説明

光学素子の製造方法、光学素子成形用型セット、及び、光学素子の製造装置

【課題】光学素子にクモリ及び偏心が生じるのを抑えることができる光学素子の製造方法、光学素子成形用型セット及び光学素子の製造装置。
【解決手段】光学素子の製造方法は、上型2gの成形面2g−1の中心軸A1と下型11の成形面の中心軸A2と光学素材100の中心A3とを一致させるように上型2g、下型11、及び光学素材100を配置する中心合わせ工程と、上型2gの成形面2g−1及び下型11の成形面に非接触の状態の光学素材100を加熱する加熱工程と、加熱された光学素材100に上型2gを接近移動させることで上型2gの成形面2g−1を接触させる接触工程と、上型2gの成形面2g−1に接触した状態の光学素材100を、下型11を上型2gに接近移動させることで加圧する加圧工程と、加圧された光学素材100を冷却する冷却工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素材を加熱、加圧及び冷却することにより光学素子を製造する光学素子の製造方法及び光学素子の製造装置、並びに、光学素子を製造するのに用いられる光学素子成形用型セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性素材である光学素材を成形型の中心に位置決めして、光学素子としてのメニスカスレンズや平凹レンズの凹面部とそれに続く平面部とを成形する技術として、特許文献1の技術が知られている。
【0003】
以下、第1の参考技術(例えば特許文献1の図2参照)及び第2の参考技術(例えば特許文献1の図6A参照)に係る光学素子成形用型セットについて簡易的に説明する。
図11は、第1の参考技術に係る光学素子成形用型セット50を示す断面図である。
【0004】
図11に示す型セット50は、対向して配置された上型51及び下型52と、これら上型51及び下型52の光軸を合わせる円筒形状のスリーブ53と、このスリーブ53内で球形状の光学素材100を保持する円筒形状の保持部材54と、を有する。
【0005】
光学素材100は、保持部材54により中心に位置決めされ、上型51の成形面51a及び下型52の成形面52aに非接触の状態で加熱され軟化する。その後、光学素材100は、下型52が上昇して保持部材54を貫通することで加圧される。そして、加圧された光学素材100が冷却されることで、光学素子が得られる。
【0006】
図12は、第2の参考技術に係る光学素子成形用型セット60を示す断面図である。
図12に示す型セット60は、対向して配置された上型61及び下型62と、これら上型61及び下型62の光軸を合わせる円筒形状のスリーブ63と、このスリーブ63内で球形状の光学素材100を保持する円筒形状の保持部材64と、を有する。
【0007】
図12に示す型セット60では、光学素材100は、上型61と保持部材64とにより挟まれた状態で中心に位置決めされる。その後、光学素材100は、加熱され軟化し、下型62が上昇して保持部材64を貫通することで加圧される。そして、加圧された光学素材100が冷却されることで、光学素子が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−227532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、図11に示す型セット50では、上型51及び下型52の成形面51a,52aに非接触の状態で球形状の光学素材100が加熱軟化するため、その後、下型52が上昇して光学素材100を加圧すると、球形状の光学素材100が中心からずれることがある。そして、そのまま光学素材100が下型52により加圧されると、光学素子に偏心が生じることがある。
【0010】
また、図12に示す型セット60では、上型61の成形面61aと光学素材100とが加熱前から接触するため、光学素材100が上型61の成形面61aと部分接触した状態で加熱されることで、この部分接触した部分において光学素子にクモリが生じることがある。
【0011】
