光学要素製造方法
【課題】製造が容易な光学要素製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の光学要素製造方法は、光を通す扁平な基部412と基部の一の面417に設けられた光を通す複数の突部415とを備える光学シート410を、光を通す基材421に重ね、光学シートによって、基材上に設けられた光を遮る遮光層423を押圧し、突部によって遮光層を破断させて光を通す開口部を形成する押圧工程を有する。
【解決手段】本発明の光学要素製造方法は、光を通す扁平な基部412と基部の一の面417に設けられた光を通す複数の突部415とを備える光学シート410を、光を通す基材421に重ね、光学シートによって、基材上に設けられた光を遮る遮光層423を押圧し、突部によって遮光層を破断させて光を通す開口部を形成する押圧工程を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置などの透過型表示装置を背面から照明する照明装置(バックライト)に使用される光学要素、あるいは、透過型表示装置の前面に配置されて視野角を制御する光学要素、の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイは画像表示装置の主流となり、携帯電話、デジタルカメラ、または液晶テレビ等の幅広い機器で用いられている。これらの機器によって液晶ディスプレイのサイズは異なるが、主な構成はサイズによらずほぼ同様であり、液晶を含む液晶パネルおよび光源としてのバックライトを液晶ディスプレイは備える。液晶ディスプレイではまた、バックライトからの光を拡散させ、また集光させることによって、光の視野角・明るさ等を調節する為、様々な光学要素が使用または考案されている。
【0003】
また、液晶、特にネマティック液晶では、光の入射角度によって偏光面の回転作用が異なる為に、斜め方向に入射し斜め方向に出射する光に対する変調作用が不十分で、その結果、斜め方向から観察した場合のコントラストの低下や、反転現象が生じる。
【0004】
これを回避する方法として、バックライトからの光を集光、平行光化させて液晶パネルに入射させ、液晶パネルから出射した後、光を拡散する方法が、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0005】
バックライトからの光を集光させる光学要素として、特許文献2には、レンチキュラーレンズまたはマイクロレンズのアレイとその焦点面近傍に光を通過させる開口部がそれ以外の部分に光を反射する遮光部が形成されたものが開示されている。このような開口部と遮光部の形成方法として、引用文献2には、レンズ自体の集光作用を利用したセルフアライメントによって、粘着性感光樹脂層の粘着性を失わせ、粘着性を喪失した部分以外の部位に遮光性材料を形成する方法が開示されている。
【0006】
一方、特許文献1の光学要素は、液晶パネルとバックライトの間に配置され、バックライト側の面に沿って配列された開口部と、開口部を通って入射した光を全反射によって平行光化する為、光入力面より大きい面積の光出力面を有する突状のマイクロコリメータとマイクロコリメータを通過した光をさらに平行光化させるレンズとを備える光学要素である。バックライトからの光は開口部を通って光学要素に達し、開口部はマイクロコリメータおよびレンズに対応して間隔を空けて並んでおり、光を遮る遮光層が開口部と開口部との間を埋めている。
【0007】
このマイクロコリメータのように面積の異なる光入力面と光出力面とを有し、全反射を利用して光の集光/拡散を行う光学シートに遮光層を形成する方法に、突部と突部の間の溝に遮光性の顔料粒子を充填し、過剰の粒子をブラシなどで除去する方法が特許文献3に記載されている。
【特許文献1】国際公開第WO95/14255号パンフレット
【特許文献2】特開2000−171617号広報
【特許文献3】特開昭62−245239号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、レンズのセルフアライメントによって粘着性感光樹脂層の粘着性を喪失させ、粘着性が喪失しない部位のみに遮光層を形成する方法は、遮光層の厚みが遮光性微粒子1〜数個分に限定され、厚く形成することが困難で、従って、十分な遮光性能が得られないという問題があった。あるいは、この方法の応用で、あらかじめ遮光性顔料を含んだ転写性インクを用意して、セルフアライメントを利用して粘着性の粘着層を形成し、この粘着層のパターンに遮光性の顔料を含んだインクを転写して開口部と遮光層とを形成する方法もあるが、しかし、この方法においても、インク内の顔料濃度を上げたり、インク層の厚みを厚くすると、解像されないという問題があった。
【0009】
また、開口部となる突部と突部の間の溝にインク(遮光性微粒子)を充填し、余分なインクを除去する方法は、インクの充填後、余分なインクを掻き出して除去する必要があり、製造工程が煩雑になり易い。また、開口部に相当する突部へインクが付着して残る、またはインクを除去する際に突部が傷付く等の要因によって、製品品質を低下させる虞がある。本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、製造が容易な光学要素製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の光学要素製造方法は、光を通す扁平な基部と、当該基部の一の面に設けられた光を通す複数の突部とを備える光学シートを、光を通す基材に重ね、前記光学シートによって、前記基材上に設けられた光を遮る遮光層を押圧し、前記突部によって前記遮光層を破断させて光を通す開口部を形成する押圧工程を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学要素製造方法では、突部による遮光層の破断によって、光を通す開口部を形成しつつ開口部の位置に合わせて突部を配置するため、製造工程の煩雑さを抑えられ、製造が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下で説明する実施形態において、各実施形態で共通する機能を有する部材については、類似の符号を付し、また、重複する説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は光学要素製造方法の概要を説明するための図、図2は光学要素の製造工程を詳細に説明するための図、図3は第1実施形態により製造された光学要素の用途例を説明する図である。
