凹凸が形成された面の表面粗さRz(JIS B 0601に規定の十点平均粗さ)は、0.3μm以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の光学素子。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の光学素子を製造する製造方法であって、
表面に多数の前記円柱体に対応した形状を有する第1の型を用意する工程と、
表面に微小の前記凹凸に対応した形状を有する第2の型を用意する工程と、
前記第1の型および前記第2の型の表面形状を、樹脂基板に転写する工程とを有することを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の光学素子を製造する製造方法であって、
表面に多数の前記円柱体に対応した形状を有する第1の型を用意する工程と、
表面に微小の前記凹凸に対応した形状を有する第2の型を用意する工程と、
樹脂基板の一方の面に、前記第2の型の表面形状を転写する工程と、
前記樹脂基板の他方の面と前記第1の型との間に流動性を有する樹脂材料を付与する工程と、
前記樹脂基板と前記第1の型とで、前記樹脂材料を押圧する工程と、
前記樹脂材料を硬化させる工程とを有することを特徴とする光学素子の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれかに記載の光学素子を備えたことを特徴とする光源ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−135297(P2008−135297A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−320698(P2006−320698)
【出願日】平成18年11月28日(2006.11.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】