本発明は、光学素子にクモリ及び偏心が生じるのを抑えることができる光学素子の製造方法、光学素子成形用型セット及び光学素子の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光学素子の製造方法は、上型の成形面の中心軸と下型の成形面の中心軸と光学素材の中心とを一致させるように上型、下型、及び光学素材を配置する中心合わせ工程と、上記上型の上記成形面及び上記下型の上記成形面に非接触の状態の上記光学素材を加熱する加熱工程と、加熱された上記光学素材に上記上型を接近移動させることで上記上型の上記成形面を接触させる接触工程と、上記上型の上記成形面に接触した状態の上記光学素材を、上記下型を上記上型に接近移動させることで加圧する加圧工程と、加圧された上記光学素材を冷却する冷却工程と、を有する。
【0013】
また、上記光学素子の製造方法において、上記接触工程では、上記上型の成形面が上記光学素材に非接触状態となるように上記上型の位置を規制する位置規制部材を引き抜いて、上記上型の位置の規制を解除するようにするとよい。
また、上記光学素子の製造方法において、上記接触工程の前では、上記上型の上記成形面が上記光学素材に非接触状態となるように上型持ち上げ部により上記上型を持ち上げておくようにするとよい。
【0014】
本発明の光学素子成形用型セットは、上型及び下型の外周部分を位置規制することにより、上記上型の成形面の中心軸と上記下型の成形面の中心軸とを一致させるスリーブと、上記上型の上記成形面及び上記下型の上記成形面に非接触の状態の光学素材の中心が、上記上型の上記成形面の上記中心軸と上記下型の上記成形面の上記中心軸とに一致するように、上記光学素材を保持する保持部材と、上記上型の成形面が上記光学素材に非接触状態となるように上記上型の位置を規制する位置規制部材と、を有する、光学素子成形用型セット。
【0015】
また、上記光学素子成形用型セットにおいて、上記位置規制部材は、上記上型と上記スリーブの上端との間に配置されるようにするとよい。
また、上記光学素子成形用型セットにおいて、上記上型と上記スリーブの上端との高さ方向の隙間は、このスリーブの内周側から外周側にいくほど大きくなり、上記位置規制部材の高さ方向の厚さは、上記スリーブの内周側から外周側にいくほど大きくなるようにするとよい
また、上記光学素子成形用型セットにおいて、上記位置規制部材は、上記スリーブを外周側から内周側に貫通し、上記上型の下端を支持するようにするとよい。
【0016】
本発明の第1の光学素子の製造装置は、上記光学素子成形用型セットが順次移送される複数のステージと、上記複数のステージのうち少なくとも1つに配置され、上記光学素子成形用型セットに収容された光学素材を加熱する加熱部と、上記複数のステージのうち少なくとも1つに配置され、上記光学素子成形用型セットに収容された上記光学素材を加圧する加圧部と、上記光学素子成形用型セットの上記位置規制部材を、上記上型の位置を規制する位置から引き抜く引き抜き部と、を備える。
【0017】
本発明の第2の光学素子の製造装置は、下型に対向して配置された上型を有する光学素子成形用型セットが順次移送される複数のステージと、上記複数のステージのうち少なくとも1つに配置され、上記光学素子成形用型セットに収容された光学素材を加熱する加熱部と、上記複数のステージのうち少なくとも1つに配置され、上記光学素子成形用型セットに収容された上記光学素材を加圧する加圧部と、上記上型の成形面が上記光学素材に非接触状態となるように上記上型を持ち上げておく上型持ち上げ部と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光学素子にクモリ及び偏心が生じるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る光学素子成形用型セットを示す断面図である。
【図3A】本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための加熱・加圧ステージの断面図(その1)である。
【図3B】本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための加熱・加圧ステージの断面図(その2)である。
【図3C】本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための加熱・加圧ステージの断面図(その3)である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る光学素子成形用型セットを示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る光学素子成形用型セットを示す平面図である。
