説明

光学素子の製造装置、及び、光学素子の製造方法

【課題】成形型を下から押し上げる下押し部材の引っ掛かりを防止することができると共に、下押し部材から外部への熱伝導を抑えることができる光学素子の製造装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】光学素子の製造装置10は、上型と下型とを有し光学素子材料を収容する型セット20が載置される伝熱部材(12a)と、型セット20の下型を下方から押し上げる下押し部材(12e)と、下押し部材(12e)を下方から接触して押圧する下押し部材(12e)とは別体の押圧部17と、下押し部材(12e)を吸引する吸引部(18,19)と、を備え、下押し部材(12e)は、吸引部(18,19)により吸引されて伝熱部材(12a)の上面から突出しなくなる位置と、押圧部17により押圧されて伝熱部材(12a)の上面から突出する位置とを往復移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、レンズ、プリズム、ミラー等の光学素子を製造する光学素子の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造工程順に配置された複数のステージにより上型及び下型を有する複数の型セットに対し加熱・加圧・冷却の工程を順次行って、型セットに収容した光学素子材料を基に光学素子を製造する製造装置が用いられている。
【0003】
上記の光学素子の製造装置においては、成形性向上のために下から下型を押し上げて加圧する方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方式では、下押し部材(下押しピン)は、型セットが載置される伝熱部材を貫通して成形型を下方から押し上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−227532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の下押し部材は、時折、押し上げられた状態で下に戻らなくなり、型セットの移動に支障をきたすおそれがある。
また、上述の下押し部材から、これを駆動する機械やシリンダを伝わって熱が逃げてしまい、光学素子の製造条件(成形条件)が不安定になる。
【0006】
本発明の目的は、型セットの下型を下から押し上げる下押し部材の引っ掛かりを防止することができると共に、下押し部材から外部への熱伝導を抑えることができる光学素子の製造装置及び製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学素子の製造装置は、上型と下型とを有し光学素子材料を収容する型セットが載置される伝熱部材と、上記型セットの上記下型を下方から押し上げる下押し部材と、上記下押し部材を下方から接触して押圧するこの下押し部材とは別体の押圧部と、上記下押し部材を吸引する吸引部と、を備え、上記下押し部材は、上記吸引部により吸引されて上記伝熱部材の上面から突出しなくなる位置と、上記押圧部により押圧されて上記伝熱部材の上面から突出する位置とを往復移動する。
【0008】
また、上記光学素子の製造装置において、上記伝熱部材には、上記下押し部材を収容する収容凹部と、下方から上記押圧部が挿入され上記収容凹部に連通する押圧部挿入孔とが形成されているようにしてもよい。
【0009】
また、上記光学素子の製造装置において、上記下押し部材の吸引時における引っ掛かりを解消するために上記下押し部材を下方から加圧する引っ掛かり解消手段を備えるようにしてもよい。
【0010】
また、上記光学素子の製造装置において、上記引っ掛かり解消手段は、上記下押し部材を加圧するガスを供給するガス供給部であるようにしてもよい。
また、上記光学素子の製造装置において、上記引っ掛かり解消手段は、上記押圧部であるようにしてもよい。
また、上記光学素子の製造装置において、上記下押し部材と上記押圧部と上記吸引部とが配置され、上記光学素子材料を加圧する加圧ステージを備え、上記加圧ステージを含む複数のステージに上記型セットを順次移送していくことで光学素子を製造するようにしてもよい。
【0011】
本発明の光学素子の製造方法は、上型と下型とを有する型セットに収容された光学素子材料を加熱する加熱工程と、下押し部材を、この下押し部材とは別体の押圧部により接触して押圧することにより、伝熱部材に載置された上記型セットの上記下型を上記下押し部材により下方から押し上げ、上記光学素子材料を加圧する加圧工程と、上記下押し部材を吸引する吸引工程と、上記光学素子材料を冷却する冷却工程と、を含み、上記下押し部材は、上記吸引工程で吸引されて上記伝熱部材の上面から突出しなくなる位置と、上記押圧部により押圧されて上記伝熱部材の上面から突出する位置とを往復移動する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、型セットの下型を下から押し上げる下押し部材の引っ掛かりを防止することができると共に、下押し部材から外部への熱伝導を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造装置を示す断面図である。