【0014】
図1において説明すると、実施形態に係る光学要素製造方法は、光を通す扁平な基部412と基部412の一の面417に設けられた光を通す複数の突部415とを備える光学シート410を形成する光学シート形成工程を有する。
【0015】
光学要素製造方法はまた、光を通す拡散板421(基材に相当する)上に突部415よりも柔らかく透明な緩衝層422と、緩衝層422上に緩衝層422よりも脆い材料からなる遮光層423を形成する工程と、を有する。
【0016】
拡散板421は、均一に面発光した光を光学シート410に供給する。緩衝層422は、粘着性を有し、例えばPSA(Pressure Sensitive Adhesive)である。遮光層423は、例えば、透明樹脂等のバインダ中に、酸化チタン、酸化ケイ素等の微粒子を分散させたものである。遮光層423の厚さtは、数μm〜数十μmであり、突部415の高さHより小さい(H>t)。遮光層423は、50〜90%の拡散反射率を有する。ここで、遮光層423は、大部分の光を遮るが、完全に遮断して、まったく透過しないわけではない。
【0017】
光学シート形成工程および遮光層形成工程の後に、光学要素製造方法は、光学シート410を拡散板421に重ね、光学シート410によって、拡散板421上に設けられた遮光層423を押圧し、突部415によって遮光層423を破断させて光を通す開口部を形成する押圧工程を有する。
【0018】
図2(A)に示すように、光学シート形成工程では、基部412の面417に複数の突部415を、周知の紫外線硬化型樹脂(以下、単にUV樹脂と称す)を母型(図示せず)に充填し、紫外線を照射することによって、UV樹脂を硬化させ形成する。また、光学要素410は、溶融押出成形によって、基部412と複数の突部415とを一体的に形成しても良い。
【0019】
図2(B)および図2(C)に拡散板421上に緩衝層422および遮光層423を形成する方法を示す。図2(B)に示したように、あらかじめ、一対の剥離フィルム424および425の間に粘着性を有する緩衝層422および遮光層423を形成したフィルムシートを用意する。次に、図2(C)に示したように、緩衝層422側の剥離フィルム424を剥離しながら、緩衝層422の粘着性を利用して、拡散板421に前記フィルムシートを貼合する。
【0020】
図2(D)に示すように押圧工程は、剥離フィルム425を剥離後、突部415によって遮光層423を破断させるとともに、突部415を緩衝層422に食い込ませる。押圧工程によって、光学シート410と拡散板421とが一体となり、光学要素400が形成される。
【0021】
突部415は遮光層423を突き抜ける。破断した遮光層423は、緩衝層422とともに突部415と突部415との間に入り込む。突部415と突部415との間では、遮光層423と光学シート410との間に空気の層405(以下、単に空気層405と称す)が形成される。
【0022】
遮光層423が緩衝層422のように柔らかいと、突部415が遮光層423を押圧したとき遮光層423が突部415の外形に沿って変形し、開口部となる突部415を覆う虞があるため、遮光層423は、脆く、突部415による押圧によって破断し易いものが好ましい。
【0023】
第1実施形態では、緩衝層422及び遮光層423を、あらかじめ、剥離フィルム424及び425の間に形成したものを用意し、拡散板421に貼合して用いたが、これに限定されるものではなく、拡散板421上に直接、緩衝層422、遮光層423を順に形成しても良い。また、遮光層423の破断時に破砕された遮光層423の飛沫の飛散防止や、突部415の先端部の角の傷つき防止などの目的で、遮光層423の両側に緩衝層422を形成しても良い。この際、突部415の側面での光の全反射を損なわない為に、光学シート410側の透明な緩衝層の屈折率を、突部415の屈折率より小さくすることが望ましい。
【0024】
第1実施形態の作用効果を述べる。
【0025】
光学要素製造方法は、突部415による遮光層423の破断によって、光を通す開口部を形成しつつ開口部の位置に合わせて突部415を配置するため、製造工程の煩雑さを抑えられ、製造が容易である。
【0026】
また、光学要素製造方法は、突部415に比べて柔らかい緩衝層422に突部415を食い込ませるため突部415の損傷を妨げられ、ひいては良好な品質の光学要素400を製造し得る。
【0027】
図3に、第1実施形態の光学要素の利用形態を示す。
【0028】
図3(A)に示すように、第1実施形態に係る光学要素製造方法によって製造した光学要素400は、液晶パネル50とバックライト52との間に配置され、拡散板421によって均一化させた、バックライトの光53を入射させることによって、正面方向に光を集光させ、明るさを向上させた光54を液晶パネル50に供給できる。
【0029】
図3(B)に示す光学要素400は、液晶パネル50に対して光51の出射方向下流に配置し、光学シート410から光51を入射させることによって、光51の視野角を広げられる。
【0030】
なお、図3(B)に示した実施形態においては、明室でのコントラストを向上させるため、遮光層423は、黒色等の光を吸収する遮光層423である。この吸光性の遮光層423は、例えば、透明樹脂等のバインダ中に、カーボン、黒色樹脂ビーズ、黒色顔料等の微粒子を分散させたものである。また、基材421は、拡散板ではなく、透明板または透明フィルムでも良い。この透明板または透明フィルムは、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂などのプラスチック製の板およびフィルムやガラス板などが使用できる。この透明板や透明フィルムは、その出射側表面に、公知のアンチグレア層(AG)、無反射層(AR)、低反射層(LR)等を形成しても良い。
【0031】
<第2実施形態>
図4は光学要素製造方法の概要を説明するための図、図5は光学シート形成工程を説明するための図、図6は押圧工程を説明するための図、図7は光学要素の部分拡大図である。
【0032】
図4において説明すると、実施形態に係る光学要素製造方法は、光を通す扁平な基部112と基部112の一の面117に設けられた光を通す複数の突部115とを備える光学シート110を形成する光学シート形成工程を有する。光学シート110は、基部112の面117と異なる他の面116の突部115に対応する位置に、複数の凸レンズ111(レンズに相当する)を有する。