【図6A】本発明の第2実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための加熱・加圧ステージの断面図(その1)である。
【図6B】本発明の第2実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための加熱・加圧ステージの断面図(その2)である。
【図7】本発明の第2実施形態の第1変形例に係る光学素子成形用型セットを示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の第2変形例に係る光学素子成形用型セットを示す断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る光学素子成形用型セットを示す断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための加熱・加圧ステージの断面図である。
【図11】第1の参考技術に係る光学素子成形用型セットを示す断面図である。
【図12】第2の参考技術に係る光学素子成形用型セットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る光学素子の製造方法、光学素子成形用型セット及び光学素子の製造装置について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造装置1の概略構成を示す断面図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る光学素子成形用型セット10を示す断面図である。
【0022】
図1に示す光学素子の製造装置1は、加熱・加圧ステージ2と、冷却ステージ3と、成形室4と、を備える。また、光学素子の製造装置1は、光学素子成形用型セット10を加熱・加圧ステージ2及び冷却ステージ3に順次移送することで例えばガラスレンズである光学素子を製造する循環型製造装置である。
【0023】
加熱・加圧ステージ2は、上加熱板(上伝熱部材)2aと、下加熱板(下伝熱部材)2bと、上カートリッジヒータ(加熱部)2cと、下カートリッジヒータ(加熱部)2dと、エアシリンダ2eと、基台2fと、上型2gと、突き出し部材(加圧部)2hと、を含む。
【0024】
冷却ステージ3は、上加熱板(上伝熱部材)3aと、下加熱板(下伝熱部材)3bと、上カートリッジヒータ(冷却部)3cと、下カートリッジヒータ(冷却部)3dと、エアシリンダ3eと、基台3fと、を含む。
【0025】
上加熱板2a,3aには、それぞれ2本の上カートリッジヒータ2c,3cが内蔵されている。加熱・加圧ステージ2の上加熱板2aには、上型2gが固定されている。加熱・加圧ステージ2の上加熱板2a及び上型2gは、光学素材100に直接接触はしないが、上カートリッジヒータ2cは、光学素材100を加熱するのに用いられる。
【0026】
冷却ステージ3の上加熱板3aは、光学素子成形用型セット10のスリーブ12の上端に当接する。上カートリッジヒータ3cは、冷却用の温度で上加熱板3aを加熱する。これにより、上加熱板3aは、光学素材100を冷却することができる。
下加熱板2b,3bは、基台2f,3f上に配置されている。下加熱板2b,3bには、光学素子成形用型セット10が載置される。
【0027】
下加熱板2b,3bには、それぞれ2本の下カートリッジヒータ2d,3dが内蔵されている。加熱・加圧ステージ2の下カートリッジヒータ2dは、光学素材100を加熱するのに用いられる。冷却ステージ3の下カートリッジヒータ3dは、冷却用の温度で下加熱板3bを加熱する。
【0028】
エアシリンダ2e,3eは、上加熱板2a,3aを上下方向に駆動する。加熱・加圧ステージ2のエアシリンダ2eは、上加熱板2aに固定された上型2gを下降させることで、光学素材100に接触させる。
【0029】
加熱・加圧ステージ2の上型2gには、下端に成形面2g−1が形成され、上端にフランジ部2g−2が形成されている。
加熱・加圧ステージ2の突き出し部材2hは、基台2f及び下加熱板2bの貫通孔2f−1,2b−1を貫通し、下型11の下端中央を上方に押圧することで、光学素材100を加圧する。