【図2A】本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造装置の加圧ステージを示す要部断面図(その1)である。
【図2B】本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造装置の加圧ステージを示す要部断面図(その2)である。
【図2C】本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造装置の加圧ステージを示す要部断面図(その3)である。
【図3A】本発明の他の実施の形態に係る光学素子の製造装置の加圧ステージを示す要部断面図(その1)である。
【図3B】本発明の他の実施の形態に係る光学素子の製造装置の加圧ステージを示す要部断面図(その2)である。
【図3C】本発明の他の実施の形態に係る光学素子の製造装置の加圧ステージを示す要部断面図(その3)である。
【図3D】本発明の他の実施の形態に係る光学素子の製造装置の加圧ステージを示す要部断面図(その4)である。
【図3E】本発明の他の実施の形態に係る光学素子の製造装置の加圧ステージを示す要部断面図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る光学素子の製造装置及び製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造装置10を示す断面図である。
図2A〜図2Cは、上記光学素子の製造装置10の加圧ステージ12を示す要部断面図である。
【0016】
光学素子の製造装置(以下、単に「製造装置」と記す。)10は、加熱ステージ11と、加圧ステージ12と、冷却ステージ13と、成形室14と、投入側シャッタ15と、排出側シャッタ16と、を備え、型セット20を順次移送しながら例えばガラスレンズである光学素子を製造する循環型の製造装置である。
【0017】
型セット20は、図2A〜図2Cに示すように、上型21及び下型22と、保持部材23と、外径枠24と、スリーブ25とを有し、光学素子材料31を収容する。型セット20は、例えばタングステンカーバイド(WC)からなる。
【0018】
上型21には、基部21aの上部に、外周方向へ拡がるフランジ部21bが形成されている。基部21aの下端には、光学素子材料31に凸形状を転写する凹成形面21cが形成されている。
【0019】
下型22は、上型21に対向して配置されている。下型22には、基部22aの上部中央に、基部22aよりも小径で基部22aから上方に突出する凸部22bが設けられている。この凸部22bの上端には、光学素子材料31に凹形状を転写する凸成形面22cが形成されている。
【0020】
保持部材23は、下端に下型22の基部22aよりも大径のフランジ部23aが形成された円筒形状を呈する。保持部材23の中空部23bには、下型22の凸部22bが下方から摺動可能に挿入されている。保持部材23の上端面23cは、光学素子材料31の凹面の外周に平面形状を転写するべく平面形状に形成されている。
【0021】
外径枠24は、円筒形状を呈し、上型21と保持部材23のフランジ部23aとの間に配置されている。外径枠24は、その内周面のうち保持部材23よりも上方に突出する部分において、光学素子材料31の外周側面に曲面形状を転写する。
【0022】
スリーブ25は、円筒形状を呈する。スリーブ25は、下部が肉厚部25aで上部が薄肉部25bとなっているため、肉厚部25aと薄肉部25bとの間の内周面に段差部25cが形成されている。この段差部25cには、保持部材23のフランジ部23aが載置されている。
【0023】
また、スリーブ25は、下型22、保持部材23及び外径枠24の外周に位置しており、下型22が肉厚部25aの内周面を、保持部材23及び外径枠24が薄肉部25bの内周面を、それぞれ摺動可能となっている。
【0024】
なお、上型21は、基部21aがスリーブ25に上方から挿入され、フランジ部21b底面がスリーブ25の上端に当接している。そのため、下型22が型セット20内で上下に移動可能に配置されている一方、上型21は、フランジ部21bがスリーブ25の上端に当接しているため、この当接した位置以上は光学素子材料31側には移動不能になっている。
【0025】