【0033】
光学要素製造方法はまた、光を通す拡散板121(基材に相当する)上に突部115よりも柔らかく透明な緩衝層122、及び、緩衝層122上に緩衝層122よりも脆い材料からなる遮光層123を形成する工程と、を有する。拡散板121、緩衝層122、及び、遮光層123は、第1実施形態で説明したものと同様のものが使用できる。
【0034】
光学シート形成工程および遮光層形成工程の後に、光学要素製造方法は、光学シート110を拡散板121に重ね、光学シート110によって、拡散板121上に設けられた遮光層123を押圧し、突部115によって遮光層123を破断させて光を通す開口部を形成する押圧工程を有する。
【0035】
図5に示すように、光学シート形成工程は、基部112の面116に複数の凸レンズ111を形成するレンズ形成工程と、光によって硬化するUV樹脂層113を基部112の面117に形成する硬化層形成工程と、を有する。光学シート形成工程はまた、凸レンズ111を通してUV樹脂層113に光を照射し、UV樹脂層113が硬化してなる硬化部114を形成する硬化工程と、硬化部114と異なるUV樹脂層113を除去し、硬化部114を突部115とする突部形成工程と、を有する。
【0036】
図5(A)に示すように、レンズ形成工程では、紫外線硬化型樹脂(以下、単にUV樹脂と称す)に紫外線を照射することによって、または溶融押出成形によって、基部112と複数の凸レンズ111とを一体的に形成する。
【0037】
複数の凸レンズ111は、例えば、1次元のレンチキュラーレンズ、または2次元のマイクロレンズアレイである。マイクロレンズアレイの配列は、縦横に並んだ正方配列、六角形に隙間なく並んだ六方最密配列の他、ランダムな配列であっても良い。レンズ形成工程の後、硬化層形成工程では、UV樹脂を面117に塗布する。
【0038】
図5(B)に示すように硬化工程では、セルフアライメントによって、面117に塗布したUV樹脂を硬化させる。すなわち、凸レンズ111を通して、UV樹脂層113に紫外線10を照射し、UV樹脂層113において凸レンズ111に対応した部分を硬化させる。紫外線10の照射方向は、基部112の面116、117に対して略直角であり、凸レンズ111の焦点15はUV樹脂層113に位置する。
【0039】
図5(C)に示すように突部形成工程では、硬化部114と異なるUV樹脂層113、つまり未硬化のUV樹脂を例えば溶剤等によって洗い流して、突部115を形成する。
【0040】
このようにして形成された突部115は、複数の凸レンズ111が、1次元のレンチキュラーレンズの場合には、凸レンズ111同様に、1次元の突部となり、2次元のマイクロレンズアレイの場合には、やはり、2次元的に配列されたものとなる。
【0041】
図6に示すように押圧工程は、突部115によって遮光層123を破断させるとともに、突部115を緩衝層122に食い込ませる。押圧工程によって、光学シート110と拡散板121とが一体となり、光学要素100が形成される。
【0042】
第2実施形態は第1実施形態と略同様の効果を奏する。
【0043】
実施形態と異なり、面117における、突部115と突部115との間に相当する位置にレンズ111のセルフアライメントを利用して粘着性の粘着層を形成し、この粘着層のパターンに遮光性の顔料を含んだインクを転写して開口部と遮光層とを形成する(転写法)こともできる。しかしこの方法では、インク内の顔料濃度を上げると、解像性の低下を招く虞がある。
【0044】
一方、本実施形態では、転写によらず、突部115によって遮光層123を破断させて光を通す開口部を形成しつつ突部115と突部115との間に遮光層123を形成するため、遮光層123に含まれる遮光性の微粒子の濃度を上げても、解像性が良好である。
【0045】
実施形態と異なり、機械的方法によって、突部115と開口部とを位置合わせすることもできるが、このような方法では、高精細化と大面積化との両立が困難である。一方、本実施形態では、突部115による遮光層123の破断によって、光を通す開口部を形成しつつ開口部の位置に合わせて突部115を配置するため、高精細化と大面積化との両立が容易である。
【0046】
図7に示すように光学要素100では、拡散板121によって散乱した光は、突部115および凸レンズ111を通り、レンズ作用によって正面方向にコリメートされる。したがって、液晶を含む液晶パネルと光源としてのバックライトとの間に光学要素100を配置し、拡散板121からバックライトの光を入射させることによって、正面方向の明るさを向上させた光を液晶パネルに供給できる。
【0047】
空気層105はなくてもよいが、実施形態のように空気層105があると、遮光層123と空気層105との屈折率の差によって全反射する光が生じるため、空気層105がない場合に比べて遮光層123の遮光性が高められ好ましい。また、突部115と空気層105との屈折率の差によって突部115の側面118において全反射する光が生ずるため、隣接する凸レンズ111に入射する光(図7中の点線参照)の割合を低減できる。
【0048】
実施形態に係る光学要素製造方法では、緩衝層122に突部115を食い込ませたとき、破断した遮光層123は、緩衝層122に押されるようにして突部115と突部115との間に入り込むため、光学要素100では、遮光層123が光学シート110に向かって突き出している。遮光層123で光が反射するとき、完全な散乱反射のみが生ずることは稀で、方向性を持たない散乱反射と正反射(鏡面反射)とが混ざり合っていることが多い。光学要素100では、遮光層123が光学シート110に向かって突き出しているため、散乱反射のうちの正反射成分において、緩衝層122と拡散板121との境界面に対して垂直な方向成分の割合が、遮光層123と基部112とが略平行な場合に比べて増加する。その結果、反射回数を抑制して光を突部115から出射できるため、光の利用効率が向上する。
【0049】
<第3実施形態>
図8は第3実施形態に係る他の光学要素製造方法を説明するための図である。
【0050】
図8に示すように、第3実施形態は第2実施形態と略同様であるが、第2実施形態の硬化工程において、凸レンズ211の焦点25をUV樹脂層213より遠方に位置させる点で、第2実施形態と異なる。このため断面が台形形状の突部215が形成でき、押圧工程は、先端に向かって先細りとなる形状を有する突部215によって遮光層223を破断する。よって、第2実施形態の効果に加え、押圧工程において、突部215を押し付けるための力を低減できるという効果を奏する。