【0030】
加熱・加圧ステージ2及び冷却ステージ3は、エアシリンダ2e,3eを除いて、成形室4内に配置されている。この成形室4には、例えば窒素等の不活性ガスが充填されている。
【0031】
図2に示すように、光学素子成形用型セット10は、下型11と、スリーブ12と、保持部材13と、を有する。
下型11には、基部である円柱形状の大径部11aの上部中央に、大径部11aよりも小径で大径部11aから上方に突出する円柱形状の小径部11bが設けられている。この小径部11bの上端には、光学素材100に凹形状を転写する凸形状の成形面11cが形成されている。
【0032】
スリーブ12は、円筒形状を呈する。スリーブ12は、外径は一定であるが、下部が肉厚部12aで上部が薄肉部12bとなっている。そのため、肉厚部12aと薄肉部12bとの間の内周面には、段差部12cが形成されている。この段差部12cには、保持部材13がフランジ部13aにおいて載置されている。スリーブ12の肉厚部12aには、下型11が大径部11aにおいて摺動可能に挿入されている。スリーブ12は、上型2g及び下型11の外周部分を位置規制することにより、上型2gの成形面2g−1の中心軸A1と下型11の成形面11cの中心軸A2とを一致させる。
【0033】
保持部材13は、下端にフランジ部13aが形成された円筒形状を呈する。保持部材13には、下型11の小径部11bが下方から摺動可能に挿入されている。保持部材13の上端中央には、光学素材100が載置される。このように球形状の光学素材100が保持部材13の上端中央に載置されることで、光学素材100の中心A3は、下型11の成形面11cの中心軸A2に一致する。
【0034】
なお、加熱・加圧ステージ2の上型2gは、下降することでスリーブ12に挿入され、フランジ部2g−2においてスリーブ12の上端に当接する。
上述の光学素子成形用型セット10は、下型11と、スリーブ12と、保持部材13と、を有するが、少なくともスリーブ12及び保持部材13を有すればよく、例えば、上型2gのみならず下型11も加熱・加圧ステージ2に固定されているものであってもよい。
【0035】
以下、本実施形態に係る光学素子の製造方法について説明する。
図3A〜図3Cは、本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための加熱・加圧ステージ2の断面図である。
【0036】
まず、光学素材100が光学素子成形用型セット10の保持部材13の上端中央に載置されることで、光学素材100の中心A3と下型11の成形面11cの中心軸A2とが一致する。そして、光学素子成形用型セット10は、図1に示す成形室4に搬入され、図3Aに示すように加熱・加圧ステージ2の下加熱板2bの中央に載置される。このとき、上型2gの成形面2g−1の中心軸A1に対し、下型11の成形面11cの中心軸A2及び光学素材100の中心A3が一致するように、上型2g、下型11、及び光学素材100を配置する(中心合わせ工程)。
【0037】
そして、上型2gの成形面2g−1及び下型11の成形面11cと非接触の状態の光学素材100が上カートリッジヒータ2c及び下カートリッジヒータ2dにより例えばガラス屈伏点以上の温度まで加熱される(加熱工程)。なお、光学素材100を加熱する際には、上型2gの成形面2g−1が光学素材100に接触しない範囲で上型2gをスリーブ12内に挿入するようにしてもよい。
【0038】
次に、図3Bに示すように、エアシリンダ2eが上加熱板2aを下降させ、この上加熱板2aに固定された上型2gを加熱された光学素材100に接近移動させることで、上型2gの成形面2g−1が光学素材100に接触する(接触工程)。この接触工程では、上型2gが光学素材100を多少加圧しても構わないが、後述するように、光学素材100の加圧は、下型11の押圧により或いは下型11及び上型2gの両方の押圧により主に加圧工程において行われる。
【0039】
図3Cに示すように、上型2gの成形面2g−1が光学素材100に接触した状態で、突き出し部材2hが下型11を上方に押圧して上型2gに接近移動させることにより、上型2gの成形面2g−1に接触した状態の光学素材100が加圧される(加圧工程)。このとき、上型2gもエアシリンダ2eにより下型11に接近移動させるようにしてもよい。