上述の型セット20は、上型21及び下型22に加え、保持部材23、外径枠24及びスリーブ25を有するが、型セット20としては、少なくとも上型21及び下型22を有するものであればよい。
【0026】
図1に示すように、加熱ステージ11、加圧ステージ12及び冷却ステージ13は、それぞれ、下プレート11a,12a,13aと、ベース部11b,12b,13bと、上プレート11c,12c,13cと、シリンダ11d,12d,13dと、を有する。なお、加圧ステージ12の下プレート12aは、伝熱部材の一例である。
【0027】
加熱ステージ11、加圧ステージ12及び冷却ステージ13は、シリンダ11d,12d,13dを除き、成形室14内に配置されている。
成形室14には、型セット20用の投入口14a及び排出口14bが形成されている。投入側シャッタ15は、投入口14aを塞ぎ成形室14の気密性を確保する位置と、そこから上方に移動し型セット20を通過させる位置とに上下動する。同様に、排出側シャッタ16は、排出口14bを塞ぎ成形室14の気密性を確保する位置と、そこから上方に移動し型セット20を通過させる位置とに上下動する。
【0028】
加圧ステージ12は、型セット20の下型22を下方から押し上げる例えば円柱形状の下押しピン(下押し部材)12eを有する。なお、下押しピン12eを一例とする下押し部材の形状は、棒状、ブロック形状等、特に限定されない。
【0029】
詳しくは後述するが、加圧ステージ12には、下押しピン12eを下方から接触して押圧する下押しピン12eとは別体の押圧部17と、下押しピン12を吸引する吸引部の一例である吸引管18及び排気真空ポンプ19とが配置されている。
【0030】
下プレート11a,12a,13aは、ベース部11b,12b,13b上に設置され、内部にはヒータ(加熱部)11f,ヒータ(加熱部)12f,ヒータ(冷却部)13fが2本ずつ配置されている。下プレート11a,12a,13aには、型セット20が載置される。
【0031】
上プレート11c,12c,13cは、シリンダ11d,12d,13dの昇降軸に連結され、型セット20の上型21に当接する位置と、この位置よりも上方で型セット20を移送可能とする位置とに上下動する。上プレート11c,12c,13cの内部には、ヒータ(加熱部)11g,ヒータ(加熱部)12g,ヒータ(冷却部)13gが2本ずつ配置されている。
【0032】
加圧ステージ12の下プレート12a(伝熱部材)には、下押しピン12eを収容する収容凹部12hと、下方から押圧部17(ピストン17a)が挿入され収容凹部12hに連通する押圧部挿入孔12iとが中央に形成されている。この押圧部挿入孔12iは、収容凹部12hよりも小径であり、収容凹部12hとの段差に下押しピン12eが載置されるようになっている。
【0033】
なお、収容凹部12hの水平断面形状を大きくしすぎると、下プレート12aから型セット20への熱伝導を妨げることになるため、収容凹部12hは、例えば、下押しピン12eが摺動可能な大きさに形成するとよい。
【0034】
伝熱部材としては、型セット20が載置されるものをいうが、ヒータ12fが配置された下プレート12aの上に、均等に熱拡散させるための均熱部材等の部材が配置される場合には、この均熱部材等の部材と下プレート12a(ヒータを有する部材)とを含めて、伝熱部材というものとする。
【0035】
加圧ステージ12のベース部12bには、下プレート12aとの接触面である上面に開口し、押圧部挿入孔12iに連通する凹部12jが中央に形成されている。
押圧部17は、例えばピストン17aをシリンダにより上下動させることにより、下押しピン12eを接触して押圧する。例えば、ピストン17aは、ベース部12bを下方から貫通し、収容凹部12hに下方から挿入され、下押しピン17aを下方から押圧する。
【0036】
吸引管18は、一端がベース部12bの凹部12jに連通し、他端が排気真空ポンプ19に連通している。
排気真空ポンプ19は、吸引管18、凹部12j、押圧部挿入孔12i及び収容凹部12hを介して、下押しピン12eを吸引する。
【0037】
なお、製造装置10は、1つのみ加圧ステージ12を有するが、2つ以上の加圧ステージ12を有する場合には、各加圧ステージ12に押圧部17を配置すると共に、各加圧ステージ12を排気真空ポンプ19に連結するとよい。また、加熱ステージ11に押圧部17及び排気真空ポンプ19を配置するようにしてもよい。
【0038】
なお、図1及び図2A〜図2Cにおいて、押圧部17及び排気真空ポンプ19を便宜上、成形室14の下方に図示しているが、押圧部17は、例えば、成形室14の内部に配置してもよい。また、排気真空ポンプ19は、例えば、成形室14の周囲に配置してもよい。
【0039】
以下、製造装置10を用いた光学素子の製造方法について説明する。なお、製造装置10の後述する動作は、図示しない制御部によって制御されている。