【0051】
図9に、第2、第3実施形態の光学要素の利用形態を示す。
【0052】
図9(A)に示すように、第2、第3実施形態に係る光学要素製造方法によって製造した光学要素100(200)は、前述の第1実施形態に係る光学要素製造方法によって製造した光学要素400と同様に、液晶パネル50とバックライト52との間に配置され、拡散板121(221)によって均一化させた、バックライトの光53を入射させることによって、正面方向に光を集光させ、明るさを向上させた光54を液晶パネル50に供給できる。
【0053】
また、図9(B)に示すように、第2、第3実施形態に係る光学要素製造方法によって製造した光学要素100(200)を、液晶パネル50に対して光51の出射方向下流に配置し、レンズ111(211)から光51を入射させることによって、光51の視野角を広げられる。遮光層123(223)は、第1実施形態に係る製造方法によって製造した光学要素400における遮光層423と同様、吸光性の遮光層で、基材121(221)も、また、第1実施形態におけるに係る製造方法によって製造した光学要素400における基材421と同様、透明板または透明フィルムであっても良い。
【0054】
<第4実施形態>
図10は第4実施形態に係る光学要素製造方法を説明するための図、図11は突部側から見た第4実施形態に係る光学シートの平面図である。
【0055】
第4実施形態に係る光学要素製造方法は、第2実施形態と略同様であるが、第2実施形態が、複数の凸レンズ要素111が、1次元のレンチキュラーレンズ、2次元のマイクロレンズアレイのいずれをも含むものであったが、第4実施形態においては、2次元のマイクロレンズアレイのみに限定される。また、硬化工程が第2実施形態と異なる。
【0056】
図10(A)は、第4実施形態に使用するマイクロレンズアレイシートの斜視図である。この例のマイクロレンズアレイシートは、凸レンズ311が六方最密に配列されている。凸レンズ311が順に配列されている方向を31、1つおきに互い違いに配列されている方向を32とする。以下、第4実施形態に使用するマイクロレンズアレイシートは、凸レンズ311が六方最密に配列されている例で説明するが、第4実施形態はこれに限定されるものでは無く、正方配列やランダム配列等においても、適応可能である。
【0057】
図10(B)に示すように、第4実施形態の硬化工程は、UV樹脂層313の面に沿う一方向31に紫外線30を拡散させて照射する、または、紫外線30を照射する角度を変えてUV樹脂層313の面に沿う一方向31に段階的に紫外線を照射する。
【0058】
このような照射によって、例えば図11(A)に示すように、基部312の面317に対して平行な面における断面形状が楕円形の突部315Aが形成される。楕円形の長軸は方向31に沿っている。または図11(B)に示すように、方向31に沿って繋がった突部315Bが形成される。突部315A、315Bの各々がこのような形状を有することによって、方向31とこれに直角な方向32とで視野角が異なる。つまり、第4実施形態に係る光学要素製造方法は、第2実施形態の効果に加え、2方向で視野角の異なる光学要素を製造できるという効果を奏する。
【0059】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。例えば、第1実施形態において、緩衝層422が十分な厚みを有していれば、突部415の断面形状を先端が尖った三角形としてもよい。また、利用形態に関する図3(B)において、液晶パネル50と光学要素400とを基部412で貼り合せる場合、光学要素400自体に自立性は不要となるため、押圧工程後、基材421を剥離しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】光学要素製造方法の概要を説明するための図である。
【図2】詳細な光学要素製造方法を説明するための図である。
【図3】光学要素の利用形態を説明するための図である。
【図4】第2実施形態に係る光学要素製造方法の概要を説明するための図である。
【図5】第2実施形態に係る光学シート形成工程を説明するための図である。
【図6】押圧工程を説明するための図である。
【図7】光学要素の部分拡大図である。
【図8】第3実施形態に係る光学要素製造方法を説明するための図である。
【図9】光学要素を液晶ディスプレイに適用したときの例を示す図である。
【図10】第4実施形態に係る光学要素製造方法を説明するための図である。
【図11】突部側から見た第4実施形態に係る光学シートの平面図である。
【符号の説明】
【0061】
10、20、30 紫外線、
15、25 焦点、
31 一方向、
50 液晶パネル、
52 バックライト、
100、400 光学要素、
105、405 空気層、
110、210、410 光学シート
111、211、311 凸レンズ(レンズに相当する)、
112、212、312、412 基部、
113、213、313 硬化層、
114 硬化部、
115、215、315A、315B、415 突部、
116、216、316、416 基部の面(一の面に相当する)、
117、217、317、417 基部の面(他の面に相当する)、
121、221、421 拡散板(基材に相当する)、
122、222、422 緩衝層、
123、223、423 遮光層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置などの透過型表示装置を背面から照明する照明装置(バックライト)に使用される光学要素、あるいは、透過型表示装置の前面に配置されて視野角を制御する光学要素、の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイは画像表示装置の主流となり、携帯電話、デジタルカメラ、または液晶テレビ等の幅広い機器で用いられている。これらの機器によって液晶ディスプレイのサイズは異なるが、主な構成はサイズによらずほぼ同様であり、液晶を含む液晶パネルおよび光源としてのバックライトを液晶ディスプレイは備える。液晶ディスプレイではまた、バックライトからの光を拡散させ、また集光させることによって、光の視野角・明るさ等を調節する為、様々な光学要素が使用または考案されている。
【0003】