【0040】
光学素材100が所望の肉厚になるまで加圧された後、上カートリッジヒータ2c及び下カートリッジヒータ2dにより例えば光学素材100がガラス転移点付近の温度まで冷却される。
【0041】
その後、突き出し部材2hは、下加熱板2bの上面より下方まで下降する。その後、光学素子成形用型セット10は、図1に示す冷却ステージ3に移送される。そして、光学素材100が冷却ステージ3の上加熱板3a及び下加熱板3bにより冷却用の温度で冷却されることで或いは自然冷却されることで冷却される(冷却工程)。
【0042】
そして、光学素子成形用型セット10が成形室4から搬出され、製造された光学素子が光学素子成形用型セット10から取り出される。
【0043】
以上説明した本実施形態では、中心合わせ工程において、上型2gの成形面2g−1の中心軸A1と下型11の成形面11cの中心軸A2と光学素材100の中心A3とが一致するようにする。そして、光学素材100は、上型2gの成形面2g−1及び下型11の成形面11cと非接触の状態で加熱され(加熱工程)、上型2gの成形面2g−1に接触した後(接触工程)、下型11により加圧される(加圧工程)。
【0044】
そのため、光学素材100が上型2g及び下型11の成形面2g−1,11cと非接触で加熱されることで、光学素材100と成形面2g−1,11cとの加熱時の部分接触に起因して光学素子にクモリが生じるのを抑えることができる。また、光学素材100が上型2gの成形面2g−1に接触した状態で加圧されることで、球形状の光学素材100の中心A3がずれるのを抑え、光学素子に偏心が生じるのを防ぐことができる。
【0045】
よって、本実施形態によれば、光学素子にクモリ及び偏心が生じるのを抑えることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、加熱部(上カートリッジヒータ2c及び下カートリッジヒータ2d)及び加圧部(突き出し部材2h)が同一のステージ(加熱・加圧ステージ2)に配置される例について説明したが、加圧部及び冷却部が同一のステージに配置されるようにしてもよい。また、加熱部、加圧部及び冷却部が同一のステージに配置されるようにしてもよい。また、加熱部、加圧部及び冷却部のそれぞれが1つ以上のステージに独立して配置されるようにしてもよい。
【0047】
<第2実施形態>
図4及び図5は、本発明の第2実施形態に係る光学素子成形用型セット20を示す断面図及び平面図である。図6A及び図6Bは、本発明の第2実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための加熱・加圧ステージ2−1の断面図である。
【0048】
本実施形態に係る光学素子成形用型セット20では、下型11、スリーブ12及び保持部材13は第1実施形態に係る光学素子成形用型セット10のものと同一であり、上型21及び位置規制部材22が相違する。
【0049】
上型21は、本実施形態では、図6A及び図6Bに示す加熱・加圧ステージ2−1の上加熱板2aに固定されているのではなく、光学素子成形用型セット20の一部として配置されている。上型21は、下端に成形面21aが形成され、上端にフランジ部21bが形成されている。
【0050】
位置規制部材22は、例えば水平面に拡がる板状を呈し、上型21とスリーブ12の上端との間に例えば左右に2つ配置されることで、上型21の成形面21aが光学素材100に非接触状態となるように上型21の位置を規制する。
【0051】
図5に示すように、2つの位置規制部材22は、対向するように配置され、例えば、平面視においてスリーブ12の内周側に近づくほど幅が狭くなる台形状を呈する。
【0052】
以下、本実施形態に係る光学素子の製造方法について、第1実施形態と共通する点については適宜省略しながら説明する。
【0053】
本実施形態における加熱・加圧ステージ2−1は、位置規制部材22を、上型21の位置を規制する位置から引き抜く引き抜き部2iが配置されている点を除いて、第1実施形態と同様である。なお、引き抜き部2iは、例えば、上加熱板2aにより保持され、光学素子成形用型セット20の径方向に移動する。
【0054】