図1に示すように、例えばボール状の光学素子材料31が収容された型セット20は、投入側シャッタ15が上方に移動した状態で、投入口14aから成形室14内に投入され、加熱ステージ11の下プレート11a上に載置される。なお、型セット20は、図示しない搬送ロボットによって、成形室14内への投入、成形室14内での移送、及び、成形室14からの排出が行われる。
【0040】
加熱ステージ11、加圧ステージ12及び冷却ステージ13の下プレート11a,12a,13a及び上プレート11c,12c,13cは、ヒータ11f,11g,12f,12g,13f,13gによって予め所定温度に加熱されている。
【0041】
加熱ステージ11の下プレート11a上に型セット20が載置されると、シリンダ11dは、上プレート11cを下降させて型セット20の上型21に当接させる。そして、下プレート11a及び上プレート11cが型セット20を挟持した状態で、下プレート11a及び上プレート11cから型セット20を介した熱伝導によって、光学素子材料31は、例えば屈伏点以上のプレス可能な温度に加熱され軟化する(加熱工程)。
【0042】
その後、型セット20は、加圧ステージ12の下プレート12a上に移送される。なお、加熱ステージ11の型セット20が加圧ステージ12に移送されると、新たな型セット20が投入口14aから加熱ステージ11に投入される。
【0043】
次に、図2Aに示すように、下プレート12a及び上プレート12cが型セット20を挟持した状態で、図2Bに示すように、押圧部17のピストン17aが下押しピン17eを接触して押圧する。下押しピン12eは、下プレート12aの上面から突出し、型セット20の下型22を下方から押し上げる。これにより、光学素子材料31が加圧される(加圧工程)。
【0044】
この際には、下押しピン12eにより押し上げられた下型22は、基部22aが保持部材23に当接した位置からは、スリーブ25の段差部25cに載置された保持部材23と保持部材23のフランジ部23a上に位置する外径枠24と一体に上昇する。
【0045】
光学素子材料31を所望の肉厚となるまで加圧した後、図2Cに示すように、押圧部17のピストン17aが下降する。そして、排気真空ポンプ19が、吸引管18、凹部12j、押圧部挿入孔12i及び収容凹部12hを介して、下押しピン12eを吸引する。これにより、下押しピン12eは、下プレート12aの上面から突出しなくなる位置である収容凹部12h内の位置に移動する(吸引工程)。このように、下押しピン12eは、吸引管18及び排気真空ポンプ19により吸引されて下プレート12aの上面から突出しなくなる位置と、押圧部17により押圧されて下プレート12aの上面から突出する位置とを往復移動する。
【0046】
なお、下押しピン12eの吸引は、光学素子材料31の加圧途中から行ってもよい。また、下型22が自重により降下した場合には、吸引がなくとも下押しピン12eは降下するが、下押しピン12eを吸引することにより、下型22が光学素子材料31に接触したまま降下しない場合にも下押しピン12eを収容凹部12hに収容することができる。また、下押しピン12eの吸引によって、下型22を光学素子材料31から離型させるようにしてもよい。
【0047】
その後、型セット20は、冷却ステージ13の下プレート13a上に移送される。そして、光学素子材料31は、上プレート13cと下プレート13aとの間で型セット20が挟持された状態で所定温度まで冷却される(冷却工程)。
【0048】
冷却ステージ13において光学素子材料31が冷却された型セット20は、排出側シャッタ16が上方に移動した状態で、排出口14bから成形室14外に排出される。その後、型セット20から、製造された光学素子が取出される。
【0049】
以上説明した本実施の形態では、下押しピン(下押し部材)12eは、吸引部の一例である吸引管18及び排気真空ポンプ19により吸引されて下プレート(伝熱部材)12aの上面から突出しなくなる位置と、別体の押圧部17により接触して押圧されて下プレート12aの上面から突出する位置とを往復移動する。
【0050】
そのため、下押しピン12eとは別体の押圧部17により下押しピン12eを接触して押圧することにより、下押しピン12eから押圧部17への熱伝導を抑えることができる。また、下押しピン12eを吸引することにより、下押しピン12eが下プレート12a等に引っ掛かるのを防止することができる。
【0051】
よって、本実施の形態によれば、下押しピン(下押し部材)12eの引っ掛かりを防止することができると共に、下押しピン12eから押圧部17(外部)への熱伝導を抑えることができる。更には、下押しピン12eから押圧部17への熱伝導を抑えることで、光学素子の製造条件(成形条件)が不安定になるのを防ぐことができる。
【0052】