また、液晶、特にネマティック液晶では、光の入射角度によって偏光面の回転作用が異なる為に、斜め方向に入射し斜め方向に出射する光に対する変調作用が不十分で、その結果、斜め方向から観察した場合のコントラストの低下や、反転現象が生じる。
【0004】
これを回避する方法として、バックライトからの光を集光、平行光化させて液晶パネルに入射させ、液晶パネルから出射した後、光を拡散する方法が、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【0005】
バックライトからの光を集光させる光学要素として、特許文献2には、レンチキュラーレンズまたはマイクロレンズのアレイとその焦点面近傍に光を通過させる開口部がそれ以外の部分に光を反射する遮光部が形成されたものが開示されている。このような開口部と遮光部の形成方法として、引用文献2には、レンズ自体の集光作用を利用したセルフアライメントによって、粘着性感光樹脂層の粘着性を失わせ、粘着性を喪失した部分以外の部位に遮光性材料を形成する方法が開示されている。
【0006】
一方、特許文献1の光学要素は、液晶パネルとバックライトの間に配置され、バックライト側の面に沿って配列された開口部と、開口部を通って入射した光を全反射によって平行光化する為、光入力面より大きい面積の光出力面を有する突状のマイクロコリメータとマイクロコリメータを通過した光をさらに平行光化させるレンズとを備える光学要素である。バックライトからの光は開口部を通って光学要素に達し、開口部はマイクロコリメータおよびレンズに対応して間隔を空けて並んでおり、光を遮る遮光層が開口部と開口部との間を埋めている。
【0007】
このマイクロコリメータのように面積の異なる光入力面と光出力面とを有し、全反射を利用して光の集光/拡散を行う光学シートに遮光層を形成する方法に、突部と突部の間の溝に遮光性の顔料粒子を充填し、過剰の粒子をブラシなどで除去する方法が特許文献3に記載されている。
【特許文献1】国際公開第WO95/14255号パンフレット
【特許文献2】特開2000−171617号広報
【特許文献3】特開昭62−245239号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、レンズのセルフアライメントによって粘着性感光樹脂層の粘着性を喪失させ、粘着性が喪失しない部位のみに遮光層を形成する方法は、遮光層の厚みが遮光性微粒子1〜数個分に限定され、厚く形成することが困難で、従って、十分な遮光性能が得られないという問題があった。あるいは、この方法の応用で、あらかじめ遮光性顔料を含んだ転写性インクを用意して、セルフアライメントを利用して粘着性の粘着層を形成し、この粘着層のパターンに遮光性の顔料を含んだインクを転写して開口部と遮光層とを形成する方法もあるが、しかし、この方法においても、インク内の顔料濃度を上げたり、インク層の厚みを厚くすると、解像されないという問題があった。
【0009】
また、開口部となる突部と突部の間の溝にインク(遮光性微粒子)を充填し、余分なインクを除去する方法は、インクの充填後、余分なインクを掻き出して除去する必要があり、製造工程が煩雑になり易い。また、開口部に相当する突部へインクが付着して残る、またはインクを除去する際に突部が傷付く等の要因によって、製品品質を低下させる虞がある。本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、製造が容易な光学要素製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の光学要素製造方法は、光を通す扁平な基部と、当該基部の一の面に設けられた光を通す複数の突部とを備える光学シートを、光を通す基材に重ね、前記光学シートによって、前記基材上に設けられた光を遮る遮光層を押圧し、前記突部によって前記遮光層を破断させて光を通す開口部を形成する押圧工程を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学要素製造方法では、突部による遮光層の破断によって、光を通す開口部を形成しつつ開口部の位置に合わせて突部を配置するため、製造工程の煩雑さを抑えられ、製造が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、以下で説明する実施形態において、各実施形態で共通する機能を有する部材については、類似の符号を付し、また、重複する説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1は光学要素製造方法の概要を説明するための図、図2は光学要素の製造工程を詳細に説明するための図、図3は第1実施形態により製造された光学要素の用途例を説明する図である。
【0014】
図1において説明すると、実施形態に係る光学要素製造方法は、光を通す扁平な基部412と基部412の一の面417に設けられた光を通す複数の突部415とを備える光学シート410を形成する光学シート形成工程を有する。
【0015】
光学要素製造方法はまた、光を通す拡散板421(基材に相当する)上に突部415よりも柔らかく透明な緩衝層422と、緩衝層422上に緩衝層422よりも脆い材料からなる遮光層423を形成する工程と、を有する。
【0016】
拡散板421は、均一に面発光した光を光学シート410に供給する。緩衝層422は、粘着性を有し、例えばPSA(Pressure Sensitive Adhesive)である。遮光層423は、例えば、透明樹脂等のバインダ中に、酸化チタン、酸化ケイ素等の微粒子を分散させたものである。遮光層423の厚さtは、数μm〜数十μmであり、突部415の高さHより小さい(H>t)。遮光層423は、50〜90%の拡散反射率を有する。ここで、遮光層423は、大部分の光を遮るが、完全に遮断して、まったく透過しないわけではない。
【0017】
光学シート形成工程および遮光層形成工程の後に、光学要素製造方法は、光学シート410を拡散板421に重ね、光学シート410によって、拡散板421上に設けられた遮光層423を押圧し、突部415によって遮光層423を破断させて光を通す開口部を形成する押圧工程を有する。
【0018】
図2(A)に示すように、光学シート形成工程では、基部412の面417に複数の突部415を、周知の紫外線硬化型樹脂(以下、単にUV樹脂と称す)を母型(図示せず)に充填し、紫外線を照射することによって、UV樹脂を硬化させ形成する。また、光学要素410は、溶融押出成形によって、基部412と複数の突部415とを一体的に形成しても良い。