まず、光学素材100が光学素子成形用型セット20の保持部材13の上端中央に載置されることで、光学素材100の中心A3が上型21の成形面21aの中心軸A1及び下型11の成形面11cの中心軸A2に一致するように、上型2g、下型11、及び光学素材100を配置する(中心合わせ工程)。そして、光学素子成形用型セット20は、図1に示す成形室4に搬入され、図6Aに示すように加熱・加圧ステージ2−1の下加熱板2bの中央に載置される。
【0055】
そして、上型21の成形面21a及び下型11の成形面11cと非接触の状態の光学素材100が上カートリッジヒータ2c及び下カートリッジヒータ2dにより例えばガラス屈伏点以上の温度まで加熱される(加熱工程)。
【0056】
図6Bに示すように、引き抜き部2iは、上カートリッジヒータ2c及び下カートリッジヒータ2dによる加熱後で且つ後述する突き出し部材2hによる加圧前に、光学素子成形用型セット20の位置規制部材22を、上型21の位置を規制する位置から引き抜く(引き抜き工程)。
【0057】
これにより、上型21の成形面21aが、加熱された光学素材100に接触する(接触工程)。このように、本実施形態の接触工程では、位置規制部材22を引き抜いて、上型21の位置の規制を解除する。
【0058】
以上説明した本実施形態においても、中心合わせ工程において、上型21の成形面21aの中心軸A1と下型11の成形面11cの中心軸A2と光学素材100の中心A3とが一致するようにする。そして、光学素材100は、上型21の成形面21a及び下型11の成形面11cと非接触の状態で加熱され(加熱工程)、上型21の成形面21aに接触した後(接触工程)、下型11により加圧される(加圧工程)。そのため、本実施形態によっても、光学素子にクモリ及び偏心が生じるのを抑えることができる。
【0059】
また、本実施形態では、位置規制部材22は、上型21の成形面21aが光学素材100に非接触状態となるように上型21の位置を規制する。そのため、簡素な構成で、加熱工程において上型21の成形面21aを光学素材100に対して非接触状態とすることができる。
【0060】
また、本実施形態では、位置規制部材22は、上型21とスリーブ12の上端との間に配置される。そのため、簡素な構成で、加熱工程において上型21の成形面21aを光学素材100に対して非接触状態とすることができる。
【0061】
また、本実施形態では、引き抜き部2iは、加熱部(上カートリッジヒータ2c及び下カートリッジヒータ2d)による加熱後で且つ加圧部(突き出し部材2h)による加圧前に、位置規制部材22を、上型21の位置を規制する位置から引き抜く。そのため、簡素な構成で、接触工程において上型21の成形面21aを光学素材100に対して接触させることができる。
【0062】
なお、図7に示すように、第1変形例の光学素子成形用型セット20−1の位置規制部材22−1は、スリーブ12を外周側から内周側に貫通し、上型21の下端を支持する。この場合、位置規制部材22−1が光学素子成形用型セット20−1から抜け落ちにくくすることができる。
【0063】
また、図8に示すように、第2変形例では、光学素子成形用型セット20−2の上型21のフランジ部21bとスリーブ12の上端との高さ方向の隙間が、スリーブ12の内周側(隙間G1)から外周側(隙間G2)にいくほど大きくなる。また、位置規制部材22−2の高さ方向の厚さは、スリーブ12の内周側(高さH1)から外周側(高さH2)にいくほど大きくなるようにしてもよい。この場合、位置規制部材22−2を例えば図6A及び図6Bに示す引き抜き部2iにより引き抜きやすくすることができる。
【0064】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態に係る光学素子成形用型セット30を示す断面図である。
図10は、本発明の第3実施形態に係る光学素子の製造方法を説明するための加熱・加圧ステージ2−2の断面図である。
本実施形態に係る光学素子成形用型セット30では、下型11、スリーブ12及び保持部材13は第1実施形態に係る光学素子成形用型セット10のものと同一であり、上型31が相違する。
【0065】
上型31は、本実施形態では、図10に示す加熱・加圧ステージ2−2の上加熱板2aに固定されているのではなく、第2実施形態と同様に光学素子成形用型セット30の一部として配置されている。
【0066】