また、本実施の形態では、下プレート12aには、下押しピン12eを収容する収容凹部12hと、下方から押圧部17のピストン17aが挿入され収容凹部12hに連通する押圧部挿入孔12iとが形成されている。そのため、光学素子の製造装置10を簡素な構成にすることができる。
【0053】
また、本実施の形態では、光学素子の製造装置10は、加圧ステージ12を含む複数のステージ(加熱ステージ11、加圧ステージ12及び冷却ステージ13)に型セット20を順次移送していくことで光学素子を製造する。そのため、下押しピン12eが型セット20の移送を妨げずに、光学素子を効率良く製造することができる。
【0054】
図3A〜図3Eは、本発明の他の実施の形態に係る光学素子の製造装置の加圧ステージ12を示す要部断面図である。
本実施の形態の製造装置では、排気真空ポンプ19に連結された吸引管18が中継管41を介してベース部12bの凹部12jに連通している点、及び、中継管41に供給管42を介して不活性ガス供給部43が連結されている点において、上述の一実施の形態の製造装置10と主に相違し、その他の点は概ね同様である。そのため、同様の点については適宜説明を省略する。
【0055】
中継管41は、加圧ステージ12のベース部12bの凹部12jに連通している。
吸引管18及び供給管42は、中継管41に連結されている。
そのため、排気真空ポンプ19は、吸引管18、連結管41、凹部12j、押圧部挿入孔12i及び収容凹部12hを介して、下押しピン12eを吸引する。
【0056】
また、引っ掛かり解消手段の一例であるガス供給部としての不活性ガス供給部43は、圧力ガスである不活性ガスを、供給管42、連結管41、凹部12j、押圧部挿入孔12i及び収容凹部12hを介して供給することにより、下押しピン12eを加圧する。
【0057】
なお、図3A〜図3Eにおいて、押圧部17、排気真空ポンプ19及び不活性ガス供給部43を便宜上、成形室14の下方に図示しているが、押圧部17は、例えば、成形室14の内部に配置してもよい。また、排気真空ポンプ19及び不活性ガス供給部43は、例えば、成形室14の周囲に配置してもよい。
【0058】
以下、製造装置を用いた光学素子の製造方法について説明するが、加圧工程及び吸引工程以外は上述の一実施の形態と同様であるため、加圧工程及び吸引工程のみについて説明する。なお、製造装置の後述する動作は、図示しない制御部によって制御されている。
【0059】
図3Aに示すように、型セット20が加圧ステージ12の下プレート12a上に移送されると、図3Bに示すように、押圧部17のピストン17aが下押しピン17eを接触して押圧することにより、下押しピン12eは、下プレート12aの上面から突出し、型セット20の下型22を下方から押し上げる。これにより、光学素子材料31が加圧される(加圧工程)。
【0060】
光学素子材料31を加圧する際には、下押しピン12eにより押し上げられた下型22は、基部22aが保持部材23に当接した位置からは、スリーブ25の段差部25cに載置された保持部材23と保持部材23のフランジ部23a上に位置する外径枠24と一体に上昇する。
【0061】
光学素子材料31を所望の肉厚となるまで加圧した後、押圧部17のピストン17aが下降する。そして、排気真空ポンプ19は、吸引管18、中継管41、凹部12j、押圧部挿入孔12i及び収容凹部12hを介して、下押しピン12eを吸引する(吸引工程)。
【0062】
しかし、図3Cに示すように収容凹部12h内で下押しピン12eが傾いたり、或いは、収容凹部12h内に塵埃等が付着したりすることにより、下押しピン12eが例えば下プレート12aにおいて引っ掛かることがある。
【0063】
このような引っ掛かりを、人が目視で確認するか或いは図示しないセンサが検知することにより、手動又は自動で図示しない制御部を動作させる。そして、この制御部は、図3Dに示すように、不活性ガス供給部43に、圧力ガスである不活性ガスを、供給管42、連結管41、凹部12j、押圧部挿入孔12i及び収容凹部12hを介して供給させ、下押しピン12eを加圧する(引っ掛かり解消工程)。
【0064】
なお、ガスで下押しピン12eを加圧する場合は、製造装置の酸化を防ぐために不活性ガスを用いることが望ましいが、その他のガスを用いることも可能である。また、不活性ガス供給部43を用いなくとも、引っ掛かり解消手段として押圧部17を用いて下押しピン12eを加圧するようにしてもよい。
【0065】
その後、再度、排気真空ポンプ19により、吸引管18、中継管41、凹部12j、押圧部挿入孔12i及び収容凹部12hを介して、下押しピン12eを吸引する。これにより、下押しピン12eは、下プレート12aの上面から突出しなくなる位置である収容凹部12h内の位置に移動する(吸引工程)。
【0066】