【0019】
図2(B)および図2(C)に拡散板421上に緩衝層422および遮光層423を形成する方法を示す。図2(B)に示したように、あらかじめ、一対の剥離フィルム424および425の間に粘着性を有する緩衝層422および遮光層423を形成したフィルムシートを用意する。次に、図2(C)に示したように、緩衝層422側の剥離フィルム424を剥離しながら、緩衝層422の粘着性を利用して、拡散板421に前記フィルムシートを貼合する。
【0020】
図2(D)に示すように押圧工程は、剥離フィルム425を剥離後、突部415によって遮光層423を破断させるとともに、突部415を緩衝層422に食い込ませる。押圧工程によって、光学シート410と拡散板421とが一体となり、光学要素400が形成される。
【0021】
突部415は遮光層423を突き抜ける。破断した遮光層423は、緩衝層422とともに突部415と突部415との間に入り込む。突部415と突部415との間では、遮光層423と光学シート410との間に空気の層405(以下、単に空気層405と称す)が形成される。
【0022】
遮光層423が緩衝層422のように柔らかいと、突部415が遮光層423を押圧したとき遮光層423が突部415の外形に沿って変形し、開口部となる突部415を覆う虞があるため、遮光層423は、脆く、突部415による押圧によって破断し易いものが好ましい。
【0023】
第1実施形態では、緩衝層422及び遮光層423を、あらかじめ、剥離フィルム424及び425の間に形成したものを用意し、拡散板421に貼合して用いたが、これに限定されるものではなく、拡散板421上に直接、緩衝層422、遮光層423を順に形成しても良い。また、遮光層423の破断時に破砕された遮光層423の飛沫の飛散防止や、突部415の先端部の角の傷つき防止などの目的で、遮光層423の両側に緩衝層422を形成しても良い。この際、突部415の側面での光の全反射を損なわない為に、光学シート410側の透明な緩衝層の屈折率を、突部415の屈折率より小さくすることが望ましい。
【0024】
第1実施形態の作用効果を述べる。
【0025】
光学要素製造方法は、突部415による遮光層423の破断によって、光を通す開口部を形成しつつ開口部の位置に合わせて突部415を配置するため、製造工程の煩雑さを抑えられ、製造が容易である。
【0026】
また、光学要素製造方法は、突部415に比べて柔らかい緩衝層422に突部415を食い込ませるため突部415の損傷を妨げられ、ひいては良好な品質の光学要素400を製造し得る。
【0027】
図3に、第1実施形態の光学要素の利用形態を示す。
【0028】
図3(A)に示すように、第1実施形態に係る光学要素製造方法によって製造した光学要素400は、液晶パネル50とバックライト52との間に配置され、拡散板421によって均一化させた、バックライトの光53を入射させることによって、正面方向に光を集光させ、明るさを向上させた光54を液晶パネル50に供給できる。
【0029】
図3(B)に示す光学要素400は、液晶パネル50に対して光51の出射方向下流に配置し、光学シート410から光51を入射させることによって、光51の視野角を広げられる。
【0030】
なお、図3(B)に示した実施形態においては、明室でのコントラストを向上させるため、遮光層423は、黒色等の光を吸収する遮光層423である。この吸光性の遮光層423は、例えば、透明樹脂等のバインダ中に、カーボン、黒色樹脂ビーズ、黒色顔料等の微粒子を分散させたものである。また、基材421は、拡散板ではなく、透明板または透明フィルムでも良い。この透明板または透明フィルムは、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂などのプラスチック製の板およびフィルムやガラス板などが使用できる。この透明板や透明フィルムは、その出射側表面に、公知のアンチグレア層(AG)、無反射層(AR)、低反射層(LR)等を形成しても良い。
【0031】
<第2実施形態>
図4は光学要素製造方法の概要を説明するための図、図5は光学シート形成工程を説明するための図、図6は押圧工程を説明するための図、図7は光学要素の部分拡大図である。
【0032】
図4において説明すると、実施形態に係る光学要素製造方法は、光を通す扁平な基部112と基部112の一の面117に設けられた光を通す複数の突部115とを備える光学シート110を形成する光学シート形成工程を有する。光学シート110は、基部112の面117と異なる他の面116の突部115に対応する位置に、複数の凸レンズ111(レンズに相当する)を有する。
【0033】
光学要素製造方法はまた、光を通す拡散板121(基材に相当する)上に突部115よりも柔らかく透明な緩衝層122、及び、緩衝層122上に緩衝層122よりも脆い材料からなる遮光層123を形成する工程と、を有する。拡散板121、緩衝層122、及び、遮光層123は、第1実施形態で説明したものと同様のものが使用できる。
【0034】
光学シート形成工程および遮光層形成工程の後に、光学要素製造方法は、光学シート110を拡散板121に重ね、光学シート110によって、拡散板121上に設けられた遮光層123を押圧し、突部115によって遮光層123を破断させて光を通す開口部を形成する押圧工程を有する。
【0035】
図5に示すように、光学シート形成工程は、基部112の面116に複数の凸レンズ111を形成するレンズ形成工程と、光によって硬化するUV樹脂層113を基部112の面117に形成する硬化層形成工程と、を有する。光学シート形成工程はまた、凸レンズ111を通してUV樹脂層113に光を照射し、UV樹脂層113が硬化してなる硬化部114を形成する硬化工程と、硬化部114と異なるUV樹脂層113を除去し、硬化部114を突部115とする突部形成工程と、を有する。
【0036】
図5(A)に示すように、レンズ形成工程では、紫外線硬化型樹脂(以下、単にUV樹脂と称す)に紫外線を照射することによって、または溶融押出成形によって、基部112と複数の凸レンズ111とを一体的に形成する。
【0037】
複数の凸レンズ111は、例えば、1次元のレンチキュラーレンズ、または2次元のマイクロレンズアレイである。マイクロレンズアレイの配列は、縦横に並んだ正方配列、六角形に隙間なく並んだ六方最密配列の他、ランダムな配列であっても良い。レンズ形成工程の後、硬化層形成工程では、UV樹脂を面117に塗布する。