上型31は、下端に成形面31aが形成され、上端にフランジ部31bが形成されている。フランジ部31bの高さ(厚み)は、スリーブ12の外周側にいくほど小さくなる。そのため、フランジ部31bの下端には、傾斜面31cが形成されている。
【0067】
傾斜面31cは、スリーブ12の内周側ではスリーブ12の上端に当接するが、スリーブ12の外周側ではスリーブ12の上端との間に隙間Gがある。
【0068】
以下、本実施形態に係る光学素子の製造方法について、第1実施形態と共通する点については適宜省略しながら説明する。
【0069】
本実施形態における加熱・加圧ステージ2−2は、上型持ち上げ部2jが配置されている点を除いて、第1実施形態と同様である。なお、上型持ち上げ部2jは、例えば、上加熱板2aにより保持され、光学素子成形用型セット20の径方向及び高さ方向に移動する。上型持ち上げ部2jの先端に設けられた当接部2j−1は、先端にいくほど高さ(厚み)が小さくなっており、傾斜面31cとスリーブ12の上端との上述の隙間Gに挿入される。
【0070】
まず、光学素材100が光学素子成形用型セット30の保持部材13の上端中央に載置されることで、光学素材100の中心A3が上型31の成形面31aの中心軸A1及び下型11の成形面11cの中心軸A2に一致する(中心合わせ工程)。そして、光学素子成形用型セット30は、図1に示す成形室4に搬入され、図10に示すように加熱・加圧ステージ2−2の下加熱板2bの中央に載置される。
【0071】
このとき、光学素材100は、上型31の成形面31aに接触している。上型持ち上げ部2jは、後述する上カートリッジヒータ2c及び下カートリッジヒータ2dによる加熱前に、上型31を持ち上げる(上型持ち上げ工程)。
【0072】
そして、上型31の成形面31a及び下型11の成形面11cと非接触の状態の光学素材100が上カートリッジヒータ2c及び下カートリッジヒータ2dにより例えばガラス屈伏点以上の温度まで加熱される(加熱工程)。
【0073】
光学素材100の加熱が終了した後、上型持ち上げ部2jは、光学素子成形用型セット20に対して離れる方向(図の例では左右に拡がる方向)に移動して、上型31の持ち上げを解除する(持ち上げ解除工程)。これにより、上型31の成形面31aが、加熱された光学素材100に再び接触する(接触工程)。このように、本実施形態では、接触工程の前では、上型31の成形面31aが光学素材100に非接触状態となるように上型持ち上げ部2jにより上型31を持ち上げておく。
そして、第1実施形態と同様に、加圧工程及び冷却工程が行われ、光学素子が製造される。
【0074】
以上説明した本実施形態においても、中心合わせ工程において、上型31の成形面31aの中心軸A1と下型11の成形面11cの中心軸A2と光学素材100の中心A3とが一致するようにする。そして、光学素材100は、上型31の成形面31a及び下型11の成形面11cと非接触の状態で加熱され(加熱工程)、上型31の成形面31aに接触した後(接触工程)、下型11により加圧される(加圧工程)。そのため、本実施形態によっても、光学素子にクモリ及び偏心が生じるのを抑えることができる。
【0075】
また、本実施形態では、上型持ち上げ部2jは、加熱部(上カートリッジヒータ2c及び下カートリッジヒータ2d)による加熱が行われる間、上型31の成形面31aが光学素材100に非接触状態となるように上型31を持ち上げておく。そのため、簡素な構成で、加熱工程において上型31の成形面31aを光学素材100に対して非接触状態とすることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 光学素子の製造装置
2 加熱・加圧ステージ
2a 上加熱板
2b 下加熱板
2b−1 貫通孔
2c 上カートリッジヒータ
2d 下カートリッジヒータ
2e エアシリンダ
2f 基台
2f−1 貫通孔
2g 上型
2g−1 成形面
2g−2 フランジ部
2h 突き出し部材
2i 引き抜き部
2j 上型持ち上げ部
2j−1 当接部
3 冷却ステージ
3a 上加熱板
3b 下加熱板
3c 上カートリッジヒータ
3d 下カートリッジヒータ
3e エアシリンダ
3f 基台
4 成形室
10 光学素子成形用型セット
11 下型
11a 大径部
11b 小径部
11c 成形面
12 スリーブ
12a 肉厚部