以上説明した本実施の形態においても、上述の一実施の形態において述べた効果、例えば、下押しピン(下押し部材)12eの引っ掛かりを防止することができると共に、下押しピン12eから押圧部17(外部)への熱伝導を抑えることができるという効果を得ることができる。
【0067】
更には、本実施の形態では、引っ掛かり解消手段(例えば、下押しピン12eを加圧するガスを供給する不活性ガス供給部(ガス供給部)43、又は、押圧部17)は、下押しピン12eの吸引時における引っ掛かりを解消するために下押しピン12eを下方から加圧する。そのため、本実施の形態によれば、下押しピン12eの引っ掛かりをより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 光学素子の製造装置
11 加熱ステージ
12 プレスステージ
13 冷却ステージ
11a,12a,13a 下プレート
11b,12b,13b ベース部
11c,12c,13c 上プレート
11d,12d,13d シリンダ
12e 下押しピン
11f,12f,13f ヒータ
11g,12g,13g ヒータ
12h 収容凹部
12i 押圧部挿入孔
12j 凹部
14 成形室
14a 投入口
14b 排出口
15 投入側シャッタ
16 排出側シャッタ
17 押圧部
17a ピストン
18 吸引管
19 排気真空ポンプ
20 型セット
21 上型
21a 基部
21b フランジ部
21c 凹成形面
22 下型
22a 基部
22b 凸部
22c 凸成形面
23 保持部材
23a フランジ部
23b 中空部
23c 上端面
24 外径枠
25 スリーブ
25a 肉厚部
25b 薄肉部
25c 段差部
31 光学素材
41 中継管
42 供給管
43 不活性ガス供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型とを有し光学素子材料を収容する型セットが載置される伝熱部材と、
前記型セットの前記下型を下方から押し上げる下押し部材と、
前記下押し部材を下方から接触して押圧する該下押し部材とは別体の押圧部と、
前記下押し部材を吸引する吸引部と、を備え、
前記下押し部材は、前記吸引部により吸引されて前記伝熱部材の上面から突出しなくなる位置と、前記押圧部により押圧されて前記伝熱部材の上面から突出する位置とを往復移動する、光学素子の製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の光学素子の製造装置において、
前記伝熱部材には、前記下押し部材を収容する収容凹部と、下方から前記押圧部が挿入され前記収容凹部に連通する押圧部挿入孔とが形成されている、光学素子の製造装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の光学素子の製造装置において、
前記下押し部材の吸引時における引っ掛かりを解消するために前記下押し部材を下方から加圧する引っ掛かり解消手段を備える、光学素子の製造装置。
【請求項4】
請求項3記載の光学素子の製造装置において、
前記引っ掛かり解消手段は、前記下押し部材を加圧するガスを供給するガス供給部である、光学素子の製造装置。
【請求項5】
請求項3記載の光学素子の製造装置において、
前記引っ掛かり解消手段は、前記押圧部である、光学素子の製造装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項記載の光学素子の製造装置において、
前記下押し部材と前記押圧部と前記吸引部とが配置され、前記光学素子材料を加圧する加圧ステージを備え、
前記加圧ステージを含む複数のステージに前記型セットを順次移送していくことで光学素子を製造する、光学素子の製造装置。
【請求項7】
上型と下型とを有する型セットに収容された光学素子材料を加熱する加熱工程と、
下押し部材を、該下押し部材とは別体の押圧部により接触して押圧することにより、伝熱部材に載置された前記型セットの前記下型を前記下押し部材により下方から押し上げ、前記光学素子材料を加圧する加圧工程と、
前記下押し部材を吸引する吸引工程と、
前記光学素子材料を冷却する冷却工程と、を含み、
前記下押し部材は、前記吸引工程で吸引されて前記伝熱部材の上面から突出しなくなる位置と、前記押圧部により押圧されて前記伝熱部材の上面から突出する位置とを往復移動する、光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【公開番号】特開2012−136377(P2012−136377A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288751(P2010−288751)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)