【0038】
図5(B)に示すように硬化工程では、セルフアライメントによって、面117に塗布したUV樹脂を硬化させる。すなわち、凸レンズ111を通して、UV樹脂層113に紫外線10を照射し、UV樹脂層113において凸レンズ111に対応した部分を硬化させる。紫外線10の照射方向は、基部112の面116、117に対して略直角であり、凸レンズ111の焦点15はUV樹脂層113に位置する。
【0039】
図5(C)に示すように突部形成工程では、硬化部114と異なるUV樹脂層113、つまり未硬化のUV樹脂を例えば溶剤等によって洗い流して、突部115を形成する。
【0040】
このようにして形成された突部115は、複数の凸レンズ111が、1次元のレンチキュラーレンズの場合には、凸レンズ111同様に、1次元の突部となり、2次元のマイクロレンズアレイの場合には、やはり、2次元的に配列されたものとなる。
【0041】
図6に示すように押圧工程は、突部115によって遮光層123を破断させるとともに、突部115を緩衝層122に食い込ませる。押圧工程によって、光学シート110と拡散板121とが一体となり、光学要素100が形成される。
【0042】
第2実施形態は第1実施形態と略同様の効果を奏する。
【0043】
実施形態と異なり、面117における、突部115と突部115との間に相当する位置にレンズ111のセルフアライメントを利用して粘着性の粘着層を形成し、この粘着層のパターンに遮光性の顔料を含んだインクを転写して開口部と遮光層とを形成する(転写法)こともできる。しかしこの方法では、インク内の顔料濃度を上げると、解像性の低下を招く虞がある。
【0044】
一方、本実施形態では、転写によらず、突部115によって遮光層123を破断させて光を通す開口部を形成しつつ突部115と突部115との間に遮光層123を形成するため、遮光層123に含まれる遮光性の微粒子の濃度を上げても、解像性が良好である。
【0045】
実施形態と異なり、機械的方法によって、突部115と開口部とを位置合わせすることもできるが、このような方法では、高精細化と大面積化との両立が困難である。一方、本実施形態では、突部115による遮光層123の破断によって、光を通す開口部を形成しつつ開口部の位置に合わせて突部115を配置するため、高精細化と大面積化との両立が容易である。
【0046】
図7に示すように光学要素100では、拡散板121によって散乱した光は、突部115および凸レンズ111を通り、レンズ作用によって正面方向にコリメートされる。したがって、液晶を含む液晶パネルと光源としてのバックライトとの間に光学要素100を配置し、拡散板121からバックライトの光を入射させることによって、正面方向の明るさを向上させた光を液晶パネルに供給できる。
【0047】
空気層105はなくてもよいが、実施形態のように空気層105があると、遮光層123と空気層105との屈折率の差によって全反射する光が生じるため、空気層105がない場合に比べて遮光層123の遮光性が高められ好ましい。また、突部115と空気層105との屈折率の差によって突部115の側面118において全反射する光が生ずるため、隣接する凸レンズ111に入射する光(図7中の点線参照)の割合を低減できる。
【0048】
実施形態に係る光学要素製造方法では、緩衝層122に突部115を食い込ませたとき、破断した遮光層123は、緩衝層122に押されるようにして突部115と突部115との間に入り込むため、光学要素100では、遮光層123が光学シート110に向かって突き出している。遮光層123で光が反射するとき、完全な散乱反射のみが生ずることは稀で、方向性を持たない散乱反射と正反射(鏡面反射)とが混ざり合っていることが多い。光学要素100では、遮光層123が光学シート110に向かって突き出しているため、散乱反射のうちの正反射成分において、緩衝層122と拡散板121との境界面に対して垂直な方向成分の割合が、遮光層123と基部112とが略平行な場合に比べて増加する。その結果、反射回数を抑制して光を突部115から出射できるため、光の利用効率が向上する。
【0049】
<第3実施形態>
図8は第3実施形態に係る他の光学要素製造方法を説明するための図である。
【0050】
図8に示すように、第3実施形態は第2実施形態と略同様であるが、第2実施形態の硬化工程において、凸レンズ211の焦点25をUV樹脂層213より遠方に位置させる点で、第2実施形態と異なる。このため断面が台形形状の突部215が形成でき、押圧工程は、先端に向かって先細りとなる形状を有する突部215によって遮光層223を破断する。よって、第2実施形態の効果に加え、押圧工程において、突部215を押し付けるための力を低減できるという効果を奏する。
【0051】
図9に、第2、第3実施形態の光学要素の利用形態を示す。
【0052】
図9(A)に示すように、第2、第3実施形態に係る光学要素製造方法によって製造した光学要素100(200)は、前述の第1実施形態に係る光学要素製造方法によって製造した光学要素400と同様に、液晶パネル50とバックライト52との間に配置され、拡散板121(221)によって均一化させた、バックライトの光53を入射させることによって、正面方向に光を集光させ、明るさを向上させた光54を液晶パネル50に供給できる。
【0053】
また、図9(B)に示すように、第2、第3実施形態に係る光学要素製造方法によって製造した光学要素100(200)を、液晶パネル50に対して光51の出射方向下流に配置し、レンズ111(211)から光51を入射させることによって、光51の視野角を広げられる。遮光層123(223)は、第1実施形態に係る製造方法によって製造した光学要素400における遮光層423と同様、吸光性の遮光層で、基材121(221)も、また、第1実施形態におけるに係る製造方法によって製造した光学要素400における基材421と同様、透明板または透明フィルムであっても良い。
【0054】
<第4実施形態>
図10は第4実施形態に係る光学要素製造方法を説明するための図、図11は突部側から見た第4実施形態に係る光学シートの平面図である。
【0055】
第4実施形態に係る光学要素製造方法は、第2実施形態と略同様であるが、第2実施形態が、複数の凸レンズ要素111が、1次元のレンチキュラーレンズ、2次元のマイクロレンズアレイのいずれをも含むものであったが、第4実施形態においては、2次元のマイクロレンズアレイのみに限定される。また、硬化工程が第2実施形態と異なる。