12b 薄肉部
12c 段差部
13 保持部材
13a フランジ部
20 光学素子成形用型セット
21 上型
21a 成形面
21b フランジ部
22 位置規制部材
30 光学素子成形用型セット
31 上型
31a 成形面
31b フランジ部
31c 傾斜面
100 光学素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型の成形面の中心軸と下型の成形面の中心軸と光学素材の中心とを一致させるように上型、下型、及び光学素材を配置する中心合わせ工程と、
前記上型の前記成形面及び前記下型の前記成形面に非接触の状態の前記光学素材を加熱する加熱工程と、
加熱された前記光学素材に前記上型を接近移動させることで前記上型の前記成形面を接触させる接触工程と、
前記上型の前記成形面に接触した状態の前記光学素材を、前記下型を前記上型に接近移動させることで加圧する加圧工程と、
加圧された前記光学素材を冷却する冷却工程と、を有する、光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記接触工程では、前記上型の成形面が前記光学素材に非接触状態となるように前記上型の位置を規制する位置規制部材を引き抜いて、前記上型の位置の規制を解除する、請求項1記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記接触工程の前では、前記上型の前記成形面が前記光学素材に非接触状態となるように上型持ち上げ部により前記上型を持ち上げておく、請求項1記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
上型及び下型の外周部分を位置規制することにより、前記上型の成形面の中心軸と前記下型の成形面の中心軸とを一致させるスリーブと、
前記上型の前記成形面及び前記下型の前記成形面に非接触の状態の光学素材の中心が、前記上型の前記成形面の前記中心軸と前記下型の前記成形面の前記中心軸とに一致するように、前記光学素材を保持する保持部材と、
前記上型の成形面が前記光学素材に非接触状態となるように前記上型の位置を規制する位置規制部材と、を有する、光学素子成形用型セット。
【請求項5】
前記位置規制部材は、前記上型と前記スリーブの上端との間に配置される、請求項4記載の光学素子成形用型セット。
【請求項6】
前記上型と前記スリーブの上端との高さ方向の隙間は、該スリーブの内周側から外周側にいくほど大きくなり、
前記位置規制部材の高さ方向の厚さは、前記スリーブの内周側から外周側にいくほど大きくなる、請求項5記載の成形用型セット。
【請求項7】
前記位置規制部材は、前記スリーブを外周側から内周側に貫通し、前記上型の下端を支持する、請求項4記載の光学素子成形用型セット。
【請求項8】
請求項4から請求項7のいずれか1項記載の光学素子成形用型セットが順次移送される複数のステージと、
前記複数のステージのうち少なくとも1つに配置され、前記光学素子成形用型セットに収容された光学素材を加熱する加熱部と、
前記複数のステージのうち少なくとも1つに配置され、前記光学素子成形用型セットに収容された前記光学素材を加圧する加圧部と、
前記光学素子成形用型セットの前記位置規制部材を、前記上型の位置を規制する位置から引き抜く引き抜き部と、を備える、光学素子の製造装置。
【請求項9】
下型に対向して配置された上型を有する光学素子成形用型セットが順次移送される複数のステージと、
前記複数のステージのうち少なくとも1つに配置され、前記光学素子成形用型セットに収容された光学素材を加熱する加熱部と、
前記複数のステージのうち少なくとも1つに配置され、前記光学素子成形用型セットに収容された前記光学素材を加圧する加圧部と、
前記上型の成形面が前記光学素材に非接触状態となるように前記上型を持ち上げておく上型持ち上げ部と、を備える、光学素子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−180252(P2012−180252A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45559(P2011−45559)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)