【0056】
図10(A)は、第4実施形態に使用するマイクロレンズアレイシートの斜視図である。この例のマイクロレンズアレイシートは、凸レンズ311が六方最密に配列されている。凸レンズ311が順に配列されている方向を31、1つおきに互い違いに配列されている方向を32とする。以下、第4実施形態に使用するマイクロレンズアレイシートは、凸レンズ311が六方最密に配列されている例で説明するが、第4実施形態はこれに限定されるものでは無く、正方配列やランダム配列等においても、適応可能である。
【0057】
図10(B)に示すように、第4実施形態の硬化工程は、UV樹脂層313の面に沿う一方向31に紫外線30を拡散させて照射する、または、紫外線30を照射する角度を変えてUV樹脂層313の面に沿う一方向31に段階的に紫外線を照射する。
【0058】
このような照射によって、例えば図11(A)に示すように、基部312の面317に対して平行な面における断面形状が楕円形の突部315Aが形成される。楕円形の長軸は方向31に沿っている。または図11(B)に示すように、方向31に沿って繋がった突部315Bが形成される。突部315A、315Bの各々がこのような形状を有することによって、方向31とこれに直角な方向32とで視野角が異なる。つまり、第4実施形態に係る光学要素製造方法は、第2実施形態の効果に加え、2方向で視野角の異なる光学要素を製造できるという効果を奏する。
【0059】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変できる。例えば、第1実施形態において、緩衝層422が十分な厚みを有していれば、突部415の断面形状を先端が尖った三角形としてもよい。また、利用形態に関する図3(B)において、液晶パネル50と光学要素400とを基部412で貼り合せる場合、光学要素400自体に自立性は不要となるため、押圧工程後、基材421を剥離しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】光学要素製造方法の概要を説明するための図である。
【図2】詳細な光学要素製造方法を説明するための図である。
【図3】光学要素の利用形態を説明するための図である。
【図4】第2実施形態に係る光学要素製造方法の概要を説明するための図である。
【図5】第2実施形態に係る光学シート形成工程を説明するための図である。
【図6】押圧工程を説明するための図である。
【図7】光学要素の部分拡大図である。
【図8】第3実施形態に係る光学要素製造方法を説明するための図である。
【図9】光学要素を液晶ディスプレイに適用したときの例を示す図である。
【図10】第4実施形態に係る光学要素製造方法を説明するための図である。
【図11】突部側から見た第4実施形態に係る光学シートの平面図である。
【符号の説明】
【0061】
10、20、30 紫外線、
15、25 焦点、
31 一方向、
50 液晶パネル、
52 バックライト、
100、400 光学要素、
105、405 空気層、
110、210、410 光学シート
111、211、311 凸レンズ(レンズに相当する)、
112、212、312、412 基部、
113、213、313 硬化層、
114 硬化部、
115、215、315A、315B、415 突部、
116、216、316、416 基部の面(一の面に相当する)、
117、217、317、417 基部の面(他の面に相当する)、
121、221、421 拡散板(基材に相当する)、
122、222、422 緩衝層、
123、223、423 遮光層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を通す扁平な基部と当該基部の一の面に設けられた光を通す複数の突部とを備える光学シートを、光を通す基材に重ね、前記光学シートによって、前記基材上に設けられた光を遮る遮光層を押圧し、前記突部によって前記遮光層を破断させて光を通す開口部を形成する押圧工程を有する光学要素製造方法。
【請求項2】
前記基材上に前記突部よりも柔らかく透明な緩衝層、及び、前記緩衝層上に前記緩衝層よりも脆い材料からなる前記遮光層を形成する工程と、を有し、前記押圧工程は、前記突部によって前記遮光層を破断させるとともに、前記突部を前記緩衝層に食い込ませる請求項1に記載の光学要素製造方法。
【請求項3】
前記突部は、先端に向かって先細りとなる形状を有する請求項1または請求項2に記載の光学要素製造方法。
【請求項4】
前記光学シートは、前記基部の一の面と異なる他の面の前記突部に対応する位置に複数のレンズを有する請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の光学要素製造方法。
【請求項1】
光を通す扁平な基部と当該基部の一の面に設けられた光を通す複数の突部とを備える光学シートを、光を通す基材に重ね、前記光学シートによって、前記基材上に設けられた光を遮る遮光層を押圧し、前記突部によって前記遮光層を破断させて光を通す開口部を形成する押圧工程を有する光学要素製造方法。
【請求項2】
前記基材上に前記突部よりも柔らかく透明な緩衝層、及び、前記緩衝層上に前記緩衝層よりも脆い材料からなる前記遮光層を形成する工程と、を有し、前記押圧工程は、前記突部によって前記遮光層を破断させるとともに、前記突部を前記緩衝層に食い込ませる請求項1に記載の光学要素製造方法。
【請求項3】
前記突部は、先端に向かって先細りとなる形状を有する請求項1または請求項2に記載の光学要素製造方法。
【請求項4】
前記光学シートは、前記基部の一の面と異なる他の面の前記突部に対応する位置に複数のレンズを有する請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の光学要素製造方法。
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【公開番号】特開2010−156892(P2010−156892A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335781(P2008−335781)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】
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